(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】右側の少なくとも一つの、及び、左側の少なくとも一つのアップフロントセンサの信号、並びに、車両中央に配置された少なくとも一つの衝突センサの信号を基に動力車両内の搭乗者保護手段を作動させるための方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/0136 20060101AFI20250210BHJP
【FI】
B60R21/0136 310
(21)【出願番号】P 2023569670
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 DE2022200109
(87)【国際公開番号】W WO2022268268
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-11-09
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】102021206363.2
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522296653
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートモーティヴ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1, 30175 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】マリン・ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】コマネスク・イオアナ・ステファナ
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0016286(US,A1)
【文献】特開平11-091496(JP,A)
【文献】特開2006-044432(JP,A)
【文献】特開2001-030873(JP,A)
【文献】特許第4250787(JP,B2)
【文献】特開2017-144747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00-21/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右側の
少なくとも一つのアップフロントセンサ(FCS_R)及び左側の少なくとも一つ
のアップフロントセンサ(FCS_L)の信号、並びに
、車両(1)中央に配置された
少なくとも一つの衝突センサ(G)の信号を基に動力車両内の搭乗者保護手段を作動させるための
方法であって、
複数の当該信号
が閾値と比較され、それを基に、衝突タイプ及び衝突閾値
が割り出され
、
異なる判断条件を有する複数のトリガパスが
設けられており、それら
判断条件に基づいて、搭乗者保護システムの作動が決断される
、
当該方法
において、
一つのトリガパス
では、以下の場合:
一方のアップフロントセンサ(FCS_R)の信号が、中央センサ(G)の信号に対して、未だ第一閾値(th1)未満である間に、双方のアップフロントセンサのうちの
他方のアップフロントセンサ(FCS_L)の信号が、中央センサ(G)の信号に対して第二閾値(th2)を
既に超え
ている場合、
加えて、中央センサ(G)の信号に対して第二閾値(th2)を超えた
前記他方のアップフロントセンサ(FCS_L)の信号が、
さらに所定の特性曲線(th3)
も超え
る場合:
に選択された搭乗者保護手段が、早期に作動されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記所定の特性曲線(th3)
は、
前記中央センサ(G)の信号が、少なくとも
所定の閾値よりも小さい間は、
少なくとも一つの第一セクション(th3.1)を有し、この
第一セクションにお
いては、第二閾値(th2)を超えた方のアップフロントセンサ(FCS_L)が、特性曲線(th3.1)も超え
る場合に、作動を実施
し、並びに、
前記中央センサ(G)の信号が、
所定の閾値よりも大きくなるやいなや該トリガパスを介
する作動が抑制される少なくとも一つの更なるセクション(th3.3)
を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該二つのセクションに加え
て、
更に中央セクション(th3.2)が設けられており、当該中央セクション(th3.2)では、中央センサ(G
)の値が
増加するにつれ、該当するアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)
の、超えると作動が実施される閾値(th3.2)も高くな
ることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
双方のアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)の信号が、短期積分によって積分される一方、中央センサ(G)の信号が、二重積分され、
この様に得られた信号が、互いに比較され評価される
ことを特徴とする請求項1~3のうち一項に記載の方法。
【請求項5】
選択された搭乗者保護手
段が、運転席及び/
又は助手席エアバックの複数の
段のうちの第一
段、並びに、アップフロントセンサ(FCS_L)が、該当する大きさの信号を示す側の側方
又は窓エアバッグを包含していることを特徴とする請求項1~3のうち一項に記載の方法。
【請求項6】
選択された搭乗者保護手
段が、運転席及び/
又は助手席エアバックの複数の
段のうちの第一
段、並びに、アップフロントセンサ(FCS_L)が、該当する大きさの信号を示す側の側方
又は窓エアバッグを包含していることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
中央センサ(G)の信号(X)用に更に、それ以下では作動が実施されない下閾値(Xmin)が、設けられていることを特徴とする請求項1~3のうち一項に記載の方法。
【請求項8】
中央センサ(G)の信号(X)用に更に、それ以下では作動が実施されない下閾値(Xmin)が、設けられていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
中央センサ(G)の信号(X)用に更に、それ以下では作動が実施されない下閾値(Xmin)が、設けられていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項10】
搭乗者保護手段用の制御ユニット(ACU)、少なくとも二つのアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)の、並びに、少なくとも一つの中央衝突センサ(G)の信号用の接続手段、及び、請求項1~3のうち一項に記載の方法を実施するためのアルゴリズムを包含する記憶手段。
【請求項11】
搭乗者保護手段用の制御ユニット(ACU)、少なくとも二つのアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)の、並びに、少なくとも一つの中央衝突センサ(G)の信号用の接続手段、及び、請求項4に記載の方法を実施するためのアルゴリズムを包含する記憶手段。
【請求項12】
搭乗者保護手段用の制御ユニット(ACU)、少なくとも二つのアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)の、並びに、少なくとも一つの中央衝突センサ(G)の信号用の接続手段、及び、請求項5に記載の方法を実施するためのアルゴリズムを包含する記憶手段。
【請求項13】
搭乗者保護手段用の制御ユニット(ACU)、少なくとも二つのアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)の、並びに、少なくとも一つの中央衝突センサ(G)の信号用の接続手段、及び、請求項7に記載の方法を実施するためのアルゴリズムを包含する記憶手段。
【請求項14】
搭乗者保護手段用の制御ユニット(ACU)、少なくとも二つのアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)の、並びに、少なくとも一つの中央衝突センサ(G)の信号用の接続手段、及び、請求項8に記載の方法を実施するためのアルゴリズムを包含する記憶手段。
【請求項15】
搭乗者保護手段、少なくとも二つのアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)及び少なくとも一つの中央衝突センサ(G)、並びに、請求項1~3のうち一項に記載の方法を実施するためのアルゴリズムを実装した制御ユニット(ACU)を装備した動力車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、右側の少なくとも一つの、及び、左側の少なくとも一つのアップフロントセンサの信号、並びに、車両中央に配置された少なくとも一つの衝突センサの信号を基に動力車両内の搭乗者保護手段を作動させるための請求項1のプレアンブルに係る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
右側の少なくとも一つの、及び、左側の少なくとも一つのアップフロントセンサの信号、並びに、車両中央に配置された少なくとも一つの衝突センサの信号を基にした動力車両内の搭乗者保護手段の作動自体は、数十年来既知であるが、本件では、信号と閾値とが比較され、それにより、衝突タイプと衝突閾値が割り出される。また本件では、例えば、様々な衝突タイプに対応するため、又は、特定の搭乗者保護手段をトリガするか、非トリガすることを、更には、そのトリガタイミングを決断する要件を満たすために、異なる基準を有する複数のトリガパスが設けられている。正に、作動ケース及び非作動ケース間の信号挙動が、部分的にオーバーラップするため、並びに、可能な限り早いタイミングにおいて作動判断されなければならない、そしてそのためには、ケース分類されなければならないため、数多くのトリガパスと各々の最適化が必要となる。該中央衝突センサとしては、車両中央に、通常、搭乗者保護システムの制御装置に内蔵された加速度センサが、用いられるが、他の制御装置又はセンサクラスタの中央加速度センサ類を用いることも考え得る。所謂アップフロントセンサ、即ち、車両前方、例えば、バンパ部分に備えられるセンサ類としては、加速度センサ以外に、例えば柔軟性を有するチューブなど空洞内の衝突に伴う圧力変化を捕捉するための例えば圧力センサなど、様々な衝突センサの形態が、既知である。
【0003】
EP 1028039 A2には、例えば、車両に搭載されている搭乗者保護システムの作動を、車両が、障害物と衝突した際に制御するための搭乗者保護システム作動制御装置が、開示されているが、該作動制御装置は、複数のアップフロントセンサ、要するに、車両前方領域の様々な位置に配置されている衝突感知手段を備えている。尚、複数の衝突捕捉手段によって捕捉された値に基づく車両の衝突タイプを識別するための衝突タイプ識別手段自体は、既に既知である。ここで、該衝突タイプ識別手段は、車両の衝突後、左右の衝突捕捉手段が捕捉した値の各々の上昇の間に時間的差異がある場合、衝突タイプを、斜め衝突として識別する。
【0004】
EP 2504201 A1では、車両の左前方領域に設置された第一変形エレメントの構成要素間の距離の変化を表す第一変形エレメント信号を受信するステップを有する車両前方領域にあるオブジェクトの衝突領域の幅を認識するための方法が提案されている。更に該方法は、車両の右前方領域に設置された第二変形エレメントの構成要素間の距離の変化を表す第二変形エレメント信号を受信するステップも包含している。対応するセンサ類を備えた該双方の変形エレメントも、アップフロントセンサの実施形態であると言える。
【0005】
第一変形エレメント信号が、第二変形エレメント信号と、予め定義された閾値レベル以上異なっている場合、車両に対する、幅の狭い衝突領域を有するオブジェクトのオフセット衝突が認識される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】EP 1028039 A2
【文献】EP 2504201 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明の課題は、道路交通における安全性をさらに高め、特定の斜め衝突事象において適切な強度で特定の選択された搭乗者保護手段を、典型的な非作動ケースや、従来より既知な総合作動ケースにおいては、更に対応させることなく、早期かつ安全に作動させることを可能にする方法を提供することである。高い衝突エネルギーを有する斜め衝突事象、即ち、衝突オブジェクト間の相対速度が高い事象においては、特定の搭乗者保護手段の保護効果の特別な最適化、即ち、従来より既知な衝突シナリオやトリガパスが定義しているものよりもより早期の作動が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この様な高エネルギーの斜め衝突事象は、以降の衝突経過において、通常、全ての搭乗者保護手段の全作動につながるが、従来のトリガパス及び判断基準は、特定の搭乗者保護手段に対して必要となる、特に早期の、作動判断には、適していない。
【0009】
本発明によれば、上記目的は、独立請求項に記載されている特徴によって達成される。本発明の更なる実施形態は、従属請求項から得られるが、各特徴を組み合わせること、更には各特徴の更なる形態も可能である。
【0010】
本発明の主たるアイデアは、双方のアップフロントセンサの信号を、中央センサと比較して評価し、その比較結果を更に双方のアップフロントセンサに対しても評価すると言うものである。
【0011】
本発明に係るトリガパスでは、選択された搭乗者保護手段が、以下の場合、
一方のアップフロントセンサの信号が、中央センサの信号に対して、未だ第一閾値未満である間に、双方のアップフロントセンサのうちの他方のアップフロントセンサの信号が、中央センサの信号に対して第二閾値を既に超えている場合、
さらに、中央センサの信号に対して第二閾値を超えた前記アップフロントセンサの信号が、所定の特性曲線も超える場合において、
早期に作動される。繰り返しになるが、勿論通常は、複数の異なるトリガパスが存在しており、その閾値は、他の作動ケースにおいて活性化する値とは異なっていると言うことは、明記しておく。
【0012】
この場合、所定の特性曲線は、中央センサの信号が、少なくとも所定の閾値よりも小さい間は、少なくとも第一セクションを好ましくは有し、かつこのセクションにおいては、双方のアップフロントセンサのうちの一方が、第二閾値を超え、他方のアップフロントセンサが、第一閾値未満である場合には作動するが、それ以外の場合においては、このセクションでは、該トリガパスと該セクションを介する作動は実施されない。加えて、中央センサの信号が、所定の閾値よりも大きくなるやいなや該トリガパスを介する作動が抑制される少なくとも一つの更なるセクションも設けられている。
【0013】
この制限の背景は、あるレベルの衝突深刻度推移を超えた場合、ある特定の搭乗者保護手段の選択的な早期作動は必要ない一方、それぞれの信号自体が、他の様々な衝突ケースに対しても、作動領域に達すると言った恐れを有していると言うことである。
【0014】
ある発展形態では、該二つのセクションに加え、更に中央セクションが設けられており、当該中央セクションでは、中央センサの値が増加するにつれ、アップフロントセンサの、超えると作動が実施される第二閾値も高くなる。言うならば、前記二つのセクションは、この中央セクションを介して互いに移行している。
【0015】
尚、双方のアップフロントセンサの信号は、短期積分によって積分され、中央センサの信号は、二重積分され、この様に得られた信号は、互いに比較され評価されることが好ましい。物理的にのみ見た場合、この様な不平等な処理が、衝突検出に意味を成すとは考えにくいかもしれないが、このケースでは、有利である。
【0016】
この方法は、運転席エアバック及び/又は助手席エアバックの複数の段のうちの第一段、並びに、アップフロントセンサが、該当する大きさの信号を示す側において側方エアバック及び/又は窓エアバッグを作動させるために好ましくは使用される。
【0017】
同様に、搭乗者保護手段用の制御ユニットは、対応する搭乗者保護手段用の接続手段、並びに、少なくとも二つのアップフロントセンサの、並びに、少なくとも一つの中央衝突センサの信号用の接続手段、及び、本発明に係る方法を実施するためのアルゴリズムを包含する記憶手段を有している。尚、該アルゴリズムには、更なるトリガパスも実装されていることは、自明である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を、実施例を挙げ、図面を参照し、より詳しく説明する。
図1Aは、それ自体は既知な、搭乗者保護手段用の中央制御ユニットACUを備え、少なくとも一つの衝突センサG、並びに、走行方向に対して、右側に配置されたアップフロントセンサFCS_R、並びに、左側に配置されたアップフロントセンサFCS_Lを内蔵した動力車両用の搭乗者保護システムの構成を示している。これらの他、車両の前方領域、側方領域、
又は、中央に更なるセンサ類、特に走行方向にのみ向けられた感度軸を有するものではないセンサ類も取付けられることができるが、本件に係る方法では、これらセンサの走行方向の信号成分のみが考慮される。
【0019】
車両内の様々な搭乗者保護手段は、簡略化のため図示されていないが、これら自体は、従来の技術より既知である。
【0020】
先ず、
図1Aには、90km/h(=kph)の斜め衝突事象が、概略的に可視化されており、該当する信号推移は、下記の
図2及び
図3に示されている。
図1Bは、一定の強度を超えた時点で、特に好ましくは早期に、身体、特に頭部を横方向から保護するエアバッグ、例えば、側面エアバッグ、窓エアバッグ、又は、所謂「カーテンエアバッグ」などを作動させる衝突試験、所謂「オブリーク・テスト」の構成をより詳細に示している。
【0021】
一方、
図1Cは、
図4においてその信号推移が説明されているSOT(Small-Overlap Test)を、示している。
【0022】
対して、
図1Dは、変形可能なバリアを用い、その一部にのみ衝突し、
図5にその信号推移が説明されている所謂「ODB」(Offset Deformable Barrier Test)を示している。
【0023】
一方、
図1Eは、
図6においてその信号推移が説明されている他の斜め衝突の形態を示している。
【0024】
図2Aから2Cは、非常にクリティカルなオブリーク・テストでの衝突開始から0から35msと言うそれ自体非常に早期且つ非常に短い時間枠における、双方のアップフロントセンサFCS_LとFCS_Rの信号、並びに、中央衝突センサGの中央エアバッグ制御装置ACU内において割り出された二重積分値Xの推移を示している。冒頭にも記載した如く、信号は、時間に関して閾値と比較されるのではなく、中央衝突センサの信号との比較で評価される。よって、
図2Dと2Eは、X軸にプロットされている中央衝突センサの二重積分の値X、並びに、Y軸に各々のアップフロントセンサの短期積分の値を示している。即ち、シグナル推移は、中央衝突センサの信号に対する推移の観点から変化する。
図2Aから2Eは、単に、該衝突事象に係るセンサ信号の各々の時間的推移に基づいたサマリーの導出を図示し、可視化する役割を担っているに過ぎない。
【0025】
図3Aから3Dは、以下に、該サマリーの評価を概略的に図示しているが、
図3Aと3Cは、左側のアップフロントセンサの信号FCS_Lの短期積分の推移を、そして、
図3Bと3Dは、右側のアップフロントセンサの信号FCS_Rの短期積分の推移を示している。
【0026】
その際、
図3Aと3Bは、第1及び第2閾値(th1<th2)のオフセット特性に着眼した評価を図示しているが、衝突のあった側-この例では左側-では、第2閾値、即ち、高い方の閾値th2(図内では、棒・点・棒線で表示)を超えなければならないが、反対側-この例では右側-では、信号は、第一閾値th1(図内では、点線で表示)未満である。煩雑さを避けるべく
図3Aと3Bでは、該当する閾値のみを示しているが、言うまでも無く、機能的には、該信号は、全ての閾値に対して並行して評価される。第二閾値も非常に低いものではあるが、中央センサGの信号、即ち、信号ACU Xとの比較においては、非常に早期に、即ち、かなりの衝突深刻度を示唆している。
【0027】
ここに示されている好ましい実施例では、付加的にこのトリガパス用に下限界Xminと上限界Xmaxも用いられている。下限界Xminは、特に衝突開始時、物理的には略説明できない信号変動を平滑化、又は、消去し、誤作動を回避するために用いられる。
【0028】
一方、上限界Xmaxは、このトリガパスを非常に激しい特別な斜め衝突事象に用いることを制限している。
図3Aと3Bは、謂わば、オフセット・マッピングであると解釈できるが、これだけではケースを区別するのに十分ではなく、斜め衝撃の深刻度に関する境界を評価するためのさらなる基準と、他のオフセットケースとの関連については、煩雑さを避けるために、個別の
図3Cと3Dに示した。
【0029】
よって、この特定の特に早期に作動させるべき搭乗者保護手段をトリガするためには、特により直接的に衝突したアップフロントセンサの信号(
図1から3のケースでは、FCS_L)が、中央センサ(G)の信号に対して、第二閾値(th2)を超え、且つ、
所定の特性曲線(th3)も超えなければならない。
【0030】
所定の特性曲線(th3)は、点模様に塗られている作動領域を、このトリガパスにおいては、他の非作動領域から明確に区別している、言い換えれば、後の衝突経過において特に中央センサに相当する大きな信号が有る場合、言うまでも無く、全搭乗者保護システムの総作動に至る作動が実施されるが、該所定の特性曲線は、深刻な斜め方向衝突事故に対する特に早期の作動用に最適化されている。
【0031】
該特性曲線th3は、好ましい実施形態では、中央センサ(G)の信号が、少なくとも
所定の閾値(2,5)よりも小さい間
に、双方のアップフロントセンサ(FCS_L)のうちの一つが、特性曲線th3も超えた場合に、このセクションth3.1における作動が実施される第一セクション(th3.1)を有している。完全を期すため再度明記するが、三つ全ての判断基準、即ち、特性曲線th3のみならず、該当するアップフロントセンサ(FCS_L)は、第二閾値(th2)を超える一方、もう一つのアップフロントセンサ(FCS_R)は、第一閾値(th1)未満であることは、当然ながら、満たされていなければならず、これらが満たされていない場合、
図3Aと3Bに関連して、既に、理解を容易にするために該図では分けて、説明した如く、セクション(th3.1)では、このトリガパス及び該セクション(th3.1)を介した作動は、実施されない。
【0032】
この実施形態では、中央センサ(G)の信号が、所定の閾値よりも大きくなるやいなや該トリガパスを介した作動が抑制される少なくとも一つの更なるセクション(th3.3)が設けられている。
【0033】
更に、
図3Cと3Dは、これら二つのセクションに加え、
もう一つの中央セクションth3.2も、示している。この中央セクションでは、中央センサ(G)
に対する値が高くなると共に、アップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)
に対する、図において明記されている如く、その値以上において作動が実施される第二閾値も高くなる
。
【0034】
既に説明したごとく、
図3Aから3Dは、
選択された搭乗者保護手段を特に早期
に作動させるべき非常に深刻な斜め方向衝突の
典型的な推移を示している。ここでは特に、運転席及び/
又は助手席エアバックの複数の
段のうちの第一
段のみ、並びに、アップフロントセンサ(FCS_L)が、該当する大きさの信号を示す側においてのみ、側方/窓エアバッグを作動させる
。即ち、
図3Aは、対応する機能の推移F左、ならびに、より高い第2閾値を超えたことを示しており、もう一方の
図3Bは、右側アップフロントセンサの信号が、第1閾値未満のXminとXmaxの間にある該当領域内にあることを示している。また、
図3Cに示す如く、左側用の機能推移は、ACU X=2-4の値において、特性曲線th3を満たしている。
図3Dは、完全を期すためにだけ描かれており、この実施例
又は衝突事象における作動判断には、重要ではない。この際、具体的な時間的推移と振幅レベルは、実際のシミュレーションから得られるが、これは、例に過ぎず、原則的には、機能を説明することのみを目的としている。
【0035】
以下の
図4以降は、更に、例示的な実施形態の異なる衝突推移を概説しており、この作動ケースおける作動判断の機能及び制限をより詳細に説明することを目的としているが、その際、既に詳細に説明した
図3Aから3Dを参照する。
【0036】
図4Aから4Dは所謂「SOT64kph」、
図1Cに係る「small overlap test」、要するに、かなりの速度、
又は、エネルギーにおける、但し、進行方向に対して横方向へは同等の成分を有しておらず、特に感度の高いトリガパスは使用されない方が良い正面衝突を示している。同様に、ここでも、衝突した左側において信号推移は、
図4Aの第二閾値th2を超えているが、第三特性曲線th3は、その車両左側であっても、作動枠(点模様)内にあるという条件を、後の衝突経過において中央センサの深刻度が、有意となったとしても、満たしていない-この場合は、他のトリガパスが介入する。
【0037】
更に、
図4Bと4Dは、右側の実際には衝撃を受けてはおらず、車両前部の間接的な変形によってのみ説明できるが無視はできない非典型的な信号を示しているが、これらは、制限Xminによって、部分的にすら作動判断に全く含まれない。この例では、特性曲線th3を(ここでは、
図4Dにおいて)超えたと言うことだけでは十分ではなく、特に該当する側では-
図4Bにおいてこれは満たされていないが-th2もトリガされなければならないと言うことは、重要であるため再度明記しておく。
【0038】
図5Aから5Dは、三つ全ての判断基準を有意に満たしておらず、変形自在であるため信号の早期の立ち上がりが見られないことから、四つ全ての図において非作動ケースであることが明確な、所謂「64kph ODB=Offset Deformable Barrier Test」(
図1D参照)を示している。
【0039】
一方、
図6Aから6Dに示されている
図1Eに係る斜め衝突のケースは、”僅か”40km/hと言う低速にもかかわらず、アップフロントセンサが有意に認識できるピークを示すため、
場合分けが非常に困難である。ここでは、車両右側が先に衝突しているにもかかわらず、非典型的に、反対側の、即ち、左側のアップフロントセンサが、先に、ピークを示している。これは、第二閾値th2に達していないが、衝突した右側は、達している(
図6B)。
図6Cでは実際に(最初に)衝突しなかった側においてトリガ領域(点線)に入ってはいるが、その側(ここでは、右側)において第二閾値を超えていない、即ち、
図6Dにおいて推移が、特性曲線th3よりも下に留まっているため、閾値th1を下回っているだけでなく、特に作動条件th3も満たしていないこととなりオフセット基準を満たしていない。総合的に見て、このテストは、今一度、3つの評価基準の関係をよく示している。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下も含む。
1.
右側の
少なくとも一つのアップフロントセンサ(FCS_R)及び左側の少なくとも一つ
のアップフロントセンサ(FCS_L)の信号、並びに
、車両(1)中央に配置された
少なくとも一つの衝突センサ(G)の信号を基に動力車両内の搭乗者保護手段を作動させるための
方法であって、
複数の当該信号
が閾値と比較され、それを基に、衝突タイプ及び衝突閾値
が割り出され
、
異なる判断条件を有する複数のトリガパスが
設けられており、それら
判断条件に基づいて、搭乗者保護システムの作動が決断される
、
当該方法
において、
一つのトリガパス
では、以下の場合:
一方のアップフロントセンサ(FCS_R)の信号が、中央センサ(G)の信号に対して、未だ第一閾値(th1)未満である間に、双方のアップフロントセンサのうちの
他方のアップフロントセンサ(FCS_L)の信号が、中央センサ(G)の信号に対して第二閾値(th2)を
既に超え
ている場合、
加えて、中央センサ(G)の信号に対して第二閾値(th2)を超えた
前記他方のアップフロントセンサ(FCS_L)の信号が、
さらに所定の特性曲線(th3)
も超え
る場合:
に選択された搭乗者保護手段が、早期に作動されることを特徴とする方法。
2.
前記所定の特性曲線(th3)
は、
前記中央センサ(G)の信号が、少なくとも
所定の閾値よりも小さい間は、
少なくとも一つの第一セクション(th3.1)を有し、この
第一セクションにお
いては、第二閾値(th2)を超えた方のアップフロントセンサ(FCS_L)が、特性曲線(th3.1)も超え
る場合に、作動を実施
し、並びに、
前記中央センサ(G)の信号が、
所定の閾値よりも大きくなるやいなや該トリガパスを介
する作動が抑制される少なくとも一つの更なるセクション(th3.3)
を有する、
ことを特徴とする上記1に記載の方法。
3.
該二つのセクションに加え
て、
更に中央セクション(th3.2)が設けられており、当該中央セクション(th3.2)では、中央センサ(G
)の値が
増加するにつれ、該当するアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)
の、超えると作動が実施される閾値(th3.2)も高くな
ることを特徴とする上記2に記載の方法。
4.
双方のアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)の信号が、短期積分によって積分される一方、中央センサ(G)の信号が、二重積分され、
この様に得られた信号が、互いに比較され評価される
ことを特徴とする上記のうち一つに記載の方法。
5.
選択された搭乗者保護手
段が、運転席及び/
又は助手席エアバックの複数の
段のうちの第一
段、並びに、アップフロントセンサ(FCS_L)が、該当する大きさの信号を示す側の側方
又は窓エアバッグを包含していることを特徴とする上記のうち一つに記載の方法。
6.
中央センサ(G)の信号(X)用に更に、それ以下では作動が実施されない下閾値(Xmin)が、設けられていることを特徴とする上記のうち一つに記載の方法。
7.
搭乗者保護手段用の制御ユニット(ACU)、少なくとも二つのアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)の、並びに、少なくとも一つの中央衝突センサ(G)の信号用の接続手段、及び、上記のうち一つに記載の方法を実施するためのアルゴリズムを包含する記憶手段。
8.
搭乗者保護手段、少なくとも二つのアップフロントセンサ(FCS_L,FCS_R)及び少なくとも一つの中央衝突センサ(G)、並びに、上記のうち一つに記載の方法を実施するためのアルゴリズムを実装した制御ユニット(ACU)を装備した動力車両。