(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】港湾業務支援システム、港湾業務支援方法、港湾業務支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20240101AFI20250203BHJP
【FI】
G06Q10/08
(21)【出願番号】P 2024131883
(22)【出願日】2024-08-08
【審査請求日】2024-08-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524299225
【氏名又は名称】越智 聡
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 聡
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-072951(JP,A)
【文献】特開2002-015044(JP,A)
【文献】特開2001-282900(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138127(WO,A1)
【文献】特開2002-189781(JP,A)
【文献】特開2004-302989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
港湾業務である輸出入業務及び入出港業務のそれぞれに対応する1又は複数の業務フロー
情報を記憶する記憶部を備え、
前記業務フロー情報は、複数のステータスと、当該ステータスに紐づけられた1又は複数の手続情報と、を有し、
前記輸出入業務に応じた荷物情報の登録を受け付け、荷物の識別情報及び、前記輸出入業務に対応する業務フロー情報に紐づけることで業務フロー管理を開始し、
前記入出港業務に応じた
入出港情報の登録を受け付け、
船舶の識別情報
を含む船舶情報及び、前記入出港業務に対応する業務フロー情報に紐づけることで業務フロー管理を開始する登録部と、
前記入出港情報は、入出港日と、港湾情報と、を含み、
前記荷物の識別情報により特定される荷物について、当該荷物を輸送する船舶の予約業務のステータスに紐づけられた前記手続情報の手続処理を実行することで、前記荷物情報と前記船舶情報を紐づけする手続処理部と、
前記荷物に付与され、読取られた前記荷物の識別情報及び、前記船舶の位置情報が前記港湾情報に設定された所定エリア内で検出された前記船舶の識別情報を取得
し、
前記船舶の識別情報と併せて取得したタイムスタンプに応じて前記船舶の識別情報と紐づけられた前記入出港情報の前記入出港日を調整する取得部と、
前記荷物情報に対応付けられた前記船舶の入出港日を取得し、前記入出港日に対する作業日及び、前記作業日に対する手続期限を算出する算出部と、を備える、港湾業務支援システム。
【請求項2】
前記手続処理部は、前記業務フロー
情報のステータスに応じた手続書類を
前記荷物情報又は前記入出港情報に基づき生成し、当該手続書類を提出する手続処理を実行する、請求項1に記載の港湾業務支援システム。
【請求項3】
前記記憶部は、
法令チェックテーブルを含む検証チェックテーブルを格納し、
前記法令チェックテーブルは、前記手続情報に対応する法令を記憶し、法令による定められる前記手続情報の項目に応じた提出期限が設定され、
前記法令チェックテーブルを参照し、
前記手続情報の特定項目を検証
し、前記提出期限を出力する検証部を備える、請求項2に記載の港湾業務支援システム。
【請求項4】
前記業務フロー
情報のステータスは、
業務の段階別に定義され、1つのステータスに1又は複数の手続情報を紐づけられており、
前記手続処理部は、
前記1つのステータスに対応付けられている前記手続情報
に設定される全ての必要手続の手続処理を完了することで、前記ステータスを
次の段階のステータスに更新する、請求項1又は請求項2に記載の港湾業務支援システム。
【請求項5】
前記荷物の識別情報により特定される前記荷物の輸出入業務に係る業務フロー情報のステータスに応じて、前記荷物の進捗管理画面を生成し、
前記船舶の識別情報により特定される
前記船舶の入出港業務に係る業務フロー
情報のステータスに応じて、
前記船舶の入出港の進捗管理画面を生成する出力部を備える、請求項1又は請求項2に記載の港湾業務支援システム。
【請求項6】
前記荷物の識別情報は、2次元コード又は電子タグとして前記荷物に物理的に付与され、
前記取得部は、読取装置を介して前記2次元コード又は前記電子タグを読取られた前記荷物の識別情報を取得する、請求項1又は請求項2に記載の港湾業務支援システム。
【請求項7】
港湾業務である輸出入業務及び入出港業務のそれぞれに対応する1又は複数の業務フロー
情報を記憶し、
前記業務フロー情報は、複数のステータスと、当該ステータスに紐づけられた1又は複数の手続情報と、を有し、
前記輸出入業務に応じた荷物情報の登録を受け付け、荷物の識別情報及び、前記輸出入業務に対応する業務フロー情報に紐づけることで業務フロー管理を開始し、
前記入出港業務に応じた
入出港情報の登録を受け付け、
船舶の識別情報
を含む船舶情報及び、前記入出港業務に対応する業務フロー情報に紐づけることで業務フロー管理を開始し、
前記入出港情報は、入出港日と、港湾情報と、を含み、
前記荷物の識別情報により特定される荷物について、当該荷物を輸送する船舶の予約業務のステータスに紐づけられた前記手続情報の手続処理を実行することで、前記荷物情報と前記船舶情報を紐づけし、
前記荷物に付与され、読取られた前記荷物の識別情報及び、前記船舶の位置情報が前記港湾情報に設定された所定エリア内で検出された前記船舶の識別情報を取得
し、
前記船舶の識別情報と併せて取得したタイムスタンプに応じて前記船舶の識別情報と紐づけられた前記入出港情報の前記入出港日を調整し
前記荷物情報に対応付けられた前記船舶の入出港日を取得し、前記入出港日に対する作業日及び、前記作業日に対する手続期限を算出する、各処理をコンピュータが実行する、港湾業務支援方法。
【請求項8】
港湾業務である輸出入業務及び入出港業務のそれぞれに対応する1又は複数の業務フロー
情報を記憶する記憶部を備え、
前記業務フロー情報は、複数のステータスと、当該ステータスに紐づけられた1又は複数の手続情報と、を有し、
前記輸出入業務に応じた荷物情報の登録を受け付け、荷物の識別情報及び、前記輸出入業務に対応する業務フロー情報に紐づけることで業務フロー管理を開始し、
前記入出港業務に応じた
入出港情報の登録を受け付け、
船舶の識別情報
を含む船舶情報及び、前記入出港業務に対応する業務フロー情報に紐づけることで業務フロー管理を開始する登録部と、
前記入出港情報は、入出港日と、港湾情報と、を含み、
前記荷物の識別情報により特定される荷物について、当該荷物を輸送する船舶の予約業務のステータスに紐づけられた前記手続情報の手続処理を実行することで、前記荷物情報と前記船舶情報を紐づけする手続処理部と、
前記荷物に付与され、読取られた前記荷物の識別情報及び、前記船舶の位置情報が前記港湾情報に設定された所定エリア内で検出された前記船舶の識別情報を取得
し、
前記船舶の識別情報と併せて取得したタイムスタンプに応じて前記船舶の識別情報と紐づけられた前記入出港情報の前記入出港日を調整する取得部と、
前記荷物情報に対応付けられた前記船舶の入出港日を取得し、前記入出港日に対する作業日及び、前記作業日に対する手続期限を算出する算出部と、としてコンピュータを機能させる港湾業務支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾業務支援システム、港湾業務支援方法、港湾業務支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海運業務における通関業務や入出港業務に関連する手続きおよび書類作成は、手作業や個別のシステムに依存して行われてきた。これにより、各関係者間での情報共有が非効率的であり、手続きの遅延や書類の不備が頻発することが課題となっていた。
【0003】
これらの問題を解決するために、各関係者(荷主、海貨業者、通関業者、倉庫業者、陸運業者、コンテナターミナル及び船社)間での情報共有を円滑にするためのシステムが求められていた。近年では、これを実現するためのデジタルプラットフォームが開発され、導入が進んでいる。このプラットフォームは、関係者がインターネットを介してアクセスし、リアルタイムで情報を共有することを可能にするものである。
【0004】
特許文献1では、港湾関連データ連携基盤システムが開示されている。このシステムは、コンピュータが業務パターンに基づいて書類別に参照および書き込みの権限を与える権限設定テーブルを有している。これにより、荷主、海貨業者、通関業者、倉庫業者、陸運業者、コンテナターミナル及び船社の間で新規依頼情報の入力や取引形態の選択、パターンの確定、権限者の決定、情報の閲覧を行うことができる。特に、権限者以外が書類の情報を参照できない仕組みとなっており、セキュリティが強化されている。
【0005】
特許文献2には、輸入船積貨物の船卸港への到着予定情報を高精度に検索する技術が開示されている。この特許文献では、輸入船積貨物トレース装置が貨物特定情報をもとに貨物詳細情報、通関手続情報、そして船舶運航情報を取得し、これらの情報から到着予定情報を抽出する手段が記載されている。具体的には、貨物詳細情報データベース、通関手続情報データベース、船舶運航情報データベースから必要な情報を取得し、それらを組み合わせることで高精度な到着予定情報を提供する方法が説明されている。この技術により、港湾業務における貨物の到着予定をより正確に把握することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-189488号公報
【文献】特開2016-016979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、依頼者と取引者の間での書類の情報を共有できることを開示している。一方で、コンテナ物流に係るプラットフォームと他のプラットフォームの連携は十分とはいえず、港湾業務を全体としてみたときに進捗状況の把握が難しい等、業務効率化の観点で課題があった。
【0008】
特許文献2では、船積貨物の船卸港への到着予定情報を検索できることを開示している。一方で、取得した到着予定情報を活用した他のプラットフォームとの連携については開示されておらず、港湾業務の全体における業務効率化の観点で課題があった。
【0009】
本発明は、港湾業務に係る手続を支援するとともに、業務全体の進捗管理に関する技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]港湾業務の業務種別に応じた基本情報の登録を受け付け、識別情報と紐づける登録部と、前記業務種別に対応する1又は複数の業務フローを記憶する記憶部と、前記識別情報を取得する取得部と、前記識別情報により特定される対象について、前記業務フローのステータスに応じた手続処理を実行する手続処理部と、を備える、港湾業務支援システム。
[2]前記手続処理部は、前記業務フローのステータスに応じた手続書類を前記基本情報に基づき生成し、当該手続書類を提出する手続処理を実行する、[1]に記載の港湾業務支援システム。
[3]前記記憶部は、検証チェックテーブルを格納し、前記検証チェックテーブルを参照し、前記手続書類の特定項目を検証する検証部を備える、[2]に記載の港湾業務支援システム。
[4]前記業務フローのステータスは、1又は複数の手続情報を紐づけられており、前記手続処理部は、前記手続情報の全ての必要手続の手続処理を完了することで、前記ステータスを更新する、[1]~[3]の何れかに記載の港湾業務支援システム。
[5]前記識別情報により特定される業務フローのステータスに応じて、当該業務フローの進捗管理画面を生成する出力部を備える、[1]~[4]の何れかに記載の港湾業務管理システム。
[6]前記登録部は、輸出入の基本情報を、荷物の識別情報と紐づけ、前記荷物の識別情報は、2次元コード又は電子タグとして前記荷物に物理的に付与され、前記取得部は、読取装置を介して前記2次元コード又は前記電子タグを読取られる前記荷物の識別情報を取得する、[1]~[5]の何れかに記載の港湾業務支援システム。
[7]前記登録部は、入出港業務の基本情報を、船舶の識別情報と紐づけ、前記基本情報は、港湾情報を含み、前記取得部は、前記船舶の位置情報を前記港湾情報に設定される所定エリア内で検出することで、当該船舶の識別情報を取得する、[1]~[6]の何れかに記載の港湾業務支援システム。
【0011】
[1]に係る発明により、業務種別に対応するステータスに応じた適切な手続を行うことを支援できる。
【0012】
[2]に係る発明により、業務フローのステータスに応じた手続書類を自動的に生成し、手続を効率的に行うことができる。
【0013】
[3]に係る発明により、検証チェックテーブルを用いて手続書類の特定項目を検証することができるため、書類のドラフト精度を向上させることができる。
【0014】
[4]に係る発明により、手続情報の手続処理に応じて業務フローのステータスを適切に更新することができる。
【0015】
[5]に係る発明により、ステータスに応じた画面表示を生成し、進捗の可視化による港湾業務の進捗管理を支援する。
【0016】
[6]に係る発明により、荷物に物理的に付与された識別情報の読取りにより、荷物の実態に応じた適切かつ効率的な手続を行うことができる。
【0017】
[7]に係る発明により、船舶の港湾への接近を検出し、船舶の実態に応じた適切かつ効率的な手続を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、港湾業務に係る手続を支援するとともに、業務全体の進捗管理に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図6】本実施形態の業務フロー情報のデータ構成例。
【
図7】本実施形態の荷物の進捗管理情報のデータ構成例。
【
図8】本実施形態の入出港業務の進捗管理情報のデータ構成例。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に関する港湾業務支援システム及び港湾業務支援方法について説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0021】
本実施形態では、港湾業務支援システム、港湾業務支援装置の構成、動作等について説明するが、同様の構成の港湾業務支援方法、コンピュータのプログラム及び当該プログラムを記録したプログラム記録媒体等も、同様の作用効果を奏する。プログラム記録媒体を用いれば、例えば、コンピュータに当該プログラムをインストールすることができる。以下で説明する本実施形態に係る一連の処理は、コンピュータで実行可能なプログラムとして提供され、CD-ROMやフレキシブルディスクなどの非一過性コンピュータ可読記録媒体、更には通信回線を経て提供可能である。
【0022】
港湾業務支援システムは、複数のコンピュータ装置により構成される。第1のコンピュータ装置は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置及び記憶装置を備える。当該コンピュータ装置は、記憶装置に格納される第1のプログラムを、演算装置により実行することで、当該コンピュータ装置を港湾業務支援装置として機能させることができる。また、第2のコンピュータ装置は、CPU等の演算装置及び記憶装置を備える。当該コンピュータ装置は、記憶装置に格納される第2のプログラムを、演算装置により実行することで、当該コンピュータ装置を利用者端末として機能させることができる。港湾業務支援方法は、港湾業務支援装置及び利用者端末を含むコンピュータ装置の処理により実現される。
【0023】
本説明における港湾業務は、輸出入業務と入出港業務が含まれる。輸出入業務は、船舶やコンテナ、各種業者等の予約業務と、荷物の搬入、通関、船積、輸送等の物流業務と、を含む。入出港業務は、船舶の港湾への入出港に係る各種手配及び申請業務を含む。
【0024】
図1は、港湾業務支援システム1のブロック図を示す。港湾業務支援システム1は、港湾業務支援装置2と、利用者端末3と、記憶部5と、を備える。港湾業務支援装置2と、利用者端末3と、記憶部5は、それぞれ通信ネットワークNWに接続され、通信可能に構成されている。記憶部5は、港湾業務支援装置2の内部又は外部に設置されるデータベースとして構成され、少なくとも港湾業務支援装置2とデータ通信可能に構成されている。利用者端末3は、各港湾関係者(利用者)に所持されており、これらは複数存在する。
【0025】
港湾業務支援装置2は、機能構成要素として、各種情報の登録を受け付ける登録部21と、識別情報を取得する取得部22と、各種手続処理を実行する手続処理部23と、手続処理における特定項目について検証処理を実行する検証部24と、各種情報を出力する出力部25と、作業日や手続期限を算出する算出部26と、を備える。
【0026】
利用者端末3は、港湾業務の関係者により操作される端末装置である。利用者端末3は、港湾業務支援システム1に対する入出力インターフェイスとして機能する。利用者端末3は、各種入力情報を港湾業務支援装置2に送信できる。また、利用者端末3は、各種出力を港湾業務支援装置2より受信できる。また、利用者端末3は、後述の読取装置としての機能を備えていてもよい。
【0027】
記憶部5は、各種情報を格納する。本実施形態において、記憶部5は、業務フロー情報を格納する業務フロー記憶部51と、検証情報を格納する検証情報記憶部52と、荷物情報を格納する荷物情報記憶部53と、入出港情報を格納する入出港情報記憶部54と、提出情報を格納する提出情報記憶部55と、を備える。業務フロー情報及び、検証情報は、マスタデータとして記憶部5に格納されている。荷物情報、入出港情報及び、提出情報は、利用者端末3による登録指示によって、記憶部5に格納される。本実施形態では、荷物情報及び入出港情報は、基本情報として定義される。
【0028】
図2(a)は、港湾業務支援装置2のハードウェア構成図を示す。港湾業務支援装置2は、ハードウェア構成として、制御装置201と、記憶装置202と、通信装置203と、を備え、各構成装置がバスインターフェイスにより接続されている。本実施形態において、港湾業務支援装置2は、サーバ装置、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置を用いることができる。港湾業務支援装置2は、複数のコンピュータ装置により構成され、全体として上述の機能構成要素(21-26)を実現できればよく、図示例の構成に限定されない。
【0029】
制御装置201は、CPUなどの1つ以上のプロセッサにより構成され、港湾業務支援プログラムやOS(Operating System)、その他のアプリケーションを実行することで、港湾業務支援装置2における全体処理を制御する。記憶装置202は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)などであって、港湾業務支援プログラム及び各種データを記憶する。通信装置203は、有線通信、無線通信等の通信インターフェイスであって、外部装置とのデータ通信の制御を行う。通信装置203は、通信ネットワークNWとの通信制御を行うことで、外部装置とのデータ通信を実現する。
【0030】
図2(b)は、利用者端末3のハードウェア構成図を示す。利用者端末3は、ハードウェア構成として、制御装置301と、記憶装置302と、通信装置303と、入力装置304と、出力装置305と、を備える。また、利用者端末3は、GPS通信装置を備えてもよい。本実施形態において、利用者端末3は、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット端末などを用いることができる。
【0031】
制御装置301は、CPUなどの1つ以上のプロセッサにより構成され、端末用プログラム、OS、その他のアプリケーションなどを実行することで、利用者端末3における全体処理を制御する。記憶装置302は、HDD、SSD、フラッシュメモリ、RAMなどであって、ブラウザアプリケーション、及び各種データを記憶する。通信装置303は、通信ネットワークNWとの通信制御を行い、少なくとも港湾業務支援装置2とのデータ通信を実現する。入力装置304は、利用者による入力操作を受け付ける入力インターフェイスであって、マイク、タッチパネル、マウス、キーボードなどにより構成される。出力装置305は、表示出力するディスプレイなどにより構成される。GPS通信装置は、GPS通信により利用者端末3の位置座標を取得することができる。
【0032】
本実施形態において、利用者端末3は、読取装置として構成されてもよい。読取装置は、2次元コード又は電子タグを読取る読取モジュールを備える。本実施形態では、2次元コード又は電子タグは、荷物に対して物理的に付与されており、当該荷物の識別情報を記録している。読取装置は、2次元コードを読み取るための撮像装置や光学読取装置又は、電子タグを読取るためのアンテナ装置又は、これらの両方を読取モジュールとして備えるものとする。2次元コードは、バーコードやQRコード(登録商標)が含まれる。また、2次元コードは、番号や記号をテキスト表示したものが含まれ、撮像装置の光学文字認識(OCR)により取得されてもよい。なお、読取装置は、利用者端末3と別の装置として構成され、読取った識別情報を利用者端末3を介して港湾業務支援装置2に送信するか、読取った識別情報を無線通信により港湾業務支援装置2に送信するものであってもよい。
【0033】
図3は、輸出入業務の流れを説明する概要図である。
図3では、左側に輸出地における業務を、右側に輸入地における業務をそれぞれ示している。輸出入業務では、輸出者から輸入者に対して荷物を船舶によって海上輸送する。海上輸送では、船舶の入出港業務が存在するが、
図3ではその詳細を省略する。
【0034】
輸出入業務では、はじめに、輸出者と輸入者の間で荷物の輸出入に関する契約が締結される(S1)。輸出者は、契約された荷物と共に、船積依頼書をフォワーダー(通関業者、海貨業者を含む)に提出する(S2)。フォワーダーは、輸出申告書を税関に提出する(S3)。税関は、輸出を許可する場合、輸出許可書をフォワーダーに発行する(S4)。フォワーダーは、輸出許可書をもとに、荷物の船積作業を船会社に依頼する(S5)。船会社は、船荷証券を輸出者に対して発行し(S6)、荷物を輸入地に海上輸送する。輸出者は、船荷証券と荷為替手形を銀行に提出し(S7)、銀行は輸出者に決済金額を支払う(S8)。
【0035】
輸入者は、決済金額を現地の銀行で支払いし(S9)、輸入する荷物の船荷証券を受け取る(S10)。フォワーダーは、輸入申告書を税関に提出する(S11)。税関は、輸入を許可する場合、輸入許可書をフォワーダーに発行する(S12)。輸出者は、フォワーダーを介して船荷証券を船会社に提出する(S13)。船会社は、フォワーダーを介して荷物を輸入者に輸送し(S14)、これによって、荷物が輸出者から輸入者に引き渡される。
【0036】
図3は、輸出入業務の概要であり、実際にはより多くの関係者の間で各種手続が行われる。港湾業務支援システム1は、これら各関係者により操作される利用者端末3により各種手続業務を支援するというものである。
【0037】
利用者端末3は、港湾業務の関係者の属性(以下、関係者属性とする)を含む情報を港湾業務支援装置2に送信できる。関係者属性は、輸出者、通関業者、海貨業者、CYオペレータ、税関、検査業者、船会社、船長、輸入者、銀行、保険会社、運送業者、倉庫会社、入管、港湾管理者、港内交通管制室、海上保安部、検疫所、更には、各種港湾業務の委託企業等を含む。なお、関係者属性は、これらに限定されず、港湾業務において委託契約等の関係を持つ主体が含まれ得る。また、関係者属性は、輸出地と輸入地の関係者を区別可能なものとする。
【0038】
関係者属性は、港湾業務の各種手続の手続者及び手続先の特定等に用いられる。各種手続は、手続種別毎に手続者と手続先が設定されており、利用者端末3の関係者属性を参照することで、手続者から手続先に対して所定の手続を完了することができる。
【0039】
図4は、港湾業務支援装置2のブロック図を示す。業務フロー記憶部51は、管理者により設定された業務フロー情報を格納している。検証情報記憶部52は、管理者により設定された検証情報を格納している。
【0040】
登録部21は、利用者端末3を介して基本情報の登録を受け付ける。本実施形態において、基本情報は、荷物情報及び入出港情報の少なくとも一方を含む。登録部21は、基本情報の登録に応じて、識別情報を紐づけて記憶する。登録部21は、荷物情報の登録を受け付け、荷物の識別情報と紐づけて荷物情報記憶部53に格納する。登録部21は、入出港情報の登録を受け付け、船舶の識別情報と紐づけて入出港情報記憶部54に格納する。
【0041】
荷物情報は、輸入者と輸出者の間の売買契約の際に登録される。荷物情報は、貨物体系(コンテナ(FCL)、コンテナ(LCL)、バラ積み)、品名、数量、荷主、依頼日、受領日、送り先、送り先国、届出日、輸送方法等を含む。荷物情報は、パンニング手続により荷物がコンテナに収容されると、当該コンテナの識別情報と紐づけられる。
【0042】
本実施形態において、荷物情報の識別情報は、2次元コード又は電子タグとして荷物に物理的に付与される。読取装置は、2次元コード又は電子タグを読取ることで荷物の識別情報を取得し、港湾業務支援装置2に送信することで、対象の荷物を識別することができる。
【0043】
入出港情報は、船舶の入港手配の際に登録される。入出港情報は、港湾情報と、船舶情報と、入出港日を含む。港湾情報は、船舶が入港する港湾に関する情報であり、港湾名、港湾位置、設定エリア等を含む。設定エリアは、対象の船舶が予定通りに港湾に接近していることを検出するために設定されるエリアを示す。船舶情報は、船舶の識別情報、船舶位置等を含む。船舶情報は、外部データベースから取得されてもよい。本実施形態では、港湾に接近した船舶を入港準備状態であるとして区別して管理する。
【0044】
コンテナ情報は、コンテナ番号、荷主、仕向地、輸送船舶が含まれる。コンテナ番号は、コンテナの識別情報であり、2次元コード又は電子タグによりコンテナに物理的に付与される。コンテナ情報は、輸出入業務におけるブッキングの際に登録される。ブッキングでは、コンテナを積載する船舶が指定され、コンテナ情報が船舶の識別情報と紐づけられる。
【0045】
荷物情報が登録されると、輸出入業務に係る業務フロー情報が参照され、業務フロー管理が開始される。入出港情報が登録されると、入出港業務に係る業務フロー情報が参照され、業務フロー管理が開始される。開始された業務フロー情報は、対応する荷物の識別情報又は船舶の識別情報に対応付けられ、それぞれ個別の業務フローとして管理される。
【0046】
取得部22は、識別情報を取得する。識別情報は、荷物の識別情報及び船舶の識別情報の少なくとも何れかを含む。荷物及び船舶は、物流の過程で移動している。これらは、物流の各過程において、所定の手続が必要となる。取得部22は、識別情報がいつ、どこで、だれから取得したかを特定でき、これによって、対応する手続を利用者に提示することができる。また、対象が、物流のどの過程にあるかを利用者に提示することができる。
【0047】
取得部22は、読取装置を介して2次元コード又は電子タグを読取られた荷物の識別情報を取得する。取得部22は、読取装置の識別情報及びタイムスタンプを併せて取得し、利用者の関係者属性及び作業日を特定することができる。取得部22は、荷物の識別情報に紐づけられるステータス及びスケジュールを参照し、取得した関係者属性及び作業日と一致するものか検証する。一致する場合、続く手続処理の実行を許可し、一致しない場合、エラーメッセージを出力するか、作業の遅延等が生じていることを記録してもよい。
【0048】
取得部22は、船舶の位置情報が港湾情報に設定される所定エリア内で検出された船舶の識別情報を取得する。これによって、港湾に接近した船舶に対して所定の手続を提示することができる。取得部22は、船舶の識別情報と併せてタイムスタンプを取得してもよい。取得部22は、取得したタイムスタンプに応じて入出港情報の入出港日やスケジュールの調整処理を行うことができる。
【0049】
手続処理部23は、識別情報により特定される対象について、業務フローのステータスに応じた手続処理を実行する。手続処理部23は、業務フローのステータスに応じた手続書類を基本情報に基づき生成し、当該手続書類を提出する手続処理を実行する。本実施形態において、手続書類は、関係者同士の間でやりとりされる関係書類と、税関等の関係行政機関に対する申請であるNACCS手続と、を含む。手続処理された各手続書類の内容は、提出情報として荷物情報又は入出港情報に紐づけられ、提出情報記憶部55に格納される。
【0050】
検証部24は、検証情報記憶部52に格納される検証チェックテーブルを参照し、手続処理部23により提出する手続書類の特定項目を検証する。手続処理部23は、検証部24による検証を実行後、当該手続書類を提出する手続処理を実行することができる。
【0051】
検証チェックテーブルは、手続書類別に、対応すべきチェック項目を対応付けたデータである。検証部24は、チェック項目について参照すべき情報の提示を行う。また、検証部24は、チェック項目にしたがって、手続書類の入力項目の分類結果を出力する。手続処理部23は、提示された情報や分類結果を参照して入力項目を入力し、手続処理を実行できる。
【0052】
出力部25は、識別情報により特定される対象の業務フローのステータスや手続情報に応じて、当該業務フローの進捗管理画面を生成する。進捗管理画面は、各種手続の状況及びスケジュールの少なくとも何れかを表示する。なお、進捗管理画面における手続の状況及びスケジュールは、算出部26により算出される手続期限及び作業日により示される。
【0053】
図5は、本実施形態における業務フロー情報の概要説明図である。業務フロー情報は、業務種別に応じて異なる業務フローが設定される。本実施形態において、業務種別は、輸出入業務、入出港業務に大別される。業務種別は、輸出>用船契約、輸出>コンテナ(FCL)、輸出>コンテナ(LCL)、輸入>在来貨物、輸入>コンテナ(FCL)、輸入コンテナ(LCL)、入出港業務に細分される。なお、業務種別は、これらに限定されず、更に細分化されてもよいし、他の種別が更に設けられてもよい。
【0054】
業務フロー情報は、業務フローIDと、業務種別と、ステータスと、手続情報と、を有する。業務種別T1の業務フローは、
図5に示すように、複数のステータス(A1、A4等)を有する。ステータスは、業務の段階別に定義され、業務の進捗管理に用いられる。ステータスは、1又は複数の手続情報(手続P1、P4~P6等)と紐づけられる。手続情報は、当該ステータスにおいて必要な関係書類や、NACCS手続などの各種手続を示す。業務フロー情報は、業務種別に応じてそれぞれ対応するステータス及び手続情報が紐づけられる。ステータス及び手続情報は、種類や数量に限定はなく、業務種別に適したものがそれぞれ設定される。
【0055】
ステータスは、業務を行う作業日を有する。手続情報は、手続情報を作成する期限である手続期限を有する。手続期限は、作業日より前に設定され、手続期限までに対応する手続情報が作成される。実際の作業日には、事前に作成した手続情報を確認しながら業務を行う。例えば、荷物の内容物が手続情報と一致することを確認できた場合、作成された手続情報の提出手続を実行することで、各ステータスに対応する業務を完遂する。
【0056】
ステータスは、予約業務と物流業務のステータスに大別される。予約業務は、例えば、荷物を輸送する本船、コンテナ等の予約や、船舶の着岸作業を請け負う業者の予約に関する業務を含む。物流業務は、例えば、通関、CY搬入、輸出許可、船積、海上輸送、輸入許可、陸上輸送等の荷物の物流に関する業務や、船舶の事前通報や入港届、出港届等の入出港業務を含む。物流業務では、予約業務により予約された対象や各関係者によって、物流に係る業務を実施する。本実施形態における物流業務では、荷物、コンテナ、船舶等を含む対象の移動に伴いステータスが管理される。
【0057】
図6(a)は、輸出>用船契約の業務種別に係る業務フロー情報のデータ構成例を示す。業務フロー情報は、複数のステータスIDと、ステータスIDに紐づく1又は複数の手続情報と、を有する。
【0058】
手続情報は、手続IDと、作業分類と、関係書類と、NACCS手続と、手続者と、手続先と、を有する。関係書類及びNACCS手続は、手続IDに対して少なくとも何れか一方を有するものであり、一方が存在しない場合、又は、両方存在する場合があり得る。
【0059】
手続情報は、荷物情報に応じて必要手続が設定される。例えば、荷物情報の品目が危険物に該当する場合、危険物明細書や危険物明細情報登録等の関係書類やNACCS手続が必要手続として設定される。
【0060】
図6(a)では、ステータスA1は、売買契約の段階におけるステータスを示す。ステータスA4は、輸送船舶の確保の段階におけるステータスを示す。作業分類は、各ステータスで行う作業内容に応じた細分類であり、ステータス内で1又は複数設定される。各作業分類は、1又は複数の関係書類又は、1又は複数のNACCS手続又は、これらの両方が紐づけられる。
【0061】
図6(b)は、輸出>コンテナ(FCL)の業務種別に係る業務フロー情報のデータ構成例を示す。
図6(b)では、ステータスA24は、輸送船舶の確保の段階におけるステータスを示し、ステータスA25は、船積手続の段階におけるステータスを示す。手続P24、P25は、船舶のスペースを予約するブッキングに係る手続である。手続P25は、荷物の品目に危険物が含まれる場合、必要手続となる。
【0062】
図6(c)、入出港業務の業務種別に係る業務フロー情報のデータ構成例を示す。
図6(c)では、ステータスA101は、入港手配の段階の各関係者の手続を示し、ステータスA102は、作業手配の段階の各関係者の手続を示し、ステータスA103は、入港前の段階の各関係者の手続を示す。
【0063】
以下、港湾業務支援システム1において、業務フロー情報を参照して業務フローを管理する仕組みについて詳述する。
【0064】
<輸出業務の実施例>
登録部21は、輸出入業務の基本情報(荷物情報)を受け付け、荷物の識別情報と紐づけて、荷物情報記憶部53に格納する。荷物情報が登録されると、輸出>用船契約及び、輸出>コンテナ(FCL又はLCL)の業務フローが設定される。設定された業務フローは、荷物情報に紐づけられ、個別に管理される。荷物情報は、例えば、
図6(a)に示す手続P1の売買契約書によって登録される。
【0065】
輸出>用船契約のステータスは、売買契約、海上輸送依頼、陸上輸送依頼、輸送船舶の確保、船積手続、陸上輸送、通関作業、通関申請、輸出申告、輸出許可、船積、海上輸送が含まれる。輸出>コンテナ(FCL)のステータスは、売買契約、海上輸送依頼、陸上輸送依頼、輸送船舶の確保、船積手続、陸上輸送、通関作業、CY搬入、通関申請、輸出申告、輸出許可、船積、海上輸送が含まれる。輸出>コンテナ(LCL)のステータスは、売買契約、海上輸送依頼、陸上輸送依頼、輸送船舶の確保、船積手続、陸上輸送、通関作業、CFS搬入、通関申請、輸出申告、輸出許可、CY搬入、船積、海上輸送が含まれる。各ステータスは、船積手続までが予約業務に該当し、陸上輸送以降が物流業務に該当する。
【0066】
業務フローが設定されると、上述したステータスにスケジュールが設定される。スケジュールは、輸送船舶の確保で登録される用船契約の手続情報に基づき、船舶の入出港情報を参照することで決定される。スケジュールには、手続期限と、作業日が含まれる。出力部25は、これらのスケジュールを進捗管理画面として利用者端末3に提供する。また、出力部25は、スケジュールに設定される手続期限又は作業日に基づき、各利用者端末3に対して通知を出力することができる。なお、進捗管理画面は、輸出、輸入のそれぞれに対応する画面が提供されるものとする。
【0067】
手続処理部23は、輸出>用船契約の輸送船舶の確保ステータスにおける用船契約の手続情報の手続処理を実行する。用船契約の手続情報は、荷物を輸送する船舶の船舶情報が含まれており、この手続処理によって荷物情報と船舶情報が紐づけされる。用船契約の手続情報は、例えば、
図6(a)に示す手続P4の用船契約書である。
【0068】
手続処理部23は、輸出>コンテナの輸送船の確保ステータスにおけるブッキングの手続情報の手続処理を実行する。ブッキングの手続情報は、コンテナを輸送する船舶の船舶情報が含まれており、この手続処理によってコンテナ情報と船舶情報が紐づけされる。ブッキングの手続情報は、例えば、
図6(b)に示す手続P24のブッキング依頼書である。
【0069】
手続処理部23は、コンテナ(FCL)の船積手続におけるパンニングの手続処理を実行する。パンニングの手続情報は、荷物を収容するコンテナのコンテナ情報が含まれており、この手続処理によって荷物情報とコンテナ情報が紐づけされる。パンニングの手続情報は、例えば、
図6(b)に示す手続P41のパンニングである。コンテナ(FCL)は、パンニング後、コンテナ一式について通関手続きを行う。
【0070】
一方で、荷物をコンテナ(LCL)にパンニングする手続は、個別の荷物を通関手続し、輸出許可された後に行われる。コンテナ(LCL)のパンニングは、輸出許可のステータスに紐づけられており、輸出許可の段階で、荷物情報とコンテナ情報が紐づけされる。このように、輸出>コンテナ(FCL)と輸出>コンテナ(LCL)は、パンニングが異なるステータスに紐づけられ、それぞれの業務種別の業務フロー情報にしたがって手続を管理される。
【0071】
物流業務において、取得部22は、荷物の識別情報又は、コンテナの識別情報を取得し、対象となる荷物又はコンテナを識別する。物流業務において、輸送される荷物又はコンテナの識別情報は、読取装置を介して2次元コード又は電子タグにより読み取られる。手続処理部23は、荷物又はコンテナの識別情報と、その送信元の関係者属性と、ステータスと、に基づいて、手続画面(図示せず)を生成し、利用者端末3に対して提示する。手続処理部23は、ステータスに対応付けられている手続情報の全ての必要手続の手続処理を完了している場合、手続画面を介してステータスの更新指示を受け付け、ステータスを更新する。
【0072】
コンテナ(LCL)のパンニングにおける手続を具体例として説明する。手続処理部23は、コンテナ(LCL)の輸出許可ステータスにおいて、パンニングの手続処理を実行する。このとき、取得部22は、荷役業者により操作される読取装置を介して荷物の識別情報を取得し、手続処理部23は、当該荷物が輸出許可のステータスにある場合、パンニングの手続画面を生成する。手続処理部23は、輸出許可のステータスに対応付けられる輸出許可状(関係書類)、搬出確認登録(NACCS手続)が海貨業者から税関に提出されている場合、パンニング(関係書類)、パンニング情報登録(NACCS手続)の手続情報の登録を受け付ける。これによって、パンニング手続が完了し、輸出許可のステータスを完了するとともに、CY搬入のステータスに更新される。
【0073】
手続処理部23は、船積のステータスが完了すると、船会社から輸出者に対して船荷証券の発行に係る手続処理が実行され、船積から海上輸送にステータスを更新し、輸出業務の業務フローを完了とする。
【0074】
以上のように、売買契約から海上輸送までの輸出業務がステータスの更新により管理され、荷物が輸出される。
【0075】
<輸入業務の実施例>
輸入業務では、輸出業務において登録された荷物情報に基づいて、輸入>在来貨物及び、輸入>コンテナ(FCL又はLCL)の業務フローが設定される。
【0076】
輸入>在来貨物のステータスは、海上輸送、荷卸、通関申請、輸入申告、輸入許可、引取り、陸上輸送が含まれる。輸入>コンテナ(FCL)のステータスは、海上輸送、荷卸、CY搬入、通関申請、輸入申告、輸入許可、CY搬出、引取り、陸上輸送が含まれる。輸入>コンテナ(LCL)のステータスは、海上輸送、荷卸、CY搬入、CFS搬入、通関申請、輸入申告、輸入許可、引取り、陸上輸送が含まれる。輸入業務のステータスは、何れも物流業務に該当する。
【0077】
取得部22は、船舶の位置情報が港湾情報に設定される所定エリア内で検出された船舶の識別情報を取得する。手続処理部23は、取得された船舶の識別情報が対応付けられる荷物情報及びコンテナ情報を抽出する。手続処理部23は、抽出した荷物情報及びコンテナ情報について、海上輸送のステータスに対応付けられている到着通知の手続情報を船会社の利用者端末3に通知する。手続処理部23は、利用者端末3を介して到着案内書を含む手続情報の登録を受け付け、手続処理を実行し、ステータスを海上輸送から荷卸に更新する。
【0078】
また、手続処理部23は、取得部22により取得された船舶の識別情報に対応付けられる荷物情報を抽出し、貨物引渡に係る手続情報の手続処理を実行する。貨物引渡は、輸入者及びCYオペレータから通関業者に対して行われる手続であって、船荷証券及び荷渡指示書を含む関係書類の提出手続が含まれる。
【0079】
手続処理部23は、荷卸、CY搬入、通関申請、輸入申告、輸入許可、引取り、陸上輸送の各ステータスに係る手続について、読取装置を介して取得された荷物の識別情報に基づき、対象の荷物の各種手続処理を実行する。陸上輸送が完了することで、輸入業務の業務フローを完了する。
【0080】
以上のように、海上輸送から陸上輸送までの輸入業務がステータスの更新により管理され、荷物が輸入者の元に輸送される。
【0081】
<入出港業務の実施例>
登録部21は、入出港業務の基本情報(入出港情報)を受け付け、船舶の識別情報と紐づけて、入出港情報記憶部54に格納する。入出港情報が登録されると、入出港業務の業務フローが設定される。入出港業務の業務フローは、船舶の識別情報により管理される。入出港情報は、
図6(c)に示す手続P101の手続依頼により登録される。
【0082】
入出港業務のステータスは、入港手配、作業手配(入港)、入港前、入港後、作業手配(出港)、出港後が含まれる。ここで、入港手配及び作業手配(入港又は出港)のステータスは、予約業務に該当し、入港前、入港後及び、出港後のステータスは、物流業務に該当する。
【0083】
入出港業務の業務フローが設定されると、上述したステータスに手続期限及び作業日を含むスケジュールが設定される。出力部25は、これらのスケジュールを進捗管理画面として利用者端末3に提供する。また、手続期限及び作業日について各利用者端末3に通知することができる。
【0084】
手続処理部23は、予約業務に係る入港手配、作業手配のステータスで、各関係者に対する手続情報の登録を受け付け、手続処理を実行する。作業手配では、保険、積込品、着岸作業の水先人、エスコートボード、タグボート、荷役作業の各業者の手配を手続する。
【0085】
取得部22は、船舶の位置情報が港湾情報に設定される所定エリア内で検出された船舶の識別情報を取得する。手続処理部23は、取得された船舶の識別情報により特定される船舶の入港前、入港後、出港後のステータスの手続について、手続処理を実行可能とする。
【0086】
入港前のステータスに対応付けられる手続情報は、保障契約情報、船舶保安情報、事前通報、不開港出入許可申請、係留施設等使用許可申請、係留施設使用届、検疫通報、航路通報、危険物積載に係る申請等が含まれる。入港後のステータスに対応付けられる手続情報は、入港届(税関、港湾管理者、港長、入管、明告書)、乗組員及び旅客に関する事項の報告、船用品目録、積荷に関する事項の報告、乗員上陸許可申請等が含まれる。出港後のステータスに対応付けられる手続情報は、出港届(税関、港湾管理者、港長、入管)、とん税納付申告、移動届等が含まれる。
【0087】
船舶の入出港業務は、航行遅延などに応じてスケジュールが変動する。そのため、実際の船舶の港湾部への接近に対応して、必要な各種手続が適切なタイミングで提示されることで、入出港業務の効率的な支援とすることができる。
【0088】
検証部24は、各手続情報に対応する検証項目について、検証チェックテーブルを参照することで、検証処理を行う。検証情報記憶部52は、法令チェックテーブル、品目チェックテーブルを有する。
【0089】
法令チェックテーブルは、手続情報に対応する法令を記憶している。検証部24は、法令チェックテーブルを参照し、対応する手続情報の検証項目を検証する。例えば、入出港業務に係る手続情報は、法令により船舶が入港する所定期間前等に提出期限が定められている。また、提出期限は、船舶種類、総トン数、寄港地、入港地、航行海域、船舶の長さ、積載する危険物の種類等の手続情報の項目に応じて異なる場合がある。検証部24は、これらの検証項目を検証することで、各手続の提出期限を出力することができる。
【0090】
品目チェックテーブルは、荷物情報の品目が、危険物に該当するか、通関申請の品目分類の何れに該当するかを判定するテーブルを記憶している。検証部24は、品目チェックテーブルを参照し、品目の分類結果を出力する。検証部24は、分類の結果として、危険物に該当する場合、警告通知を出力する。また、検証部24は、分類の結果、当該品目分類の税率や税額を出力する。
【0091】
図7は、荷物の進捗管理情報の概要図を示す。進捗管理情報は、手続期限と作業日のスケジュール管理に用いられる。荷物の進捗管理情報は、
図7(a)に示すスケジュール情報と、
図7(b)に示す手続進捗情報と、を含む。進捗管理情報は、荷物情報のステータス及び、手続情報に応じて生成される。出力部25は、進捗管理情報に基づき進捗管理画面を生成し、各利用者端末3に対して出力する。これによって、利用者は、対象となる荷物のスケジュールや手続の進捗状況を確認することができる。
【0092】
算出部26は、進捗管理情報に含まれる作業日及び手続期限を算出することができる。算出部26は、入出港情報に含まれる入出港日を取得し、各ステータスに対応する港湾業務の作業日を算出する。算出部26は、各ステータスの作業日を取得し、各手続情報に対応する手続期限を算出する。業務フロー記憶部51は、入出港日に対する作業日を設定した作業日算出データと、作業日に対する手続期限を設定した手続期限算出データと、を格納している。作業日算出データは、ステータス毎に異なる作業日を設定できる。また、手続期限算出データは、手続期限毎に異なる手続期限を設定できる。算出部26は、入出港日やステータスに変更が生じた場合、作業日算出データ及び手続期限算出データを参照して、スケジュールの変更を反映することができる。
【0093】
スケジュール情報は、
図7(a)に示すように、荷物の識別情報(荷物ID)と、品名と、各ステータスのスケジュールと、を含む。スケジュールは、当該ステータスの作業の完了日又は予定日(作業日)として示される。手続処理部23は、各ステータスの手続を完了すると、その日付を完了日として記録する。本実施形態では、各ステータスに対応するスケジュールは、コンテナ手配(輸出船舶の確保)、輸出許可、受取(陸上輸送)、CFS(CFS搬入)、CY(CY搬入)、通関日(通関申請)、船積完了、出港日、入港日、CY、CFS、輸入許可、通関日、受渡(引取り)、配送(陸上輸送)、搬入(陸上輸送完了)を含む。出港日及び入港日は、荷物情報に対応付けられた船舶の入出港情報を参照してもよい。
【0094】
手続進捗情報は、
図7(b)に示すように、荷物の識別情報と、品名と、各ステータスの手続状況と、を含む。手続状況は、対象の荷物情報のステータス毎に設定される手続情報の全ての必要手続の手続処理が完了すると「済」となる。なお、手続状況は、対象の荷物情報の各手続情報の未済を示すものであってもよい。また、手続状況は、図示例では、手続先となる関係者の名称を表示している。手続状況は、更に、手続期限を表示してもよい。
【0095】
図8は、船舶の入出港業務の進捗管理情報の概要図を示す。入出港業務の進捗管理情報は、
図8(a)に示すスケジュール情報と、
図8(b)に示す手続進捗情報と、を含む。進捗管理情報は、入出港業務のステータス及び、手続情報に応じて生成される。出力部25は、進捗管理情報に基づき進捗管理画面を生成し、利用者端末3に出力する。これによって、利用者端末3は、対象となる船舶のスケジュールや手続の進捗状況を確認することができる。
【0096】
スケジュール情報は、
図8(a)に示すように、船舶名と、船舶の識別情報(IMO、コールサイン)と、入出港スケジュールと、を含む。入出港スケジュールは、入出港する港湾名と、港湾業務の内容(着岸、停泊、荷役等)、それらの日付が含まれる。
【0097】
手続進捗情報は、
図8(b)に示すように、船舶名と、船舶の識別情報と、各手続情報の手続状況と、を含む。手続状況は、入出港業務の各ステータスに係る手続情報の未済を示す。また、手続進捗情報は、
図8(c)に示すように、保険、積込品、着岸作業の水先人、エスコートボード、タグボート、荷役作業等の各業者の手配に関する手続状況を含む。手配に関する手続状況では、手配先となる関係者の名称を更に表示してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 港湾業務支援システム
2 港湾業務支援装置
21 登録部
22 取得部
23 手続処理部
24 検証部
25 出力部
3 利用者端末
4 船舶装置
5 記憶部
51 業務フロー記憶部
52 検証情報記憶部
51 荷物情報記憶部
52 船舶情報記憶部
53 提出情報記憶部
【要約】
【課題】
港湾業務に係る手続を支援するとともに、業務全体の進捗管理を支援する技術を提供する。
【解決手段】
港湾業務の業務種別に応じた基本情報の登録を受け付け、識別情報と紐づけ、前記業務種別に対応する1又は複数の業務フローを記憶し、前記識別情報を取得し、前記識別情報により特定される対象について、前記業務フローのステータスに応じた手続処理を実行する。
【選択図】
図1