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特許7629920治療用ナノ粒子を合成するための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】治療用ナノ粒子を合成するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/59 20170101AFI20250206BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20250206BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20250206BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250206BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20250206BHJP
   C07D 491/22 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
A61K47/59
A61K47/60
A61K31/4745
A61K9/14
A61P35/00
C08G65/48
C07D491/22
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022529467
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 US2020063321
(87)【国際公開番号】W WO2021113643
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】62/943,594
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/110,182
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522197408
【氏名又は名称】ダンタリ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DANTARI, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】エミリー エイ ワイアット
(72)【発明者】
【氏名】カール エム ブルーメンフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジェイ ラム
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-519508(JP,A)
【文献】特表2021-528369(JP,A)
【文献】Bioconjugate Chemistry,2013年,Vol.24,p.669-677
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
9/00-9/72
31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
C08G 65/48
C07D 491/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造
【化1】

(式中、Rは、-CH(CH)-、-CH-CH-、-CH(i-Pr)-、-CH-CH-CH-、-CH-CH-CH-CH-CH-又は-CH(CH i-Pr)-であり、
xは20~200であり;
yは5~200である)を有する、粘液酸ポリマー(MAP)-SN38コンジュゲート。
【請求項2】
請求項1に記載のMAP-SN38コンジュゲートを含むナノ粒子。
【請求項3】
以下の構造
【化2】

(式中、Rは、-CH(CH)-、-CH-CH-、-CH(i-Pr)-、-CH-CH-CH-又は-CH(CH Ph)-C(O)-NH-CH であり、
xは20~200であり;
yは5~200である)を有する、粘液酸ポリマー(MAP)-CPTコンジュゲート。
【請求項4】
xが、114である、請求項3に記載のMAP-CPTコンジュゲート。
【請求項5】
xが、80である、請求項3に記載のMAP-CPTコンジュゲート。
【請求項6】
xが、46である、請求項3に記載のMAP-CPTコンジュゲート。
【請求項7】
yが、16である、請求項3に記載のMAP-CPTコンジュゲート。
【請求項8】
トランスフェリンがコンジュゲートしている、請求項3に記載のMAP-CPTコンジュゲート。
【請求項9】
抗体がコンジュゲートしている、請求項3に記載のMAP-CPTコンジュゲート。
【請求項10】
前記抗体がトラスツズマブである、請求項9に記載のMAP-CPTコンジュゲート。
【請求項11】
(a)トランスフェリン、および
(b)抗体
がコンジュゲートしている、請求項3に記載のMAP-CPTコンジュゲート。
【請求項12】
前記抗体が、トラスツズマブである、請求項11に記載のMAP-CPTコンジュゲート。
【請求項13】
請求項3~12のいずれかに記載のMAP-CPTコンジュゲートを含む、ナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)(1)に基づき、2019年12月4日に出願された米国仮特許出願第62/943,594号及び2020年11月5日に出願された米国仮特許出願第63/110,182号の利益を主張し、これらの両開示は、あらゆる目的のために、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府の支援に関する陳述)
該当なし。
【技術分野】
【0003】
本開示は、様々ながんを治療するためのナノ粒子の分野におけるものであり、前記ナノ粒子は、ポリマーコアを含み、1つ若しくは複数のホーミング分子(すなわち、標的化分子)及び/又は1つ若しくは複数の治療用分子をさらに含む。そのようなナノ粒子を合成するための改良方法が本明細書において提供される。
【背景技術】
【0004】
脳腫瘍及び脳転移など、多くの脳疾患の治療には、治療用分子を脳に送達する必要がある。脳への治療薬の直接送達は、被験体に深刻なリスク(例えば、頭蓋骨の破損)をもたらし、ほとんどの化学療法治療に必要とされるような継続的実施は現実的ではない。しかしながら、血液脳関門(BBB)(脳の血管を裏打ちする内皮細胞が緊密に結合した層)が存在するため、全身送達(例えば、血流を介して)では、分子を効率よく脳に届けることはできない。血液腫瘍関門(BTB)として知られる同様の透過関門が、特定の固形腫瘍に存在する。
【0005】
乳がんは脳に転移することが多く、これらの脳転移を乳がん治療に使用される化学療法分子により治療することは、該治療薬を十分な濃度で脳に送達できれば可能となる。そのような化学療法薬のひとつが、DNAトポイソメラーゼIを阻害し、それによって細胞分裂を防ぐアルカロイドのカンプトテシンである。カンプトテシンは、細胞質などの水性環境での溶解性に問題があるため、溶解性の高いカンプトテシンの誘導体が開発されてきた。そのような誘導体の1つが7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン(SN38)であり、これはもともとカンプトテシン類似体であるイリノテカンの代謝物として発見されたものである。
【0006】
BBB及びBTBを越えて治療薬を送達する問題に対処するために、化学療法分子とホーミング(すなわち、標的化)分子とを含むナノ粒子であって、ホーミング分子が脳内皮細胞(及び腫瘍血管系の内皮細胞)の表面に存在するトランスフェリン受容体に結合し、これによりナノ粒子がトランスサイトーシスによって内皮細胞を通過することができるようなナノ粒子が開発されている。例えば、米国特許第9,468,681号、米国特許第10,166,291号及び米国特許第10,182,986号を参照。これらの特許の各々は、あらゆる目的のために、又は少なくともナノ粒子の性質、それらの製造方法及び使用方法並びにそれらの操作形態に関する教示について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
そのようなナノ粒子の合成における特定の工程には、(1)粘液酸を重合可能な反応性誘導体(すなわち、「粘液酸モノマー」つまりMAM)に変換する工程、(2)粘液酸モノマーを重合して粘液酸ポリマー(MAP)を形成する工程、(3)治療用分子を選択的反応性誘導体に変換する工程及び(4)誘導体化された治療用分子の1つ又は複数をMAPに結合させる工程、がある。
【0008】
血液脳関門及び血液腫瘍関門を通過することができる、カンプトテシン(CPT)を含むナノ粒子が説明されてきた。例えば、米国特許第9,446,149号;第9,468,681号;第10,166,291号及び米国特許出願公開第2019/0381188号(2019年12月19日)を参照(これらの各々は、あらゆる目的のために、又は少なくともナノ粒子の説明のために、参照により本明細書に組み込まれる)。しかしながら、そのようなナノ粒子を調製するための既存の方法は、試薬及び時間を消費し、高温を必要とし、収率が低い。さらに、上述のように、水性条件下でより溶解性が高いCPTの誘導体が好ましいと考えられる。したがって、CPT及びSN38などのその誘導体などの化学療法薬を含むナノ粒子を合成するための改良方法であって、迅速で、反応物に関して経済的であり、収率が高い方法が必要とされている。
【0009】
さらに、非CNS腫瘍などの非CNS悪性腫瘍及び血液悪性腫瘍の治療には、化学療法薬の送達のために改良されたビヒクルが有益であろう。
【発明の概要】
【0010】
本明細書で提供されるのは、粘液酸-ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーと、カンプトテシン(CPT)及びその誘導体並びに代謝物、例えば7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン(SN38)などの化学療法薬とを含む治療用ナノ粒子を合成するための改良方法である。この改良には、特に、新規中間体と、より安定した反応物の使用と、より安定した中間体の形成と、より迅速な反応時間と、中間体及び生成物のより高い収率と、標的化(ホーミング)分子及び治療用分子(例えば、高分子治療薬、例えば、抗体)をナノ粒子にコンジュゲートさせるための新規リンカーとが含まれる。本明細書に記載の方法で使用するための誘導体化ナノ粒子(例えば、コンジュゲートされたCPT又はSN38分子を含む)も提供され、治療用ナノ粒子の組み立てに使用するための粘液酸ポリマー(MAP)コンジュゲート(例えば、CPT、SN38、トランスフェリン及び/又はトラスツズマブとコンジュゲートしたMAP)も提供される。
【0011】
したがって、本明細書で提供されるのは、特に、以下の実施形態である。
【0012】
1.粘液酸ジアミノクロリドから粘液酸ジ(アスパルチルアミン)ジトリフルオロアセテートを合成するための方法であって、
(a)以下の構造
【化1】
を有する粘液酸ジアミノクロリドを、以下の構造
【化2】
を有する粘液酸ジ(アスパルチル(O-t-ブチル)-Boc)に変換する工程と、
(b)粘液酸ジ(アスパルチル(O-t-ブチル)-Boc)を、以下の構造
【化3】
を有する粘液酸ジ(アスパルチルアミン)ジ-トリフルオロアセテートに変換する工程と
を含む、方法。
【0013】
2.実施形態1に記載の方法であって、工程(b)において、
(a)粘液酸ジ(アスパルチル(O-t-ブチル)-Boc)が、以下の構造
【化4】
を有する粘液酸ジ(アスパルチルアミン)中性種に変換され、
(b)粘液酸ジ(アスパルチルアミン)中性種が粘液酸ジ(アスパルチルアミン)ジトリフルオロ酢酸に変換される、方法。
【0014】
3.粘液酸ジ(アスパルチルアミン)ジトリフルオロアセテートを合成するための方法であって、以下の構造
【化5】
を有する粘液酸ジ(アスパルチルアミン)中性種を、
以下の構造
【化6】
を有する粘液酸ジ(アスパルチルアミン)ジトリフルオロアセテートへ変換する工程を含む、方法。
【0015】
4.以下の構造
【化7】
を有する粘液酸ジ(アスパルチルアミン)中性種。
【0016】
5.SN38の10-TBDPS誘導体を合成するための方法であって、塩基(例えば、アミン塩基、例えば、トリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミン)及び溶媒(例えば、ジクロロメタン(DCM))中のSN38とtert-ブチル(クロロ)ジフェニルシラン(TBDPSCl)との混合液を加熱する工程を含み、その生成物が以下の構造
【化8】
を有する、方法。
【0017】
特定の実施形態では、混合液を、15℃~90℃の範囲にある温度で5分~48時間の範囲にある時間加熱する。さらなる実施形態では、反応の終了時に、反応混合液を、希酸(例えば、0.2NのHCl)、弱塩基(例えば、飽和NaHCO)及びブラインで順次洗浄する。さらなる実施形態では、中和した溶液を(例えば、MgSOで)乾燥させる。さらなる実施形態では、乾燥した溶液を真空蒸発させ、固体を与える。さらなる実施形態では、固体を再結晶化させる(例えば、残留物を(例えば、DCMに)溶解させ、生成物を(例えば、ヘキサンで)沈殿させることにより)。
【0018】
追加の実施形態では、20-OH基及び/若しくは10-OH基を有するSN38又はCPTの誘導体又は類似体を、SN38の代わりに出発物質として使用する。
【0019】
上記実施形態の組み合わせも、本明細書に開示される発明の追加的な実施形態として企図される。
【0020】
6.SN38の20-Boc-アミノアシル、10-TBDPS誘導体を合成するための方法であって、溶媒、塩基及びカップリング剤の存在下で10-TBDPS-SN38とBoc-アミノ酸-OHとを混合させる工程を含む、方法。特定の実施形態では、反応物を、溶媒(例えば、DCM)及び/又はカップリング剤(例えば、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl))及び/又は塩基(例えば、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))中で混合させる。特定の実施形態では、該反応を、0℃~20℃又はその間の任意の整数値若しくは小数値の温度で行う。
【0021】
7.前記アミノ酸が、グリシン(Gly)、バリン(Val)、γ-アミノ酪酸(GABA)及びヘキサン酸(Hex)からなる群より選択される、実施形態6に記載の方法。
【0022】
8.以下の構造
【化9】
を有する、20-(Boc-Gly)-10-TBDPS-SN38。
【0023】
9.以下の構造
【化10】
を有する、20-(Boc-GABA)-10-TBDPS-SN38。
【0024】
10.以下の構造
【化11】
を有する、20-(Boc-Hex)-10-TBDPS-SN38。
【0025】
11.以下の構造
【化12】
を有する、20-(Boc-Val)-10-TBDPS-SN38。
【0026】
12.SN38の10-OBoc誘導体(10-OBoc-SN38)を合成するための方法であって、塩基(例えば、ピリジン)及び溶媒(例えば、DCM)の存在下でSN38をジ-tert-ブチルジカーボネートと混合させる工程を含み、10-OBoc-SN38が以下の構造
【化13】
を有する、方法。
【0027】
13.SN38の20-(Boc-アミノアシル)、10-OBoc誘導体を合成するための方法であって、溶媒(例えば、DCM)、塩基(例えば、DMAP)及びカップリング剤(例えば、EDC.HCl)の存在下において、低温で、10-OBoc-SN38をBoc-アミノ酸-OHと混合させる工程を含み、20-(Boc-アミノアシル)-10-OBoc-SN38が以下の構造
【化14】
(式中、Rは、任意選択でアミノ酸官能基に結合した1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である)を有する、方法。特定の実施形態では、該反応を、0℃~20℃又はその間の任意の整数値若しくは小数値の温度で行う。
【0028】
14.前記アミノ酸官能基が、グリシン(Gly )、アラニン(Ala)、β-アラニン(β-Ala)、バリン(Val)及びロイシン(Leu )の官能基から選択される、実施形態12に記載の方法。
【0029】
15.以下の構造
【化15】
を有する、20-(Boc-Gly)-10-OBoc-SN38。
【0030】
16.以下の構造
【化16】
を有する、20-(Boc-Ala)-10-OBoc-SN38。
【0031】
17.以下の構造
【化17】
を有する、20-(Boc-β-Ala)-10-OBoc-SN38。
【0032】
18.以下の構造
【化18】
を有する、20-(Boc-Val)-10-OBoc-SN38。
【0033】
19.以下の構造
【化19】
を有する、20-(Boc-Leu)-10-OBoc-SN38。
【0034】
20.以下の構造
【化20】
を有する、20-(HCl.Gly)-SN38。
【0035】
21.以下の構造
【化21】
を有する、20-(TFA.GABA)-SN38。
【0036】
22.以下の構造
【化22】
を有する、20-(TFA.Hex)-SN38。
【0037】
23.以下の構造
【化23】
を有する、20-(HCl.Val)-SN38。
【0038】
24.以下の構造
【化24】
を有する、20-(TFA.Gly)-SN38。
【0039】
25.以下の構造
【化25】
を有する、20-(TFA.Ala)-SN38。
【0040】
26.以下の構造
【化26】
を有する、20-(TFA.β-Ala)-SN38。
【0041】
27.以下の構造
【化27】
を有する、20-(TFA.Val)-SN38。
【0042】
28.以下の構造
【化28】
を有する、20-(TFA.Leu)-SN38。
【0043】
29.以下の構造
【化29】
を有する、粘液酸ポリマー-SN38コンジュゲート(MAP-Gly-SN38)。
【0044】
特定の実施形態では、化合物16におけるxは、20~200の範囲にある数であり、yは、5~200(又はその間の任意の整数値、例えば、10~150、20~120、50~100若しくは10~25の範囲にある数である。特定の実施形態では、xは、ポリマーのPEG部位(すなわち、-O-CH-CH-)の数平均分子量が約500Da~約50,000Daの範囲にあるように選択される。
【0045】
特定の実施形態では、MAPの重量平均分子量は、5~150kDa又はその間の任意の整数値、例えば、20~120kDaの範囲にあり、x及びyの値は、それに応じて選択される。
【0046】
追加の実施形態では、x及びyの値は、MAP又は薬物コンジュゲートMAPをナノ粒子に組み立てた後、ナノ粒子のサイズが10~900nm又はその間の任意の整数値、例えば、100~800nm、200~500nm、400~700nm若しくは20~100nmの範囲にあるように選択される。
【0047】
30.以下の構造
【化30】
を有する、粘液酸ポリマー-SN38コンジュゲート(MAP-GABA-SN38)。
【0048】
特定の実施形態では、化合物17におけるxは、20~200の範囲にある数であり、yは、5~200(又はその間の任意の整数値、例えば、10~150、20~120、50~100若しくは10~25の範囲にある数である。特定の実施形態では、xは、ポリマーのPEG部位(すなわち、-O-CH-CH-)の数平均分子量が約500Da~約50,000Daの範囲にあるように選択される。
【0049】
特定の実施形態では、MAPの重量平均分子量は、5~150kDa又はその間の任意の整数値、例えば、20~120kDaの範囲にあり、x及びyの値は、それに応じて選択される。
【0050】
追加の実施形態では、x及びyの値は、MAP又は薬物コンジュゲートMAPをナノ粒子に組み立てた後、ナノ粒子のサイズが10~900nm又はその間の任意の整数値、例えば、100~800nm、200~500nm、400~700nm若しくは20~100nmの範囲にあるように選択される。
【0051】
31.以下の構造
【化31】
を有する、粘液酸ポリマー-SN38コンジュゲート(MAP-Hex-SN38)。
【0052】
特定の実施形態では、化合物18におけるxは、20~200の範囲にある数であり、yは、5~200(又はその間の任意の整数値、例えば、10~150、20~120、50~100若しくは10~25の範囲にある数である。特定の実施形態では、xは、ポリマーのPEG部位(すなわち、-O-CH-CH-)の数平均分子量が約500Da~約50,000Daの範囲にあるように選択される。
【0053】
特定の実施形態では、MAPの重量平均分子量は、5~150kDa又はその間の任意の整数値、例えば、20~120kDaの範囲にあり、x及びyの値は、それに応じて選択される。
【0054】
追加の実施形態では、x及びyの値は、MAP又は薬物コンジュゲートMAPをナノ粒子に組み立てた後、ナノ粒子のサイズが10~900nm又はその間の任意の整数値、例えば、100~800nm、200~500nm、400~700nm若しくは20~100nmの範囲にあるように選択される。
【0055】
32.以下の構造
【化32】
を有する粘液酸ポリマー-SN38コンジュゲート(MAP-Val-SN38)。
【0056】
特定の実施形態では、化合物19におけるxは、20~200の範囲にある数であり、yは、5~200(又はその間の任意の整数値、例えば、10~150、20~120、50~100若しくは10~25の範囲にある数である。特定の実施形態では、xは、ポリマーのPEG部位(すなわち、-O-CH-CH-)の数平均分子量が約500Da~約50,000Daの範囲にあるように選択される。
【0057】
特定の実施形態では、MAPの重量平均分子量は、5~150kDa又はその間の任意の整数値、例えば、20~120kDaの範囲にあり、x及びyの値は、それに応じて選択される。
【0058】
追加の実施形態では、x及びyの値は、MAP又は薬物コンジュゲートMAPをナノ粒子に組み立てた後、ナノ粒子のサイズが10~900nm又はその間の任意の整数値、例えば、100~800nm、200~500nm、400~700nm若しくは20~100nmの範囲にあるように選択される。
【0059】
33.以下の構造
【化33】
を有する粘液酸ポリマー-SN38コンジュゲート(MAP-Ala-SN38)。
【0060】
特定の実施形態では、化合物37におけるxは、20~200の範囲にある数であり、yは、5~200(又はその間の任意の整数値、例えば、10~150、20~120、50~100若しくは10~25の範囲にある数である。特定の実施形態では、xは、ポリマーのPEG部位(すなわち、-O-CH-CH-)の数平均分子量が約500Da~約50,000Daの範囲にあるように選択される。
【0061】
特定の実施形態では、MAPの重量平均分子量は、5~150kDa又はその間の任意の整数値、例えば、20~120kDaの範囲にあり、x及びyの値は、それに応じて選択される。
【0062】
追加の実施形態では、x及びyの値は、MAP又は薬物コンジュゲートMAPをナノ粒子に組み立てた後、ナノ粒子のサイズが10~900nm又はその間の任意の整数値、例えば、100~800nm、200~500nm、400~700nm若しくは20~100nmの範囲にあるように選択される。
【0063】
34.以下の構造
【化34】
を有する、粘液酸ポリマー-SN38コンジュゲート(MAP-β-Ala-SN38)。
【0064】
特定の実施形態では、化合物38におけるxは、20~200の範囲にある数であり、yは、5~200(又はその間の任意の整数値、例えば、10~150、20~120、50~100若しくは10~25の範囲にある数である。特定の実施形態では、xは、ポリマーのPEG部位(すなわち、-O-CH-CH-)の数平均分子量が約500Da~約50,000Daの範囲にあるように選択される。
【0065】
特定の実施形態では、MAPの重量平均分子量は、5~150kDa又はその間の任意の整数値、例えば、20~120kDaの範囲にあり、x及びyの値は、それに応じて選択される。
【0066】
追加の実施形態では、x及びyの値は、MAP又は薬物コンジュゲートMAPをナノ粒子に組み立てた後、ナノ粒子のサイズが10~900nm又はその間の任意の整数値、例えば、100~800nm、200~500nm、400~700nm若しくは20~100nmの範囲にあるように選択される。
【0067】
35.以下の構造
【化35】
を有する、粘液酸ポリマー-SN38コンジュゲート(MAP-Leu-SN38)。
【0068】
特定の実施形態では、化合物39におけるxは、20~200の範囲にある数であり、yは、5~200(又はその間の任意の整数値、例えば、10~150、20~120、50~100若しくは10~25の範囲にある数である。特定の実施形態では、xは、ポリマーのPEG部位(すなわち、-O-CH-CH-)の数平均分子量が約500Da~約50,000Daの範囲にあるように選択される。
【0069】
特定の実施形態では、MAPの重量平均分子量は、5~150kDa又はその間の任意の整数値、例えば、20~120kDaの範囲にあり、x及びyの値は、それに応じて選択される。
【0070】
追加の実施形態では、x及びyの値は、MAP又は薬物コンジュゲートMAPをナノ粒子に組み立てた後、ナノ粒子のサイズが10~900nm又はその間の任意の整数値、例えば、100~800nm、200~500nm、400~700nm若しくは20~100nmの範囲にあるように選択される。
【0071】
36.実施形態29~35のいずれかに記載のMAP-SN38コンジュゲートを含むナノ粒子。
【0072】
37.以下の構造
【化36】
を有する、20-(Boc-Gly)-CPT。
【0073】
38.以下の構造
【化37】
を有する、20-(Boc-Val)-CPT。
【0074】
39.以下の構造
【化38】
を有する、20-(Boc-Ala)-CPT。
【0075】
40.以下の構造
【化39】
を有する、20-(Boc-β-Ala)-CPT。
【0076】
41.以下の構造
【化40】
を有する、20-(Boc-GABA)-CPT。
【0077】
42.以下の構造
【化41】
を有する、20-(Boc-Phe-Gly)-CPT。
【0078】
43.以下の構造
【化42】
を有する、20-(TFA.Gly)-CPT。
【0079】
44.以下の構造
【化43】
を有する、20-(TFA.Ala)-CPT。
【0080】
45.以下の構造
【化44】
を有する、20-(TFA.β-Ala)-CPT。
【0081】
46.以下の構造
【化45】
を有する、20-(TFA.Val)-CPT。
【0082】
47.以下の構造
【化46】
を有する、20-(TFA.GABA)-CPT。
【0083】
48.以下の構造
【化47】
を有する、20-(TFA.Phe-Gly)-CPT。
【0084】
49.以下構造
【化48】
を有するニトロフェニルボロン酸-ポリエチレングリコールコンジュゲート(NPBA-PEG-AA)を合成するための方法であって、
(a)塩基(例えば、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン、DIPEA)及び溶媒(例えば、DCM)中にNH-PEG-酢酸(AA)を懸濁させる工程と、
(b)3-カルボキシ-5-ニトロフェニルボロン酸を溶媒混合液(例えば、DCM及びジメチルホルムアミド(DMF))に溶解させる工程と、
(c)(b)の溶液にカップリング剤(例えば、N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン、EEDQ)を添加する工程と、
(d)(a)及び(c)の溶液を混合させる工程と、
(e)該混合液を酸性化する工程と
を含み、
nが、2~2,000又はその間の任意の整数値、例えば、100~300、20~300、120~180及び/若しくは140~160の範囲にある数である、方法。
【0085】
特定の実施形態では、該反応を、低温、例えば、0℃~20℃の範囲にある又はその間の任意の整数若しくは小数値の温度で行い、その後、周囲温度まで温めてから酸性化及び精製を行う。特定の実施形態では、混合液を、pHが約4になるまで酸性化させる。追加の実施形態では、生成物を、溶媒(例えば、酢酸イソプロピル、iPrOAc)での抽出によって精製する。
【0086】
特定の実施形態では、nの値は、化合物のPEG(すなわち、-CH-CH-O-)部位の重量平均分子量が約2~約15kDaの範囲にある、例えば、約2kDa、約3kDa、約4kDa、約5kDa、約6kDa、約7kDa、約8kDa、約9kDa、約10kDa、約11kDa、約12kDa、約13kDa、約14kDa又は約15kDaとなるようなものである。
【0087】
50.以下の構造
【化49】
を有する、化合物(NPBA-PEG-AA-PFP)。
【0088】
特定の実施形態では、nは、2~2,000又はその間の任意の整数値、例えば、100~300、20~300、120~180及び/若しくは140~160の範囲にある数である。
【0089】
特定の実施形態では、nの値は、化合物のPEG(すなわち、-CH-CH-O-)部位の重量平均分子量が約2~約15kDaの範囲にある、例えば、約2kDa、約3kDa、約4kDa、約5kDa、約6kDa、約7kDa、約8kDa、約9kDa、約10kDa、約11kDa、約12kDa、約13kDa、約14kDa又は約15kDaとなるようなものである。
【0090】
51.実施形態50の化合物を製造するための方法であって、
実施形態49のNPBA-PEG-AAを、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート及び塩基触媒(例えば、N-メチルモルホリン)と混合させる工程
を含む、方法。
【0091】
52.NPBA-PEG-トランスフェリンコンジュゲートを合成するための方法であって、
実施形態50のNPBA-PEG-AA-PFPをホロトランスフェリン(すなわち、鉄結合トランスフェリン)と混合させる工程
を含む、方法。
【0092】
53.NPBA-PEG-トラスツズマブコンジュゲートを合成するための方法であって、
実施形態50のNPBA-PEG-AA-PFPをトラスツズマブと混合させる工程
を含む、方法。
【0093】
54.NPBA-PEG-治療用ポリペプチドコンジュゲートを合成するための方法であって、
実施形態50のNPBA-PEG-AA-PFPを治療用ポリペプチドと混合させる工程
を含む、方法。
【0094】
55.以下の構造
【化50】
(式中、Rは、任意選択でアミノ酸官能基に結合した1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である)を有する、SN38の20-Boc-アミノアシル、10-TBDPS誘導体(20-(Boc-アミノアシル)-10-TBDPS-SN38)。「Rは1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である」という用語は、上記構造における-NH-R-CO-(すなわち、該構造のSN38部位とMAP/PEG部位との間のリンカー)がアミノ酸を表すという事実を反映している。「1つ又は複数」は、リンカーが複数のアミノ酸を含み得る、すなわち、リンカーがジペプチド、トリペプチド又はオリゴペプチドであり得るという事実を反映している。
【0095】
56.アミノ酸官能基が、グリシン、バリン、γ-アミノ酪酸(GABA)及びヘキサン酸の官能基から選択される、実施形態55に記載の20-Boc-アミノアシル、10-TBDPSのSN38誘導体。
【0096】
57.以下の構造
【化51】
(式中、Rは、任意選択でアミノ酸官能基に結合した1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である)を有する、SN38の20-Boc-アミノアシル、10-OBoc誘導体(20-(Boc-アミノアシル)-10-OBoc-SN38)。「Rは1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である」という用語は、上記構造における-NH-R-CO-(すなわち、該構造のSN38部位とMAP/PEG部位との間のリンカー)がアミノ酸を表すという事実を反映している。「1つ又は複数」は、リンカーが複数のアミノ酸を含み得る、すなわち、リンカーがジペプチド、トリペプチド又はオリゴペプチドであり得るという事実を反映している。
【0097】
58.アミノ酸官能基が、グリシン、アラニン、β-アラニン、バリン及びロイシンの官能基から選択される、実施形態57に記載の20-Boc-アミノアシル、10-OBocのSN38誘導体。
【0098】
59.以下の構造
【化52】
(式中、Rは、任意選択でアミノ酸官能基に結合した1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である)を有する、SN38の20-アミノアシル誘導体のHCl塩(20-(HCl.アミノアシル)-SN38)。「Rは1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である」という用語は、上記構造における-NH-R-CO-(すなわち、該構造のSN38部位とMAP/PEG部位との間のリンカー)がアミノ酸を表すという事実を反映している。「1つ又は複数」は、リンカーが複数のアミノ酸を含み得る、すなわち、リンカーがジペプチド、トリペプチド又はオリゴペプチドであり得るという事実を反映している。
【0099】
60.アミノ酸官能基がグリシン及びバリンの官能基から選択される、実施形態59に記載のHCl塩。
【0100】
61.以下の構造
【化53】
(式中、Rは、任意選択でアミノ酸官能基に結合した1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である)を有する、SN38の20-アミノアシル誘導体のトリフルオロ酢酸(TFA)塩(20-(TFA.アミノアシル)-SN38)。「Rは1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である」という用語は、上記構造における-NH-R-CO-(すなわち、該構造のSN38部位とMAP/PEG部位との間のリンカー)がアミノ酸を表すという事実を反映している。「1つ又は複数」は、リンカーが複数のアミノ酸を含み得る、すなわち、リンカーがジペプチド、トリペプチド又はオリゴペプチドであり得るという事実を反映している。
【0101】
62.アミノ酸官能基が、グリシン、アラニン、β-アラニン、バリン、GABA、ヘキサン酸及びロイシンの官能基から選択される、実施形態61に記載のTFA塩。
【0102】
63.以下の構造
【化54】
(式中、Rは、任意選択でアミノ酸官能基に結合した1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である)を有する、粘液酸ポリマー(MAP)-アミノ酸-SN38コンジュゲート。「Rは1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である」という用語は、上記構造における-NH-R-CO-(すなわち、該構造のSN38部位とMAP/PEG部位との間のリンカー)がアミノ酸を表すという事実を反映している。「1つ又は複数」は、リンカーが複数のアミノ酸を含み得る、すなわち、リンカーがジペプチド、トリペプチド又はオリゴペプチドであり得るという事実を反映している。
【0103】
特定の実施形態では、MAP-アミノ酸-SN38コンジュゲートにおけるxは、20~200の範囲にある数であり、yは、5~200(又はその間の任意の整数値、例えば、10~150、20~120、50~100若しくは10~25の範囲にある数である。特定の実施形態では、xは、ポリマーのPEG部位(すなわち、-O-CH-CH-)の数平均分子量が約500Da~約50,000Daの範囲にあるように選択される。
【0104】
特定の実施形態では、MAPの重量平均分子量は、5~150kDa又はその間の任意の整数値、例えば、20~120kDaの範囲にあり、x及びyの値は、それに応じて選択される。
【0105】
追加の実施形態では、x及びyの値は、MAP又は薬物コンジュゲートMAPをナノ粒子に組み立てた後、ナノ粒子のサイズが10~900nm又はその間の任意の整数値、例えば、100~800nm、200~500nm、400~700nm若しくは20~100nmの範囲にあるように選択される。
【0106】
64.アミノ酸官能基が、グリシン、アラニン、β-アラニン、バリン、GABA、ヘキサン酸及びロイシンの官能基から選択される、実施形態63に記載のMAP-アミノ酸-SN38コンジュゲート。
【0107】
65.実施形態63又は64のいずれかに記載のMAP-アミノ酸-SN38コンジュゲートを含むナノ粒子。
【0108】
66.以下の構造
【化55】
(式中、Rは、任意選択でアミノ酸官能基に結合した1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である)を有する、カンプトテシンの20-Boc-アミノアシル誘導体(20-(Boc-アミノアシル)-CPT)。「Rは1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である」という用語は、上記構造における-NH-R-CO-(すなわち、該構造のSN38部位とMAP/PEG部位との間のリンカー)がアミノ酸を表すという事実を反映している。「1つ又は複数」は、リンカーが複数のアミノ酸を含み得る、すなわち、リンカーがジペプチド、トリペプチド又はオリゴペプチドであり得るという事実を反映している。
【0109】
67.アミノ酸官能基が、グリシン、バリン、アラニン、β-アラニン、GABA及びジペプチドフェニルアラニン-グリシンの官能基から選択される、実施形態66に記載の20-(Boc-アミノアシル)CPT誘導体。
【0110】
68.以下の構造
【化56】
(式中、Rは、任意選択でアミノ酸官能基に結合した1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である)を有する、CPTの20-アミノアシル誘導体のトリフルオロ酢酸(TFA)塩(20-(TFA.アミノアシル)-CPT)。「Rは1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である」という用語は、上記構造における-NH-R-CO-(すなわち、該構造のSN38部位とMAP/PEG部位との間のリンカー)がアミノ酸を表すという事実を反映している。「1つ又は複数」は、リンカーが複数のアミノ酸を含み得る、すなわち、リンカーがジペプチド、トリペプチド又はオリゴペプチドであり得るという事実を反映している。
【0111】
69.アミノ酸官能基が、グリシン、アラニン、β-アラニン、バリン、GABA及びジペプチドフェニルアラニン-グリシンの官能基から選択される、実施形態68に記載のTFA塩。
【0112】
70.以下の構造
【化57】
(式中、Rは、任意選択でアミノ酸官能基に結合した1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である)を有する、粘液酸ポリマー(MAP)-アミノ酸-CPTコンジュゲート。「Rは1つ又は複数のアミノ酸のα-炭素原子である」という用語は、上記構造における-NH-R-CO-(すなわち、該構造のSN38部位とMAP/PEG部位との間のリンカー)がアミノ酸を表すという事実を反映している。「1つ又は複数」は、リンカーが複数のアミノ酸を含み得る、すなわち、リンカーがジペプチド、トリペプチド又はオリゴペプチドであり得るという事実を反映している。特定の実施形態では、アミノ酸官能基は、アラニン、β-アラニン、バリン、GABA及びジペプチドフェニルアラニン-グリシンの官能基から選択される。
【0113】
特定の実施形態では、MAP-アミノ酸-CPTコンジュゲートにおけるxは、20~200の範囲にある数であり、yは、5~200(又はその間の任意の整数値、例えば、10~150、20~120、50~100若しくは10~25の範囲にある数である。特定の実施形態では、xは、ポリマーのPEG部位(すなわち、-O-CH-CH-)の数平均分子量が約500Da~約50,000Daの範囲にあるように選択される。
【0114】
特定の実施形態では、MAPの重量平均分子量は、5~150kDa又はその間の任意の整数値、例えば、20~120kDaの範囲にあり、x及びyの値は、それに応じて選択される。
【0115】
追加の実施形態では、x及びyの値は、MAP又は薬物コンジュゲートMAPをナノ粒子に組み立てた後、ナノ粒子のサイズが10~900nm又はその間の任意の整数値、例えば、100~800nm、200~500nm、400~700nm若しくは20~100nmの範囲にあるように選択される。
【0116】
71.実施形態70に記載のMAP-アミノ酸-CPTコンジュゲートを含むナノ粒子。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本開示は、付随する実施例に関連してなされる以下の説明を参照することによってより容易に理解され得、これらのすべては本開示の一部を形成するものである。本開示は、本明細書に記載され、又は示される特定の生成物、方法、条件又はパラメータに限定されないこと、及び本明細書に使用される用語は、例示としてのみ特定の実施形態を説明することを目的としており、クレームされた発明を限定するものでもないことが理解されよう。同様に、特に別段の記載がない限り、可能性のある機構若しくは作用様式又は改善理由に関するいかなる説明も、例示することのみを意図しており、本明細書の開示は、そのような示唆された機構若しくは作用様式又は改善理由の正否によって拘束されないものとする。この文章を通して、説明は、組成物及び前記組成物の製造方法及び使用方法に言及することが認識される。すなわち、本開示が、組成物又は組成物を製造若しくは使用する方法に関連する特徴又は実施形態を説明し、又はクレームする場合、そのような説明又はクレームは、これらの特徴又は実施形態を、これらの文脈(すなわち、組成物、製造方法及び使用方法)の各々における実施形態に拡張することが意図されていることが理解される。
【0118】
本開示において、単数形「a」、「an」及び「the」は複数形への言及を含み、特定の数値への言及は、文脈が明らかに別段のことを示さない限り、少なくともその特定の数値を含む。したがって、例えば、「ある材料」への言及は、当業者に知られているそのような材料及びその同等物等の少なくとも1つへの言及である。
【0119】
値が「約」という記述語を使用して近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。一般に、「約」という用語の使用は、開示された主題によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値であって、その機能に基づいて、使用される特定の文脈で解釈されるものを示す。当業者であれば、これを通常のこととして解釈することができるであろう。場合によっては、特定の値に使用される有効数字の数は、「約」という単語の範囲を決定する1つの非限定的な方法であり得る。その他の場合では、一連の値で使用される漸次的変化を使用して、各値について「約」という用語に利用可能な意図された範囲を決定することができる。存在する場合、すべての範囲は包括的であり、組み合わせが可能である。すなわち、範囲内に記載の値への言及は、その範囲内のすべての値を含む。
【0120】
明確にするために、本明細書において別個の実施形態の文脈で説明されている本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることが理解されよう。すなわち、明らかに相容れないか、又は明確に除外されない限り、個々の実施形態は、他の任意の実施形態(複数可)と組み合わせ可能であるとみなされ、そのような組み合わせは、別の実施形態であるとみなされる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本開示の様々な特徴も、別個に又は任意のサブコンビネーションで提供され得る。最後に、実施形態は、一連の工程の一部又はより一般的な構造の一部として記載される場合があるが、各前記工程はまた、それ自体が独立した実施形態であり、他のものと組み合わせ可能であると考えることができる。
【0121】
「含む」、「から本質的になる」及び「からなる」という移行句は、特許用語で一般的に受け入れられている意味でそれらを含意することを意図している。すなわち、(i)「含む」は、「包含する」、「含有する」又は「特徴とする」と同義であり、包括的な又は制限がないものであり、追加の、引用されていない要素又は方法工程を除外することはない。(ii)「からなる」は、クレームで指定されていない要素、工程又は成分を除外する。(iii)「から本質的になる」は、クレームの範囲を、クレームに係る発明の「基本的及び新規な特性(複数可)に実質的に影響を与えない」指定の材料又は工程に限定する。また、「含む」(又はその同等物)という句の観点から説明される実施形態は、実施形態として、「からなる」及び「から本質的になる」の観点から独立して説明されるものも提供する。「から本質的になる」の観点から規定される実施形態については、基本的かつ新規な特性(複数可)は、本発明の材料を調製し、及び使用する方法(及びそのような方法で使用されるシステム及びそこから得られる組成物)並びに材料自体の容易な操作性であり、該方法及び材料は、クレームに規定される要素のみを使用して強調される特性を実現することが可能である。すなわち、他の材料も本発明の組成物中に存在し得るが、これらの追加の材料の存在は、それらの組成物の記載された利点を提供するために必要ではなく(すなわち、効果は相加的であってもよい)、及び/又はこれらの追加の材料は生成物組成の性能を損なうことはない。同様に、追加の工程も該方法に採用され得る場合、それらの存在は、記載の効果又は利点を達成するために必要ではなく、及び/又はそれらは、記載の効果又は利点を損なうことはない。
【0122】
リストが提示される場合、特に別段の記載がない限り、そのリストの個々の要素及びそのリストのすべての組み合わせは、別個の実施形態であると理解される。例えば、「A、B又はC」として提示された実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」又は「A、B若しくはC」を含むものと解釈される。同様に、C1-3アルキルなどの用語は、別の実施形態として、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル、C1-2アルキル及びC2-3アルキルも含む。
【0123】
本明細書を通して、単語は、関連する技術分野の当業者に理解されるような通常の意味を持つものとする。ただし、誤解を避けるために、特定の用語の意味が具体的に定義され、又は明確化される。
【0124】
アルコール、アルデヒド、アミン、カルボン酸、ケトン又は他の同様に反応性のある官能基への言及は、それらの保護された類似体も含む。例えば、ヒドロキシ又はアルコールへの言及は、ヒドロキシが、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn、Bnl)、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル、[ビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル](DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル,MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル(トリフェニルメチル、Tr)、シリルエーテル(最も一般的なものには、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)及びトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテルが含まれる)、エトキシエチルエーテル(EE)により保護されている置換基も含む。アミンへの言及は、アミンが、BOCグリシン、カルボベンジルオキシ(Cbz)、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz又はMeOZ)、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、カルバメート、p-メトキシベンジル(PMB)、3,4-ジメトキシベンジル(DMPM)、p-メトキシフェニル(PMP)、トシル(Ts)基又はスルホンアミド(Nosyl及びNps)基により保護されている置換基も含む。カルボニル基を含む置換基には、カルボニルが、アセタール若しくはケタール、アシラール又はジアタン基で保護されている置換基も含まれる。カルボン酸又はカルボキシレート基を含む置換基の言及は、カルボン酸又はカルボキシレート基が、そのメチルエステル、ベンジルエステル、tert-ブチルエステル、2,6-二置換フェノールのエステル(例えば、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、シリルエステル、オルトエステル又はオキサゾリンにより保護されている置換基も含む。
【0125】
(略語)
AA:酢酸
ACN:アセトニトリル
Ala:アラニン、アラニル
ARS:アリザリンレッドS
Asp:アスパラギン酸塩、アスパラギン酸
β-Ala:β-アラニン、β-アラニル
BBB:血液脳関門
Boc:tert-ブトキシカルボニル
BTB:血液腫瘍関門
CPME:シクロペンチルメチルエーテル
CPT:カンプトテシン
CV:カラム容量
DCM:ジクロロメタン
DIC:N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA:N,N’-ジイソプロピルエチアミン
ジSPA-PEG:ジ(スクシンイミジルプロピオネート)-PEG
DMA:ジメチルアセトアミド
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDC.HCl:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
EEDQ:N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン
EtOAc:酢酸エチル
GABA:γ-アミノ酪酸、γ-アミノブチリル
Gly:グリシン、グリシル
GPC:ゲル浸透クロマトグラフィー
HBSS:ハンクス平衡塩溶液
HCl:塩酸
Hex:6-アミノヘキサン酸
HIC:疎水性相互作用クロマトグラフィー
HOPO:ヒドロキシピリジンN-オキシド
IPA:イソプロピルアルコール
iPrOAc:酢酸イソプロピル
MAM:重合性粘液酸モノマー
MAP:粘液酸ポリマー
MeOH:メタノール
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル
NHS:N-ヒドロキシスクシンイミド
NP(又はP):ナノ粒子
NPBA:3-カルボキシ-5-ニトロフェニルボロン酸
モノ-NPBA-PEG-Tf:トランスフェリンのモノPEG化画分
モノ-NPBA-PEG-Tras:トラスツズマブのモノPEG化画分
PEO:ポリエチレンオキシド
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PEG:ポリエチレングリコール
PES:ポリエーテルスルホン
PFP:ペンタフルオロフェニル
PyAOP:(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
SN38:7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン
SpP:粒子あたりのストランド
TBDPS:tert-ブチルジフェニルシラン;tert-ブチルジフェニルシリル
TBDPSCl:tert-ブトリル(クロロ)ジフェニルシラン
TEA:トリエチルアミン
Tf:ホロ-トランスフェリン
TFA:トリフルオロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
Tras:トラスツズマブ
UF/DF:限外濾過及び透析濾過
Val:バリン、バリル
【0126】
(反応成分)
本明細書に記載の手順には、当該技術分野で知られている標準的な溶媒及び触媒が含まれる。特定の化合物(例えば、酸、塩基、カップリング剤)が本開示に記載されているが、異なる試薬を使用できることは当業者には明らかである。
【0127】
そのため、例示的な溶媒には、塩素系溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジグライム、1,4-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフラン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール)、アルカン(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン)、グリコール(例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール)、極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン)及び極性プロトン性溶媒(例えば、水、エタノール、酢酸、プロピオン酸)が含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
例示的な酸には、鉱酸(例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸)及び有機酸(例えば、酢酸、マロン酸、メタンスルホン酸、プロピオン酸、チオ酢酸、p-トルエンスルホン酸、トリブロモ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸)が含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
例示的な塩基には、アミノ塩基(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2]オクタン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、リチウムアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、モルホリン、ピペリジン)、アルコキシド(例えば、バリウムtert-ブトキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド)、水酸化物(例えば、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、有機金属塩基(例えば、n-ブチリチウム、tert-ブチリチウム、ブチルマグネシウムクロリド)、ピリジン(例えば、4-ジメチルアミノピリジン、2,6-ルチジン、ピリジン)、炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム)及び水素化物(例えば、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム)が含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
例示的なカップリング剤には、カルボジイミド試薬(例えば、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N’-ジシクロペンチルカルボジイミド)、カルボジイミド試薬用添加剤(例えば、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシ-2-ピリジノン、6-クロロ-N-ヒドロキシ-2-フェニルベンズイミダゾール、エチル2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)酢酸塩)、無水物系又は形成試薬(例えば、ジタートブチルカーボネート、無水酢酸、2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、クロロギ酸エチル)、アシルアゾール(例えば、カルボニルジイミダゾール)、酸ハロゲン化物生成試薬(例えば、塩化チオニル、ホスゲン、塩化シアヌル、三フッ化二水素ベンジルトリフェニルホスホニウム)、ホスホニウム塩カップリング試薬(例えば、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、テトラメチルアミニウム試薬(例えば、2-(2-オキソ-1(2H)-ピリジル-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート)、アミニウム試薬(例えば、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリジニウムヘキサフルオロホスフェート)、オキシマウラン塩(例えば、1-((1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)(モルホリノ)メチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロホスフェート)、アンチモン酸ウラン塩(例えば、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-N,N-ジメチル-メタンイミニウムヘキサクロロアンチモン酸)、有機リン試薬(例えば、シアノホスホン酸ジエチル、1-オキソ-クロロホスホラン、2-プロパンホスホン酸無水物)、トリアジン系試薬(例えば、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン)、有機硫黄試薬(例えば、ペンタフルオロフェニル-4-ニトロベンゼンスルホネート)、ピリジニウム試薬(例えば、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨウ化物)、ポリマー結合試薬(例えば、ポリマー担持N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
(重合性粘液酸モノマー(MAM)の合成)
本明細書では、とりわけ、粘液酸の重合性誘導体(「粘液酸モノマー」すなわちMAM)を合成するための方法を提供する。第一段階では、硫酸の存在下で粘液酸をメタノール(MeOH)と反応させ、粘液酸の1,6-ジメチルジエステル(化合物1)を形成する。次に、このジエステルをトリエチルアミン(TEA)及びMeOHの存在下でN-Boc-エチレンジアミンと反応させ、N-Boc保護粘液酸エチレンジアミン(化合物2)を形成する。
【0132】
N-Boc保護粘液酸エチレンジアミンの分取スケールの代替方法では、硫酸の存在下で粘液酸をMeOHと反応させてメトキシル化粘液酸誘導体を生成し、次にTEA及びMeOH中でメトキシル化粘液酸をN-(2-アミノエチル)(tert-ブトキシ)カルボキサミドと反応させてN-Boc保護粘液酸ジアミンを生成する。実施例24を参照。
【0133】
従来の方法では、この第一段階(すなわち、粘液酸のN-Boc保護粘液酸エチレンジアミンへの変換)を2つの別々の反応で行っていた。まず、ジエステルを形成し、ジエステルを精製し、次に単離したジエステルをN-Boc保護粘液酸エチレンジアミンに変換していた。例えば、米国特許第10,166,291号及び米国特許出願公開第2019/0381188号(2019年12月19日)を参照。本明細書に記載の方法において、粘液酸のN-Boc保護粘液酸エチレンジアミンへの変換は、単一の反応で達成される。実施例1を参照。
【0134】
また、前述の実施形態のうちの2つ以上の任意のすべての組み合わせも、本明細書に開示される発明の追加の実施形態として企図される。
【0135】
次の段階では、N-Boc保護粘液酸エチレンジアミンから、MeOH及びHClと反応させてBoc保護基を除去する。これにより、N-Boc保護粘液酸エチレンジアミンは、粘液酸エチレンジアミンクロリド(化合物3)に変換される。実施例2を参照。MeOH及びHClとの反応による粘液酸エチレンジアミン塩化物(粘液酸ジアミノクロリド)を調製するための代替の分取スケールの方法を、実施例25に提供する。
【0136】
次の段階では、ヒドロキシピリジンN-オキシド(HOPO)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)及びアセトニトリル(ACN)の存在下で、粘液酸ジアミノクロリドをBoc-L-アスパラギン酸4-tert-ブチルエステルと反応させて、粘液酸エチレンジアミンクロリドを粘液酸ジ(アスパルチル(O-t-ブチル)-Boc)(化合物4)に変換させる。実施例3を参照。反応時間は、15℃~90℃の範囲にある温度で、5分~48時間の範囲とすることができる。従来の方法では、粘液酸エチレンジアミンをACN及びピリジンの存在下でジ(アスパルチル(O-ベンジル)-Boc)と反応させると、本明細書に開示の方法で使用されるジ(アスパルチル(O-t-ブチル)-Boc)保護基ではなくジ(アスパルチル(O-ベンジル)-Boc)保護基(例えば、米国特許出願公開第2019/0381188(2019年12月19日))を付加する結果となった。したがって、本明細書に記載の方法は、新たな試薬(ピリジンの代わりにHOPO及びDIC)並びに異なる保護基(O-ベンジルの代わりにO-t-ブチル)を利用する。従来の方法で使用していたベンジル基と比較して、本方法で使用するt-ブチル保護基の利点は、t-ブチル保護基をHCl又はトリフルオロ酢酸(TFA)で除去できることである。したがって、次の合成段階で、1つの試薬(例えば、TFA又はHCl)で両方の保護基(t-ブチル及びBoc)を除去することができる。
【0137】
粘液酸ジ(アスパルチル(O-t-ブチル)-Boc)を分取スケールで合成するための代替方法は、Boc-L-アスパラギン酸4-tert-ブチルエステルとシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル(オキシマ)をジクロロメタン(DCM)中で反応させて、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl)を添加しながら進める方法である。この混合液を、炭酸ナトリウムの水溶液中で粘液酸ジアミノクロリド(化合物3)と混合させる。水相を蒸留除去しながらACNを加えて、クルード生成物を濃縮し、結晶化させる。実施例26を参照。
【0138】
また、前述の実施形態のうちの2つ以上の任意のすべての組み合わせも、本明細書に開示される発明の追加の実施形態として企図される。
【0139】
粘液酸重合性モノマーの合成の最終段階では、DCMの存在下で粘液酸ジ(アスパルチル(O-t-ブチル)-Boc)をTFAと反応させることにより、粘液酸ジ(アスパルチルアミン)(化合物5)に変換する。実施例4を参照。反応時間は、15℃~90℃の範囲にある温度で5分~96時間の範囲とすることができる。従来の方法(例えば、米国特許出願公開第2019/0381188号(2019年12月19日)を参照)は、この変換に2つの工程を必要としており、最初に粘液酸ジ(Asp(O-ベンジル)-Boc)を粘液酸ジ(Asp(O-ベンジル)-アミンに変換し、次に粘液酸ジ(Asp(O-ベンジル)-アミンを粘液酸ジ(Asp-アミン)に変換していた。本明細書に記載の方法におけるt-ブチル及びBoc保護基の使用(前述のO-ベンジル及びBoc保護基の代わりに)は、水溶液又は有機溶液中で1工程で2つの保護基の除去を可能にし、均一系又は不均一系水素化の必要性を回避することができる。
【0140】
分取スケールの用途では、粘液酸ジ(アスパルチル(O-t-ブチル)-Boc)を粘液酸ジ(アスパルチルアミン)中性種(化合物20)に変換し、これを粘液酸ジ(アスパルチルアミン)のジTFA塩(化合物5)に変換する。これらの実施形態では、粘液酸ジ(アスパルチル(O-t-ブチル)-Boc)をDCM及び水中でTFA及びトリイソプロピルシランと反応させ、任意選択でテトラヒドロフラン(THF)を使用してさらに再結晶して、粘液酸モノマー中性種(20)を形成することができる。実施例27を参照。次に、中性粘液酸モノマーをDCM及び水中でTFAと反応させ、エーテル中の化合物5の種結晶の溶液と合わせて、MAM-ジTFA塩(5)を沈殿させることができる。実施例28を参照。
【0141】
また、前述の実施形態のうちの2つ以上の任意のすべての組み合わせも、本明細書に開示される発明の追加の実施形態として企図される。
【0142】
(粘液酸ポリマー(MAP)の合成)
本明細書で提供されるのは、特に、粘液酸のポリマー(「粘液酸ポリマー」すなわちMAP)を合成するための方法である。特定の実施形態では、ジTFA-粘液酸ジ(アスパルチルアミン)(MAM、化合物5)を、溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、DMSO)中でジ(スクシンイミジルプロピオン酸)-PEG(ジSPA-PEG)(例えば、ジSPA-PEG3.5k)と混合し、塩基(例えば、N、N’-ジイソプロピルエチルアミン、DIPEA)を加え、15℃~70℃の範囲にある温度(例えば、35℃)で、1時間~96時間(例えば、66時間)の範囲にある時間で反応を行う。所望のポリマー長(一般に10kDa~120kDaの範囲)が得られた後、反応混合液をDMSOで透析し、水で透析し、濾過して、MAP(化合物6)を得る。
【化58】
【0143】
ポリマーの分子量は、MAMとジSPA-PEGのモル比を調整することによって制御され、反応物のモル比が1:1のときに最も高い分子量が得られる。MAMとジSPA-PEGのモル比が1より大きくても小さくても、得られるポリマーの分子量は減少する。本発明者らの実施例では、分子量のさらなる減少は、MAMとジSPA-PEGの比率の上昇と相関する。実施例29を参照。
【0144】
特定の実施形態では、化合物6におけるxは、20~200の範囲にある数であり、yは、5~200の範囲にある数(又はその間の任意の整数値、例えば、10~150、20~120、50~100若しくは10~25)である。特定の実施形態では、xは、ポリマーのPEG部位(すなわち、-O-CH-CH-)の数平均分子量が約500Da~約50,000Daの範囲にあるように選択される。
【0145】
特定の実施形態では、MAPの重量平均分子量は、5~150kDa又はその間の任意の整数値、例えば、20~120kDaの範囲にあり、x及びyの値は、それに応じて選択される。
【0146】
追加の実施形態では、x及びyの値は、MAP又は薬物コンジュゲートMAPをナノ粒子に組み立てた後、ナノ粒子のサイズが10~900nm又はその間の任意の整数値、例えば、100~800nm、200~500nm、400~700nm若しくは20~100nmの範囲にあるように選択される。
【0147】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の標的化剤のいずれか1つ、及び本明細書に記載の化学療法薬のいずれか1つにコンジュゲートした本明細書に記載のナノ粒子コアを含む標的ナノ粒子を用いて実施され、標的ナノ粒子の合計サイズは約20nm~約100nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約40nm~約100nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約40nm~約90nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約40nm~約80nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約40nm~約70nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約40nm~約60nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約40nm~約50nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約50nm~約100nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約50nm~約90nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約60nm~約80nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約50nm~約70nmである。いくつかの実施形態では、標的ナノ粒子のサイズは、約70nm~約100nmである。
【0148】
特定の実施形態では、溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルアセトアミド(DMA)である。
【0149】
特定の実施形態では、高温は、20℃~40℃の範囲にある任意の温度、すなわち、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃又は40℃である。
【0150】
透析は様々な多孔度の膜で行うことができ、例えば、分画分子量が1kDa、3kDa、5kDa、10kDa、30kDa又は50kDaの膜を使用することができる。
【0151】
また、前述の実施形態のうちの2つ以上の任意のすべての組み合わせも、本明細書に開示される発明の追加の実施形態として企図される。
【0152】
(ポリマー分子量の測定)
MAPの分子量測定は、ポリエチレンオキシド(PEO)標準を用いたゲル濾過クロマトグラフィー(例えば、Malvern OMNISECゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)システム)により行われる。クロマトグラフィー装置は、例えば、溶媒供給ポンプ、脱気装置、自動サンプリングインジェクター、カラムコンパートメント、屈折率検出器及び光散乱検出器を含み得る。
【0153】
サンプルは、例えば、0.02%のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にMAPを1~5mg/mLの範囲の濃度に溶解し、その後サンプルを、例えば、0.45ミクロン(孔径0.45μm)フィルターで濾過することにより調製する。PEO分子量標準と共に、濾過したサンプル100μLの注入を、ゲル濾過又はゲル浸透カラム(例えば、2×Agilent PL Aquagel-OH 40カラム、長さ300mm×直径7.5mm、粒子径8μm)に、PBS+0.02%アジ化ナトリウムの移動相で、流量を、例えば0.7mL/分で、カラム温度を、例えば30℃で行う。ピーク画分は、示差屈折率及び/又は光散乱によって検出し、例えば、Malvern OMNISECソフトウェアを使用して分析する。
【0154】
(カンプトテシン(CPT)及びその誘導体、代謝物並びに類似体)
本開示は、特に、CPT及びその誘導体、代謝物並びに類似体の選択的反応性誘導体を調製するための方法及び組成物を提供する。一般に、これらの分子は、CPTの構造を示す下の図に示すように、5つの縮合芳香族環を含み、そのうちの1つ又は複数の環はヘテロ芳香族であり、1つ又は複数のペンダントヒドロキシル基を含む。
【化59】
【0155】
これらのカテゴリーの例示的な分子には、トポテカン、イリノテカン、シラタカン、コシテカン、エキサテカン、ラルトテカン、ギマテカン、ベロテカン、ルビテカン、SN38、ジフロモテカン、カレニテカン、ナミテカン、エロモテカン、デリモテカン、キミテカン、ZBH-1205、DRF-1042及びFL118が含まれる。
【0156】
(誘導体化7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン(SN38)のMAPへの結合)
脳腫瘍及び脳転移の治療に用いるナノ粒子は、治療用分子としてCPTを利用することが従来から説明されている。しかしながら、上述のように、例えばSN38などのCPTのより溶解性の高い誘導体は、より高い治療指数及びより低い毒性をもたらす。したがって、本開示は、特に、複数のSN38分子が結合しているポリマー粘液酸骨格を有するナノ粒子を合成するための方法を提供する。この目的のために、本開示は、上記のMAPに共有結合することができるSN38の多数の誘導体化された変種を合成するための方法及び組成物を提供する。
【0157】
したがって、本明細書で提供されるのは、特に、化学療法分子SN38の反応性誘導体を合成するための方法である。この方法は、SN38ヒドロキシル基を介して、多数の様々なアミノ酸ベースのリンカー分子をSN38分子に結合させることを含む。SN38その他のCPT誘導体は、10ヒドロキシルと20ヒドロキシルの2つのヒドロキシル基を持つ。20ヒドロキシルでのコンジュゲーションは、これらの分子の活性ラクトン型を安定化させ、被験体に投与した後に活性の低いカルボン酸塩型に変換することを低減し、又は防止する。しかしながら、10ヒドロキシルも反応性である。
【0158】
本明細書に記載の方法では、最初にSN38の10-ヒドロキシルの反応性を遮断し(すなわち、保護し)、次にリンカーを20-ヒドロキシに付加する。例示的なアミノ酸リンカーには、グリシン、アラニン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸(GABA)、バリン、ロイシン、イソロイシン、ペンタン酸、ヘキサン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジンアスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、トリプトファン並びにジペプチド(例えば、フェニルアラニン-グリシン)、トリペプチド及びオリゴペプチドが含まれる。
【0159】
多数の様々なリンカーをSN38の20-ヒドロキシル基に結合させるための方法が、本明細書において提供される。本明細書で例示される様々なリンカーの各々(例えばは、グリシン、アラニン、β-アラニン、ロイシンバリン、γ-アミノ酪酸及び6-アミノヘキサン酸並びにその他のジペプチドフェニルアラニン-グリシンなど)は、SN38の20-ヒドロキシでコンジュゲートした後、MAPのカルボキシル基と反応して(リンカーのアミン基とポリマーのカルボキシル基間のアミド化反応を介して)、SN38分子をMAPに共有結合することが可能である。異なるリンカーはそれぞれ異なる安定性を有し、得られるナノ粒子の特性(例えば、サイズ、密度)に影響し、これは特に、血液脳関門(BBB)又は血液腫瘍関門(BTB)を通過した後にナノ粒子からSN38が放出される速度に影響する。
【0160】
(10-ヒドロキシ保護SN38(10-TBDPS-SN38)の合成)
誘導体化SN38の合成の最初の工程では、SN38とtert-ブチル(クロロ)ジフェニルシラン(TBDPSCl)をDCM及びトリエチルアミン中で混合させることにより、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)保護基をSN38の10-ヒドロキシル基に付加する(その部位での反応性を遮断するため)。混合液を撹拌しながら約16時間還流(例えば、45℃)させ、HCl(例えば、0.2N)、飽和NaHCO及びブラインで洗浄し、最後にMgSOで乾燥させ、真空蒸発させる。生成物(10-TBDPS-SN38、化合物7)をDCMに溶解し、ヘキサンで沈殿させ、固体を乾燥させる。
【0161】
TBDPS保護基は、SN38の10-ヒドロキシ基に対して選択的であり(20-OH基はその後の工程で自由に反応する)、得られた化合物は保存中に保護基が自然に失われることが少なく、より安定した中間体を提供する。
【0162】
SN38の10-OH基を保護するためのTBDPSの使用のさらなる利点は、20-OH基に結合したリンカーからのBoc保護基の除去に使用したのと同じ条件(1M~12MのHCl又は1:1~1:4v/vの水:TFA)で除去できる点である。
【0163】
(保護された20-ヒドロキシグリシンリンカーを有する10-ヒドロキシ保護SN38の合成)
DCM中0℃で10-TBDPS-SN38をBoc-Gly-OHと混合させることにより、保護されたグリシン(Gly)リンカーを10-TBDPS-SN38の20-ヒドロキシ位に付加する。EDC.HCl及び4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を添加し、混合液を0℃で撹拌する。撹拌は、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間又はその間の任意の間隔で行うことができる。撹拌後、混合液を0.5%NaHCOで2回、水で1回、0.1NのHClで2回、ブラインで1回洗浄する。この溶液を乾燥させ(例えば、MgSOで)、真空蒸発させて、20-(Boc-Gly)-10-TBDPS-SN38(化合物8)を得る。
【0164】
(20-(HCl.Gly)-SN38の合成)
20-(Boc-Gly)-10-TBDPS-SN38を、室温のヘキサン層においてHCl(1N~12Nの範囲にある濃度)で処理することにより、10-ヒドロキシ基と20-ヒドロキシ基の両方で脱保護する。これにより、10-ヒドロキシ基が復元され、グリシンリンカーが20-ヒドロキシ基に共有結合しているSN38誘導体(20-(HCl.Gly)-SN38、化合物12)が生成される。
【0165】
(保護された20-ヒドロキシGABAリンカーを有する10-ヒドロキシ保護SN38の合成)
DCM中0℃で10-TBDPS-SN38をBoc-GABA-OHと混合させることにより、保護されたγ-アミノ酪酸(GABA)リンカーを10-TBDPS-SN38の20-ヒドロキシ位置に付加する。EDC.HCl及びDMAPを添加し、混合液を0℃で撹拌する。撹拌は、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間又はその間の任意の間隔で行うことができる。撹拌後、混合液を0.5%NaHCOで2回、水で1回、0.1NのHClで2回、ブラインで1回洗浄する。この溶液を乾燥させ(例えば、MgSOで)、真空蒸発させて、20-(Boc-GABA)-10-TBDPS-SN38(化合物9)を得る。
【0166】
(20-(TFA.GABA)-SN38の合成)
20-(Boc-GABA)-10-TBDPS-SN38を、室温のヘキサン層において、水中で1:1~4:1v/vの範囲にある濃度のTFAで処理することにより、10-ヒドロキシ基と20-ヒドロキシ基の両方で脱保護する。これにより、10-ヒドロキシ基が復元され、GABAリンカーが20-ヒドロキシ基に共有結合しているSN38誘導体(20-(TFA.GABA)-SN38、化合物13)が生成される。
【0167】
(保護された20-ヒドロキシヘキサン酸リンカーを有する10-ヒドロキシ保護SN38の合成)
DCM中0℃で10-TBDPS-SN38をBoc-Hex-OHと混合させることにより、保護された6-アミノヘキサン酸(Hex)リンカーを10-TBDPS-SN38の20-ヒドロキシ位置に付加する。EDC.HCl及びDMAPを添加し、混合液を0℃で撹拌する。撹拌は、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間又はその間の任意の間隔で行うことができる。撹拌後、混合液を0.5%NaHCOで2回、水で1回、0.1NのHClで2回、ブラインで1回洗浄する。この溶液を乾燥させ(例えば、MgSOで)、真空蒸発させて、20-(Boc-Hex)-10-TBDPS-SN38(化合物10)を得る。
【0168】
(20-(TFA.Hex)-SN38の合成)
20-(Boc-Hex)-10-TBDPS-SN38を、室温のヘキサン層において、水中で1:1~4:1v/vの範囲にある濃度のTFAで処理することにより、10-ヒドロキシ基と20-ヒドロキシ基の両方で脱保護する。これにより、10-ヒドロキシ基が復元され、Hexリンカーが20-ヒドロキシ基に共有結合しているSN38誘導体(20-(TFA.Hex)-SN38、化合物14)が生成される。
【0169】
(保護された20-ヒドロキシバリンリンカーを有する10-ヒドロキシ保護SN38の合成)
DCM中0℃で10-TBDPS-SN38をBoc-Val-OHと混合させることにより、保護されたバリン(Val)リンカーを10-TBDPS-SN38の20-ヒドロキシ位置に付加させる。EDC.HCl及びDMAPを添加し、混合液を0℃で撹拌する。撹拌は、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間又はその間の任意の間隔で行うことができる。撹拌後、混合液を0.5%NaHCOで2回、水で1回、0.1NのHClで2回、ブラインで1回洗浄する。この溶液を乾燥させ(例えば、MgSOで)、真空蒸発させて、20-(Boc-Val)-10-TBDPS-SN38(化合物11)を得ることができる。
【0170】
(20-(HCl.Val)-SN38の合成)
20-(Boc-Val)-10-TBDPS-SN38を、室温のヘキサン層においてHCl(1N~12Nの範囲にある濃度)で処理することにより、10-ヒドロキシ基と20-ヒドロキシ基の両方で脱保護する。これにより、10-ヒドロキシ基が復元され、バリンリンカーが20-ヒドロキシ基に共有結合しているSN38誘導体(20-(HCl.Val)-SN38、化合物15)が生成される。
【0171】
(SN38の10-及び20-OH基の両方での同じ保護基の使用)
アミノ酸リンカーを有するSN38の反応性誘導体を合成するための代替経路は、10-OH基にBoc-O保護基を、20-OH上にBoc-アミノ酸保護基を配置することである。この化合物(20-(Boc-アミノアシル)-10-OBoc-SN38)をTFAと反応させると、10-OH基が復元され、アミノ酸リンカーのTFA塩が20-OHに付加される。この方法を用いて、SN38の20-Boc-グリシル、-アラニル、-β-アラニル、-ロイシル及び-バリル誘導体が合成されている。以下、実施例33~35を参照。この方法で使用できる他のアミノ酸には、GABA、イソロイシン及びヘキサン酸並びにジペプチド、例えば、フェニルアラニン-グリシンが含まれる。
【化60】
【0172】
(ポリマー-薬物コンジュゲートの合成)
本明細書では、特に、誘導体化SN38をMAPに共有結合させることにより、ポリマー-薬物コンジュゲート(すなわち、MAP-リンカー-SN38ナノ粒子)を形成するための方法が提供される。ポリマーと薬物の間のリンカーの性質(すなわち、サイズ及び化学的性質)が異なる、多くの異なるコンジュゲートが提供される。様々なタイプのリンカーで誘導体化されたSN38を使用して、様々なコンジュゲートが作製される。一実施形態では、リンカーはグリシル(Gly)部位である。一実施形態では、リンカーはバリル(Val)部位である。一実施形態では、リンカーはγ-アミノ酪酸(GABA)部位である。一実施形態では、リンカーは6-アミノヘキサン酸(Hex)部位である。一実施形態では、リンカーはアラニル(Ala)部位である。一実施形態では、リンカーはβ-アラニル(β-Ala)部位である。一実施形態では、リンカーはロイシル(Leu)部位である。
【0173】
ポリマー-薬物コンジュゲートを形成するために、MAPをDMSOに溶解し、次にEDC.HCl及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を添加する。EDC.HCl及びNHSの添加後、誘導体化SN38及びDIPEAを添加し、混合液を室温で約18時間撹拌する。誘導体化SN38は、例えば、20-(HCl.Gly)-SN38、20-(HCl.Val)-SN38、20-(TFA.GABA)-SN38、20-(TFA.Hex)-SN38、20-(TFA.Gly)-SN38、20-(TFA.Ala)-SN38、20-(TFA.β-Ala)-SN38、20-(TFA.Val)-SN38又は20-(TFA.Leu)-SN38であり得る。次に、反応混合液をDMSOで、その後pH4の水で、10kDaの膜を使用して透析する。透析した生成物を濾過し(例えば、0.22μmフィルターを通して)、凍結し、凍結乾燥する。使用する誘導体化SN38に応じて、生成物は、MAP-Gly-SN38(化合物16)、MAP-GABA-SN38(化合物17)、MAP-Hex-SN38(化合物18)、MAP-Val-SN38(化合物19)、MAP-Ala-SN38(化合物37)、MAP-β-Ala-SN38(化合物38)又はMAP-Leu-SN38(化合物39)となる。
【0174】
(ナノ粒子の形成)
ポリマー-薬物コンジュゲート(すなわち、化合物16、17、18又は19、37、38又は39のいずれか1つ)をナノ粒子に変換するには、凍結乾燥ポリマー-薬物コンジュゲートをpH4の水に1~10mg/mL(例えば、4mg/mL)の濃度で溶解する。
【0175】
ナノ粒子のサイズは、直径が約20nm~約60nmの範囲にある。例示的なナノ粒子の直径は、15nm、16nm、17nm、18nm、19nm、20nm、21nm、22nm、23nm、24nm、25nm、26nm、27nm、28nm、29nm、30nm、31nm、32nm、33nm、34nm、35nm、36nm、37nm、38nm、39nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm又はそれ以上である。
【0176】
(In vitroでのナノ粒子からのSN38の放出量)
SN38/mLの濃度のナノ粒子0.1mgを、37℃の加湿オーブンで、pH6.5、7.0又は7.4のPBS中でインキュベートすると、MAP-Gly-SN38、MAP-GABA-SN38、MAP-Hex-SN38、MAP-Val-SN38、MAP-Ala-SN38、MAP-β-Ala-SN38及びMAP-Leu-SN38ナノ粒子からのSN38の放出はすべて一次速度則を示した。放出速度はpHに強く依存することが観察された。pHが6.5~7.4に上昇すると、すべてのナノ粒子製剤で放出半減期が減少し、加水分解がSN38の放出に重要な役割を果たしていることが示唆された。より疎水性で立体障害性の高いリンカーを有するナノ粒子では、より長い半減期が観察された。
【0177】
(MAPへの連結ための誘導体化CPT)
特定の実施形態では、本開示は、治療薬としてCPTを含むナノ粒子を提供する。アミノ酸にコンジュゲートしたCPTの誘導体(例えば、20-(TFA.Gly)-CPT)を、前記ナノ粒子の合成に使用する。例示的なアミノ酸リンカーには、グリシン、アラニン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸(GABA)、バリン、ロイシン、イソロイシン、ペンタン酸、ヘキサン酸並びにジペプチド(例えば、フェニルアラニン-グリシン)、トリペプチド及びオリゴペプチドが含まれる。
【0178】
20-(TFA.Gly)-CPTを、2つの工程で合成する。第一工程では、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン下)において、DMAP中でCPTをBoc-Gly-OHと混合し、DCMを加えて反応液をスラリーにする。次に、DICを数分かけて反応混合液に滴下し、その後、混合液を室温で数時間(例えば、3時間)撹拌する。その後、溶媒の約半分を真空除去し、冷MeOHを加えて生成物(20-(Boc-Gly)-CPT、化合物21)を沈殿させ、これを濾過することによって得る。固体を、冷MeOH及び冷メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)で洗浄し、真空乾燥させる。実施例30を参照。
【0179】
第2工程では、DCM中の20-(Boc-Gly)-CPTの撹拌懸濁液にTFAを徐々に加え、混合液を数時間(例えば、2時間)撹拌する。次いで、生成物(20-(TFA.Gly)-CPT、化合物22)をMTBEで沈殿させ、濾過し、洗浄し、真空乾燥させる。実施例31を参照。
【0180】
Boc-Gly-OHの代わりに、他のBoc保護アミノ酸(又はペプチド)を使用することにより、追加のCPT誘導体を製造することができる。例えば、Boc-Ala-OHを出発物質として用いると、20-(Boc-Ala)-CPT(化合物41)及び20-(TFA.Ala)-CPT(化合物45)が得られる。Boc-β-Ala-OHを出発物質として使用すると、20-(Boc-β-Ala)-CPT(化合物42)及び20-(TFA.β-Ala)-CPT(化合物46)が得られる。Boc-Val-OHを出発物質として使用すると、20-(Boc-Val)-CPT(化合物40)及び20-(TFA.Val)-CPT(化合物47)が得られる。Boc-GABA-OHを出発物質として使用すると、20-(Boc-GABA)-CPT(化合物43)及び20-(TFA.GABA)-CPT(化合物48)が得られる。Boc-Phe-Gly-OHを出発物質として使用すると、20-(Boc-Phe-Gly)-CPT(化合物44)及び20-(TFA.Phe-Gly)-CPT(化合物49)が得られる。
【0181】
(CPT-ポリマーコンジュゲートの合成)
CPT及びMAPのコンジュゲートは、特定の実施形態において提供される。これらのコンジュゲートを合成するために、MAP及び20-(TFA.アミノアシル)-CPT(CPTの例示的なアミノ酸及びペプチド誘導体については前のセクションを参照)を不活性雰囲気(例えば、アルゴン下)においてDMSOに溶解させる。別の容器で、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)をDMSOに溶解させる。次に、PyAOP溶液をMAP/20-(TFA.アミノアシル)-CPT溶液に加え、数分間(例えば、2分間)撹拌した後、DIPEAを加え、反応混合液を暗所で室温で12~24時間(例えば、18時間)撹拌する。生成物を冷(0~4℃)酢酸エチル(EtOAc)で沈殿させ(任意選択でいくつかのバッチで)、冷EtOAcで洗浄する。生成物は、凍結乾燥によってさらに単離することができる。実施例32を参照。
【0182】
(ニトロフェニルボロン酸(NPBA)-ポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート)
特定の実施形態では、標的化(ホーミング)分子又は高分子治療薬(例えば、抗体)などの高分子を、ニトロフェニルボロン酸-ポリエチレングリコール(NPBA-PEG)リンカーを介してMAPに連結させる。そのようなNPBA-PEGリンカーは、PEGのアミン誘導体(例えば、PEG3.5k、PEG5k)とNPBAのカルボキシル誘導体を組み合わせて、アミド結合で結合したNPBA-PEG-酢酸(AA)コンジュゲートを形成することによって合成することができる。特定の実施形態では、PEG誘導体は、一方の末端にアミノ基(NPBAとの反応のために)、反対側の末端にカルボキシル基(その後の反応において活性化され、ポリペプチドなどの高分子と反応することができる)を含む。実施例36を参照。
【化61】
【0183】
特定の実施形態では、nは、2~2,000又はその間の任意の整数値、例えば、100~300、20~300、120~180若しくは140~160の範囲にある数である。
【0184】
特定の実施形態では、nの値は、化合物のPEG(すなわち、-CH-CH-O-)部位の重量平均分子量が約2~約15kDaの範囲にある、例えば、約2kDa、約3kDa、約4kDa、約5kDa、約6kDa、約7kDa、約8kDa、約9kDa、約10kDa、約11kDa、約12kDa、約13kDa、約14kDa又は約15kDaとなるようなものである。
【0185】
NPBA-PEG-AAコンジュゲートを、ペンタフルオロフェニル(PFP)誘導体を形成することによって、ポリペプチド(例えば、トランスフェリンなど)との反応のために活性化する。これらの実施形態では、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネートをNPBA-PEG-AAコンジュゲートと組み合わせて、NPBA-PEG-ペンタフルオロフェニルエステル(例えば、NPBA-PEG5k-AA-PFP)を形成する。実施例37を参照。
【化62】
【0186】
特定の実施形態では、nは、2~2,000又はその間の任意の整数値、例えば、100~300、20~300、120~180及び/若しくは140~160の範囲にある数である。
【0187】
特定の実施形態では、nの値は、化合物のPEG(すなわち、-CH-CH-O-)部位の重量平均分子量が約2~約15kDaの範囲にある、例えば、約2kDa、約3kDa、約4kDa、約5kDa、約6kDa、約7kDa、約8kDa、約9kDa、約10kDa、約11kDa、約12kDa、約13kDa、約14kDa又は約15kDaとなるようなものである。
【0188】
(ホーミング(標的化)分子を含むポリマーコンジュゲート)
特定の実施形態では、本明細書に記載のMAPは、CPT若しくはSN38などの低分子治療薬の代わりに、又はそれに加えて、ホーミング(若しくは標的化)分子を含む。標的化分子は当該技術分野で知られており、例えば、低分子(例えば、ビタミン、例えば、葉酸)、糖類(例えば、マンノース、アロース、アルトローズ、グルコース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、二糖類、三糖類、オリゴ糖)、ペプチド(例えば、RGD)、ポリペプチド(例えば、抗体、トランスフェリンなどの細胞表面受容体と結合するタンパク質)、核酸、ペプトイド及びペプチド核酸(PNA)などが挙げられる。
【0189】
例えば、MAP(及びMAPから作られたナノ粒子)は、ポリマー(又はポリマーから形成されたナノ粒子)を血液脳関門又は血液腫瘍関門の内皮細胞へ標的化するホーミング分子であるトランスフェリンを含むことができる。これらの実施形態では、ホーミング分子は、上述したPFP活性エステルとの反応によってNPBA-PEGポリマーに結合する。タンパク質の一級アミン基がPFP活性エステルと反応することから、NPBA-PEG-ペンタフルオロフェニルエステルにホロトランスフェリンを結合させることで、エステルとホロトランスフェリンの結合が実現される。反応の進行をHPLCによってモニターし、モノPEG化トランスフェリン生成物(例えば、モノNPBA-PEG5k-Tf)を、PEG化の程度がより高い画分(例えば、ジ-及びトリ-PEG化画分)と比較したモノPEG化トランスフェリンの結合の差に基づいて、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により精製する。実施例38及び39を参照。この方法は、従来の方法を使用すると発生したような精製中のトランスフェリンからの鉄の喪失を防ぎ、それによってホロトランスフェリン構造を維持することができる。
【0190】
(高分子治療薬を含むポリマーコンジュゲート)
特定の実施形態では、本明細書に記載のMAPは、CPT又はSN38などの低分子治療薬の代わりに、又はそれに加えて、高分子治療薬を含む。高分子治療薬は当該技術分野で知られており、例えば、治療用ポリペプチド(例えば、抗体、酵素及び生物活性タンパク質)並びに核酸が含まれる。
【0191】
例示的な治療用ポリペプチドには、トラスツズマブ(抗Her2)、抗Her3、抗Trop2、抗PSMA、抗LIV-1、抗FOLR1、抗DLL3、抗PDGF、抗FRα、抗PTK7、抗メソセリン、抗c-MET、抗MUC1、抗CD70、抗CD74、抗CD30、抗CD33、抗FLT3、抗CD22、抗CD20及び抗CD19などの抗体が含まれるが、これに限定されない。
【0192】
前段落で例示したような腫瘍マーカーを指向する抗体などの特定のポリペプチド治療薬も、標的(ホーミング)分子で使用される。
【0193】
例えば、MAP(及びMAPから作られたナノ粒子)は、抗Her2抗体トラスツズマブを含むことができる。これらの実施形態では、抗体は、上述したPFP活性エステルとの反応によってNPBA-PEGポリマーに結合する。
【0194】
タンパク質の第一級アミン基はPFP活性エステルと反応することから、NPBA-PEG-ペンタフルオロフェニルエステルにトラスツズマブを結合させることで、エステルとトラスツズマブの結合が実現される。反応の進行をHPLCによってモニターし、モノPEG化トラスツズマブ生成物(例えば、モノNPBA-PEG5k-Tras)を、PEG化の程度がより高い画分(例えば、ジ-及びトリ-PEG化画分)と比較したモノPEG化トラスツズマブの結合の差に基づいて、HICにより精製する。実施例41及び42を参照。
【0195】
(ナノ粒子あたりのポリマーストランド数の測定)
ナノ粒子あたりのポリマーストランド数を測定するために、ナノ粒子の平均分子量を対応するポリマー-薬物(すなわち、MAP-SN38)コンジュゲートの分子量で割る。
【0196】
ナノ粒子の分子量は、公称分子量100kDa及び200kDaのPEO標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定する。ポリマー-薬物コンジュゲートの分子量を、コンジュゲートの合成に使用したポリマー(すなわち、MAP)の分子量から計算し、以下のように薬物負荷に対して調整する。
MWコンジュゲート=MWポリマー/(1-T)
(式中、MWポリマーはコンジュゲートの合成に使用したMAPの分子量であり、Tは治療薬の負荷の割合であり、小数で表される。)
【0197】
本明細書で使用する粒子あたりのストランド(SpP)は、粒子又はナノ粒子に存在する粘液酸ポリマー(「MAP」)治療薬コンジュゲート分子の数である。SpPの測定において、粒子又はナノ粒子は、ヒトへの投与に適した濃度で、任意の水溶液、例えば中性pHの水、pH7.4のPBS又は患者に投与される任意の製剤中で単一ユニットとして挙動する少なくとも1つのMAP-治療薬-タンパク質コンジュゲート分子を有する実体をいう。粒子あたりのストランドの計算において、MAP-治療薬コンジュゲート分子は、共有結合した治療薬を有する単一のMAPポリマーである。
【0198】
本明細書に開示される方法は、前記粒子が1つ又は複数のMAP-治療薬コンジュゲート分子を含む粒子の評価を提供する。一般に、本方法は、複数の前記粒子を含むサンプルを提供し、サンプル中の粒子あたりのMAP-治療薬コンジュゲートの数の値を測定し、それによって粒子の調製物を評価することを必要とする。粒子サンプルの値は、複数の粒子について得られた値の関数となる。
【0199】
上述のように、SpPは粒子又はナノ粒子に自己組織化するMAP-治療薬コンジュゲート分子の数として定義され、したがって
SpP=[MAP-治療薬コンジュゲート分子]/P(又はNP)
(式中、[MAP-治療薬コンジュゲート分子]はMAP-治療薬コンジュゲート分子の数であり、P(又はNP)は単一粒子(又はナノ粒子)である。)である。
【0200】
特定の実施形態では、本方法は、測定された値を基準値と比較することをさらに含む。比較は、多くの方法で使用することができる。一例として、本方法で行われた比較又は測定に応じて、決定又は工程が取られ、例えば、粒子を作るためのプロセスにおける製造パラメータが変更され、サンプルが分類され、選択され、受け入れ又は廃棄され、放出又は保留され、医薬品に加工され、出荷され、別の場所に移され、別の物質と配合され、例えば、賦形剤と配合され、標識され、包装され、商業的に売り出され、又は販売若しくは販売のために提供される。例えば、測定の結果に基づいて、又は参照標準との比較に基づいて、サンプルが採取されたバッチを、例えば、前述のように処理することができる。
【0201】
粒子あたりのストランド数を計算するために、粒子のサイズ、例えば自己組織化粒子の光散乱による分子量、個々のポリマーのサイズ、例えば個々のポリマーの光散乱による分子量、及び治療薬の負荷量、例えば質量%を決定する。これらの値を用いて、SpPは以下のように計算される。
SpP=MW粒子/(MWコンジュゲート
(式中、MW粒子は粒子の分子量であり、MWコンジュゲートはMAP-治療薬コンジュゲート分子の分子量であり、次のように計算される。
MWコンジュゲート=MWポリマー/(1-T
(式中、MWポリマーはMAPの分子量であり、Tは小数で表した治療薬の負荷率、例えば、10%負荷でT=0.1となる。))
【0202】
SpPの測定は、様々なリンカーと薬剤を有するMAPで実証されている。CPTとSN38を有する同じ分子量のMAPは、粒子あたり約1.5~2.5本のストランドになる。リンカーが異なると、粒子あたりのストランドが変化し、粒子の密度が変化することが、SN38で実証された。グリシン、γ-アミノ酪酸、ヘキサン酸、アラニン、β-アラニン、ロイシン及びバリンのリンカーによって、粒子あたりのストランドは約1.3~約4.6と変化する。
【0203】
ポリマー分子量分布及び粒子分散度:MAPは様々な分子量を持つように合成される。分子量が異なると、粒子径及び粒子あたりのストランド数も異なる。粒子は、平均より小さい又は大きいMAP(本明細書ではストランドとする)で形成される場合がある。ストランドはまた、せん断によって制限され得る最大サイズに結合する場合もある。
【0204】
粒子形状:粒子形状はほぼ球形と想定される。自己組織化は、MAP-治療薬コンジュゲート分子の治療薬によって作られる疎水性領域によって駆動されると想定される。
【0205】
(製剤、キット及び投与経路)
本明細書に開示されるようなナノ粒子を含む治療用組成物も提供される。そのような組成物は、典型的には、ナノ粒子と薬学的に許容される担体とを含む。補助的な活性化合物も、ナノ粒子組成物に組み込むことができる。
【0206】
本明細書に開示される治療用組成物は、特に、がん、がん転移並びに脳及び中枢神経系の他の障害を治療するのに有用である。したがって、ナノ粒子を含む組成物の「治療有効量」は、症状を軽減し、又は、例えば、腫瘍の退縮を刺激する任意の量である。例えば、ナノ粒子の投与量は、約0.1~1.0mg/kg体重又は約0.5~2.0mg/kg体重又は約1~5mg/kg体重又は約1mg/kg体重~約10mg/kg体重以上(又はその間の任意の整数値)であり、投与頻度は、例えば、体重、投与経路、疾患の重症度などに応じて、例えば、1時間ごと、1日2回、1日1回、週2回、週1回、月2回、月1回である。したがって、治療有効量は、同量の又は異なる量のナノ粒子の複数回投与から構成され得る。特定の実施形態では、ナノ粒子の1回の投与が、治療有効量である。
【0207】
特定の実施形態では、ナノ粒子の投与を、化学療法薬の投与量として典型的であるように、被験体の身体の表面積1平方メートルあたり1~20mgのナノ粒子(又はその間の任意の整数値若しくは小数値)の投与量で行う。
【0208】
様々な医薬組成物並びにそれらを調製し、及び使用するための技法は、本開示に照らせば、当業者に知られている。好適な医薬組成物及びそれらの投与の技法の詳細なリストについては、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed. 1985; Brunton et al., “Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,” McGraw-Hill, 2005; University of the Sciences in Philadelphia (eds.), “Remington: The Science and Practice of Pharmacy,” Lippincott Williams & Wilkins, 2005; and University of the Sciences in Philadelphia (eds.), “Remington: The Principles of Pharmacy Practice,” Lippincott Williams & Wilkins, 2008などのテキストを参照することができる。
【0209】
本明細書に記載のナノ粒子は、投与のために、生理学的に適合性のある担体中に懸濁させることができる。本明細書で使用する場合、「生理学的に適合性のある担体」という用語は、ナノ粒子と、製剤の他の任意の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではない担体を指す。当業者であれば、生理学的に適合性のある担体に精通している。適切な担体の例には、水(例えば、pH4の水)、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス平衡塩溶液+/-グルコース(HBSS)及び、例えば、Plasma-Lyte(商標)A(Baxter)などの複数の電解質溶液が含まれる。
【0210】
被験体に投与されるナノ粒子懸濁液の量は、投与部位、治療目標及び溶液中のナノ粒子の数によって異なる。典型的には、投与されるナノ粒子の量は、治療有効量になる。本明細書で使用する場合、「治療有効量」又は「有効量」は、特定の障害の治療を効果的に行うために;すなわち、その障害に関連する症状の量の減少及び/又は重症度の改善をもたらすために必要な投与されるナノ粒子の数を意味する。例えば、脳へのがん転移の場合、治療有効量のナノ粒子の投与は、転移の症状の軽減及び/又は逆転;例えば、転移性腫瘍の退縮をもたらす。治療有効量は、脳損傷の種類及び程度によって異なり、また、被験体の全体的な状態によっても異なる場合がある。
【0211】
開示された治療用組成物は、液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料、すなわち担体などの薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを含むこともできる。これらの担体は、例えば、ナノ粒子を安定化させ、及び/又はナノ粒子の体内保持を促進することができる。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、被験体に害を与えないという意味で、「許容可能」である。薬学的に許容される担体として機能することができる材料のいくつかの例には、以下が含まれる:ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖類;コーンスターチ及びジャガイモでんぷんなどのでんぷん;セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び坐薬用ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などの油類;プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、ソルビトール及びマンニトールなどのポリオール類;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;その他の医薬製剤で用いられる無毒適合性物質。ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香料及び香味料、保存剤及び酸化防止剤も組成物中に存在し得る。
【0212】
ナノ粒子は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体(その割合は、化合物の溶解度及び化学的性質、選択した投与経路及び標準的な実施によって決定される)を含むビヒクルにおいて、吸入、局所、経鼻、経口、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、膀胱内若しくは髄腔内)又は経直腸などが含まれるが、これらに限定されない任意の適切な経路によって被験体に投与することができる。本明細書に記載の化合物の投与は、当該技術分野において知られている任意の方法を用いて行うことができる。例えば、投与は、経皮、非経口、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼内、脳室内、嚢内、脊髄内、大槽内、腹腔内、脳室内、髄腔内、鼻腔内、エアロゾル、坐薬による、又は経口投与によるものであり得る。本明細書に記載のナノ粒子の医薬組成物は、注射による投与のため、又は経口、経肺、経鼻、経皮若しくは眼球投与のためのものであり得る。
【0213】
例示的な製剤には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:非経口投与、例えば、肺内、静脈内、動脈内、眼内、頭蓋内、髄膜下又は皮下投与に適したものであって、ミセル、リポソーム又は薬剤放出カプセル(徐放用に設計された生体適合性コーティング内に組み込まれた活性薬剤)にカプセル化された製剤が含まれる;摂取可能な製剤;点眼薬、クリーム、軟膏及びゲルなどの局所使用のための製剤;並びに吸入薬、エアゾール及び噴霧などのその他の製剤。本開示の組成物の投与量は、治療の必要性の程度及び重症度、投与される組成物の活性、被験体の一般的な健康並びに当業者によく知られているその他の考慮事項に応じて異なる。
【0214】
追加の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、脳損傷又は転移の部位又はその近傍で頭蓋内に送達される。そのような局所送達は、組成物の非全身的送達を可能にし、それによって、全身送達と比較して組成物の身体的負担を軽減する。局所送達は、例えば、頭蓋内注射によって、又はステント及びカテーテルを含むがこれらに限定されない様々な医療移植されるデバイスの使用によって実現することができ、又は吸入、瀉血若しくは手術によって実現することができる。ステント及びカテーテルなどの医療用デバイスに所望の薬剤をコーティング、移植、埋め込み及びその他の方法で結合させる方法は、当該技術分野で確立されており、本明細書で企図されている。
【0215】
本開示の別の態様は、ナノ粒子の投与を、任意選択で別の治療薬と組み合わせて、被験体に対して行うためのキットに関する。一実施形態では、キットは、例えば、注射による投与に適した、医薬担体中に配合されたナノ粒子の組成物を含む。
【実施例
【0216】
以下の実施例は、本開示内に記載される概念のいくつかを説明するために提供される。各実施例は、組成物、調製方法及び使用方法の特定の個々の実施形態を提供すると考えられるが、実施例のいずれも、本明細書に記載されるより一般的な実施形態を制限すると考えられるべきではない。
【0217】
以下の実施例では、使用した数値(例えば、量、温度など)に関して正確を期すよう努めたが、多少の実験誤差及び偏差は考慮する必要がある。特に別段の記載がない限り、温度は摂氏で、圧力は大気圧又はその近辺のものである。分子量についての言及は、特に別段の記載がない限り、数平均分子量を指すものとする。
【0218】
実施例1~4は、粘液酸の重合可能な粘液酸モノマー(MAM)への変換を記載している。実施例5及び6は、MAMを重合して粘液酸ポリマー(MAP)を形成することを記載している。実施例7~15は、7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン(SN38)を、4つの異なるアミノ酸ベースのリンカーにより、MAPと反応可能な形態に誘導体化し、共有結合したMAP-SN38コンジュゲートを形成することを記載している。実施例16~20は、アミノ酸ベースのリンカーによって結合したMAP-SN38コンジュゲートを合成するために使用される反応を記載している。実施例21は、MAP-SN38コンジュゲートをナノ粒子に変換するための方法を記載している。実施例22及び23は、MAP-SN38ナノ粒子の特性評価を記載している。実施例24~29は、MAPの分取スケール合成の経路を記載している。実施例30~32は、カンプトテシン(CPT)の誘導体化及びMAPへのその結合について記載している。実施例33~35は、MAPに結合させるためのSN38の誘導体化を記載している。実施例36及び37は、タンパク質コンジュゲートに適した反応性末端を有するニトロフェニルボロン酸-ポリエチレングリコール(NPBA-PEG)ポリマーの合成を記載している。実施例38~40は、標的化(ホーミング)分子のNPBA-PEGポリマーへのコンジュゲーション及び生成物の特性評価を記載している。実施例41~43は、NPBA-PEGポリマーへの高分子治療薬のコンジュゲーション及び生成物の特性評価を記載している。
【0219】
(実施例1.N-Boc保護粘液酸ジアミン(化合物2)の合成)
18g(86mmol)の粘液酸及び磁気撹拌子を入れた1L丸底フラスコに、400mLのメタノール(MeOH)及び1.4mLの濃硫酸を入れた。この混合液を絶えず撹拌しながら一晩(約18時間)加熱還流(85℃)した。約18時間後、32mLのトリエチルアミン(TEA)をフラスコに加え、その混合液を還流(85℃)で60分間撹拌した。次に、反応混合液に、50mLのMeOHに溶解した30g(187mmol)のN-Boc-エチレンジアミンを加えた。反応液を還流(85℃)で一晩(約18時間)撹拌した。反応混合液を室温まで冷却し、濾過し、MeOHで洗浄した。次に、収集した固体を450mLのMeOHに取り、絶えず撹拌しながら1時間還流した。反応混合液を室温まで冷却し、真空濾過し、MeOHで洗浄した。収集した固体を一晩真空乾燥させ、26.1g(52.8mmol、62%収率)のN-Boc保護粘液酸ジアミン(2)を得た。
【化63】
【0220】
(実施例2.粘液酸ジアミノクロリド(化合物3)の合成)
25.9g(52mmol)のN-Boc保護粘液酸ジアミン(2)及び磁気撹拌子を入れた500mL丸底フラスコに、MeOH中の3M塩酸(HCl)466mLを絶えず撹拌しながらゆっくりと添加した。HClをゆっくりと加えた後、反応フラスコをオービタルシェーカーに移し、室温で一晩振盪した。反応スラリーを濾過し、固体をMeOHで3回(150mL)洗浄した。収集した固体を35℃で一晩、数時間真空乾燥させ、18.0g(49mmol、94%収率)の粘液酸ジアミノクロリド(3)を得た。
【化64】
【0221】
(実施例3.粘液酸ジ(Asp(OtBu)-Boc)(化合物4)の合成)
14.9g(51mmol)のBoc-L-アスパラギン酸4-tert-ブチルエステル、6g(54mmol)のヒドロキシピリジンN-オキシド(HOPO)及び磁気撹拌子を入れた250mL丸底フラスコに、140mLのアセトニトリル(ACN)及び8.5mL(54mmol)のN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を添加した。この反応混合液を10分間撹拌した。次に、この反応フラスコに、水(55mL)及びTEA(5.4mL)の混合液に溶解した6.3g(17mmol)の粘液酸ジアミノクロリド(3)の懸濁液を添加した。反応混合液を絶えず磁気撹拌しながら約24時間加熱した(80℃)。加熱後、真空を利用して反応混合液からACNを除去した。濃縮した反応液にさらに水(150mL)を加え、混合液を1時間加熱した(85℃)。冷却後、反応混合液を真空濾過により収集し、水で3回(100mL)洗浄した。洗浄した固体をACN(150mL)と共に丸底フラスコに戻した。反応混合液を絶えず撹拌しながら溶解するまで加熱還流した。冷却後、反応混合液を濾過により収集し、冷ACN(100mL)で3回洗浄した。収集した固体をACN(150mL)と共に再び丸底フラスコに戻し、反応混合液を絶えず撹拌しながら約1時間加熱還流した。冷却後、反応混合液を濾過により収集し、冷ACN(100mL)で3回洗浄した。収集した固体を一晩真空乾燥させ、5.9g(7mmol、41%収率)の粘液酸ジ(Asp(OtBu)-Boc)(4)を得た。
【化65】
【0222】
(実施例4.粘液酸モノマー(MAM)(化合物5)の合成)
1g(1mmol)の粘液酸ジ(Asp(OtBu)-Boc)(4)及び磁気撹拌子を入れた40mLバイアルに、ジクロロメタン(DCM、7.5mL)を加えた。絶えず撹拌しながらこの反応混合液に、トリフルオロ酢酸(TFA、7.5mL、98mmol)をゆっくりと添加した。室温で1時間撹拌した後、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE、100mL)をゆっくり加え、反応混合物を沈殿させた。沈殿した混合物を遠心分離し、続いてMTBE(100mL)で1回洗浄した。収集した固体を真空乾燥させ、次いで水(30mL)に溶解させた。溶解した生成物を0.22μmフィルターに通し、凍結させ、凍結乾燥させて0.2767g(0.384mmol、32%収率)のMAM(5)を得た。
【化66】
【0223】
(実施例5.粘液酸ポリマー(MAP)(化合物6)の合成)
224mg(0.30mmol)のMAM(5)、1gのジ(スクシンイミジルプロピオネート)-PEG(ジSPA-PEG3.5k)(0.27mmol)及び磁気撹拌子を入れた10mL丸底フラスコを密閉し、2つの固体を室温で4時間真空乾燥させた。次に、この反応フラスコに4.1mLの無水ジメチルスルホキシド(DMSO)を加え、混合液を加熱した(35℃)。可溶化後、208μLの無水N,N’-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、1.19mmol)を反応混合液に添加した。反応混合液を絶えず磁気撹拌しながら66時間加熱した(35℃)。反応混合液をDMSOで透析し、次いで10kDa膜を使用して水で透析した。その後透析した生成物を0.22μmフィルターに通し、凍結させ、凍結乾燥させて1.03g(定量的収率)のMAP(6)を得た。
【化67】
【0224】
この方法で合成した化合物6について、xは約80であり、yは約16であった。したがって、化合物6の平均分子量は、数平均分子量と重量平均分子量の算術平均値として決定すると、約65kDaであった。これらの値は、異なる出発材料(例えば、ジSPA-PEG2k)を使用した場合に変化する(例えば、2kDaのPEGではxは約46である)。
【0225】
(実施例6.MAPの分子量の測定)
MAP(6)の分子量は、溶媒供給ポンプ、脱気装置、自動サンプリングインジェクター、カラムコンパートメント、屈折率検出器及び光散乱検出器を含むMalvern Omnisecゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)システムで測定した。サンプルは、1~5mg/mLの範囲にある既知濃度のMAP(6)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)+0.02%アジ化ナトリウムに溶解することにより、分析用に調製した。完全に溶解した後、サンプルを0.45μmフィルターに通した。濾過したサンプル100μLを2×PL Aquagel-OH 40カラム(Agilent)に0.7mL/分の流量で注入し、絶対分子量を測定した。分析は、30℃で行った。得られたポリマーピークは、Malvern OMNISECソフトウェアを使用して分析した。
【0226】
(実施例7.10-TBDPS-SN38(化合物7)の合成)
2g(5.10mmol)のSN38及び磁気撹拌子を入れた250mL丸底フラスコに、100mLの無水DCM及び4.2mL(30.58mmol)のTEAを入れた。次に、この反応混合液に、tert-ブチル(クロロ)ジフェニルシラン(TBDPSCl)7.9mL(30.58mmol)を添加した。混合液を絶えず撹拌しながら一晩(約16時間)加熱還流(50℃)し、次いで0.2NのHCl(2×50mL)、飽和NaHCO(100mL)及びブライン(100mL)で洗浄した。有機溶液をMgSOで乾燥させ、真空蒸発させた。残渣を無水DCMに溶解し、ヘキサンで沈殿させた。この沈殿を繰り返して、過剰のTBDPSClをさらに除去した。固体を真空乾燥させ、1.2g(1.9mmol、37%収率)の10-TBDPS-SN38(7)を得た。
【化68】
【0227】
(実施例8.20-(Boc-Gly)-10-TBDPS-SN38(化合物8)の合成)
0.5g(0.8mmol)の10-TBDPS-SN38(7)を入れた40mLバイアルに、8.9mLの無水DCM及び磁気撹拌子を加えた。溶媒添加後、反応液を0℃に冷却した。別のバイアルに0.35gのBoc-Gly-OH(2.0mmol)、0.39g(2.0mmol)の1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl)、0.1g(0.8mmol)の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)及び3.8mLの無水DCMを添加した。次に、第2バイアルの内容物を、7を含むフラスコに移した。0℃で3時間撹拌した後、混合液を0.5%NaHCO(2×50mL)、水(50mL)、0.1NのHCl(2×50mL)及びブラインで洗浄した。有機溶液をMgSOで乾燥し、真空蒸発させ、0.54gのクルード20-(Boc-Gly)-10-TBDPS-SN38(8)(0.7mmol、86%収率)を得た。
【化69】
【0228】
(実施例9.20-(Boc-GABA)-10-TBDPS-SN38(化合物9)の合成)
1g(1.6mmol)の10-TBDPS-SN38(7)を入れた40mLバイアルに、17.7mLの無水DCM及び磁気撹拌子を加えた。溶媒添加後、反応液を0℃に冷却した。別のバイアルに0.82g(4.0mmol)のBoc-GABA-OH、0.77g(4.0mmol)のEDC.HCl、0.20g(1.6mmol)のDMAP及び7.6mLの無水DCMを添加した。次に、第2バイアルの内容物を、7を含むフラスコに移した。0℃で3時間撹拌した後、混合液を0.5%NaHCO(2×50mL)、水(50mL)、0.1NのHCl(2×50mL)及びブラインで洗浄した。有機溶液をMgSOで乾燥し、真空蒸発させて、1.05gのクルード20-(Boc-GABA)-10-TBDPS-SN38(9)(1.28mmol、定量的収率)を得た。
【化70】
【0229】
(実施例10.20-(Boc-Hex)-10-TBDPS-SN38(化合物10)の合成)
0.6g(0.95mmol)の10-TBDPS-SN38(7)を入れた40mLバイアルに、10.4mLの無水DCM及び磁気撹拌子を加えた。溶媒添加後、反応液を0℃に冷却した。別のバイアルに0.55gのBoc-Hex-OH(2.4mmol)、0.45g(2.4mmol)のEDC.HCl、0.12g(0.98mmol)のDMAP及び4.5mLの無水DCMを添加した。次に、第2バイアルの内容物を、7を含むフラスコに移した。0℃で3時間撹拌した後、混合液を0.5%NaHCO(2×50mL)、水(50mL)、0.1NのHCl(2×50mL)及びブラインで洗浄した。有機溶液をMgSOで乾燥し、真空蒸発させて、0.88gのクルード20-(Boc-Hex)-10-TBDPS-SN38(10)(1.0mmol、111%収率)を得た。
【化71】
【0230】
(実施例11.20-(Boc-Val)-10-TBDPS-SN38の合成(化合物11))
1.0g(1.6mmol)の10-TBDPS-SN38(7)を入れた100mL丸底フラスコに、17.7mLの無水DCM及び磁気撹拌子を加えた。溶媒添加後、反応液を0℃に冷却した。別のバイアルに0.87gのBoc-Val-OH(4.0mmol)、0.77g(4.0mmol)のEDC.HCl、0.20g(1.6mmol)のDMAP及び7.6mLの無水DCMを添加した。次に、第2バイアルの内容物を、7を含むフラスコに移した。0℃で3時間撹拌した後、混合液を0.5%NaHCO(2×50mL)、水(50mL)、0.1NのHCl(2×50mL)及びブラインで洗浄した。有機溶液をMgSOで乾燥し、真空蒸発させて、1.24gのクルード20-(Boc-Val)-10-TBDPS-SN38(11)(1.5mmol、93%収率)を得た。
【化72】
【0231】
(実施例12.20-(HCl.Gly)-SN38(化合物12)の合成)
1.2g(1.5mmol)の20-(Boc-Gly)-10-TBDPS-SN38(8)及び磁気撹拌子を入れた100mL丸底フラスコに、75mLの12NのHClを絶えず撹拌しながらゆっくりと加えた。HCl溶液の上からヘキサン(20mL)を添加した。室温で一晩(約16時間)撹拌した後、ヘキサン層を反応液から除去した。次に、反応液をヘキサンで3回洗浄した(3×20mL)。その後、真空を利用して、反応混合液からHClを除去した。残渣をMeOHに溶解し、MTBEで沈殿させた。固体を真空乾燥させ、0.44g(0.91mmol、60%)の20-(HCl.Gly)-SN38(12)を得た。
【化73】
【0232】
(実施例13.20-(TFA.GABA)-SN38(化合物13)の合成)
0.37g(0.45mmol)の20-(Boc-GABA)-10-TBDPS-SN38(9)、8.6mL水及び磁気撹拌子を入れた50mL丸底フラスコに、絶えず撹拌しながら8.6mLのTFAをゆっくりと添加した。TFA溶液の上からヘキサン(20mL)を添加した。室温で一晩(約16時間)撹拌した後、ヘキサン層を反応液から除去した。次に、反応液をヘキサンで3回洗浄した(3×20mL)。次に、真空を利用して、反応混合液を濃縮した。残渣をMeOHに溶解し、MTBEで沈殿させた。固体を真空乾燥させて、0.16g(0.27mmol、60%)の20-(TFA.GABA)-SN38(13)を得た。
【化74】
【0233】
(実施例14.20-(TFA.Hex)-SN38(化合物14)の合成)
0.37g(0.43mmol)の20-(Boc-Hex)-10-TBDPS-SN38(10)、8.3mL水及び磁気撹拌子を入れた50mL丸底フラスコに、絶えず撹拌しながら8.3mLのTFAをゆっくりと添加した。TFA溶液の上からヘキサン(20mL)を添加した。室温で一晩(約16時間)撹拌した後、ヘキサン層を反応液から除去した。次に、反応液をヘキサンで3回洗浄した(3×20mL)。次に、真空を利用して、反応混合液を濃縮した。残渣をMeOHに溶解し、MTBEで沈殿させた。固体を真空乾燥させ、0.16g(0.26mmol、60%)の20-(TFA.Hex)-SN38(14)を得た。
【化75】
【0234】
(実施例15.20-(HCl.Val)-SN38(化合物15)の合成)
1.2g(1.4mmol)の20-(Boc-Val)-10-TBDPS-SN38(11)及び磁気撹拌子を入れた100mL丸底フラスコに、75mLの12NのHClを絶えず撹拌しながらゆっくりと加えた。HCl溶液の上からヘキサン(20mL)を添加した。室温で一晩(約16時間)撹拌した後、ヘキサン層を反応液から除去した。次に、反応液をヘキサンで3回洗浄した(3×20mL)。その後、真空を利用して、反応混合液からHClを除去した。残渣をMeOHに溶解し、MTBEで沈殿させた。固体を真空乾燥させ、0.46g(0.86mmol、60%収率)の20-(HCl.Val)-SN38(15)を得た。
【化76】
【0235】
(実施例16.MAP-Gly-SN38(化合物16)の合成)
100mgのMAP(6)及び磁気撹拌子を入れた10mL丸底フラスコに、8mLの無水DMSOを入れた。次に、この反応混合液に、51.9mg(0.27mmol)のEDC.HCl及び24.9mg(0.22mmol)のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を添加した。EDC.HCl及びNHSの添加に続いて、反応混合液に105.2mg(0.22mmol)の20-(HCl.Gly)-SN38(12)及び無水DIPEA(0.22mmol)を添加した。混合液を室温で一晩(約18時間)撹拌した。反応混合液を、DMSOで透析し、次いで10kDa膜を使用してpH4の水で透析した。透析した生成物を0.22μmのフィルターに通し、凍結させ、凍結乾燥させて、98mg(定量的収率)のMAP-Gly-SN38(16)を得た。
【化77】
【0236】
実施例5で述べたように、化合物6及び16について、xは約80であり、yは約16であった。
【0237】
(実施例17.MAP-GABA-SN38(化合物17)の合成)
100mgのMAP(6)及び磁気撹拌子を入れた10mL丸底フラスコに、8mLの無水DMSOを加えた。次に、この反応混合液に、51.9mg(0.27mmol)のEDC.HCl及び24.9mg(0.22mmol)のNHSを添加した。EDC.HCl及びNHSの添加に続いて、反応混合液に128.3mg(0.22mmol)の20-(TFA.GABA)-SN38(13)及び無水DIPEA(0.22mmol)を添加した。混合液を室温で一晩(約18時間)撹拌した。反応混合液を、DMSOで透析し、次いで10kDa膜を使用してpH4の水で透析した。透析した生成物を0.22μmのフィルターに通し、凍結させ、凍結乾燥させて、91mg(定量的収率)のMAP-GABA-SN38(17)を得た。
【化78】
【0238】
実施例5で述べたように、化合物6及び17について、xは約80であり、yは約16であった。
【0239】
(実施例18.MAP-Hex-SN38(化合物18)の合成)
100mgのMAP(6)及び磁気撹拌子を入れた10mL丸底フラスコに、8mLの無水DMSOを加えた。次に、この反応混合液に、51.9mg(0.27mmol)のEDC.HCl及び24.9mg(0.22mmol)のNHSを添加した。EDC.HCl及びNHSの添加に続いて、反応混合液に、134.4mg(0.22mmol)の20-(TFA.Hex)-SN38(14)及び無水DIPEA(0.22mmol)を添加した。混合液を室温で一晩(約18時間)撹拌した。反応混合液を、DMSOで透析し、次いで10kDa膜を使用してpH4の水で透析した。透析した生成物を0.22μmのフィルターに通し、凍結させ、凍結乾燥させて、97mg(定量的収率)のMAP-Hex-SN38(18)を得た。
【化79】
【0240】
実施例5で述べたように、化合物6及び18について、xは約80であり、yは約16であった。
【0241】
(実施例19.MAP-Val-SN38(化合物19)の合成)
100mgのMAP(6)及び磁気撹拌子を入れた10mL丸底フラスコに、8mLの無水DMSOを加えた。次に、この反応混合液に、51.9mg(0.27mmol)のEDC.HCl及び24.9mg(0.22mmol)のNHSを添加した。EDC.HCl及びNHSの添加に続いて、反応混合液に、114.3mg(0.22mmol)の20-(HCl.Val)-SN38(15)及び無水DIPEA(0.22mmol)を添加した。混合液を室温で一晩(約18時間)撹拌した。反応混合液を、DMSOで透析し、次いで10kDa膜を使用してpH4の水で透析した。透析した生成物を0.22μmのフィルターに通し、凍結させ、凍結乾燥させて、96mg(定量的収率)のMAP-Val-SN38(19)を得た。
【化80】
【0242】
実施例5で述べたように、化合物6及び19について、xは約80であり、yは約16であった。
【0243】
(実施例20.薬物負荷の特性評価)
SN38のMAPへの負荷は、逆相カラム(Synergi 4μmのHydro-RP80Å、Phenomenex)を375/536nm(ex/em)に設定した蛍光検出器に接続したAgilent 1100HPLCシステムで測定した。ACN/10mMリン酸カリウム緩衝液、pH4(1:1v/v)を溶離液として、流速0.5mL/分で使用した。
【0244】
分析用に、ポリマー薬物コンジュゲート(化合物16~19)をpH7.4のPBSに1mg/mLの濃度で溶解した。最初に10μLのサンプルを10μLの0.1NのHClと混合し、室温で30分間インキュベートすることにより、非コンジュゲートSN38の量を測定した。6.7μLの水、続いて73.3μLのACNを加え、室温で3時間インキュベートした。この混合液を1,4000g、4℃で10分間遠心分離し、上清を0.45μmのフィルターに通した。濾過したサンプルを10μL注入し、SN38濃度を測定した。得られた溶出SN38のピーク面積を、既知濃度のSN38のピーク面積と比較した。
【0245】
SN38の総量を測定するために、10μLのサンプルを6.7μLの0.1NのNaOHと混合した。この溶液を室温で3.5時間インキュベートし、SN38を親ポリマーから放出させた。その後、10μLの0.1NのHClを加え(カルボキシレートSN38型をラクトン型に変換するため)、この混合液を45分間インキュベートした。続いて73.3μLのACNを加え、混合液を室温で3時間インキュベートした。その後、サンプルを遠心分離し、上記のように処理した。ポリマー結合SN38は、SN38総濃度と非コンジュゲートSN38濃度との差から決定した。
【0246】
(実施例21.MAP-リンカー-SN38ナノ粒子の形成)
ポリマー薬物コンジュゲート(化合物16~19)をpH4の水に4mg/mLの濃度で溶解し、MAP-リンカー-SN38ナノ粒子を形成した。この溶液を0.22μmのフィルターに通し、その後の分析用に凍結した。ナノ粒子をpH4の水で2mg/mLに希釈し、ZetaPALS(Brookhaven Instruments Corporation)装置を使用して、動的光散乱(DLS)により流体力学直径を測定した。ナノ粒子について、それぞれ1分間で5回実行した。すべてのナノ粒子の直径はほぼ25nmであり、19~32nmの幅があった。
【0247】
(実施例22.In Vitro放出試験)
MAP-Gly-SN38、MAP-GABA-SN38、MAP-Hex-SN38、MAP-Val-SN38、MAP-Ala-SN38、MAP-β-Ala-SN38及びMAP-Leu-SN38ナノ粒子からのSN38の放出を評価するための実験を行った。MAP-Ala-SN38、MAP-β-Ala-SN38及びMAP-Leu-SN38ナノ粒子の合成については、以下の実施例33~35を参照。これらの研究は、PBS中0.1mgのSN38/mLで、pH値6.5、7.0又は7.4で行った。
【0248】
PBS培地をピペットでキュベットに注入し、加湿オーブン内で37℃で2時間インキュベートして平衡化した。ナノ粒子製剤を関連する培地に混合し、オーブンに戻した。サンプルは所定の時点で取り出し、分析の時間まで-80℃で瞬間凍結した。非コンジュゲートSN38の量及びSN38の総量を、実施例20において上述したように測定した。ポリマー結合SN38濃度は、SN38総濃度と非コンジュゲートSN38濃度との差から決定した。
【0249】
その結果、7種類すべてのナノ粒子:MAP-Gly-SN38、MAP-GABA-SN38、MAP-Hex-SN38、MAP-Val-SN38、MAP-Ala-SN38、MAP-β-Ala-SN38及びMAP-Leu-SN38からのSN38の放出は一次速度則を示した。放出速度はpHに強く依存していることが観察された。pHが6.5~7.4に上昇すると、すべてのナノ粒子製剤で放出半減期が減少し、加水分解がSN38の放出に重要な役割を果たしていることが示唆された。リンカーの疎水性及び立体障害性が高いほど、ナノ粒子の半減期は長く、約30時間~168時間超の幅があった。
【0250】
(実施例23.粒子あたりのストランド数の決定)
ナノ粒子あたりのストランド数(SpP)は、粒子の分子量とMAPの分子量との比率を計算することで求めた。公称分子量100kDa及び200kDaのポリエチレンオキシド(PEO)標準並びに目的のサンプルを、pH3の水又はPBS+0.02%アジ化ナトリウムに1~5mg/mLの濃度で溶解してGPC分析(Omnisec GPC、Malvern)用に調製した。濃度は、粒子形成後に予想される濃度に近いものを選択した。溶解後、サンプルを0.45μmフィルターに通し、Zenix SEC300又はZenix-C SEC300カラム(Sepax、3μm)を用いて0.35mL/分、30℃で分析した。光散乱及び示差屈折率の情報を、Malvern OMNISECソフトウェア又は同様の分子量解析ソフトウェアで使用し、粒子の分子量を決定した。
【0251】
粒子の分子量をMAP-SN38コンジュゲート分子の分子量で割って、粒子あたりのストランドを決定した。MAP-SN38コンジュゲート分子の分子量は、薬剤負荷率で調整したポリマーの分子量から、以下の式に従って算出した。
MWコンジュゲート=MWポリマー/(1-T
(式中、MWポリマーはMAPの分子量であり、Tは小数で表した治療薬の負荷率、例えば、10%負荷でT=0.1となる。))
【0252】
SpPの測定は、様々なリンカーと薬剤を有するMAPで実証した。CPT又はSN38とコンジュゲートした同じ分子量のMAPは、粒子あたり約1.5~2.5本のストランドを持つナノ粒子を生成する。誘導体化されたSN38に異なるリンカーを使用すると、粒子あたりのストランド数が変化し、その結果、粒子の密度が変化する。粒子あたりのストランドの数は、リンカー(グリシン、γ-アミノ酪酸、ヘキサン酸、アラニン、β-アラニン、ロイシン又はバリン)によって、約1.3~約4.6と変化した。
【0253】
(実施例24.N-Boc保護粘液酸ジアミン(化合物2)の分取スケール合成)
窒素下で機械的に撹拌した15リットルの反応容器に、450g(2.1mol)の粘液酸及びMeOH(5.75L)を加えた。この反応容器に、MeOH(1L)及び濃硫酸(34.2mL、0.64mol)からなる溶液を加えた。この混合液を、65℃の内部温度に48時間加熱した。反応容器の内容物を22℃に冷却し、その時点で0.81L(5.78mol)のTEAを20分かけて添加した。反応液を1時間撹拌し、その時点で0.9LのMeOH中0.76kg(4.71mol)のN-(2-アミノエチル)(tert-ブトキシ)カルボキサミドの溶液を20分かけて添加した。反応液を63℃の内部温度に加熱し、60分後に1.8LのMeOHを加えて撹拌を促進した。63℃で合計2時間後、反応容器を毎分1℃で冷却し、20℃で一晩保持した。反応スラリーを濾過し、ケーキをMeOH(3×0.5L)で洗浄した。固体を真空フィルター上で一晩乾燥させ、液体を完全に除去した。単離した固体をMeOH(9.0L)と共に反応容器に戻し、63℃で1時間撹拌した。反応容器を毎分1℃の割合で冷却するように設定し、20℃で約60時間保持した。スラリーを濾過し、MeOH(2×1.0L)で洗浄し、固体を45℃の真空オーブンで一晩乾燥し、N-Boc保護粘液酸ジアミン(2)963g(MeOHとの溶媒和物として91%収率、無水物として82%収率)を得た。
【化81】
【0254】
(実施例25.粘液酸ジアミノクロリド(化合物3)の分取スケール合成)
機械的に撹拌した15Lの反応容器に、890gのN-Boc保護粘液酸ジアミン(2)(1.80mmol)、3.6Lの水及び7.1LのMeOHを添加した。このスラリーに、温度を20℃~30℃の範囲に維持しながら、2時間かけて12MのHCl(3.6L)を加えた。この反応液液を一晩撹拌し、その時点でスラリーを濾過し、1.8LのMeOHで洗浄した。単離した固体をトレイに入れ、真空オーブン内で45℃で乾燥させた。単離した固体を水(5.5L)と共に窒素下で15L反応容器に充填し、45℃で撹拌した。5.5LのMeOHを30分かけて添加すると、結果として結晶化した。反応容器を冷却し、反応内容物を室温まで冷却した。固体を濾過により単離し、MeOH(2×1.0L)で洗浄した。固体を収集し、40℃の真空オーブンで一晩乾燥し、504g(1.37mol、76%収率)の粘液酸ジアミノクロリド(3)を得た。
【化82】
【0255】
(実施例26.粘液酸ジ(Asp(OtBu)-Boc)(化合物4)の分取スケール合成)
機械的に撹拌した15Lの反応器に、1.27kgのBoc-L-アスパラギン酸4-tert-ブチルエステル(4.39mol)、0.62kgのオキシマ(シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル)(4.39mol)及び3.5LのDCMを添加した。反応混合液を5℃に冷却し、30分間撹拌した。反応混合液に、固体として0.84kgのEDC.HCl(4.40mol)を10分かけて加えた。EDC.HClを追加の0.5LのDCMで反応液にすすぎ入れ、反応液を約30分間撹拌させ、その後10℃に冷却した。別の12Lフラスコに、1.02kgの炭酸ナトリウム(9.61mol)及び5.0Lの水を入れた。成分を溶解させた後、室温まで冷却した。10分かけて、504g(1.37mol)の3を炭酸ナトリウム溶液に添加した。この混合液を15分間撹拌させ、その時点で15L反応フラスコ中のBoc-L-アスパラギン酸4-tert-ブチルエステルに約3分かけて添加した。混合反応は発熱したが、冷却ジャケットを10℃で30分、その後15℃でさらに45分に設定した。その後、反応ジャケットを33℃に設定し、1時間後、水8.06Lを加え、5分間撹拌した。その後、撹拌を中止し、15分後に反応相を分離した。DCM(下層)を除去し、反応器に1.0LのDCMを追加した。この混合液を10分間撹拌し、その後沈殿させた。DCM層を回収し、最初に回収した有機層と合わせ、総容量が約3Lになるように濃縮した。1Lの水を有機混合液に加え、DCMのさらなる蒸留除去を促した。次に、有機反応混合液を、40℃に加熱した11.1Lの水を含む15Lの反応器に加えた。撹拌混合液を20℃に戻し、スラリーを形成した。水を除去し、反応器内に固体を残した。湿った固体に10.1Lの水を加えた。反応混合液を37℃に加熱し、撹拌を促進した。その後、反応液を一晩3℃に冷却し、撹拌した。固体を濾過し、次いで追加の10Lの水と共に反応器に再び戻した。このスラリーを室温で3時間撹拌した。固体を再び濾過し、1.0Lの水で洗浄し、乾燥させて、815gの材料を得ることができた。790gのクルード4を2.4LのACNと共に5L丸底フラスコに加え、60℃に加熱した。部分真空下での共沸蒸留及びACNの継続的添加により水を約1.6Lの容量まで連続的に留去した。これに3.1LのACNを添加して結晶化を誘発した。スラリーを短時間加熱還流した後、5℃まで冷却し、30分間そのままにした。冷却後、スラリーを濾過し、ACN(4×0.5L、5℃)で洗浄した。固体を50℃に真空加熱し、溶媒を除去した。6.3LのDCMを反応混合液に2回に分けて加え、その時点でスラリーを濃縮し、ACNを蒸留除去した。次に、固体を80℃に真空加熱してDCMを除去し、自由流動性粉末を得た。次に、固体を真空オーブンに入れ、減圧下で80℃で乾燥させ、310g(0.35mol、26%)の粘液酸ジ(Asp(OtBu)-Boc)(4)をACNとの1:1モル溶媒和物として得た。
【化83】
【0256】
(実施例27.粘液酸モノマー中性種(化合物20)の分取スケール合成)
機械的撹拌装置を備えた5Lジャケット付き丸底フラスコに、300gの4(0.34mol)、1.2LのDCM、0.11Lの水(6.13mol)及び0.279Lのトリイソプロピルシラン(1.36mol)を入れた。反応混合液を5℃に冷却し、その後スラリーを形成した。あらかじめ氷浴で1時間かけて冷却した1.2LのTFAを、この撹拌したスラリーに添加した。この反応を内部温度4℃で一晩保持した。さらに0.30LのTFAを加え、4℃で一晩撹拌を継続した。0.90Lのヘキサンを加えた時点で、反応液を5℃で10分間撹拌した。次に、反応混合液を分液漏斗に注ぎ、下相を5L丸底漏斗に分離した。反応材料を追加のDCM(300mL)で洗浄し、これを最初に集めた画分と合わせた。合わせた回収画分をロータリーエバポレーターで30℃未満で濃縮した。追加の0.90LのDCMをフラスコに加え、その後ロータリーエバポレーターを使用して25℃で除去した。次に0.60Lのトルエンを加え、ロータリーエバポレーターで濃縮し、水とTFAを共沸除去し、油状物を得た。この油状物をセライトのプラグに通して濾過し、DCM(0.40L)で4回洗浄した。DCMをロータリーエバポレーターで35℃で除去した。得られた二相混合液を清潔な5L反応容器に加え、23℃に加熱した。3.0Lのシクロペンチルメチルエーテル(CPME)を20分かけて加えると、油状固体が形成された。容器を22℃に冷却し、一晩撹拌して、粘着性のある結晶を得た。短経路蒸留カラムを使用し、35℃で1.5LのDCMを蒸留除去した。得られたスラリーを濾過し、CPME(2×0.45L)で洗浄した。次に固体を丸底フラスコ内でロータリーエバポレーターで乾燥し、室温で一晩真空乾燥し、261gの粘液酸モノマー中性種(208.8g、力価を考慮して82%の収率)を得た。
【0257】
さらに再結晶するために、粘液酸モノマー中性種0.24kgを水(0.20L)と共に1Lの三角フラスコに加えた。この混合液を室温で1時間撹拌し、溶液を得た。この溶液を、追加の水(50mL)を用いてフィルター漏斗に通して濾過し、5L丸底フラスコに移した。2.2Lのテトラヒドロフラン(THF)を撹拌しながら、30分かけて該フラスコに加えた。混合液を合計60分間撹拌し、その時点でロータリーエバポレーターで35℃で濃縮し、1Lの留出液を除去した。10分以上かけて追加のTHF(0.98L)を添加した。スラリーを室温まで冷却し、20分間撹拌した。冷却したスラリーを濾過し、THF(2×0.25L)で洗浄し、続いて真空オーブンで室温で2.5日間乾燥し、119g(0.23mol、66%収率)の中性形態の粘液酸モノマー(20)を得た。
【化84】
【0258】
(実施例28.MAM(化合物5)の分取スケール合成)
120g(0.23mol)の20及びDCM(1.2L)を入れた3L丸底フラスコを10分間撹拌し、その時点で水(0.06L)を添加した。撹拌を15分間続け、その時点でTFA(66.0mL、0.86mol)を5分かけて加えた。固体を溶解させ、混合液を室温で1時間撹拌した。この混合液をロータリーエバポレーターで30℃で濃縮した。機械的撹拌を備えた5L丸底フラスコに、エーテル(4.0L)及びMAM種結晶(5、12g)を添加した。20/TFA/水溶液を撹拌しながらエーテルにゆっくりと加えた。1時間後、エーテルをデカントして除去し、新たに追加のエーテルを追加した(3.6L)。MAM-ジTFA塩が析出するまで混合液を室温で撹拌した。固体を濾過し、エーテル(0.2L)で1回洗浄した。固体を室温で真空乾燥させ、30℃で1時間加熱して、122g(75%収率)のMAM(5)を得た。
【化85】
【0259】
(実施例29.粘液酸ポリマー(化合物6)の分取スケール合成)
MAP(6)を、粘液酸モノマー(MAM)(5)とジSPA-PEG3.5kとの逐次重合によって合成した。
【0260】
約1.5当量のTFAを含む108.52mg(0.158mmol)のMAM(5)、579.54mgのジSPA-PEG3.5k(0.157mmol)及び磁気撹拌子が入った20mLガラスバイアルを密閉し、2つの固体を室温で1時間、真空乾燥させた。反応フラスコに、アルゴン下で3.43mLの無水DMSOを加えた。反応物は室温で可溶化した。可溶化後、反応混合液にアルゴン下で126μLの無水DIPEA(0.72mmol)を添加した。反応混合液を室温で絶えず磁気撹拌しながら3時間撹拌した。
【0261】
反応混合液を冷イソプロピルアルコール(IPA、×10容量、0~4℃)中で沈殿させた。反応器をDMSO(3×1mL)で洗浄し、次いで冷IPA中で沈殿させた。得られた白色懸濁液を0~4℃で30分間撹拌し、4℃で12分間遠心分離した。底に沈殿した白い綿毛状のポリマーをIPAをデカントすることによって単離した。このポリマーを冷IPA(×5容量)で2回洗浄し、この手順を繰り返した。生成物を室温でシュレンクラインで一晩真空乾燥させてIPAを除去し、次いでミリQ水(8mL)に溶解した。水中の溶液を凍結し、凍結乾燥して、612.5mg(定量的収率)のMAP(6)を得た。
【0262】
ポリマーの分子量を、2つのモノマー間に化学量論的歪みを組み込むことによって制御した。1:1では、MAP(6)の分子量が最大となり、モル比が1:1から離れると分子量は減少した。GPCによって得られた例示的な化学量論的歪み及び実験的分子量を表1に示す。
【表1】
【0263】
(実施例30.20-(Boc-Gly)-CPT(化合物21)の合成)
200.4mg(0.58mmol)のCPT、302.7mg(1.73mmol)のBoc-Gly-OH及び140.6mg(1.15mmol)のDMAPを、磁気撹拌子及びゴム製セプタムを備えた10mL丸底フラスコに添加した。容器及びその内容物をアルゴンで10分間パージし、その時点で無水DCM(1mL)を加えて材料をスラリー状にした。280μL(1.81mmol)のDICを、シリンジで約3分かけて反応混合液に滴下した。この反応液を室温で3時間撹拌し、その時点で溶媒の約50%を真空除去した。濃縮したスラリーに4mLの冷MeOHを加えた。この反応液を数分間撹拌してさらなる沈殿を促進し、その後ブフナー漏斗に濾過した。固体をさらに冷MeOHで洗浄し、次に冷MTBEで洗浄した。単離した固体を高真空乾燥させ、110.8mg(0.22mmol、38%)の20-(Boc-Gly)-CPT(21)を得た。
【0264】
上記の手順において、Boc-Gly-OHを他のBoc保護アミノ酸及びジペプチドに置き換えることができる。Boc-Ala-OH、Boc-β-Ala-OH、Boc-Val-OH、Boc-GABA-OH及びBoc-Phe-Gly-OHを置き換えることにより、同様の手順で20-(Boc-Ala)-CPT(化合物41)、20-(Boc-β-Ala)-CPT(化合物42)、20-(Boc-Val)-CPT(化合物40)、20-(Boc-GABA)-CPT(化合物43)及び20-(Boc-Phe-Gly)-CPT(化合物44)がそれぞれ得られた。
【化86】
【0265】
(実施例31.20-(TFA.Gly)-CPT(化合物22)の合成)
磁気撹拌子及び通気針を備えたシンチレーションバイアルに、97.1mg(0.20mmol)の20-(Boc-Gly)-CPT(21)を添加した。DCM(0.2mL)の添加により撹拌懸濁液を生成した。撹拌しながら、TFA(0.2mL)を徐々に添加した。反応混合液を2時間撹拌した。2時間後、生成物をMTBEで沈殿させ、濾過し、洗浄した。単離したサンプルを高真空乾燥させ、82.5mg(0.16mmol、83%収率)の20-(TFA.Gly)-CPT(22)を得た。
【化87】
【0266】
上記の方法で、20-(Boc-Gly)-CPTを20-(Boc-Ala)-CPT、20-(Boc-β-Ala)-CPT、20-(Boc-Val)-CPT、20-(Boc-GABA)-CPT及び20-(Boc-Phe-Gly)-CPTに置き換えると、20-(TFA.Ala)-CPT(化合物45)、20-(TFA.β-Ala)-CPT(化合物46)、20-(TFA.Val)-CPT(化合物47)、20-(TFA.GABA)-CPT(化合物48)及び20-(TFA.Phe-Gly)-CPT(化合物49)がそれぞれ得られる。
【0267】
(実施例32.MAP-Gly-CPT(化合物23)の合成)
149.2mg(COHベースで0.07mmol)のMAP(6)及び21.5mgの20-(TFA.Gly)-CPT(22)(0.04mmol)を、磁気撹拌子を入れた20mLシンチレーションバイアルに添加した。容器のヘッドスペースをアルゴン雰囲気で約30分間通気した後、アルゴン下で密閉した。無水DMSO(約9mL、総反応容量の約85%)を加えた後、バイアル内容物を撹拌しながら溶解させた。166.3mgの(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP、0.32mmol、4.4当量)及び磁気撹拌子を入れた8mLシンチレーションバイアルをアルゴン雰囲気下でパージした。この容器の内容物を、撹拌しながら無水DMSO(約3.2mL)に溶解させた。両容器の固体がすべて溶解したら、1.6mLのPyAOP溶液(83.2mgのPyAOP、0.16mmolのPyAOP、総反応容量の約15%)をポリマー含有容器に移し替えた。この反応液を約2分間撹拌し、その時点で約45μL(0.26mmol)の無水DIPEA(標的31.3μL、0.18mmol)を添加した。反応容器を暗所で、室温で約18時間撹拌した。18時間後、反応容器をアルゴン雰囲気から取り出し、反応内容物の約1/3を50mLガラス遠心分離管に移した。冷酢酸エチル(EtOAc)をゆっくりと加えて反応物を沈殿させた(0~4℃)。この懸濁液を0~4℃で約30分間撹拌し、その後遠心分離した。EtOAc層をデカントして除去し、反応媒体の次の1/3を同じ容器に添加した。この手順を、すべての反応媒体が同じ管に沈殿するまで繰り返した。沈殿した固体をボルテックスで撹拌しながら、冷EtOAc(×5容量)で合計3回洗浄し、固体を再懸濁させた。最後の洗浄サイクルの後、最後のEtOAcをデカントして除去し、固体を液体窒素を使用して遠心分離管内で凍結した。凍結した遠心分離管を約3時間、高真空にさらして固体を乾燥させ、115.2mg(定量収率)のMAP-Gly-CPT(23)を得た。
【化88】
【0268】
また、同じ方法により、20-(TFA.Gly)-CPTの代わりに、20-(TFA.Ala)-CPT、20-(TFA.β-Ala)-CPT、20-(TFA.Val)-CPT、20-(TFA.GABA)-CPT又は20-(TFA.Phe-Gly)-CPTを出発物質として使用してMAP-CPTコンジュゲートを生成し、MAP-Ala-CPT(化合物50)、MAP-β-Ala-CPT(化合物51)、MAP-Val-CPT(化合物52)、MAP-GABA-CPT(化合物53)及びMAP-Phe-Gly-CPT(化合物54)が生成される。
【化89-1】
【化89-2】
【化89-3】
【0269】
実施例5で述べたように、化合物6、23及び50~54について、xは約80であり、yは約16であった。
【0270】
(実施例33.10-OBoc-SN38(化合物24)の合成)
アルゴン雰囲気下で、反応容器に2.0g(5.10mmol)のSN38を入れた。204mLの無水DCMを反応容器に加え、続いて12.2mL(151mmol)の無水ピリジン及び1.5mL(6.53mmol)の二炭酸ジ-tert-ブチルを加えた。反応液を室温で約16時間撹拌し、その時点で反応液をセライト545(濾過助剤)で濾過し、0.5NのHCl及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮した。反応混合液をDCMに希釈し、その後ヘキサン中に沈殿させた。固体を濾過し、真空乾燥させて、2.2g(4.47mmol、88%収率)の10-OBoc-SN38(24)を得た。
【化90】
【0271】
(実施例34.20-(Boc-Gly)-10-OBoc-SN38(化合物25)の合成)
アルゴン雰囲気下、0℃に冷却した反応容器に、502mg(1.02mmol)の10-OBoc-SN38(24)を入れ、8.8mLのDCMを加えた。この反応容器に、3.8mLのDCM、447mg(2.55mmol)のBoc-Gly-OH、489mg(2.55mmol)のEDC.HCl及び125mg(1.02mmol)のDMAPを含む冷却溶液を加えた。反応液を0℃で3時間撹拌した。反応液を0.5%重炭酸ナトリウム水溶液、水、0.1NのHCl及びブラインで洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空蒸発させて、639mg(0.98mmol、97%収率)の20-(Boc-Gly)-10-OBoc-SN38(25)を得た。
【0272】
上記の手順において、Boc-Gly-OHを他のBoc保護アミノ酸に置き換えることができる。Boc-Ala-OH、Boc-β-Ala-OH、Boc-Val-OH及びBoc-Leu-OHを出発材料として置き換えることにより、同様の手順で20-(Boc-Ala)-10-OBoc-SN38(化合物29)、20-(Boc-β-Ala)-10-OBoc-SN38(化合物30)、20-(Boc-Val)-OBoc-SN38(化合物31)及び20-(Boc-Leu)-10-OBoc-SN38(化合物35)がそれぞれ得られた。
【化91】
【0273】
(実施例35.20-(TFA.Gly)-SN38(化合物26)の合成)
250mg(0.38mmol)の20-(Boc-Gly)-10-OBoc-SN38(25)及び1.88mLのDCMを入れた反応容器に、0.47mL(6.14mmol)のTFAを加えた。反応液を室温で2.5時間撹拌した。反応混合液を冷(4℃)MTBE中に沈殿させ、遠心分離により単離し、MTBEで再度洗浄し、真空乾燥させて133mg(0.24mmol、61%収率)の20-(TFA.Gly)-SN38(26)を得た。
【化92】
【0274】
20-(Boc-Gly)-10-OBoc-SN38を、出発材料として、20-(Boc-Ala)-10-OBoc-SN38、20-(Boc-β-Ala)-10-OBoc-SN38、20-(Boc-Val)-10-OBoc-SN38及び20-(Boc-Leu)-10-OBoc-SN38に置き換えて、20-(TFA.Ala)-SN38(化合物32)、20-(TFA.β-Ala)-SN38(化合物33)、20-(TFA.Val)-SN38(化合物34)及び20-(TFA.Leu)-SN38(化合物36)をそれぞれ得た。
【0275】
前述のアミノ酸結合SN38誘導体のTFA塩を使用して、実施例17及び18に記載されているようにMAP-SN38コンジュゲートを形成することができる。
【0276】
(実施例36.NPBA-PEG5k-AA(化合物27)の合成)
20g(4mmol)のNH-PEG5k-酢酸(AA)塩酸塩、DIPEA(2.1mL、12mmol)を入れた250mL丸底フラスコに、無水DCM(40mL)を入れ、アルゴンでフラッシュした。この溶液を氷/水浴で冷却した。磁気撹拌子を入れた20mLバイアルに、934mg(5.5mmol)の3-カルボキシ-5-ニトロフェニルボロン酸(NPBA)を無水DCM/ジメチルホルムアミド(DMF)(8mL、4:1v/v)に溶解させた。1038mg(5.25mmol)のN-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)を、NPBAの溶液に添加した。活性化された酸を15分間撹拌し、次にDCM中のPEG-アミンの予め冷却した溶液に滴加した。反応混合液を0℃で20分間撹拌した。脱イオン水(100mL)を反応混合液に加え、激しく撹拌し、室温に温めた。この段階で、反応混合液のpHは9であった。その後、リン酸一ナトリウム(NaHPO、2.5g)を加えてpHを7にした。1MのHCl(12mL)を加えて反応混合液のpHをさらに4に下げた。反応混合液を分液漏斗に移し、酢酸イソプロピル(iPrOAc、100mL)を加えた。混合液をよく振盪し、沈殿させ、分離相を得た。有機相を廃棄し、iPrOAc(3×100mL)で抽出を繰り返した。水相を250mL丸底フラスコに移し、ロータリーエバポレーターで室温、20トルで30分濃縮した。水溶液を凍結乾燥し、粉末を得た。凍結乾燥粉末をDMSO/水(40mL、3:1v/v)に溶解させた。この溶液を、95%移動相A(水+0.05%TFA)及び5%移動相B(ACN+0.05%TFA)の12~15mL注入により予め平衡化したC18Aq Teledyne ISCOカラム(475g)で、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製した。5%B~40%Bへのグラジエントを実行してからカラムを洗浄し、その後の注入を行った。残りの生成物溶液について精製を繰り返した。生成物を含有する画分をHPLCで分析した。純度が99.5%を超える画分を合わせ、凍結乾燥し、14.2g(2.71mmol、68%収率)のNPBA-PEG5k-AA(27)を得た。
【化93】
【0277】
この方法で合成した化合物27では、nは約114であった。これらの値は、異なる出発材料(例えば、NH-PEG3.5k-AA)を使用すると、変化する(例えば、3.5kDaのPEGでは、nは約80である)。
【0278】
(実施例37.NPBA-PEG5k-AA-PFP(化合物28)の合成)
8mLの反応容器に、301.8mg(0.06mmol)のNPBA-PEG5k-AA(27)を磁気撹拌子と共に加えた。反応容器は、真空及びアルゴンサイクルで3連でパージした。固体を無水DCM(1.2mL)に溶解し、その後35μLの無水N-メチルモルホリン(0.35mmol)をシリンジで加えた。反応容器を短時間開栓し、45.3mgの炭酸ビス(ペンタフルオロフェニル)(0.12mmol)を添加した。反応ヘッドスペースをアルゴンでパージし、反応液を室温で約2時間撹拌した。撹拌した容量のMTBE(25mL)に反応溶液を滴下し、沈殿を促進させた。この混合液をアルゴン雰囲気下で30分間撹拌した後、2600gで遠心分離した。液層をデカントし、その時点でヘプタン(20mL)を遠心分離管に加えた。サンプルを機械的に撹拌してから、2600gで2回目の遠心分離を行った(8分間)。液体を容器からデカントし、残りの湿潤固体を残した。容器を液体窒素で短時間冷却し、次にシュレンクラインを使用してポンプで溶媒を除去し、300mg(0.055mmol、96%収率)のNPBA-PEG5k-AA-PFP(28)を得た。
【化94】
【0279】
実施例36に記載したように、化合物27及び28では、nは約114であった。
【0280】
(実施例38.NPBA-PEG5k-Tfクルード混合液の合成)
反応容器に35g(0.440mmol)のホロトランスフェリン(Tf)を入れ、1.75Lの50mMのHEPES(pH7.8)をゆっくりと加え、Tfを20g/Lの濃度で溶解させた。可溶化後、44mLのDMSO中4.77g(0.881mmol)のNPBA-PEG5k-AA-PFP(28)を反応混合液にゆっくりと加え、よく混合した。反応混合液を室温で2時間インキュベートした。クルード反応混合液を、逆相(RP)カラム(Zorbax 300SB-CN 4.6mm IDx150cm)を備えたAgilent 1290 HPLCシステムで、移動相A(水+0.1%TFA)及び移動相B(ACN/IPA(4:1v/v)+0.1%TFA)にて、流速0.7mL/分で分析した。カラムは、波長280nm、参照波長360nmに設定した吸光光度検出器に接続した。さらに、クルード反応混合液を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラム(TSKゲルブチル-NPR 4.6mm IDx3.5cm)を備えたAgilent 1290 HPLCシステムで、移動相A(20mMリン酸ナトリウム、1.5M硫酸アンモニウム、pH7.0)及び移動相B(20mMリン酸ナトリウム、pH7.0/IPA(4:1v/v))にて、流速0.8mL/分で分析した。カラムは、280nmの波長シグナル及び参照360nmに設定した吸光検出器に接続した。2時間インキュベートした後、クルード反応混合液をHIC精製する準備ができた。
【0281】
(実施例39.モノ-NPBA-PEG5k-Tfの単離)
NPBA-PEG5k-Tfクルード混合液(20g/L)1.75Lを反応容器に添加した。7Lの移動相A(1.5M硫酸アンモニウム、20mMリン酸ナトリウム、pH7.4)をクルード混合液に加え、1.2M硫酸アンモニウム、16mMリン酸ナトリウム、pH7.4の濃度にした。混合後、サンプル混合液を、GE Sepharose Phenyl High Performance HIC樹脂を充填したAxioChrom 140カラム(1.7L)に、ポンプ流速200mL/分でロードした。サンプル混合液をHICカラムにロードするために、約10分の滞留時間を設けた。IPA/10mMリン酸ナトリウム、pH7.4(1:4v/v、移動相B)を溶離液として使用した。溶出工程の前に、20%の移動相Bで2カラム容量(CV)分を洗浄し、未結合種を除去した。精製したNPBA-PEG5k-Tfを、20~100%の移動相Bのグラジエントで15CVかけて溶出させた。モノPEG化Tf(モノNPBA-PEG5k-Tf)の画分を集め、限外濾過及び透析濾過(UF/DF)用に合わせた。Sartocon Slice Hydrosart Cassette 30kDa膜をモノ-NPBA-PEG5k-TfのUF/DFに使用した。モノ-NPBA-PEG5k-Tfコンジュゲートは、7容量のPBS(pH7.4)を用いた透析濾過により50g/Lまで濃縮した。その後、モノNPBA-PEG5k-Tfを0.22μmポリエーテルスルホン(PES)膜で無菌濾過した。
【0282】
(実施例40.TfあたりのNPBAの数の決定)
モノNPBA-PEG5k5k-TfのTfあたりのNPBAの数は、モノNPBA-PEG5k-TfのNPBA-PEG5kのモル濃度とTfのモル濃度の比をNPBAのアリザリンレッドS(ARS)検出アッセイを用いて算出することにより求めた。標準曲線を作成するために、NPBA-PEG5k-AA(27)のサンプルを、PBS(pH7.2)に溶解した様々な濃度(0~0.0098mM)で調製した。ARSは0.049mMで水に溶解して調製した。次に、サンプルをARSと混合し、Varioskan LUX分光光度計(ThermoFisher)及びSkanIt(Thermo Fisher)又は同様の蛍光解析ソフトウェアを用いて蛍光を測定した(励起波長:468nm、蛍光波長:572nm)。これらのデータ(蛍光対濃度)の線形回帰により、目的のサンプル中のNPBAを決定するための検量線を得た。
【0283】
目的のサンプル(例えば、Tf及びモノ-NPBA-PEG5k-Tf)は、PBS(pH7.2)に0.007mMで溶解して調製した。モノ-NPBA-PEG5k-TfのNPBA-PEG5kのモル濃度は、モノ-NPBA-PEG5k-Tfサンプルの平均蛍光値と、様々な既知濃度のNPBA-PEG5k-AA標準(0~0.0098mM)の蛍光値の検量線から以下の式を使用して算出した。
蛍光=ε*C+b
(式中、ε=検量線の線形回帰の傾き、b=検量線の線形回帰の切片、C=NBPA-PEGの濃度(mM)である。したがって、C(mM)=(蛍光-b)/εである。)
【0284】
次に、以下の式に従って、Cを既知のTf濃度で割り、TfあたりのNPBAの数(NTf)を算出した。
Tf=(NPBA-PEG5k mmol/L)/(Tf mmol/L)
【0285】
NPBAのARS検出アッセイを用いたモノNPBA-PEG5k-TfのNPBAの決定数は、モノNPBA-PEG5k-TfのTfあたり約1NPBAであった。ARSとの反応、ひいては蛍光シグナルは、反応に利用可能なNPBA官能基を必要とする。一部の分子(例えばクエン酸塩)はNPBAと複合体を形成し、蛍光シグナルを減少させ、モノ-NPBA-PEG5k-TfあたりのNPBAの測定数を変化させる。他の場合では、過剰な未反応のNPBA-PEGコンジュゲートがクルードサンプル中に存在し、蛍光シグナルが増加し、モノ-NPBA-PEG5k-TfあたりのNPBAの決定数が変化することがある。例示的な実験結果を表2に示す。
【表2】
【0286】
(実施例41.NPBA-PEG5k-Trasクルード混合液の合成)
5.5g(0.038mmol)のトラスツズマブを50mMのHEPES(pH7.8)で緩衝液交換し、最終タンパク質濃度を10g/Lに調整した。可溶化後、DMSO中3.78mL中のNPBA-PEG5k-AA-PFP(28)409.07mg(0.076mmol)を反応混合液にゆっくりと加え、よく混合した。反応混合液を室温で2時間インキュベートした。クルード反応混合液を、逆相(RP)カラム(Zorbax 300SB-CN 4.6mm IDx150cm)を備えたAgilent 1290 HPLCシステムで、移動相A(水+0.1%TFA)及び移動相B(ACN/IPA(4:1v/v)+0.1%TFA)にて、流速0.7mL/分で分析した。カラムは、280nmのシグナル及び参照360nmに設定した吸光検出器に接続した。2時間インキュベートした後、クルード反応混合液をHIC精製する準備ができた。
【0287】
(実施例42.モノ-NPBA-PEG5k-Trasの単離)
0.55LのNPBA-PEG5k-Trasクルード混合液(10g/L)を反応容器に添加した。1.1Lの移動相A(1.5M硫酸アンモニウム、20mMリン酸ナトリウム、pH7.4)をクルード混合液に加え、1M硫酸アンモニウム、13.3mMリン酸ナトリウム、pH7.4の濃度にした。混合後、サンプル混合液を、GE Sepharose Phenyl High Performance HIC樹脂を充填したAxioChrom 140カラム(1.7L)に、流速200mL/分でロードした。サンプル混合液をHICカラムにロードするために、約10分の滞留時間を設けた。IPA/10mMリン酸ナトリウム、pH7.4(1:4v/v、移動相B)を溶離液として使用した。溶出工程の前に、40%の移動相Bで2CV分を洗浄し、未結合種を除去した。精製したNPBA-PEG5k-Trasを、40~100%の移動相Bのグラジエントで15CVかけて溶出させた。モノPEG化Tras(モノNPBA-PEG5k-Tras)の画分を集め、UF/DF用に合わせた。Sartocon Slice Hydrosart Cassette 30kDa膜をモノ-NPBA-PEG5k-TrasのUF/DFに使用した。モノ-NPBA-PEG5k-Trasコンジュゲートは、7容量のPBS(pH7.4)を用いた透析濾過により50g/Lまで濃縮した。透析濾過後、モノNPBA-PEG5k-Trasを0.22μmPES膜で無菌濾過した。
【0288】
(実施例43.TrasあたりのNPBAの数の決定)
モノNPBA-PEG5k5k-TrasのTrasあたりのNPBAの数は、モノNPBA-PEG5k-TrasのNPBA-PEG5kのモル濃度とTrasのモル濃度の比をNPBAのARS検出アッセイを用いて算出することにより求めた。標準曲線を作成するために、NPBA-PEG5k-AA(27)のサンプルを、PBS(pH7.2)に溶解した様々な濃度(0~0.0098mM)で調製した。ARSは0.049mMで水に溶解して調製した。次に、サンプルとARSを混合し、Varioskan LUX分光光度計(ThermoFisher)とSkanIt(Thermo Fisher)又は同様の蛍光解析ソフトウェアを用いて蛍光を測定した(励起波長:468nm、蛍光波長:572nm)。これらのデータ(蛍光対濃度)の線形回帰により、目的のサンプル中のNPBAを決定するための検量線を得た。
【0289】
目的のサンプル(例えば、Tras及びモノ-NPBA-PEG5k-Tras)は、PBS(pH7.2)に0.007mMで溶解して調製した。モノ-NPBA-PEG5k-TrasのNPBA-PEGのモル濃度は、モノ-NPBA-PEG5k-Trasサンプルの平均蛍光値と、様々な既知濃度のNPBA-PEG5k-AA標準(0~0.0098mM)の蛍光値の検量線から以下の式を使用して算出した。
蛍光=ε*C+b
(式中、ε=検量線の線形回帰の傾き、b=検量線の線形回帰の切片、C=NBPA-PEGの濃度(mM)である。したがって、C(mM)=(蛍光-b)/εである。)
【0290】
次に、以下の式に従って、Cを既知のTras濃度で割り、TrasあたりのNPBAの数(NTras)を算出した。
Tras=(NPBA-PEG mmol/L)/(Tras mmol/L)
【0291】
NPBAのARS検出アッセイを用いたモノNPBA-PEG5k-TrasのNPBAの決定数は、モノNPBA-PEG5k-TrasのTrasあたり約1NPBAであった。実施例40に記載したように、モノ-NPBA-PEG5k-TrasあたりのNPBAの数は、蛍光シグナルを減少させるNPBAとの分子の望ましくない複合化、又は蛍光シグナルを増加させるクルードサンプル中の過剰な未反応NPBA-PEGコンジュゲートの存在によって変化する可能性がある。例示的な実験結果を表3に示す。
【表3】
【0292】
当業者であれば理解するように、これらの教示に照らして、本開示の多数の修正及び変形が可能であり、そのすべてが本明細書において企図されている。例えば、本明細書に記載の実施形態に加えて、本開示は、本明細書に引用された開示の特徴と、本開示の特徴を補完する引用された従来技術文献の特徴との組み合わせから生じる発明を企図し、クレームするものである。同様に、任意の記載の材料、特徴又は物品が、任意の他の材料、特徴又は物品と組み合わせて使用され得ること、及びそのような組み合わせが本開示の範囲内にあると見なされることが理解されよう。
【0293】
本書で引用し、又は記載した各特許、特許出願及び刊行物の開示は、あらゆる目的のために、又は少なくともそれが引用された文脈に関連する内容について、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。既に言及した文献に加えて、本開示は、2009年8月12日に出願された米国特許出願第12/540,319号、現米国特許第8,557,292号、2013年3月1日に出願された米国特許出願第13/782,458号、2013年3月1日に出願された米国特許出願第13/782,486号、2013年3月28日に出願された米国特許出願第13/852,303号、2016年6月13日に出願された米国特許出願第15/180,201号、現米国特許第10,287,401号及び2009年8月12日に出願された国際出願番号PCT/US2009/053620に関連する主題を含有し、これらの内容は、あらゆる目的のために、参照により組み込まれる。