(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】箱のブランクシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 5/42 20060101AFI20250131BHJP
B65D 5/20 20060101ALI20250131BHJP
B65D 5/62 20060101ALI20250131BHJP
B31B 50/22 20170101ALI20250131BHJP
B31B 100/00 20170101ALN20250131BHJP
B31B 110/35 20170101ALN20250131BHJP
B31B 120/50 20170101ALN20250131BHJP
【FI】
B65D5/42 F
B65D5/20 Z
B65D5/62 A
B31B50/22
B31B100:00
B31B110:35
B31B120:50
(21)【出願番号】P 2020175723
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】595091779
【氏名又は名称】米沢印刷紙業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】米澤 正喜
(72)【発明者】
【氏名】米澤 葉子
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055641(JP,A)
【文献】実開平06-027626(JP,U)
【文献】特開2005-047590(JP,A)
【文献】国際公開第2005/092716(WO,A1)
【文献】特開2018-051800(JP,A)
【文献】実開昭49-128635(JP,U)
【文献】米国特許第07032426(US,B2)
【文献】実開昭57-134213(JP,U)
【文献】特開2020-090321(JP,A)
【文献】特開2006-272680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/42
B65D 5/20
B65D 5/62
B31B 50/22
B31B 100/00
B31B 110/35
B31B 120/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形の底板部(11)と、前記底板部(11)の各辺にそれぞれ隣接配置された矩形の側板部(12)とを有する、箱(10)のブランクシート(S)において、
組み立てられた箱(10)の内側にて前記底板部(11)と前記側板部(12)の境界線となる第1の仕上がりライン(L)上に所定の間隔で、ブランクシート(S)の厚さ全体に亘って切り込まれた線分状の複数の第1の切抜部(1)と、
前記第1の仕上がりライン(L)から前記ブランクシート(S)の厚さ(t)と同じ距離(d1)だけ前記側板部(12)の方に離間した第2の仕上がりライン(M)上に所定の間隔で、ブランクシート(S)の厚さ全体に亘って切り込まれた線分状の複数の第2の切抜部(2)とを有し、
前記第1の切抜部(1)の各々と前記第2の切抜部(2)の各々とが、前記第1及び第2の仕上がりライン(L、M)の方向において互い違いに配置されて
おり、
前記ブランクシート(S)の面上にて前記第1及び第2の切抜部(1、2)の延在方向に垂直な方向から視て、前記第1の切抜部(1)の各端点(1a、1b)の近傍と、前記第2の切抜部(2)の各端点(2b、2a)の近傍とが、所定の長さ(d2)だけ重なっていることを特徴とするブランクシート。
【請求項2】
前記重なっている長さ(d2)が、前記ブランクシート(S)の厚さ(t)と同じであることを特徴とする請求項
1に記載のブランクシート。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のブランクシートを製造するための方法であって、
前記ブランクシート(S)の輪郭線の少なくとも一部を打ち抜くための打抜き工程を有し、前記打抜き工程において、同時に前記第1の切抜部(1)及び前記第2の切抜部(2)を打ち抜くことを特徴とするブランクシートの製造方法。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載のブランクシート(S)における前記側板部(12)を前記底板部(11)に対して直角に折り曲げ、隣合う前記側板部(12)同士を固定して組み立てられた箱。
【請求項5】
前記箱(10)が、貼り箱用の芯箱であることを特徴とする請求項
4に記載の箱。
【請求項6】
請求項
5に記載の箱(10)と、前記箱(10)に貼り付けられた貼り紙とを備えた貼り箱。
【請求項7】
請求項
3に記載のブランクシートの製造方法によって作製されたブランクシートを用いて箱(10)を組み立て、組み立てられた箱(10)に貼り紙を貼ることによって貼り箱を得る貼り箱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱のブランクシート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙器の一種として、貼り箱が知られている。貼り箱は、チップボールなどの板紙からブランクシートを作製し、ブランクシートを箱状に組み立てて芯箱を形成し、芯箱に化粧紙などの貼り紙を貼り付けることにより作られる。
【0003】
図13及び
図14を参照して、直方体の貼り箱の製造方法の従来例を概略的に説明する。
図13(a)は、従来のブランクシートを作製するために切り出された矩形の板紙Cの平面図である。板紙Cは、1つの矩形の底板部110と、底板部110の各辺にそれぞれ隣接配置された4つの矩形の側板部120と、4つの隅部130とを有する。先ず、V溝加工機を用いてV溝140を形成する加工を行う。V溝140は、各部110、120、130の境界線上に形成される。
図13(b)は、(a)のI-I断面を概略的に示す。板紙Cは、一例として、芯箱の外面を形成する薄い外面紙aと、内面を形成し実質的に板紙Cを構成する厚い内面紙bの2層構成となっている。V溝140は、外面紙aを残して内面紙bのみに刻設され、両側の溝壁が鉛直方向に対して約45°の傾斜を有する。1本のV溝140を形成するために、通常、V溝加工機を2回通過させる必要がある。その後、
図13(c)に示すように、4つの隅部130を打抜き機で切り取ることによりブランクシートSが作製される。
【0004】
図14(a)は、
図13(c)のブランクシートSから芯箱100を組み立てる工程を示している。V溝140を内側にして、各側板部120を底板部110に対して直角に折り曲げる。その後、隣合う側板部120同士をテープなどで固定する。全ての側壁部120を固定すると、
図14(b)に示す芯箱100が完成する。その後、
図14(b)に示すように、芯箱100の外側に貼り紙Dを貼ることによって、
図14(c)に示すように貼り箱200が完成する。貼り箱200は、上方に開口した箱である。身箱と蓋箱の双方を貼り箱で作製し、これらを組み合わせて用いることが一般的である。
【0005】
紙器において、直角に折り曲げる部分にこのようなV溝を形成することは周知であり、例えば特許文献1~3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭53-5220号公報
【文献】実開昭61-110518号公報
【文献】実用新案登録第3197625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したV溝形成を含む箱の製造方法には、以下のような問題点がある。
・V溝を刻設するので、紙粉が出る(粉塵処理の問題)。
・V溝加工機のV字刃先が摩耗するので、研ぎ加工が頻繁に必要である(メンテナンスの問題)。
・ブランクシートを打ち抜くための打抜き加工機に加えてV溝加工機が必要であり、V溝加工機は高価である(設置場所及び機械コストの問題)。
・1本のV溝形成のためにV溝加工機を2回通過させる必要がある(作業負担の問題)。
【0008】
上記の問題点を解決するべく本発明の目的は、V溝を形成することなく、V溝を形成する場合と同等に、底壁部に対して側壁部が直角に折り曲げられた箱を組立てることができる箱のブランクシート及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。なお、括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
【0010】
・ 本発明の態様は、多角形の底板部(11)と、前記底板部(11)の各辺にそれぞれ隣接配置された矩形の側板部(12)とを有する、箱(10)のブランクシート(S)において、
組み立てられた箱(10)の内側にて前記底板部(11)と前記側板部(12)の境界線となる第1の仕上がりライン(L)上に所定の間隔で、ブランクシート(S)の厚さ全体に亘って切り込まれた線分状の複数の第1の切抜部(1)と、
前記第1の仕上がりライン(L)から前記ブランクシート(S)の厚さ(t)と同じ距離(d1)だけ前記側板部(12)の方に離間した第2の仕上がりライン(M)上に所定の間隔で、ブランクシート(S)の厚さ全体に亘って切り込まれた線分状の複数の第2の切抜部(2)とを有し、
前記第1の切抜部(1)の各々と前記第2の切抜部(2)の各々とが、前記第1及び第2の仕上がりライン(L、M)の方向において互い違いに配置されており、
前記ブランクシート(S)の面上にて前記第1及び第2の切抜部(1、2)の延在方向に垂直な方向から視て、前記第1の切抜部(1)の各端点(1a、1b)の近傍と、前記第2の切抜部(2)の各端点(2b、2a)の近傍とが、所定の長さ(d2)だけ重なっているいることを特徴とする。
・ 上記態様において、前記重なっている長さ(d2)が、前記ブランクシート(S)の厚さ(t)と同じであることを特徴とする。
・ 上記いずれかの態様のブランクシートを製造するための方法であって、
前記ブランクシート(S)の輪郭線の少なくとも一部を打ち抜くための打抜き工程を有し、前記打抜き工程において、同時に前記第1の切抜部(1)及び前記第2の切抜部(2)を打ち抜くことを特徴とする。
・ 本発明のさらに別の態様は、上記いずれかの態様のブランクシート(S)における前記側板部(12)を前記底板部(11)に対して直角に折り曲げ、隣合う前記側板部(12)同士を固定して組み立てられた箱である。また、前記箱(10)が、貼り箱用の芯箱であることを特徴とする。
・ 本発明のさらに別の態様は、前記箱(10)と、前記箱(10)に貼り付けられた貼り紙とを備えた貼り箱である。
・ 本発明のさらに別の態様は、上記いずれかの態様のブランクシートの製造方法によって作製されたブランクシートを用いて箱(10)を組み立て、組み立てられた箱(10)に貼り紙を貼ることによって貼り箱を得る貼り箱の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の箱のブランクシートによれば、V溝を形成せずに、V溝を形成する場合と同等の品質で、底板部に対して側板部が直角に折り曲げられた箱を組立てることができる。したがって、V溝を形成する場合における上記の各問題(粉塵処理、メンテナンス、設置場所及び機械コスト、作業負担)を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による箱のブランクシートの平面図である。
【
図3】
図3(a)(b)は、それぞれ
図2のA-A断面及びB-B断面を概略的に示す。
図3(a1)(a2)及び
図3(b1)(b2)は、ブランクシートから箱を組み立てるときのA-A断面及びB-B断面のそれぞれにおける変化を模式的に示した図である。
【
図4】
図4は、
図1のブランクシートから組み立てられた第1の実施形態における箱の斜視図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態のブランクシートにおける、
図2と同様の拡大平面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態における箱の斜視図を示す。
【
図7】
図7(a)は、上述した本発明によるブランクシートを用いた貼り箱の製造方法の一例を概略的に示したフロー図であり、(b)は比較のために示した
図13及び
図14に示した従来技術のフロー図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明の第3の実施形態による箱のブランクシートの平面図であり、(b)は(a)のC-C断面を概略的に示した図である。
【
図9】
図9(a)は、
図8に示したブランクシートSから芯箱10を組み立てる方法を説明するための図であり、(b)は(a)のD-D断面図であり、(c)は(a)のE-E断面図であり、(d)は(c)の最終形態となる前の折り曲げ中の状態を示した図である。
【
図10】
図10(a)は、外面紙の材料シートの平面図であり、(b)は(a)のF-F断面図である。
【
図11】
図11(a)は、貼合せ工程を示す平面図であり、(b)は(a)のG-G断面図である。
【
図12】
図12(a)は、次の打抜き工程を示す平面図であり、(b)は(a)H-H断面を概略的に示す図である。
【
図13】
図13(a)は、従来のブランクシートを作製するために切り出された矩形の板紙の平面図であり、(b)は、(a)のI-I断面を概略的に示す。
【
図14】
図14(a)(b)(c)は、
図13(c)のブランクシートSから貼り箱を作製する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例を示した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。各実施形態において同じ又は類似する構成要素には同じ符号を付している。
【0014】
本発明による箱のブランクシートは、好ましくは、貼り箱の芯箱用のブランクシートとして適用される。よって、以下では、貼り箱の芯箱用のブランクシートを例として用いて説明する。しかしながら、本発明は貼り箱に限定されるものではなく、特許文献1、2のように外側に貼り紙を貼らずに用いる箱としても適用可能である。また、本発明は、身箱にも蓋箱にも適用可能である。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態による箱のブランクシートSの平面図である。
図2は、
図1のブランクシートSの右上部分の拡大図である。ブランクシートSは、所定の厚さを有するチップボールなどの板紙を、所定の輪郭形状となるように例えば打抜き加工することによって作製される。貼り箱の芯箱用の板紙の厚さは、例えば約1mm~約3mmであり、所望される箱の大きさ及び強度に応じて適宜選択される。
図1のブランクシートSは、直方体の箱を組み立てるためのものである。したがって、ブランクシートSは、1つの矩形の底板部11と、底板部11の各辺にそれぞれ隣接配置された4つの矩形の側板部12とから構成されている。点線で示す4つの隅部13は、既に打抜き工程において切り取られている。
【0016】
なお、本発明によるブランクシートSから組み立てられる箱は、直方体に限られない。直方体以外の多角柱の箱の場合、ブランクシートSの底板部11の形状が、三角形、五角形、六角形、八角形などの多角形となる。その場合、側板部12は、底板部11の多角形の各辺に隣接配置される矩形である。
【0017】
本発明のブランクシートSにおいては、底板部11と側板部12との境界領域の全体に亘って線分状の複数の第1の切抜部1と、線分状の複数の第2の切抜部2とが形成されている(太線で示す)。第1の切抜部1及び第2の切抜部2は、所定の間隔で離間した2つの平行な仮想ライン上に延在するように、それぞれ配置されている(後に
図2で詳述する)。第1及び第2の切抜部1、2は、ブランクシートSの面方向に所定の長さを有し、ブランクシートSの厚さ全体に亘って切り込まれている。すなわち、第1及び第2の切抜部1、2の部分では底板部11と側壁部12とは互いに切り離されている。さらに、第1の切抜部1の各々と第2の切抜部2の各々とは、底板部11の辺に沿って1つずつ互い違いに配置されている。そして、第1の切抜部1と第2の切抜部2との間には、底板部11と側壁部12とを連結している連結部3が残されている。
【0018】
図1では、第1の切抜部1は、底板部11の長辺に沿って3つずつ、短辺に沿って2つずつ配置され、第2の切抜部2は、底板部11の長辺に沿って4つずつ、短辺に沿って3つずつ配置されている。しかしながら、これは一例であり、各切抜部1、2の長さ、延在方向において隣合う切抜部1、2の間隔、1つの辺に配置される切抜部1、2の数は、底板部11の辺の長さに応じて適切に設定される。例えば、底板部11の長辺が126mm、短辺が90mm、第1及び第2の切抜部1、2の長さが18mmである。また、図示の例では、第1の切抜部1と第2の切抜部2とは同じ長さであり、延在方向において隣合う切抜部1、2の間隔も全て同じであるが、これらは同じである必要はない。
【0019】
これらの線分状の第1及び第2の切抜部1、2は、ブランクシートSの輪郭線の少なくとも一部を打ち抜く打抜き工程において、同時に打ち抜くことによって形成することができる。例えば、隅部13を切り取る工程で、同じ打抜き型を用いて隅部13の切取りと切抜部1、2の形成とを同時に行うことができる。例えば、所定の長さの直線の刃により打ち抜くことができる。
【0020】
図2を参照して、第1の切抜部1、第2の切抜部2及び連結部3についてさらに詳細に説明する。
【0021】
各々所定の長さをもつ複数の第1の切抜部1は、一点鎖線で示す第1の仕上がりラインL上に所定の間隔で形成されている。第1の仕上がりラインLは、説明のための仮想的なラインであり、ブランクシートSから箱を組み立てたとき、その箱の内側において底板部11と側板部12の境界線となる直線である。
【0022】
各々所定の長さをもつ複数の第2の切抜部2は、一点鎖線で示す第2の仕上がりラインM上に所定の間隔で形成されている。第2の仕上がりラインMも、説明のための仮想的なラインであり、第1の仕上がりラインLから距離d1だけ側板部12の方に離間した直線である。この距離d1は、ブランクシートSの厚さと同じである。よって、第1の仕上がりラインLと第2の仕上がりラインMは、互いに平行に延在している。
【0023】
第1の切抜部1の各々と第2の切抜部2の各々とは、第1及び第2の仕上がりラインL、Mの方向において1つずつ互い違いに配置されている。すなわち、第1の切抜部1と第2の切抜部2とは、並列に配置されておらず、延在方向において各切抜部1、2のほぼ全長分だけずれて交互に配置されている。
【0024】
第1の切抜部1は、両端に端点1a、1bをそれぞれ有し、第2の切抜部2は、両端に端点2a、2bをそれぞれ有している。第1の実施形態では、ブランクシートSの面上にて第1及び第2の切抜部1、2の延在方向に垂直な方向(矢印Xの方向)から視て、第1の切抜部の各端点1a、1bと、第2の切抜部の各端点2b、2aとが同じ位置にある。例えば、X方向から視て、第1の切抜部1の端点1aと第2の切抜部2の端点2bとが同じ位置にあり、また、第1の切抜部の端点1bと第2の切抜部の端点2aとが同じ位置にある。そして、同じ位置にある端点同士の間の領域が連結部3となる。連結部3における端点1a(又は1b)と端点2b(又は2a)とを結ぶ線分は、切抜部1、2の延在方向に対して垂直である。実際の連結部3は、ブランクシートSの厚さ方向において連結されている部分も含む。
【0025】
図3(a)(b)は、
図2のA-A断面及びB-B断面を概略的にそれぞれ示している。参考のために、第1の仕上がりラインL、第2の仕上がりラインM、及び連結部3(点線)の位置も示している。
【0026】
図3(a)のA-A断面では、第1の仕上がりラインLの位置では底板部11が連続しており、第2の仕上がりラインMの位置に第2の切抜部2が存在する。図示のように、ラインLとラインMの距離d1は、ブランクシートの厚さtと同じである。一方、
図3(b)のB-B断面では、第1の仕上がりラインLの位置に第1の切抜部1が存在し、第2の仕上がりラインMの位置では側板部12が連続している。
【0027】
図3(a1)(a2)及び
図3(b1)(b2)は、
図1のブランクシートSから箱を組み立てるときのA-A断面及びB-B断面のそれぞれにおける変化を模式的に示した図である。ブランクシートSから箱を組み立てるときは、側板部12を底板部11に対して直角となるように折り曲げる。このとき、ブランクシートSに表裏の区別がない場合は、いずれの方向に折り曲げてもよい。別の例として、ブランクシートSの一方の面が、板紙に薄い白色紙を貼った面であり、他方の面が板紙自体の面(例えば灰色)である場合、白色紙を貼った面の方に側板部12を折り曲げる。これにより、組み立てられた箱の内側が白色となる。
【0028】
図3(a1)に示すように、A-A断面においては、側板部12が矢印r1のように回転移動する。この回転移動は、第2の切抜部2の両端に位置する連結部3を軸として行われる。これにより、第2の切抜部2において底板部11と側板部12が分離し、側板部12の端部は、矢印r2のように連結部3を軸として回転して底板部11の表面上に乗り上げる。最終的に、
図3(a2)に示すように、側板部12が底板部11の端部に乗った形態となる。この最終形態において、第2の仕上がりラインMは、第1の仕上がりラインLと同じ位置となる。
【0029】
図3(b1)に示すように、B-B断面においても同様に、側板部12が矢印r1のように回転移動する。この回転移動は、第1の切抜部1の両端に位置する連結部3を軸として行われる。これにより、第1の切抜部1において底板部11と側板部12が分離し、側板部12の端部は、矢印r3のように連結部3を軸として回転して底板部11の表面から落ち込む。最終的に、
図3(b2)に示すように、側板部12の端部が底板部11の側面に当接した形態となる。この最終形態において、第2の仕上がりラインMは、第1の仕上がりラインLと同じ位置となる。
【0030】
図3(a2)と
図3(b2)の最終形態の断面を比べると、底板部11と側板部12の相対的な位置関係は異なるが、内面(箱の内側)及び外面(箱の外側)に形成された直角の頂点の位置及び輪郭形状は一致している。
【0031】
図4は、
図1のブランクシートSから組み立てられた第1の実施形態における箱10の斜視図を示している。箱10は、上方に開口した直方体の箱である。
図3に示したように側板部12を直角に折り曲げた後、隣合う側板部12同士の上端近傍をテープ15などで固定している。
【0032】
理想的には、組み立てられた箱10において、第1の切抜部1及び第2の切抜部2の位置に隙間が無く、1本の線のように見えることが好ましい。しかしながら、実際には、第1の切抜部1及び第2の切抜部2が若干開いて隙間となり易い(
図4では誇張して太線で示している)。このような隙間が問題とならない用途では、十分に使用することができる。
図4の箱10を芯箱として、上述した
図14(b)(c)のように芯箱の上に貼り紙を貼ることによって貼り箱が得られる。さらに、身箱と蓋箱をそれぞれ貼り箱で形成し、組み合わせることで蓋付きの箱が得られる。
【0033】
図5は、本発明の第2の実施形態のブランクシートSにおける、
図2と同様の拡大平面図である。第2の実施形態において第1の実施形態と異なる点は、互い違いに配置された第1の切抜部1と第2の切抜部2の各々の端部同士が所定の長さd2だけ重なっている点である。
【0034】
すなわち、第2の実施形態では、ブランクシートSの面上にて第1及び第2の切抜部1、2の延在方向に垂直な方向(矢印Xの方向)から視て、第1の切抜部の各端点1a、1bの近傍と、第2の切抜部の各端点2b、2aの近傍とが長さd2だけ重なっている。例えば、X方向から視て、第1の切抜部1の端点1aの近傍と第2の切抜部2の端点2bの近傍とが長さd2だけ重なっており、また、第1の切抜部の端点1bの近傍と第2の切抜部の端点2aの近傍とが長さd2だけ重なっている。そして、重なっている部分の間の矩形の領域が連結部3となる。第2の実施形態では、連結部3の大きさは、第1の実施形態に比べて大きくなる。矩形の連結部3において、端点1a(又は端点1b)と端点2b(又は端点2a)とを結ぶ対角線は、切抜部1、2の延在方向に対して傾斜している。実際の連結部3は、ブランクシートSの厚さ方向において連結されている部分も含む。
【0035】
重なっている長さd2は、ブランクシートSの厚さtと同じであることが好ましい。別の例として、長さd2は、零より大きく厚さtより小さい範囲であってもよい。長さd2が零の場合は、第1の実施形態と同じである。
【0036】
図6は、第2の実施形態における箱10の斜視図を示している。箱10の組立て方法は、
図3(a1)(a2)(b1)(b2)を参照して説明した通りである。
【0037】
第2の実施形態では、連結部3において、
図3(a1)の側板部12の乗り上げと、
図3(b1)の側板部12の落ち込みが同時に生じることになる。それによって、連結部3において、第1の切抜部の端点1a(又は1b)と第2の切抜部の端点2b(又は2a)とを結ぶ斜めの対角線に沿って底板部11と側板部12を引き寄せる引張力が作用する。その結果、組み立てられた箱10における第1の切抜部1及び第2の切抜部2の位置に隙間が生じず、1本の線として見える。したがって、第2の実施形態では、従来技術のV溝形成を行った場合と同等の精度のよい美観のある折り曲げ部分を得ることができる。このような箱10は、貼り箱の芯箱として好適である。
図6の箱10を芯箱として、上述した
図14(b)(c)のように芯箱の上に貼り紙を貼ることによって貼り箱が得られる。さらに、身箱と蓋箱をそれぞれ貼り箱で形成し、組み合わせることで蓋付きの箱が得られる。
【0038】
図7(a)は、上述した本発明によるブランクシートSを用いた貼り箱の製造方法の一例を概略的に示したフロー図であり、(b)は比較のために示した
図13及び
図14に示した従来技術のフロー図である。以下では、説明のために、上述した図面中の符号を用いる。
【0039】
ここでは、隅部13を含む輪郭形状の板紙を準備するまでの前工程は省略する。本発明では、ステップS11において、ブランクシートSの打抜きを行う。この打抜き工程では、隅部13の切取りと、上述した第1及び第2の切抜部1、2の切抜きを同時に行うことができる。打抜き工程には、ブランクシートSの輪郭線全体を打ち抜く場合と、隅部13のみを除去すればよい場合のいずれも含む。いずれにしても、ブランクシートSの輪郭線の少なくとも一部を打ち抜く打抜き工程において、第1及び第2の切抜部1、2の打抜きも行うことができる。したがって、第1及び第2の切抜部1、2の形成は、従来の製造方法に新たな工程を追加する必要が無く、従来の製造方法の打抜き工程で行うことができる。その場合の抜き型には、ブランクシートSの輪郭線を打ち抜く刃に加えて第1及び第2の切抜部1、2を打ち抜く刃を設ける。
【0040】
次に、ステップS12において、芯箱10を組み立てる。この組立て工程では、側板部12を底板部11に対して直角となるように折り曲げ、隣合う側板部12同士をテープ15などで固定する。その後、ステップS13において、芯箱10に貼り紙を貼り付けて貼り箱を完成する。本発明では、前工程において位置決め用マーク付けなどに用いる印刷機以外に、打抜き機のみがあれば箱の製造が可能である。
【0041】
一方、
図7(b)の従来技術では、ブランクシートSから隅部130を切り取る打抜き工程の前に、V溝形成を行う。このために、印刷機及び打抜き機以外に高価なV溝加工機が必要となる。
【0042】
図8~
図12を参照して、本発明の第3の実施形態による箱のブランクシートS及びその製造方法並びにそのブランクシートSを用いた箱の製造方法を説明する。
【0043】
図8(a)は、本発明の第3の実施形態による箱のブランクシートSの平面図であり、(b)は(a)のC-C断面を概略的に示した図である。
【0044】
第3の実施形態のブランクシートSは、上述した実施形態と同様に、1つの矩形の底板部11と、底板部11の各辺にそれぞれ隣接配置された4つの矩形の側板部12とから構成されている。点線で示す4つの隅部13は、既に打抜き工程において切り取られている。なお、底板部11は、多角形でもよい。第3の実施形態では、
図8(b)に示すように、ブランクシートSが、ブランクシートS全体の厚さとほぼ同じ厚さtを有するチップボールなどの板紙である内面紙Sbと、内面紙Sbに比べて極めて薄い外面紙Saとを貼り合わせて形成されている。
図8(b)では、分かり易くするために外面紙Saの厚さを拡大して示しているが、外面紙Saの厚さは、ブランクシートS全体の厚さにおいてほぼ無視できる程度である。また、
図8(b)では、外面紙Saと内面紙Sbを貼り合わせる接着剤(例えば、にかわ)17の層も厚さを拡大して示しているが、実際はブランクシートS全体の厚さにおいて無視できる程度である。
【0045】
薄い方の外面紙Saは全体的に一枚の連続した紙となっている。外面紙Saは、底板部11を形成する外面底板部11aと、外面底板部11aの各辺にそれぞれ隣接配置され側板部12を形成する矩形の外面側板部12aとを具備する。
【0046】
一方、厚い方の内面紙Sbは、互いに分離されて配置された複数の板紙から構成されている。内面紙Sbは、底板部11を形成する内面底板部11bと、内面底板部11bの各辺から内面紙Sbの厚さtと同じ距離d3だけ離間してそれぞれ配置され、側板部12を形成する内面側板部12bとを具備する。
【0047】
したがって、
図8(b)のC-C断面に示すように、底板部11と側板部12の境界線に沿って距離d3の幅をもつ溝14が形成されており、この部分には内面紙Sbは存在せず、外面紙Saのみで繋がっている。この境界線に沿って、距離d3(すなわち外面紙Saの厚さt)よりも大きい幅で剥離ニス16が、外面紙Sa上に印刷により塗布されている。
図8(b)では分かり易くするために、剥離ニス16の厚さを拡大して示しているが、実際はブランクシートS全体の厚さにおいて無視できる程度である。
【0048】
図9(a)は、
図8に示したブランクシートSから、例えば貼り箱の芯箱である箱10を組み立てる方法を説明するための図である。仕上がりの箱10は、上述した
図4及び
図6に示したものと同様の直方体となるが、
図9(a)では、説明のために、向かって左側の側板部12がまだ折り曲げられていない状態を示している。
【0049】
図9(b)は、(a)のD-D断面を概略的に示している。この図は、
図8(b)と同様の図であるが、接着層及び剥離ニスの層は図示を省略している。
図9(c)は、(a)のE-E断面を概略的に示している。側板部12が底板部11に対して直角となるように折り曲げられている。この最終形態では、内面側板部12bが内面底板部11bの端部に乗った状態となる。
【0050】
図9(d)は、(c)の最終形態となる前の折り曲げ中の状態を示した図である。矢印r2のように、内面底板部11bの縁を軸として内面側板部12bが回転移動して、内面底板部11bの端部上に内面側板部12bが乗り上げる。箱10が、貼り箱の芯箱である場合、上述した実施形態と同様に、芯箱の上に貼り紙を貼ることによって、貼り箱が得られる。
【0051】
図10~
図12を参照して、
図8に示した第3の実施形態のブランクシートSの製造方法を説明する。
【0052】
図10(a)は、外面紙Saの材料シート(カード紙等)の平面図であり、(b)は(a)のF-F断面を概略的に示した図である。この時点では、外面紙Saに、まだ隅部13aも含まれている。実際にはさらに大きい面積の材料シートを準備し、後述する打抜き工程で
図8に示したような輪郭線となるように打ち抜くが、ここでは本発明の主要部に関係する部分のみを簡略的に説明する。この時点では、内面紙Sbはまだ貼り付けられていない。
【0053】
先ず、
図10(a)に示すように、剥離ニス印刷工程において、外面紙Sa上に、外面底板部11aと外面側板部12aとの境界線(
図10(a)に点線Pで示す)に沿って、内面紙Sbの厚さtよりも大きい幅で剥離ニス16を印刷する。剥離ニスは、外面紙Saの同じ箇所に例えば2回以上繰り返し印刷すると、その上に接着剤で内面紙Sbを貼り合わせても、接着されずにその箇所は層間剥離を生じる。なお、外面紙Sa及び剥離ニス16の厚さは、誇張して描いている。
【0054】
図11(a)は、次の貼合せ工程を示す平面図であり、(b)は(a)のG-G断面を概略的に示す図である。貼合せ工程では、外面紙Saにおける剥離ニス16を印刷した面の全体に膠などの接着剤17を塗布し、内面紙Sbの板紙を貼り合わせる。この時点では、内面紙Sbに、まだ隅部13bも含まれている。なお、外面紙Sa、剥離ニス16及び接着剤17の厚さは、誇張して描いている。
【0055】
図12(a)は、次の打抜き工程を示す平面図であり、(b)は(a)H-H断面を概略的に示す図である。打抜き工程では、剥離ニス16上において、外面紙Saを残して内面紙Sbのみの打ち抜きを行う。内面紙Sbの打ち抜きは、2本の切り込み線18を形成するように行う。2本の切抜線18は、所定の距離を空けて離間した平行線であり、その距離d3は、内面紙Sbの厚さtと同じとする。2本の切抜線18のうち内側の切抜線が、
図10(a)に点線Pで示した外面底板部11aと外面側板部12aとの境界線上に位置する。
【0056】
この打抜き工程において、同時に、隅部13も打ち抜き除去され、その他の輪郭線も打ち抜きにより形成される。
【0057】
最後に、溝形成工程において、2本の切抜線18の間にある内面紙Sbを取り除くことによって、上述した
図8(b)に示した溝14を形成する。
【0058】
上述した実施形態と同様に、第3の実施形態でも、位置決め用マーク付け及び剥離ニス塗布に用いる印刷機以外に、打抜き機のみがあれば箱の製造が可能であり、高価なV溝加工機は不要である。
【0059】
本発明によれば、V溝形成を行う従来技術と同等の品質を有する箱を低コストで実現することができる。
【0060】
以上に述べた本発明の各実施形態は、一例であり、本発明の主旨に沿った範囲内で多様な変形形態が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 第1の切抜部
1a、1b 端点
2 第2の切抜部
2a、2b 端点
3 連結部
10 芯箱
11 底板部
12 側板部
13 隅部
14 溝
15 テープ
16 剥離ニス
17 接着剤
100 芯箱
L 第1の仕上がりライン
M 第2の仕上がりライン
P 境界線
S ブランクシート
C 板紙
D 貼り紙
t 厚さ
d1、d2、d3 距離
r1、r2、r3 移動方向
a、Sa 外面紙
b、Sb 内面紙