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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】気密コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/16 20060101AFI20250127BHJP
【FI】
H01R9/16 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021524946
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2020022507
(87)【国際公開番号】W WO2020246614
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2019107339
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521527428
【氏名又は名称】センインテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-093121(JP,A)
【文献】実開昭61-004368(JP,U)
【文献】米国特許第04231631(US,A)
【文献】特開2004-087246(JP,A)
【文献】実公昭57-058702(JP,Y2)
【文献】特開2014-207145(JP,A)
【文献】特開平02-106095(JP,A)
【文献】米国特許第04913673(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/16
H01R 43/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の空間と第2の空間との間の気密性を保ち、かつ前記第1の空間内の第1の導体と前記第2の空間内の第2の導体とを電気的に接続するための気密コネクタであって、
前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する孔が設けられ、前記孔以外の部分によって前記2つの空間を区画する隔壁部を有する絶縁体のコネクタ基部と、
この隔壁部の表面に密着し、かつ前記孔の内面及び開口部にめっき皮膜を形成して孔を塞ぐ単一で一体の部材として形成された第1の導電部とを有することを特徴とする気密コネクタ。
【請求項2】
前記第1の導電部は、隔壁部の表面に密着し、かつ前記孔およびその周辺を一体的に覆うことを特徴とする請求項1記載の気密コネクタ。
【請求項3】
前記隔壁部の表面に、前記第1の導電部と絶縁されて設けられた第2の導電部を有し、前記第1の導電部は中心部に形成され、前記第2の導電部は前記第1の導電部を取り囲んで形成されることを特徴とする請求項1または2記載の気密コネクタ。
【請求項4】
前記第1の導電部と前記第2の導電部との間にある絶縁体部分が、空隙を囲む肉薄部を有することを特徴とする請求項3記載の気密コネクタ。
【請求項5】
前記コネクタ基部は合成樹脂の成型品であり、前記第1の導電部および第2の導電部は金属メッキ部であり、前記孔の部分の第1の導電部によって、前記第1の空間と第2の空間との間の気密性および導電性が提供されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の気密コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密性を保ったまま、導通端子を介して、電気接続を行う気密コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型電子部品は、湿気や封入ガスの粘性によって性能が大きく左右されるので、湿度による内部回路の腐食、ガスの粘性変化による誤作動の防止のため、真空または不活性ガスにより密封封止されている。また、真空・圧力・液体・ガス環境などで電子部品を動作させるために、密閉容器を使用し、密閉容器の気密を損なわずに電源を導入したり、内部のセンサー信号などを取り出すために、気密性を有する気密(ハーメチック)コネクタが使用される。
【0003】
従来の気密コネクタとして、特許文献1、2に記載されているように、内部雰囲気と外部雰囲気とを遮断するためのセラミック板、ガラスエポキシ板などの絶縁基板、あるいは金属板に貫通孔を設け、この貫通孔に電気的接続のための金属ピンを挿入し、その間隙をガラス封止、銀ロウ付け、半田付けなどにより塞いで接合するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-40766号公報
【文献】特開2013-89313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型電子部品用の気密コネクタでは、1×10-15 Pa・m3/s(He)のレベルのウルトラファインリークテスト、1×10-9 Pa・m3/s(He)のレベルのファインリークテストなどで、その気密性が試験される。前述した従来技術による気密コネクタでは、ロウ付けまたは半田付けによる製造時の接合不良、経年変化によるひび割れの発生などにより、良好な封止が保証できないという問題がある。また、ロウ付けまたは半田付けによる接合の代わりに、絶縁基板と金属ピンとの間隙をガラスで埋めて、高温に熱し溶かして接合する技術があるが、基板と金属ピンとガラスという3つの線膨張率が異なる材質を接合する必要があり、しかも貫通孔方向に界面を有するため基板とガラス、ガラスと金属ピンの間にすきまが発生しやすくリークを確実に防止することは困難であり、製品歩留まりが低く、この種の気密コネクタのコスト増の原因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明による気密コネクタは、たとえば、小型電子部品が不活性ガスとともに封止される第1の空間と、その外部である第2の空間との間の気密性を保ち、かつ第1の空間内の第1の導体と第2の空間内の第2の導体とを電気的に接続するための気密コネクタであって、第1の空間と前記第2の空間とを連通する孔が設けられ、孔以外の部分によって2つの空間を区画する隔壁部を有する絶縁体のコネクタ基部と、この隔壁部の表面に密着し、かつ孔を覆う一体の部材として形成された第1の導電部とを有することを特徴とする。このように導電部で、孔を覆うことで、第1の空間と第2の空間とを連通する孔を塞ぐことができ、確実にリークを防止できる。ここで第1の導電部は、覆う部分に対して、一体の部材として形成されていることを特徴とし、複数の導電部材を使用して接合することで孔を覆うこととは異なる。複数の導電部材を使用すると、その接合部からのリークが懸念されるからである。なお、覆う部分に対して、たとえば複数回のメッキ処理を重ねることにより導電部を形成する場合は、一体あるいは単一の部材として形成されることになる。この場合に、リークを有効に防止できる。
【0007】
本発明の請求項2に係る発明による気密コネクタにおいては、第1の導電部は、隔壁部の表面に密着し、かつ孔およびその周辺を一体的に覆うことを特徴とする。このように構成することで、隔壁部と導電部の接触面積が大きくなるため、導電部が隔壁部から剥がれにくくなり気密コネクタの破壊強度が向上する。
ここで、第1の導電部は、孔およびその周辺を一体的に覆うことを特徴とする。この場合も、覆う対象の部分に対して、単一の部材により覆うことを特徴とし、複数の導電部材を使用して接合することで孔を覆うこととは異なる。複数の導電部材を使用すると、その接合部からのリークが懸念されるからである。なお、覆う部分に対して、たとえば複数回の異なる金属によるメッキ処理を重ねることにより導電部を形成する場合も、単一の部材により一体的に覆うことになる。この場合も、リークを有効に防止できる。
【0008】
本発明の請求項3に係る発明による気密コネクタは、請求項1に係る発明において、隔壁部の表面に、第1の導電部と絶縁されて設けられた第2の導電部を有し、第1の導電部は信号線に接続するために適した形状を有し、第2の導電部は第1の導電部に対し静電シールドを提供するために適した形状を有し、同軸コネクタとして機能することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る発明による気密コネクタは、請求項3に係る発明において、第1の導電部と第2の導電部との間にある絶縁体部分が、肉薄部を有し、空隙の大きさを変化させて、特性インピーダンスを調節可能となっていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る発明による気密コネクタは、請求項1、2、3または4に係る発明において、コネクタ基部は合成樹脂の成型品であり、導電部は金属メッキ部であり、孔の部分の第1の導電部によって、第1の空間と第2の空間との間の気密性および導電性が提供されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、確実にリークを防止する気密コネクタ構造を製品歩留まりが高く、安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)は本発明の第1の実施形態による気密コネクタの構成を示す概略断面図である。(B)は、(A)に示す実施形態の変形例である。
図2図1の実施形態による気密コネクタの製造プロセスの第1ステップを示す概略断面図である。
図3図1の実施形態による気密コネクタの製造プロセスの第2ステップを示す概略断面図である。
図4図1の実施形態による気密コネクタの製造プロセスの第3ステップを示す概略断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態による気密コネクタの構成を示す概略断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態による気密コネクタの構成を示す概略断面図である。
図7図6の実施形態による気密コネクタの製造プロセスの第1ステップを示す概略断面図である。
図8図6の実施形態による気密コネクタの製造プロセスの第2ステップを示す概略断面図である。
図9】本発明の第4の実施形態による気密コネクタの構成を示す概略断面図である。
図10図9の実施形態による気密コネクタの製造プロセスのメッキ部形成ステップを示す概略断面図である。
図11】本発明の第5の実施形態による気密同軸コネクタの構成を示す概略断面図である。
図12図11の実施形態による気密同軸コネクタの製造プロセスのメッキ部形成を示す概略断面図である。
図13図11の実施形態による気密同軸コネクタにおける特性インピーダンス調整を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態による気密コネクタを示す概略断面図である。図1(A)において、絶縁体のコネクタ基部1が、例えばポリエステル系の液晶ポリマー(LCP)で成型されており、第1の空間2と第2の空間3を区画する隔壁部4を有する。なお、コネクタ基部1の成型時に、液晶ポリマー(LCP)の機械特性を向上させるために適宜のフィラーを含ませることができる。一方の空間は、たとえば真空・圧力・液体・ガス環境などであり、他方の空間に、電子部品が格納される。
【0014】
気密コネクタは、航空、宇宙、防衛、セキュリティの他、エアコン用コンプレッサ、ガスセンサー、流量センサー、医療用センサーなど、多くの産業分野で、利用される。コネクタ基部1の外形は、これら気密コネクタの用途に応じて、略円筒、略直方体などの形状を有する。隔壁部4には孔5が設けられており、孔5及びその周辺を覆う厚さ約25μmの銅などの導電性のメッキ部6が形成されている。この例では、隔壁部4表面のほぼ全域にわたって、メッキ部6が形成されている。
【0015】
メッキ部6の孔5を覆う部分の一方の面にピン7がロウ付けされており、他方の面にピン8がロウ付けされている。ピン7、8は、純銅、黄銅、リン青銅など下地の表面に金メッキ、錫メッキなどを施した電気的接続のための部材である。ロウ付けは、半田付け、銀ロウ付け、高周波誘導加熱(IH)での金錫(AuSn)接合などによる。LCP素材がリークを起こす場合、エポキシ樹脂、エポキシあるいはアクリル樹脂含侵の封止部9、10を設けてもよい。このように、本実施形態による気密コネクタでは、メッキ部6により、気密が保持され、かつ電気的接続が行われる構造となっている。とくに、メッキ部6が、孔5及びその周辺を覆うように形成されているので、隔壁部4とメッキ部6との接触面積が大きくなるため、ピン7、8に力が加わった時にメッキ部6が隔壁部4から剥がれにくくなり、気密コネクタの破壊強度が向上する。メッキ部6は、隔壁部4に密着し、かつ孔5を覆う部分全体に対して、一体または単一の部材となっている。なお、無電解メッキおよび電気メッキを重ねて厚みを増大されたメッキ部が形成された場合にも、一体または単一の部材となっている。
【0016】
図1(B)は、図1(A)に示した気密コネクタの変形例を示し、この例では、隔壁部4の凹部14において、孔5を覆うメッキ部16が設けられている。メッキ部16は、凹部14に密着し、かつ孔5を覆う部分全体に対して、一体または単一の部材となっている。なお、無電解メッキおよび電気メッキを重ねて厚みを増大されたメッキ部が形成された場合にも、一体または単一の部材となっている。メッキ部16で孔5を覆うことにより、第1の空間2と第2の空間3とを連通する孔5を塞ぐことができ、確実にリークを防止できる。
【0017】
次に、図1(A)に示した気密コネクタの製造方法を、図2~4を参照して説明する。第1のステップとして、まず、LCP(液晶ポリマー)、PPA、PA、 熱硬化性樹脂等の合成樹脂やセラミックを成形して、孔5を有するコネクタ基部1が形成される。コネクタ基部1には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂の他、セラミック、ガラス等の無機材料から構成される基材が使用できる。
好ましくは、芳香族系液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルポリスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリアミド、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ノルボルネン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)樹脂、ポリブチレン・テレフタレート(PBT)樹脂等である。より好ましくは、耐熱性及び熱膨張係数が広い温度条件において金属に近く、しかも金属膜と同等の伸縮性を有して、サーマルサイクルテストにおいて金属膜と同等の優れた特性を有するポリエステル系液晶ポリマーである。また、フィラーとして、ガラス繊維、ピロリン酸カルシウム、ワラストナイト、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、炭素繊維、石英繊維、硫酸バリウム等を加えたものであってもよい。
【0018】
まず、液晶ポリマー(LCP)の隔壁部4の露出面をエッチングにより粗面化する。つぎに、図2に示すように、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、生分解性樹脂等を使用して、孔5を塞ぐように、成形体20を形成する。ここで、コネクタ基部1の素材として、成形体20を溶かすための有機溶剤などには溶けにくい材料が選ばれる。さらに、隔壁部4の露出表面21および成形体20の露出表面22を脱脂後,クロム酸あるいは水酸化カリウム(KOH)溶液などを用いて、その露出表面21、22を粗面化する。
【0019】
表面を粗化する方法としては、例えば、公知のエッチング方法が適用できる。エッチング方法には、湿式と乾式とがあり、基体に使用されている材料の種類等により、適宜の方式のエッチング方法を採用すればよい。乾式法は、例えば、プラズマを照射したり、気体を使用する等して行うことができる。
【0020】
湿式法は、例えば、NaOH、KOH等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、アルコール性ナトリウム、アルコール性カリウム等のアルカリ金属アルコラートの水溶液、あるいはジメチルホルムアミド等の有機溶剤を用い、これらのエッチング液を基体表面に塗布したり、これらの液中に基体を浸漬させる等して接触させて行うことができる。このうち、NaOH、KOH等の水溶液を用いる方法は、濃度35~45wt%程度、温度70~95℃程度の条件とすることが好ましい。
【0021】
また、アルカリ金属アルコラートの水溶液や、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤を用いる方法は、水溶性又は加水分解性の高分子材料で被覆した後に粗化する場合に好適である。なお、有機溶剤を使用する場合は、基体を膨潤するのみで、粗化まで至らないことがある。この場合は、有機溶剤での処理の後に、酸あるいはアルカリ処理を施せばよい。
次に、パターニングのためのマスキング成形工程を行う。メッキ部6が形成される部分以外のコネクタ基部1および成形体20の表面に、ポリ乳酸(PLA)樹脂などのマスク層23を、図2に示すように形成する。
【0022】
第2のステップとして、硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニウム等のアクセレータ液に浸漬する等して、隔壁部4の露出表面21および成形体20の露出表面22に、PdやPt等のメツキ用触媒を付与する。
【0023】
メッキ用触媒としては、公知のものが使用でき、中でもPdやPtを含むものが好ましく、これらは、例えば、塩化物等の無機塩として使用される。メッキ用触媒の付与は、上記の無機塩を基体に付着させた後、アクセレータ処理により上記の触媒金属を析出させることで行われる。無機塩を基体に付着させるには、無機塩の溶液と基体とを接触させればよく、例えば、無機塩の溶液中に基体を浸漬したり、この水溶液を基体に塗布する等して行われる。
【0024】
具体的な条件は、基体の材料、メッキの材料、メッキ用触媒の材料、無機塩の付着方法等により種々異なり一概には決められないが、メッキ用触媒の塩として塩化パラジウムを使用し、浸漬法を採用する場合を例にとれば、一例として次のようなものが挙げられる。
【0025】
触媒塩溶液組成
PdCl2・2H2O:0.1~0.3g/dm3
SnCl2・2H2O:10~20g/dm3
HCl :150~250cm3/dm3
浸漬条件
温度:20~45℃
時間:1~10分
【0026】
なお、メッキ用触媒塩溶液の溶媒としては、上記の塩酸以外に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の、上記した水溶性又は加水分解性高分子材料からなる被覆材を完全には溶出させない(一部は溶出してもよい)有機溶剤を用いることもできる。
【0027】
PLA樹脂のマスク層23は、アクセラレータ工程において、溶解される。つぎに、露出表面21、22に銅(Cu)の無電解メッキを行い、図3に示すように、メッキ部6を形成する。なお、さらにCu、Au等の電気メッキを加えることもできる。
【0028】
メッキ方法は、公知のメタライジング方法(無電解メッキ方法や電気メッキ方法)が採用できる。メッキ金属としては、銅、ニッケル、金、その他各種の金属が挙げられる。メッキ工程は、多数回に分けて行うこともできる。なお、触媒付与工程の後に、予備メッキ工程を設けることもできる。予備メッキも、公知のメタライジング法で行うことができ、好ましくは無電解メッキ法であり、メッキ金属も、上記のいわゆる本メッキ工程での金属と同様のものが使用できる。
【0029】
この予備メッキ工程を設けることにより、本メッキ工程でのメッキ品質を一層良好なものとすることができる。また、後メッキ工程を設けることもできる。後メッキ工程も、公知のメタライジング法で行うことができ、好ましくは無電解メッキ法であり、メッキ金属は、本メッキ工程での金属と同種であってもよいが、異種のものであってもよい。なお、この実施形態では、無電解メッキを行った後、電気メッキを行って、メッキ部6を厚く形成するようにしている。
【0030】
第3のステップとして、有機溶剤などにより、成形体20を除去し、酸化被膜を除去した後、さらにめっき膜を厚くし、メッキ部6の孔5に対応する部分の両面に、図4に示すように、半田40により、ピン7、8をそれぞれ接合する。その後、必要に応じて、エポキシ樹脂などの封止部9、10を設けて、図1に示す構成の気密コネクタが製造される。
【0031】
以上のように構成された図1(A)に示す気密コネクタによれば、隔壁部4の露出表面21をエッチングにより粗面化処理し、たとえば、無電解メッキおよび電気メッキを施してメッキ部6を形成しているので、メッキ部6は隔壁部4の表面に確実に固着されており、メッキ部6と隔壁部4との接着面積が大きくなるため、ピンに力が加わった時にメッキ部6が隔壁部4から剥がれにくくなり気密コネクタの破壊強度が向上する。
なお、図1(B)に示した気密コネクタの製造方法においては、図1(A)の気密コネクタの場合と、パターニングのためのマスク層の形成範囲、メッキ部の形成範囲が異なるが、他の工程は同様である。このように製造された気密コネクタでは、メッキ部16で孔5を覆うことにより、第1の空間2と第2の空間3とを連通する孔5を塞ぐことができ、確実にリークを防止できる。
【0032】
本発明の第2の実施形態による気密コネクタでは、図5に示されるように、一方のピン50がフランジ部51を有し、フランジ部51をメッキ部6に銀ロウ付け、半田付け、AuSn接合などで接合してメッキ部6への接着を確実にし、外力に対して強固なものとすることができる。
【0033】
本発明の第3の実施形態による気密コネクタでは、図6に示されているように、接合される部品61、62の接合部分の形状に合わせて、図1のメッキ部6とは異なる形状に、メッキ部63の形状を変えている。この例では、メッキ部63の中央部が略半球形に湾曲している。このような形状であっても、気密コネクタにおけるリークが確実に防止できる。
【0034】
次に、図6に示した気密コネクタの製造方法を、図7、8を参照して説明する。第1のステップとして、まず、図7において、コネクタ基部70の隔壁部71には、孔72が設けられている。つぎに、孔72を塞ぐ成形体73を形成する。成形体73の露出表面に略半球状のくぼみを設ける。メッキ部63が形成される部分以外のコネクタ基部70および成形体73の表面を、ポリ乳酸(PLA)樹脂のマスク層74で被覆する。その後、メッキ用触媒を付与する。この際に、マスク層74は、溶解される。すなわち、成形体73を溶解除去する前に、マスク層74が溶解除去される。コネクタ基部70および成形体73の選択された表面に、エッチングを施し、粗面化処理する。その後、無電解メッキ、および電気メッキを行ない、メッキ部63を形成する。つぎに、成形体73を除去して、図8に示すような隔壁部71の表面に強固に接合されたメッキ部63を得る。成形体73除去後にさらに電気メッキし、さらにめっき膜厚を厚くする。
なお、隔壁部71をエッチング後に成形体73を形成することもできるが、この場合は成形体73のみをエッチングする。例えば、クロム酸などを使用すれば、ABS樹脂の成形体73のみがエッチングされる。この際、LCPのコネクタ基部70は、エッチングされない。
【0035】
本発明の第4の実施形態による気密コネクタでは、図9に示されているように、断面が矩形の部品を接続することに適した形状のメッキ部90を有する。図10に示すように、コネクタ基部100として、隔壁部101に孔102を有するものを成形する。つぎに、断面が矩形の成形体103を孔102の近傍に形成する。メッキ部90を形成する部分以外のコネクタ基部100の表面および成形体103の表面にパターニングのためのマスク層104をポリ乳酸(PLA)樹脂などで形成する。
隔壁部101および成形体103の露出表面に、エッチングを施し、粗面化処理する。メッキ用触媒を付与し、無電解メッキおよび電気メッキにより、厚い皮膜のメッキ部90を形成する。マスク層104は、触媒付与時に溶解除去される。次に、成形体103を除去して、図9に示すような隔壁部101の表面に確実に接着されたメッキ部90を得る。なお、成形体103を溶解除去した後にも電気メッキを行うことで、さらに厚い皮膜のメッキ部90を得ることができる。
【0036】
図5~10に示された第2~第4の実施形態においても、第1の実施形態によるメッキ部6の形成で使用される材料と同様の材料が使用される。また、気密コネクタに収容される部品に応じて、前述した実施形態で示した形状以外の所望の形状のメッキ部を形成することが可能である。
【0037】
次に、本発明の第5の実施形態による気密コネクタの構成を図11を参照して説明する。本実施形態による気密コネクタは、高周波信号の伝送に適した同軸構造を有する気密同軸コネクタの一例である。図11において、絶縁体のコネクタ基部110は、外側隔壁部111、中間隔壁部112、内側隔壁部113を有し、中心部に孔114が設けられている。
【0038】
コネクタ基部110の外壁部分と外側隔壁部111の表面には、図示しない同軸ケーブルの外部導体に接続するためのメッキ部115が設けられている。このメッキ部115は、いずれか適切な箇所で接地され、静電シールドを提供する。孔114およびその周辺部の内側隔壁部113の一部分にメッキ部116が設けられている。メッキ部115とメッキ部116とは、絶縁体の中間隔壁部112および内側隔壁部113によって、電気的に絶縁されている。
孔114を覆う部分のメッキ部116の両面に、それぞれピン117、118が接合されており、たとえば、一方のピンがメスのコンタクトピンあるいはコネクタ基部と一体である同軸ケーブルの内部導体に接続されるようになっている。
また、本発明の気密コネクタは、これに限らず、メスのコンタクトピンあるいはコネクタ基部と一体である高速信号線、コネクタ単体の他に同軸コネクタの内側中心導体が回路基板の回路と一体型になっている構造にも、適用可能である。
【0039】
次に、図12を参照して、この気密同軸コネクタの製造方法のうち、メッキ部115、116の形成工程を説明する。まず、図12において、LCP (液晶ポリマー)、PPA、PA、熱硬化性樹脂等の合成樹脂やセラミックを成形して、外側隔壁部111、中間隔壁部112、内側隔壁部113、孔114を有するコネクタ基部110を形成する。外側隔壁部111および中間隔壁部112を跨ぐように、ABS樹脂などを使用して、第1の成形体120を形成する。また、ABS樹脂などを使用して、孔114を塞ぐ第2の成形体121を形成する。
【0040】
メッキ部115、116が形成される部分以外のコネクタ基部110の表面および第1の成形体120、第2の成形体121の表面に、パターンニングのためのポリ乳酸(PLA)樹脂などのマスク層124を形成する。次に、エッチングを施し、粗面化処理する。その後、メッキ触媒を付与し、無電解メッキおよび電気メッキにより、メッキ部115、116を形成する。なお、マスク層124は、触媒付与時に、溶解除去される。
【0041】
次に、第1の成形体120、第2の成形体121を除去して、コネクタ基部110の外壁部、外側隔壁部111、中間隔壁部112の一部、内側隔壁部113の表面に確実に接着されたメッキ部115、116を得る。なお、中間隔壁部112の表面には、メッキ部が施されていない部分があり、メッキ部115とメッキ部116とは電気的に絶縁されており、それぞれ同軸コネクタの外側導体と、内側導体に対応する。
【0042】
このように、図1~4に示した第1の実施形態による気密コネクタについて説明した製造方法と同様の方法により、図11に示す第5の実施形態による気密同軸コネクタが製造できる。なお、この実施形態においても、外側隔壁部111、中間隔壁部112、内側隔壁部113の露出表面をエッチングにより粗面化処理し、無電解メッキしてメッキ部115、116を形成しているので、メッキ部115、116はこれら部材の表面に確実に固着されており、メッキ部115、116と外側隔壁部111、中間隔壁部112、内側隔壁部113との接着面積も大きくなっているので、孔114および隔壁部でのリークが確実に防止される。
【0043】
一般に、同軸コネクタにおいて、インピーダンス整合をとるために特性インピーダンスを調整する必要があるが、この第5の実施形態のような構成で、そのインピーダンス調整が以下のようにして行うことが可能である。
【0044】
図13に示すように、この気密同軸コネクタにおいて、たとえば、中間隔壁部112の外壁間の長さA、孔114に形成されたメッキ部116内壁間の長さB、ピン117の外径C、ピン117の長さD、ピン118の長さE、中間隔壁部112に設けられた空隙の大きさFを適宜の値に設定することにより、特性インピーダンスを調整することができる。LCP素材のような合成樹脂と、真空あるいは空気とでは、誘電率が大きく異なるので、中間隔壁部112に設けられた空隙の大きさFを調整することが、特性インピーダンスの調整に有効である。なお、上述した以外の部分、その寸法を変化させても、特性インピーダンスの調整が可能である。
【0045】
また、以上説明した実施形態による気密コネクタは、その寸法によらず、様々な用途に使用できる。とくに、図11に示した気密同軸コネクタは、5G通信規格対応のスマートフォン及び同軸コネクタ(中心導体回路基板となる)が一体となった高周波回路基板などにも好適に使用できる。
【0046】
本発明の一実施形態による気密コネクタによれば、複雑な調整を必要とせずに、確実にリークを防止する構造を安価に実現できる。また、インピーダンス調整が容易にできる気密同軸コネクタの構造を実現でき、同軸コネクタの半田などでの接続をなくした回路基板と同軸コネクタ一体型構造も実現できる。
【符号の説明】
【0047】
1 コネクタ基部
2 第1の空間
3 第2の空間
4 隔壁部
5 孔
6 メッキ部
7 ピン
8 ピン
9 封止部
10 封止部
14 凹部
16 メッキ部
20 成形体
21 隔壁部の露出表面
22 成形体の露出表面
23 マスク層
50 ピン
51 フランジ部
61 部品
62 部品
63 メッキ部
70 コネクタ基部
71 隔壁部
72 孔
73 成形体
74 マスク層
90 メッキ部
100 コネクタ基部
101 隔壁部
102 孔
103 成形体
110 コネクタ基部
111 外側隔壁部
112 中間隔壁部
113 内側隔壁部
114 孔
115 メッキ部
116 メッキ部
117 ピン
118 ピン
120 第1の成形体
121 第2の成形体
123 マスク層
124 マスク層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13