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特許7629668苔栽培培地、苔栽培培地の設定方法、被施工物、植物が植栽される培地及び苔栽培培地の施工方法。
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  • 特許-苔栽培培地、苔栽培培地の設定方法、被施工物、植物が植栽される培地及び苔栽培培地の施工方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】苔栽培培地、苔栽培培地の設定方法、被施工物、植物が植栽される培地及び苔栽培培地の施工方法。
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/30 20180101AFI20250206BHJP
   A01G 24/15 20180101ALI20250206BHJP
   A01G 24/44 20180101ALI20250206BHJP
【FI】
A01G22/30
A01G24/15
A01G24/44
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024166874
(22)【出願日】2024-09-26
【審査請求日】2024-09-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524357570
【氏名又は名称】千々石 孝史
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(72)【発明者】
【氏名】千々石 孝史
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-191879(JP,A)
【文献】特開2001-011838(JP,A)
【文献】特開2012-085549(JP,A)
【文献】特開2002-171830(JP,A)
【文献】特開2001-103834(JP,A)
【文献】特開2009-195182(JP,A)
【文献】特開2002-153120(JP,A)
【文献】特開2008-048645(JP,A)
【文献】特開2005-185104(JP,A)
【文献】特開2009-201500(JP,A)
【文献】特開2018-198591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/30
A01G 20/00-20/47
A01G 9/00-9/28
A01G 24/15
A01G 24/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸放湿性不織布とパーライト粒子との組合わせによって形成してなり、前記吸放湿性不織布が30度C90%RHの環境下で5時間以内に70%以上の吸湿率となる吸湿性能を備え、かつ20度C50%RHの環境下で5時間以内に20%以下の吸湿率となる放湿性能を備える苔栽培培地を観葉植物の砂泥の培地上面に、その砂泥を覆うように被いかぶせて、敷き込むことを特徴とする苔栽培培地の使用方法。
【請求項2】
前記苔栽培培地が一対の吸放湿性不織布間にパーライト粒子を分散してなり、一の前記吸放湿性不織布外側面が施工面とされ、他の前記吸放湿性不織布外側面に種苔が散布され、各前記吸放湿性不織布内側面間が溶着されてなる請求項1記載の苔栽培培地の使用方法。
【請求項3】
前記パーライト粒子が真珠岩パーライトであり、その粒径が1~3mmである請求項1記載の苔栽培培地の使用方法。
【請求項4】
ピン挿しによって前記苔栽培培地を固定し、その固定された前記苔栽培培地の種苔間に、細砂及び/又は泥を散布する請求項1記載の苔栽培培地の使用方法。
【請求項5】
前記苔栽培培地に種苔を植え付けた培地作製後、定着し、新芽が出るまで養生期間として、湿度(水スプレー噴霧機能)及び/又は明かり(植物用照明器具)及び/又は風(微風の吹く設備)及び/又は温度の整った設備内で育成し、その後、屋外の所要場所に移設する請求項1記載の苔栽培培地の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苔栽培培地、苔栽培培地の設定方法、被施工物、植物が植栽される培地及び苔栽培培地の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
苔の好む環境は、苔の種類によって、温度・湿気・水分・明るさ等いろいろ違いがある。 ほぼ無限にあるといわれる苔の種類には、 一般によく見かける高温に極めて強く、水分が少なくても良いスナゴケは都市屋上のヒートアイランド対策等に向いている。
普通によく見かけるハイゴケ、庭等でよく見かけるスギ苔、ヒノキゴケ等には、水分補給が必要となる。しかし苔は特に人の手が関与しなくても粘り強く生育する面もある。
いずれにしても苔の緑は恰も人工のジュータンのように美しく、そしてそれによって空気も清浄化されおいしくなる。その結果心が和む。そんな苔は、地球環境には、なくてはならないものである。
【0003】
この様な苔の特性に着目して コンクリート面や石面を緑化するための手段として、不織布シート上に苔植物を発芽させた苔シートが知られている。このような苔シートを栽培する際、様々な培地を用いて苔植物を発芽させる試みがなされている。例えば、特許文献1には、栽培の効率化を図ると共に、丈夫な苔マットを栽培することが可能な苔栽培培地、苔マット、及びこれを備えた緑化パネルを提供することを目的として表裏面を有するロックウールマットを培地とし、表面側に種苔を播いて苔植物を育成することを特徴とする、苔マット栽培方法が開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-160315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、種苔に対する加湿又は放湿が適切なタイミングで行われることがなく、種苔の順調な効率的な生育が望みがたいという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の従来技術の問題に鑑みてなされたもので、種苔に対する加湿又は放湿が適切なタイミングで行われ、種苔の順調な効率的な生育を行うことが可能な苔栽培培地、苔栽培培地の設定方法、被施工物、植物が植栽される培地及び苔栽培培地の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る苔栽培培地は、 吸湿性不織布とパーライト粒子との組合わせによって形成してなることを特徴とする。
【0008】
この苔栽培培地は、一対の吸湿性不織布間にパーライト粒子を分散してなり、一の前記吸湿性不織布外側面が施工面とされ、他の前記吸湿性不織布外側面に種苔が散布され、各前記吸湿性不織布内側面間が溶着されてなる様にするのがよい。
【0009】
前記吸湿性不織布が放湿機能を備える様にするのがよい。
【0010】
前記吸湿性不織布が周囲の環境に応じて吸湿又は放湿を行う様にするのがよい。
【0011】
前記吸湿性不織布が30度C90%RHの環境下で5時間以内に70%以上の吸湿率となる吸湿性能を備え、かつ20度C50%RHの環境下で5時間以内に20%以下の吸湿率となる放湿性能を備える様にするのがよい。
これによって種苔に対する加湿又は放湿が適切なタイミングで行われ、種苔の順調な効率的な生育を行うことが可能となる。
【0012】
前記パーライト粒子が真珠岩パーライトであり、その粒径が1~3mmである様にするのがよい。粒径が1mm未満では保水性が不充分となり、粒径が3mmを越えると苔栽培培地としての柔軟性が害される。
【0013】
また本発明の苔栽培培地の設定方法は、苔栽培培地の前記吸湿性不織布の吸湿性能及び/又は放湿性能の調整を行うことを特徴とする。
【0014】
前記苔栽培培地が一対の吸湿性不織布間にパーライト粒子を分散してなり、一の前記吸湿性不織布外側面が施工面とされ、他の前記吸湿性不織布外側面に種苔が散布され、各前記吸湿性不織布内側面間が溶着されてなる様にするのがよい。
【0015】
本発明の苔栽培培地が施工された被施工物は、前記苔栽培培地が平面及び/又は傾斜面及び/又は垂直縦面及び/又は曲面の施工面に施工されたことを特徴とする。
【0016】
被施工物を建築物としてもよい。
【0017】
本発明の植物が植栽される培地は、植物が植栽される培地上面に、その培地を覆うように本発明の苔栽培培地を被いかぶせることを特徴とする。
【0018】
本発明の苔栽培培地の施工方法は、本発明の苔栽培培地を接着剤によって構造物に貼り付けることを特徴とする。
【0019】
また本発明の苔栽培培地の施工方法は、ピン挿しによって本発明の苔栽培培地を固定し、その固定された前記苔栽培培地の種苔間に、細砂及び/又は泥を散布することを特徴とする。
【0020】
また本発明の苔栽培培地の施工方法は、前記苔栽培培地に種苔を植え付けた培地作製後、定着し、新芽が出るまで養生期間として、湿度(水スプレー噴霧機能)及び/又は明かり(植物用照明器具)及び/又は風(微風の吹く設備)及び/又は温度の整った設備内で育成し、その後、屋外の所要場所に移設することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る苔栽培培地によれば、吸湿性不織布及びパーライト粒子間に雨水を貯水することによって、晴天時に貯水された水が水蒸気となって上昇して苔を潤す。
各前記吸湿性不織布内側面間の溶着は超音波溶着とすることができる。
【0022】
また、上記吸湿性不織布の上記表裏面の少なくとも一方にはメッシュ状シートを貼付してもよい。これにより、上記吸湿性不織布は補強されるため、苔植物側の面を内側にしメッシュ状シートを貼付した反対面を外側にしてロール形状に巻き込むことができる苔マットが栽培されることになる。この苔マットにより、広大な面積の苔マットをコンパクトにまとめることや、広大な面積に苔マットを敷く場合にコンパクトにまとめた苔マットを広げるだけで容易に敷くことができるので、作業量の大幅な削減が実現できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、苔栽培の効率化を図ると共に、種苔の順調な効率的な生育を行うことが可能な苔栽培培地、苔栽培培地の設定方法、被施工物、植物が植栽される培地及び苔栽培培地の施工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施の形態に係る苔栽培培地を示す断面図である。
図2図1の苔栽培培地の特性を示す説明図である。
図3図1の苔栽培培地の特性を示す他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る苔栽培培地の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る苔マットすなわち苔栽培培地を示す断面図である。苔マット1すなわち苔栽培培地1は、公園、屋上、屋根、傾斜面、壁面等を緑化するために敷き詰めて用いられるものである。係る苔栽培培地1は一対の吸湿性不織布2間にパーライト粒子3を分散してなり、一の前記吸湿性不織布2外側面2aが施工面とされ、他の前記吸湿性不織布2外側面2bに種苔4が散布され、各前記吸湿性不織布内側面間が超音波溶着部5とされる。
【0027】
ここで、吸湿性不織布2は、図2に示されるように低湿度から高湿度迄幅広い環境下において空気中の水分を引き寄せ繊維内部に蓄えて多くの水分を吸収する繊維を用いて製造される。係る繊維としては図2に示す吸湿特性を備える帝人フロンティア株式会社が製造販売するベルオアシス(登録商標)がある。係る繊維は以下の特徴を有する。
(1)吸湿量が大きい
図2に示されるように20度C95%RH下で約150%の吸湿率を示す。
特に高湿度下(65%RH以上)の吸湿能が高い。
(2)図2に示されるように20度C80%RH下では放湿能も備える。
さらにベルオアシスの特徴として以下を指摘することができる。
・優れた吸湿・放湿性
木綿の約7倍、B型シリカゲルの約2倍の吸湿能力がある。
・速やかな取水速度
大きな表面積により素早く吸水し、圧力を加えても容易に水分を逃さない。
・優れた難燃性
容易に燃えない優れた難燃性がある。
・高い消臭性能
アンモニアに対する消臭性が特に強く、天日干しにより繰返し使用が可能である。
・性能が長持ち
吸水・吸湿を繰返しても、その性能は低下しない。
・軽くて柔軟であり、しなやかな風合いを備える。
・優れた耐久性
耐光性が高く、光による吸水性能の低下がない。またさまざまな有機溶媒(アセトン、ベンゼン、アルコール等)に対する耐久性がある。
・優れた耐熱性
耐熱性は、150℃以上あり、熱による吸水・吸湿性能の低下がない。
・地球に優しい
燃焼時のカロリーが低く(4200cal/g)、焼却が容易である。
さらにベルオアシスは以下の安全性を備える。
・急性経口毒性:LD50≧2000mg/kg
・急性皮膚刺激性:刺激性なし
・急性眼刺激性:刺激性なし
・皮膚感作性:陰性
・変異原性:陰性
・皮膚腐食性:準陰性
【0028】
図3に示されるように吸湿性不織布2は高湿度下で素早く多くの水分を吸収することができ、低湿度下で素早く水分を放出し以下の特徴を有する。
(1)周囲の環境に応じて吸湿・放湿をする。
(2)吸湿・放湿速度が高い
(3)吸湿量は設計によって制御できる。
すなわち図3に示されるように吸湿性不織布2は30度C90%RHの環境下で5時間以内に70%以上の吸湿率となる吸湿性能を備え、かつ20度C50%RHの環境下で5時間以内に20%以下の吸湿率となる放湿性能を備える。
【0029】
パーライト粒子3の原料である火成岩は、高温で加熱すると中に含まれる水分が急速に蒸発し、数倍から数十倍に発泡する性質がある。発泡によって内部にはたくさんの空洞ができる。この空洞を多数備えることからパーライト粒子3は多孔質となり、空洞は空気や水の通り道となる。
【0030】
パーライト粒子3の素材であるパーライトは火山活動で噴き出した溶岩であり、火山活動で噴き出した溶岩が、水中などで急に固まり、ガラス状の岩石になって形成される。
このパーライトには、「黒曜石パーライト」と「真珠岩パーライト」の2種類がある。 黒曜石パーライトは、やや丸みを帯びており、ツルツルとした見た目が特徴的である。水分量が少なく透水性に優れており、土に混ぜ込むと土壌の水はけを改善する。一方、真珠岩パーライトは表面がザラザラしていて、黒曜石に比べると粒が小さい。水分量が多いため、発泡する時に粒が壊れて水が粒の奥深くまで浸透する。それにより水を効率よく保持できる。
このことから、黒曜石パーライトは排水性に優れていて、真珠岩パーライトは保水性に優れていることが分かる。
【0031】
本実施の形態ではパーライト粒子3に「真珠岩パーライト」を適用しており粒径が1~3mm程の大きさのものを用いた。
この「真珠岩パーライト」はそれ自体が効率よく雨水や、大気中の湿気を大きく吸水保持でき、かつ周囲の環境が乾燥し始めると、今度は、抱え込み貯め込んだ水を、水蒸気(湿気)水として培地上面に敷設の苔へ、放水(水蒸気状)を始める。
【0032】
苔はもともと、他の植物類と違って,根からではなく、葉の部分から吸水し、成育するものである。従って培地に水分を多く含水している状態は、良い成育に寄与することになる。
本実施の形態では吸湿性不織布2とパーライト粒子3の組合わせによって苔栽培培地1を形成する。その培地に雨が降れば、吸湿性不織布2とパーライト粒子3の複合的な機能の発揮に依って苔栽培培地1が吸水し、多量の水・湿気を抱え込み保水することが出来るようになる。
【0033】
一方、周囲の気温・湿度環境の変化に応じて、吸水・保水した水を、水蒸気として放水する。これを環境状況の変化に応じてくりかえす。
それによって苔に水分や湿気を補給しつづけることができるようになる。
従って夏場の暑い時に雨が降らない日が続いても、人による、苔への水やりはほとんど不要か極めて少量となる。これによって苔の成長を促し、その鮮やかな外観が充実することに寄与することができる。
【0034】
又、苔栽培培地1となる吸湿性不織布2とパーライト粒子3はともに軽量であるため、近年問題視されている東京など大都会のヒートアイランド対策として、建築物に大きな重量負担をかけることなく、建築物屋上等に、青々とした苔を敷設できるようになる。
【0035】
また冬場の寒い時は、吸湿性不織布2の上に、苔が載置された状態であるため、不織布自体のもつ断熱効果や柔軟性によって、氷点下近くでも、冬眠状態で生存を続け、苔独特の特性に依って春を待つことができ消滅に至るということはない。
【0036】
そもそも苔は、水分を必要とする。
しかし過剰な水に完全に浸漬したままでは、腐敗が進行する。一方、乾燥が長期にわたって続けば、劣化して美しい緑色を保持できなくなる。
【0037】
本実施の形態の苔栽培培地1は、吸水、保水、放湿性を特徴とする吸湿性不織布2を主体として構成されているので、苔4が水に完全に浸漬することは無い。
また本実施の形態の苔栽培培地1は、一対の吸湿性不織布2間にパーライト粒子3を分散してはさみ込む構造を採用しており、吸湿性不織布2自体が不織布として1.5mmの厚みで作られている。その結果一対の吸湿性不織布2全体では3mmの厚みとなる。その厚みによって得られる一対の吸湿性不織布2全体の容積は吸湿性不織布2に充分な吸水能・保水能・放水能をもたらしている。
尚、一対の吸湿性不織布2のうち上面側を1.5mmの厚みとし、下面側を3.5mmの厚みとし全体として5mmの厚みとなるようにしても良い。この場合に吸湿性不織布2の厚みを1.5mm未満とした場合は吸湿性不織布2の吸水能・保水能・放水能不充分となる。一方、吸湿性不織布2の厚みが3.5mmを越える場合は吸湿性不織布2の吸水能・保水能・放水能が過剰となる。
【0038】
更に一対の吸湿性不織布2自体は不織布であるため高い柔軟性を備えるという特徴がある。したがって苔栽培培地1は施工面に対する追従性が極めて良好である。
この追従性によって平面の施工面だけでなく垂直縦面の施工面にも、曲面の施工面にも施工が可能となる。
その場合に一対の吸湿性不織布2間にパーライト粒子3をサンドイッチ状に挟み込んであるので苔栽培培地1を施工面に適用するにあたって、パーライト粒子3によって緩衝効果が得られる。
【0039】
吸湿性不織布2の特長の1つである柔軟性に由来して、もし人が苔栽培培地1の上を歩いたときに人の重さによって、吸湿性不織布2が沈み、抱え込んだ水を、苔栽培培地1の外に水鉄砲のように放水して、苔栽培培地1の上を歩いた人に振りかかるという現象が起きることが考えられる。 しかし、吸湿性不織布2間にサンドイッチ状に挟み込んである、吸湿性不織布2とは別のもうl方の吸水保水材であり、且つ剛性を有するパーライト粒子3が1~3mmの厚みを有する。これに依って、その厚み分で苔栽培培地1の上を歩く人の重さによる沈み込みエネルギーが吸収されて沈み込みが抑制される。その様に湿性不織布2が沈み込むことが抑制される結果、苔栽培培地1の上を歩いた人に振りかかる水は少なくなり、多少あったとしても水勢は抑制される。
【0040】
また不織布吸湿性不織布2、パーライト粒子3とも、それ自体が難燃性であるので人が火のついたたばこの吸い殻を苔栽培培地1の上にポイ捨てしたとしても、炎上は防止できる。又犬猫鳥の糞などに対しても吸湿性不織布2にベルオアシスを適用した場合にはそれ自体にアンモニア耐性があるためその影響を抑制することができる。
【0041】
[適用例]
以下に本実施の形態の苔栽培培地1の適用例につき説明する。
(1)植木鉢・プランター等の観葉植物等の砂泥等の培地上面に、その泥砂を覆うように苔栽培培地1を新たに被いかぶせて、敷き込む。この場合の苔は主にシダゴケが適正である。植木鉢・プランター等の観葉植物の雑草を防止し、環境衛生を向上し、美観を向上して、水やり回数を減少することが可能である。
(2)ビル屋上のヒートアイランド対策に苔栽培培地1を用いる。主に乾燥に強いスナゴケが適正である。
(3)庭等の美観、雑草抑制、高気温化抑制のために苔栽培培地1を用い、きれいな空気の供給に寄与する。主に杉苔・シダゴケが適正である。
【0042】
[施工方法]
施工方法は布設現場によって大きくことなる。
施工面がコンクリート、鉄板面等固い面であるときは、耐水耐候ボンド等接着剤によって苔栽培培地1を貼り付ける。その場合、苔栽培培地1は軽量であることから、構造物の垂直面にも貼り付け施工ができる。
【0043】
地面等砂地泥地面には、ピン挿し等によって苔栽培培地1を固定する。その際に固定された苔栽培培地1の種苔4の上から、細砂や泥を、種苔4間に、種苔4が少し隠れる程度に覆うという方法を採用することもできる。
【0044】
[実施例]
苔栽培培地1を用いて実際に屋外施工を行った。
苔栽培培地1に種苔4を植え付けた培地作製後、定着し、新芽が出るまでに1か月程要し、生え揃うまでに3か月要した。(実測値)
従ってその間は屋外移転は行わなかった。少なくともその期間は養生期間として、室内等の環境の整った湿度(水スプレー噴霧機能)、明かり(植物用照明器具)、風(微風の吹く設備)、温度等の整った設備内で育成した。
その後、屋外の所要場所に移設した。
その際、平面の施工面だけでなく垂直縦面の施工面にも、曲面の施工面にも施工を行った。その苔栽培培地1を施工面に適用するにあたって、パーライト粒子3の緩衝効果によって苔栽培培地1を容易に施工でき、かつ各施工面において苔栽培培地1の苔は順調に生育した。

【符号の説明】
【0045】
1…苔栽培培地1、2…吸湿性不織布、3…パーライト粒子、4…種苔、5…超音波溶着部。
【要約】
【課題】種苔に対する加湿又は放湿が適切なタイミングで行われ、種苔の順調な効率的な生育を行うことが可能な苔栽培培地、苔栽培培地の設定方法、被施工物、植物が植栽される培地及び苔栽培培地の施工方法を提供する。
【解決手段】苔栽培培地1は、公園、屋上、屋根、傾斜面、壁面等を緑化するために敷き詰めて用いられるものである。係る苔栽培培地1は一対の吸湿性不織布2間にパーライト粒子3を分散してなり、一の前記吸湿性不織布2外側面2aが施工面とされ、他の前記吸湿性不織布2外側面2bに種苔4が散布され、各前記吸湿性不織布内側面間が溶着部5とされる。吸湿性不織布2は、低湿度から高湿度迄幅広い環境下において空気中の水分を引き寄せ繊維内部に蓄えて多くの水分を吸収する繊維を用いて製造される。
【選択図】図2
図1
図2
図3