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特許7629244情報提供装置、情報提供方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】情報提供装置、情報提供方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20250205BHJP
   G16H 70/40 20180101ALI20250205BHJP
【FI】
G16H20/10
G16H70/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024139576
(22)【出願日】2024-08-21
【審査請求日】2024-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524311206
【氏名又は名称】株式会社三紘
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピャオ ランディ
(72)【発明者】
【氏名】吉原 浩之
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2023/0325441(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0038152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの健康状態を示す健康情報を取得する情報取得部と、
前記健康情報とともに第1指示テキストを第1大規模言語モデルに入力することにより、前記ユーザに適した薬剤を検索するための薬剤データベースの検索クエリを作成するクエリ作成部と、
前記検索クエリを用いて前記薬剤データベースを検索することにより、前記健康情報に対応する1以上の薬剤を特定する薬剤特定部と、
前記薬剤特定部が特定した薬剤に関する薬剤情報を出力する出力部と、
を有する情報提供装置。
【請求項2】
前記クエリ作成部は、前記ユーザの属性及び前記ユーザの症状に関するキーワードを含む前記検索クエリを作成することを指示する前記第1指示テキストを前記第1大規模言語モデルに入力することにより、前記ユーザの年齢及び前記ユーザの症状をキーワードとして含む前記検索クエリを作成する、
請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、論文情報をさらに取得し、
前記情報提供装置は、前記論文情報とともに第2指示テキストを第2大規模言語モデルに入力し、前記論文情報が構造化された構造化論文データを作成することにより前記薬剤データベースを作成するデータベース作成部をさらに有する、
請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記データベース作成部は、薬剤名及び症状に関するキーワードを前記論文情報から抽出することを指示する前記第2指示テキストを前記第2大規模言語モデルに入力することにより、前記薬剤データベースを作成する、
請求項3に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記薬剤特定部は、前記薬剤データベースにおいて前記検索クエリに含まれる単語に関連付けられた前記論文情報を特定し、特定した当該論文情報と、前記健康情報と、前記薬剤情報を出力することを指示する第3指示テキストと、を第3大規模言語モデルに入力することにより前記第3大規模言語モデルから出力される薬剤名と当該薬剤を推奨する理由とを特定し、
前記出力部は、前記薬剤特定部が特定した薬剤名と理由と含む前記薬剤情報を出力する、
請求項3に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記薬剤データベースにおいては、複数の薬剤それぞれと、併用できない他の薬剤と、が関連付けられており、
前記出力部は、前記薬剤特定部が特定した薬剤の名称とともに、併用できない他の薬剤の名称を出力する、
請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項7】
前記薬剤データベースにおいては、複数の薬剤それぞれと、薬剤が承認された国と、が関連付けられており、
前記出力部は、前記薬剤特定部が特定した薬剤の名称とともに、薬剤が承認された国を示す情報を出力する、
請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項8】
コンピュータが実行する、
ユーザの健康状態を示す健康情報を取得するステップと、
前記健康情報とともに第1指示テキストを第1大規模言語モデルに入力することにより、前記ユーザに適した薬剤を検索するための薬剤データベースの検索クエリを作成するステップと、
前記検索クエリを用いて前記薬剤データベースを検索することにより、前記健康情報に対応する1以上の薬剤を特定するステップと、
特定した薬剤に関する薬剤情報を出力するステップと、
を有する情報提供方法。
【請求項9】
コンピュータに、
ユーザの健康状態を示す健康情報を取得するステップと、
前記健康情報とともに第1指示テキストを第1大規模言語モデルに入力することにより、前記ユーザに適した薬剤を検索するための薬剤データベースの検索クエリを作成するステップと、
前記検索クエリを用いて前記薬剤データベースを検索することにより、前記健康情報に対応する1以上の薬剤を特定するステップと、
特定した薬剤に関する薬剤情報を出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤に関する情報を提供するための情報提供装置、情報提供方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の症状に適した薬又は治療法をデータベースで検索する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2022-531006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データベースを用いて適切な検索結果を得るためには適切なキーワードをデータベースに入力する必要がある。したがって、従来の方法では、医療に関する専門知識がない人が適切に検索することは困難であるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、医療に関する専門知識がない人であっても自身に適した薬剤を把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の情報提供装置は、ユーザの健康状態を示す健康情報を取得する情報取得部と、前記健康情報とともに第1指示テキストを第1大規模言語モデルに入力することにより、前記ユーザに適した薬剤を検索するための薬剤データベースの検索クエリを作成するクエリ作成部と、前記検索クエリを用いて前記薬剤データベースを検索することにより、前記健康情報に対応する1以上の薬剤を特定する薬剤特定部と、前記薬剤特定部が特定した薬剤に関する薬剤情報を出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記クエリ作成部は、前記ユーザの属性及び前記ユーザの症状に関するキーワードを含む前記検索クエリを作成することを指示する前記第1指示テキストを前記第1大規模言語モデルに入力することにより、前記ユーザの年齢及び前記ユーザの症状をキーワードとして含む前記検索クエリを作成してもよい。
【0008】
前記情報取得部は、論文情報をさらに取得し、前記情報提供装置は、前記論文情報とともに第2指示テキストを第2大規模言語モデルに入力し、前記論文情報が構造化された構造化論文データを作成することにより前記薬剤データベースを作成するデータベース作成部をさらに有してもよい。
【0009】
前記データベース作成部は、薬剤名及び症状に関するキーワードを前記論文情報から抽出することを指示する前記第2指示テキストを前記第2大規模言語モデルに入力することにより、前記薬剤データベースを作成してもよい。
【0010】
前記薬剤特定部は、前記薬剤データベースにおいて前記検索クエリに含まれる単語に関連付けられた前記論文情報を特定し、特定した当該論文情報と、前記健康情報と、前記薬剤情報を出力することを指示する第3指示テキストと、を第3大規模言語モデルに入力することにより前記第3大規模言語モデルから出力される薬剤名と当該薬剤を推奨する理由とを特定し、前記出力部は、前記薬剤特定部が特定した薬剤名と理由と含む前記薬剤情報を出力してもよい。
【0011】
前記薬剤データベースにおいては、複数の薬剤それぞれと、併用できない他の薬剤と、が関連付けられており、前記出力部は、前記薬剤特定部が特定した薬剤の名称とともに、併用できない他の薬剤の名称を出力してもよい。
【0012】
前記薬剤データベースにおいては、複数の薬剤それぞれと、薬剤が承認された国と、が関連付けられており、前記出力部は、前記薬剤特定部が特定した薬剤の名称とともに、薬剤が承認された国を示す情報を出力してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様の情報提供方法は、コンピュータが実行する、ユーザの健康状態を示す健康情報を取得するステップと、前記健康情報とともに第1指示テキストを第1大規模言語モデルに入力することにより、前記ユーザに適した薬剤を検索するための薬剤データベースの検索クエリを作成するステップと、前記検索クエリを用いて前記薬剤データベースを検索することにより、前記健康情報に対応する1以上の薬剤を特定するステップと、特定した薬剤に関する薬剤情報を出力するステップと、を有する。
【0014】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、ユーザの健康状態を示す健康情報を取得するステップと、前記健康情報とともに第1指示テキストを第1大規模言語モデルに入力することにより、前記ユーザに適した薬剤を検索するための薬剤データベースの検索クエリを作成するステップと、前記検索クエリを用いて前記薬剤データベースを検索することにより、前記健康情報に対応する1以上の薬剤を特定するステップと、特定した薬剤に関する薬剤情報を出力するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、医療に関する専門知識がない人であっても自身に適した薬剤を把握できるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】情報提供システムSの概要を説明するための図である。
図2】情報提供装置1における処理の流れの概要を示す図である。
図3】情報提供装置1の構成を示す図である。
図4】キーワード抽出指示テキストの例を示す図である。
図5】構造化論文データに含まれる項目を示す図である。
図6】構造化論文データの例を示す図である。
図7】クエリ作成指示テキストの例を示す図である。
図8】出力部135が出力する薬剤情報の例を示す図である。
図9】情報提供装置1が論文データベースを作成する処理の流れを示すフローチャートである。
図10】情報提供装置1が薬剤情報を出力する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[情報提供システムSの概要]
図1は、情報提供システムSの概要を説明するための図である。情報提供システムSは、ユーザUの健康状態を示す健康情報に基づいて、ユーザUに推奨する薬剤に関する情報(以下、「薬剤情報」という)を提供するためのシステムである。ユーザUは、自身に適した薬剤を購入したいと考えている人である。薬剤には、医薬品、サプリメント又は健康食品が含まれる。薬剤情報には、薬剤の名称が含まれる。薬剤情報には、薬剤を推奨する理由を示す情報が含まれてもよい。
【0018】
情報提供システムSは、情報提供装置1及びユーザ端末2を有する。情報提供装置1は、ユーザ端末2から送信された健康情報に基づいて薬剤情報を提供するコンピュータであり、例えばサーバである。健康情報は、ユーザUの健康診断結果を示すテキスト、又はユーザU又はユーザUに関連する人が記述したユーザUの健康状態を示す文章である。情報提供装置1は、健康情報を大規模言語モデル(LLM)に入力することにより、薬剤を検索するためのキーワードを決定し、決定したキーワードを用いてデータベースを検索することにより、ユーザUに推奨する薬剤を特定する。
【0019】
ユーザ端末2は、ユーザUが使用するコンピュータである。一例として、ユーザ端末2は情報提供装置1が提供する薬剤検索サイトにアクセスして薬剤検索サイトの画面を表示することにより、当該画面において健康情報の入力を受け付ける。ユーザ端末2は、入力された健康情報を情報提供装置1に送信する。ユーザ端末2は、ユーザUにより入力された健康診断の結果を健康情報として情報提供装置1に送信してもよく、ユーザUにより入力されたユーザUの健康状態を説明する文章を健康情報として情報提供装置1に送信してもよい。
【0020】
図2は、情報提供装置1における処理の流れの概要を示す図である。情報提供装置1は、薬剤に関する説明文が含まれている論文情報を取得し、論文情報に基づいて、ユーザUに推奨する薬剤を特定する。論文情報は、薬剤又は医学に関する研究開発の成果の説明文を含んでもよく、薬剤に関する商品説明文を含んでもよい。
【0021】
情報提供装置1は、取得した論文情報と、薬剤名及び症状に関するキーワードを論文情報から抽出することを指示するキーワード抽出指示テキスト(第2指示テキストに対応)と、を論文構造化LLM(第2大規模言語モデルに対応)に入力することにより、構造化論文データを作成する。構造化論文データの詳細については後述するが、論文情報に含まれる患者の属性、薬剤の名称、比較結果、効能等の項目に関する複数の単語が関連付けられたデータである。
【0022】
情報提供装置1は、構造化論文データに基づいて薬剤データベースを作成する。具体的には、情報提供装置1は、構造化論文データに含まれる単語を、薬剤データベースが有するテーブルのカラム、レコード又はフィールドのいずれかに配置することにより、薬剤データベースを作成する。薬剤データベースにおいては、構造化論文データに含まれる単語と、当該単語が含まれている論文情報とが関連付けられている。情報提供装置1は、新たな論文情報を取得したことに応じて薬剤データベースを更新する。
【0023】
薬剤データベースにおいては、複数の薬剤それぞれと、併用できない他の薬剤と、が関連付けられていてもよい。また、薬剤データベースにおいては、複数の薬剤それぞれと、薬剤が承認された国と、が関連付けられていてもよい。
【0024】
情報提供装置1は、薬剤情報の提供の要求とともに健康情報をユーザ端末2から受信すると、健康情報と、ユーザの属性及びユーザの症状に関するキーワードを含む検索クエリを作成することを指示するクエリ作成指示テキスト(第1指示テキストに対応)と、をクエリ作成LLM(第1大規模言語モデルに対応)に入力することにより、検索クエリを作成する。クエリ作成指示テキストは、例えば、「健康情報に対応する患者の属性と症状をキーワードに含む検索クエリを作成してください」というテキストである。
【0025】
クエリ作成LLMが、健康情報に対応する患者の属性と症状をキーワードに含む検索クエリを作成するための大規模言語モデルである場合、クエリ作成指示テキストは、「検索クエリを作成してください」というように、検索クエリの作成を指示するテキストだけでもよい。クエリ作成LLMが、健康情報が入力されると検索クエリを作成するように構成されている場合、健康情報がクエリ作成指示テキストを兼ねてもよい。情報提供装置1は、作成した検索クエリを用いて薬剤データベースを検索することにより、検索クエリに含まれる単語に関連する説明文が含まれている論文情報である関連論文情報を特定する。
【0026】
情報提供装置1は、関連論文情報及び健康情報とともに、薬剤情報を出力することを指示するための薬剤情報出力指示テキスト(第3指示テキストに対応)を薬剤検索LLM(第3大規模言語モデルに対応)に入力することにより、ユーザUに推奨する薬剤名と、当該薬剤を推奨する理由と、を示すテキストを薬剤検索LLMから取得する。情報提供装置1は、取得したテキストを含む薬剤情報をユーザ端末2に提供する。
【0027】
以上のように情報提供システムSが構成されていることにより、ユーザUが薬剤又は医療に関する専門知識を持っていない場合であっても、ユーザUは、自身の健康状態に適した薬剤を把握することができる。以下、情報提供装置1の構成及び動作を詳細に説明する。
【0028】
[情報提供装置1の構成]
図3は、情報提供装置1の構成を示す図である。情報提供装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。
【0029】
情報提供装置1は、ユーザ端末2、論文情報サーバ3、論文構造化LLMサーバ4、クエリ作成LLMサーバ5及び薬剤検索LLMサーバ6との間でデータを送受信する。論文情報サーバ3は、論文情報を保存している。論文構造化LLMサーバ4は、論文構造化LLMを格納している。クエリ作成LLMサーバ5は、クエリ作成LLMを格納している。薬剤検索LLMサーバ6は、薬剤検索LLMを格納している。情報提供装置1は、論文情報サーバ3、論文構造化LLMサーバ4及びクエリ作成LLMサーバ5の少なくともいずれかの機能を有していてもよい。
【0030】
通信部11は、他の装置との間でデータを送受信するための通信インターフェースを有する。通信部11は、ユーザ端末2から健康情報及び指示テキストを受信する。また、通信部11は、論文情報サーバ3から論文情報を受信する。通信部11は、論文構造化LLMサーバ4、クエリ作成LLMサーバ5、薬剤検索LLMサーバ6に指示テキストを送信し、論文構造化LLMサーバ4、クエリ作成LLMサーバ5、薬剤検索LLMサーバ6から送信された回答テキストを受信する。通信部11は、受信したデータを記憶部12に格納したり制御部13に通知したりする。
【0031】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部12は、ユーザ端末2から送信された健康情報及び指示テキストを一時的に記憶する。記憶部12は、論文構造化LLMサーバ4、クエリ作成LLMサーバ5、薬剤検索LLMサーバ6から送信された回答テキストを一時的に記憶する。
【0032】
また、記憶部12は薬剤データベース(薬剤DB)121を記憶する。薬剤データベースにおいては、患者属性情報と、介入情報と、比較情報と、結果情報(アウトカム情報)と、が関連付けられている。患者属性情報には、例えば、患者の年齢、性別、既往歴等が含まれる。介入情報には、薬剤名、用量等のように、患者の治療に効果が生じる可能性がある薬剤に関する情報が含まれる。比較情報には、介入情報が示す薬剤を代替可能な薬剤の薬剤名、用量等の情報が含まれる。結果情報には、介入情報及び比較情報が示す薬剤を投与することにより変化する患者の状態の指標名、状態変化値とその単位、統計的優位性を示す情報が含まれる。なお、薬剤データベース121は、外部のサーバに記憶されていてもよい。
【0033】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、情報取得部131、データベース作成部132、クエリ作成部133、薬剤特定部134及び出力部135として機能する。
【0034】
情報取得部131は、論文情報サーバ3から論文情報を取得する。情報取得部131は、定期的に論文情報サーバ3にアクセスすることにより、未取得の論文情報を取得してもよく、新規の論文情報があるという通知を論文情報サーバ3から受けたことに応じて論文情報を取得してもよい。情報取得部131は、取得した論文情報を記憶部12に格納し、新たな論文情報を取得したことをデータベース作成部132に通知する。
【0035】
また、情報取得部131は、ユーザUの健康状態を示す健康情報を取得する。情報取得部131は、例えば、ユーザ端末2においてユーザUが入力した、健康状態を示すテキストデータを健康情報として取得する。健康状態を示すテキストは、例えば「私は77歳の男性です。高血圧による心筋梗塞が心配です。どのような薬を飲むべきでしょうか?」といったテキストである。情報取得部131は、ユーザUの健康診断の結果を示すテキストデータ又は画像データを健康情報として取得してもよい。健康診断の結果は、例えば健康診断における検査項目名と検査結果(数値又は評価ランク)とによって表される。情報取得部131は、取得した健康情報をユーザUに関連付けて記憶部12に格納し、健康情報を取得したことをクエリ作成部133に通知する。
【0036】
データベース作成部132は、論文情報とともにキーワード抽出指示テキストを論文構造化LLMに入力し、論文構造化LLMから出力されるテキストデータに基づいて、論文情報が構造化された構造化論文データを作成することにより薬剤データベースを作成する。キーワード抽出指示テキストは、論文情報に含まれる複数のテキストから、抽出するべきテキストを指定する内容を含むテキストである。
【0037】
データベース作成部132は、例えば、薬剤名及び症状に関するキーワードを論文情報から抽出することを指示するキーワード抽出指示テキストを論文構造化LLMに入力することにより、薬剤データベースを作成する。データベース作成部132は、取得した構造化論文データを、記憶部12に記憶された薬剤データベースのテーブル内のカラム、レコード又はフィールドのいずれかに配置することにより薬剤データベースを更新する。
【0038】
図4は、キーワード抽出指示テキストの例を示す図である。図4に示すキーワード抽出指示テキストにおいては、テキストを抽出する基準が大項目と小項目に分類された状態で示されている。データベース作成部132が、このようなキーワード抽出指示テキストを論文構造化LLMに入力することにより、論文情報が構造化されたデータを論文構造化LLMから取得することができる。
【0039】
図5は、構造化論文データに含まれる項目を示す図である。図5に示す項目は、薬剤データベースが有する項目に対応しており、構造化論文データには、上述した患者属性情報、介入情報、比較情報、及び結果情報に対応する名称及び数値が含まれる。
【0040】
図6は、構造化論文データの例を示す図である。図6に示すように、構造化論文データにおいては、論文に記載された実験結果に含まれている被験者の年齢、属性、薬剤の種類、投薬量、投薬の効果等の項目と、各項目の内容とが関連付けられている。
【0041】
クエリ作成部133は、健康情報とともにクエリ作成指示テキストをクエリ作成LLMに入力することにより、ユーザUに適した薬剤を検索するための薬剤データベースの検索クエリを作成する。クエリ作成部133は、例えば、ユーザUの属性及びユーザUの症状に関するキーワードを健康情報から抽出することを指示するクエリ作成指示テキストをクエリ作成LLMに入力することにより、ユーザUの年齢及びユーザUの症状をキーワードとして含む検索クエリを作成する。
【0042】
図7は、クエリ作成指示テキストの例を示す図である。図7に示すクエリ作成指示テキストにおいては、ユーザUの年齢の属性として、「高齢者」、「中年」又は「若年」を選択することが示されている。また、性別として男性又は女性を選択すること、健康状態として「健康」又は「合併症あり」を選択すること、症状として「血圧低下」、「心血管イベント」、「死亡」又は「その他」を選択することが示されている。
【0043】
クエリ作成部133は、「私は77歳の男性です。高血圧による心筋梗塞が心配です。どのような薬を飲むべきでしょうか?」という健康情報とともに、図7に示したクエリ作成指示テキストをクエリ作成部133が検索クエリLLMに入力することにより、例えば、{'患者属性':['高齢','男性'],'結果':['血圧低下','心血管イベント']}という検索クエリを作成する。
【0044】
クエリ作成部133は、ユーザUに推奨する薬剤名とともに、推奨する薬剤と併用できない他の薬剤の名称を特定するための検索クエリを作成してもよい。当該検索クエリには、併用できない薬剤を検索対象にするための情報が含まれる。また、クエリ作成部133は、ユーザUに推奨する薬剤名とともに、推奨する薬剤が承認された国を特定するための検索クエリを作成してもよい。当該検索クエリには、薬剤が承認された国を検索対象にするための情報が含まれる。
【0045】
薬剤特定部134は、クエリ作成部133が作成した検索クエリを用いて薬剤データベースを検索することにより、健康情報に対応する1以上の薬剤を特定する。薬剤特定部134は、例えば、薬剤データベースにおいて検索クエリに含まれる単語に関連付けられた論文情報を特定し、特定した当該論文情報と、健康情報と、を薬剤検索LLMに入力することにより薬剤検索LLMから出力される薬剤名と当該薬剤を推奨する理由とを特定する。薬剤特定部134は、特定した薬剤名と理由とを出力部135に入力する。
【0046】
薬剤特定部134は、薬剤データベースを検索することにより、特定した薬剤と併用できない他の薬剤の名称を特定してもよい。また、薬剤特定部134は、薬剤データベースを検索することにより、特定した薬剤が承認された国を特定してもよい。
【0047】
出力部135は、薬剤特定部134が特定した薬剤に関する薬剤情報を出力する。出力部135は、例えば、薬剤特定部134が特定した薬剤名と当該薬剤を推奨する理由とを示す薬剤情報を出力する。出力部135は、例えば、通信部11を介して薬剤情報をユーザ端末2に送信する。出力部135は、薬剤情報を印刷するためのプリンタに薬剤情報を出力してもよい。
【0048】
図8は、出力部135が出力する薬剤情報の例を示す図である。図8に示す薬剤情報は、ユーザUが入力した健康情報と、クエリ作成部133が作成した検索クエリと、薬剤特定部134が特定した薬剤名と当該薬剤を推奨する理由とを示すテキストにより構成されている。薬剤情報は、画像を含んでもよい。
【0049】
出力部135は、薬剤特定部134が特定した薬剤の名称とともに、当該薬剤と併用できない他の薬剤の名称を出力してもよい。また、出力部135は、薬剤特定部134が特定した薬剤の名称とともに、当該薬剤が承認された国を示す情報を出力してもよい。
【0050】
[情報提供装置1における処理の流れ]
図9は、情報提供装置1が論文データベースを作成する処理の流れを示すフローチャートである。情報取得部131が論文情報を取得すると(S11)、データベース作成部132は、論文情報とキーワード抽出指示テキストとを論文構造化LLMに入力する(S12)。データベース作成部132は、論文構造化LLMから出力される構造化論文データを取得し(S13)、構造化論文データに基づいて論文データベースを更新する(S14)。情報提供装置1は、定期的にS11からS14までの処理を繰り返すことにより、薬剤データベースに最新の論文情報の内容を反映する。
【0051】
図10は、情報提供装置1が薬剤情報を出力する処理の流れを示すフローチャートである。情報取得部131が健康情報を取得すると(S21)、クエリ作成部133は、健康情報とともに、クエリ作成指示テキストとをクエリ作成LLMに入力することにより、検索クエリを作成する(S22)。
【0052】
薬剤特定部134は、クエリ作成部133が作成した検索クエリを用いて薬剤データベースを検索することにより、検索クエリが示す単語に対応する関連論文情報を特定する(S23)。薬剤特定部134は、特定した関連論文情報と、情報取得部131が取得した健康情報と、薬剤情報を出力することを指示するための薬剤情報出力指示テキストと、を薬剤検索LLMに入力する(S24)。薬剤特定部134は、薬剤検索LLMから出力されるテキストに基づいて、ユーザUに推奨する薬剤名と、当該薬剤を推奨する理由と、を特定する(S25)。出力部135は、薬剤名と、当該薬剤を推奨する理由と、を示すテキストを含む薬剤情報を出力する(S26)。
【0053】
[情報提供装置1による効果]
以上説明したように、情報提供装置1は、ユーザUの健康情報とともにクエリ作成指示テキストをクエリ作成LLMに入力することにより、ユーザUに適した薬剤を検索するための薬剤データベースの検索クエリを作成するクエリ作成部133と、検索クエリを用いて薬剤データベースを検索することにより、健康情報に対応する1以上の薬剤を特定する薬剤特定部134と、を有する。そして、情報提供装置1は、特定した薬剤に関する情報をユーザUに提供する。情報提供装置1がこのように構成されていることで、ユーザUが薬剤に関する専門知識を持っていないとしても、ユーザUは、自身の健康状態に適した薬剤を容易に把握することが可能になる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0055】
例えば、上記の説明においては、第1大規模言語モデル、第2大規模言語モデル及び第3大規模言語モデルが、それぞれ異なる大規模言語モデルである場合を例示したが、情報提供装置1は、これらの全て又は一部の大規模言語モデルの機能を有する大規模言語モデルを使用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 情報提供装置
2 ユーザ端末
3 論文情報サーバ
4 論文構造化LLMサーバ
5 クエリ作成LLMサーバ
6 薬剤検索LLMサーバ
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
121 薬剤データベース
131 情報取得部
132 データベース作成部
133 クエリ作成部
134 薬剤特定部
135 出力部
【要約】
【課題】医療に関する専門知識がない人であっても自身に適した薬剤を把握できるようにする。
【解決手段】情報提供装置1は、ユーザの健康状態を示す健康情報を取得する情報取得部131と、健康情報とともに第1指示テキストを第1大規模言語モデルに入力することにより、ユーザに適した薬剤を検索するための薬剤データベースの検索クエリを作成するクエリ作成部133と、検索クエリを用いて薬剤データベースを検索することにより、健康情報に対応する1以上の薬剤を特定する薬剤特定部134と、薬剤特定部134が特定した薬剤に関する薬剤情報を出力する出力部135と、を有する。
【選択図】図3

図1
図2
図3
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図9
図10