(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】ポリシロキサン、接着剤および湿度センサ
(51)【国際特許分類】
C08G 77/26 20060101AFI20250128BHJP
G01N 21/81 20060101ALI20250128BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C08G77/26
G01N21/81
C09J183/04
(21)【出願番号】P 2020083502
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-05-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本セラミックス協会 新しいハイブリッド材料を考える会ミニシンポジウム「ハイブリッド材料研究の新展開」(集会名)、令和1年9月4日(開催日)
(73)【特許権者】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】関 隆広
(72)【発明者】
【氏名】原 光生
(72)【発明者】
【氏名】飯島 雄太
(72)【発明者】
【氏名】竹下 智也
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特公昭39-017511(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第1655375(CN,A)
【文献】特開2020-000853(JP,A)
【文献】特開平08-311347(JP,A)
【文献】特開昭55-078020(JP,A)
【文献】特開2018-070545(JP,A)
【文献】LI,Yuewen,Fabrication and modeling of catalytic membrane for removing water in esterification,Journal of Membrane Science ,Vol.579 (2019) ,p.120-130 ,doi.org/10.1016/j.memsci.2019.02.063
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C09J
G01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)の構造を有することを特徴とするポリシロキサン。
【化1】
(式中、Aはアルキレンであり、
Bはアルキル基であり、
Xは
NH
2
+
であり、Yはハロゲン化物イオンであり、
Rは、
水素である。)
【請求項2】
乾燥による硬化と吸湿による軟化を可逆的に繰り返すことを特徴とする請求項1に記載のポリシロキサン。
【請求項3】
湿度0%での貯蔵弾性率が1.8x10
8Pa~8.1x10
8Paであり、湿度80%での貯蔵弾性率が6.2x10
0Pa~1.0x10
1Paであることを特徴とする請求項1または2に記載に記載のポリシロキサン。
【請求項4】
オゾン酸化処理基板に対する乾燥状態での引っ張りせん断接着力が0.8MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリシロキサン。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリシロキサンを含むことを特徴とする接着剤。
【請求項6】
基材と、基材上に形成された、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリシロキサンを含む感湿膜と、を含むことを特徴とする湿度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン、接着剤および湿度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素と酸素が交互に結合したポリシロキサンは、一般に無色・無臭で撥水性を持ち、重合度や置換基により、オイルやゴムなどの様々な形態となることが広く知られている。このようなポリシロキサンは、シリコーンとしてエレクトロニクスから化学、繊維、食品、化粧品、建築など様々な産業分野にて利用されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】山谷正明著,「シリコーン 広がる応用分野と技術動向」,2011年9月,化学工業日報社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上述した一般的なポリシロキサンとは異なる性質を持ち、乾燥による硬化と吸湿による軟化を可逆的に繰り返すことができる新たなポリシロキサンを見出した。また、本発明者らは、このポリシロキサンが、接着剤および湿度センサとして有用であることも見出した。
【0005】
本開示の目的は、乾燥による硬化と吸湿による軟化を可逆的に繰り返すことができる新たなポリシロキサン、並びにこのポリシロキサンを用いた接着剤および湿度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、ポリシロキサンである。このポリシロキサンは、下記式(1)で表される。
【化1】
(式中、Aは単結合または二価の有機基であり、
Bはアルキル基であり、
Xはアニオンまたはカチオンであり、Xがアニオンである場合、YはXとイオン対を形成しているカチオンであり、Xがカチオンである場合、YはXとイオン対を形成しているアニオンであり、
Rは存在しないか、または水素、または置換もしくは非置換の一価の有機基である。)
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、乾燥による硬化と吸湿による軟化を可逆的に繰り返すことができる新たなポリシロキサン、並びにこのポリシロキサンを用いた接着剤および湿度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る湿度センサの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2(a)は、PAPDMOS-b(比較例1)の
29Si-NMRスペクトルを示す図である。
図2(b)は、PAPDMOS-a(実施例1)の
29Si-NMRスペクトルを示す図である。
【
図3】
図3(a)は、PAPDMOS-b(比較例1)のMALDI-TOF-MS測定の結果を示す図である。
図3(b)は、PAPDMOS-a(実施例1)のMALDI-TOF-MS測定の結果を示す図である。
【
図4】PAPDMOS-b(比較例1)およびPAPDMOS-a(実施例1)のGPCチャートを示す図である。
【
図5】PAPDMOS-a(実施例1)およびPAPDMOS-b(比較例1)の吸湿能を電子天秤にて評価した結果を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、PAPDMOS-a(実施例1)のQCM測定にて得られた膜の重量変化を示す図である。
図6(b)は、PAPDMOS-b(比較例1)のQCM測定にて得られた膜の重量変化を示す図である。
【
図7】PAPDMOS-a(実施例1)、PAPDMOS-HBr(実施例3)、およびPADMOS-b(比較例1)の吸湿能を電子天秤にて評価した結果を示す図である。
【
図8】接着試験の試験片作製の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照しながら、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0010】
(定義)
【0011】
「アルキル」基は、直鎖または分岐状の一価の脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基の例としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0012】
「ヘテロアルキル」基は、アルキル基の主鎖中の炭素原子の1つ以上の炭素原子が、例えば、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、窒素原子(N)、リン原子(P)などのようなヘテロ原子で置換されたものを意味する。
【0013】
「アルコキシ」基は、-O-アルキル基を意味し、アルキル基は上記で定義した通りである。アルコキシ基の例としては、特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0014】
「シクロアルキル」基は、単環式または多環式のシクロアルキル基を指す。シクロアルキル基の例としては、特に制限されないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0015】
「ヘテロシクロアルキル」基は、N、O、PまたはSから選択される1~3個のヘテロ原子を含むシクロアルキル基を意味する。
【0016】
「アリール」基は、単環式または多環式の芳香族炭化水素基を意味する。アリールの例としては、特に制限されないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル等が挙げられる。
【0017】
「アリールアルキル」基は、低級アルキル、例えばメチル、エチル、プロピルなどの炭素数1~5個のアルキル基で置換されたアリール基を意味する。アリール基の例としては、特に制限されないが、ベンジルメチル、フェニルエチル等がある。
【0018】
本明細書で、「アリールオキシ」基は、-O-アリール基を意味し、アリール基は上記で定義した通りである。アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基に含まれている一つ以上の水素原子はアルキル基で置換されていてもよい。
【0019】
本明細書で、「ヘテロアリール」基は、N、O、PおよびSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素原子である単環式または多環式の芳香族環化合物を意味する。
【0020】
本明細書で、「ヘテロアリールアルキル」基は、低級アルキル基で置換されたヘテロアリール基を意味する。ここでヘテロアリールアルキル基中のヘテロアリールは上記で定義した通りである。
【0021】
本明細書で、「ヘテロアリールオキシ」基は、-O-ヘテロアリール基を意味する。ここで、ヘテロアリールオキシ基中のヘテロアリールは上記で定義した通りである。
【0022】
本明細書で、「置換された」は、置換された原子の通常の価数を超えないことを条件として、水素の代わりに、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素)、ニトロ、シアノ、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールなどの少なくとも1個の置換基で置換されたものを意味する。
【0023】
(ポリシロキサン)
本実施の形態にかかるポリシロキサンは、上記式(1)で表される。かかるポリシロキサンは、乾燥により硬化し、吸湿により軟化する。この硬化および軟化の現象は、可逆的に起きる。一般的に、樹脂の熱硬化は不可逆的であり、一度熱硬化した樹脂が再び軟化することはない。この点で、本実施の形態にかかるポリシロキサンは非常にユニークな性質を有する。また、かかるポリシロキサンは、乾燥時に高い接着性能を有する。
【0024】
上記式(1)中、Aは単結合または二価の有機基である。二価の有機基としては、例えば、アルキレン、ヘテロアルキレン、アルコキシレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリ-レン、アリールアルキレン、ヘテロアリールアルキレン、アリールオキシレン、ヘテロアリールオキシレンが挙げられる。上記式(1)中のBはアルキル基である。このアルキル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0025】
上記式(1)中、Xはアニオンまたはカチオンであり、YはXとイオン対を形成しているカチオンまたはアニオンである。すなわち、Xがアニオンである場合、YはXとイオン対を形成しているカチオンであり、Xがカチオンである場合、YはXとイオン対を形成しているアニオンである。このようなXとYの組み合わせとしては、下記の例が挙げられる。
・Xがアンモニウムイオン、Yがハロゲン化物イオン。
・Xがカルボン酸イオン、Yがアルカリ金属イオン。
・Xが硫酸イオン、Yがアルカリ金属イオン。
【0026】
式(1)中、Rは存在しないか、または水素、または置換もしくは非置換の一価の有機基である。Rの例としては、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のヘテロアルキル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のヘテロシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換のアリールアルキル基、置換または非置換のヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のアリールオキシ基、もしくは置換または非置換のヘテロアリールオキシ基が挙げられる。
【0027】
本実施の形態のポリシロキサンは、直鎖状であり、分岐が存在しないことが好ましい。ポリシロキサンの構造は、NMRを用いる公知の方法で確認することができる。
【0028】
本実施の形態のポリシロキサンは、湿度0%での貯蔵弾性率が1.8x108Pa~8.1x108Paであり、湿度80%での貯蔵弾性率が6.2x100Pa~1.0x101であることが好ましい。ここで、貯蔵弾性率は、レオメータによって室温で測定した値を指す。本実施の形態のポリシロキサンの貯蔵弾性率のこのような変化は可逆的に起きる。また、本実施の形態のポリシロキサンは、湿度80%においてほぼ液状であるが、湿度0%、すなわち乾燥状態では、樹脂のような硬さを有する。
【0029】
本実施の形態のポリシロキサンは、オゾン酸化処理基板に対する乾燥状態での引っ張りせん断接着力が0.8MPa以上であることが好ましい。乾燥状態でこのような接着力を有することで、本実施の形態のポリシロキサンは接着剤として機能し得る。ここでの引っ張りせん断接着力の測定方法は下記の実施例で説明する通りである。
【0030】
本実施の形態のポリシロキサンは、公知のヒドロシリル化反応(例えば、Adv.Synth.Catal.2002,344,1142-1145;J.Mater.Chem.,2012,22,7676-7680参照)を用い、市販の試薬を適宜組み合わせることによって製造できる。合成スキームの例を以下に示す。スキーム中、A、B、XおよびRは上記式(1)において定義されている通りであり、X’は、Xのカチオンまたはアニオンに対応するイオン性基である。スキームに示すヒドロキシル化反応後に得られたポリシロキサンを、酸または塩基で処理することによって、X’をイオン化し、式(1)のXとYとのイオン対を形成することができる。
【化2】
ここで、Lは、アルコキシ基または塩素である。
【0031】
また、本実施の形態のポリシロキサンは、シランカップリング剤を加水分解縮合させることによっても製造できる。合成スキームの例を以下に示す。シランカップリング剤は、市販のものであってもよく、公知の方法にしたがって合成したものであってもよい。シランカップリング剤の加水分解縮合の反応条件は、目的物質に応じて適宜選択できる。
【化3】
スキーム中、A、B、X、Y、RおよびLは上記で定義した通りである。
【0032】
(接着剤)
本開示の他の実施形態は接着剤である。この接着剤は上記ポリシロキサンを含む。かかる接着剤は、乾燥による硬化と、吸湿による軟化を可逆的に繰り返すことができ、乾燥時に高い接着性能を示す。また、本実施の形態の接着剤は水溶性であり、水で洗い流すことができる。これらの性質から、本実施の形態の接着剤は仮止め用の接着剤として特に有用である。
【0033】
本実施の形態の接着剤は、上記ポリシロキサンの性質を損なわない範囲で、可塑剤、防腐剤、充填剤及び界面活性剤などの公知の添加剤を適宜含んでもよい。
【0034】
(湿度センサ)
本開示のさらに他の実施形態は、湿度センサである。
図1は、本実施の形態に係る湿度センサの構成を概略的に示す図である。湿度センサ10は、基材12と、基材12上に形成された、上記ポリシロキサンを含む感湿膜14と、を含む。感湿膜14の厚さは、可視光の波長程度であればよく、当業者であれば適宜設定できる。なお、JIS Z8120:2001では、一般に可視光の波長範囲の短波長限界は360~400nm、長波長限界は760~830nmにあると定義されている。感湿膜14は、周囲の湿度に応じてその厚さが変化し、具体的には、湿度が高くなると、膜厚が増加する。このような膜厚の変化によって、感湿膜14の干渉色が変化し、湿度を検知することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本実施の形態を実施例によってさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本開示を何ら限定するものではない。
【0036】
(試薬および溶媒)
3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン(APDMOS)、テトラメチルシラン(TMS)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、トリフルオロ酢酸ナトリウムは、東京化成工業から購入した。塩酸、トリエチルアミン、臭化水素酸、酢酸、硝酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムは、キシダ化学から購入した。塩化リチウム、臭化ナトリウム、塩化カリウムは、関東化学から購入した。これらの試薬は、精製せずそのまま用いた。溶媒であるメタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、クロロホルムは、キシダ化学から購入した。これらの溶媒は、精製せずそのまま用いた。水には、水道水をミリポア社Direct-Q3 UVにて精製した超純水(比抵抗値:18.2MΩcm)を用いた。
【0037】
(吸湿性ポリシロキサンの合成)
塩基性条件と酸性条件にてポリシロキサンを合成した。塩基性条件にて合成したサンプルにはbaseの頭文字のbを、酸性条件にて合成したサンプルにはacidのaを語尾に付けて、それぞれPAPDMOS-bおよびPAPDMOS-aと記述した。塩基性条件にて合成したポリシロキサンを酸処理することで、アミンをイオン化した。塩酸にてイオン化したサンプルをPAPDMOS-HCl、臭化水素酸にてイオン化したサンプルをPAPDMOS-HBrと記述した。標準大気圧下での吸湿現象を本章では「自然吸湿」と定義する。
【0038】
(比較例1:PAPDMOS-bの合成)
サンプル瓶にAPDMOS 1.83g(1.1×10-2mol)、トリエチルアミン6.86g(6.8×10-2mol)、水4.58g(2.5×10-1mol)を秤量し、サンプル瓶に蓋をしてマグネチックスターラーにて70°Cで5時間撹拌した。その後、エバポレーターにて溶媒を除去し、ベルジャー型真空オーブンを用いて40°Cにて一晩の真空乾燥を行い、透明の粘性液体を得た。収量は1.50gであった。合成物の同定にはプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)測定を用いた。装置はJEOL社NMR A-400を用い、測定溶媒に重水(D2O)および重水酸化ナトリウムを少量加えた重水(D2O+NaOD、NaOD濃度:40wt%)を用いて測定した。試料10.6mg、D2O 692.6mg、D2O+NaOD 41.0mgを混合することで、重水酸化ナトリウムを入れた測定試料を調製した。
1H-NMR(δ[ppm],400MHz,D2O):0.11(3H,SiCH3)、0.59(2H,SiCH2CH2CH2NH2)、1.60(2H,SiCH2CH2CH2NH2)、2.75(2H,SiCH2CH2CH2NH2)、2.96(2H,SiCH2CH2CH2NH3
+).
1H-NMR(δ[ppm],400MHz,NaOD in D2O):-0.18(3H,SiCH3)、0.30(2H,SiCH2CH2CH2NH2)、1.34(2H,SiCH2CH2CH2NH2)、2.43(2H,SiCH2CH2CH2NH2).
【0039】
(実施例1:PAPDMOS-aの合成)
サンプル瓶にAPDMOS 2.0g(1.2×10-2mol)と濃塩酸3.54g(3.6×10-2mol)を秤量し、サンプル瓶に蓋をしてマグネチックスターラーにて室温で2時間撹拌した。その後蓋を開け、ヒーターの温度を60~70°Cに設定し、溶媒がなくなるまで撹拌を続けた。乾固した試料を必要最小量のメタノールに溶解させ、マグネチックスターラーを回収した。エバポレーターにて溶媒を除去したのちに、ベルジャー型真空オーブンを用いて40°Cにて一晩の真空乾燥を行い、半透明の固体を得た。収量は1.89gであった。合成物の同定にはプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)測定を用いた。測定機器はNMR A-400(JEOL WinAlpha)を用い、測定溶媒に重DMSOを用いて測定した。
1H-NMR(δ[ppm],400MHz,DMSO-d6):0.00(3H,SiCH3)、0.48(2H,SiCH2CH2CH2NH3
+Cl-)、1.57(2H,SiCH2CH2CH2NH3
+Cl-)、2.69(2H,SiCH2CH2CH2NH3
+Cl-)、8.16(3H,SiCH2CH2CH2NH3
+Cl-).
【0040】
(実施例2:PAPDMOS-HClの合成)
PAPDMOS-bを塩酸にて処理することで、アミンに塩酸塩が付加した、PAPDMOS-HClを合成した。まず、比較例1のPAPDMOS-bにモノマーの3等量の濃塩酸を加え、サンプル瓶に蓋をしてマグネチックスターラーにて室温で2時間撹拌した。その後蓋を開け、ヒーターの温度を60~70°Cに設定し、溶媒がなくなるまで撹拌を続けた。乾固した試料を必要最低限のメタノールに溶解させて、マグネチックスターラーを回収した。エバポレーターにて溶媒を除去したのちに、ベルジャー型真空オーブンにて一晩真空乾燥を行い、半透明の固体を得た。
1H-NMR(δ[ppm],400MHz,DMSO-d6):0.00(3H,SiCH3)、0.48(2H,SiCH2CH2CH2NH3
+Cl-)、1.57(2H,SiCH2CH2CH2NH3
+Cl-)、2.69(2H,SiCH2CH2CH2NH3
+Cl-)、8.16(3H,SiCH2CH2CH2NH3
+Cl-).
【0041】
(実施例3:PAPDMOS-HBrの合成)
PAPDMOS-bを臭化水素酸にて処理することで、アミンがアミン臭化水素酸塩になった、PAPDMOS-HBrを合成した。まず、PAPDMOS-bにモノマーの3等量の臭化水素酸を加え、サンプル瓶に蓋をしてマグネチックスターラーにて室温で2時間撹拌した。その後蓋を開け、ヒーターの温度を60~70°Cに設定し、溶媒がなくなるまで撹拌を続けた。乾固した試料を必要最低限のメタノールに溶解させて、マグネチックスターラーを回収した。エバポレーターにて溶媒を除去したのちに、ベルジャー型真空オーブンにて一晩真空乾燥を行い、薄茶色がかった半透明の固体を得た。
1H-NMR(δ[ppm],400MHz,DMSO-d6):0.00(3H,SiCH3)、0.48(2H,SiCH2CH2CH2NH3
+Cl-)、1.56(2H,SiCH2CH2CH2NH3
+Br-)、2.74(2H,SiCH2CH2CH2NH3
+Br-)、7.88(3H,SiCH2CH2CH2NH3
+Br-).
【0042】
(29Si NMR測定)
29SiNMR測定機器には、500MHz Ultra Shield(Bruker)を用い、測定溶媒には重メタノールを使用した。市販の重溶媒中のTMS濃度(0.03vol%)ではピークが検出されなかったため、約10mgのTMSを重溶媒に加えた。測定試料の濃度は10wt%とし、30mM程度になるように緩和剤にトリス(2,4-ペンタンジオナト)クロム(III)を加えた。測定の際、積算回数を128回、緩和時間を10秒に設定した。
【0043】
(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定)
ポンプにChromaster5110(HITACHI)、示差屈折率検出器にChromaster5450(HITACHI)、恒温槽にChromaster Organizer(HITACHI)、カラムオーブンにCTO-20A(島津製作所)を用いた。カラムには、SB-804HQ(Shodex)およびSB-803HQ(Shodex)をこの順番で直列に連結して使用した。溶離液は、酢酸および硝酸ナトリウムがそれぞれ0.5Mの濃度にて溶解した水溶液とメタノールとの混合溶媒(25:75v/v)を使用した。流速は0.75ml/minとし、カラムオーブンの温度は30°Cに設定した。検量線は、校正用ポリエチレングリコール(ジーエルサイエンス製、分子量400、1000、4000、10000、100000)を用いて作製した。
【0044】
(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOFMS)測定)
測定機器には、autoflex maX(Bruker)を用いた。ターゲットプレートにはMTP Anchor Chip TM384BC(Bruker)、ターゲットフレームにはMTP target frameIII(Bruker)を使用した。試料調製は、以下の手順にて行った。まず、十分に溶媒を留去した高分子試料10mg/ml、マトリクス(DHB)10mg/ml、カチオン化剤(トリフルオロ酢酸ナトリウム)1.2mg/mlのメタノール溶液をそれぞれ調製した。これら3つの溶液を30μlずつミクロチューブ内に測り取り、ボルテックスミキサーにて混合した。溶液中の溶質の重量比は、高分子試料:マトリクス:カチオン化剤=25:25:3であった。混合した溶液をターゲットプレート上に一滴滴下し、40°Cで2時間真空オーブンにて乾燥させ、溶媒を完全に除去した。得られた試料にレーザーを照射し測定を行った。測定の際、積算回数は10回とした。レーザーは最大出力の約90~100%とした。
【0045】
(触診による熱硬化の評価)
約10mgの自然吸湿した高分子試料をテフロン(登録商標)シートに載せ、大気下で100°Cにて3時間加熱した。加熱前後の試料をつまようじにて触診することで硬化度合いを評価した。
【0046】
(湿度制御下の水晶振動子マイクロバランス(in-situ QCM)測定)
十分に溶媒を留去した高分子試料2wt%からなるメタノール溶液を調製した。真空紫外光(VUV)照射にてオゾン洗浄したQCM基板(多摩デバイス、5MHz)上にこのメタノール溶液を塗布し、回転数2000rpmで30秒間回転させて膜試料を得た。QCM測定前に電極外側の膜をメタノールで湿らせた綿棒にて拭き取った。QCM基板を測定器(多摩デバイス、THQ-100P-SW型)に取り付け、専用フローセル(多摩デバイス)により密閉し、クールインキュベーター内に設置した。庫内温度は25°Cに設定した。フローセル内にBEL Flow(MicrotracBEL)から窒素と水蒸気を任意の割合で供給することで湿度を制御して、相対湿度0%から90%まで10%刻みに変化させた。なお、セル内の温度は供給する空気の温度で制御し、25°Cとした。
【0047】
(飽和塩を用いたバルクサンプルでの吸湿能測定)
蓋付き秤量瓶にテフロン(登録商標)シートを入れ、風袋を秤量した。その後、テフロン(登録商標)シートに約50mgの自然吸湿した高分子試料を載せて、ベルジャー型真空オーブンにて24時間の真空乾燥を行った。秤量瓶ごと電子天秤にて秤量し風袋との重量差から乾燥時の高分子試料の重量を求めた。その後、秤量瓶の蓋を開けてジップロック(登録商標)に入れた。秤量瓶の蓋と飽和塩溶液も一緒にジップロック内に入れて封をした。ジップロック内の湿度は様々な飽和塩溶液を用いることで14%~97%の間で制御し、ジップロック内に入れた湿度センサRTR-503(T&D)の値をジップロック内の湿度とした。封をして24時間経過後にジップロック内で秤量瓶に蓋をしてから秤量瓶を取り出し、速やかに電子天秤にて秤量瓶の重量を計測した。この操作を繰り返し、様々な湿度に対する吸湿量を測定した。飽和水溶液の溶質として、塩化リチウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウムを使用した(日本工業規格,湿度計-試験方法,JIS B7920)。以下の式より試料の吸湿率を算出した。
【数1】
ここで、m
0は十分に真空乾燥を行った試料の重量であり、m
RHはある相対湿度下に24時間静置した後の試料の重量である。
【0048】
(PAPDMOS-bおよびPAPDMOS-aの評価)
PAPDMOS-bおよびPAPDMOS-aの
29Si-NMRスペクトルをそれぞれ
図2(a)および
図2(b)に示す。T環境のSiに起因する-70ppm付近のピークが観測されないことから、PAPDMOS-bおよびPAPDMOS-aの主鎖は分岐していない(3次元ネットワーク構造を持たない)と判断した。
【0049】
PAPDMOS-bおよびPAPDMOS-aの溶解試験の結果を表1に示す。PAPDMOS-bは、水およびメタノールによく溶解し、水溶性を示すことがわかった。PAPDMOS-aは、水およびメタノールによく溶解し、PAPDMOS-bと同様に水溶性を示した。PAPDMOS-bとは異なり、非プロトン性極性溶媒であるDMSOにも溶解した。
【表1】
【0050】
次に、PAPDMOS-bおよびPAPDMOS-aのMALDI-TOF-MS測定の結果をそれぞれ
図3(a)および
図3(b)に示す。どちらの試料も分子量2000~3000程度をピークトップとし、数百~数万の分子量領域の重合体を含む、幅広いスペクトルが観測された。合成方法によって分子量に大きな違いが生じないことが分かった。分量分布が広いのは、加水分解重縮合によりポリマーを合成しているためであると考えられる。また、観測されたメインピークの間隔は、モノマーユニットの間隔(117.22m/z)と良く一致しており、この結果からも目的の試料を合成できていることが確認された。
【0051】
次に、GPCチャートと解析結果をそれぞれ
図4および表2に示す。どちらの試料においても二つのピークが観測された。これは、それぞれ直鎖状および環状のポリマー由来であると考えられる。PAPDMOS-bは数平均分子量530、重量平均分子量820、分子量分布1.56であった。PAPDMOS-aは数平均分子量780、重量平均分子量1490、分子量分布1.90であった。どちらの試料も重合は進行したものの、分子量は5~6量体程度と低く観測された。MALDI-TOFMS測定にて得られた分子量よりも低分子量に見積もられたのは、アミン基の存在によって試料がカラムに吸着されやすくなり、ポリエチレングリコールにて作成した検量線では適切に校正できなかったためだと考えられる。
【表2】
【0052】
バルク試料の加熱と触診による、簡易的な熱硬化試験を行った。PAPDMOS-bは、加熱により粘度が減少した。一方で、PAPDMOS-aは、室温で粘性液体であったにもかかわらず、100°Cで3時間の加熱後にガラスのような硬さに変化した。硬化後のPAPDMOS-aは、標準大気圧下に放置することで再び粘性液体へと軟化した。加熱することで自然吸湿した水が留去され、このような硬化挙動が観測されたと考えられる。
【0053】
図5は、PAPDMOS-aおよびPAPDMOS-bの吸湿能を電子天秤にて評価した結果を示す。
図5に示すように、どちらの試料も湿度の増加に応じて吸湿量が増え、特に湿度70%以上において非線形的に吸湿量が増加した。吸湿能が高い代表的な高分子であるポリアクリル酸ナトリウムの吸湿率が88%(@90%RH)であることからも18、PAPDMOS-aの吸湿能が優れていると判断できる。PAPDMOS-aとPAPDMOS-bの吸湿量を比較すると、60%RH以上の湿度において吸湿量に差が生じ、PAPDMOS-aの方が吸湿量が大きくなった。90%RHでは、吸湿量に2倍近い差が生じた。吸湿量は、ポリマーの浸透圧と水との親和力によって決まる19。PAPDMOS-bのアミンよりもPAPDMOS-aのアミン塩酸塩の方がイオン密度が大きく、浸透圧も大きい。また、アミンに比べてアミン塩酸塩の方が水との親和性も高い。このため、PAPDMOS-bよりPAPDMOS-aの方が吸湿能が優れていたと考えられる。
【0054】
次に、PAPDMOS-aおよびPAPDMOS-bのQCM測定にて得られた膜の重量変化をそれぞれ
図6(a)および
図6(b)に示す。PAPDMOS-aおよびPAPDMOS-bは、湿度に応じて速やかに吸脱湿の応答を示した。ただし、最高到達湿度である80%RHにおける相対吸湿量は40wt%であり、電子天秤にて得られた吸湿量よりも低かった。これは、膜が高湿度領域で液状化することで基板との接着性が悪くなり、膜の共振周波数を正確に測定できなかったためだと考えられる。
【0055】
(PAPDMOS-HClの評価)
PAPDMOS-HClの1H-NMRスペクトルにおいて、四級アミン由来のプロトンのピークと1.6ppm付近の炭素のプロトンとの比がどちらも2.0:3.0であることから、ほぼ100%のアミンが塩酸塩になったと判断した。PAPDMOS-HClは水やメタノール、DMSOに溶解し、PAPDMOS-aと同様の溶解性を示した。加熱による硬化挙動も観測された。塩基性条件での重縮合にて得られたポリマー(PAPDMOS-b)であっても、塩酸との混合により、塩酸存在下での重縮合にて得られたポリマー(PAPDMOS-a)へと変換できることが明らかとなった。
【0056】
(PAPDMOS-HBrの評価)
PAPDMOS-HBrの
1H-NMRスペクトルにおいて、四級アミン由来のプロトンのピークと1.6ppm付近の炭素のプロトンとの比がどちらも2.0-3.0であることから、ほぼ100%のアミンが臭化水素酸塩になっていると判断した。PAPDMOS-HBrは、水やメタノール、DMSOに溶解し、PAPDMOS-aやPAPDMOS-HClと同様の溶解性であった。PAPDMOSの対アニオンが塩素であっても臭素であっても、同様の溶解性を有することがわかった。また、熱による硬化挙動も観測された。PAPDMOS-HBrの吸湿能を電子天秤にて評価した結果を
図7に示す。比較としてPAPDMOS-aおよびPADMOS-bのデータも併せてプロットした。PAPDMOS-aと同様に、PAPDMOS-HBrも優れた吸湿能を有することが分かった。PAPDMOS-HBrとPAPDMOS-bの吸湿量を比較すると、80%RH以下の湿度においては大きな差は観測されなかったが、80%RH以上の湿度領域でPAPDMOS-HBrの方が大きな吸湿量であった。これは、ポリマーの浸透圧と水との親和力がアミンよりもアミン臭化水素酸塩の方が高いためである。PAPDMOS-HBrとPAPDMOS-aの吸湿量を比較すると、PAPDMOS-aの方が大きな吸湿量であった。NaClとNaBrでは、NaClの方が浸透圧が大きく(日本工業規格,湿度計-試験方法,JIS B7920)、この無機塩の対アニオンによる浸透圧の序列に従うことで、PAPDMOS-HBrよりPAPDMOS-aの方が優れた吸湿能を示したと考えられる。吸湿能は対アニオンの有無や種類に依存することがわかった。
【0057】
(レオメータによる粘弾性測定)
PAPDMOS-a、PAPDMOS-b、PAPDMOS-HCl、PAPDMOS-HBrの室温、湿度0%および80%での貯蔵弾性率を測定した。測定機器にはARES-G2(TAインスツルメント)およびDiscovery HR-2(TAインスツルメント)を用いた。高分子試料を直径8mmのパラレルプレートに載せ、試料チャンバーのカバーを閉めた。試料チャンバー内には窒素ガスもしくは乾燥ガスをフローした。200°Cで30分間加熱して試料の吸湿水を十分に留去した後で、チャンバーのカバーを開けて試料周辺を確認し、プレートから垂れた試料をプレート上に戻した。その後、試料上部のプレートを降ろしてパラレルプレートで試料を挟み込んだ。最終的な試料ギャップは、0.5mm~1mmであった。
【0058】
PAPDMOS-a、PAPDMOS-b、PAPDMOS-HCl、PAPDMOS-HBrの室温、湿度0%および80%での貯蔵弾性率の測定結果を下記表3に示す。湿度80%(吸湿)時と湿度0%(乾燥)時の弾性率を比較すると、PAPDMOS-aは約1憶倍弾性率が変化することが分かった。また、対イオンの種類によっても硬化時の弾性率が変化することも分かった。
【表3】
【0059】
(接着試験)
PAPDMOS-aの接着試験を行い、その接着力を評価した。
図8は、接着試験の試験片作製の概要を示す。接着力は引張せん断にて評価した。基板には、端に直径4mmの穴の開いたスライドガラスS1111(松浪)を使用した。オゾン酸化あるいはアセトン拭きにて洗浄したガラス基板に1.5mm四方サイズのダクトシール(3M)、厚さ0.19mmを貼付した。このダクトシールにはあらかじめ中央部に穴あけパンチにて直径6mmの穴をあける処理を施した。シール中央部の窪みに自然吸湿させた試料を載せ、もう一枚のガラス基板を処理面オゾン酸化あるいはアセトン拭きを行った面が試料と接する向きにて被せた。接着箇所の上に約250gのおもりを載せて、真空オーブンにて100°Cで3時間加熱し試料を硬化させた。その後、真空下で30分間放冷したものを接着力評価のテストピースとして用いた。実験台のアングルに固定されたフックをテストピースの一端の穴に入れ、もう一端の穴にデジタルフォースゲージDST500N(IMADA)のフックを入れ、実験台に平行方向に引張することで硬化試料の接着力を測定した。真空オーブンによる試料の加熱乾燥プロセスを省略することで、吸湿試料の接着力を測定した。
【0060】
デジタルフォースゲージにて測定したPAPDMOS-aの接着力を下記表4に示す。加熱乾燥処理前後でフォースゲージの値は約20~30倍増加した。また、基板にオゾン酸化による親水化処理を行うと接着性能が向上し、デジタルフォースゲージの限界値である50N以上の値を示した。得られたフォースゲージの値より、以下の式から試料の接着力を算出した。
【数2】
【表4】
【0061】
アセトン拭きのみの基板でのPAPDMOS-aの接着力は1.4MPa、オゾン酸化処理基板では1.8MPa以上であった。1MはPa/1cm2の面積あたり約10kgの重りをつりさげる接着力である。剥がすことができる接着材料、いわば仮固定用の接着材料としては1MPa以上の接着力を有していれば十分である。また、加熱乾燥により接着させたのちに、高湿度(80%RH)に一晩さらすとPAPDMOS-aの接着力は基板の自重にて剥離するまで減少した。これらの結果から、PAPDMOS-aの硬化現象は仮固定用として接着材料に有用であることが分かった。
【0062】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示のポリシロキサンは、接着剤および湿度センサとして利用できる。
【符号の説明】
【0064】
10 湿度センサ、 12 基材、 14 感湿膜。