(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】仮設路面の解体工法
(51)【国際特許分類】
E01C 9/08 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
E01C9/08 A
(21)【出願番号】P 2024189872
(22)【出願日】2024-10-29
【審査請求日】2024-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524398193
【氏名又は名称】株式会社グリーンゲート
(73)【特許権者】
【識別番号】524398207
【氏名又は名称】株式会社エヌダブル
(74)【代理人】
【識別番号】110004071
【氏名又は名称】弁理士法人オリベ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金岡 秀介
(72)【発明者】
【氏名】森部 繁尚
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-124473(JP,A)
【文献】実開平06-035505(JP,U)
【文献】特開平07-229105(JP,A)
【文献】実開昭58-170166(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 9/08
B08B 5/00- 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の敷板と、複数の前記敷板に亘るように設けられる連結板と、を複数備えた仮設路面を解体する仮設路面の解体工法であって、
前記連結板は、複数の前記敷板それぞれの表面に溶接されて複数の敷板を連結するものであって、縁部の少なくとも一部に沿って溶接部が形成されており、
前記溶接部を溶断する溶断工程と、
前記溶断工程後に前記連結板と前記敷板とを分離する分離工程と、により複数の前記敷板の連結を解除可能とされ、
前記溶断工程では、
前記溶接部に向かって発生するアークによって前記溶接部を溶融する処理と、
圧縮空気の噴出により前記溶融された溶接部を吹き飛ばす処理と、の両方を同時に実施する、
ことを特徴とする仮設路面の解体工法。
【請求項2】
前記連結板の厚さは、前記敷板の厚さの半分以下とされる、
ことを特徴とする請求項1に記載の仮設路面の解体工法。
【請求項3】
前記圧縮空気の噴出により吹き飛ばされた溶接部を受け止める壁材を前記敷板上に設置した状態で前記溶断工程を実施する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の仮設路面の解体工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の敷板と、複数の敷板に亘るように設けられる連結板と、を複数備えた仮設路面を解体する仮設路面の解体工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9(a)は、敷板120の表面に溶接された平板130を示す仮設路面110の部分断面図あり、
図9(b)は、従来の解体工法の溶断工程において溶接部140が溶断された後の仮設路面110の部分断面図である。従来の仮設路面110は、倉庫や建設現場等の作業現場において、軽車両や重機等の車両が走行する床面や地面等の設置面上に敷設され、設置面の保護や車両の走行性の向上に寄与するものであり、設置面上に並べて敷設された複数の敷板120と、複数の敷板120を連結する複数の平板130と、を備えている。詳しくは、平板130は、隣り合う敷板120の表面に掛け渡されて敷板120の表面に溶接されることによって隣り合う敷板120を連結し、車両の走行に伴って敷板120にズレが生じることを抑制する(特許文献1の段落[0002]等を参照)。このような平板130は、縁部の少なくとも一部に溶接部140が形成されるように敷板120の表面に溶接される態様であってもよいし、縁部の全周に溶接部140が形成されるように敷板120の表面に溶接される態様であってもよく、溶接部140は、
図9(a)に示すように、溶接時に溶けた敷板120の表面の一部や平板130の縁部底面側の一部にも形成される。
【0003】
上記の仮設路面110は、不要となった際に、平板130による連結を解除して個々の敷板120に解体される。従来の仮設路面110の解体工法は、例えば、平板130を溶断して隣り合う敷板120の連結を解除する溶断工程が含まれるが、このような解体工法の場合には、敷板120の搬送先で敷板120から平板130を取り外して敷板120の表面を平面状に補修する必要があり、例えば、リース会社への返納時に補修費を要するとともに溶断された平板130が廃棄される。また、該補修費の削減や平板130の再利用を可能にするため、
図9(b)に示すように、平板130を溶断するのではなく溶接部140を溶断し、敷板120から平板130を取り外す解体工法が行われる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の溶断工程では、ガスと酸素の混合気体を燃焼させた炎を溶接部140に当てるいわゆるガス溶断が用いられており、ガス溶断の溶断面が先細りの略V字状であるため、敷板120の表面を溶融することなく(敷板120に表面が凹むような傷を形成することなく)敷板120上の溶接部140のみを溶断することが困難であるとともに、そもそもガス溶断を用いて溶接部140を溶断するには多大な時間を要し、仮設路面110の解体の作業の効率を低下させるおそれがあった。なお、敷板120の表面を溶融した場合には、これを埋めるような補修工程を実施しなければならず、仮設路面110の解体の作業の効率を過度に低下させるおそれがある。また、溶断面が略V字状のガス溶断を用いた場合には、敷板120の表面に溶接部140が多量に残留するため、これをグラインダー等の研削機を用いて除去する除去工程を実施しなければならず、このような工程にも多大な時間を要し、仮設路面110の解体の作業の効率をより一層低下させるおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、仮設路面の解体に係る作業の効率化を図ることができる仮設路面の解体工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するための有効な解決手段を以下に示す。なお、必要に応じてその作用等の説明を行う。また、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成等についても適宜示すが、何ら限定されるものではない。
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明によれば、
板状の敷板と、複数の前記敷板に亘るように設けられる連結板と、を複数備えた仮設路面を解体する仮設路面の解体工法であって、
前記連結板は、複数の前記敷板それぞれの表面に溶接されて複数の敷板を連結するものであって、縁部の少なくとも一部に沿って溶接部が形成されており、
前記溶接部を溶断する溶断工程と、
前記溶断工程後に前記連結板と前記敷板とを分離する分離工程と、により複数の前記敷板の連結を解除可能とされ、
前記溶断工程では、
前記溶接部に向かって発生するアークによって前記溶接部を溶融する処理と、
圧縮空気の噴出により前記溶融された溶接部を吹き飛ばす処理と、の両方を同時に実施する、
ことを特徴とする。
【0009】
上記本発明の請求項1に係る発明の解体工法によれば、溶断工程において、溶接部に向かって発生するアークによって溶接部を溶融する処理と、圧縮空気の噴出により溶融された溶接部を吹き飛ばす処理と、の両方を同時に実施するため、溶接部の溶断に伴って露出する敷板の表面を視認することができ、敷板の表面を溶融することなく(敷板に表面が凹むような傷を形成することなく)敷板上の溶接部のみを容易に溶断することができるとともに、従来のガス溶断よりも高出力であるため溶接部の溶断に掛かる時間を短縮でき、仮設路面の解体に係る作業の効率化を図ることができる。また、溶接部の溶断面が略U字状であるため、敷板の表面に残留する溶接部を減少でき、残留する溶接部を除去するために要する時間も短縮でき、仮設路面の解体に係る作業のより一層の効率化を図ることができる。
【0010】
請求項2に記載の解体工法であって、
前記連結板の厚さは、前記敷板の厚さの半分以下とされる、
ことを特徴とする。
【0011】
上記本発明の請求項2に係る発明の仮設路面の解体工法によれば、連結板の厚さが、敷板の厚さの半分以下とされるため、溶断工程において、敷板と連結板とが同一の素材から形成されるものであっても熱伝導等の影響から連結板よりも敷板の方が溶融困難となり、敷板の表面を溶融することなく(敷板に表面が凹むような傷を形成することなく)敷板上の溶接部のみを容易に溶断することができ、仮設路面の解体に係る作業のより一層の効率化を図ることができる。
【0012】
請求項3に記載の解体工法であって、
前記圧縮空気の噴出により吹き飛ばされた溶接部を受け止める壁材を前記敷板上に設置した状態で前記溶断工程を実施する、
ことを特徴とする。
【0013】
上記本発明の請求項3に係る発明の仮設路面の解体工法によれば、圧縮空気の噴出により吹き飛ばされた溶接部を受け止める壁材を敷板上に設置した状態で溶断工程を実施するため、圧縮空気の噴出により吹き飛ばされた溶接部が壁材によって効果的に受け止められ、溶融された高熱の溶接部が他の作業員と接触するような事故を抑制できるとともに、吹き飛ばされた溶接部の清掃を容易とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の仮設路面の解体工法においては、仮設路面の解体に係る作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態である仮設路面を示す概略斜視図である。
【
図2】敷板の表面に溶接された平板を示す仮設路面の部分断面図ある。
【
図3】本実施形態の解体工法を示すフローチャートである。
【
図4】溶断工程で用いられるアーク溶断装置の一例を示す概略斜視図である。
【
図5】本実施形態の解体工法の溶断工程において溶接部が溶断された後の仮設路面の部分断面図である。
【
図6】より好ましい態様の溶断工程において溶接部が溶断された後の仮設路面の部分断面図である。
【
図7】他の実施態様の解体工法を示すフローチャートである。
【
図8】(a)は、溶断工程で用いることが可能な載置治具を示す概略正面図であり、(b)は、同載置治具を示す概略側面図である。
【
図9】(a)は、敷板の表面に溶接された平板を示す仮設路面の部分断面図あり、(b)は、従来の解体工法の溶断工程において溶接部が溶断された後の仮設路面の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一実施形態である仮設路面1について、図面を参照して詳細に説明する。まず、
図1を参照して本実施形態の仮設路面1の全体構成について説明する。
図1は、一実施形態である仮設路面1の概略斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の仮設路面1は、屋外の地面や屋内の床面等の設置面X上に車両の走行経路に沿って設置される複数の敷板2、2と、敷板2に溶接されて隣り合う敷板2、2を連結する複数の連結板3、3(以下、平板3、3と記載することがある。)と、を備えている。仮設路面1は、例えば、建設現場等の屋外において、重機等の車両が走行するために地面に敷設される仮設の路面であり、建設作業が完了する等して不要となった際には解体されて撤去される(平板3による連結が解除されて、敷板2の各々が設置面X(地面)から取り除かれる)。また、仮設路面1は、例えば、倉庫等の屋内において、作業用の車両が走行するために床面に敷設される仮設の路面であり、耐用年数の経過等により不要となった際には解体されて撤去される(平板3による連結が解除されて、敷板2の各々が設置面X(床面)から取り除かれる)。
【0018】
敷板2は、鉄等の金属を矩形の板状に形成したものである。敷板2の大きさは、設置面Xの状態(特に凹凸等の状態)や走行する車両の状態(特に重量や速度等の状態)や敷板2の加重に対する変形性等に応じて形成されればよいが、例えば、長辺が6.0m、短辺が1.5m、厚さが1.5cm~3.0cm程に形成されている。このような敷板2は、設置面X上に敷設されることによって、車両の走行に伴って設置面Xが損傷することを抑制するとともに、設置面Xの凹凸(
図1のくぼみX1を参照)を覆って車両の走行安定性を高めることができる。
【0019】
平板3は、敷板2と同様に鉄等の金属を板状に形成したものである。平板3は、長尺な矩形や正方形等の板状に形成されればよいが、例えば、三角形や円等の板状に形成されてもよい。平板3は、隣り合う敷板2、2に掛け渡されるように敷板2、2の表面(上面)に載置された後、敷板2、2の表面(上面)に溶接されて隣り合う敷板2、2を連結する。このような平板3は、仮設路面1を走行する車両の衝撃が敷板2に加わっても敷板2が位置ずれすることを抑制することができる。なお、平板3は、仮設路面1上の凹凸を低減させて車両の走行性を高めるとの観点から、例えば、厚さが0.7cm以下の板状に形成されることが好ましい。
【0020】
図2は、敷板2の表面に溶接された平板3を示す仮設路面1の部分断面図である。
図1又は
図2に示すように、仮設路面1を組み立てる組立工法では、平板3と敷板2とを溶接する溶接工程において、平板3の外縁に沿って溶接部4が形成されるように敷板2の表面に平板3が溶接されればよく、平板3の外縁の少なくとも一部に溶接部4が形成されるように敷板2の表面に平板3が溶接されてもよい。なお、本実施形態では、平板3を敷板2に溶接する際に、平板3の下端部と敷板2の表面の一部とが溶融して混ざり合って形成される部分も溶接部4の一部とする。
【0021】
また、仮設路面1において、複数の平板3は敷板2の短辺や長辺に、例えば30cmのように所定の間隔を設けて溶接される態様であってもよいし、車両が旋回する位置の内と外等のように敷板2に加わる衝撃の大きさの違いに基づいて、大きな衝撃が加わる位置にはより小さい間隔を設けて複数の平板3が溶接され、小さな衝撃が加わる位置にはより大きい間隔を設けて複数の平板3が溶接される態様であってもよいし、設置面XにくぼみX1が形成されている位置ではより小さい間隔で複数の平板3が溶接される態様であってもよい。
【0022】
上述のような仮設路面1が解体される際には、平板3による敷板2、2の連結が解除されるが、仮設路面1の解体に用いられる従来の解体工法では、ガス(アセチレンガス等)と気体(酸素)とを混合させた混合気体を燃焼させ、その炎を隣り合う敷板2、2の隙間に沿って平板3に当てて平板3を溶断するガス溶断の工程や、敷板2と平板3を接合する溶接部4に当てて溶接部4を溶断するガス溶断の工程が実施されていた。
【0023】
平板3を溶断する溶断工程が実施される従来の解体工法では、敷板2を撤去した後に他の場所に搬送し、そこで敷板2を並べて溶接部4を溶断して敷板2から平板3を取り除く必要があるとともに、
図9(b)に示すように、ガス溶断による溶断面が先細りのV字状であるため、更に、敷板2に多量に残留する溶接部4を除去したり、溶接部4を溶断する際に敷板2に形成された表面が凹むような傷を補修したりする必要があり、仮設路面1の解体に要する作業者の負担や時間が多大なものとなるおそれがあった。なお、敷板2から平板3を取り除くことなくリース会社に返却した場合には、リース会社に対して多大な補修費用の支払いを要するおそれがある。
【0024】
また、溶接部4を溶断する溶断工程が実施される従来の解体工法では、ガス溶断による溶断面が先細りのV字状であるため、敷板2の表面を溶融しないように溶接部4を溶融するには多大な時間(平板3のサイズが厚さ6mm、短辺50mm、長辺150mmの場合に、約80秒)を要し、仮設路面1の解体の作業効率を低下させるおそれがあった。これに加えて、溶接部4を溶断するガス溶断の工程では、例えば、敷板2の溶融を抑制する観点から平板3を除去可能なように平板3側の溶接部4を溶断した場合には、敷板2上に多量の溶接部4が残留し、敷板2に残留する溶接部4を研削機等を用いて削り取って除去する除去工程が必要となり、更に多大な時間(平板3のサイズが厚さ6mm、短辺50mm、長辺150mmの場合に、約100秒)を要するため、仮設路面1の解体の作業効率をより一層低下させるおそれがあった。なお、敷板2の表面を溶融した場合には、溶融した敷板2の表面が平面となるように埋める作業工程を更に要し、仮設路面1の解体の作業効率を過度に低下させるおそれがある。
【0025】
以下、このような問題を解消することを目的に、仮設路面1の解体工法Sについて説明する。なお、上述の仮設路面1と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0026】
仮設路面1の解体工法Sは、平板3の縁部の少なくとも一部に沿って形成された溶接部4を溶断する溶断工程S1と、溶断工程S1後に平板3と敷板2とを分離する分離工程S2と、を含んでいる。なお、解体工法Sは、敷板2の表面に付着した砂や泥等の付着物を洗い流す洗浄工程を更に含む態様であってもよく、該洗浄工程は、溶断工程S1よりも前に実施されてもよいし、分離工程S2よりも後に実施されてもよい。本実施形態の解体工法Sでは、洗浄工程が最初に実施されており、以後の工程からは敷板2の表面に埃や土等の付着物が残留していないものとして説明する。
【0027】
図3は、本実施形態の解体工法Sを示すフローチャートである。
図3に示すように、本実施形態の解体工法Sでは、複数の平板3のうちの1つの平板3について溶断工程S1が実施された後、該平板3に対して分離工程S2が実施され、その後溶断工程S1及び分離工程S2が実施されていない平板3が有る場合には、該平板3について溶断工程S1及び分離工程S2が実施される。このような解体工法Sによれば、各平板3について溶断工程S1及び分離工程S2を確実に実施させることができ、仮設路面1の解体に係る作業の効率化を図ることができる。
【0028】
本実施形態の溶断工程S1では、溶接部4に向かって発生するアークによって溶接部4を溶融する処理と、圧縮空気の噴出により溶融された溶接部4を吹き飛ばす処理と、の両方を同時に実施する。
図4は、溶断工程S1で用いられるアーク溶断装置10の一例を示す概略斜視図である。溶断工程S1では、溶接部4を溶断するために、例えば
図4に示すようなアーク溶断装置10が用いられる。
【0029】
アーク溶断装置10は、いわゆるエアガウジングという装置であって、従来、板材と板材とを突き合わせて溶接した際の溶接部の表面や内部に傷等の溶接の不具合がある場合に、略U字の溝状の溶断面を形成するように溶接部をはつる(削る)工程で用いられる装置であり、敷板2に平板3が重ねて溶接される仮設路面1の組立工法等では一般的に用いられることのない装置である。アーク溶断装置10は、装置本体11と、装置本体11に連結されて装置本体11に電気や圧縮空気を供給する連結部12と、連結部12と電源やエアコンプレッサーとを繋ぐ供給線13と、チタンを含む棒状のガウジング棒16と、装置本体11に設けられてガウジング棒16を挟んで固定するガウジングトーチ14と、装置本体11に設けられて圧縮空気を噴出する複数の吹き出し口15と、を備えている。
【0030】
上述のアーク溶断装置10によれば、ガウジング棒16の先端から試験片17に向かってアークを発生させて試験片17の表面の一部を溶融させるとともに、吹き出し口15から溶融された試験片17に向かって圧縮された空気を噴出して溶融された試験片17を吹き飛ばすことができ、試験片17上に溶融した試験片17が残留しないように試験片17の表面に溶断面が略U字状となる溝を形成することができる。試験片17に溶断面が略U字状となる溝を形成するアーク溶断装置10は、従来、溶接部内に傷等が生じる溶接の不具合が生じた際に、溶接部の一部をはつる(削る)必要がある場合に用いられている。
【0031】
図5は、本実施形態の解体工法Sの溶断工程S1において溶接部4が溶断された後の仮設路面1の部分断面図である。本実施形態の溶断工程S1によれば、
図5に示すように、アークによって溶接部4を順次溶融するとともに、圧縮された空気によって溶融された溶接部4を敷板2上から順次吹き飛ばすことができる。また、本実施形態の溶断工程S1によれば、アークを用いて溶接部4を溶融するため、従来のガスを用いて溶接部4を溶融するよりも溶接部4をより短い時間(平板3のサイズが厚さ6mm、短辺50mm、長辺150mmの場合に、約50秒)で溶断でき、仮設路面1の解体に係る作業の効率化を図ることができる。
【0032】
また、溶接部4に向かってアークを発生させた際の溶断面が略U字状に形成されるため、本実施形態の溶断工程S1では、ガウジング棒16の先端と敷板2の表面との距離が予め設定された距離に維持されることにより、溶断面の底面と敷板2の表面とが面一となるようにて溶接部4のみを溶断することができる。この結果、溶接部4が溶断された後の敷板2上に溶接部4が残留することを抑制でき、溶接部4を敷板2から除去する除去工程が不要となり、仮設路面1の解体に係る作業の効率化を図ることができる。
【0033】
なお、溶接部4に向かってアークを発生させた際の溶断面の底面の幅は、特にガウジング棒16の太さに比例し、本実施形態で用いられるガウジング棒16は、例えば、10mm~20mmの直径を有するチタン製であることが好ましい。このようなガウジング棒16を用いた際の溶断面は、例えば、12.0mm~22.0mmの幅を有する略U字状の溝を形成する。また、溶接部4に向かってアークを発生させた際の溶断面の底辺からガウジング棒16の先端までの距離は、特に出力電流に比例して予め設定され、本実施形態で用いられる出力電流は、100A~600Aであることが好ましい。
【0034】
本実施形態の解体工法Sは、敷板2の厚さよりも平板3の厚さが小さい仮設路面1の解体に用いられることが好ましい。このような場合には、敷板2と連結板3と溶接部4とが同一の素材から形成されるものであっても、敷板2の表面に加えられる熱が水平方向及び下方へと伝導可能であるため、溶断工程S1において、熱伝導の影響から平板3や溶接部4よりも敷板2の方が溶融困難となり、敷板2の表面を溶融することなく(敷板2に表面が凹むような傷を形成することなく)敷板2上の溶接部4のみを容易に溶断することができ、仮設路面1の解体に係る作業のより一層の効率化を図ることができる。
【0035】
図6は、より好ましい態様の解体工法Sの溶断工程S1において溶接部4が溶断された後の仮設路面1の部分断面図である。本実施形態の溶断工程S1では、ガウジング棒16の先端が溶接部4の長手方向に沿って移動され、溶接部4がその長手方向に沿って溶断されるが、より好ましい態様の解体工法Sの溶断工程S1では、溶接部4の溶断後に敷板2上に溶接部4が残留する場合には、該残留する溶接部4を更に溶断してもよく、敷板2上に残留する溶接部4を効率的に除去でき、後の除去工程を不要にすることができる。この場合にも、溶断面の底面と敷板2の表面とが面一となるようにガウジング棒16の先端と敷板2の表面との距離が維持されて溶接部4が溶断される。
【0036】
なお、本実施形態の溶断工程S1では、溶融された溶接部4に向かって圧縮された空気が噴出されているが、溶融された溶接部4に向かって噴出されるのは流体であって溶融された溶接部4を吹き飛ばせればよく、例えば、窒素等の不燃性の気体や水等の不燃性の液体であってもよい。
【0037】
また、アーク溶断装置10を用いた溶断工程S1では、溶融された溶接部4が周囲(特に空気の噴出方向の下流側)へ広範囲に吹き飛ばされることを抑制するとの観点から、溶断工程S1が実施されるよりも前に防護壁が敷板上に設置される設置工程が実施される態様がより好ましく、該防護壁は、例えば、前面及び底面開放の箱状に形成されている。防護壁は、溶断工程S1においてアークによって溶融されて圧縮された空気によって飛散される溶融された溶接部4と衝突し、該溶融された溶接部4が防護壁の外側に飛散することを抑制でき、溶融された高熱の溶接部4が他の作業員と接触するような事故を抑制できるとともに、溶融されて吹き飛ばされた溶接部4の清掃を容易とすることもできる。なお、防護壁は、開放された前面が空気の噴出方向の上流側を向くようにガウジング棒16の下流側に設置されればよく、ガウジング棒16の先端と防護壁との距離は、溶融された溶接部4が吹き飛ばされる状態に応じて適宜設定されればよい。
【0038】
本実施形態の分離工程S2では、溶接部4が溶断された後の平板3に対してハンマー等の工具を用いて衝撃が加えられる。この衝撃によって、平板3及び平板3に付着する溶接部4と敷板2とが分離され、敷板2から平板3及び平板3に付着する溶接部4が取り除かれる(平板3のサイズが厚さ6mm、短辺50mm、長辺150mmの場合に、約10秒)。この結果、研削機を用いて敷板2に付着する溶接部4を削り取るような除去工程よりも作業に掛かる時間を大幅に低減させることができ、仮設路面1の解体に係る作業の効率化を図ることができる。なお、溶断工程S1によって溶接部4が敷板2上の溶接部4が一様に除去されている場合であっても敷板2の表面に溶接部4が残留する場合には、溶断後の敷板2上が平面となるようにハンマー等の工具を用いて衝撃を加える処理や、研削機を用いて敷板2の表面を研削する処理等により敷板2の表面を平面状に補修する除去工程が実施される。
【0039】
図7は、他の実施形態の解体工法Sを示すフローチャートである。上記実施形態の解体工法Sでは、1つの平板3に対して溶断工程S1が実施された後に分離工程S2が実施されていたが、
図7に示すように、他の実施形態の解体工法Sでは、仮設路面1において予め設定された領域に位置する平板3又は全ての平板3に対して溶断工程S1が実施された後に分離工程S2が実施される。このような解体工法Sでは、溶断工程S1と分離工程S2とで工具を持ち替える回数を低減することができ、仮設路面1の解体に係る作業の効率化を図ることができる。
【0040】
上記実施形態の解体工法Sの溶断工程S1では、溶接部4に向かってアークを発生させた際の略U字状の溶断面の底面と敷板2の表面とが面一となるように、溶接部4を溶接部4の長手方向に沿って溶断することについて説明したが、このような溶接部4の溶断には、アーク溶断装置10に予め設定された出力電流を設定した後、ガウジング棒16の先端と敷板2の表面との距離を維持し、溶接部4の短手方向に対するガウジング棒16の先端の位置を維持するとともに、ガウジング棒16の先端を溶接部4の長手方向に沿って移動させて溶接部4を溶断する必要がある。より具体的には、作業者は、装置本体11の上下方向の位置及び前後方向の位置を維持するとともに、装置本体11を左右方向に沿って移動させなければならず、このような装置本体11の操作が作業者の負担を過大なものとするおそれがある。
【0041】
図8(a)は、溶断工程S1で用いることが可能な載置治具20を示す概略側面図であり、
図8(b)は、同載置治具20を示す概略正面図である。装置本体11の操作に関する上記課題を解決するため、溶断工程S1では、装置本体11を載置可能な載置治具20が用いられる態様であってもよい。
図8(a)及び
図8(b)に示すように、載置治具20は、装置本体11が載置される載置台21と、載置台21を支持する本体枠22と、本体枠22の下端部に設けられた複数のローラー23、23と、を備えている。
【0042】
載置台21は、装置本体11が載置可能であればよく、本実施形態では、装置本体11の円柱状の外形に応じて、断面が半円の半円筒状(円筒を縦方向に割った形状)に形成されている。また、載置台21は、載置台21に載置された装置本体11を固定可能であってもよく、例えば、装置本体11が載置台21に嵌め合わされて装置本体11を固定可能な態様であってもよい。
【0043】
本体枠22は、上端部に載置台21を支持し、下端部に軸支された複数のローラー23、23によって敷板2上を一方向(図示、左右方向)に移動可能であればよい。本実施形態の本体枠22は、載置台21が前後方向に揺動可能に載置台21の略中央部を左右方向から軸支するとともに、ネジ等の固定部材によって載置台21の揺動を規制可能に構成されており、例えば、溶接部4の溶断時に、載置台21を前方に揺動させてガウジング棒16の先端を溶接部4に近づけて溶接部4の溶断を開始したり、載置台21を後方に揺動させてガウジング棒16の先端を溶接部4から遠ざけて溶接部4の溶断を中断又は終了したりの操作を容易にすることができる。また、本体枠22の高さは、ガウジング棒16の把持位置から先端迄の距離と同程度であり、装置本体11がガウジング棒16を安定的に保持可能な範囲で予め設定されている。なお、本体枠22は、例えば、本体枠22を構成するフレームに伸縮構造を設けて本体枠22の高さが変更可能な態様であってもよい。
【0044】
上記の載置治具20を用いた溶断工程S1では、まず敷板2上の載置治具20の載置台21に装置本体11が載置され、溶接部4に向かってアークを発生させた際の略U字状の溶断面の底面と敷板2の表面とが面一となるように、装置本体11に保持されるガウジング棒16の位置(ガウジング棒16の先端と敷板2の表面との距離)が調整される。次にガウジング棒16の先端が溶接部4の上方に位置するように、かつ、載置治具20が溶接部4の長手方向に沿って移動する向きに載置治具20が敷板2上に載置される。この後装置本体11に電力と圧縮された空気が供給されるとともに、溶断速度等に応じて載置治具20が一方向(図示右方)に移動されて、溶接部4が長手方向に沿って溶断される。よって、本実施形態の載置治具20を用いた溶断工程S1では、作業者が過度な技術力を要さずとも溶断面の底面と敷板2の表面とが面一となるように溶接部4を長手方向に沿って容易に溶断することができ、作業者の操作負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 仮設路面
2 敷板
3 平板
4 溶接部
10 アーク溶断装置
20 載置治具
S 解体工法
S1 溶断工程
S2 分離工程
【要約】
【課題】 仮設路面の解体に係る作業の効率化を図ることができる仮設路面の解体工法を提供する。
【解決手段】 板状の敷板と、複数の前記敷板に亘るように設けられる連結板と、を複数備えた仮設路面を解体する仮設路面の解体工法であって、前記連結板は、複数の前記敷板それぞれの表面に溶接されて複数の敷板を連結するものであって、縁部の少なくとも一部に沿って溶接部が形成されており、前記溶接部を溶断する溶断工程と、前記溶断工程後に前記連結板と前記敷板とを分離する分離工程と、により複数の前記敷板の連結を解除可能とされ、前記溶断工程では、前記溶接部に向かって発生するアークによって前記溶接部を溶融する処理と、圧縮空気の噴出により前記溶融された溶接部を吹き飛ばす処理と、の両方を同時に実施する。
【選択図】
図5