(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 39/20 20060101AFI20250205BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20250205BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D39/20 Z
B01D39/20 C
B01D46/00 302
F01N3/022 B
(21)【出願番号】P 2023509981
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2021013629
(87)【国際公開番号】W WO2022208678
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】524150904
【氏名又は名称】HARUKA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 学
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-254438(JP,A)
【文献】特開2018-183709(JP,A)
【文献】特開2010-111567(JP,A)
【文献】特開2009-095827(JP,A)
【文献】特開2007-260618(JP,A)
【文献】特開2010-104955(JP,A)
【文献】特開2003-214141(JP,A)
【文献】特開2007-278188(JP,A)
【文献】特開2014-108405(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0025777(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-39/20
B01D 46/00-46/90
B01D 53/00-53/96
F01N 3/00- 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体内の被捕集物を捕集するフィルタであって、
前記被捕集物で閉塞しない程度の径を有する第1の流路と、
前記第1の流路と異なる径であって、前記被捕集物で閉塞しない程度の径を有する第2の流路と、
前記第1の流路と、前記第2の流路との間を隔てる隔壁と、
前記第1の流路の一部を複数の流路に分割する分割壁と、
を有し、
前記隔壁の全部又は一部が、前記被捕集物を捕集するフィルタ材で構成されており、
前記第1の流路及び前記第2の流路の両端は開口であり、
前記第1の流路の径は、
前記一部を除いた流路全域にわたって、前記第2の流路よりも大きい
フィルタ。
【請求項2】
前記第1の流路の平均径は、前記第2の流路の1.2倍~10倍であ
る
請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記第2の流路の平均径は、0.01mm~10mであり、
前記第1の流路の平均径は、0.02mm~100mである
請求項2に記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ハニカム構造を有する柱状の、多孔質セラミック焼結体からなるフィルタユニットの複数個を、シール材層を介して組み合わせ一体に結束してなる集合体において、その集合体を、種類の異なるフィルタユニットを組み合わせたものにて構成すると共に、種類の異なるこれらのフィルタユニットは、担持量もしくは種類の異なる触媒を担持しているセラミックフィルタハニカム構造を有する柱状の、多孔質セラミック焼結体からなるフィルタユニットの複数個を、シール材層を介して組み合わせ一体に結束してなる集合体において、その集合体を、種類の異なるフィルタユニットを組み合わせたものにて構成すると共に、種類の異なるこれらのフィルタユニットは、担持量もしくは種類の異なる触媒を担持してセラミックフィルタとするが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、比較的圧力損失の少ないフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るフィルタは、流体内の被捕集物を捕集するフィルタであって、前記被捕集物で閉塞しない程度の径を有する第1の流路と、前記第1の流路と異なり、かつ、前記被捕集物で閉塞しない程度の径を有する第2の流路と、前記第1の流路と、前記第2の流路との間を隔てる隔壁とを有し、前記隔壁の全部又は一部が、前記被捕集物を捕集するフィルタ材で構成されている。ここで、「流路の径が異なる」とは、直径や平均内径が異なることだけでなく、流路の断面形状が異なる場合を含む概念である。
【0006】
また、本発明に係るフィルタは、流体内の被捕集物を捕集するフィルタであって、前記被捕集物で閉塞しない程度の径を有する流路と、前記流路の一部を、複数の流路に分割する分割壁とを有し、前記分割壁の全部又は一部が、前記被捕集物を捕集するフィルタ材で構成されている。
【0007】
好適には、前記第1の流路の平均径は、前記第2の流路の1.2倍~10倍である。
好適には、前記第1の流路の平均径は、0.01mm~10mであり、前記第2の流路の平均径は、0.02mm~100mである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比較的圧力損失の少ないフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】異形ハニカムフィルタ10の全体構成を例示する図である。
【
図2】
図1の異形ハニカムフィルタ10をより詳細に説明するための模式図である。
【
図3】
図1の異形ハニカムフィルタ10のうち分割壁120をより詳細に説明するための模式図である。
【
図4】本実施形態の異形ハニカムフィルタ10と、比較例1及び比較例2のフィルタとを評価する評価実験を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、異形ハニカムフィルタ10の全体構成を例示する図である。
図1に例示するように、異形ハニカムフィルタ10は、内径が互いに異なる複数の流路100と、これらの流路を隔てる隔壁110とを有する。また、異形ハニカムフィルタ10は、流路100の一部を複数の流路に分割する分割壁120を有する。なお、異形ハニカムフィルタ10は、本発明に係るフィルタの一例である。
流路100は、いずれも、被捕集物で閉塞しない程度の内径を有する。例えば、第1の流路100Bの平均内径は、第2の流路100Aの平均内径の1.2倍~10倍である。より具体的には、流路100の平均内径は0.3mm~100mmであり、第1の流路100Bの平均内径は第2の流路100Aの1.2倍~5倍である。ここで、流路100の内径とは、流路断面が円形である場合には直径であり、流路断面が楕円形である場合には最小直径であり、流路断面が多角形である場合には、いずれかの面から対向する面又は頂点までの距離のうち最小のものをいう。
第1の流路100Bは、第2の流路100Aよりも広いため、内圧が相対的に高くなる。この内圧差によって、第1の流路100Bから、第2の流路100Aに流体が流れ込み、流体内の被捕集物が隔壁110で捕集される。
【0011】
図2は、
図1の異形ハニカムフィルタ10をより詳細に説明するための模式図である。
図2に示すように、隔壁110の一部又は全部は、被捕集物を捕集するフィルタ材で構成されている。本例では、隔壁110の全部がフィルタ材で構成されている。隔壁110は、例えば、活性炭、珪藻土、低級の炭、セルロースをはじめとする繊維状物質、炭化ケイ素、コージェライト、又は、セラミック、或いは、これらの混合物で構成されている。隔壁110には、酸化チタンなどの機能性添加剤が担持されてもよい。
隔壁110は、スラリー法により形成されてもよいし、押出成形により形成されてもよい。低抵抗のフィルタ材としたい場合には、スラリー法が有利である。
【0012】
図3は、
図1の異形ハニカムフィルタ10のうち分割壁120をより詳細に説明するための模式図である。
図3に示すように、流路100Bの一部が、分割壁120に分割されている。すなわち、分割壁120によって流路100の内径をバリエーション化し、異形ハニカムフィルタ10内の流れる流体の経路を多様化できる。
【0013】
図4は、本実施形態の異形ハニカムフィルタ10と、比較例1及び比較例2のフィルタとを評価する評価実験を説明する図である。
図4(A)に示すように、評価対象のフィルタは、本実施例のフィルタと、同一内径の直線流路が複数設けられたフィルタ(比較例1)と、隣り合う通気孔が交互に閉じられたハニカム構造のフィルタ(比較例2)である。なお、比較例2のフィルタは、特許文献1等に記載されたフィルタである。これらのフィルタの材料、断面積及び長さは、同じである。
図4(B)に示すように、フィルタユニットの前後に入口及び出口の圧力損失測定口を設置し、圧力損失ΔPを測定した。捕集効率測定は、関東ローム(JIS11種)を通気し、フィルタユニットの前後のサンプリングポイントにて、フィルタ重量法により、測定した。試験条件として、流量は100L/分、関東ロームの粉塵負荷は5~8g/分として実験を行った。捕集効率測定用フィルタには、HEPAフィルタを使用した。圧力測定には電子式差圧計を用いた。吸引ポンプにはダイヤフラムポンプを使用し、流量調整はバルブで行った。圧力測定、捕集効率ともに、5mg/m
2または10mg/m
2毎に測定した。
【0014】
図5は、評価実験の結果を示す図である。
図5(A)に示すように、初期の捕集効率は、本実施例と、比較例1で同程度であるが、ダスト負荷後は、比較例1の捕集効率が急激に低下するところ、本実施例の捕集効率は、比較例1に比べて緩やかに低下していく。
また、
図5(B)に示すように、比較例2の圧力損失は、初期から、本実施例及び比較例1と比べて圧倒的に高く、ダスト負荷が増加すると、さらにその差が増大する。一方、本実施例及び比較例1の圧力損失は、比較例2に比べて圧倒的に低く、その変動も少ない。
つまり、本実施例のフィルタは、より低圧力で集塵でき、かつ、長寿命化が期待できる。例えば、市販されているサーキュレータや空気清浄機に本実施例のフィルタを後付しただけでも、十分な集塵性能が期待できる。
【0015】
以上説明したように、本実施形態の異形ハニカムフィルタ10によれば、低圧力損失で長期間に渡り安定的に集塵できる。
【0016】
なお、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0017】
10 異形ハニカムフィルタ
100 流路
110 隔壁
120 分割壁