(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】サイズ調節可能な帽子
(51)【国際特許分類】
A42B 1/22 20060101AFI20250212BHJP
A42B 1/019 20210101ALI20250212BHJP
A42B 1/00 20210101ALI20250212BHJP
【FI】
A42B1/22 Z
A42B1/019 Z
A42B1/00 P
A42B1/22 A
A42B1/22 B
(21)【出願番号】P 2021081671
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】596174204
【氏名又は名称】百々株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188499
【氏名又は名称】勝又 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100127568
【氏名又は名称】酒井 善典
(74)【代理人】
【識別番号】100171402
【氏名又は名称】上田 ▲茂▼
(74)【代理人】
【識別番号】100213779
【氏名又は名称】小川 有佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】百々 翼
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-003316(JP,A)
【文献】特開2017-014675(JP,A)
【文献】実開平04-044322(JP,U)
【文献】実開平02-131525(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/22
A42B 1/019
A42B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性のスエットバンドとオレフィン系熱可塑性ポリマーを主原料とする形状記憶バンドとからなる複合バンドであって、上記形状記憶バンドのガラス転移温度が室温と体温の中間にあり、帽子本体内周下縁に沿って上記複合バンドを取り付けたことを特徴とするサイズ調節可能な帽子。
【請求項2】
伸縮性のスエットバンドが筒状であって、当該筒状の伸縮性のスエットバンドの中に形状記憶バンドを収納して、長手方向の端部を縫製により閉じて、外から上記形状記憶バンドが見えないようにしたことを特徴とする請求項1に記載のサイズ調節可能な帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、フィット感が増し、運動時や風により脱げ落ちることがないサイズ調節可能な帽子に関し、特にゴルフ、テニス、野球等のスポーツ時に好適であるサイズ調節可能な帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
つば付き帽子(キャップ)は、通常、S、M、L、LLなど数種類別に生産販売されているが、かかる既製帽子では、ほとんど伸縮性がないため、頭に丁度適合したサイズのものは比較的少なく、多少きつ目又は多少ゆる目のものであっても購入しなければならなかった。
【0003】
サイズの小さな帽子を長時間着用すると、酷い圧迫感により頭痛を生じる。一方、緩く調節した場合は、帽子が脱げ易く、場合によっては風などにより脱げて落ちた帽子を取る際に思わぬ事故を被る危険もある。
【0004】
また、丁度適合したサイズの帽子を選ぶのは難しく、たとえ、丁度適合したサイズの帽子を選んだとしても、例えば、使用によりゆるくなったり、頭髪が伸びるときつくなったり、雨に濡れたり、洗濯することにより収縮してきつくなってしまうという欠点があった。
【0005】
また、従来のサイズ調節が可能な帽子として、
図7に示す帽子31の如く、クラウン部32の下部の一部に、周方向に沿って縫い目を設けたり、あるいは筒状や袋状に形成した紐挿入部33を設け、この縫い目又は紐挿入部に紐34を挿通し、この紐34の端部同士を引いて結ぶものがあり、これらはクラウン部32の下方が皺になり、特に婦人用の帽子などにおいてはシルエットを損ない、外観上に大きな問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1に開示されたタイプは、クラウン部、庇部及びスベリ部と、上記いずれかの部の折返部及びスベリ部の少なくとも一方の周方向にわたってループ状に形成してなる多数のループ部が設けられ、このループ部に沿って調節紐体を配置して、この調節紐体端部には調節紐体を引っ張ることによって任意のループ部に係止可能とするサイズ調節器具が設けられた構成で、ループ部に沿って配置された調節紐体を引くと、折返片には周方向に沿って皺が生じると同時に、折返片自体が内周側に傾斜して、その内周が縮径され、サイズ調節の影響をクラウン部と庇部の外観に及ぼさず、帽子のシルエットを損なうことがないものである。
【0007】
しかし、上記のタイプでは、サイズ調節に紐を使用するため締め付け感があり、被り心地が悪く、サイズ調節が面倒である。また、折返片及びスベリ部の少なくとも一方にその周方向に沿って調節紐体を添わせて、調節紐体を引っ張り可能に囲むように折返片の少なくとも一方の周方向にわたってループ状に形成してループ部を設けたため、縫製加工が難しいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況下、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、頭部形状にフィットし、運動時や風により脱げ落ちることがないサイズ調節可能な、特にゴルフ、テニス、野球等のスポーツ時に好適なサイズ調節可能な帽子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願第一発明のサイズ調節可能な帽子は、帽子本体内周下縁に沿って、伸縮性のスエットバンドと形状記憶バンドとからなる複合バンドを取り付けたことを特徴としている。
【0011】
本願第二発明のサイズ調節可能な帽子は、本願第一発明において、冠状の帽子本体前部にひさし部を突設するとともに、帽子本体後部中央に切除部を設け、当該切除部にサイズ調節用ベルトとサイズ調節具を設けることを特徴としている。
【0012】
本願第三発明のサイズ調節可能な帽子は、本願第二発明において、サイズ調節用ベルトとスエットバンドが伸縮性の弾性織布で形成されていることを特徴としている。
【0013】
本願第四発明のサイズ調節可能な帽子は、本願第二発明において、サイズ調節用ベルトとスエットバンドが帽子の円周方向に伸縮性を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願第一発明によれば、形状記憶性と温度依存性を備えている形状記憶バンドの効果により、形状記憶バンドとともにスエットバンドが着用者の体温によって伸びるので、様々な頭部形状にフィットし、帽子による締め付け感を軽減することができるという効果がある。そこで、本願第一発明によれば、様々なサイズ(S、M、L、LLなど)が存在する帽子のサイズ展開を少なくすることが可能で、無駄な在庫を低減することができる。本願第二発明、第三発明及び第四発明によれば、より一層頭部形状にフィットし、さらに風により脱げ落ちることがないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明のサイズ調節可能な帽子の一実施形態を斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のサイズ調節可能な帽子の一実施形態を斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明のサイズ調節可能な帽子を構成する複合バンドの製造方法の概略図である。
【
図4】
図4は、形状記憶バンドの両端部をスエットバンドの折り返し部で覆ってなる複合バンドの平面図である。
【
図5】
図5は、形状記憶バンドの温度による貯蔵弾性率の推移を示す図である。
【
図6】
図6は、形状記憶バンドの温度別の応力歪曲線を示す図である。
【
図7】
図7は、従来のサイズ調節可能な帽子の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら説明するが、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、様々な変形や修正が可能であることは言うまでもない。
【0017】
図1と
図2は、それぞれ本発明のサイズ調節可能な帽子の一実施形態を斜め上方から見た斜視図と斜め下方から見た斜視図である。この帽子は、冠状の帽子本体1前部にひさし部2を突設すると共に、帽子本体1後部中央に切除部3を設け、該切除部3にサイズ調節用ベルト4とサイズ調節具5を設けてなるものである。
図2において、6は、帽子本体内周下縁に沿って縫着された伸縮性のスエットバンドと形状記憶バンドとからなる複合バンドであり、スエットバンドが内側(肌側)になるように縫着されている。
【0018】
帽子本体1は、通常、種々の形状の5~10枚の織布を縫い合わせてできている。この5~10枚の織布は、特に制限されず、伸縮性を有していても、非伸縮性であっても構わないが、帽子本体を構成する5~10枚の織布の少なくとも1枚、より好ましくは2枚以上が左右対称に配置されていることが好ましく、更に好ましくは全部が、緯方向、経方向又は両方向に伸縮性を有することが好ましい。これにより、帽子本体1も横方向(緯方向)と縦方向(経方向)の両方に伸縮性を有するようになる。
【0019】
帽子本体1は6枚の三角形の伸縮性織布1a、1b、1c、1d、1e、1fから冠状に構成され、これら6枚の三角形織布がすべて横方向(緯方向)と縦方向(経方向)の両方に伸縮性を有するようになる。
【0020】
この場合、帽子のひさし部2が縫製された三角形織布1a及び1fは伸縮性織布を用いても、ひさし部2の影響で伸縮効果が他の部分の織布に比べて小さくなるので、三角形織布1b~1e、特に両側部分(両耳部分)に位置する三角形織布1b及び1eを伸縮性織布にて形成することが伸縮効果を効率良く発揮する観点から好ましい。
【0021】
このような構成の帽子としては、帽子本体1を構成する6枚の三角形織布のうち両側部分(1b及び1e)が、緯方向、経方向又は両方向に伸縮性を有するものである。このような伸縮性の織布としては、特に制限されないが、緯糸として伸縮性を有するポリウレタン弾性糸を用い、経糸としては非伸縮性のポリエステル/コットンの混紡糸を用いて織成されたものなどが好適である。
【0022】
更に、帽子本体を構成する5~10枚の織布の少なくとも1枚又は全てを非伸縮性の薄手の生地にて形成することもできる。前記非伸縮性の薄手の生地としてはメッシュ及び機能性素材から選ばれるものが好ましい。
【0023】
前記機能素材とは、例えば、ゴアテックス(登録商標、ゴアテックス社の商品)のように薄膜フィルムを貼り付け、防水性と透湿性を備えた繊維、ポリエステル繊維等を1.0デニール以下の極細にした繊維、特殊な断面形状(溝、中空など)に加工した繊維などを使用した蒸れにくい生地である。具体的には、メッシュ、ゴアテックス(登録商標、ゴアテックス社製)、ダクロン(デュポン社製)、ディアプレックスなどが挙げられる。
【0024】
なお、本発明のサイズ調節可能な帽子においては、サイズをスムーズに調節可能とするため、通常帽子本体内周下縁に取付けられているプラスチック製のインチテープを取り除いている。ここで、インチテープとは、伸縮しにくい細帯状のもので、帽子を作る段階において三角形織布を縫い合わせ作り易くするためのものである。
【0025】
前記複合バンド6は、伸縮性のスエットバンドと形状記憶バンドとからなる複合バンドであり、スエットバンドが内側(肌側)になるように縫着されている。スエットバンドは、帽子本体内周下縁に沿って縫着されたゴム弾性織布にて形成される。この場合特に、緯糸が弾性糸(スパンデックス糸)であり、経糸は非弾性糸であるゴム弾性織布を用いることが、緯方向(即ち、帽子の円周方向)に伸縮性を有し、汗の吸収力に優れ,適切な密着力を表すので、快適な着用感と安定感を持続的に表すことができる。このようなゴム弾性織布としてはゴムバンドやポリウレタン織布バンドなどが好適である。なお、複合バンド6の製造方法については、後記する。
【0026】
また、デザイン性を向上させる観点からサイズ調節バンドや帽子本体を構成する伸縮性の織布を用いてスエットバンドを形成することもできる。このような伸縮性の織布としては、特に制限されないが、緯糸として伸縮性を有するポリウレタン弾性糸を用い、経糸としては非伸縮性のポリエステル/コットンの混紡糸を用いて織成されたものなどが好適である。
【0027】
本発明の帽子には、
図1,2に示したように、帽子本体1後部中央に切除部3が設けられている。この切除部3の大きさは特に制限されないが、通常,幅10cm,高さ5cm程度である。前記切除部には、その一端に縫着されたサイズ調節用ベルト4と,他端に結合されたサイズ調節具(バックル)5とが設けられ、帽子サイズを調節可能に構成されている。
【0028】
本発明においては、前記サイズ調節用ベルト4を、伸縮性を有する弾性織布にて形成する。この場合、特に、緯糸が弾性糸(例えばスパンデックス糸)であり、経糸は非弾性糸である弾性織布を用いることが、緯方向(即ち、帽子の円周方向)に伸縮性を有し、サイズ調節を容易にする観点から好ましい。
【0029】
伸縮性のスエットバンドと形状記憶バンドとからなる複合バンド6の製造方法について、
図3を参照しながら説明する。
図3において、11は伸縮性のスエットバンド12を貯留する巻取リール、13は形状記憶バンド14を貯留する巻取リールである。これらスエットバンド12と形状記憶バンド14は上下のリール15と16で挟持・押圧された後、端部折り返し器具17でスエットバンド12の両端部を折り返して、
図4の状態にする。そして、第1ミシン18と第2ミシン19で、
図4の折り返し部R1とR2を縫製する。
【0030】
第1ミシン18と第2ミシン19は同じ構造を備えているので、第1ミシン18の構造について説明し、第2ミシン19の構造についての説明は省略する。第1ミシン18は、ベッド部20と、脚柱部21と、アーム部22とを備えている。脚柱部21はベッド部20の右端から上方に延び、アーム部22は脚端部21上端から左方に延び、ベッド部20の上面と対向している。アーム部22は、上面左側に上方に突出する糸立棒23を備えている。糸立棒23は糸駒から繰り出した上糸(図示せず)を挿通する。
【0031】
アーム部22は内部に上軸24と主モータ(図示せず)を備えている。上軸24は左右方向に延び、上軸プーリ(図示せず)を介して主モータの出力軸に連結されている。アーム部22は左端部に頭部25を備える。頭部25はアーム部22から下方に突出し、針棒26を上下動可能に支持している。針棒26下端部は頭部25から下方に突出している。針棒26は上下動機構(図示せず)を介して上軸24に連結されている。針棒26は上軸24の回動に伴って、上下動機構を介して上下動する。針棒26は下端に縫針27を装着している。縫針27は目孔に挿通した上糸28を保持し、縫針27は針棒26とともに上下動する。
【0032】
ベッド部20は内部に釜、糸切り機構及び布送り機構を備えている。釜は下糸を巻いたボビンを収容している。釜は剣先を備えている。釜は主モータの動力を得て回動し、縫針27の目孔に挿通した上糸28を剣先で捕捉して、下糸と絡める。糸切り機構は固定刃と可動刃を備えており、固定刃と可動刃の共働した作用により上糸28と下糸を切断する。
【0033】
以上のような構造を備えた第1ミシン18と第2ミシン19により、
図4の折り返し部R1とR2を縫製し、伸縮性のスエットバンドと形状記憶バンドとからなる複合バンド29を得、この複合バンド29は収納容器30に収納される。
【0034】
なお、伸縮性のスエットバンドと形状記憶バンドとからなる複合バンドは、縫製以外の方法でも製造することができる。例えば、スエットバンドと形状記憶バンドのあいだにオレフィン系の接着剤を介在させるか又は介在させないで、アイロン又はプレス機を用いて、スエットバンドと形状記憶バンドを熱接着させることもできる。
【0035】
上記の実施形態では、
図4に示すように、スエットバンド12の両端部を折り返して、折り返し部R1とR2を縫製することにより、伸縮性のスエットバンドと形状記憶バンドとからなる複合バンド29を得たが、複合バンドは他の方法により製造することもできる。例えば、筒状の伸縮性のスエットバンドの中に形状記憶バンドを収納して、長手方向の端部を縫製により閉じて、外から形状記憶バンドが見えない複合バンドを製造することもできる。
【0036】
次に,本発明の一実施形態による帽子を初めて着用しようとする場合について説明する。先ず、サイズ調節用ベルト4をサイズ調節具(バックル)5から解除させた状態で帽子を着用し、次いでサイズ調節用ベルト4をバックル5に結合し,少し締め付けられるのを感じたときにバックル5を固定させる。すると、帽子本体1を構成している6枚の織布1a、1b、1c、1d、1e、1f(少なくとも1枚が弾性織布製)の下部と複合バンド6が緯方向、つまり帽子の円周方向に自動に精密に伸縮調節されるので,帽子着用者は快適で安定した着用感が感じられる。
【0037】
一方,このような状態で長時間帽子を着用した場合、まれに累積された圧迫感で頭痛を感ずることがあるが,このような場合は、サイズ調節具(バックル)5を解除して弾性織布製サイズ調節用ベルト4を少し緩くした後,再びバックル5を固定させることにより圧迫感を回避することができる。
【0038】
他方、前述した自動調節状態で、強い風が吹くか、激しく頭部を動かす運動をして、帽子が脱げそうなときは、弾性織布製サイズ調節用ベルト4をバックル5で少し締め付けると、頭部に強く密着し脱げ落ちることが防止できるものである。
【0039】
本発明のサイズ調節可能な帽子は、帽子本体内周下縁に沿って、伸縮性のスエットバンドと形状記憶バンドとからなる複合バンドを取り付けることを特徴としており、その中で重要な特徴である形状記憶バンドについて説明する。
【0040】
《形状記憶バンド》
(1)形状記憶性
形状記憶バンドは、オレフィン系熱可塑性ポリマーを主原料とし、曲げたり、捻じったり、引っ張ったり、自由に変形させた後に開放すると、非常にゆっくりと元の形状に戻ろうとする動きをする材料である。
【0041】
(2)温度依存性
形状記憶バンドの最大の特徴は温度依存性にある。室温で形状記憶バンドに触れると、最初はやや硬い感触を得るが、その後、どんどん柔らかくなる。このような感覚を得ることができるのは、ガラス転移温度にある。形状記憶バンドのガラス転移温度は、約28℃である。すなわち、室温(約22℃)と体温(約36℃)の中間に、この形状記憶バンドのガラス転移温度が存在する。
図5の線Aは、温度(℃)を横軸とし、貯蔵弾性率(MPa)を縦軸としたときの形状記憶バンドの温度による貯蔵弾性率の推移を示し、
図5の2本の線Bは体温域を示す。形状記憶バンドを持った瞬間からどんどん柔らかく感じるのは、自分の手の体温がこの形状記憶バンドに熱を伝え、形状記憶バンドの温度が劇的に軟化するガラス転移温度を超えるからである。
【0042】
図6は、形状記憶バンドの温度別の応力歪曲線を示す。40℃では、ほとんど力を付加しなくても、ゴムのように5倍近く伸びる。しかし、-10℃では、大きな力を付加してもほとんど伸びず、硬くなる。すなわち、形状記憶バンドは、人間の生活環境下である温度範囲において大きく硬さが変わるという特徴を備えている。
図6は、厚さが1.0mmで、幅が15mmで、短冊状の試験片を、チャック間距離が30mmで、引張速度が1000(%)/分の条件における引張試験結果を示す。
【0043】
以下の表1に形状記憶バンドの代表的な特性を示す。
【表1】
【符号の説明】
【0044】
1 帽子本体
2 ひさし部
3 切除部
4 サイズ調節用ベルト
5 サイズ調節具
6 複合バンド