(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】糖尿病性腎症の治療における使用のためのIL-4由来ペプチド断片
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20250213BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20250213BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250213BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250213BHJP
C07K 9/00 20060101ALI20250213BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
A61K38/20
A61K38/10
A61P3/10
A61P13/12
C07K9/00 ZNA
C07K14/54
(21)【出願番号】P 2024538492
(86)(22)【出願日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2023061314
(87)【国際公開番号】W WO2023209186
(87)【国際公開日】2023-11-02
【審査請求日】2024-09-10
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524225143
【氏名又は名称】セロダス アンパーツセルスケープ
【氏名又は名称原語表記】SERODUS APS
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ スタイネス
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/131619(WO,A1)
【文献】特表2021-514961(JP,A)
【文献】特表2012-508698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/20
A61K 38/10
A61P 3/10
A61P 13/12
C07K 9/00
C07K 14/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む、糖尿病性腎症の治療における使用のための
医薬組成物であって、前記ペプチドが、2つの断片を含む二量体であり、各断片が、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)からなり、各断片がリンカーを介してそのC末端で共有結合的に接続している、
医薬組成物。
【請求項2】
前記ペプチドが、式(II):
【化1】
の構造を有する、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
前記ペプチドが、I型IL-4Rについてのアゴニスト及びII型IL-4Rについてのアンタゴニストである、
請求項1又は2に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の糖尿病性腎症の治療
のための医薬の製造における使用であって、
前記ペプチドが、2つの断片を含む二量体であり、各断片が、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)からなり、各断片がリンカーを介してそのC末端で共有結合的に接続している、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、糖尿病性腎症の治療における使用のためのIL-4由来のペプチド断片に関する。特に、本開示は、糖尿病性腎症の治療における使用のための、配列番号1のアミノ酸配列を有するIL-4の1つ以上の断片又はそのバリアントを含むペプチドに関する。
【0002】
(背景)
糖尿病性腎症は、代謝及び血行動態因子が腎損傷の主な原因であると考えられてきたため、低グレード炎症(すなわち、自然免疫炎症性疾患)とは歴史的には考えられていない。しかしながら、最近の研究は、糖尿病性腎症の発症及び進行の両方における先天性免疫系の役割を支持している。進行性の非感染性炎症は、腎機能の漸進的な損をもたらす糸球体及び尿細管細胞を伴う。腎機能の喪失を遅らせるためには、血糖値と血圧をできるだけ正常に保つ必要がある。しかしながら、自然免疫炎症の特定の治療は開発されておらず、糸球体濾過及び尿細管機能の低下は、血糖値及び血圧の適切な制御を用いても停止しない。末期腎不全では、治療は慢性透析であり、場合によっては腎移植である。したがって、ネフロンの全ての機能において、予測される炎症誘発性の低下を予防又は停止する介入が必要である。
【0003】
患者は、尿中のバイオマーカーアルブミンを測定することによって糖尿病性腎症と診断される。尿アルブミンは、多くの場合、スポット尿試料中で測定され、同じ尿試料中のクレアチニン(ACR mg/g)について補正される。ACRは、正常アルブミン尿(ACR<30mg/g)、微量アルブミン尿(ACR>30mg/g及び<300mg/g)及びマクロアルブミン尿(ACR>300mg/g)の3群に分けられる。ACRが高ければ高いほど、腎臓損傷がより進行することを示す臨床的証拠がある。
【0004】
尿アルブミン及び腎傷害分子-1(KIM-1)は、両方とも腎自然免疫炎症の強力なバイオマーカーであり、ヒト腎生検は、糖尿病性腎症のすべての段階で、糸球体、尿細管、及び間質の両方における炎症細胞の存在を確認した。
【0005】
ヒトインターロイキン-4(IL-4)は、下記アミノ酸配列(シグナルペプチド、すなわちアミノ酸AA1-24を含む)を有する抗炎症性サイトカインである。
MGLTSQLLPP LFFLLACAGN FVHGHKCDIT LQEIIKTLNS LTEQKTLCTE LTVTDIFAAS KNTTEKETFC RAATVLRQFY SHHEKDTRCL GATAQQFHRH KQLIRFLKRL DRNLWGLAGL NSCPVKEANQ STLENFLERL KTIMREKYSK CSS (UniProtKB - P05112;配列番号3)
【0006】
成熟IL-4は、129個のアミノ酸残基を有し、下記アミノ酸配列を有する3つの分子内ジスルフィド結合(Cys3-Cys127; Cys46-Cys99; Cys24-Cys65)を含有する。
HKCDITLQEI IKTLNSLTEQ KTLCTELTVT DIFAASKNTT EKETFCRAAT VLRQFYSHHE KDTRCLGATA QQFHRHKQLI RFLKRLDRNL WGLAGLNSCP VKEANQSTLE NFLERLKTIM REKYSKCSS (配列番号4)
【0007】
他のサイトカインと同様に、IL-4は、細胞表面上の受容体に結合することによってその生物学的活性を発揮する。IL-4の2つの受容体型が知られており、I型IL-4R及びII型IL-4Rと称される。I型IL-4RはIL-4Rα鎖及びIL-2Rγ(γc)鎖の2つの成分から構成され、一方、II型IL-4RはIL-4Rα及びIL-13α1鎖から構成される。IL-4は、活性化されたB細胞及びT細胞増殖の刺激、ならびにB細胞の形質細胞への分化を含む、多くの生物学的役割を有する。血管外組織におけるIL-4の存在はM2細胞へのマクロファージの代替活性化を促進し、M1細胞へのマクロファージの古典的活性化を阻害し、病理学的炎症の減少をもたらす。IL-4は主にCD4+ T細胞(Th2細胞)によって分泌され、これは、ヒト免疫応答を調節するために、特定のサイトカインヒビター及び可溶性サイトカイン受容体の協調を制御し、炎症促進活性と抗炎症活性との間の適切なバランスを維持することによって、急性及び慢性炎症の病因において重要な役割を果たす。したがって、IL-4シグナル伝達の変調は、自己免疫疾患及び炎症性疾患において大いに研究されている。
【0008】
IL-4模倣体として作用するIL-4に由来する小ペプチド断片は以前に、マクロファージからのTNF-α放出を阻害し、一次ニューロンからの神経突起形成応答を誘導することが示されている(国際公開第2010/054667号参照)。1つのそのような例は、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)を有するペプチドである。このペプチドはIL-4受容体に結合し、マクロファージ活性化を阻害することができ、それによって炎症反応の発症を防止することができ、したがって、関節リウマチ、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、及びハンチントン病などの多くの炎症性疾患及び自己免疫疾患において有用であると提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(要旨)
本発明は配列番号1のペプチド断片を含む化合物を投与したReninAAV UNx db/dbマウス(すなわち、処置群)がクレアチニン(ACR)に対して補正された尿中アルブミンを有意に減少させることができ、クレアチニン(KIM-1/CR)に対して補正された腎損傷分子を減少させることができるという知見に関する(
図2及び3を参照されたい)。尿アルブミン及びKIM-1は両方とも、糖尿病性腎症を含む、腎臓に関与する様々な疾患において見られる腎自然免疫炎症のバイオマーカーである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、IL-4に由来し、IL-4模倣体として作用する小さなペプチド断片は、配列番号1のペプチドがI型IL-4Rに対する高親和性部分アゴニスト及びII型IL-4Rについてのアンタゴニストであることが示されているので、糖尿病性腎症の治療のための新世代の薬物として有望な可能性を有し得る(Klementiv 2013)。本発明は、特許請求の範囲に記載されている。
【0011】
(定義及び略称)
ACR:クレアチニン補正アルブミン
IL-4: インターロイキン-4
KIM-1:腎損傷分子-1
KIM-1/CR:クレアチニン補正KIM-1
ReninAAV UNxマウス: Renin AAV単腎摘出db/dbマウス
【0012】
「糖尿病性腎症」は、糖尿病を有する個体において起こり得る進行性腎疾患の一種である。それは、1型及び2型糖尿病を有する個々に影響を及ぼす。糖尿病性腎症のリスクは、糖尿病の時間、ならびに高血圧及び腎疾患の家族歴のような他の危険因子とともに増加する。
【0013】
「個体」という用語は、脊椎動物、哺乳動物種の特定のメンバー、好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトを指す。本明細書で使用される場合、「対象」及び「個体」は、互換的に使用され得る。
【0014】
「それを必要とする個体」は、本開示から恩恵を発明個体を指す。一実施形態では、それを必要とする個体が罹患個体、特に糖尿病性腎症及び/又は真性糖尿病、1型又は2型を有する個体である。
【0015】
本明細書に開示されるアミノ酸は特に明記しない限り、天然アミノ酸(L-アミノ酸)である。
【0016】
ペプチドの「有効量」は、1回の投与で、又は例えば24時間以内に有効量を合計する量の複数回の投与を介して投与することができる。それは、適切な量及び投与のタイミングを決定するための標準的な臨床手順を用いて決定することができる。「有効量」は、治療する医療専門家及び/又は個々の側における経験的及び/又は個別化(ケースバイケース)判定の結果であり得ることが理解される。
【0017】
本発明の文脈において、本発明がいくつかの連続するアミノ酸残基がアミノ酸領域、例えば、インターロイキン-4(配列番号4)のAA68-AA97に由来するペプチド断片を指す場合、インターロイキン-4(配列番号4)のそれぞれの領域から選択されるアミノ酸の小ストレッチ(すなわち、連続する配列)として理解されるべきである。例えば、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA68-AA89に由来する16個の連続するアミノ酸残基を含むペプチド断片は、以下に太字で強調された連続する配列から得ることができる。
【0018】
HKCDITLQEI IKTLNSLTEQ KTLCTELTVT DIFAASKNTT EKETFCRAAT VLRQFYSHHE KDTRCLGATA QQFHRHKQLI RFLKRLDRNL WGLAGLNSCP VKEANQSTLE NFLERLKTIM REKYSKCSS (配列番号4)。
【0019】
したがって、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA
68-AA
89 に由来する16個の連続するアミノ酸残基は、断片/配列ATAQQFHRHKQLIRFL;TAQQFHRHKQLIRFLK;AQQFHRHKQLIRFLKR、QQFHRHKQLIRFLKRL、QFHRHKQLIRFLKRLD、FHRHKQLIRFLKRLDR、HRHKQLI RFLKRLDRN、及びRHKQLI RFLKRLDRNLを含む。ペプチドは、インターロイキン-4(配列番号4)に由来する断片/配列のバリアントであってもよい。非限定的な例として、AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)は断片/配列QQFHRHKQLIRFLKRLのバリアントであり、ここで、末端アミノ酸Q及びLはAで置換されている(すなわち、AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)は、2つのアミノ酸置換を有する)。したがって、本文脈において、本開示が例えば、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA
68-AA
97に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基の断片を含むペプチドを指す場合、連続するアミノ酸の数は13個未満であってはならず、単一のアミノ酸ストレッチ(すなわち、存在する場合、いかなるリンカーも考慮しない断片)において19個を超えてはならないが、ペプチドはリンカー(スペーサー)を介して連結された2つ以上のそのような断片を含み得ることが理解されるべきである。非限定的な例として、式(I)の以下のペプチドは、そのC末端でリンカーを介して連結された、各16個の連続するアミノ酸の2つのペプチド断片を含む。
【化1】
【0020】
ペプチド断片はまた、ペプチドの薬物動態学的特性を変化させるために脂質化され得る。
【0021】
本明細書で使用される「配列同一性」は、比較される2つの異なる配列間で正確に一致するアミノ酸残基の数である。バリアントが10個のアミノ酸残基を有する配列と90%同一である場合、バリアントは、1つのアミノ酸置換によって配列と異なり得る。
【0022】
本明細書で使用される「治療する」、「治療」、及び「療法」という用語は、治癒的療法、予防的療法、予防的療法、又は改善的療法を同等に指す。本開示の目的のために、有益な又は所望の臨床結果にはこれらに限定されないが、症状の緩和、疾患の程度の減少、安定化された(すなわち、悪化していない)状態、状態/症状の進行又は悪化の遅延又は遅延、状態又は症状の改善又は緩和、及び(部分的であるか完全であるかにかかわらず)検出可能であるか否かにかかわらず、寛解(部分的であるか完全であるかにかかわらず)が含まれる。
【0023】
「共有結合した」という用語は、リンカー又はスペーサーを介して互いに共有結合した、本開示による少なくとも2つのペプチド/断片として理解されるべきである。共有結合したペプチドは、同じ配列又は異なる配列、好ましくは同じ配列を有し得る。様々なタイプのリンカー(スペーサー)を使用して、ペプチドを一緒に連結することができ、例えば、ペプチドデンドリマー、融合ペプチド/タンパク質、又はハイブリッドペプチドについて当技術分野で一般に知られているものを連結することができる。例えば、リンカー(スペーサー)はペプチドリンカー、例えば、本明細書に例示されるようなリジン-ベータアラニン、単一アミノ酸、例えばリジン、又はアミノ酸の小ストレッチであり得る(例えば、Adv Drug Deliv Rev. 2013 Oct 15; 65(10): 1357-1369を参照)。リンカーはまた、非ペプチドリンカー、例えばPEG鎖、又はエチレンジアミンなどのジアミンであってもよい。当業者は、使用されるリンカー(スペーサー)が本発明の概念から逸脱することなく、他のリンカー(スペーサー)に変更され得ることを理解するのであろう。最も好ましくは、ペプチド/断片が本明細書に例示されるように、それらのN端末装置又はC端末装置、最も好ましくはそれらのC端末装置を介して共有結合される。最も好ましくは、2つのペプチド/断片が本明細書に例示されるように、リジンによって連結される。リジンリンカー部分のベータアラニンは合成中の立体障害を低減するために、SPPSにおいて使用されるリンクリンクリンカー間のスペーサーとして作用するにすぎない。したがって、ベータアラニン部分は、SPPSの技術分野で使用される他の一般的なスペーサと置き換えられてもよい。リジンに基づく様々な分岐デンドリマーは例えば、(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol 85, pp. 5409-5413, August 1988)に記載されているように得ることができる。本明細書に開示される二量体は、単量体よりも良好に機能することが見出された。
【0024】
「バリアント」という用語は、ペプチド配列が例えば、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって修飾され得ることを意味する。L-アミノ酸及びD-アミノ酸の両方が使用されてもよく、非天然アミノ酸、好ましくはL-アミノ酸が使用される。本文脈において、1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換及び/又は欠失を有するバリアントに言及する場合、置換及び/又は欠失の合計は最大3つことを理解されたい。一例として、バリアントは例えば、2つの置換及び1つの欠失(合計=3)を有し得る。同様に、バリアントは3つの置換及びゼロ削除(合計=3)を有してもよく、又はバリアントは3つの削除及びゼロ置換(合計=3)を有する可能性がある。一例として、本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドが例えば13アミノ酸残基を有し、さらに前記ペプチドがAQFHRHKQLIRFLKRAのバリアント(配列番号1、すなわち16アミノ酸)を含む場合、それは3つの欠失(16-3=13アミノ酸)を有するバリアントでなければならないことになる。好ましくは、バリアントにおける置換が保存的アミノ酸に対する保存的置換である。保存的アミノ酸の群は以下のとおりである。
A、G(中性、弱疎水性)、
Q、N、S、T(親水性、非荷電)
E、D(親水性、酸性)
H、K、R(親水性、塩基性)
A、L、P、I、V、M、F、Y、W(疎水性、芳香族)
C(架橋形成)
【0025】
保存的置換は本開示による使用のために、ペプチドの任意の位置に導入され得る。しかしながら、本開示による使用のために、ペプチドの任意の位置に非保存的置換を導入することも望ましい場合がある。
【0026】
本開示のペプチド配列は、カップリング試薬を使用する固相ペプチド合成(SPPS)など、当技術分野で一般的に使用される従来の合成方法によって調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】
図1Aは、αへリックスC(AA
71-AA
94)の一部を構成する領域AA
71-AA
86に示されるアミノ酸残基を有するIL-4(PDB識別子:1CYL)の結晶構造を示す。
【
図1B】
図1Bは、αへリックスC(AA
71-AA
94)の一部を構成する領域AA
71-AA
86に示されるアミノ酸残基を有するIL-4(PDB識別子:1CYL)の結晶構造を示す。
【
図2】
図2は、ベヒクル群に対する処理における化合物AのACR(mg(g))を低下させる効果を示す。
【
図3】
図3は、ベヒクル群に対する処理における化合物AのKIM-1/CR(pg/g)の効果を示す。
【0028】
(詳細な説明)
本発明はIL-4に由来する小さなペプチド断片、より具体的にはIL-4のα-ヘリックスCがIL-4R I型アゴニストであり、ReninAAV UNx db/dbマウスにおいてACR及びKIM-Iを減少させることができるという驚くべき発見に関する。
【0029】
成熟IL-4は、129アミノ酸残基を有し、3つの分子内ジスルフィド結合(Cys3-Cys127; Cys46-Cys99; Cys24-Cys65)を含有する。本明細書の実験の節で使用されるペプチドはリンカー(スペーサ)(すなわち、リジン-ベータアラニン)を介してAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)(すなわち、第2の断片)のアミノ酸配列を有する別のペプチドに共有結合したAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)(すなわち、第1の断片)のアミノ酸配列を有する。配列番号1のペプチド断片は、配列番号4のアミノ酸AA71-AA86(シグナル配列を含まないIL-4)に由来するペプチドのバリアントである(以下に太字で強調する)。
【0030】
HKCDITLQEI IKTLNSLTEQ KTLCTELTVT DIFAASKNTT EKETFCRAAT VLRQFYSHHE KDTRCLGATA QQFHRHKQLI RFLKRLDRNL WGLAGLNSCP VKEANQSTLE NFLERLKTIM REKYSKCSS (配列番号4)
【0031】
配列番号1と配列番号4のアミノ酸AA71 -AA86とのアラインメントから分かるように、配列番号1は、2つのアミノ酸置換を有するこの部位に由来するペプチド断片のバリアントである(太字で強調表示)。
【0032】
QQFHRHKQLIRFLKRL IL-4のAA71-AA86(配列番号4)
AQFHRHKQLIRFLKRA (配列番号1)。
【0033】
配列番号4の領域AA
71-AA
86は
図1A/Bの結晶構造に示されるように、IL-4のαヘリックスC(AA
71-AA
94)の一部を形成する(PDB識別子:1CYL)。このα-ヘリックスCはIL-4 Rα1の外部ドメイン部分と相互作用し、したがって、α-ヘリックスC(AA
71-AA
94)に由来するペプチド断片は、配列番号1と同様の結合特徴及び薬理学を有する可能性が高い。言い換えると、AA
71-AA
94、好ましくは配列番号4のAA
71-AA
86の領域又はその近傍に由来するペプチド断片は、糖尿病性腎症の治療における使用に適している。
【0034】
したがって、第1の態様では本発明が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチドに関し、ペプチドはインターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA
68-AA
97、好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA
68-AA
89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA
71-AA
86に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含むか、又は1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。好ましい実施形態では、ペプチドがインターロイキン-4のアミノ酸領域AA
68-AA
97(配列番号4)、好ましくはインターロイキン-4のAA
68-AA
89(配列番号4)、最も好ましくはインターロイキン-4のAA
71-AA
86(配列番号4)に由来する14~18個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含むか、又は1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。第2の態様のより好ましい実施形態では、ペプチドがインターロイキン-4のアミノ酸領域AA
68-AA
97(配列番号4)、好ましくはインターロイキン-4のAA
68-AA
89(配列番号4)、最も好ましくはインターロイキン-4のAA
71-AA
86(配列番号4)に由来する15~17個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含むか、又は1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。さらにより好ましい実施形態では、ペプチドがインターロイキン-4のアミノ酸領域AA
68-AA
97(配列番号4)、好ましくはインターロイキン-4のAA
68-AA
89(配列番号4)、最も好ましくはインターロイキン-4のAA
71-AA
86(配列番号4)に由来する16個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含むか、又は1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。上記の実施形態では、ペプチドがアミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)の断片、又は1つ若しくは2つの置換を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含むことが非常に好ましい。好ましい実施形態では、本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチドであって、以下の構造:
【化2】
を有するペプチド、又は1若しくは2個のアミノ酸置換を有するそのバリアントに関する。
【0035】
最も好ましい実施形態では本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチドに関し、ペプチドは2つの断片からなり、それぞれが、リンカーによってそれらのC末端を介して連結され、以下の構造:
【化3】
を有する、又は各断片中に1若しくは2個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。
【0036】
上記の実施形態のいずれかにおいて、バリアントは、好ましくは2つのアミノ酸置換及び/又は欠失、さらにより好ましくは1つのアミノ酸置換又は欠失を有する。
【0037】
本発明による使用のためのペプチドは、C末端(-CONH2)でアミド化されていてもよく、遊離カルボン酸(-COOH)、又はメチルエステル(-COOMe)などの別の翻訳後修飾を有していてもよい。本発明によるペプチドは、遊離アミン(-NH2)、N-アシル化(-NHCOR)、N-メチル化(-NHCH3又は-N(CH3)2)、又はN末端で脱アミノ化されていてもよい。ペプチドはまた、ペプチドのPK特性を変化させるために、例えば、N端末装置及び/又は1つ若しくは複数のリジン残基で脂質化され得る。
【0038】
したがって、本開示の一実施形態では、C末端アミノ酸が遊離カルボン酸(「-COOH」)として存在する。別の実施形態において、C末端アミノ酸は、アミド化誘導体(「-CONH2」)である。別の実施形態では、N末端アミノ酸が遊離アミノ基(「NH2」)を含む。別の実施形態において、N末端アミノ酸は、アセチル化誘導体(COCH3)である。最も好ましくは、C末端がC末端を介してリンカーを介して別のペプチド/断片に連結されていない限り、アミド化されている(「-CONH2」)。最も好ましくは、N端末装置は遊離アミノ基(「NH2」)を含む。
【0039】
非常に好ましい実施形態では本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは16個のアミノ酸残基を含み、さらに、ペプチドは配列番号1(AQFHRHKQLIRFLKRA)を含む。配列番号1が16個のアミノ酸を有するという事実を考慮すると、ペプチドは例えば、脂質付加され得、及び/又は当技術分野で一般に使用される翻訳後修飾を含み得ることが、「含む(comprising)」という文言から理解されるべきである。
【0040】
別の非常に好ましい実施形態では本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは1、2又は3個のアミノ酸置換を有する配列番号1(AQFHRHKQLIRFLKRA)又は配列番号1のバリアント(AQFHRHKQLIRFLKRA)からなる。
【0041】
さらに非常に好ましい実施形態では本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドはAc-AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号2)からなるペプチドである。
【0042】
非常に好ましい実施形態では本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドはAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)からなるペプチドである。
【0043】
最も好ましい実施形態では、本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドであって、AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)からなるペプチドであるペプチドに関する。
【0044】
本発明によるペプチドはI型IL-4Rについてのアゴニストであり、好ましくはII型IL-4Rについてのアンタゴニストである。アゴニストは、スーパーアゴニスト、完全アゴニスト又は部分的アゴニストのいずれかであり得る。最も好ましくは、ペプチドがC端末装置又はN端末装置、最も好ましくはC端末装置を介して連結される。
【0045】
本発明の第2の態様において、本開示は、IL-4のα-ヘリックスCに由来する2つ以上の共有結合したペプチド断片を含む、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関する。最も好ましくは、ペプチドが本明細書に例示されるようにC末端を介して連結される。
【0046】
したがって、第2の態様では、本発明が2つ以上の共有結合した断片を含むペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であって、各々の断片がインターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA68-AA97、好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA68-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA71-AA86、又は1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントに由来する13~19個の連続するアミノ酸残基からなる、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関する。第2の態様の好ましい実施形態において、各断片は、インターロイキン-4のアミノ酸領域AA68-AA97(配列番号4)、好ましくはインターロイキン-4のAA68-AA89(配列番号4)、最も好ましくはインターロイキン-4のAA71-AA86(配列番号4)に由来する14~18個の連続するアミノ酸残基からなるか、又は1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。第2の態様のより好ましい実施形態において、各断片は、インターロイキン-4のアミノ酸領域AA68-AA97(配列番号4)、好ましくはインターロイキン-4のAA68-AA89(配列番号4)、最も好ましくはインターロイキン-4のAA71-AA86(配列番号4)に由来する15~17個の連続するアミノ酸残基からなるか、又は1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。第2の態様のさらにより好ましい実施形態において、各断片は、インターロイキン-4のアミノ酸領域AA68-AA89(配列番号4)、好ましくはインターロイキン-4のAA68-AA89(配列番号4)、最も好ましくはインターロイキン-4のAA71-AA86(配列番号4)に由来する16個の連続するアミノ酸残基からなるか、又は1、2、3若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。第2の態様の上記実施形態では、各断片が1つ又は2つの置換を有するアミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又はAQFHRHKQLIRFLKRAのバリアント(配列番号1)を含むことが非常に好ましい。最も好ましくは、共有結合した断片は同一である。
【0047】
第2の態様の好ましい実施形態では、本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であって、前記ペプチドが2つ以上の共有結合した断片を含み、各断片が13~19個のアミノ酸残基からなり、さらに前記断片がアミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又は1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換及び/又は欠失を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含む、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0048】
第2の態様のより好ましい実施形態では、本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であって、前記ペプチドが2つ以上の共有結合した断片を含み、各断片が14~18個のアミノ酸残基からなり、さらに各断片がアミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又は1、2、又は3個のアミノ酸置換及び/又は欠失を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含む、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0049】
第2の態様のさらにより好ましい実施形態では本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関し、前記ペプチドは2つ以上の共有結合した断片を含み、各断片は15~17個のアミノ酸残基からなり、さらに各断片はアミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又は1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換及び/又は欠失を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含む。
【0050】
第2の態様のさらにより好ましい実施形態では本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関し、前記ペプチドは2つ以上の共有結合した断片を含み、各断片は16個のアミノ酸残基からなり、さらに、前記ペプチドは1、2、又は3個のアミノ酸置換を有する配列番号1(AQFHRHKQLIRFLKRA)又は配列番号1のバリアント(AQFHRHKQLIRFLKRA)を含む。
【0051】
第2の態様の上記実施形態のいずれかにおいて、バリアントは、好ましくは2つのアミノ酸置換及び/又は欠失、さらにより好ましくは1つのアミノ酸置換又は欠失を有する。第2の態様の上記実施形態のいずれかにおいて、ペプチドは最も好ましくは2つの共有結合した断片(すなわち、二量体)を含み、各断片は、同じ配列からなる。
【0052】
第2の態様の最も好ましい実施形態では本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関し、前記ペプチドは、下記式:
【化4】
、又は、各ペプチド断片中に1若しくは2個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。
【0053】
式(I)の二量体ペプチド中の配列番号1の各断片(すなわち、AQFHRHKQLIRFLKRA)は、そのC末端でリンカーを介して共有結合している。
【0054】
第2の態様の別の最も好ましい実施形態では本発明が糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関し、前記ペプチドは以下の構造(化合物A)に示されるリンカー(リジン-ベータアラニン)を介して連結された配列番号1の二量体である:
【化5】
【0055】
第2の態様の別の実施形態では、本開示は糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは配列番号1及び/若しくは配列番号2の4つのコピーを含む四量体デンドリマー、又は1、2、若しくは3つのアミノ酸置換を含むそのバリアントの一部を形成する。別の好ましい実施形態では、ペプチドが配列番号1の2つのコピーを含む二量体デンドリマー、又は配列番号2の1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換を含むそのバリアント、又は配列番号2の2つのコピー、又は1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換を含むそのバリアントである。別の実施形態では、ペプチドが4コピーの配列番号1を含む四量体デンドリマー、又は1、2、若しくは3個のアミノ酸置換を含むそのバリアント、又は4コピーの配列番号2、又は1、2、若しくは3個のアミノ酸置換を含むそのバリアントである。
【0056】
第3の態様では本開示が糖尿病性腎症の治療における使用のための医薬組成物に関し、前記医薬組成物は本明細書に開示される態様及び実施形態による1つ又は複数のペプチド又はその薬学的に許容される塩を含む。薬学的組成物は、許容される薬学的担体、及び場合により1つ以上の賦形剤を含み得る。
【0057】
医薬組成物(すなわち、製剤)は投与前に溶解することを意図した錠剤、丸剤、カプセル剤、乳剤、懸濁剤、徐放性製剤、溶液、又は凍結乾燥粉末を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、製剤は、徐放性を提供するデポー製剤であってもよい。ポリペプチドの製剤ならびに化学的及び/又は代謝的安定性の選択に応じて、異なる投与経路を使用してもよいことを理解されたい。そのような投与経路には経口投与、非経口投与(静脈内(IV)、皮下(SC)、皮内(ID)及び筋肉内(IM))、又は吸入が含まれ得るが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態では、投与経路は非経口投与である。さらにより好ましい実施形態では、投与経路は皮下である。
【0058】
第4の態様では、本開示が糖尿病性腎症を治療するための方法であって、本明細書に開示される態様及び実施形態のいずれかに従って、有効量のペプチド又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする個々に投与することを含む方法に関する。
【実施例】
【0059】
(実施例:糖尿病性腎症のマーカーに対するIL-4由来ペプチドの効果)
(材料及び方法)
(動物)
28匹の雌マウス(BKS.Cg-Dock7m +/+ Lepradb/db BLKS、5週齢)をGubra Research動物ユニットに移した。慣れ及び研究期間を通して、動物は、食物及び水を自由に摂取できる、光、温度、及び湿度制御された部屋に収容された。すべての動物実験は、実験動物のケア及び使用に関する国際的に認められた原理に完全に準拠したGubraの生命倫理ガイドラインに従って実施した。動物はユニネフレクトミーまで群収容し、その後シングルハウスした。
【0060】
77日目に動物を停止し、後の分析のために血液を採取し、体重を記録し、スポット尿を採取した。
【0061】
(化合物)
化合物Aは、Phlogo ApS、コペンハーゲン、デンマーク(10mg/ml miliQ water diluted to dose formulations)によって。化合物Aは、配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)の2つのコピーを含む二量体ペプチドとして提供された。化合物Aの合成は、樹脂に結合したRinkリンカーを用いて行った。嵩高いRinkリンカーと二量体ペプチドとの間の立体反発力を低下させるために、二量体ペプチドが構築されたRinkリンカーとリジンとの間のスペーサーとしてベータアラニンを選択した。車両はmiliQ:PBS 1:5であった。
【0062】
(インビボ手順)
順化の1週間後、マウスにレニンアデノシン関連ウイルス(AAV)のIV射出を行った。1週間後、全マウスをユニ・ネフレクトマイズした。Renin AAV IV注射の2週間後、マウスを、血糖値に従って、2つの群:ベヒクル群(n=14)及び10mg/kgの化合物A(n=14)に無作為化した。化合物及びベヒクル群を1日1回皮下投与した。
【0063】
(生化学的分析)
尿サンプルは分析まで-80℃で保存した。分析前に、アルブミン及びクレアチニンの測定用の尿を2000gで2分間遠心分離した。尿アルブミンは市販のELISAキット(Bethyl Laboratories、Inc)を使用して、製造業者の使用説明書に従って測定し、尿クレアチニンは、Cobas c 501自動分析器上の市販のキット(Roche Diagnostics)を使用して、製造業者の使用説明書に従って測定した。尿中KIM-1を、市販のELISAキット(R&D Systems)を用いて、製造業者の説明書に従って測定した。
【0064】
(結果)
ベヒクルと比較して、試験した化合物Aは、ACR mg/g(
図1)及びKIM-1/CR pg/g(
図2)の両方を有意に減少させた。
【0065】
(考察)
ReninAAV UNx db/dbマウスモデルは糖尿病性腎症の発症を記述し、それによって疾患の進行に対する化合物の影響を解明するための最良の薬理学的モデルの1つとして記載されている(Sembach 2020)。尿アルブミン及びKIM-1は両方とも、腎自然免疫炎症の強力なバイオマーカーである。
【0066】
本明細書で実証される結果は化合物AがIL-4Ra1のIL-4タンパク質刺激を模倣し、抗炎症効果を誘導することを示す。化合物Aは、主に糸球体内皮及び有足細胞損傷からのバイオマーカーである尿アルブミン、及び近位尿細管細胞損傷の頂端膜からのバイオマーカーであるKIM-1の両方を有意に減少させた。これらのバイオマーカーは正常な腎臓からの尿中では検出不可能であるが、糖尿病を含む虚血性又は毒性傷害に対する応答として検出可能である。
【0067】
(配列の概要)
配列番号1
AQFHRHKQLIRFLKRA
【0068】
配列番号2
Ac-AQFHRHKQLIRFLKRA
【0069】
配列番号3(シグナルペプチド、153アミノ酸を含むIL-4ペプチド)
MGLTSQLLPP LFFLLACAGN FVHGHKCDIT LQEIIKTLNS LTEQKTLCTE LTVTDIFAAS KNTTEKETFC RAATVLRQFY SHHEKDTRCL GATAQQFHRH KQLIRFLKRL DRNLWGLAGL NSCPVKEANQ STLENFLERL KTIMREKYSK CSS
【0070】
配列番号4(シグナルペプチドを含まないIL-4ペプチド、129アミノ酸)
HKCDIT LQEIIKTLNS LTEQKTLCTE LTVTDIFAAS KNTTEKETFC RAATVLRQFY SHHEKDTRCL GATAQQFHRH KQLIRFLKRL DRNLWGLAGL NSCPVKEANQ STLENFLERL KTIMREKYSK CSS
【0071】
(項目)
1. 糖尿病性腎症を治療する方法であって、治療有効量の、インターロイキン-4(配列番号:4)、好ましくはインターロイキン-4(配列番号:4)のAA68-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号:4)のAA71-AA86、又は1、2、3若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントのアミノ酸領域AA68-AA97に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含む、ペプチド又はその薬学的に許容される塩を含む医薬を投与することを含む、方法。
【0072】
2. 前記ペプチドが、インターロイキン-4(配列番号:4)、好ましくはインターロイキン-4(配列番号:4)のAA68-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号:4)のAA71-AA86、又は1、2、3若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントのアミノ酸領域AA68-AA97に由来する14~18個の連続するアミノ酸残基からなる断片を方法、項目1に記載の使用。
【0073】
3. 前記ペプチドが、インターロイキン-4(配列番号:4)、好ましくはインターロイキン-4(配列番号:4)のAA68-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号:4)のAA71-AA86、又は1、2、3若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントのアミノ酸領域AA68-AA97に由来する15~17個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含む、前出項目のいずれかに記載の使用。
【0074】
4. 前記ペプチドが、インターロイキン-4(配列番号:4)、好ましくはインターロイキン-4(配列番号:4)のAA68-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号:4)のAA71-AA86、又は1、2、3若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントのアミノ酸領域AA68-AA97に由来する16個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含む、前出項目のいずれかに記載の使用。
【0075】
5. 前記ペプチドが、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA71-AA86 に由来する16個の連続するアミノ酸残基からなる断片、又は1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントを含む、前出項目のいずれかに記載の使用。
【0076】
6. 前記ペプチドが、構造AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)を有する16個のアミノ酸残基からなる断片、又は1つ若しくは2つの置換を有するそのバリアントを含む、前出項目のいずれかに記載の方法。
【0077】
7. 前記ペプチドが、リンカーを介して共有結合された2つ以上のペプチド断片を含む、前出項目のいずれかに記載の方法。
【0078】
8. 前記ペプチドがリンカーを介して共有結合された2つ以上のペプチド断片を含み、各ペプチド断片が、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又は1つ若しくは2つの置換を有するそのバリアントを含むか、又はそれからなる、前出項目のいずれかに記載の方法。
【0079】
9. 前記2つ以上のペプチド断片が、それらのC端末装置又はN端末装置を介して、好ましくはそれらのC端末装置を介して共有結合される、項目7又は8に記載の方法。
【0080】
10. 前記ペプチドが、式(I)の構造:
【化6】
を有するか、又は各ペプチド断片中に1つ若しくは2つの置換を有するそのバリアントである、前出項目のいずれかに記載の方法。
【0081】
11. 前記ペプチドが、式(II)の構造:
【化7】
を有するか、又は各ペプチド断片中に1つ若しくは2つの置換を有するそのバリアントである、前出項目のいずれかに記載の方法。
【0082】
12. 前記ペプチドがN末端アシル化されている、前出項目のいずれかに記載の方法。
【0083】
13. 前記ペプチドが、I型IL-4Rについてのアゴニスト及びII型IL-4Rについてのアンタゴニストある、前出項目のいずれかに記載の方法。
【0084】
14. 糖尿病性腎症の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であって、前記ペプチドが、インターロイキン-4(配列番号:4), 、好ましくはインターロイキン-4(配列番号:4)のAA68-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号:4)のAA71-AA86、又は1、2、3若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントのアミノ酸領域AA68-AA97に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含む、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【0085】
15. 項目14に記載の使用のためのペプチドであって、前記ペプチドが、インターロイキン-4(配列番号4)、好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA68-AA89 、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA71-AA86、又は1、2、3若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントのアミノ酸領域AA68-AA97に由来する14~18個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含む、ペプチド。
【0086】
16. 前記ペプチドが、インターロイキン-4(配列番号4)、好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA68-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA71-AA86、又は1、2、3若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントのアミノ酸領域AA68-AA97に由来する15~17個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含む、前記項目14~15のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0087】
17. 前記ペプチドが、インターロイキン-4(配列番号4)、好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA68-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA71-AA86、又は1、2、3若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントのアミノ酸領域AA68-AA97に由来する16個の連続するアミノ酸残基からなる断片を含む、前記項目14~16のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0088】
18. 前記ペプチドが、インターロイキン-4のアミノ酸領域AA71-AA86 (配列番号4)に由来する16個の連続するアミノ酸残基からなる断片、又は1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントを含む、前記項目14~17のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0089】
19. 前記ペプチドが、構造AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)を有する16個のアミノ酸残基からなる断片、又は1つ若しくは2つの置換を有するそのバリアントを含む、前記項目14~18のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0090】
20. 前記ペプチドが、リンカーを介して共有結合された2つ以上のペプチド断片を含む、前記項目14~19のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0091】
21. 前記ペプチドがリンカーを介して共有結合された2つ以上のペプチド断片を含み、各ペプチド断片が、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又は1つ若しくは2つの置換を有するそのバリアントを含むか、又はそれらからなる、前記項目14~20のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0092】
22. 項目20~21のいずれかに記載の使用のためのペプチドであって、前記2つ以上のペプチド断片がそれらのC端末装置又はN端末装置を介して、好ましくは、それらのC端末装置を介して共有結合している、ペプチド。
【0093】
23. 前記ペプチドが式(I)の構造:
【化8】
を有する、又は、各ペプチド断片において1若しくは2個の置換を有するそのバリアントである、前記項目のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0094】
24. 前記ペプチドが式(II)の構造:
【化9】
を有する、前項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0095】
25. 前記ペプチドがN末端アシル化されている、前記項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0096】
26. 前記ペプチドが、I型IL-4Rに対する部分アゴニスト及びII型IL-4Rについてのアンタゴニストである、前記項目のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0097】
27. 糖尿病性腎症の治療における使用のための医薬組成物であって、前記医薬組成物が前項のいずれかに記載のペプチドを含む、医薬組成物。
【0098】
(参考文献)
Klementiev B. et al.: Antiinflammatory properties of a peptide derived from interleukin-4. Cytokine, Vol. 64, No. 1, 10.2013, p. 112-21.
Frederikke E Sembach, Mette V Ostergaard, Niels Vrang, Bo Feldt-Rasmussen, Keld Fosgerau, Jacob Jelsing, Lisbeth N Fink: Rodent models of diabetic kidney disease: human translatability and preclinical validity. Review Drug Discov Today. 2021 Jan;26(1):200-217.
James P. Tam: Synthetic peptide vaccine design: Synthesis and properties of a high-density multiple antigenic peptide system. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol 85, pp. 5409-5413, August 1988.
【要約】
本開示は、糖尿病性腎症の治療のためのインターロイキン-4(IL-4)に由来するペプチド断片に関する。
【配列表】