(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置、方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20250213BHJP
G06Q 50/26 20240101ALI20250213BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2024224608
(22)【出願日】2024-12-20
【審査請求日】2024-12-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722012800
【氏名又は名称】株式会社Archeda
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】津村 洸匡
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴之
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-174067(JP,A)
【文献】特開2024-48398(JP,A)
【文献】特開2023-164280(JP,A)
【文献】特開2024-114671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記プロセッサに、
水田の住所を示す住所情報を取得して、推定対象となる対象水田を特定するステップと、
前記対象水田の衛星画像、及び前記対象水田の水位を示す水位情報を、所定の期間において所定のタイミングが到来する度に取得するステップと、
取得した複数の前記衛星画像のそれぞれについて、前記衛星画像を構成する複数の画像セル毎に、当該画像セル及び前記水位情報に基づき、前記対象水田における前記画像セルに対応する区画の湛水状態を示す第1指標を算出するステップと、
取得した複数の前記衛星画像のそれぞれについて、算出した前記第1指標を前記対象水田の単位で統計値をとることにより、当該統計値を前記対象水田の湛水状態を示す第2指標として算出するステップと、
取得した複数の前記衛星画像毎に算出された前記第2指標の時系列的な変化に基づき、前記所定の期間における前記対象水田の非湛水期間を推定するステップと
を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記衛星画像は、SAR画像である請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記第1指標を算出するための前処理として、取得した複数の前記SAR画像のそれぞれについて、前記対象水田の地形の影響を補正するステップを前記プロセッサに更に実行させる請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記第1指標を算出するための前処理として、取得した複数の前記SAR画像のそれぞれを偏波分解し、当該SAR画像に前記対象水田の散乱特性の推定結果を反映させるステップを前記プロセッサに更に実行させる請求項2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記第1指標を算出するステップでは、前記画像セル及び前記水位情報を学習済みの機械学習モデルに入力して、当該機械学習モデルから前記第1指標を出力させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記非湛水期間の推定結果に基づいて、カーボンクレジットの発行を申請するための書類を作成するステップを前記プロセッサに更に実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記非湛水期間は、中干し期間であり、
前記作成するステップは、
ユーザが申告した前記中干し期間に関する申告情報を取得するステップと、
取得した前記申告情報及び前記第2指標の時系列的な変化に基づいて、前記申告情報の信頼性の程度を検証するステップと
を含む請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
制御部と、記憶部とを備える情報処理装置であって、前記制御部が、請求項1から請求項7の何れかに記載のプログラムにおける全てのステップを実行する情報処理装置。
【請求項9】
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行される方法であって、前記プロセッサが、請求項1から請求項7の何れかに記載のプログラムにおける全てのステップを実行する方法。
【請求項10】
請求項1から請求項7の何れかに記載のプログラムにおける全てのステップを実行する手段を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、情報処理装置、方法、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンクレジットを創出する目的で、温室効果ガス排出量を推定する技術の研究開発が活発化している。
【0003】
例えば、特許文献1には、水田の衛星データに基づき、水田に含まれる複数の水管理区画それぞれの1日毎の水指数を算出し、衛星データと算出した水指数とに基づき、複数の水管理区画それぞれの1日毎のステータスを分類する技術が開示されている。また、特許文献1に開示された技術は、分類したステータスを利用して非湛水期間を推定する。更に、特許文献1に開示された技術は、水位の測定結果を教師データとして学習された衛星データに基づいて日毎の水位を推定し、当該日毎の水位に基づいて日毎の温室効果ガス排出量を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術は、非湛水期間の推定結果と、日毎の温室効果ガス排出量の推定結果とに基づいて、全体の温室効果ガス排出量を推定する。しかしながら、特許文献1に開示された技術は、全体の温室効果ガス排出量を推定するための前提となる非湛水期間の推定精度に改善の余地があった。
【0006】
本開示の目的は、非湛水期間の推定精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るプログラムは、プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムである。プログラムは、プロセッサに、水田の住所を示す住所情報を取得して、推定対象となる対象水田を特定するステップと、対象水田の衛星画像、及び対象水田の水位を示す水位情報を、所定の期間において所定のタイミングが到来する度に取得するステップと、取得した複数の衛星画像のそれぞれについて、衛星画像を構成する複数の画像セル毎に、当該画像セル及び水位情報に基づき、対象水田における画像セルに対応する区画の湛水状態を示す第1指標を算出するステップと、取得した複数の衛星画像のそれぞれについて、算出した第1指標を対象水田の単位で統計値をとることにより、当該統計値を対象水田の湛水状態を示す第2指標として算出するステップと、取得した複数の衛星画像毎に算出された第2指標の時系列的な変化に基づき、所定の期間における対象水田の非湛水期間を推定するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、非湛水期間の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】システム1の全体構成の例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す端末装置10の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示すサーバ20の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図3に示すポリゴンテーブル2021のデータ構造を示す図である。
【
図5】中干し期間を推定するときにおける、サーバ20の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】ユーザに申請書類を提示したときにおける、ディスプレイ141の画面例を示す模式図である。
【
図7】ユーザに申請書類を提示したときにおける、ディスプレイ141の他の画面例を示す模式図である。
【
図8】コンピュータ90の基本的なハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。なお、以下の実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素の全てが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0011】
〔1 概要〕
本実施形態に係るシステムは、水田の住所情報を取得して対象水田を特定する。本実施形態に係るシステムは、対象水田のSAR画像及び対象水田の水位情報を、所定の期間において所定のタイミングが到来する度に取得する。本実施形態に係るシステムは、取得した複数のSAR画像のそれぞれについて、SAR画像を構成する複数の画像セル毎に、当該画像セル及び水位情報を学習済みの機械学習モデルに入力し、機械学習モデルから第1指標を出力させる。本実施形態に係るシステムは、取得した複数のSAR画像のそれぞれについて、算出した第1指標を対象水田の単位で統計値をとることにより、当該統計値を第2指標として算出する。本実施形態に係るシステムは、取得した複数のSAR画像毎に算出された第2指標の時系列的な変化に基づき、所定の期間における対象水田の非湛水期間を推定する。
【0012】
〔2 システムの全体構成〕
図1は、システム1の全体構成の例を示すブロック図である。システム1は、対象水田の中干し期間を推定するサービス(以下、推定サービス)を提供するためのシステムである。対象水田は、システム1の推定対象となる水田である。
【0013】
なお、本実施形態では、システム1が中干し期間を推定する例について説明するが、システム1が推定するのは中干し期間に限定されない。システム1は、例えば、植え付け後の非湛水期間、収穫前の非湛水期間、施肥後の非湛水期間、病害虫防除後の非湛水期間等を推定してもよい。つまり、システム1は、対象水田の非湛水期間を推定するものであればよい。
【0014】
図1に示すシステム1は、例えば、端末装置10、サーバ20、AIシステム30、及び人工衛星40を含む。端末装置10、サーバ20、及びAIシステム30は、例えば、ネットワーク80を介して通信接続する。人工衛星40は、例えば、各種の衛星データを不図示の地上局へ送信する。地上局は、ネットワーク80と通信接続されており、例えば、サーバ20からの送信要求を受け付けて、衛星データをネットワーク80を介してサーバ20へ送信する。
【0015】
図1において、システム1が端末装置10を1台含む例を示しているが、例えば、システム1が端末装置10を2台以上含んでいてもよい。
図1において、システム1がサーバ20を1台含む例を示しているが、例えば複数の装置の集合体を1つのサーバ20としてもよい。サーバ20を実現するために要する複数の機能を1又は複数のハードウェアに配分する仕方は、各ハードウェアの処理能力及び/又はサーバ20に求められる仕様等に応じて適宜決定できる。
【0016】
図1において、システム1が1つのAIシステム30を含む例を示しているが、システム1に含まれるAIシステム30は、2つ以上であってもよい。また、
図1において、AIシステム30がサーバ20から独立している例を示しているが、サーバ20は、AIシステム30の機能を含んでいてもよい。つまり、サーバ20は、AIシステム30に含まれる機械学習モデル(詳細は後述)を記憶していてもよい。
【0017】
端末装置10は、例えば、ユーザが操作する情報処理装置である。ユーザは、例えば、推定サービスの利用者である。推定サービスの利用者としては、例えば、中干しプロジェクトの担当者が挙げられる。
【0018】
中干しプロジェクトは、例えば、水稲の栽培期間中に対象水田の中干し期間を従来の期間よりも所定の日数延長し、土壌からのメタン排出量を抑制することで、カーボンクレジットを創出するプロジェクトである。中干しプロジェクトには、国がクレジットを認証する「J-クレジット制度」下での中干しプロジェクトをはじめ様々な種類があり、何れの種類の中干しプロジェクトもシステム1の対象となり得る。
【0019】
中干しプロジェクトの担当者は、例えば、中干しプロジェクトの管理及び運営を司ると共に、プロジェクトに参加する農家のマネージメントも行う。また、農業関連の企業の経営者、農業の専門知識を有する技術者又は研究者、農家、水管理又は環境保護の専門家等、様々なバックグラウンドを有する者が中干しプロジェクトの担当者になり得る。
【0020】
なお、推定サービスの利用者は中干しプロジェクトの担当者に限定されない。対象水田の非湛水期間の推定に関係しさえすれば、どのような者であっても推定サービスの利用者、つまりユーザになり得る。
【0021】
端末装置10は、例えば、スマートフォン、タブレット等の携帯端末により実現される。本実施形態では、端末装置10はスマートフォンであるものとする。端末装置10は、例えば、据え置き型のPC(Personal Computer)、ラップトップPC等により実現されてもよい。
【0022】
端末装置10は、通信IF(Interface)12と、入力装置13と、出力装置14と、メモリ15と、ストレージ16と、プロセッサ19とを備える。入力装置13は、ユーザからの入力操作を受け付けるための装置(例えば、タッチパネル、タッチパッド、マウス等のポインティングデバイス、キーボード等)である。出力装置14は、ユーザに対して情報を提示するための装置(ディスプレイ、スピーカー等)である。本実施形態では、端末装置10は、入力装置13と出力装置14とが一体化したタッチパネルを備えているものとする。
【0023】
サーバ20は、例えば、推定サービスを管理及び運営するための情報処理装置であり、ネットワーク80に接続されたコンピュータにより実現される情報処理装置である。
図1に示すように、サーバ20は、通信IF22と、入出力IF23と、メモリ25と、ストレージ26と、プロセッサ29とを備える。入出力IF23は、推定サービスの管理運営者からの入力操作を受け付けるための入力装置、及び、管理運営者に対して情報を出力するための出力装置のインタフェースとして機能する。
【0024】
AIシステム30は、学習済みの機械学習モデル(以下、「機械学習モデル」と略記)を含むシステムである。機械学習モデルは、例えば、決定木アルゴリズム、若しくは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Networks)又はリカレントニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Networks)等のニューラルネットワークである。また例えば、機械学習モデルは、マルチモーダル生成AIモデルである。
【0025】
AIシステム30に含まれる機械学習モデルの教師データは、例えば、対象区画の水位の実測値、対象区画の写真、又はユーザ等の人による対象区画の水位の判別結果と、SAR画像とで構成される。対象区画、及びSAR画像の詳細については後述する。
【0026】
AIシステム30に含まれる機械学習モデルは、例えば、1つであってもよいし複数であってもよい。また例えば、AIシステム30に複数の機械学習モデルが含まれている場合、同一種類の機械学習モデルであってもよいし、一方がニューラルネットワークで他方がマルチモーダル生成AIモデル等、異なる種類の機械学習モデルであってもよい。
【0027】
AIシステム30は、サーバ20から送信された画像セル及び水位情報を受信して機械学習モデルに入力し、機械学習モデルから第1指標を出力させる。画像セルは、対象水田の衛星画像(以下、「衛星画像」と略記)を構成する単位である。本実施形態では、画像セルは1つのピクセルであるものとするが、例えば、画像セルが複数のピクセルで構成されていてもよい。AIシステム30は、機械学習モデルから出力された第1指標をサーバ20へ送信する。水位情報、及び第1指標の詳細については後述する。
【0028】
人工衛星40は、衛星画像を衛星データとして取得し、地上局へ送信する。
図1において、システム1が人工衛星40を1基含む例を示しているが、例えば、システム1が人工衛星40を2基以上含んでいてもよい。2基以上含む場合、人工衛星40の種類は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0029】
本実施形態では、人工衛星40は、衛星画像としてSAR画像を取得し、地上局を介してサーバ20へ送信するものとする。SAR画像は、SAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダ)により取得された衛星画像である。つまり、本実施形態では、人工衛星40はSARを備えている。人工衛星40は、SARからマイクロ波(電磁波)を対象物に照射し、反射(後方散乱)した信号をSARが受信することにより、SAR画像を取得する。
【0030】
SAR画像は、マイクロ波(電磁波)を用いて生成されるため、悪天候又は夜間に生成されたものであっても十分使用に耐え得る。また、SAR画像は、合成開口技術に基づいて生成されるため高解像度であり、地表及び水面の詳細な情報を取得するのに有用である。
【0031】
SARから対象物に照射されるマイクロ波(電磁波)の振動特性は、単偏波、二偏波、又は四偏波の何れであってもよい。また、送信偏波と受信偏波との組み合わせについても、任意に設定することができる。
【0032】
サーバ20は、例えば、地上局からGRD(Ground Range Detected)又はSLC(Single Look Complex)のファイルフォーマットでSAR画像を取得する。但し、サーバ20は、例えば、地上局からPolarimetric SAR(PolSAR)、又はHDF5(Hierarchical Data Format version 5)のファイルフォーマットでSAR画像を取得してもよい。
【0033】
なお、人工衛星40が地上局を介してサーバ20へ送信する衛星画像は、SAR画像に限定されない。人工衛星40は、例えば、光学衛星画像(可視光画像、近赤外線画像等)、スペクトル衛星画像、又は地形衛星画像(DEM:Digital Elevation Model)等を送信してもよい。
【0034】
端末装置10、サーバ20、及びAIシステム30等の各情報処理装置は、演算装置と記憶装置とを備えたコンピュータ90(
図8参照)により構成される。コンピュータ90の基本ハードウェア構成、及び当該基本ハードウェア構成により実現されるコンピュータ90の基本機能構成のそれぞれについては後述する。なお、端末装置10、サーバ20、及びAIシステム30のそれぞれについて、コンピュータ90の基本ハードウェア構成及びコンピュータの基本機能構成と重複する説明は省略する。
【0035】
<2.1 端末装置の構成>
図2は、
図1に示す端末装置10の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、端末装置10は、通信部120と、入力装置13と、出力装置14と、音声処理部170と、マイク171と、スピーカー172と、カメラ160と、位置情報センサ150と、加速度センサ155と、記憶部180と、制御部190とを備える。端末装置10に含まれる各ブロックは、例えば、バス等により電気的に接続される。
【0036】
通信部120は、端末装置10が外部装置(例えば、サーバ20)との間で通信するための変復調処理等の処理を行う。通信部120は、制御部190で生成された信号に対して送信処理を施し、外部装置へ送信する。通信部120は、外部装置から受信した信号に受信処理を施し、制御部190へ出力する。
【0037】
入力装置13は、ユーザが指示又は情報を入力するための装置である。入力装置13は、例えば、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチ・センシティブ・デバイス131により実現される。端末装置10がPC等である場合には、入力装置13は、リーダー、キーボード、マウス等により実現されてもよい。入力装置13は、ユーザにより入力される指示を電気信号に変換し、制御部190へ出力する。なお、入力装置13には、例えば、外部の入力機器から入力される電気信号を受け付ける受信ポートが含まれてもよい。
【0038】
出力装置14は、ユーザに情報を提示するための装置である。出力装置14は、例えば、ディスプレイ141により実現される。ディスプレイ141は、制御部190の制御に応じて各種情報を表示する。ディスプレイ141は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイにより実現される。
【0039】
音声処理部170は、例えば、音声信号のデジタル-アナログ変換処理を行う。音声処理部170は、マイク171から与えられる信号をデジタル信号に変換して、変換後の信号を制御部190へ与える。また、音声処理部170は、音声信号をスピーカー172へ与える。音声処理部170は、例えば音声処理用のプロセッサによって実現される。マイク171は、音声入力を受け付けて、当該音声入力に対応する音声信号を音声処理部170へ与える。スピーカー172は、音声処理部170から与えられる音声信号を音声に変換して当該音声を端末装置10の外部へ出力する。
【0040】
カメラ160は、可視光による画像を撮影する撮像装置である。つまり、カメラ160は、受光素子により可視光を受光し、撮影信号としての画像データを出力するためのデバイスである。カメラ160は、端末装置10に対して一定方向及び一定の撮影範囲にある被写体を撮影し、撮影結果としての画像データを出力する。カメラ160が撮影範囲、より正確には画角が調整可能な機能を有する場合、カメラ160は、この画角に関する情報も出力する。このような機能は、いわゆるズーム機能と呼ばれている。
【0041】
位置情報センサ150は、端末装置10の位置を検出するセンサであり、一般的にはGNSS機器であり、例えばGPSモジュールである。GPSモジュールは、衛星測位システムで用いられる受信装置である。衛星測位システムでは、少なくとも3個又は4個の衛星からの信号を受信し、受信した信号に基づいて、GPSモジュールが搭載される端末装置10の現在位置を座標値で検出する。位置情報センサ150は、端末装置10が通信部120を介して接続する無線基地局の位置から、端末装置10の現在の位置を検出してもよい。
【0042】
加速度センサ155は、端末装置10に与えられている加速度を検出するセンサである。好ましくは、加速度センサ155は、端末装置10の位置を原点とする3次元座標の各軸(X軸、Y軸、Z軸)周りの傾きを検出する機能を有する。このような機能を有する加速度センサ155は、地球に対する万有引力の重力加速度を検出することで、端末装置10の姿勢、つまりX軸、Y軸、Z軸に対する方向を検出することができる。
【0043】
記憶部180は、
図1に示すメモリ15及びストレージ16により実現され、端末装置10が使用するデータ及びプログラムを記憶する。プログラムは、ウェブブラウザアプリケーション等のアプリケーションプログラムを含む。
【0044】
制御部190は、例えば、プロセッサ19が記憶部180に記憶されたプログラムを読み込み、当該プログラムに含まれる命令を実行することにより実現される。制御部190は、端末装置10の動作を制御する。制御部190は、読み込んだプログラムに従って動作することにより、操作受付部191、送受信部192及び提示制御部193としての各機能を発揮する。
【0045】
操作受付部191は、入力装置13から入力される指示又は情報を受け付けるための処理を行う。具体的には、操作受付部191は、タッチ・センシティブ・デバイス131から入力される指示又は情報を受け付ける。送受信部192は、端末装置10が、外部装置との間で、通信プロトコルに従ってデータを送受信するための処理を行う。具体的には、送受信部192は、ユーザから入力された指示又は情報をサーバ20へ送信する。送受信部192は、サーバ20から送信された情報を受信する。提示制御部193は、各種情報をユーザに提示するために出力装置14を制御する。
【0046】
<2.2 サーバの構成>
図3は、
図1に示すサーバ20の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、サーバ20は、通信部201、記憶部202及び制御部203としての各機能を発揮する。
【0047】
通信部201は、サーバ20が外部装置(例えば、端末装置10)との間で通信するための処理を行う。記憶部202は、メモリ25及びストレージ26により実現され、サーバ20が使用するデータ及びプログラムを記憶する。プログラムは、ウェブブラウザアプリケーション等のアプリケーションプログラムを含む。記憶部202は、例えば、ポリゴンテーブル2021、及びアプリ2022を記憶する。
【0048】
ポリゴンテーブル2021は、ポリゴン情報を記憶するテーブルである。ポリゴン情報は、対象水田に関する情報であり、少なくとも住所情報を含んでいる。ポリゴン情報の詳細については後述する。
【0049】
住所情報は、対象水田の住所を示す情報である。住所情報が示す対象水田の住所は、例えば、ユーザから申告された住所であり、登記簿に登録された登録住所と一致しない場合がある。また、住所情報が示す対象水田の住所も、登記簿に登録された対象水田の登録住所も、共に、対象水田が複数の住所を有する場合もあれば、対象水田と当該対象水田に隣接する1つ以上の水田とが同一の住所を有する場合もある。
【0050】
アプリ2022は、ユーザによる推定サービスの利用を管理するためのアプリケーションである。アプリ2022は、例えば、サーバ20にインストールされている他のアプリケーションのバックグランドで実行され、ユーザにより実行される処理を監視する。ユーザは、端末装置10にインストールされているウェブブラウザアプリケーションを利用して、サーバ20内のアプリ2022にアクセスすることができる。
【0051】
なお、サーバ20は、例えば、アプリ2022の利用状況を把握/管理して所定の分析処理を実行してもよい。また例えば、アプリ2022は、端末装置10にインストールされて記憶部180に記憶されてもよい。
【0052】
制御部203は、プロセッサ29が記憶部202に記憶されたプログラムを読み込み、当該プログラムに含まれる命令を実行することにより実現される。制御部203は、サーバ20の動作を制御する。制御部203は、読み込んだプログラムに従って動作することにより、受信制御モジュール2031、送信制御モジュール2032、提示制御モジュール2033、及び推定処理モジュール2034としての各機能を発揮する。
【0053】
受信制御モジュール2031は、サーバ20が外部装置から通信プロトコルに従って信号を受信する処理を制御する。受信制御モジュール2031は、例えば、端末装置10から送信された住所情報を受信する。また例えば、受信制御モジュール2031は、人工衛星40から地上局を介して送信されたSAR画像、及び水位情報を、所定の期間において所定のタイミングが到来する度に受信する。
【0054】
水位情報は、対象水田の水位を示す情報であり、落水(水位がゼロ)を含む概念である。水位情報において、水位の高低の基準(水位0)は、例えば地表面である。水位情報は、例えば、対象水田に設置された水位計、ウォーターチューブ、又は水位センサ(共に不図示)により、所定の期間継続して測定される。
【0055】
水位情報は、例えば、水位計又はウォーターチューブの表示を確認したユーザ等により、表示の確認結果として端末装置10に一旦記憶されてもよい。そして、例えば、サーバ20からの送信要求を受け付けた端末装置10が、水位情報をサーバ20へ送信してもよい。また例えば、水位情報は、サーバ20からの送信要求を受け付けた水位センサによって、端末装置10を介してサーバ20へ送信されてもよいし、サーバ20へ直接送信されてもよい。
【0056】
所定の期間は、対象水田の非湛水期間を推定するために設定される期間であり、非湛水期間の推定が可能な程度の長さであればどのような期間であってもよい。本実施形態では、一例として、所定の期間が対象水田の中干し期間を推定するために設定される期間であるものとする。例えば、ユーザが「J-クレジット制度」の利用によるクレジット適用の認証を受ける場合であれば、対象水田における中干しプロジェクト実施前の直近2か年以上の中干し実施日数の平均よりも7日間以上延長した期間(認証を受けるのに必要な中干し期間)を所定の期間としてもよい。以下、所定の期間を「推定実施期間」と称する。
【0057】
所定のタイミングは、推定実施期間において、対象水田の非湛水期間を推定するために必要な数のSAR画像及び水位情報をサーバ20が取得できるタイミングであれば、どのようなタイミングであってもよい。本実施形態では、一例として、所定のタイミングは、推定実施期間において、対象水田の中干し期間を推定するために必要な数のSAR画像及び水位情報をサーバ20が取得できるタイミングであるものとする。所定のタイミングは、例えば、一定の周期であってもよい。また、SAR画像が取得される所定のタイミングと水位情報が取得される所定のタイミングとは、原則として同期しているが、同期していることが必要というわけでは必ずしもない。以下、所定のタイミングを「取得タイミング」と称する。
【0058】
推定実施期間及び取得タイミングは、例えば、アプリ2022に予めハードコーディングされていてもよい。また例えば、推定実施期間及び取得タイミングは、サーバ20が推定実施期間及び取得タイミングの設定操作を受け付けることにより、アプリ2022のプログラムコードが編集されて設定されてもよい。
【0059】
送信制御モジュール2032は、サーバ20が外部装置へ通信プロトコルに従って信号を送信する処理を制御する。提示制御モジュール2033は、各種情報をユーザに提示する処理を制御する。
【0060】
推定処理モジュール2034は、受信制御モジュール2031が受信した複数のSAR画像のそれぞれについて、SAR画像を構成する複数の画像セル毎に、当該画像セル及び水位情報に基づいて第1指標を算出する。第1指標は、対象水田における画像セルに対応する区画の湛水状態を示す指標である。以下、画像セルに対応する区画を「対象区画」と称する。
【0061】
本実施形態では、第1指標は、対象区画の湛水確度である。湛水確度は、対象区画にどの程度の水分が含まれているかを示す比率である。例えば、対象区画が落水している場合、湛水確度は「0」となる。なお、第1指標として、湛水確度以外の指標が用いられてもよい。例えば、湛水されている状態(湛水の程度に拘わらない)を「0」で表し、非湛水の状態を「1」で表すような離散的な指標を第1指標としてもよい。このことは、後述する第2指標についても同様である。
【0062】
推定処理モジュール2034は、例えば、受信制御モジュール2031がSAR画像及び水位情報を受信する度に第1指標を算出してもよい。また例えば、推定処理モジュール2034は、受信制御モジュール2031が推定実施期間中に受信できるSAR画像及び水位情報の全てを一旦受信した後、第1指標を一括して算出してもよい。
【0063】
本実施形態では、推定処理モジュール2034は、画像セル及び水位情報をAIシステム30に含まれる機械学習モデルに入力して、当該機械学習モデルから第1指標を出力させるものとする。機械学習モデルがマルチモーダル生成AIモデルの場合、第1指標の出力を指示するプロンプトも機械学習モデルに入力される。プロンプトは、例えば、AIシステム30に記憶されたプログラムにハードコーディングされていてもよい。また例えば、サーバ20に備えられた不図示の入力装置がプロンプトの入力操作を受け付けて、サーバ20がAIシステム30へプロンプトを送信してもよい。或いは、記憶部202又はAIシステム30にプロンプトが予め記憶されていてもよい。
【0064】
なお、推定処理モジュール2034は、例えば、機械学習モデルに代えてルールベースの処理で第1指標を算出してもよい。具体的には、例えば、推定処理モジュール2034は、SAR画像及び水位情報を公知の解析手法で解析することにより、対象水田に存在する稲の品種、対象水田における稲の密度等を加味して、対象水田に張られた水の水量を算出する。推定処理モジュール2034は、例えば、予め記憶部202に記憶されている対象水田の最大保持水分量(飽和水分量)を記憶部202から読み出し、前述した水量の算出値を最大保持水分量で割って百分率(%)で示した数値を、第1指標(対象水田の湛水確度)としてもよい。対象水田の最大保持水分量は、例えば、ユーザによって事前に測定された実測値を端末装置10がサーバ20へ送信することにより、サーバ20が取得してもよい。
【0065】
推定処理モジュール2034は、受信制御モジュール2031が受信した複数のSAR画像のそれぞれについて、算出した第1指標を対象水田の単位で統計値をとることにより、当該統計値を第2指標として算出する。第2指標は、対象水田の湛水状態を示す指標であり、第1指標と同一種類の指標となる。本実施形態では、第2指標は、対象区画の湛水確度について、対象水田の単位で統計をとった統計値となる。統計値の種類に特段の限定はなく、平均値、中央値、又は最頻値の何れでもよい。
【0066】
推定処理モジュール2034は、受信制御モジュール2031が受信した複数のSAR画像毎に算出された第2指標の時系列的な変化に基づき、推定実施期間における対象水田の非湛水期間を推定する。本実施形態では、一例として、推定処理モジュール2034は、推定実施期間における対象水田の中干し期間を推定するものとする。
【0067】
推定処理モジュール2034による対象水田の中干し期間の推定方法に特段の限定はない。本実施形態では、推定処理モジュール2034は、例えば、算出した第2指標の全てを取得タイミングの順番に従って基準値と順次対比し、基準値以下となる第2指標が所定数連続して存在した場合に、これらの第2指標が存在する期間を中干し期間と推定する。この推定処理において、基準値及び所定数は、対象水田の特徴、どの程度の推定精度が求められるか等に応じて任意に設定することができる。
【0068】
本実施形態では、推定処理モジュール2034は、第1指標を算出するための前処理をSAR画像に施すものとする。推定処理モジュール2034は、例えば、第1指標を算出するための前処理として、受信制御モジュール2031が受信した複数のSAR画像のそれぞれについて、対象水田の地形の影響を補正する(以下、補正処理)。また例えば、推定処理モジュール2034は、第1指標を算出するための前処理として、受信制御モジュール2031が受信した複数のSAR画像のそれぞれを偏波分解し、当該SAR画像に対象水田の散乱特性の推定結果を反映させる(以下、偏波分解処理)。
【0069】
具体的には、例えば、推定処理モジュール2034は、補正処理として、ジオメトリ補正、対象水田の数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)を用いた視線補正又は高度補正、アンビエント補正、ラディオメトリック補正、若しくはこれらの少なくとも2つ以上の組み合わせ等をSAR画像に対して行う。
【0070】
また例えば、推定処理モジュール2034は、偏波分解処理として、基底分解法、Cloude-Pottier分解、Freeman-Durden分解、又は積分変換等の偏波分解をSAR画像に施す。これにより、推定処理モジュール2034は、対象水田の散乱特性を推定する。散乱特性としては、例えば、表面散乱、2回反射、及び体積散乱等が挙げられる。表面散乱は、水面、地面、雪原等の広い平坦な地形による散乱である。2回反射は、建物、橋等の構造物による散乱である。体積散乱は、森林、農地等、散乱が内部で複数回発生する物体による散乱である。そして、推定処理モジュール2034は、SAR画像に散乱特性の推定結果を反映させて、偏波分解画像を生成する。偏波分解画像は、偏波分解による対象水田の散乱特性の推定結果が表示されたSAR画像である。偏波分解画像における推定結果の表示態様に特段の限定はない。例えば、対象水田に存在する各物体について、同一の散乱特性の物体毎に異なる色を付して表示したSAR画像を偏波分解画像としてもよい。
【0071】
本実施形態では、推定処理モジュール2034は、補正処理及び偏波分解処理の両方をSAR画像に施すものとする。具体的には、推定処理モジュール2034は、先ず、受信制御モジュール2031が受信した複数のSAR画像のそれぞれに補正処理を施し、SAR画像における対象区画の地形の影響を低減させる。次に、推定処理モジュール2034は、補正処理後のSAR画像に偏波分解処理を施して偏波分解画像を生成する。そして、推定処理モジュール2034は、生成した偏波分解画像と水位情報とに基づいて第1指標を算出する。
【0072】
以上のように、第1指標を算出するための前処理として補正処理及び偏波分解処理をSAR画像に施すことで、第1指標が示す対象区画の湛水状態の推定精度が向上する。ひいては、第2指標が示す対象水田の湛水状態の推定精度が向上し、非湛水期間の推定精度がより向上する。
【0073】
なお、推定処理モジュール2034がSAR画像に対して前述した2つの前処理を施すことは必須ではない。推定処理モジュール2034は、例えば、SAR画像に対して補正処理又は偏波分解処理の何れか一方のみを施してもよい。また例えば、推定処理モジュール2034は、SAR画像に対して何ら前処理を施すことなく、受信制御モジュール2031が受信したSAR画像を機械学習モデルに直接入力してもよい。
【0074】
〔3 データ構造〕
図4は、サーバ20が記憶するテーブルのデータ構造を示す図である。なお、
図4はあくまで一例であり、記載されていないデータを除外するものではない。また、同一のテーブルに記載されるデータであっても、記憶部202において離れた記憶領域に記憶されていることもあり得る。
【0075】
図4は、ポリゴンテーブル2021のデータ構造を示す図である。
図4に示すポリゴンテーブル2021は、ポリゴンIDをキーとして、登録住所情報、プロジェクト情報、画像情報、水位情報、及び推定結果の各カラムを有するテーブルである。
【0076】
項目「ポリゴンID」は、対象水田を一意に識別するための識別子を記憶する項目である。項目「登録住所情報」は、登録住所情報を記憶する項目である。登録住所情報の詳細については後述する。項目「プロジェクト情報」は、中干しプロジェクトに関する各種情報を記憶する項目である。中干しプロジェクトに関する各種情報としては、例えば、プロジェクトの実施主体、参加主体、目的、実施内容の概要、及び実施期間T9王が挙げられる。項目「画像情報」は、SAR画像に関する各種情報を記憶する項目である。SAR画像に関する各種情報の内容に特段の限定はない。本実施形態では、偏波分解画像に表示された各散乱特性を数値化したものが項目「画像情報」に記憶される。散乱特性を数値化したもの(以下、「散乱特性を示す数値」)としては、例えば、鏡面散乱係数、体積散乱係数、及び閾値散乱係数等が挙げられる。項目「水位情報」は、対象水田の水位情報を記憶する項目である。項目「推定結果」は、推定処理モジュール2034による中干し期間の推定結果(後述の推定中干し期間)を記憶する項目である。
【0077】
プロジェクト情報については、本実施形態では、ユーザの送信要求を受け付けた端末装置10がプロジェクト情報をサーバ20へ送信し、サーバ20が受信することにより、項目「プロジェクト情報」に記憶されるものとする。この場合、プロジェクト情報は、記憶部180に予め記憶されていてもよいし、ユーザの入力操作によって入力装置13に入力されてもよい。なお、プロジェクト情報は、例えば、ユーザ側のファクシミリ機から送信された書類(プロジェクト情報が記載されている)のスキャンデータを管理運営者側のファクシミリ機が受信し、サーバ20が管理運営者によるプロジェクト情報の入力操作を受け付けることにより、項目「プロジェクト情報」に記憶されてもよい。
【0078】
SAR画像に関する各種情報については、本実施形態では、推定処理モジュール2034が、取得タイミング毎に偏波分解画像を解析して散乱特性を示す数値を算出し、項目「画像情報」に記憶するものとする。
【0079】
水位情報については、本実施形態では、取得タイミング毎にサーバ20からの送信要求を受け付けた端末装置10が水位情報をサーバ20へ送信し、サーバ20が受信することにより、項目「水位情報」に記憶されるものとする。この場合、推定実施期間中の全ての水位情報が、記憶部180に予め記憶されていてもよいし、ユーザの入力操作によって入力装置13に入力されてもよい。なお、例えば、取得タイミング毎にサーバ20からの送信要求を受け付けた水位センサが水位情報をサーバ20へ送信し、サーバ20が受信することにより、水位情報が項目「水位情報」に記憶されてもよい。
【0080】
〔4 動作〕
中干し期間を推定するときにおける、サーバ20の動作例について説明する。
図5は、中干し期間を推定するときにおける、サーバ20の動作例を示すフローチャートである。なお、
図5に示すサーバ20の動作例は、中干し期間の推定に限らず非湛水期間の推定全般に該当する。
【0081】
図5に示すステップS11において、サーバ20は、住所情報を取得して対象水田を特定する(特定するステップ)。
【0082】
具体的には、例えば、操作受付部191は、ユーザによる住所情報の送信要求を受け付ける。送受信部192は、例えば、記憶部180から住所情報を読み出してサーバ20へ送信する。受信制御モジュール2031は、例えば、端末装置10から送信された住所情報を受信する。これにより、サーバ20は住所情報を取得する。
【0083】
受信制御モジュール2031は、例えば、端末装置10から受信した住所情報と、EMAFF(農林水産省共通申請サービス)等の公的データベースに記憶された登録住所情報とを照合する。登録住所情報は、登記簿に登録された水田の登録住所を示す情報である。なお、この照合処理に公的データベースを用いることは必須ではない。登録住所情報が記憶されていれば、どのようなデータベースであってもこの照合処理に用いることができる。
【0084】
本実施形態では、受信制御モジュール2031は、住所情報と登録住所とを照合する前に、住所情報をプロンプト(対象水田の住所の表記ゆれの修正を指示する指示文)と共に不図示の生成AIモデルに入力し、当該生成AIモデルから表記ゆれが修正された住所情報を出力させる。生成AIモデルは、例えば、LLM(Large language Models:大規模言語モデル)であり、プロンプトと共に記憶部202又はAIシステム30に記憶されている。
【0085】
このような表記ゆれの修正を行うことにより、サーバ20は、対象水田の特定を迅速且つ精度高く行うことができる。なお、生成AIモデルを用いた表記ゆれの修正は必須ではない。
【0086】
受信制御モジュール2031は、例えば、表記ゆれが修正された住所情報と内容が一致する登録住所情報を特定する。受信制御モジュール2031は、例えば、特定した登録住所情報に対応する水田を、対象水田として特定する。受信制御モジュール2031は、例えば、特定した登録住所情報をポリゴンテーブル2021の項目「登録住所情報」に記憶する。
【0087】
なお、
図5の例では、サーバ20がステップS11の処理とステップS12の処理とを連続して実行しているが、この場合に限定されない。例えば、サーバ20は、ステップS11の処理とステップS12以降の各処理とを分けて実行してもよい。なぜなら、基本的に、ステップS11の処理は推定実施期間の前に実行され、ステップS12以降の処理は推定実施期間の開始後に実行されるためである。
【0088】
ステップS12において、サーバ20は、SAR画像及び水位情報を、推定実施期間において取得タイミングが到来する度に取得する(衛星画像及び水位情報を取得するステップ)。
【0089】
具体的には、例えば、送信制御モジュール2032は、取得タイミングが到来する度に、SAR画像の送信要求を示す送信要求情報を地上局へ送信する。受信制御モジュール2031は、例えば、取得タイミングが到来する度に、送信要求を受け付けた地上局からSAR画像を受信する。これにより、サーバ20は、取得タイミングが到来する度にSAR画像を取得する。
【0090】
送信制御モジュール2032は、例えば、取得タイミングが到来する度に、水位情報の送信要求を示す送信要求情報を端末装置10へ送信する。受信制御モジュール2031は、例えば、取得タイミングが到来する度に、送信要求を受け付けた端末装置10から水位情報を受信する。これにより、サーバ20は、取得タイミングが到来する度に水位情報を取得する。
【0091】
なお、
図5の例では、サーバ20がステップS12の処理とステップS13の処理とを連続して実行しているが、この場合に限定されない。例えば、サーバ20は、ステップS12の処理とステップS13以降の各処理とを分けて実行してもよい。なぜなら、基本的に、ステップS12の処理は推定実施期間中に実行され、ステップS13以降の処理は推定実施期間の終了後に実行されるためである。
【0092】
ステップS13において、サーバ20は、取得した複数のSAR画像のそれぞれについて、当該SAR画像を構成する複数の画像セル毎に、当該画像セル及び水位情報に基づき第1指標を算出する(第1指標を算出するステップ)。
【0093】
具体的には、例えば、推定処理モジュール2034は、第1指標を算出する前に、受信制御モジュール2031が推定実施期間中に受信した複数のSAR画像のそれぞれに対して、補正処理及び偏波分解処理を施す。即ち、推定処理モジュール2034は、SAR画像に先ず補正処理を施し、補正処理後のSAR画像に偏波分解処理を施して偏波分解画像を生成する。
【0094】
推定処理モジュール2034は、例えば、ポリゴンテーブル2021から推定実施期間中の全ての水位情報を読み出す。推定処理モジュール2034は、例えば、生成した複数の偏波分解画像と、当該複数の偏波分解画像のそれぞれと取得タイミングが同一の水位情報とをAIシステム30へ送信する。
【0095】
AIシステム30は、例えば、サーバ20から受信した複数の偏波分解画像のそれぞれについて、当該偏波分解画像を構成する複数の画像セル毎に、当該画像セルと、サーバ20から受信した水位情報とを機械学習モデルに入力する。AIシステム30は、例えば、サーバ20から受信した複数の偏波分解画像のそれぞれについて、機械学習モデルから複数の画像セルのそれぞれに対応する第1指標を出力させる。AIシステム30は、例えば、機械学習モデルから出力された第1指標の全てをサーバ20へ送信する。
【0096】
受信制御モジュール2031は、例えば、AIシステム30から送信された第1指標を受信する。これにより、サーバ20は、取得した複数のSAR画像のそれぞれについて、当該SAR画像を構成する複数の画像セル毎に第1指標を算出する。
【0097】
ステップS14において、サーバ20は、取得した複数のSAR画像のそれぞれについて、算出した第1指標を対象水田の単位で統計値をとることにより、当該統計値を第2指標として算出する(第2指標を算出するステップ)。
【0098】
具体的には、例えば、推定処理モジュール2034は、受信制御モジュール2031が受信した第1指標について、SAR画像を構成する複数の画像セルのそれぞれに対応する第1指標の統計値をとることにより、当該統計値を第2指標として算出する。推定処理モジュール2034は、例えば、この算出処理を、推定実施期間中に取得した全てのSAR画像に対して行う。
【0099】
ステップS15において、サーバ20は、取得した複数のSAR画像毎に算出された第2指標の時系列的な変化に基づき、推定実施期間における対象水田の中干し期間を推定する(推定するステップ)。
【0100】
具体的には、例えば、推定処理モジュール2034は、記憶部202から基準値を示す情報を読み出し、算出した第2指標の全てを取得タイミングに従って基準値と順次対比する。基準値を示す情報は、例えば、記憶部202に予め記憶されていてもよいし、管理運営者の入力操作を受け付けてサーバ20に入力されることにより、記憶部202に記憶されてもよい。また例えば、基準値は、アプリ2022にハードコーディングされていてもよい。推定処理モジュール2034は、例えば、基準値以下となる第2指標が所定数連続して存在した場合に、これらの第2指標が存在する期間を中干し期間と推定する。所定数は、例えば、アプリ2022にハードコーディングされている。
【0101】
ステップS16において、サーバ20は、非湛水期間の推定結果をユーザ及び管理運営者の少なくとも一方に提示する。具体的には、例えば、提示制御モジュール2033は、推定処理モジュール2034により推定された中干し期間(以下、「推定中干し期間」)をユーザ又は管理運営者の少なくとも一方に提示する。
【0102】
推定中干し期間をユーザに提示する場合、送信制御モジュール2032は、例えば、推定中干し期間を表示するための情報を端末装置10へ送信する。送受信部192は、例えば、推定中干し期間を表示するための情報をサーバ20から受信する。提示制御部193は、例えば、ユーザからの提示要求を受信すると、ディスプレイ141に推定中干し期間を表示させる。
【0103】
推定中干し期間を管理運営者に提示する場合、提示制御モジュール2033は、例えば、管理運営者からの提示要求を受信すると、サーバ20に備えられた出力装置のディスプレイ(不図示)に推定中干し期間を表示させる。
【0104】
なお、出力装置14及びサーバ20の出力装置がプリンタの場合、提示制御モジュール2033は、例えば、推定中干し期間が印字された紙媒体を出力装置14及びサーバ20の出力装置からブリントアウトさせてもよい。また、提示制御モジュール2033が推定中干し期間をユーザ及び管理運営者の少なくとも一方に提示することは、必須ではない。
【0105】
〔5 小括〕
以上のように、本実施形態では、端末装置10は、ユーザによる住所情報の送信要求を受け付けて、住所情報をサーバ20へ送信する。受信制御モジュール2031は、端末装置10から受信した住所情報を公的データベースに記憶された登録住所情報と照合して、住所情報と内容が一致する登録住所情報を特定する。受信制御モジュール2031は、特定した登録住所情報に対応する水田を、対象水田として特定する。
【0106】
受信制御モジュール2031は、取得タイミングが到来する度に、送信制御モジュール2032からの送信要求を受け付けた地上局からSAR画像を受信する。受信制御モジュール2031は、取得タイミングが到来する度に、送信制御モジュール2032からの送信要求を受け付けた端末装置10から水位情報を受信する。推定処理モジュール2034は、第1指標を算出する前に、受信制御モジュール2031が推定実施期間中に受信した複数のSAR画像のそれぞれに対して、先ず補正処理を施し、補正処理後のSAR画像に偏波分解処理を施して偏波分解画像を生成する。
【0107】
推定処理モジュール2034は、例えば、生成した複数の偏波分解画像と、当該複数の偏波分解画像のそれぞれと取得タイミングが同一の水位情報とをAIシステム30へ送信する。AIシステム30は、サーバ20から受信した複数の偏波分解画像のそれぞれについて、当該偏波分解画像を構成する複数の画像セル毎に、当該画像セルと、サーバ20から受信した水位情報とを機械学習モデルに入力する。AIシステム30は、機械学習モデルから複数の画像セルのそれぞれに対応する第1指標を出力させて、サーバ20へ送信する。
【0108】
推定処理モジュール2034は、受信制御モジュール2031が受信した第1指標について、SAR画像を構成する複数の画像セルのそれぞれに対応する第1指標の統計値をとることにより、当該統計値を第2指標として算出する。推定処理モジュール2034は、算出した第2指標の全てを取得タイミングに従って基準値と順次対比する。推定処理モジュール2034は、基準値以下となる第2指標が所定数連続して存在した場合に、これらの第2指標が存在する期間を中干し期間と推定する。
【0109】
これにより、サーバ20は、対象水田を構成する各対象区画の湛水状態を推定した第1指標を用いて、対象水田全体の湛水状態を第2指標として推定することができる。そのため、サーバ20は、対象水田全体の湛水状態を第1指標を用いずに直接推定する場合に比べて、対象水田の各領域の細かな特徴をより加味して推定することができる。よって、サーバ20によれば、非湛水期間の推定精度を向上させることができる。
【0110】
〔6 変形例〕
本実施形態では、推定中干し期間の活用例として、サーバ20が推定中干し期間を提示する例を取り上げた。しかしながら、サーバ20は、推定中干し期間の提示以外にも様々な活用例を採用し得る。つまり、システム1は、推定サービスにおいて、推定中干し期間の提示以外にも様々な活用サービスを提供し得る。
【0111】
以下、システム1が提供し得る活用サービスの一例として、カーボンクレジットの発行を申請するための書類(以下、「申請書類」)を作成する例を取り上げて説明する。即ち、サーバ20は、例えば、推定中干し期間に基づいて申請書類を作成してもよい。
【0112】
先ず、サーバ20は、例えば、ユーザが申告した中干し期間に関する申告情報を取得してもよい(申告情報を取得するステップ)。申告情報は、例えば、ユーザが申告した中干し期間を証明するための情報を含んでいてもよい。ユーザが申告した中干し期間を証明するための情報としては、例えば、推定実施期間中に湛水、排水等を行った日付が記録されたログブック(日誌)のスキャンデータ等が挙げられる。ログブックは、例えば、対象水田を所有する農家自身が作成してもよい。ユーザは、例えば、農家からのログブックの提供を受けて、ログブックをスキャンした申告情報を端末装置10に予め記憶しておいてもよい。
【0113】
具体的には、例えば、操作受付部191は、ユーザによる申告情報の送信要求を受け付けてもよい。送受信部192は、例えば、記憶部180から申告情報を読み出してサーバ20へ送信してもよい。受信制御モジュール2031は、例えば、端末装置10から送信された申告情報を受信してもよい。これにより、サーバ20は申告情報を取得してもよい。
【0114】
なお、サーバ20は、例えば、ユーザ側又は農家側のファクシミリ機から送信されたログブックのスキャンデータを管理運営者側のファクシミリ機が受信した上で、管理運営者による申告情報の入力操作を受け付けることにより、申告情報を取得してもよい。
【0115】
受信制御モジュール2031は、例えば、受信した申告情報をポリゴンテーブル2021に記憶してもよい。この場合、例えば、ポリゴンテーブル2021に申告情報を記憶する項目「申告情報」が設けられていてもよく、受信制御モジュール2031は、受信した申告情報を項目「申告情報」に記憶してもよい。また例えば、受信制御モジュール2031は、受信した申告情報を項目「プロジェクト情報」に記憶してもよい。
【0116】
次に、サーバ20は、例えば、取得した申告情報及び第2指標の時系列的な変化に基づいて、申告情報の信頼性の程度を検証してもよい(検証するステップ)。
【0117】
具体的には、例えば、推定処理モジュール2034は、申告情報に含まれている湛水、排水等の各日付と、当該各日付のそれぞれに対応する第2指標とを時系列に従って対比してもよい。或いは、推定処理モジュール2034は、申告情報に含まれている湛水、排水等の各日付から対象水田の湛水状態の時系列的な変化を推定し、この推定結果を第2指標の時系列的な変化と対比してもよい。推定処理モジュール2034は、例えば、対比結果に基づいて、申告情報の信頼性の程度を検証してもよい。
【0118】
具体的には、例えば、推定処理モジュール2035は、申告情報から把握される湛水状態の時系列的な変化と、第2指標の時系列的な変化との一致の割合が基準割合以上であれば、申告情報の信頼性が高いと判断してもよい。一方、前述の割合が基準割合未満であれば、推定処理モジュール2035は、申告情報の信頼性が低いと判断してもよい。基準割合は、対象水田の特徴、申告情報にどの程度の信頼性が求められるか等に応じて任意に設定することができる。
【0119】
推定処理モジュール2034は、申告情報の信頼性の程度を検証した結果、申告情報の信頼性が高いと判断した場合、申告書類の作成に申告情報を用いることを決定してもよい。一方、申告情報の信頼性が低いと判断した場合、推定処理モジュール2034は、例えば、申告情報の信頼性が低い旨の検証結果をサーバ20に備えられた出力装置のディスプレイに表示させてもよい。この場合、例えば、管理運営者は、ディスプレイに表示された検証結果を把握することにより、ユーザ等に対して申告情報の信頼性について問い合わせてもよい。そして、管理運営者は、例えば、問い合わせに対するユーザ等の回答に応じて申告情報を適宜修正等し、サーバ20に備えられた入力装置に入力してもよい。推定処理モジュール2034は、例えば、修正等された申告情報を受け付けることにより、申告書類の作成に修正等された申告情報を用いることを決定してもよい。
【0120】
次に、サーバ20は、例えば、申告情報を用いて申請書類を作成してもよい(作成するステップ)。
【0121】
具体的には、例えば、推定処理モジュール2034は、ポリゴンテーブル2021に記憶されたプロジェクト情報を参照して、不図示のフォーマットテーブルから中干しプロジェクトに対応する申請書類のフォーマットを読み出してもよい。フォーマットテーブルは、例えば、中干しプロジェクトの種類毎のフォーマットを記憶していてもよい。フォーマットテーブルは、例えば、記憶部202に記憶されていてもよい。
【0122】
推定処理モジュール2034は、例えば、フォーマットテーブルから読み出したフォーマットの該当項目に、申告情報を入力してもよい。推定処理モジュール2034は、例えば、フォーマットにおける該当項目以外の項目について、ポリゴンテーブル2021に記憶された該当情報を入力してもよい。このようにして、推定処理モジュール2034は、申請書類を作成してもよい。
【0123】
なお、前述した申請書類の作成処理はあくまで一例であり、他にも様々な作成処理が想定される。推定処理モジュール2034は、例えば、申告情報を、ポリゴンテーブル2021に記憶された該当情報及びプロンプト(申請書類の作成を指示する指示文)と共に生成AIモデルに入力し、当該生成AIモデルから申請書類を出力させてもよい。生成AIモデルは、例えばLLMであってもよく、プロンプトと共に記憶部202又はAIシステム30に記憶されていてもよい。
【0124】
次に、サーバ20は、作成した申請書類をユーザに提示してもよい。即ち、提示制御モジュール2033は、推定処理モジュール2034により作成された申請書類をユーザに提示してもよい。
【0125】
具体的には、例えば、送信制御モジュール2032は、申請書類を表示するための情報を端末装置10へ送信してもよい。送受信部192は、例えば、申請書類を表示するための情報をサーバ20から受信してもよい。提示制御部193は、例えば、ユーザからの提示要求を受信すると、ディスプレイ141に申請書類を表示させてもよい。これにより、サーバ20は申請書類をユーザに提示してもよい。
【0126】
なお、提示制御モジュール2033は、提示制御部193を制御することにより、申請書類をディスプレイ141に編集可能な状態で表示させてもよい。この場合、例えば、操作受付部191がユーザによる編集操作を受け付けることにより、提示制御部193が、ディスプレイ141に表示された申請書類を編集操作に応じた内容に編集してもよい。また例えば、提示制御モジュール2033は、推定処理モジュール2034により作成された申請書類を管理運営者に提示してもよい。また例えば、出力装置14がプリンタの場合、提示制御モジュール2033は、例えば、申請書類を出力装置14からブリントアウトさせてもよい。更には、提示制御モジュール2033が申請書類をユーザに提示することは必須ではない。この場合、管理運営者は、例えば、サーバ20の出力装置からプリントアウトした申請書類をユーザに郵送してもよい。
【0127】
このように、本変形例によれば、ユーザが住所情報及び申告情報をサーバ20に提供するだけで、サーバ20が申請書類を自動的に作成することができる。これにより、推定サービスを利用する際のユーザの利便性が向上する。
【0128】
以下、
図6及び
図7を参照して、ユーザに申請書類を提示したときにおける、ディスプレイ141の画面例について説明する。
図6は、ユーザに申請書類を提示したときにおける、ディスプレイ141の画面例を示す模式図である。
図7は、ユーザに申請書類を提示したときにおける、ディスプレイ141の他の画面例を示す模式図である。
【0129】
図6の画面例では、ディスプレイ141に、申請書類として登録申請書1411が表示されている。登録申請書1411には、例えば、申請区分、支援費用の活用内容、プロジェクト情報、申請者情報、カーボンニュートラル行動計画への参加有無、及び審査情報の各項目が設けられている。そして、各項目の入力フィールドには、該当情報が表示されている。提示制御モジュール2033は、例えば、ポリゴンテーブル2021から該当情報を読み出して、入力フィールドに該当情報を表示させる。ここで、支援費用の活用内容、申請者情報、カーボンニュートラル行動計画への参加有無、及び審査情報の各項目の該当情報は、例えば、ポリゴンテーブル2021の項目「プロジェクト情報」に記憶されていてもよい。
【0130】
また例えば、ディスプレイ141における登録申請書1411の直下の表示領域には、編集ボタン1412及び確定ボタン1413が表示されている。例えば、操作受付部191が編集ボタン1412の押下操作を受け付けると、各項目の入力フィールド内の該当情報が編集可能な状態になる。また例えば、操作受付部191が確定ボタン1413の押下操作を受け付けると、各項目の入力フィールド内の該当情報が確定状態となる。そして、ユーザが確定ボタン1413の押下後に編集ボタン1412を押下しても、各項目の入力フィールド内の該当情報は編集不可能な状態が継続する。
【0131】
図7の画面例では、ディスプレイ141に、申請書類としてプロジェクト計画書1414が表示されている。プロジェクト計画書1414には、例えば、プロジェクト名称、プロジェクト実施者名、審査情報、プロジェクトの概要、削減活動の方法論、及びデータ管理の各項目が設けられている。そして、各項目の入力フィールドには、該当情報が表示されている。提示制御モジュール2033は、例えば、ポリゴンテーブル2021から該当情報を読み出して、入力フィールドに該当情報を表示させる。ここで、プロジェクト名称、プロジェクト実施者名、審査情報、プロジェクトの概要、削減活動の方法論、及びデータ管理の各項目の該当情報は、例えば、ポリゴンテーブル2021の項目「プロジェクト情報」に記憶されていてもよい。
【0132】
また例えば、ディスプレイ141におけるプロジェクト計画書1414の直下の表示領域には、編集ボタン1415及び確定ボタン1416が表示されている。例えば、編集ボタン1415の機能は編集ボタン1412と同様であり、確定ボタン1416の機能は確定ボタン1413と同様である。
【0133】
図6及び
図7の各画面例はあくまで一例であり、申請書類の提示内容及び提示態様については様々なバリエーションが想定される。例えば、提示制御モジュール2033は、登録申請書1411又はプロジェクト計画書1414の何れか一方のみをディスプレイ141に表示させてもよい。また例えば、提示制御モジュール2033は、登録申請書1411の内容とプロジェクト計画書1414の内容とが1つに纏まったフォーマットの申請書類をディスプレイ141に表示させてもよい。また例えば、提示制御モジュール2033は、登録申請書1411の各項目及びプロジェクト計画書1414の各項目を追加、削除、変更等してディスプレイ141に表示させてもよい。更には、提示制御モジュール2033は、例えば、登録申請書1411及びプロジェクト計画書1414と異なる他のフォーマットの申請書類をディスプレイ141に表示させてもよい。
【0134】
なお、本変形例で取り上げた申請書類の作成は、システム1が中干し期間以外の非湛水期間の推定サービスを提供する場合にも適用することができる。つまり、サーバ20は、非湛水期間全般の推定結果に基づいて申請書類を作成してもよい。
【0135】
〔7 コンピュータの基本ハードウェア構成〕
図8は、コンピュータ90の基本的なハードウェア構成を示すブロック図である。コンピュータ90は、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903、通信IF991(インタフェース、Interface)を少なくとも備える。これらは通信バス921により相互に電気的に接続される。
【0136】
プロセッサ901とは、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアである。プロセッサ901は、演算装置、レジスタ、周辺回路等から構成される。
【0137】
主記憶装置902とは、プログラム、及びプログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものである。例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。
【0138】
補助記憶装置903とは、データ及びプログラムを保存するための記憶装置である。例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0139】
通信IF991とは、有線又は無線の通信規格を用いて、他のコンピュータとネットワークを介して通信するための信号を入出力するためのインタフェースである。
【0140】
ネットワークは、インターネット、LAN、無線基地局等によって構築される各種移動通信システム等で構成される。例えば、ネットワークには、3G、4G、5G移動通信システム、LTE(Long Term Evolution)、所定のアクセスポイントによってインターネットに接続可能な無線ネットワーク(例えばWi-Fi(登録商標))等が含まれる。無線で接続する場合、通信プロトコルとして例えば、Z-Wave(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等が含まれる。有線で接続する場合は、ネットワークには、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等により直接接続するものも含む。
【0141】
なお、各ハードウェア構成の全部又は一部を複数のコンピュータ90に分散して設け、ネットワークを介して相互に接続することによりコンピュータ90を仮想的に実現することができる。このように、コンピュータ90は、単一の筐体、ケースに収納されたコンピュータ90だけでなく、仮想化されたコンピュータシステムも含む概念である。
【0142】
〔8 コンピュータ90の基本機能構成〕
コンピュータ90の基本ハードウェア構成(
図8)により実現されるコンピュータの機能構成を説明する。コンピュータは、制御部、記憶部、通信部の機能ユニットを少なくとも備える。
【0143】
なお、コンピュータ90が備える機能ユニットは、それぞれの機能ユニットの全部又は一部を、ネットワークで相互に接続された複数のコンピュータ90に分散して設けても実現することができる。コンピュータ90は、単一のコンピュータ90だけでなく、仮想化されたコンピュータシステムも含む概念である。
【0144】
制御部は、プロセッサ901が補助記憶装置903に記憶された各種プログラムを読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って処理を実行することにより実現される。制御部は、プログラムの種類に応じて様々な情報処理を行う機能ユニットを実現することができる。これにより、コンピュータは情報処理を行う情報処理装置として実現される。
【0145】
記憶部は、主記憶装置902、補助記憶装置903により実現される。記憶部は、データ、各種プログラム、各種データベースを記憶する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置902又は補助記憶装置903に確保することができる。また、制御部は、各種プログラムに従ってプロセッサ901に、記憶部に記憶されたデータの追加、更新、削除処理を実行させることができる。
【0146】
データベースは、リレーショナルデータベースを指し、行と列によって構造的に規定された表形式のテーブル、マスタと呼ばれるデータ集合を、互いに関連づけて管理するためのものである。データベースでは、表をテーブル、マスタ、表の列をカラム、表の行をレコードと呼ぶ。リレーショナルデータベースでは、テーブル、マスタ同士の関係を設定し、関連づけることができる。
【0147】
通常、各テーブル、各マスタにはレコードを一意に特定するための主キーとなるカラムが設定されるが、カラムへの主キーの設定は必須ではない。制御部は、各種プログラムに従ってプロセッサ901に、記憶部に記憶された特定のテーブル、マスタにレコードを追加、削除、更新を実行させることができる。
【0148】
また、記憶部に、データ、各種プログラム、各種データベースを記憶させることにより、本開示に係る情報処理装置、情報処理システムが製造されたものとして捉えることができる。
【0149】
なお、本開示におけるデータベース、マスタは、情報が構造的に規定された任意のデータ構造体(リスト、辞書、連想配列、オブジェクトなど)を含み得る。データ構造体には、データと、任意のプログラミング言語により記述された関数、クラス、メソッドなどを組み合わせることにより、データ構造体と見なし得るデータも含むものとする。
【0150】
通信部は、通信IF991により実現される。通信部は、ネットワークを介して他のコンピュータ90と通信を行う機能を実現する。通信部は、他のコンピュータ90から送信された情報を受信し、制御部へ入力することができる。制御部は、各種プログラムに従ってプロセッサ901に、受信した情報に対する情報処理を実行させることができる。また、通信部は、制御部から出力された情報を他のコンピュータ90へ送信することができる。
【0151】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、本発明は、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータに提供し、そのコンピュータが備えるプロセッサが記憶媒体に記憶されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、SSD、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0152】
また、本実施形態に記載の機能を実現するプログラムコードは、例えば、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)、JavaScript、TypeScript等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0153】
更に、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することによって、それをコンピュータのハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に記憶し、コンピュータが備えるプロセッサが当該記憶手段や当該記憶媒体に記憶されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
【0154】
本明細書中に記載されている構成要素により実現される機能は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、汎用プロセッサ、特定用途プロセッサ、集積回路、ASICs (Application Specific Integrated Circuits)、CPU (Central Processing Unit)、従来型の回路、及び/又はそれらの組合せを含む、circuitry又はprocessing circuitryにおいて実装されてもよい。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含み、circuitry又はprocessing circuitryとみなされる。プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを実行する、programmed processorであってもよい。
【0155】
本明細書において、circuitry、ユニット、手段は、記載された機能を実現するようにプログラムされたハードウェア、又は実行するハードウェアである。当該ハードウェアは、本明細書に開示されているあらゆるハードウェア、又は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、又は、実行するものとして知られているあらゆるハードウェアであってもよい。
【0156】
当該ハードウェアがcircuitryのタイプであるとみなされるプロセッサである場合、当該circuitry、手段、又はユニットは、ハードウェアと、当該ハードウェア及び又はプロセッサを構成するために用いられるソフトウェアの組合せである。
【0157】
以上、本開示の幾つかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0158】
〔9 付記〕
以上の各実施形態で説明した事項を以下に付記する。
【0159】
<付記1>
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、プログラムは、プロセッサに、水田の住所を示す住所情報を取得して、推定対象となる対象水田を特定するステップと、対象水田の衛星画像、及び対象水田の水位を示す水位情報を、所定の期間において所定のタイミングが到来する度に取得するステップと、取得した複数の衛星画像のそれぞれについて、衛星画像を構成する複数の画像セル毎に、当該画像セル及び水位情報に基づき、対象水田における画像セルに対応する区画の湛水状態を示す第1指標を算出するステップと、取得した複数の衛星画像のそれぞれについて、算出した第1指標を対象水田の単位で統計値をとることにより、当該統計値を対象水田の湛水状態を示す第2指標として算出するステップと、取得した複数の衛星画像毎に算出された第2指標の時系列的な変化に基づき、所定の期間における対象水田の非湛水期間を推定するステップとを実行させるプログラム。
【0160】
<付記2>
衛星画像は、SAR画像である(付記1)に記載のプログラム。
【0161】
<付記3>
第1指標を算出するための前処理として、取得した複数のSAR画像のそれぞれについて、対象水田の地形の影響を補正するステップをプロセッサに更に実行させる(付記2)に記載のプログラム。
【0162】
<付記4>
第1指標を算出するための前処理として、取得した複数のSAR画像のそれぞれを偏波分解し、当該SAR画像に対象水田の散乱特性の推定結果を反映させるステップをプロセッサに更に実行させる(付記2)又は(付記3)に記載のプログラム。
【0163】
<付記5>
第1指標を算出するステップでは、画像セル及び水位情報を学習済みの機械学習モデルに入力して、当該機械学習モデルから第1指標を出力させる(付記1)から(付記4)の何れかに記載のプログラム。
【0164】
<付記6>
非湛水期間の推定結果に基づいて、カーボンクレジットの発行を申請するための書類を作成するステップをプロセッサに更に実行させる(付記1)から(付記5)の何れかに記載のプログラム。
【0165】
<付記7>
非湛水期間は、中干し期間であり、作成するステップは、ユーザが申告した中干し期間に関する申告情報を取得するステップと、取得した申告情報及び第2指標の時系列的な変化に基づいて、申告情報の信頼性の程度を検証するステップとを含む(付記6)に記載のプログラム。
【0166】
<付記8>
制御部と、記憶部とを備える情報処理装置であって、制御部が、(付記1)から(付記7)の何れかに記載のプログラムにおける全てのステップを実行する情報処理装置。
【0167】
<付記9>
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行される方法であって、プロセッサが、(付記1)から(付記7)の何れかに記載のプログラムにおける全てのステップを実行する方法。
【0168】
<付記10>
(付記1)から(付記7)の何れかに記載のプログラムにおける全てのステップを実行する手段を備えるシステム。
【符号の説明】
【0169】
1…システム
10…端末装置
120…通信部
13…入力装置
14…出力装置
15…メモリ
16…ストレージ
19…プロセッサ
20…サーバ
22…通信IF
23…入出力IF
25…メモリ
26…ストレージ
29…プロセッサ
30…AIシステム
40…人工衛星
【要約】
【課題】非湛水期間の推定精度を向上させる。
【解決手段】プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムである。プログラムは、プロセッサに、水田の住所を示す住所情報を取得して対象水田を特定するステップと、対象水田の衛星画像及び水位情報を所定の期間において所定のタイミングが到来する度に取得するステップと、複数の衛星画像のそれぞれについて、複数の画像セル毎に、当該画像セル及び水位情報に基づき、対象水田における画像セルに対応する区画の湛水状態を示す第1指標を算出するステップと、複数の衛星画像のそれぞれについて、第1指標を対象水田の単位で統計値をとることにより、当該統計値を対象水田の湛水状態を示す第2指標として算出するステップと、複数の衛星画像毎に算出された第2指標の時系列的な変化に基づき、所定の期間における対象水田の非湛水期間を推定するステップとを実行させる。
【選択図】
図1