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特許7628674移動体の移動自動化装置および安全確保装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】移動体の移動自動化装置および安全確保装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250204BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20250204BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20250204BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/08
B60W60/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023565630
(86)(22)【出願日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2023026802
【審査請求日】2023-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2023060263
(32)【優先日】2023-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102647
【氏名又は名称】エニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】府川 泰朗
【合議体】
【審判長】伏本 正典
【審判官】月野 洋一郎
【審判官】古川 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-338596(JP,A)
【文献】特開2012-032974(JP,A)
【文献】国際公開第2022/059243(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/094195(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が自動的に移動するよう該移動体を制御する移動体の移動自動化装置であって、該装置は、
前記移動体の移動状態に関する情報、前記移動体の周囲環境に関する情報および前記移動体の目的地に関する情報を取得するものであり、前記移動体の外部にある無線通信装置によって生成された無線信号を受信する無線受信部を含む入力部と、
該入力部を介して取得した前記移動体の移動状態に関する情報、前記移動体の周囲環境に関する情報および前記移動体の目的地に関する情報に基づいて、前記移動体の未来の移動態様に関連する第1の予測移動データを生成する予測部と、
前記移動体とは別の移動体に搭載された別の移動自動化装置との通信に関連する処理を行ない、該別の移動自動化装置から前記無線受信部を介して前記別の移動体の未来の移動態様に関連する第2の予測移動データを受信できるよう前記無線受信部を制御する通信制御部と、
第2の予測移動データを受信した時点で、第1の予測移動データおよび第2の予測移動データに基づいて、前記移動体および前記別の移動体の移動優先順位の判断を開始する優先判断部と
第1の予測移動データを含有する無線信号または前記移動優先順位に関する判断結果を含有する無線信号を送信する無線送信部とを有し、
記予測部により生成される第1の予測移動データには、前記移動体の目的地までの移動予定経路に関する情報が含まれ、前記無線受信部により受信される第2の予測移動データには、前記他の移動体の目的地までの移動予定経路に関する情報が含まれ、
第2の予測移動データを受信した時点で実行する前記優先判断部による前記移動優先順位の判断には、第1の予測移動データに含まれる前記移動予定経路に関する情報および第2の予測移動データに含まれる前記別の移動体の移動予定経路に関する情報の比較に基づく判断が含まれ、
該優先判断部による判断の結果に基づいて前記移動体または前記別の移動体の移動方向および速度を制御し、
前記通信制御部が行なう前記別の移動自動化装置との通信に関連する処理には、前記無線送信部による第1の予測移動データを含有する無線信号、または、前記移動優先順位に関する判断結果を含有する無線信号の送信の制御が含まれることを特徴とする移動体の移動自動化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動自動化装置において、該装置はさらに、前記優先判断部による判断の結果に基づいて前記移動体の駆動系を制御する駆動制御部を有することを特徴とする移動自動化装置。
【請求項3】
請求項に記載の移動自動化装置において、
前記無線送信部はさらに、前記移動優先順位に関する判断結果に基づいて前記移動体の移動方向および速度を制御した移動結果を含有する無線信号を送信可能であり、
前記通信制御部が行なう前記別の移動自動化装置との通信に関連する処理にはさらに、前記移動結果を含有する無線信号の送受信が含まれることを特徴とする移動自動化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の移動自動化装置において、前記入力部はさらに、
前記移動体または該移動体の外部の情報を検出可能な入力ハードウェアと接続され前記移動体の移動状態または該移動体の周囲環境に関する情報を取得する検出部と、
利用者の操作入力に基づいて該移動体の目的地関する情報を取得する手動操作部とを含み、
第1の予測移動データは、前記検出部、前記無線受信部および前記手動操作部を介して取得した情報に基づいて前記予測部によって生成されるデータであることを特徴とする移動自動化装置。
【請求項5】
請求項1に記載の移動自動化装置において、該装置はさらに、前記入力部によって取得された情報、第1もしくは第2の予測移動データ、または前記優先判断部によって得られた前記移動優先順位に関する判断結果を表示する用に供する表示部を含むことを特徴とする移動自動化装置。
【請求項6】
請求項1に記載の移動自動化装置と協働して利用者の移動の安全を確保する安全確保装置であって、該安全確保装置は、
該安全確保装置を携行している利用者の移動状態に関する情報または該利用者の周囲環境に関する情報を取得するものであり、該安全確保装置の外部にある無線通信可能な装置によって生成された無線信号を受信する無線受信部を含む入力部と、
安全確保装置が有する入力部を介して取得した前記利用者の移動状態に関する情報および該利用者の周囲環境に関する情報を用いて、前記利用者の未来の移動態様に関連する第2の予測移動データを生成する予測部と、
前記移動自動化装置との通信に関連する処理を行ない、該移動自動化装置から該安全確保装置が有する無線受信部を介して前記移動自動化装置を搭載した移動体の未来の移動態様に関連する第1の予測移動データを受信できるよう該安全確保装置が有する無線受信部を制御する通信制御部と、
第1の予測移動データおよび該安全確保装置が有する予測部で生成した第2の予測移動データに基づいて、前記利用者および前記移動体の移動優先順位を判断する優先判断部と、
該安全確保装置が有する予測部で生成した第2の予測移動データを含有する無線信号または該安全確保装置が有する優先判断部によって得られた移動優先順位に関する判断結果を含有する無線信号を送信する無線送信部とを有し、
該安全確保装置が有する通信制御部が行なう前記移動自動化装置との通信に関連する処理には、該安全確保装置が有する無線送信部による、該安全確保装置が有する予測部で生成した第2の予測移動データを含有する無線信号、または、該安全確保装置が有する優先判断部によって得られた移動優先順位に関する判断結果を含有する無線信号の送信が含まれ、
該安全確保装置が有する優先判断部による判断の結果に基づいて、前記移動自動化装置に前記移動体の移動方向および速度を制御させることを特徴とする安全確保装置。
【請求項7】
請求項に記載の安全確保装置において、該安全確保装置はさらに、該安全確保装置が有する入力部によって取得された情報、第1の予測移動データ、該安全確保装置が有する予測部で生成した第2の予測移動データ、または該安全確保装置が有する優先判断部によって得られた移動優先順位に関する判断結果を前記利用者に通知する用に供する通知部を含むことを特徴とする安全確保装置。
【請求項8】
請求項に記載の安全確保装置において、該安全確保装置が有する入力部はさらに
前記移動体または該移動体の外部の情報を検出可能な入力ハードウェアと接続され該安全確保装置を携行している利用者の移動状態または該利用者の周囲環境に関する情報を取得する検出部と、
前記利用者の操作入力に基づいて該利用者の目的地に関連する情報を取得する手動操作部とを含み、
該安全確保装置が有する予測部で生成される第2の予測移動データは、該安全確保装置が有する入力部に含まれている無線受信部、検出部および手動操作部を介して取得した情報に基づいて生成されるデータであることを特徴とする安全確保装置。
【請求項9】
請求項に記載の安全確保装置において、
該安全確保装置が有する検出部はさらに、該安全確保装置が有する優先判断部によって得られた移動優先順位に関する判断結果を該安全確保装置が有する通知部が前記利用者に通知した後の前記利用者の移動の様子を検出可能であり、
該安全確保装置が有する無線送信部はさらに、該安全確保装置が有する入力部に含まれている検出部が検出した前記利用者の移動の様子を送信可能であり、
該安全確保装置が有する通信制御部が行なう前記移動自動化装置との通信に関連する処理にはさらに、前記移動体の移動結果を含有する無線信号の受信および前記利用者の移動の様子を含有する無線信号の送信の制御が含まれることを特徴とする安全確保装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動自動化装置に関するものである。本発明はさらに、移動自動化装置と協働する安全確保装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体の例として自動車を挙げると、自動車の走行における自動運転システムが開発されている。自動運転システムは、運転者による自動車の運転を支援するものがすでに実用化されている。さらに、運転者の単なる支援を超えて、自動車はどのように走行すべきかを自動運転システムが自ら判断し、この判断結果に従って所望の場所に自動車を移動させるべく、自動車を主体的に制御する技術も徐々に実用化されつつある。
【0003】
このような自動運転システムを有効に実行するためには、自車の走行態様や自車周囲の走行環境に関する走行関連情報の取得が必要となる。走行関連情報の収集には種々の検出装置を用いることができるが、特にビデオカメラは、走行環境に関する多くの即時的な情報を取得可能であるため、検出装置として一般的に使用されている。検出装置から取得された情報は、自動車に搭載の集積回路(IC)に蓄積される。自動運転システムは、ICに蓄積された過去の情報および検出装置から継続的に得られるリアルタイムの走行関連情報から自動車の適切な走行態様を判断し、この判断結果に基づいて運転者の支援または自動車の適切な制御を行なう。
【0004】
このような、特に自動車同士の衝突を防止する自動運転システムの例としては、下記特許文献1の開示技術が挙げられる。また、ビデオカメラを用いて走行環境に関する情報を取得する例としては、下記特許文献2の開示技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-123000号公報
【文献】特開2012-198207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、走行中車両の周囲環境に関する情報を実質的にビデオカメラのみによって取得する従来の自動運転システムでは、現在走行中の車両周囲環境に関しては断片的な情報しか得られない。そのため、自動運転システムが車両周囲環境に応じて自動車を適切に制御できない場合が生じる。
【0007】
以下において、図9または図10を参照しながら、従来の自動運転システムが車両周囲環境に関して断片的な情報しか取得できないことによって生じ得る不具合の事例を挙げる。
【0008】
ある程度広い道幅がある、例えば片側1車線ずつ両側2車線の本道202と、本道202よりも道幅が狭い、例えば全幅1車線の脇道204とからなるT字路の近辺を、ともに従来の自動運転システムを搭載している自動車206および別の自動車208が走行中である場合を想定する。自動車206は、本道202を図中の左側から右側に向けて自動走行中であり、T字分岐点210に到達した後は脇道204に左折する予定であるものとする。他方、自動車208は、脇道204をT字分岐点210の所在方向に向けて自動走行中であるものとする。なお、脇道204には、車両同士が行き違いを行なうときに利用可能な待避所212が設けられているものとする。
【0009】
当該時点での周囲環境に関する情報を車載のビデオカメラで取得するにとどまる従来の自動運転システムでは、ビデオカメラで他車の存在を認識するまでは、システムは他車の存在を前提とした走行計画を立てることができない。したがって、図9で示すように、自動車208がT字分岐点210に到達する前に自動車206がT字分岐点210から脇道204に左折した場合、自動車206が脇道204に進入した後に初めて、自動車206および自動車208はそれぞれの車載カメラで他車の存在を認識することとなる。
【0010】
このとき、脇道204を走行中の自動車208は待避所212を通過してしまった後である場合には、自動車206、208はともに脇道204上で対向して立ち往生することとなる。自動車206、208がそれぞれ搭載している特許文献1の移動体衝突防止装置またはその他の自動運転システムにより互いの衝突は免れたとしても、相手方の車両が次にいかなる行動をとるかは不明であるため、各自動車206、208の自動運転システムは適切に自車を操ることができなくなる。例えば、自動車206、208は対向状態で停止したまましばらくの間移動不能になってしまう。
【0011】
図10で示す別の事例は、片側2車線ずつ両側4車線の直線道路220と、いわゆるY字路を形成するような角度で直線道路220と交わっている分岐路222とからなる三叉路の近辺を、ともに従来の自動運転システムを搭載している自動車224および別の自動車226が走行中である場合に生じ得る不具合を想定したものである。自動車224は、直線道路220の一方の車線220Aを自動走行中であり、Y字分岐点228から直線道路220の対向車線220Bを越えて分岐路222に進入する予定であるものとする(矢印A1参照)。他方、自動車226は、直線道路220の対向車線220Bを、Y字分岐点228の所在方向に向けて自動走行中であるものとする。
【0012】
また、Y字分岐点228付近における自動車や歩行者などの安全な往来を確保するために、Y字分岐点228の近辺には色灯式の交通信号機230、232が設置されている。交通信号機230は、自動車224など車線220Aを走行中の自動車に対する走行の許可または停止の指示を発光表示する装置である。他方、交通信号機232は、自動車226など対向車線220Bを走行中の車両に対する走行の許可または停止の指示を発光表示する装置である。
【0013】
本事例において、交通信号機230は車線220Aを走行中の自動車224に対して走行を許可する表示をしている一方で、交通信号機232は車線220Bを走行中の自動車226に対して停止を指示する表示をしているものとする。この場合、走行中の自動車224は、このまま走行を続けてY字分岐点228に到達し次第、対向車線220Bの状況に鑑みて適宜のタイミングで対向車線220Bを横切り分岐路222に進路変更を図ることとなる。他方、走行中の自動車226は、交通信号機232から発せられる指示に従い、Y字分岐点228の手前で停止すべく徐行運転を始めることとなる。
【0014】
自動車224の自動運転システムが取得できる周囲環境情報は、自車に搭載のビデオカメラを介して得られる情報に限定される。交通信号機232からの指示は自動車226など車線220Bを走行中の車両に伝達されれば本来的には十分である。そのため、交通信号機232が一般的な構造の色灯式信号機であれば、車線220Aを走行中の自動車224の車載カメラからは交通信号機232の裏側しか認識できず、交通信号機232からの具体的な灯色表示内容は自動車224からは認識できない。
【0015】
したがって、自動車224の自動運転システムおよび乗員は、交通信号機230から得られる情報に基づいて、交通信号機230と同じく交通信号機232も自動車226に対して走行を許可する発光表示をしているのであろうと推測する可能性が高い。すなわち、自動車224の自動運転システムおよび乗員は、対向車線220Bを走行中の自動車226は走行を継続したままY字分岐点228を通過するであろうと判断することとなる。
【0016】
しかしながら、交通信号機232は実際には停止命令を表示しているため、自動車226はY字分岐点228の手前での停止に備えて減速を始める。とはいえ、交通信号機232が発している灯色表示を認識できない自動車224にとっては、自動車226の減速の有無や、たとえ自動車226の徐行運転自体は認識できたとしてもその意図を理解することは非常に困難である。例えば、自動車224の自動運転システムおよび乗員にとっては、自動車226はY字分岐点228の手前で停止すべく徐行運転をしているとも、あるいは単にY字分岐点228付近での歩行者や自転車の飛出しに備えて徐行運転をしているにすぎないのかもしれないとも推測可能である。そのため、自動車224は自動車226がY字分岐点228の手前で停止するという確信的な判断を下せず、自動車226がY字分岐点228を通過するのを待とうとしてひとまずY字分岐点228の手前で停止することとなる。
【0017】
しかし、自動車226は実際には交通信号機232の指示に従ってY字分岐点228の手前で停止するため、自動車224にとってはそのまま車線220Bを横切って分岐路222に進入しても構わなかった状況である。自動車224は、自動車226がY字分岐点228の手前で停止した後になって初めて、交通信号機232は停止指示を発していると理解して、分岐路222へ向けて再発進することとなる。
【0018】
このとき、自動車224の後方で別の車両が走行している場合には、自動車224の停車に伴ってその後続車も停車を余儀なくされる。そのため、Y字分岐点228の周辺全体で円滑な交通が妨げられることとなる。さらに、自動車224または自動車226の乗員は、自らが推測または把握している状況と相手方車両の実際の運転状態との齟齬に起因して苛立ちを覚える可能性もある。
【0019】
ここまでで述べてきたように、従来の自動運転システムでは、ビデオカメラによって画像情報として得られる現時点での周囲環境とそれを蓄積した過去のデータのみにより、すなわち断片的な情報から自動車の走行制御をせざるを得なかった。
【0020】
本発明はこのような課題に鑑み、移動体のより適切かつ円滑な自動移動に寄与する移動体の移動自動化装置および移動自動化プログラムを記憶した記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上述の課題を解決するために、移動体が自動的に移動するよう移動体を制御する移動体の移動自動化装置を、移動体またはその周囲環境に関する情報を取得する入力部と、入力部を介して取得した情報に基づいて移動体の未来の移動態様に関連する第1の予測移動データを生成する予測部と、別の移動体に搭載された別の移動自動化装置との通信に関連する処理を行ない別の移動自動化装置から入力部を介して別の移動体の未来の移動態様に関連する第2の予測移動データを受信する通信制御部と、第1の予測移動データおよび第2の予測移動データに基づいて移動体および別の移動体の移動優先順位を判断する優先判断部とを有し、優先判断部による判断の結果に基づいて1つ以上の移動体の移動を制御するように構成している。
【0022】
さらに、本発明は上述の課題を解決するために、移動体が自動的に移動するよう移動体を制御する移動体の移動自動化装置としてコンピュータを機能させる移動体の移動自動化プログラムを、移動体または移動体の周囲環境に関する情報を取得する入力部、入力部を介して取得した情報に基づいて移動体の未来の移動態様に関連する第1の予測移動データを生成する予測部、別の移動体に搭載された別の移動自動化装置との通信に関連する処理を行ない別の移動自動化装置から入力部を介して別の移動体の未来の移動態様に関連する第2の予測移動データを受信する通信制御部、ならびに第1の予測移動データおよび第2の予測移動データに基づいて移動体および別の移動体の移動優先順位を判断する優先判断部として機能させ、優先判断部による判断の結果に基づいて1つ以上の移動体の移動を制御するように構成し、かかる構成のプログラムを記憶媒体に記憶する。
【0023】
さらに、本発明は上述の課題を解決するために、上記の移動自動化装置と協働して利用者の移動の安全を確保する安全確保装置を、安全確保装置を携行している利用者または利用者の周囲環境に関する情報を取得する入力部と、入力部を介して取得した情報に基づいて利用者の未来の移動態様に関連する第2の予測移動データを生成する予測部と、移動自動化装置との通信に関連する処理を行ない移動自動化装置から入力部を介して移動自動化装置を搭載した移動体の未来の移動態様に関連する第1の予測移動データを受信する通信制御部と、第1の予測移動データおよび第2の予測移動データに基づいて利用者および移動体の移動優先順位を判断する優先判断部と、第2の予測移動データまたは移動優先順位に関する判断結果を送信する出力部とを有し、通信制御部が行なう移動自動化装置との通信に関連する処理には出力部による第2の予測移動データまたは移動優先順位に関する判断結果の送信が含まれ、安全確保装置が有する優先判断部による判断の結果に基づいて移動自動化装置に移動体の移動を制御させるように構成している。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、移動体の自動的な移動がより適切かつ円滑に成し遂げられるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る移動自動化装置の一実施態様を示す機能ブロック図である。
図2図1に示す移動自動化装置のハードウェア構成の一例を概略的に示す図である。
図3図1の移動自動化装置が実行する移動体の移動自動化処理の工程をフローチャートの形式で示す図である。
図4図3で示す処理工程の実行により安全かつ円滑な自動運転が実現された状態を示す図である。
図5図3で示す処理工程の実行により安全かつ円滑な自動運転が実現された別の状態を示す図である。
図6図3で示す処理工程の実行により安全かつ円滑な自動運転が実現されたさらに別の状態を示す図である。
図7】本発明に係る安全確保装置の一実施態様を示す機能ブロック図である。
図8図1の移動自動化装置と図7の安全確保装置が相互通信して実行する交通管理の工程をフローチャートの形式で示す図である。
図9】三叉路で生じ得る交通上の不具合の一例を示す図である。
図10】三叉路で生じ得る交通上の不具合の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に添付図面を参照して本発明による移動体の移動自動化装置の実施態様を詳細に説明する。なお、本願において「移動体」なる語は、動力源および動力源から動力の供給を受けて駆動する移動機構を有する移動機械、特に四輪自動車、自動二輪車、自律移動ロボットなどの陸上移動機械、飛行機やドローンなどの空中移動機械および船舶や潜水艇などの水上または水中移動機械を、有人移動または無人移動の別を問わず広く含む概念で用いる。以下における実施態様の説明では、移動体は陸上を走行する四輪自動車であるものとして説明をするが、四輪自動車以外の移動機械に対しても本発明は適用可能である。
【0027】
本発明による移動自動化装置10の実施態様によれば、この装置10を搭載した自動車の走行方向、走行速度などの運転態様を自動的に決定することができる。これによって、移動自動化装置10を搭載した自動車は、人間による自動車の運転操作がなくとも、または人間による自動車の運転操作を支援しながら、目的地に向けて走行することができる。
【0028】
図1を参照すると、自動車の移動自動化装置10は、装置10の全体および装置10に接続されている自動車のハードウェア部品を制御する制御部12、運転態様の決定に関する処理手順を規定した移動自動化プログラム16や当該プログラム16の実行に必要なデータなどを記憶しておく記憶部14、および、運転態様の決定に必要となる演算処理を実行する演算部18を有する。移動自動化装置10はさらに、運転態様の決定に必要な情報を取得し、取得した情報を装置10に取り込む用に供する各種の入力部20、および、移動自動化プログラム16に基づく処理により得られた演算結果や制御信号を装置10の搭載自動車のハードウェア部品や他の自動車に供給する用に供する各種の出力部22を有する。
【0029】
入力部20はさまざまな入力ハードウェアと接続され、接続した入力ハードウェアと協働して移動自動化装置10の外部からさまざまな情報またはデータを取得することができる。入力部20は制御部12とも接続され、取得した情報またはデータを制御部12による制御のもとで記憶部14に送信する。
【0030】
出力部22は、制御部12に接続される一方でさまざまな出力ハードウェアと接続される。出力部22は、制御部12による制御のもとで、接続した出力ハードウェアと協働して、移動自動化装置10の外部へさまざまな情報含有信号または命令信号を送信する。
【0031】
制御部12は、移動自動化装置10を搭載している自車および別の移動自動化装置を搭載している別の自動車の間における無線による情報の送受信に関する制御を司る通信制御部24を有する。
【0032】
移動自動化装置10は、他の自動車に搭載された無線通信機能付きの別の移動自動化装置、GPS(Global Positioning System)発信機、交通管制センター、および交通信号機や道路標識などの交通管理用工作物に設置した無線発信器を概念的に含む広義の無線送信装置から発信される無線信号を受信可能な無線受信部26を有する。無線受信部26は、移動自動化装置10の入力部20の一部分を構成している。無線受信部26は、制御部12の通信制御部24に接続され、通信制御部24による制御のもとで無線信号の受信処理を実行する。
【0033】
移動自動化装置10はさらに、目的地、目的地到着予定時間、走行予定ルートなどの自車の走行情報を含む無線信号を、別の移動自動化装置を搭載している他の自動車に送信する無線送信部28を有する。無線送信部28は、移動自動化装置10の出力部22の一部分を構成している。無線送信部28は、制御部12の通信制御部24に接続され、通信制御部24による制御のもとで無線信号の送信処理を実行する。
【0034】
移動自動化装置10は、自車の走行情報や自車の周囲環境を検出する検出部30を有する。検出部30は、移動自動化装置10の入力部20の一部分を構成している。検出部30は、自車周囲の視覚情報を取得するビデオカメラすなわちイメージセンサ、自動車の走行速度を検出する速度計、自動車の走行方向を検出する方向センサ等の自車または外部の情報を検出可能な入力ハードウェアと接続される。このような入力ハードウェアの典型例は、図2で示す後述のセンサ32である。これらの入力ハードウェアを介して検出部30が検出した情報は制御部12による制御のもとで移動自動化装置10に供給される。
【0035】
移動自動化装置10は、自動車の乗員が人力で行なう入力ハードウェア操作を介して情報を受け取る手動操作部34を有する。手動操作部34は、移動自動化装置10の入力部20の一部分を構成している。手動操作部34は制御部12に接続され、自動車の乗員またはその他の利用者による情報の入力操作や入力された情報の処理に関して制御部12による制御を受ける。手動操作部34が乗員から受け取る情報には、所望の目的地や経由地など予定走行経路の決定に用いる情報および/または自動車の運転に必要な操作の一部を乗員が行なう場合における移動自動化装置10による運転支援の基礎となる情報が含まれる。
【0036】
演算部18は、制御部12、記憶部14および入力部20と直接または間接的に接続され、入力部20を介して得られた情報に基づいて、移動自動化装置10を搭載している自動車の未来の走行態様を予測する予測部36を有する。予測部36による予測処理は、制御部12による制御のもと、記憶部14に記憶されている移動自動化プログラム16の規定に従って実行される。
【0037】
未来の走行態様の予測に用いることができる情報の例としては、無線受信部26を介して得られた位置情報、検出部30を介して取得した自車の走行情報や周囲環境に関する情報、手動操作部34を介して得られた経由地または目的地に関する情報が挙げられる。
【0038】
予測部36が予測する未来の走行態様には、目的地までの走行経路、道路上の予想走行位置、任意の中間地点の予想通過時間、目的地への予想到達時間、任意の中間地点での予想走行速度など、自動運転に関連する多様なデータ事項が含まれる。制御部12は予測部36と協働して、これらの事項を予測走行データ(すなわち、予測移動データ)として含有したデータ信号を、移動自動化プログラム16の規定に従って生成する。例えば、装置10が取得した地図情報および目的地情報に基づいて、予測部36は数秒ないし数分先の予測走行位置を予測走行データの少なくとも一部の内容として算出することができる。移動自動化装置10は自動運転処理の過程において、予測部36が算出した数秒ないし数分先の予測走行位置を短期または中期的な目的地として取り扱っても構わない。
【0039】
移動自動化装置10の予測部36によって生成された予測走行データは、無線送信部28から他の自動車に搭載された別の移動自動化装置へ供給され、これによって、移動自動化装置10を搭載した自動車の予測走行態様は他の自動車と共有される。
【0040】
演算部18はさらに、ある時刻において走行予定経路が交わるまたは接近し合う可能性がある自車および他車の走行優先順位(すなわち、移動優先順位)を判断する優先判断部38を有する。優先判断部38は、自車に搭載された移動自動化装置10で生成された予測走行データおよび1台または複数台の他車に搭載された移動自動化装置で生成され無線受信部26を介して受信した予測走行データに基づいて、走行優先順位を判断することができる。優先判断部38による判断処理は、制御部12による制御のもと、記憶部14に記憶されている移動自動化プログラム16の規定に従って実行される。制御部12は優先判断部38と協働して、移動自動化プログラム16の規定に従って、走行優先順位に関する判断結果を優先順位データとして含有したデータ信号を生成する。信号に付される優先順位データは、判断結果自体のみならず優先順位の判断材料に用いた情報またはデータを含むものであって構わない。
【0041】
移動自動化装置10の優先判断部38によって算出された走行優先順位の判断結果は、無線送信部28から他の自動車に搭載された別の移動自動化装置へ供給され、これによって、移動自動化装置10が算出した優先順位データは他の自動車に搭載された装置10と共有される。このような共有がなされることから、移動自動化装置10は自車のみならず他の自動車の走行も間接的に制御すると捉えることもできる。
【0042】
各自動車間で共有された優先順位データは、制御部12による比較を行ない、判断結果の妥当性の確認に用いることができる。仮に判断結果に相違がある場合には、相違を発見した移動自動化装置10は他の移動自動化装置に対して再判断を促す信号を送信することができる。これとともに、移動自動化装置10は必要に応じて予測走行データの更新を行ない、他車に対する更新データの送信および更新データを用いての走行優先順位の再判断を行なうこともできる。
【0043】
制御部12は、エンジンまたはモータ等の動力源、変速機、駆動輪などを含んで構成されている自動車の駆動系42を制御する駆動制御部40を有する。駆動制御部40は、出力部22を介して駆動系42を制御することによって、移動自動化装置10を搭載した自動車の自動運転または当該自動車の運転者の運転支援を実現する。駆動制御部40は、優先判断部38によって生成された優先順位データを含有するデータ信号を受け取った場合には、優先順位データの内容を反映させた駆動系42の制御を実行する。駆動制御部40は、演算部18と協働する等して、駆動系42を制御する用に供する駆動制御信号を生成することができる。
【0044】
移動自動化装置10は、駆動制御部40が生成した駆動制御信号を駆動系42に出力する駆動出力部44を有する。駆動出力部44は、移動自動化装置10の出力部22の一部分を構成している。駆動出力部44は、移動自動化装置10と自動車の駆動系42とのインタフェースの役割を果たすといえる。
【0045】
ここまで述べてきたような構成により、移動自動化装置10を搭載した移動体は、その近隣に存在する移動自動化装置を搭載した別の移動体との直接的な通信が可能となる。移動自動化装置10が他の移動自動化装置との間で通信可能な情報としては、予測走行データ、走行優先順位の判断結果等が挙げられるが、これらに限られない。例えば、移動自動化装置10は、走行優先順位の判断に用いた予測走行データを提供した1つまたは複数の他の移動自動化装置に対して、その判断結果に従って移動体を制御して走行させた移動結果を含む無線信号を送受信すると、円滑な交通の実現により有利となる。とりわけ、低い優先順位に決定された自動車の移動自動化装置10にとっては、自車の走行が許可されたことを即座に認識し、次の走行動作に速やかに移行できることになる。
【0046】
特に、移動体が高速度で移動中の場合、移動体が採り得る経路の自由度が高い場合、または、互いの存在認識の時点で移動中の移動体同士がすでに極めて接近している場合には、衝突を回避するためにできるだけ迅速な判断およびこれに伴う移動体の制御が要求される。そのため、移動体同士の直接的な通信が可能であることは、安全性の確保の観点からみて極めて有効性が高い利点であるといえる。もっとも、移動体同士の通信は常に直接的なものである必要はなく、通信データの容量、無線通信環境、移動自動化装置10の処理能力、緊急性の程度などの通信条件に応じて適宜に、交通管制センターなどの通信設備または機器を利用して通信を行なっても構わない。
【0047】
移動自動化装置10はさらに、入力部20から取得した各種の情報および/または演算部18によって割り出された今後の走行予定などを自動車の乗員のために表示する用に供する表示部46を有していてもよい。表示部46は、移動自動化装置10の出力部22の一部分を構成している。表示部46は、移動自動化装置10と自動車に搭載されたディスプレイ48などの出力ハードウェアとのインタフェースの役割を果たすといえる。表示部46による表示の態様の一例としては、車載カメラが取得した車外の画像または取得した画像を加工した画像をディスプレイ48上で表示することが考えられる。このような画像表示に代えて、あるいは表示した画像に重畳させて、入力部20により得られた情報および/または演算部18による演算結果を数値や記号で表示するものであってもよい。
【0048】
移動自動化装置10はさらに、入力部20から取得した各種の情報および/または演算部18によって割り出された演算結果に対応する音声、例えば人工音声や警告音を自動車の乗員への通知のために発する用に供する音声部50を有していてもよい。音声部50は、移動自動化装置10の出力部22の一部分を構成している。音声部50は、移動自動化装置10と自動車に搭載されたスピーカ52などの出力ハードウェアとのインタフェースの役割を果たすといえる。
【0049】
続いて、図1を参照しつつ上記の説明をした本発明に係る移動自動化装置10の実施態様を実現可能なハードウェア構成の一例について述べる。図2で示すように、本発明に係る移動自動化装置10の実施態様は、一般的にはマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラとも呼ばれているコンピュータ60によって、少なくともその主要部分を具現化することができる。すなわち、コンピュータ60は、移動自動化プログラム16の実行によって本発明の一実施態様たる移動自動化装置10としての機能を有するに至ったものであると理解することができる。
【0050】
コンピュータ60は、コンピュータ60の構成部品およびコンピュータ60と接続された外部装置の動作を制御する中央処理装置(CPU)62、ならびに、コンピュータ60の外部から取得した情報やCPU 62 により得られた演算結果などを非一時的に記憶する不揮発性メモリ64およびそれらを一時的に記憶する揮発性メモリ66から構成された記憶装置を含んで構成されている。コンピュータ60はさらに、コンピュータ60の外部から各種の情報やデータを受信する入力ポート68、ならびに、CPU 62による演算処理から得られた制御信号や情報含有信号などの各種信号をコンピュータ60の外部へ送信する出力ポート70も含んで構成されている。コンピュータ60において、不揮発性メモリ64、揮発性メモリ66、入力ポート68および出力ポート70はいずれもCPU 62と接続されている。
【0051】
コンピュータ60のCPU 62は、図1で示す移動自動化装置10の制御部12および演算部18として働く。図2では、CPU 62は移動自動化装置10の制御部12および演算部18を機能的に含有していることを明確に表すため、CPU 62のブロック内に制御部12および演算部18を破線ブロックで示している。
【0052】
コンピュータ60の不揮発性メモリ64および揮発性メモリ66は、移動自動化装置10の記憶部14として働く。図2では、不揮発性メモリ64および揮発性メモリ66は記憶部14の構成要素であることを明確に表すため、記憶部14の機能ブロックを不揮発性メモリ64および揮発性メモリ66を示すブロックを包含している破線ブロックで描写している。
【0053】
なお、本願でいう不揮発性メモリ64とは、外部からの給電がなくても記憶内容を維持することができる記憶装置のことを意味し、いわゆるROM(Read Only Memory)のみならず、一旦記憶した情報を書換え可能な装置をも広く含む概念である。コンピュータ60に不揮発性メモリ64として実装可能な記憶装置の例としては、電気を用いて一旦記憶した情報を書換え可能なフラッシュメモリが挙げられる。しかしながら、フラッシュメモリに限らず情報の書換えが可能な他の記憶装置を不揮発性メモリ64として用いても構わない。
【0054】
他方、本願でいう揮発性メモリ66とは、通電中のときに限り記憶内容を維持することができる記憶装置を意味する。揮発性メモリ66を構成する代表的な記憶装置としてはRAM(Random Access Memory)、より具体的にはDRAM(Dynamic RAM)またはSRAM(Static RAM)が挙げられる。
【0055】
移動自動化プログラム16を不揮発性メモリ64に非一時的に記憶しておくことで、CPU 62は、移動自動化プログラム16に規定された処理手順に従ってコンピュータ60が搭載された自動車の自動運転または運転支援を実行することができる。また、移動自動化プログラム16を記憶している不揮発性メモリ64がフラッシュメモリなどの書換え可能な記憶装置であれば、必要に応じてプログラムを容易に更新することができる。
【0056】
コンピュータ60の入力ポート68および出力ポート70はそれぞれ、移動自動化装置10の入力部20および出力部22として働く。図2では、入力ポート68および出力ポート70はそれぞれ入力部20および出力部22の構成要素であることを明確に表すため、入力部20および出力部22の機能ブロックを、それぞれ入力ポート68および出力ポート70を示すブロックを包含している破線ブロックで描写している。
【0057】
入力ポート68にはさまざまな入力ハードウェアが接続されている。例えば、周囲環境に関する画像信号をビデオカメラ(イメージセンサ)、速度計、走行方向検出器などの各種センサ32、アンテナなどの部品から構成される無線受信デバイス74、目的地や経由地など利用者が求める走行条件を入力可能な操作パネル76、および、ハンドル、ブレーキなどの運転操作系78が、入力ポート68に接続される。入力ポート68と接続された入力ハードウェア(32、74、76、78)を、移動自動化装置10の入力部20の一部分を構成するものとして広義に捉えても構わない。
【0058】
出力ポート70にはさまざまな出力ハードウェアが接続されている。例えば、アンテナなどの部品から構成される無線送信デバイス80、動力源からの出力を駆動輪に伝達する駆動系42、入力部20で取得された情報および/または演算部18による演算結果に関連する画像を表示するディスプレイ48、入力部20からの取得情報または演算部18による演算結果に関連付けられた音を発するスピーカ52が、出力ポート70に接続される。出力ポート70と接続された出力ハードウェア(42、48、52、80)を、移動自動化装置10の出力部22の一部分を構成するものとして広義に捉えても構わない。
【0059】
ところで、非一時的な記憶媒体90にコンピュータ60で読取り可能な移動自動化プログラム16を記憶させておくことによって、コンピュータ60に移動自動化プログラム16を読み込ませ、コンピュータ60を本発明に係る移動自動化装置10の実施態様として働かせることができる。
【0060】
コンピュータで読取り可能な非一時的な記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)90には、RAM、ROM、紫外線照射により記憶内容の書換えが可能なROM(UV-EPROM)、電気的に記憶内容の書換えが可能なROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)メモリ、および他の光ストレージまたは磁気ストレージが含まれるが、これらには限定されない。
【0061】
コンピュータ60への移動自動化プログラム16の新規書込みまたは更新は、プログラム16が書き込まれた記憶媒体90を有線または無線によって入力ポート68に接続し、入力ポート68を介してコンピュータ60内に取り込んだプログラム16を制御部12による制御の下で不揮発性メモリ64に記憶させることによって行なうことができる(図2の矢印P1参照)。
【0062】
記憶媒体90の入力ポート68への接続は、記憶媒体90の型式に適合していて記憶媒体90が記憶しているプログラム16をコンピュータ60が適切に読込み可能な読込ドライバを入力ポート68に接続することによって実現することができる。あるいは、非一時的なコンピュータ可読媒体90が無線ネットワーク内に設けられている場合には、無線送信部28を介してプログラム16をコンピュータ60内に取り込むような構成にしても構わない。
【0063】
続いて、図3を参照しながら、本発明に係る移動自動化装置10の実施態様が実行する、走行優先順位(移動優先順位)の判断およびこの判断に従って移動自動化装置10を搭載した自動車(移動体)を自動運転するまでの移動自動化プログラム16の処理過程の一例について説明する。
【0064】
移動自動化装置10は、装置10を搭載している自動車が自動運転を開始するに伴って、入力部20で取得した、予測部36で実行する予測走行データの生成のために必要な情報を収集する(ステップS10)。
【0065】
例えば、センサ32と協働して自車の走行状態や外部環境に関する情報を検出する検出部30からは、移動自動化装置10はビデオカメラことイメージセンサにより取得された画像情報、速度計により取得された現在の走行速度、方向計により取得された現在の走行方向を取得することができる。
【0066】
移動自動化装置10を搭載している自動車がGPSを利用している場合には、移動自動化装置10は、無線受信部26から現在位置および走行中の周辺地域の地図情報などを取得することもできる。
【0067】
手動操作部34からは、移動自動化装置10は自動車の運転者、乗員その他の利用者の操作に起因して生成される様々な信号を取得することができる。移動自動化装置10は、例えば、自動車の利用者による操作パネル76の操作に応えて生成される目的地および経由地に関する情報を含有した信号、および運転者が自ら自動車の運転操作の一部を担う場合におけるハンドル、ブレーキなどの運転操作系78の操作内容を含有した信号を取得することができる。
【0068】
移動自動化装置10の制御部12は、入力部20の制御を伴う情報取得処理に関連する制御を行なった後は、記憶部14を構成する揮発性メモリ66または不揮発性メモリ64に移動自動化装置10が取得した情報を格納するための制御処理を行なう。また、必要に応じて、制御部12は一旦記憶部14に格納した取得情報の消去または更新を行なうこともできる。例えば、対向車に関する取得情報は、無事にすれ違って互いに遠ざかった後にリセット可能である。
【0069】
演算部18の予測部36は、記憶部14に格納された情報を適宜用いて、移動自動化装置10を搭載している自動車の未来の走行態様に関する予測を行なう(ステップS20)。
【0070】
予測部36が予測した目的地までの走行経路、道路上の予想走行位置、任意の中間地点の予想通過時間、目的地への予想到達時間、任意の中間地点での予想走行速度などの自動運転に関連する事項は、予測走行データとして移動自動化装置10の外部に送信する信号に含有される。予測走行データを含有する信号の生成に関する処理は、制御部12による制御の下で、移動自動化プログラム16の規定に従って実行される。
【0071】
移動自動化装置10は、ステップS20で生成した自車の予測走行データを記憶部14に格納するほか、予測走行データを含有する無線信号を無線送信部28から外部機器に送信する(ステップS30)。予測走行データ信号の外部送信は、とりわけ通信制御部24による制御に従って行われる。予測走行データ信号の送信先は、例えば、自車から所定の距離範囲内を走行している、別の移動自動化装置を搭載した他の自動車である。
【0072】
移動自動化装置10は、無線受信部26を介して、通信制御部24による制御の下で、自車の周囲を走行中の他車に搭載された本発明に係る移動自動化装置によって生成された予測走行データ信号を受信することができる(ステップS40)。受信した予測走行データ信号に含有されている情報は、制御部12による制御の下で、記憶部14を構成する揮発性メモリ66または不揮発性メモリ64に格納される。
【0073】
演算部18の優先判断部38は、ステップS20で生成された自車の予測走行データとステップS40で受信した無線信号に含まれる他車の予測走行データを比較して、走行予定経路が交わるまたは接近し合う可能性がある場合にいずれの自動車に優先走行権を付与するかの優先判断を行なう(ステップS50)。制御部12は優先判断部38と協働して、走行優先順位に関する判断結果および判断結果に関連性を有する情報を優先順位データとして含有した無線データ信号を生成する。
【0074】
移動自動化装置10の通信制御部24は、無線送信部28を制御作動させて、ステップS50で生成した優先順位データを含有する無線データ信号を、ステップS40で受信した予測走行データ信号の送信元である別の移動自動化装置に送信する。さらに、移動自動化装置10の通信制御部24は、無線受信部26を制御作動させて、ステップS30で予測走行データ信号の送信先となった別の移動自動化装置から、当該装置が生成した優先順位データを含有する無線データ信号を受信することができる。すなわち、予測走行データを交換し合った移動自動化装置同士で、今度は優先順位データを交換し合う通信をすることとなる(ステップS60)。
【0075】
ところで、移動自動化装置10は、他車から受信した優先順位データを自身の装置10で生成した優先順位データと比較することにより、自身による走行優先順位の判断が妥当なものであったか否かの確認に使用することができる。このような確認を経ることによって、自動運転の安全性をより高めることができる。
【0076】
仮に、相互の移動自動化装置10で算出した優先順位付けの結果に相違が見つかった場合には、移動自動化装置10は、自己の判断結果と異なる結果を算出した別の移動自動化装置に対して、相互の判断結果に相違がある旨を通知して再判断を促すことができる。これとともに、移動自動化装置10は、自己の装置10でも走行優先順位に関する再判断を行なってもよい。さらに必要に応じて、移動自動化装置10は、自車の走行状態や外部環境に関する情報の再取得、再取得した情報に利用しての予測走行データの更新、他の移動自動化装置に向けての更新した予測走行データの再送信および更新した予測走行データを用いての再判断を行なうこともできる。
【0077】
駆動制御部40は、優先判断部38によって生成された優先順位データに従った自動運転を実現すべく、駆動出力部44を介して駆動系42を制御する(ステップS70)。駆動制御部40により駆動系42の制御を受けた自動車は、優先判断部38により自車近辺を走行中の他車との比較で決定された優先順位に従って、必要に応じて走行方向調整、減速、一時停止その他の各自動車にとって安全および円滑な通行を確保するための動作をしながら道路上を走行する。
【0078】
なお、先の処理ステップS60にて各移動自動化装置で算出した優先順位付けの結果に相違が見つかった場合には、駆動制御部40は、自車および周囲の安全を迅速かつ最大限に確保できるよう、徐行運転、一時停止など自車および周囲の安全を迅速かつ最大限に確保しやすい動作に自動車を制御することが極めて好ましい。
【0079】
移動自動化装置10は、ステップS70による自動走行を実行した後に、通信制御部24により無線送信部28を制御作動させて、決定された走行優先順位に従って走行制御した自車の自動走行が完了したことを別の移動自動化装置に送信することができる。移動自動化装置10はさらに、無線受信部26を介して、他の自動車において決められた優先順位に従っての自動走行が完了したことを別の移動自動化装置から受信することができる(ステップS80)。
【0080】
ステップS10からS80に至るまでの移動自動化プログラム16の処理は、移動自動化装置10を搭載した自動車が、利用者が予め操作パネル76を操作して設定しておいた目的地に到着するまで続けられる。すなわち、移動自動化装置10は、特に制御部12および演算部18が協働して、装置10を搭載した自動車が目的地に到着したか否かを判断する(ステップS90)。移動自動化装置10は、自動車が未だ目的地には到着していないと判断した場合には(ステップS90の選択肢No)、ステップS10に戻り移動自動化プログラム16の規定に従った自動運転処理を継続して実行する。他方、移動自動化装置10は、自動車が目的地に到着したと判断した場合には(ステップS90の選択肢Yes)、それまで実行してきた移動自動化プログラム16の規定に従う自動運転処理を終了する。
【0081】
なお、先の処理ステップS60にて他の移動自動化装置から受信した優先順位付けの判断結果が装置10の優先判断部38による判断結果と相違していた場合には、移動自動化装置10がステップS90でとる選択肢は当然に「No」となる。そのため、移動自動化装置10は、ステップS10に戻って情報の再収集(ステップS10)、予測走行データの更新(ステップS20)、更新した予測走行データの他の移動自動化装置への再送信(ステップS30)、他の移動自動化装置が更新した予測走行データの再受信(ステップS40)およびステップS20、S40で得られた更新後の予測走行データに基づく再判断(ステップS50)を行なうことができる。
【0082】
続いて、本発明に係る移動自動化装置10の実施態様が図3のフローチャートで示した走行優先順位の判断処理を実行した場合に各自動車が発現する自動運転動作の例を説明する。まずは、片側1車線ずつ両側2車線の本道202と全幅1車線の脇道204とからなるT字路の近辺を、ともに本発明に係る移動自動化装置10を搭載している自動車206および自動車208が走行中である場合を想定する。
【0083】
各車に搭載されている移動自動化装置が従来技術によるものであった場合には、図9で示したように、脇道204上にて自動車206、208は対向状態で停止したまましばらくの間走行不能になるおそれがあることは、上記項目[発明が解決しようとする課題]にて述べたとおりである。しかしながら、自動車206、208が本発明の実施態様である移動自動化装置10を搭載していれば、かかる事態は避けられる。
【0084】
まずは、脇道204の優先走行権を、本道202を走行中の自動車206に付与する場合の例について述べる。自動車206に脇道204の優先走行権を与える場合の例としては、本道202から脇道204へ左折する予定の自動車206はまもなくT字分岐点210に到達する見込みである一方で、T字分岐点210に向けて脇道204を走行中の自動車208は未だ待避所212に到達していないような場合が挙げられる。
【0085】
自動車206、208の移動自動化装置10は、本道202または脇道204を走行しながらも、自車の走行態様および周囲環境に関する情報を収集する(ステップS10)。自動車206、208の移動自動化装置10はそれぞれ、収集した情報に基づいて自車の予測走行データを生成し、収集した情報の追加に伴い適宜予測走行データを更新する(ステップS20)。
【0086】
自動車206、208の移動自動化装置10は、自車側で生成した予測走行データを含有する無線信号を相手側の自動車に送信するとともに、相手側自動車の移動自動化装置10が生成した予測走行データを含有する無線信号を受信する(ステップS30およびS40)。これにより、各自動車206、208は、それぞれの車載ビデオカメラで相手方自動車を検出する前から相手方自動車の存在を認識することができる。
【0087】
自動車206、208の移動自動化装置10は、自ら生成した自車の予測走行データと受信した他車の予測走行データを比較して、自動車206、208のいずれに脇道204の優先走行権を付与すべきかを判断する(ステップS50)。本例の場合、移動自動化装置10の優先判断部38は、まもなくT字分岐点210に到達する見込みの自動車206に脇道204の優先走行権を与えるべきと判断する。
【0088】
自動車206、208の移動自動化装置10は、優先走行に関する判断結果を他車に送信する。これとともに、自動車206、208の移動自動化装置10は、他車の移動自動化装置10が算出した優先走行に関する判断結果を当該他車から受信することができる(ステップS60)。他車側で算出された判断結果を受け取ることにより、自動車206、208の移動自動化装置10は、優先走行権に関しては自動車206、208で同一の判断結果を共有できていることが確認できる。
【0089】
自動車206、208の移動自動化装置10は、算出した優先走行に関する判断結果に従って、駆動出力部44を介して駆動系42を制御する(ステップS70)。本例の場合、脇道204の優先走行権を有するのは自動車206なので、自動車208の移動自動化装置10は、自動車208を待避所212に操り、T字分岐点210を左折して脇道204を走行する自動車206をやり過ごすまで自動車208を待避所212で停止させる(図4の矢印D1を参照)。待避所212で停車している自動車208の移動自動化装置10は、自動車206が脇道204に設けられた待避所212を通過したこと(図4の矢印D2)を検出した後、自動車208を再発進させて脇道204に戻し、脇道204の走行を再開させる。
【0090】
このときの自動車208の移動自動化装置10による検出方式の一例としては、前述のステップS80に基づく処理が挙げられる。より具体的には、自動車206の移動自動化装置10は、待避所212を通過したタイミングで自車に付けられた優先順位に従った自動走行を完了した旨の情報を含む無線信号を自動車208の移動自動化装置10に送信する。自動車208の移動自動化装置10は、この無線信号を受信することによって、自動車206が脇道204に設けられた待避所212を通過したことを検出することができる。
【0091】
他方、脇道204の優先走行権を、すでに脇道204を走行中の自動車208に付与する場合の例についても述べる。自動車208に脇道204の優先走行権を与える場合の例としては、脇道204を走行中の自動車208はすでに待避所212を通過してまもなくT字分岐点210に到達する見込みである一方で、本道202から脇道204へ左折する予定の自動車206の現在位置からT字分岐点210までの距離は比較的離れていて、自動車206がT字分岐点210に到達するまでには相当程度の時間を要すると見込まれるような場合が挙げられる。
【0092】
この場合、自動車206、208に搭載された移動自動化装置10の優先判断部38は、自動車208に脇道204の優先走行権を与えるべきと判断することとなる(ステップS10~S50)。自動車206、208の移動自動化装置10は、互いに算出した判断結果に従って、駆動出力部44を介して駆動系42を制御する(ステップS60~S70)。本例の場合、脇道204の優先走行権を有するのは自動車208なので、自動車206の移動自動化装置10は、自動車206をT字分岐点210の手前で停止させて、脇道204を走行する自動車208がT字分岐点210を経由して本道202へ進入まで待機させる(図5を参照)。T字分岐点210の手前で停車している自動車206の移動自動化装置10は、自動車208がT字分岐点210を通過して本道202に進入したこと(図5の矢印D3)を検出した後、自動車206を再発進させて、自動車206がT字分岐点210を左折して脇道204に進入するよう自動運転制御を行なう。
【0093】
また、脇道204のみならず本道202も全幅1車線の道幅であって脇道204には待避所212が設けられていないT字路付近を自動車206、208が走行中の場合に、各自動車が移動自動化装置10によって発現可能な自動運転動作の例についても簡潔に説明する。
【0094】
図6に示すようなT字路付近で、自動車206は本道202を図中の下側から上側に向けて自動走行中であり、T字分岐点210に到達した後は脇道204に左折する予定である。他方、脇道204を走行中の自動車208は、T字分岐点210を経て右折する予定である。ここでは、ステップS10~S50の処理の結果、自動車208に優先走行権が与えられたものとする。
【0095】
まずは、自動車206の移動自動化装置10は、駆動系42を制御してT字分岐点210を通過するまでは自動車206を走行させ、T字分岐点210を少し過ぎた位置で停車させる(ステップS70による矢印D4で示す移動)。自動車206の移動自動化装置10は、自動車206の走行結果に関する情報を含む信号を自動車208へ向けて送信する。自動車208の移動自動化装置10は、この信号を受信することによって、優先走行権を有する自動車208が意図する走行に何ら支障がなくなったことを認識する(ステップS80)。
【0096】
自動車208がT字分岐点210にて右折し本道202に進入した後(ステップS70による矢印D5で示す移動)、自動車208の移動自動化装置10はこの走行結果に関する情報を含む信号を自動車206へ向けて送信する。自動車206の移動自動化装置10は、この信号を受信することによって、自車と比較して走行順位が高かった自動車208がT字路から離れ去り、T字分岐点210付近の走行権が自動車206に移されたことを認識する(ステップS80)。自動車206は、一旦T字分岐点210の手前まで後退して、再度前進してT字分岐点210を左折する。自動車206のこの動きは、ステップS90を経てループした移動自動化プログラム16の処理ステップS70を実行した結果としての、矢印D6で示す移動と捉えることができる。
【0097】
さらに別の事例として、図10で示した事例、すなわち、いわゆるY字路を形成するような角度で直線道路220と分岐路222が交わっている三叉路の近辺を、ともに移動自動化装置10を搭載している自動車224、226が走行中の状況を想定した各自動車が発現する自動運転動作を説明する。
【0098】
自動車224の移動自動化装置10は、自ら生成した自車の予測走行データと受信した他車の予測走行データを比較して自動車224に優先走行権があるか否か、すなわち、Y字分岐点228およびその周辺において自動車224は対向車線220Bを走行中の自動車226に対して優先的に走行可能であるか否かを判断する(ステップS10~S50)。
【0099】
このとき、自動車224に搭載された移動自動化装置10は、たとえ自車のセンサ32(特に、ビデオカメラ)からは交通信号機232の発光表示色を検出できなくても、対向車両である自動車226に搭載の装置10から供給を受けた予測走行データに含まれる情報から、自動車226に対して交通信号機232が現在発している指示の内容を認識することができる。そのため、図10に示す状況の場合には、自動車224の移動自動化装置10は、交通信号機232は自動車226に対して停止の指示信号を発していることを認識し、分岐路222への進入に関して自動車224は自動車226に対する優先走行権を有すると判断する。
【0100】
自動車224の移動自動化装置10は、優先走行権に関して算出した判断結果に従って、駆動出力部44を介して駆動系42を制御する(ステップS60~S70)。すなわち、自動車224は、減速しつつあっても依然走行中の自動車226の存在に関わらず、Y字分岐点228の手前で一時停止する必要なく対向車線220Bを横断して分岐路222へ進入することができる。
【0101】
他方、対向車線220Bを走行中の自動車226では、交通信号機232の発光表示色を認識できることはもちろん、搭載している移動自動化装置10は自動車224から予測走行データおよび優先走行に関する判断結果を受信することができる。したがって、自動車226に搭載の装置10は、Y字分岐点228付近での優先走行権は相手側自動車224にあることを認識し、自動車226の運転を制御することができる。このときに、自動車226に搭載の装置10は、近未来に予測されるY字分岐点228付近の交通状況、優先走行権の有無およびこれに伴う各自動車224、226の走行予定などをディスプレイ48に表示させる処理を実行することが好ましい。ディスプレイ48の表示により、自動車226の乗員に対して、実行中の自動走行に安心感を与えることができるからである。
【0102】
ところで、交通信号機または交通標識体などの建造物に、移動自動化装置10が周囲環境の認識や走行優先順位の判断をする際に必要となる情報を載せた無線信号を送信する送信器を取り付けてもよい。図10で示す事例では、交通信号機230、232に送信器を取り付け、これらの信号機の対向車線を走行中の自動車226または224からでも交通信号機230、232が灯色表示の方式で発信した走行許可または停止指示を認識できるようにしてもよい。これにより、移動自動化装置10では、予測走行データを供給可能な他の自動車が自車の近くに存在しないときであっても周囲環境に関する情報を取得することができる。
【0103】
このような情報の他に、これらの建造物に取り付ける送信器は、交通管制センターなどの交通管理設備が発信する交通情報および/または周囲の交通状況に関連する情報を収集し、これらの情報を含有する無線信号を適宜発信する中継送信器としての役割を果たすようなものであってもよい。この場合、送信器を付設した建造物の付近を走行する自動車に搭載された移動自動化装置10は、予測走行データの生成または優先走行の判断に必要かつ十分な情報をより迅速にかつ効率よく取得することができる。
【0104】
また、本発明に係る移動自動化装置と本質的な構成が共通し、携行容易な寸法および形態に形成した安全確保装置もまた、本発明の一実施態様といえる。本発明の一実施態様である安全確保装置300は、移動自動化装置10と協働して、歩行者、自転車搭乗者などを含むすべての道路利用者が安全かつ円滑に移動できるよう支援する交通管理システムを構築する。なお、このような安全確保装置300は、移動自動化装置10の多くの実施態様において包含されているものといえる。
【0105】
図7では、移動自動化装置10と協働して交通管理システムの一部を構築している安全確保装置300の一実施態様を示している。安全確保装置300の構成要素のうち、移動自動化装置10の構成要素と実質的に同一の働きをする構成要素には同一の参照符号を付している。すなわち、安全確保装置300に含まれる大半の構成要素は、移動自動化装置10の構成要素と共通している。
【0106】
安全確保装置300の構成は、自動車などの移動機器に設けられる駆動部との関連で作動する駆動制御部40および駆動出力部44に相当する構成要素を必ずしも設ける必要はないことを除き移動自動化装置10と本質的には同様である。もっとも、携行式の安全確保装置300は、二輪車、電動車いすなどの移動体に対して回路的に接続可能な構成を採ってもよく、この場合には、移動体に接続した安全確保装置300は移動自動化装置として機能する。このような構成を採る場合には、安全確保装置300は駆動制御部40および駆動出力部44を含む構成を採っても構わない。
【0107】
駆動制御部40および駆動出力部44を含まない安全確保装置300は、出力部22の作動により安全確保装置300の利用者、すなわち携行者に対して注意を喚起することによって、携行者の安全な移動を確保する。安全確保装置300の一実施形態として、内蔵の記憶装置に安全確保プログラム316が記憶されているスマートフォンである場合を例に挙げると、スマートフォンの態様をとる安全確保装置300は、表示部46、音声部50およびスマートフォンを振動させる振動部352を出力部22に含み、接近車両の存在など周囲環境に関する情報を振動によって装置携行者に通知することができる。図7では、表示部46、音声部50および振動部352を含む、安全確保装置300の携行者に対して周囲環境に関する情報を通知する通知装置または手段を、出力部22の一部分たる通知部354として示している。
【0108】
通知部354によって注意喚起がなされた後の安全確保装置300の携行者の移動の様子は、検出部30によって検出される。そして、その検出結果は無線送信部28を介して移動自動化装置10に送信され、安全確保装置300の携行者の移動に関する情報は通信先の装置にも共有されることとなる。出力部22による注意喚起の通知は、携行者が危険を回避する行動をとったことを検出部30が検知できるまで続けることが好ましい。
【0109】
安全確保装置300の記憶部14に記憶されている安全確保プログラム316は、他の移動自動化装置10との通信、受信した情報を用いた優先判断および判断結果の送信など、安全確保装置300を作動させるプログラムの内容は、移動自動化プログラム16の内容と本質的に共通する。
【0110】
本願発明に係る安全確保装置が携行可能であれば、当該安全確保装置を携行した人間が歩行中である場合、または移動自動化装置未搭載の移動体、例えば自転車に搭乗中である場合に、自動車などの移動機器に搭載された移動自動化装置10は、画像情報の取得に先立って迅速に自転車や歩行者の存在を察知することができる。他方、安全確保装置300を携行して道路上を移動している者にとっては、自己の存在をより早期に走行中の自動車に通知できることとなる。すなわち、安全確保装置300を携行する者にとっては、安全確保装置300により自己の安全な移動が確保されることとなる。
【0111】
図8を参照しながら、本発明に係る移動自動化装置10および安全確保装置300の各実施態様が実行する、これらの装置間の相互通信に伴う移動自動化プログラム16および安全確保プログラム316の処理過程の一例について説明する。以下においては、移動自動化装置10は走行中の自動車に搭載され、安全確保装置300は歩行者すなわち移動中の利用者が携行している状況を想定して説明を行なう。
【0112】
安全確保プログラム316を記憶している安全確保装置300の実行動作は、移動自動化プログラム16を記憶している移動自動化装置10の実行動作と本質的には共通している。そのため図8では、移動自動化装置10の実行動作と実質的に共通する安全確保装置300の実行動作については、ステップS10~S60およびS80~S90の参照符号をそのまま付して示す。
【0113】
図8では、移動自動化装置10および安全確保装置300が各装置で収集したデータおよび演算結果の他方装置に対する送受信を破線矢印の進行方向で示している。安全確保装置300は、移動自動化装置10と協働して、携行者の移動状態または携行者周囲の環境に関する情報収集(ステップS10)、収集した情報に基づく携行者の移動態様の予測(ステップS20)、移動自動化装置10との間で各装置が作成した予測データの送受信(ステップS30~S40)、ならびに、得られた予測データに基づく優先判断およびその結果の送受信(ステップS50~S60)を実行する。
【0114】
図7で示す安全確保装置300の実施形態の場合、図1で示す移動自動化装置10と異なり駆動制御部40および駆動出力部44は有していないので、移動自動化装置10におけるステップS70の駆動系の直接的な制御に相当する動作は行わない。しかしながら、安全確保装置300は、その携行者に対する通知部354からの信号出力を通じた注意喚起(ステップS170)により、移動者の行動を間接的に制御することは可能である。なお、図示の実施形態のように移動自動化装置10が安全確保装置300の構成を包含している場合、このような注意喚起は移動自動化装置10でも実行可能である。
【0115】
安全確保装置300は注意喚起後の携行者の移動の様子を検出し、その検出結果を移動自動化装置10に送信する。そして安全確保装置300は、移動自動化装置10から移動体の走行結果、すなわち決定された走行優先順位に従って移動体の自動走行が完了した旨の通知を受ける(ステップS80)。安全確保装置300は、ステップS10~S80の動作を目的地に到達するまで続ける(ステップS90)。
【0116】
以上、ここまで本発明の実施態様を述べてきたが、本発明を実施する具体的手法は上述の実施態様に制限されるものではない。本発明の実施が可能である限りにおいて適宜に設計や動作手順等の変更をなし得る。例えば、本発明に用いられる構成要素の機能発揮を補助する用に供する装置、回路、ソフトウェア等の補助的要素については、適宜に付加および省略可能である。
【符号の説明】
【0117】
10 移動自動化装置
12 制御部
14 記憶部
16 移動自動化プログラム
18 演算部
20 入力部
22 出力部
24 通信制御部
26 無線受信部
28 無線送信部
30 検出部
34 手動操作部
36 予測部
38 優先判断部
40 駆動制御部
44 駆動出力部
46 表示部
50 音声部
60 コンピュータ
62 CPU
64 不揮発性メモリ
66 揮発性メモリ
68 入力ポート
70 出力ポート
90 記憶媒体
300 安全確保装置
316 安全確保プログラム
352 振動部
354 通知部
【要約】
移動体が自動的に移動するよう移動体を制御する移動体の移動自動化装置は、移動体または移動体の周囲環境に関する情報を取得する入力部と、入力部を介して取得した情報に基づいて移動体の未来の移動態様に関連する第1の予測移動データを生成する予測部と、移動体とは別の移動体に搭載された別の移動自動化装置との通信に関連する処理を行ない、別の移動自動化装置から入力部を介して別の移動体の未来の移動態様に関連する第2の予測移動データを受信する通信制御部と、第1の予測移動データおよび第2の予測移動データに基づいて移動体および別の移動体の移動優先順位を判断する優先判断部とを有し、優先判断部による判断の結果に基づいて1つ以上の移動体の移動を制御する構成を採っている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10