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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】入浴介助用車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20250206BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20250206BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20250206BHJP
   A47K 3/12 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
A61H33/00 310K
A61G5/12 701
A61G5/12 702
A47C7/62 A
A47K3/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024113959
(22)【出願日】2024-07-17
【審査請求日】2024-07-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524270176
【氏名又は名称】児島 惇子
(74)【代理人】
【識別番号】100085224
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 重隆
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児島 政登
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-089068(JP,A)
【文献】登録実用新案第3193493(JP,U)
【文献】特開2016-093462(JP,A)
【文献】特開2009-118972(JP,A)
【文献】特開2016-178960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
A61G 5/12
A47C 7/62
A47K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に座部と背もたれ部と走行用の車輪とが配設された入浴介助用車椅子において、
前記座部及び前記背もたれ部のうち、少なくとも前記座部には、湯たんぽ収納部が形成され、該湯たんぽ収納部に、身体を温めるお湯が注入される湯たんぽが着脱可能に収納され
前記湯たんぽ収納部の形成部分は、前記お湯より高温の熱湯が注入される蓋付きの枠形容器であることを特徴としたことを特徴とする入浴介助用車椅子。
【請求項2】
前記湯たんぽ収納部は、前記座部及び前記背もたれ部のうち、少なくとも前記座部の表面に陥没形成され、
前記湯たんぽ収納部の深さを、前記湯たんぽの収納時に、前記湯たんぽ収納部の開口面と前記湯たんぽの表面の高さとが一致する深さとしたことを特徴とする請求項1に記載の入浴介助用車椅子。
【請求項3】
前記湯たんぽを、容量が1リットル~3リットルの手持ちサイズとしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の入浴介助用車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴に際して、脱衣室や寝室等で脱衣した利用者を、浴室に移動させるための入浴介助用車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高齢者施設等では、歩行困難な利用者が入浴する際に、脱衣室や寝室等で脱衣してから浴室まで移動させる車椅子として、例えば、特許文献1のような利用者を座らせて入浴させる車椅子のシャワーキャリー等が知られている。
【0003】
シャワーキャリーは、車椅子の車体に、それぞれ水に濡れても支障のないプラスチック製の座部及び背もたれ部と、走行用の4つの車輪とが各所定位置に配設されもので、車体の前下部には、足を乗せるフットプレートが設けられ、また座部には、洗浄やトイレで用便がし易いように開口部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実登3060526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシャワーキャリーにあっては、脱衣室や寝室等で脱衣した利用者の肌が直にあたる座部や背もたれ部が、冷感のあるプラスチック製であった。これにより、介助者がキャリーを押して浴室で入浴させるまでは、利用者に冷たい思いをさせていた。そのため、利用者は入浴に不安を感じるとともに、最悪の場合、着座時の冷たさで血圧が上昇し、利用者がヒートショックを起こすおそれもあった。
【0006】
そこで、本発明者は鋭意研究の結果、浴室で簡単に入手可能なお湯を熱源とする湯たんぽに着目し、これをシャワーキャリー(入浴介助用車椅子)の少なくとも座部に装着すれば、上述した課題はすべて解消されることを知見した。
【0007】
しかも、この湯たんぽを、入浴介助用車椅子に形成された湯たんぽ収納部に着脱自在に収納すれば、湯たんぽへの注湯や使用後の排水の作業が容易になるとともに、例えば夏季等の高温環境下において、お湯に代えて湯たんぽに水を注入すれば、入浴介助用車椅子を熱中症対策の車椅子としても利用可能であり、しかも、湯たんぽに入ったお湯(水)は、災害時の生活用水としても利用可能であるとともに、空の湯たんぽは、例えば、水難時に溺者を救助するフロート(浮き具)としても利用可能であることも知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、利用者が脱衣して着座した際に、暖かさと入浴への安心感を与える一方、湯たんぽへの注湯や使用後の排水の作業も容易にすることができるとともに、夏季等の高温環境下において、お湯に代えて水を湯たんぽに注入することで、熱中症対策の車椅子としても利用可能で、しかも湯たんぽに入ったお湯(水)を、災害時の生活用水としても利用でき、かつ空の湯たんぽを、例えば水難時に溺者救助用のフロートとしても利用可能な入浴介助用車椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、車体に座部と背もたれ部と走行用の車輪とが配設された入浴介助用車椅子において、前記座部及び前記背もたれ部のうち、少なくとも前記座部には、湯たんぽ収納部が形成され、該湯たんぽ収納部に、身体を温めるお湯が注入される湯たんぽが着脱可能に収納されたことを特徴とする入浴介助用車椅子である。
【0010】
入浴介助用車椅子とは、例えば、シャワーキャリーのように、脱衣室や寝室等で脱衣した利用者を、浴室に移動させるための車椅子である。手押し式のものでも、自動走行式のものでもよい。
座部(湯たんぽを含む)には、洗浄やトイレで用便がし易いように、表裏面を貫通した開口部(切欠部を含む)を形成してもよい。同様に、背もたれ部(湯たんぽを含む)にも、表裏面を貫通した開口部を形成してもよい。
【0011】
車体又は背もたれ部には、左右一対のひじ掛け部を固定状態又は起伏可能な状態で配設してもよい。
背もたれ部には、リクライニング機能を付与したり、車椅子の手押し用のハンドルを設けてもよい。
【0012】
湯たんぽ収納部が形成される箇所は、座部のみでも、座部と背もたれ部の両方でもよい。また、必要により入浴介助用車椅子のその他の部位(例えば、足を温めるためにフットプレート等)に設けてもよい。
湯たんぽ収納部は、対応する座部や背もたれ部の表面に陥没形成しても、その裏面に形成してもよい。その他、座部や背もたれ部の側面に湯たんぽ収納部を形成してもよい。
湯たんぽ収納部の形状及びサイズは、湯たんぽの形状及びサイズに応じて適宜変更される。
【0013】
湯たんぽの素材は任意である。例えば、各種の耐熱性プラスチック、各種の金属等を採用することができる。
湯たんぽの構造は任意である。例えば、硬質又は軟質の容器本体に、蓋付きの注湯口が形成されたものでもよい。軟質の容器本体としては、例えば、ポリ塩化ビニル製やクロロプレンゴム製の水枕形状のもの等が挙げられる。なお、湯たんぽの表面が利用者の肌に直接触れるものの場合には、肌さわりが良くなるように湯たんぽの表面に所定の植毛を施したり、各種のタオル等を展張してもよい。
【0014】
湯たんぽの形状は任意である。例えば、矩形容器状や楕円容器状でもよい。
湯たんぽのサイズ(お湯の注入容量)も任意である。
なお、この入浴介助用車椅子は、例えば、夏季等の高温環境下において、お湯に代えて水(冷水及び氷水を含む)を湯たんぽ(湯たんぽ状容器)に注入することで、利用者の熱中症対策として利用することもできる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記湯たんぽ収納部は、前記座部及び前記背もたれ部のうち、少なくとも前記座部の表面に陥没形成され、前記湯たんぽ収納部の深さを、前記湯たんぽの収納時に、前記湯たんぽ収納部の開口面と前記湯たんぽの表面の高さとが一致する深さとしたことを特徴とする請求項1に記載の入浴介助用車椅子である。
【0016】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記湯たんぽ収納部の形成部分は、前記お湯より高温の熱湯が注入される蓋付きの枠形容器であることを特徴としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の入浴介助用車椅子である。
【0017】
枠形容器の表面は、湯たんぽの表面の高さと一致しても、これより低くしてもよい。このうち、前者の湯たんぽの表面の高さと一致させた場合には、枠形容器の表板を肉厚にしたり、枠形容器の表面にタオル等の温度調整シートを積層するなどして、湯たんぽ表面の温度以上に枠形容器の表面の温度が上がらないようにした方が火傷等のおそれがない。一方、後者の場合には、入浴介助用車椅子に着座した利用者の肌が枠形容器の表面と接触しにくいことから、枠形容器の表面温度は、湯たんぽの表面温度以上でもよい。
熱湯の温度は、湯たんぽに注がれるお湯の温度より高ければ任意である。例えば70℃~80℃、好ましくは75℃前後である。
【0018】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記湯たんぽを、容量が1リットル~3リットルの手持ちサイズとしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の入浴介助用車椅子である。
【0019】
湯たんぽの容量が1リットル未満では、お湯の最大注入量が少なすぎて比較的短時間で冷めてしまう。また、3リットルを超えれば、女性の介助者等の場合には、お湯を入れた湯たんぽが重くなり過ぎて、湯たんぽの取り扱いがしにくい。また、この湯たんぽの好ましい容量は2リットル前後である。これであれば、湯たんぽとしての機能を長時間持続できるとともに、女性でも容易に湯たんぽを取り扱うことができる。
手持ち可能な湯たんぽのサイズは、例えば、縦20cm~40cm、横20cm~50cm、厚さ3cm~10cmである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の入浴介助用車椅子によれば、入浴介助用車椅子の使用に際して、予め利用者の肌が直に接触する座部及び背もたれ部のうち、少なくとも座部が湯たんぽにより温められているため、脱衣室や寝室等で脱衣した利用者が入浴介助用車椅子に着座した時に、暖かさと安心感を与えることができる。その結果、着座時の冷たさで血圧が上昇し、利用者がヒートショックを起こすおそれも解消できる。
【0021】
また、この湯たんぽは、湯たんぽ収納部から取り外せるため、湯たんぽへの注湯や使用後の排水の作業が容易となる。
なお、この入浴介助用車椅子は、例えば、夏季の屋外等の高温環境下において、お湯に代えて水(冷水及び氷水を含む)を湯たんぽに注入することで、この入浴介助用車椅子を熱中症対策用の車椅子として利用することもできる。また、湯たんぽに入ったお湯(水)は、災害時の生活用水としても利用可能であるとともに、空の湯たんぽは、例えば、水難時に溺者を救助するフロート(浮き具)としても利用可能である。
【0022】
特に、請求項2に記載の本発明によれば、湯たんぽ収納部への湯たんぽ収納時に、湯たんぽ収納部の開口面の高さと湯たんぽの表面の高さとが一致する。これにより、利用者が入浴介助用車椅子に着座した際に感じる、湯たんぽの表面と湯たんぽ収納部の開口面との段差による違和感や痛みをなくすことができる。
【0023】
また、請求項3に記載の本発明によれば、湯たんぽ収納部に収納された湯たんぽのお湯は、枠形容器に注入された熱湯によって周囲から温められる。これにより、湯たんぽの保温性が高められる。
【0024】
さらに、請求項4に記載の本発明によれば、湯たんぽの容量を手持ち可能な1リットル~3リットルとしたため、湯たんぽとしての機能を所定の時間持続できるとともに、女性でも容易に持ち運べる重さとなって、湯たんぽ収納部への湯たんぽの着脱等の取り扱いがしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1に係る入浴介助用車椅子の斜視図である。
図2】本発明の実施例1に係る入浴介助用車椅子の座部の平面図である。
図3】本発明の実施例1に係る別の形態の入浴介助用車椅子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ここでは高齢者介護施設に配備された入浴介助用車椅子を例とする。
【実施例
【0027】
図1に示すように、本発明の実施例1に係る入浴介助用車椅子10は、フレーム状の車体11と、車体11の高さ方向の略中間部に設けられた座部12と、車体11の上部に設けられた背もたれ部13と、背もたれ部13の上端両側部に後方へ向かって突設された左右一対のハンドル14と、背もたれ部13の高さ方向の中間部に配設された左右一対のひじ掛け部15と、車体11の下部の四隅に配設された走行用の車輪16と、車体11の前側の下端部に起伏可能に軸支された左右一対のフットプレート17とを備えている。
【0028】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
図1に示すように、車体11は、複数本のステンレス管を所定形状に屈曲かつ連結して設けられた、四隅に前記車輪16が軸支された矩形状の底部フレーム18と、底部フレーム18の左側の前、後隅部に門形に横架された前後方向へ長い左側部分下部フレーム19及び底部フレーム18の右側の前、後隅部に門形に横架された前後方向へ長い右側部分下部フレーム20からなって、上面に座部12が固定される下部フレーム21とを有している。
【0029】
図1及び図2に示すように、座部12は、左,右側部分下部フレーム19,20に横架された平面視して略矩形枠状のステンレス製の座部ベース板22と、座部ベース板22の上面に固定された、平面視して略矩形枠状で耐熱プラスチック製の厚肉な座板23とを有している。座部ベース板22及び座板23の内側空間が、第1の湯たんぽ収納部(湯たんぽ収納部)24となる。座部12の中央部には、表裏面を貫通して洗浄やトイレで用便がし易いように、前後方向に長い開口部12aが形成されている。
この座部ベース板22の内縁部22aは、座板23の内縁より内側空間の方向へ突出している。座部ベース板22の内縁部22aが、第1の湯たんぽ収納部24に第1の湯たんぽ(湯たんぽ)25を収納した際の、第1の湯たんぽ25の掛止部となる。
【0030】
第1の湯たんぽ25は、断熱プラスチック製の矩形容器で、その下面に蓋付きの注湯口26が形成されている。第1の湯たんぽ25を形成する壁板の厚さは、一般的に浴室の蛇口から得られる最高温度(例えば60℃)のお湯を第1の湯たんぽ25に注入した際に、その表面温度が、高齢者が心地よいと感じる40℃~45℃、好ましくは43℃となる厚さ(例えば5mm~10mm)である。
また、第1の湯たんぽ25の厚さ(高さ)は、座板23の厚さ(高さ)と同一である。これにより、第1の湯たんぽ収納部24に第1の湯たんぽ25を収納した際に、第1の湯たんぽ収納部24の開口面の高さと第1の湯たんぽ25の表面の高さとが一致する。
その結果、利用者が入浴介助用車椅子10に着座した際に感じる、第1の湯たんぽ25の表面と第1の湯たんぽ収納部24の開口面との段差による違和感や痛みをなくすことができる。
【0031】
背もたれ部13は、左,右側部分下部フレーム19,20の各後側上端部に、両側の下端部がそれぞれ連結された逆U字形の縦長な背もたれフレーム27と、背もたれフレーム27に固定された縦長な略矩形枠状のステンレス製の背もたれベース板28と、背もたれベース板28の表面に固定された、縦長で略矩形枠状の耐熱プラスチック製の厚肉な背もたれ板29とを有している。
背もたれベース板28の高さ方向の中間部には、背もたれベース板28の内側空間を上下に2分割するベース板側仕切り枠30が横架されている。また、背もたれ板29の高さ方向の中間部には、背もたれ板29の内側空間を上下に2分割する背もたれ板側仕切り枠31が横架されている。
【0032】
これらのベース板側仕切り枠30及び背もたれ板側仕切り枠31によって、背もたれ板29の内側空間に、下方配置された第2の湯たんぽ収納部(湯たんぽ収納部)32と、上方配置された第3の湯たんぽ収納部(湯たんぽ収納部)33とが画成される。
背もたれベース板28の内縁部28aとベース板側仕切り枠30の上下縁部30aとは、それぞれ全長にわたり、対応する第2,第3の湯たんぽ収納部32,33の方向へ突出している。これらの内縁部28a,30aが、第2,第3の湯たんぽ収納部32,33に第2,第3の湯たんぽ(湯たんぽ)34,35を収納した際の掛止部となる。
【0033】
第2,第3の湯たんぽ34,35は、各断熱プラスチック製の矩形容器で、それぞれの下面に蓋付きの注湯口26が形成されている。
第2,第3の湯たんぽ34,35の厚さは、背もたれ板29の厚さと同一である。これにより、第2,第3の湯たんぽ収納部32,33に、対応する第2,第3の湯たんぽ34,35を収納した際に、第2,第3の湯たんぽ収納部32,33の開口面の高さと、第2,第3の湯たんぽ34,35の表面の高さとがそれぞれ一致する。
その結果、利用者が入浴介助用車椅子10に着座した際に感じる、第2,第3の湯たんぽ34,35の表面と、対応する第2,第3の湯たんぽ収納部32,33の開口面との段差による違和感や痛みを解消できる。
【0034】
各ハンドル14は、各短尺なステンレス管で、それぞれの基端部が、背もたれフレーム27の上枠部の左右端部に各基端部が連結されている。
各ひじ掛け部15は、各長尺なステンレス管で、それぞれの基端部が、背もたれフレーム27の左右枠部の高さ方向の中間部に起伏可能に軸支されている。
各車輪16は、それぞれストッパ付きのキャスタである。
【0035】
各フットプレート17は、横長なステンレス板で、その長さ方向の両端部が、短尺なリンクを介して、底部フレーム18の前端部にそれぞれ起伏可能に軸支されている。
なお、図1の二点鎖線で示すように、各フットプレート17にも各小型の第4の湯たんぽ収納部(湯たんぽ収納部)36と、第4の湯たんぽ(湯たんぽ)37とを配設してもよい。これにより、利用者がフットプレート17に足を置いた際の冷たさを解消できる。
【0036】
次に、図1及び図2を参照して、本発明の実施例1に係る入浴介助用車椅子10の使用方法を説明する。
図1及び図2に示すように、予め高齢者介護施設の浴室において、開蓋された各注湯口26から第1~第3の湯たんぽ25,34,35に、蛇口のお湯を注入しておく。なお、注入後は各注湯口26の蓋を閉める。このとき、第1~第3の湯たんぽ25,34,35の表面温度は、高齢者が心地よいと感じる43℃とする。その後、第1~第3の湯たんぽ25,34,35を、対応する第1~第3の湯たんぽ収納部24,32,33にそれぞれ収納する。
【0037】
次いで、浴室の隣の脱衣室において、服を脱いだ利用者が入浴介助用車椅子10に着座する。このとき、利用者の肌が直に接触する座部12及び背もたれ部13が第1~第3の湯たんぽ25,34,35により温められているため、利用者に対して暖かさと安心感を与えることができる。その結果、着座時の冷たさで血圧が上昇し、利用者がヒートショックを起こすおそれも解消できる。
その後、介助者が入浴介助用車椅子10を押して利用者を脱衣室から浴室に移動させ、ここで利用者を入浴させたり、シャワー浴させる。
【0038】
入浴介助用車椅子10の使用後は、第1~第3の湯たんぽ25,34,35を、対応する第1~第3の湯たんぽ収納部24,32,33から取り外し、各注湯口26の蓋を開いて排水する。
このように、第1~第3の湯たんぽ25,34,35を、対応する第1~第3の湯たんぽ収納部24,32,33に対して着脱可能に設けたため、第1~第3の湯たんぽ25,34,35への注湯や使用後の排水の作業が容易となる。
【0039】
なお、この入浴介助用車椅子10は、例えば、夏季の屋外等の高温環境下において、お湯に代えて水(冷水及び氷水を含む)を第1~第3の湯たんぽ25,34,35に注入すれば、この入浴介助用車椅子10を熱中症対策用の車椅子として利用することも可能である。
また、第1~第3の湯たんぽ25,34,35に充填されたお湯(水)は、災害時の生活用水としても利用可能であるとともに、蓋止めされた空の第1~第3の湯たんぽ25,34,35は、例えば、水難時に溺者を救助するフロート(浮き具)としても利用可能である。
【0040】
また、第1~第3の湯たんぽ25,34,35の容量を手持ち可能な2リットルとしたため、湯たんぽとしての機能を長時間持続できるとともに、女性でも簡単に持ち運べる重さとなって、第1~第3の湯たんぽ収納部24,32,33への第1~第3の湯たんぽ25,34,35の着脱等の取り扱いがしやすくなる。
【0041】
また、図3に示す入浴介助用車椅子10Aのように、第1~第3の湯たんぽ収納部24,32,33の形成部分である、座板23、背もたれ板29及び背もたれ板側仕切り枠31を、お湯より高温(例えば75℃)の熱湯が注入される各蓋付きの注湯口26A及び排水口26Bが配設された第1~第3の枠形容器(枠形容器)23A、29A、31Aとしてもよい。
これにより、第1~第3の湯たんぽ収納部24,32,33に収納された第1~第3の湯たんぽ25,34,35のお湯は、第1~第3の枠形容器23A、29A、31A内の熱湯によって周囲から温められる。その結果、第1~第3の湯たんぽ25,34,35の保温性が高められる。
【0042】
なお、熱湯が入った第1~第3の枠形容器23A、29A、31Aに、利用者の肌が直に接触することで生じる火傷等を防ぐため、各第1~第3の枠形容器23A、29A、31Aの表板を肉厚としたり、各表板の表面に各適宜厚さのタオルや耐熱シート等の温度調整シートを積層してもよい(図示せず)。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、入浴に際して、脱衣室や寝室等で脱衣した利用者を、浴室に移動させるための入浴介助用車椅子の技術として有用である。
【符号の説明】
【0044】
10 入浴介助用車椅子
10A 入浴介助用車椅子
11 車体
12 座部
13 背もたれ部
16 車輪
23A 第1の枠形容器(枠形容器)
24 第1の湯たんぽ収納部(湯たんぽ収納部)
32 第2の湯たんぽ収納部(湯たんぽ収納部)
33 第3の湯たんぽ収納部(湯たんぽ収納部)
25 第1の湯たんぽ(湯たんぽ)
29A 第2の枠形容器(枠形容器)
31A 第3の枠形容器(枠形容器)
32 第2の湯たんぽ(湯たんぽ)
33 第3の湯たんぽ(湯たんぽ)
36 第4の湯たんぽ収納部(湯たんぽ収納部)
37 第4の湯たんぽ(湯たんぽ)
【要約】
【課題】利用者が脱衣して着座した際に、暖かさと入浴への安心感を与える一方、湯たんぽへの注湯や使用後の排水の作業も容易にすることができるとともに、熱中症対策用の車椅子としても利用可能で、また湯たんぽに入ったお湯(水)は、災害時の生活用水としても利用可能で、空の湯たんぽは水難時の溺者救助用のフロートとしても利用可能な入浴介助用車椅子を提供する。
【解決手段】入浴介助用車椅子10の座部12及び背もたれ部13に第1~第3の湯たんぽ収納部24,32,33が形成され、各湯たんぽ収納部24,32,33には、身体を温めるお湯が注入される第1~第3の湯たんぽ25,34,35が着脱可能に収納される。
【選択図】図1
図1
図2
図3