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特許7629182アミロイドβの凝集抑制剤、アミロイドβ凝集疾患用医薬組成物、およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】アミロイドβの凝集抑制剤、アミロイドβ凝集疾患用医薬組成物、およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20250205BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20250205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250205BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K38/08
A61P43/00 111
A61P25/28
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020167404
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059674
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】522178496
【氏名又は名称】O-Force合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(72)【発明者】
【氏名】秋澤 俊史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 源顕
(72)【発明者】
【氏名】東 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 里菜
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/117031(WO,A2)
【文献】特表2007-516939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0140506(US,A1)
【文献】NAKAMURA, R. et al.,Evaluation of the proteolytic activity of 5-mer peptides in BoxA region of Tob/BTG family proteins against Amyloid-β fragment peptides,PEPTIDE SCIENCE 2019 Proceedings of the 56th Japanese Peptide Symposium,2020年02月,p.9-10
【文献】Peptides,2019年,Vol.116,pp.71-77
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/06
A61K 38/08
A61P 43/00
A61P 25/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドおよび配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一方を含むことを特徴とするアミロイドβの凝集抑制剤。
配列番号1:GSGNR
配列番号2:GSGFK
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドおよび配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一方を含むことを特徴とするアミロイドβ凝集が原因となるアミロイドβ疾患用医薬組成物。
配列番号1:GSGNR
配列番号2:GSGFK
【請求項3】
前記アミロイドβ凝集が原因となるアミロイドβ疾患が、記憶障害、アルツハイマー病、および脳アミロイドアンギオパチーの少なくとも一方である、請求項2に記載のアミロイドβ疾患用医薬組成物。
【請求項4】
前記アミロイドβ凝集が原因となるアミロイドβ疾患に対する予防剤である、請求項2または3に記載のアミロイドβ疾患用医薬組成物。
【請求項5】
さらに、アミロイドβ凝集体に対する分解剤を含む、請求項2から4のいずれか一項に記載のアミロイドβ疾患用医薬組成物。
【請求項6】
非ヒト動物に、請求項1に記載のアミロイドβの凝集抑制剤を添加することを特徴とするアミロイドβの凝集抑制方法。
【請求項7】
被検体に、請求項1に記載のアミロイドβの凝集抑制剤in vitroで投与することを特徴とするアミロイドβの凝集抑制方法。
【請求項8】
非ヒト動物に、請求項1に記載のアミロイドβの凝集抑制剤を投与することを特徴とするアミロイドβ凝集が原因となるアミロイドβ凝集疾患の治療方法。
【請求項9】
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドおよび配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一方を含むことを特徴とするアミロイドβ凝集体の凝集乖離剤。
配列番号1:GSGNR
配列番号2:GSGFK
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイドβの凝集抑制剤、アミロイドβ凝集疾患用医薬組成物、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
平均寿命の上昇に伴う人口における高年齢層の割合の増加により、老年期での発症が多くを占めるアルツハイマー病は、深刻な問題となっている。アルツハイマー病は、認知機能障害と記憶力の低下が生じる進行性中枢神経変性疾患である。脳においてアミロイドβが分子間会合により凝集して生成された線維状凝集体(アミロイド線維)がその原因と考えられている。しかしながら、臨床において有効な薬剤は実用化されておらず、候補薬のさらなる探索が求められている。これはアルツハイマー病には限られず、アミロイド繊維が原因となる疾患全般において同様の問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、アルツハイマー病等の原因となるアミロイドβの凝集を抑制する新たな薬剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のアミロイドβの凝集抑制剤は、配配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドおよび配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一方を含むことを特徴とする。
配列番号1:GSGNR
配列番号2:GSGFK
【0005】
本発明のアミロイドβ凝集疾患用医薬組成物は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドおよび配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明のアミロイドβの凝集抑制方法は、被検体に、前記本発明のアミロイドβの凝集抑制剤を添加することを特徴とする。
【0007】
本発明のアミロイドβ凝集疾患の治療方法は、被検体に、前記本発明のアミロイドβの凝集抑制剤を投与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアミロイドβの凝集抑制剤によれば、アミロイドβの分子間会合による凝集を抑制できるため、アルツハイマー病等のアミロイド凝集疾患の治療、例えば、予防、進行の抑制、改善等が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ペプチド1(GSGNR)またはペプチド2(GSGFK)を添加した反応液の蛍光強度を示すグラフである。
図2図2(A)は、ペプチド2(GSGFK)を添加した反応液の蛍光強度を示すグラフであり、図2(B)は、ペプチド1(GSGNR)を添加した反応液の蛍光強度を示すグラフである。
図3図3は、11日目の前記Aβ25-35液および前記Aβ25-35とペプチド2との混合液の蛍光強度を示すグラフである。
図4図4(A)は、マウス群の交替行動率を示す棒グラフであり、図4(B)は、マウス群の交替行動率を示す折れ線グラフである。
図5図5(A)は、マウス群の移動速度を示すグラフであり、図5(B)は、マウス群の中央部分の滞在時間割合を示すグラフである。
図6図6は、マウス群の物体認識テストの結果を示すグラフである。
図7図7(A)は、ペプチド1(GSGNR)またはペプチド2(GSGFK)を添加した反応液の蛍光強度を示すグラフであり、図7(B)は、前記ペプチド添加から4hr後の蛍光強度減少率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<アミロイドβの凝集抑制剤>
本発明のアミロイドβの凝集抑制剤は、前述のように、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドおよび配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一方を含むことを特徴とする。前記配列番号1のペプチドを、以下、ペプチド1またはGSGNRともいい、前記配列番号2のペプチドを、以下、ペプチド2またはGSGFKともいう。
配列番号1:GSGNR
配列番号2:GSGFK
【0011】
前記ペプチド1および前記ペプチド2は、例えば、構成単位であるアミノ酸残基が、D体のみでもよいし、L体のみでもよいし、両方を含んでもよい。
【0012】
前記ペプチド1および前記ペプチド2は、例えば、化学修飾されたペプチドイソスターであってもよい。前記化学修飾は、例えば、全てのアミノ酸残基であってもよいし、一部のアミノ酸残基であってもよい。前記化学修飾の種類は、特に制限されず、例えば、水素原子のハロゲン原子への置換、天然型アミノ酸に対応する非天然型アミノ酸への置換、メチル基の導入、アミノ酸側鎖の修飾、ペプチドの環状化、カルボキシル基および/またはアミノ基の修飾、末端カルボキシル基のアミド化等があげられる。
【0013】
前記ペプチド1および前記ペプチド2によれば、アミロイドβ(Aβ)またはそのフラグメントペプチドの凝集を抑制できる。つまり、アミロイドβ(Aβ)またはそのフラグメントペプチドが、分子間会合により凝集すること自体を抑制できるため、例えば、凝集体の生成抑制ともいえる。前記ペプチド1および前記ペプチド2が凝集を抑制するアミロイドβの由来は、特に制限されず、例えば、ヒトまたは後述する非ヒト動物があげられ、好ましくはヒトである。ヒトアミロイドβの全長アミノ酸配列は、例えば、40アミノ酸残基-42アミノ酸残基数である。ヒトアミロイドβの全長アミノ酸配列の長さは、例えば、アミロイド前駆体(APP)からの酵素による切断部位によって異なる。42アミノ酸残基のヒトアミロイドβは、例えば、データベース(PubChem)にアクセッション番号CID: 57339251で登録されており、配列番号3で表される。40アミノ酸残基のヒトアミロイドβは、配列番号3において、N末端の1番目のアミノ酸残基(D)から40番目のアミノ酸残基(V)までの配列であり、40番目のアミノ酸残基がC末端である。
配列番号3:DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA
【0014】
本発明の凝集抑制剤は、例えば、アミロイドβ(Aβ)またはそのフラグメントペプチドの凝集が原因となる疾患(アミロイドβ凝集疾患)の治療に使用できる。本発明において治療は、例えば、予防、進行の抑制、改善(緩和)の意味を含み、特に、前記凝集体自体が生成されることを抑制できることから、予防および進行の抑制に有用である。前記予防は、例えば、再発の防止の意味も含む。前記アミロイドβ凝集疾患は、特に制限されず、前記アミロイドβの凝集が原因となりうる疾患であり、具体例として、例えば、記憶障害、アルツハイマー病、脳アミロイドアンギオパチー等があげられる。
【0015】
本発明の凝集抑制剤は、本発明の凝集抑制組成物ともいう。本発明の凝集抑制剤は、有効成分として、前記ペプチド1および前記ペプチド2の少なくとも一方を含む。本発明の凝集抑制剤に含まれる前記有効成分は、前記ペプチド1のみでもよいし、前記ペプチド2のみでもよいし、前記ペプチド1と前記ペプチド2の両方でもよい。本発明の凝集抑制剤は、例えば、前記有効成分のみからなる組成物でもよいし、前記有効成分と、その他の添加成分とを含む組成物でもよい。前記添加成分は、特に制限されず、例えば、薬理学的に許容される成分があげられる。前記添加成分については、例えば、後述する医薬組成物における説明を援用できる。
【0016】
本発明の凝集抑制剤は、例えば、アミロイドβ(Aβ)またはそのフラグメントペプチドが存在する環境下、または存在すると推測される環境下で使用できる。本発明の凝集抑制剤は、例えば、被検体に添加できる。前記被検体は、例えば、細胞等が含まれない非生物系の被検体でもよいし、脳細胞等の細胞、脳等の組織、生体等の生物系の被検体でもよい。後者の被検体の場合、前記添加は、例えば、in vivo、またはin vitroで行うことができる。前記細胞および組織は、例えば、ヒト由来でもよいし、非ヒト動物由来でもよく、前記生体は、例えば、ヒトでもよいし、非ヒト動物でもよい。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ラクダ等の哺乳類動物があげられる。
【0017】
本発明において、凝集抑制とは、例えば、アミロイドβが凝集することの抑制、または、すでに凝集されたアミロイドβ凝集体の乖離による抑制である。本発明におけるペプチド1(GSGNR)は、例えば、アミロイドβ凝集体を乖離でき、また、凝集すること自体を抑制できてもよい。本発明におけるペプチド2(GSGFK)は、例えば、アミロイドβが凝集することを抑制でき、また、アミロイドβ凝集体を乖離できてもよい。前記アミロイドβ凝集体の乖離とは、例えば、前記凝集体を単体のアミロイドβに解いていくことを意味し、前記アミロイドβ凝集体におけるアミロイドβ分子内での切断による分解(加水分解によるアミロイドβの切断)の意味を除く。この場合、本発明の凝集抑制剤は、例えば、凝集乖離剤ともいえる。
【0018】
本発明の凝集抑制剤は、例えば、ペプチド1および/またはペプチド2の他に、例えば、付加ペプチドを有してもよい。前記付加ペプチドは、例えば、ペプチド1またはペプチド2に結合している形態があげられる。前記付加ペプチドは、例えば、アミロイドβまたはアミロイドβ凝集体が存在する部位へのDDS能を有するものがあげられる。また、前記付加ペプチドは、例えば、生体の投与時にはペプチド1またはペプチド2に結合しており、生体内容に投与された後、生体内の酵素等によりペプチド1またはペプチド2から切断除去されるシグナルペプチド等でもよい。
【0019】
本発明の凝集抑制剤は、例えば、後述する本発明のアミロイドβ凝集疾患用医薬組成物としても使用できる。また、本発明の凝集抑制剤は、例えば、後述する本発明のアミロイドβの凝集抑制方法、アミロイドβ凝集疾患の治療方法に使用できる。本発明の凝集抑制剤は、後述する本発明のアミロイドβ凝集疾患用医薬組成物、アミロイドβの凝集抑制方法、およびアミロイドβ凝集疾患の治療方法における説明を援用できる。
【0020】
<アミロイドβ凝集疾患用医薬組成物>
本発明のアミロイドβ凝集疾患用医薬組成物(以下、医薬組成物ともいう)は、前述のように、前記配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド1および前記配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド2の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の医薬組成物は、アミロイドβまたはそのフラグメントペプチドの凝集を抑制できる前記ペプチド1および前記ペプチド2の少なくとも一方を含むことが特徴であり、その他の構成は、特に制限されない。前記ペプチド1および前記ペプチド2については、前記本発明の凝集抑制剤における記載を援用できる。
【0022】
本発明の医薬組成物は、有効成分として、前記ペプチド1および前記ペプチド2の少なくとも一方を含む。本発明の医薬組成物に含まれる前記有効成分は、前記ペプチド1のみでもよいし、前記ペプチド2のみでもよいし、前記ペプチド1と前記ペプチド2の両方でもよいし、さらに、前記アミロイドβ凝集疾患に対する他の有効成分を含んでもよい。前記他の有効成分は、例えば、前記ペプチド1および前記ペプチド2と同様に、凝集体の生成を抑制する有効成分でもよいし、生成された凝集体を分解する有効成分でもよく、後者が好ましい。前記凝集体の分解とは、例えば、加水分解活性等により前記凝集体を切断することによる分解でもよいし、前記凝集体を、それを構成する分子(アミロイドβまたはそのフラグメントペプチド)に乖離することによる分解でもよい。前記凝集体を切断によって分解する有効成分としては、例えば、国際公開WO2017/119511に開示されている加水分解活性を示す触媒性ペプチド等があげられる。本発明の医薬組成物は、例えば、凝集体の生成自体を抑制する有効成分(前記ペプチド1および/または前記ペプチド2)と、前記凝集体を分解する有効成分とを含むことによって、まず、前者により凝集体の生成自体を抑制し、さらに、仮に凝集体が生成されても、後者により生成された凝集体を分解できるため、二段階での防御が可能なることから特に好ましい。
【0023】
本発明の医薬組成物は、例えば、前記有効成分のみからなる組成物でもよいし、前記有効成分と、その他の添加成分とを含む組成物でもよい。前記添加成分は、特に制限されず、例えば、薬理学的に許容される成分があげられる。前記添加成分は、例えば、本発明の医薬組成物の投与方法、投与部位、および剤型等に応じて、適宜設定できる。
【0024】
本発明の医薬組成物の投与方法は、特に制限されず、非経口投与、経口投与等があげられる。静脈投与があげられる。
【0025】
前記非経口投与の方法は、例えば、患部注射、静脈注射、皮下注射、皮内注射、点滴注射、経鼻投与、経皮投与等があげられる。前記非経口投与の場合、投与部位は、例えば、治療部位に直接的に投与してもよいし、治療部位に間接的に投与してもよい。後者の場合、例えば、前記治療部位まで本発明の医薬組成物の有効成分をデリバリーできる部位である。アミロイドβ凝集疾患は、例えば、前述した記憶障害、アルツハイマー病等のように、アミロイドβの凝集体が脳に発生することが原因となる場合が多い。このため、前記治療部位は、例えば、脳であり、その投与方法は、例えば、注射等による脳への直接投与、経鼻投与等が好ましい。
【0026】
本発明の医薬組成物の剤型は、特に制限されず、投与方法により適宜設定できる。本発明の医薬組成物の投与時の剤型は、例えば、液状、クリーム状、ジェル状、パウダー状等である。また、本発明の医薬組成物の投与前の剤型、具体的には流通過程における剤型は、例えば、前記投与時の剤型と同じでもよく、異なってもよく、後者の場合、投与時において、薬剤師、看護師、または医師等が前記投与時の剤型に調製できる剤型でもよい。前記投与前の剤型としては、例えば、パウダー、および顆粒等の固体状、濃縮タイプの液状等があげられる。
【0027】
本発明の医薬組成物において、前記添加成分は、前述のように、投与方法および剤型等に応じて適宜設定でき、例えば、溶媒、希釈剤、賦形剤、担体等があげられる。前記溶媒は、例えば、水、生理食塩水、等張液、緩衝液等の水性溶媒、大豆油等の油性溶媒、前記水性溶媒と前記油性溶媒との混合液である乳化溶媒があげられる。本発明の医薬組成物は、例えば、前記添加成分として、アルコール、ポリアルコール、界面活性剤等を含んでもよい。また、本発明の医薬組成物は、例えば、前記有効成分を治療部位に効果的にデリバリーするためのDDS剤を含んでもよい。本発明の医薬組成物は、例えば、前記有効成分が封入されたキャリアーを含有する形態でもよい。前記キャリアーは、例えば、高分子等のナノ粒子があげられる。このように、前記有効成分を封入した形態とすることで、例えば、前記有効成分の安定性を保持でき、また、DDSにもなる。この場合、例えば、本発明の医薬組成物は、例えば、静脈注射等による投与に使用することが好ましい。
【0028】
本発明の医薬組成物の投与対象(被検体)は、例えば、ヒト、前記非ヒト動物があげられる。本発明の医薬組成物の投与条件は、特に制限されず、生物種、年齢、体重、性別、アミロイドβ凝集疾患の罹患の有無、進行程度等に応じて適宜決定できる。投与対象が体重70kgの成人男性の場合、本発明の医薬組成物の投与条件は、例えば、投与1回あたりの前記ペプチド1および/前記ペプチドの合計量が0.0005~100mgであり、1日の投与回数が1回、インターバルが1~10日ごとの投与である。
【0029】
本明細書において、治療は、前述のように、例えば、予防、進行の抑制、改善(緩和)の意味を含む。本発明の医薬組成物は、例えば、いずれか1つを目的として使用してもよいし、2つ以上を目的として使用してもよい。
【0030】
<凝集抑制方法>
本発明のアミロイドβの凝集抑制方法は、前述のように、被検体に、前記本発明のアミロイドβの凝集抑制剤を添加することを特徴とする。本発明の抑制方法は、前記本発明の凝集抑制剤を使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は何ら制限されない。
【0031】
前記被検体への本発明の凝集抑制剤の添加については、前記本発明の凝集抑制剤および医薬組成物における記載を援用できる。本発明の凝集抑制方法は、例えば、前記被検体に前記本発明の凝集抑制剤を添加する添加工程の後、さらにインキュベート工程を含むことが好ましい。前記被検体が前記非生物系である場合、例えば、インキュベート温度は、室温~37℃であり、インキュベート時間は、4~72時間であり、pHは、6.5~8である。また、前記被検体が細胞または組織である場合、例えば、インキュベート温度は、室温~37℃であり、インキュベート時間は、1~7日であり、pHは、6.5~8である。
【0032】
<アミロイドβ凝集疾患の治療方法>
本発明のアミロイドβ凝集疾患の治療方法は、前述のように、被検体に、前記本発明のアミロイドβの凝集抑制剤を投与することを特徴とする。本発明の治療方法は、前記本発明の医薬組成物を使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は何ら制限されない。前記基質としては、例えば、前述のようなターゲットがあげられる。
【0033】
前記被検体への本発明の凝集抑制剤の添加については、前記本発明の凝集抑制剤および医薬組成物における記載を援用できる。
【0034】
<ペプチドの使用>
本発明のペプチドは、アミロイドβの凝集抑制に使用するための前記配列番号1または2のアミノ酸配列からなるペプチドである。また、本発明のペプチドは、アミロイドβ凝集が原因となるアミロイドβ凝集疾患の治療に使用するための前記配列番号1または2のアミノ酸配列からなるペプチドである。
【実施例
【0035】
[実施例1]
ペプチド1(GSGNR)およびペプチド2(GSGFK)について、アミロイドβ(Aβの凝集抑制能を確認した。
【0036】
(1)Aβフラグメントペプチド
Aβの凝集には、Aβ由来のフラグメントペプチドを使用した。前記フラグメントペプチドは、凝集性が高いAβ25-35を選択した。前記Aβ25-35は、ヒト由来Aβの全長配列25番目~35番目の11アミノ酸残基のペプチド(配列番号4:GSNKGAIIGLM、Ab25-35ともいう)である。
【0037】
(2)凝集抑制アッセイ
蛍光色素チオフラビンT(ThT)は、Ab凝集体と結合し、結合によって強い蛍光を発することから、蛍光強度の測定により凝集の増加または抑制が判断できる。そこで、ThTを用いて、ペプチド1(GSGNR)およびペプチド2(GSGFK)によるAβ25-35の凝集抑制を確認した。
【0038】
具体的には、下記組成の反応液を調製し、ウェルあたり前記反応液300μLとなるようにウェルに分注し、37℃でインキュベートして、経時的な蛍光強度の変化を、測定装置(商品名Cytation5、BioTek社製)により測定した(n=3)。測定波長は、励起波長(ex)444nm、蛍光波長(em)480nmとした。コントロールとして、ペプチド1および2に代えて水を添加した反応液についても同様に測定を行った。
【0039】
【表1】
【0040】
これらの結果を図1に示す。図1は、ペプチド1(GSGNR)またはペプチド2(GSGFK)を添加した反応液の蛍光強度を示すグラフである。図1において、X軸は、インキュベート時間(h)であり、縦軸は、蛍光強度であり、単位は、Fluorescence Intensity である。なお、図において、Abは、Aβの略である(以下同様)。図1に示すように、ネガティブコントロールであるAβ25-35のみの反応液は、0時間から4時間で急激に蛍光強度が増加した。なお、Aβ25-35の反応液は、4時間を超えた後、若干、徐々に蛍光強度が低下しているが、これは、Aβ25-35の凝集体が徐々に沈殿して、凝集が蛍光強度に反映されないためである。一方、ペプチド2(GSGFK)を添加した反応液(プロット×)は、インキュベート後4時間の時点で蛍光強度は若干増加したが、ネガティブコントロールよりも十分に低い値となった。このことから、ペプチド2が凝集を抑制すること、具体的には、例えば、Aβ25-35が凝集すること自体を抑制できることがわかった。また、ペプチド2(GSGFK)を添加した反応液は、さらに8時間および24時間経過しても、蛍光強度の増加は見られなかった。つぎに、ペプチド1(GSGNR)を添加した反応液は、インキュベート後4時間の時点で蛍光強度は増加したものの、さらに8時間および24時間経過すると、ネガティブコントロールと比較して、著しく蛍光強度が低下した。このことから、ペプチド1が凝集を抑制すること、具体的には、仮にAβ25-35が凝集しても、その凝集を乖離できることがわかった。
【0041】
(3)濃度アッセイ
ペプチド1(GSGNR)およびペプチド2(GSGFK)について、Aβ25-35に対する濃度を確認した。特に示さない限り、前記(2)に従って測定を行った。
【0042】
まず、ペプチド2については、ウェルあたり下記表2の組成の混合液200μLを添加し、測定直前、前記ウェルに2mmol/L ThT 10μLをさらに添加して、この反応液を37℃でインキュベートして、測定開始から4時間後における蛍光強度の変化を、前記測定装置により測定した(n=3)。また、下記組成において、ペプチド2の終濃度を変えて、同様に測定を行った。ネガティブコントロールとして、下記組成において、ペプチド1および2を無添加とし、同様に測定を行った。
【0043】
【表2】
【0044】
これらの結果を図2(A)に示す。図2(A)は、ペプチド2(GSGFK)を添加した反応液の蛍光強度を示すグラフである。図2(A)において、X軸は、インキュベート時間(h)であり、縦軸は、蛍光強度であり、単位は、Fluorescence Intensityである。図2(A)に示すように、Aβ25-35のみを添加したネガティブコントロールと比較して、ペプチド2の添加により蛍光強度が有意に減少したことから、ペプチド2によるAβ25-35の凝集抑制が確認できた。また、ペプチド2は、100μmol/LのAβ25-35に対して、終濃度5μmol/L以上の添加により、十分に有意な凝集抑制を示し、終濃度10μmol/L以上の添加により、より効果的な凝集抑制を示し、終濃度10μmol/L付近で特に優れた凝集抑制を示すことがわかった。
【0045】
つぎに、ペプチド1については、ウェルあたり前記表2の組成の混合液200μLを添加し、測定直前、前記ウェルに2mmol/L ThT 10μLをさらに添加して、この反応液を37℃でインキュベートして、測定開始から8時間後における蛍光強度の変化を、前記測定装置により測定した(n=6)。また、前記組成において、ペプチド1の終濃度を変えて、同様に測定を行った。ネガティブコントロールとして、前記組成において、ペプチド1および2を無添加とし、同様に測定を行った。
【0046】
これらの結果を図2(B)に示す。図2(B)は、ペプチド1(GSGNR)を添加した反応液の蛍光強度を示すグラフである。図2(B)において、X軸は、インキュベート時間(h)であり、縦軸は、蛍光強度であり、単位は、Fluorescence Intensityである。図2(B)に示すように、Aβ25-35のみを添加したネガティブコントロールと比較して、ペプチド1の添加により蛍光強度が有意に減少したことから、ペプチド1によるAβ25-35の凝集抑制が確認できた。また、ペプチド1は、100μmol/LのAβ25-35に対して、終濃度1μmol/L以上の添加により、十分に有意な凝集抑制を示し、終濃度10μmol/L付近で特に優れた凝集抑制を示すことがわかった。
【0047】
[実施例2]
in vivoにおけるペプチド2(GSGFK)の効果を確認した。なお、投与するペプチドまたはAβ25-35の調整用溶媒は、生理食塩水を使用した。
【0048】
C57BL/6マウス(7~13月の高月齢マウス)の投与群(n=3)は、脳の海馬CA1野にマイクロシリンジを用いて、0.5μg/μL Aβ25-35 2μLおよび0.25μg/μL ペプチド2 2μLを直接投与した。C57BL/6マウスのネガティブコントロール群(n=3)は、同様にして、脳の海馬CA1野にマイクロシリンジを用いて、0.5μg/μL Aβ25-35 2μLを直接投与した。C57BL/6マウスのポジティブコントロール群(n=3)は、Aβ25-35 2μLおよびペプチド2のいずれも投与しなかった。そして、各群について、投与から11日目、27日目、39日目に、Y-maze(短期記憶評価)テストを行い、49日目から3日間かけて、物体認識テストを行った。
投与群(7月齢):Aβ25-35(+)/GSGFK(+)
ネガティブコントロール群(7月齢):Aβ25-35(+)/GSGFK(-)
ポジティブコントロール群(13月齢):Aβ25-35(-)/GSGFK(-)
【0049】
Y-mazeテストは、以下の条件で、一般的な方法により行った。すなわち、3本アームのうち特定の一本のアームの端部の壁に、鼻先が向くようにマウスを配置した。そして、10分間、自由に行動させ、その行動を解析装置(商品名Time YM1、小原医科産業 製)のモニターで撮影し、交替行動率(alternation behavior (%))を算出した。
【0050】
49日目からの物体認識テスト(Object recognition test、ORT)は、以下のように行った。まず、社会性の確認のため、四角のゲージ(幅45cm×奥行45cm×高さ15cm)の中にマウスをいれ、1日かけて空間に慣れさせた。ここで、各群について、前記ゲージ内におけるマウスの移動速度を測定し、また、前記ゲージの中央部分(ゲージ側壁から7.5cm以上離れた内側の領域)に滞在する時間の割合%を測定した。
【0051】
そして、1日経過後、前記ゲージに同じ二つの物体を配置し、1時間、マウスに自由に探索させた(見本段階)。1時間の探索の後、前記ゲージ内の二つの物体のうち右側の物体を異なる物体に置き換え、再度マウスを前記ゲージに入れて、自由に探索させた(テスト段階)。そして、前記見本段階と前記テスト段階のそれぞれにおいて、マウスの各物体に対するアプローチ時間を測定した。そして、全探索時間に対する右側の物体の探索時間が占める割合を求めた(100×右側探索時間/全探索時間(%))。
【0052】
また、各群のマウスへの投与と並行して、各群に投与した液体についての蛍光強度の測定を行った。具体的には、前記投与群に投与したのと同じ0.5μg/μL Aβ25-35と0.25μg/μL ペプチド2とを等量で混合した混合液、および前記ネガティブコントロール群に投与したのと同じ0.5μg/μL Aβ25-35液を、それぞれ、ウェルあたり100μL添加し、測定直前、前記ウェルに1mmol/L ThT 10μLをさらに添加して、これらの反応液をそれぞれ37℃で反応させ、前記実施例1と同様にして蛍光強度を測定した。
【0053】
まず、図3に、11日目の前記Aβ25-35液および前記混合液の蛍光強度の結果を示す。図3において、Aβ25-35(+)/GSGFK(-)が、前記Aβ25-35液の結果であり、Aβ25-35(+)/GSGFK(+)が、前記混合液の結果である。図3において、縦軸は、蛍光強度であり、単位は、Fluorescence Intensityである。図3に示すように、11日目において、前記Aβ25-35液は、Aβ25-35の凝集を示す蛍光強度の増加が確認されたが、前記ペプチド2を含む前記混合液は、蛍光強度の増加が抑制された。つまり、この結果から、試験管内で、Aβ25-35が凝集すること、前記ペプチド2の存在下により前記凝集が抑制されることは明らかである。
【0054】
つぎに、図4(A)および(B)に、11日目、27日目および39日目のY-mazeテストの結果を示す。図4(A)は、各群の交替行動率を示す棒グラフであり、図4(B)は、各群の交替行動率を示す折れ線グラフであり、縦軸は、それぞれ交替行動率(alternation behavior (%))を示す。図4に示すように、11日目の段階で、Ab25-35のみを添加したネガティブコントロール群は、ポジティブコントロール群および投与群よりも有意に低い交替行動率を示し、その後の27日目および39日目においても、その結果が維持された。脳内でAβ凝集体が生成されると、短期記憶が低下し、認知機能が低下することが知られている。このため、前述した図3に示すAβ25-35の凝集の結果と、図5の短期記憶の結果とから、Ab25-35の投与のみでは、Aβ25-35の凝集が起こり短期記憶が低下するが、前記ペプチド2の存在下であれば、Aβ25-35の凝集が抑制され、その結果、Aβ25-35を投与していないポジティブコントロール群と同様の短期記憶が維持されることが証明できた。
【0055】
つぎに、図5に、マウスの社会性を表す、1日目における移動速度および中央部分の滞在時間割合の結果を示す。図5(A)は、各群の移動速度のグラフであり、縦軸は、平均速度(cm/s)を示し、図5(B)は、中央部分の滞在時間割合のグラフであり、縦軸は、滞在時間割合(%)を示す。図5(A)に示すように、いずれの群においても、移動速度に差はなかった。また、図54(B)に示すように、Aβ25-35を投与したネガティブコントロール群は、投与群およびポジティブコントロール群よりも滞在時間割合が若干高いことから、他の群よりも恐怖心が低くなったと考えられる。
【0056】
さらに、図6に、49日目から3日間かけて行った52日目の物体認識テストの結果を示す。図6において、縦軸は、全探索時間に対する右側の物体の探索時間が占める割合%を示す。脳内でAβ凝集体が生成されると、短期記憶が低下して、物体を認識しにくくなることが知られている。このため、短期記憶が正常のマウスであれば、右側の物体が異なる物体に置き換えられると、置き換わったことを認識し、それに対する興味から新たな物体を探索するが、マウスの短期記憶が低下すると、右側の物体が異なる物体に置き換えられても、置換されたことを認識しにくくなるため、新たな物体への興味がわかず、右側の物体への探索時間は変化しない。図6に示すように、ポジティブコントロール群およびAβ25-35と前記ペプチド2とを添加した投与群では、見本段階と比較して、テスト段階では、右側の物体に対する探索時間の割合が有意に増加した。これに対して、Aβ25-35のみを添加した投与群は、有意な増加は見られず、反対に、テスト段階において、右側の物体に対する探索時間の割合が低下した。つまり、これらの結果から、Aβ25-35のみを投与したネガティブコントロール群では、Aβ25-35の凝集により短期記憶が低下したが、投与群では、前記ペプチド2によりAβ25-35の凝集が抑制されたため、短期記憶はポジティブコントロール群と同程度に維持された、または短期記憶の低下が抑制されたといえる。
【0057】
[実施例3]
ペプチド1(GSGNR)およびペプチド2(GSGFK)について、アミロイドβ(Aβ凝集体の乖離能を確認した。
【0058】
下記組成の反応液を調製し、37℃で24時間インキュベートし、Aβ25-35の凝集体を生成させた。インキュベート後、Aβ25-35添加の下記組成の反応液と、Aβ25-35に代えて水を添加した反応液とについて、前記実施例1と同様に蛍光強度を測定した。その結果、Aβ25-35添加の前記反応液は、Aβ25-35未添加の反応液と比較して、有意に蛍光強度が増加したことから、Aβ25-35の凝集体の生成が確認できた。
【0059】
そして、前記凝集体が生成された前記反応液4000μLに、10mmol/L ペプチド1またはペプチド2 40μLを添加し(0hr)、37℃でインキュベートし、経時的な蛍光強度の変化を測定した(n=3)。コントロールとして、0hrに、ペププチド1および2に代えて水を添加した反応液についても同様に測定を行った。そして、0hrの蛍光強度から4hrの蛍光強度の減少率%を求めた。
【0060】
【表3】
【0061】
これらの結果を図7に示す。図7(A)は、ペプチド1(GSGNR)またはペプチド2(GSGFK)を添加した反応液の蛍光強度を示すグラフであり、縦軸は、蛍光強度であり、単位は、Fluorescence Intensityである。図7(B)は、4hrの蛍光強度減少率を示すグラフであり、縦軸は、蛍光強度減少率%を示す。図7に示すように、前記ペプチド1またはペプチド2の添加によって、インキュベート開始から4時間で、大幅な蛍光強度の低下が確認できた。この結果から、ペプチド1およびペプチド2により、Aβ25-35凝集体が乖離されることが確認できた。なお、ペプチド1またはペプチド2を添加していないネガティブコントロールは、時間に依存して蛍光強度が確認された。しかしながら、この蛍光強度の低下は、前記凝集体の乖離による低下ではなく、凝集が進行して、凝集体が沈殿し、反応系に浮遊する凝集体濃度が低下したことによるものである。
【0062】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のアミロイドβの凝集抑制剤によれば、アミロイドβの分子間会合による凝集を抑制できるため、アルツハイマー病等のアミロイド凝集疾患の治療、例えば、予防、進行の抑制、改善等が可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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