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特許7635083レーザ照射装置、レーザ照射方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】レーザ照射装置、レーザ照射方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20250217BHJP
【FI】
H01L21/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021109201
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006546
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】521476506
【氏名又は名称】JSWアクティナシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大森 賢一
(72)【発明者】
【氏名】太田 佑三郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 玲
(72)【発明者】
【氏名】奥 信夫
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-075562(JP,A)
【文献】特開2018-018866(JP,A)
【文献】特開2021-044412(JP,A)
【文献】特開2008-288363(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054687(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0271871(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0331910(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザ光源を備えるレーザ照射装置であって、
前記複数のレーザ光源から出射されるレーザに関する制御を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記複数のレーザ光源それぞれの特性情報を取得し、
取得した特性情報それぞれに応じて所定の処理を行い、
前記複数のレーザ光源は、第1レーザ光源と第2レーザ光源とを含み、
前記レーザ照射装置は、前記第1レーザ光源から出射されたレーザ光の透過率を定める第1アッテネータと、前記第2レーザ光源から出射されたレーザ光の透過率を定める第2アッテネータとを備え、
前記制御部は、
前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源のそれぞれの特性情報に基づき、前記第1アッテネータ及び前記第2アッテネータのそれぞれの透過率を導出し、
導出した透過率に基づき、前記第1アッテネータ及び前記第2アッテネータの透過率を制御する
レーザ照射装置。
【請求項2】
前記特性情報は、前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源のエネルギー安定性に関する情報を含み、
前記制御部は、前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源の内、エネルギー安定性が良いレーザ光源のアッテネータの透過率を、他方のレーザ光源のアッテネータの透過率よりも高くする
請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記特性情報は、前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源のポインティング安定性に関する情報を含み、
前記制御部は、前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源の内、ポインティング安定性が良いレーザ光源のアッテネータの透過率を、他方のレーザ光源のアッテネータの透過率よりも高くする
請求項1又は請求項2に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1レーザ光源のエネルギー密度に前記第1アッテネータの透過率を乗算した値と、前記第2レーザ光源のエネルギー密度に前記第2アッテネータの透過率を乗算した値とを加算した合成エネルギー密度が一定となるように、前記第1アッテネータ及び前記第2アッテネータの透過率を導出する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項5】
前記第1アッテネータの出射端側に設けられた第1偏光比制御ユニットと、
前記第2アッテネータの出射端側に設けられた第2偏光比制御ユニットとを備え、
前記制御部は、導出した透過率に基づき、前記第1偏光比制御ユニット及び前記第2偏光比制御ユニットにおける偏光比を変更する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1レーザ光源の特性情報と前記第2レーザ光源の特性情報とを入力した場合に前記第1アッテネータの透過率と前記第2アッテネータの透過率とを出力する透過率学習モデルに、取得した前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源の特性情報を入力することによって、前記第1アッテネータ及び前記第2アッテネータのそれぞれの透過率を導出する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項7】
前記第1アッテネータの出射端側に設けられた第1偏光比制御ユニットと、
前記第2アッテネータの出射端側に設けられた第2偏光比制御ユニットと、
前記レーザ光源からのレーザ光が照射される基板の輝度を検出するOEDセンサー及びムラモニターとを備え、
前記透過率学習モデルは、前記第1レーザ光源の特性情報、前記第2レーザ光源の特性情報、前記OEDセンサーからの検出値、及び前記ムラモニターからの検出値を入力した場合に前記第1アッテネータの透過率、前記第2アッテネータの透過率、前記第1偏光比制御ユニットの偏光比、及び前記第2偏光比制御ユニットの偏光比を出力するものであり、
前記制御部は、前記透過率学習モデルに、取得した前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源の特性情報と、前記OEDセンサー及び前記ムラモニターからの検出値とを入力することによって、前記第1アッテネータ及び前記第2アッテネータのそれぞれの透過率と、前記第1偏光比制御ユニット及び前記第2偏光比制御ユニットのそれぞれの偏光比とを導出する
請求項6に記載のレーザ照射装置。
【請求項8】
複数のレーザ光源を備えるレーザ照射装置であって、
前記複数のレーザ光源から出射されるレーザに関する制御を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記複数のレーザ光源それぞれの特性情報を取得し、
取得した特性情報それぞれに応じて所定の処理を行い、
前記複数のレーザ光源それぞれから出射されるレーザのパルス波形を前記特性情報として取得し、
取得した複数のパルス波形の同期ずれ値を導出し、
導出した同期ずれ値が予め定められた許容閾値以上となった場合、報知信号を出力する
レーザ照射装置。
【請求項9】
前記制御部は、複数のパルス波形を入力した場合に該複数のパルス波形の同期ずれ値を出力する同期ずれ値学習モデルに、取得した複数のパルス波形を入力することによって、前記同期ずれ値を導出する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項10】
複数のレーザ光源から出射されるレーザに関する制御を行うコンピュータに、
(A)前記複数のレーザ光源それぞれの特性情報を取得し、
(B)取得した特性情報それぞれに応じて所定の処理を行い、
前記複数のレーザ光源は、第1レーザ光源と第2レーザ光源とを含み、
前記複数のレーザ光源を備えるレーザ照射装置は、前記第1レーザ光源から出射されたレーザ光の透過率を定める第1アッテネータと、前記第2レーザ光源から出射されたレーザ光の透過率を定める第2アッテネータとを備え、
前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源のそれぞれの特性情報に基づき、前記第1アッテネータ及び前記第2アッテネータのそれぞれの透過率を導出し、
導出した透過率に基づき、前記第1アッテネータ及び前記第2アッテネータの透過率を制御する
処理を実行させるレーザ照射方法。
【請求項11】
複数のレーザ光源から出射されるレーザに関する制御を行うコンピュータに、
(A)前記複数のレーザ光源それぞれの特性情報を取得し、
(B)取得した特性情報それぞれに応じて所定の処理を行い、
前記複数のレーザ光源は、第1レーザ光源と第2レーザ光源とを含み、
前記複数のレーザ光源を備えるレーザ照射装置は、前記第1レーザ光源から出射されたレーザ光の透過率を定める第1アッテネータと、前記第2レーザ光源から出射されたレーザ光の透過率を定める第2アッテネータとを備え、
前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源のそれぞれの特性情報に基づき、前記第1アッテネータ及び前記第2アッテネータのそれぞれの透過率を導出し、
導出した透過率に基づき、前記第1アッテネータ及び前記第2アッテネータの透過率を制御する
処理を実行させるプログラム。
【請求項12】
複数のレーザ光源から出射されるレーザに関する制御を行うコンピュータに、
(A)前記複数のレーザ光源それぞれの特性情報を取得し、
(B)取得した特性情報それぞれに応じて所定の処理を行い、
前記複数のレーザ光源それぞれから出射されるレーザのパルス波形を前記特性情報として取得し、
取得した複数のパルス波形の同期ずれ値を導出し、
導出した同期ずれ値が予め定められた許容閾値以上となった場合、報知信号を出力する
処理を実行させるレーザ照射方法。
【請求項13】
複数のレーザ光源から出射されるレーザに関する制御を行うコンピュータに、
(A)前記複数のレーザ光源それぞれの特性情報を取得し、
(B)取得した特性情報それぞれに応じて所定の処理を行い、
前記複数のレーザ光源それぞれから出射されるレーザのパルス波形を前記特性情報として取得し、
取得した複数のパルス波形の同期ずれ値を導出し、
導出した同期ずれ値が予め定められた許容閾値以上となった場合、報知信号を出力する
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ照射装置、レーザ照射方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコン薄膜を形成するためのレーザアニール装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のレーザアニール装置は、レーザ光パルスの波形を整形する波形整形装置を含み、当該波形整形装置によってライン状に成形されたレーザ光がアモルファスシリコン膜に照射されることにより、多結晶シリコン薄膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-15545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のレーザアニール装置は、複数のレーザ光源から出射されたレーザ光に関する制御を行う点について考慮されていない。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、複数のレーザ光源から出射されたレーザ光に関する制御を効率的に行うことができるレーザ照射装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本態様に係るレーザ照射装置は、複数のレーザ光源を備えるレーザ照射装置であって、前記複数のレーザ光源から出射されるレーザに関する制御を行う制御部を備え、前記制御部は、前記複数のレーザ光源それぞれの特性情報を取得し、取得した特性情報それぞれに応じて所定の処理を行う。
【0007】
本態様に係るレーザ照射方法は、複数のレーザ光源から出射されるレーザに関する制御を行うコンピュータに、(A)前記複数のレーザ光源それぞれの特性情報を取得し、(B)取得した特性情報それぞれに応じて所定の処理を行う処理を実行させる。
【0008】
本態様に係るプログラムは、複数のレーザ光源から出射されるレーザに関する制御を行うコンピュータに、(A)前記複数のレーザ光源それぞれの特性情報を取得し、(B)取得した特性情報それぞれに応じて所定の処理を行う処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のレーザ光源から出射されたレーザ光に関する制御を効率的に行うレーザ照射装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係るレーザアニール装置の構成例を示す図である。
図2】レーザアニール装置に含まれる制御装置の構成例を示す図である。
図3】制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】実施形態2(偏光比)に係るレーザアニール装置の構成例を示す図である。
図5】偏光比テーブルの一例を示す説明図である。
図6】制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態3(透過率学習モデル)に係る透過率学習モデルの一例を示す説明図である。
図8】制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】実施形態4(同期ずれ)に係るレーザアニール装置の構成例を示す図である。
図10】同期ずれ値学習モデルの一例を示す説明図である。
図11】パルス信号における同期ずれを例示する説明図である。
図12】実際の同期ずれ値と、同期ずれ値学習モデルによる同期ずれ値とを混同行列にて例示する説明図である。
図13】制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14】その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図15】その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図16】その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図17】その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図18】その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施形態1に係るレーザアニール装置1の構成例を示す図である。図2は、レーザアニール装置1に含まれる制御装置9の構成例を示す図である。レーザアニール装置1(レーザ照射装置)は、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)膜を形成するエキシマレーザアニール(ELA:Excimer laser Anneal)装置である。
【0012】
レーザアニール装置1は、レーザ光を基板8上に形成されたシリコン膜に照射する。これにより、非晶質のシリコン膜(アモルファスシリコン膜:a-Si膜)を多結晶のシリコン膜(ポリシリコン膜:p-Si膜)に変換することができる。基板8は、例えば、ガラス基板などの透明基板である。
【0013】
本実施形態における図示のとおり、XYZ三次元直交座標系において、Z方向は、鉛直方向となり、基板8に垂直な方向である。XY平面は、基板8のシリコン膜が形成された面と平行な平面である。例えば、X方向は、矩形状の基板8の長手方向となり、Y方向は基板8の短手方向となる。Z軸を中心に0°から90°に回転可能なΘ軸ステージ71を使用する場合、X方向は基板8の短手方向となり、Y方向は基板8の長手方向となりうる。
【0014】
レーザアニール装置1は、アニール光学系11、レーザ照射室7、及び制御装置9を備える。レーザ照射室7は、ベース72と、ベース72上に配置されたステージ71とを収容する。レーザアニール装置1において、ステージ71により基板8を+X方向に搬送しながら、シリコン膜201にレーザ光が照射される。レーザアニール装置1は、更に、出射されたレーザ光に関する情報を検出する検出部として、バイプラナ光電管62、OEDセンサー63、及びムラモニター64を備える。
【0015】
アニール光学系11は、基板8に形成されたアモルファスシリコン膜を結晶化し、ポリシリコン膜に変換するためのレーザ光を生成し、当該アモルファスシリコン膜に照射するための光学系である。アニール光学系11は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22を含むレーザ光源2、第1アッテネータ31、第2アッテネータ32、合成光学系5、ビーム整形光学系6、落射ミラー61、及びプロジェクションレンズ65を含み、複数のレーザ光を合成したレーザ光を出射する光学系である。
【0016】
レーザ光源2は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22を含み、複数のレーザ光源2により構成される。本実施形態においては、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22による2台構成としているが、これに限定されず、レーザ光源2は、3台以上のレーザ光源2により構成されるものであってもよい。
【0017】
第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22は、アモルファスシリコン膜(被処理体)に照射するためのレーザ光として、パルスレーザ光を発生させるレーザ発生装置である。発生させるレーザ光は、基板8上の非結晶膜を結晶化して結晶化膜を形成するためのレーザ光であり、例えば、中心波長308nmのエキシマレーザ光等のガスレーザ光である。又は、ガスレーザ光は、エキシマレーザ光に限定されず、Co2レーザなど、その他のガスレーザでもよい。
【0018】
第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22には、チャンバ内にキセノン等のガスが封入されると共に、2枚の共振器ミラーがガスを挟んで対向するように配置されている。共振器ミラーは、全ての光を反射する全反射ミラーであり、共振器ミラーは、一部の光を透過する部分反射ミラーである。ガスによって励起されたガス光が共振器ミラーの間で反射を繰り返し、増幅された光が共振器ミラーからレーザ光として放出される。例えば、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22は、パルス状のレーザ光を、500Hzから600Hzの周期で繰り返し放出する。第1レーザ光源21は、レーザ光を第1アッテネータ31に向けて出射する。第2レーザ光源22は、レーザ光を第2アッテネータ32に向けて出射する。
【0019】
第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32は、入射されたレーザ光を減衰して、所定のエネルギー密度に調整する。これらアッテネータは、特性として、入射されたレーザ光に対し、出射するレーザ光の比率を示す透過率を有し、当該透過率は、制御装置9からの信号に基づき可変となるように構成されている。
【0020】
第1アッテネータ31は、第1レーザ光源21から合成光学系5に至る光路の途中に設けられている。第2アッテネータ32は、第2レーザ光源22から合成光学系5に至る光路の途中に設けられている。第1アッテネータ31は、第1レーザ光源21が出射したレーザ光を透過率に応じて、減衰する。第2アッテネータ32は、第2レーザ光源22が出射したレーザ光を透過率に応じて、減衰する。
【0021】
第1アッテネータ31から出射されるエネルギー密度(E11)は、第1レーザ光源21から出射されるレーザ光のエネルギー密度(E1)に、第1アッテネータ31の透過率(T1)を乗算した値(E11=E1×T1)となる。第2アッテネータ32から出射されるエネルギー密度(E22)は、第2レーザ光源22から出射されるレーザ光のエネルギー密度(E2)に、第2アッテネータ32の透過率(T2)を乗算した値(E22=E2×T2)となる。
【0022】
第1アッテネータ31の透過率(T1)及び第2アッテネータ32の透過率(T2)は制御装置9により変更可能(可変)に構成されており、制御装置9は、第1アッテネータ31から出射されるエネルギー密度(E11)と第2アッテネータ32から出射されるエネルギー密度(E22)との合計値が一定(E1×T1+E2×T2=一定)となるように、これら透過率(T1、T2)を変更する。
【0023】
合成光学系5は、例えばビームスプリッタなどを有しており、第1レーザ光源21から出射されたレーザと、第2レーザ光源22から出射されたレーザ光とを合成する。合成光学系5と、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22との間の光路には、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32が配置されているため、第1アッテネータ31から出射されたレーザと、第2アッテネータ32から出射されたレーザ光とが、合成光学系5に入射され、当該合成光学系5により、これらレーザが合成される。
【0024】
光軸と直交する平面視において、第1レーザ光源21からのレーザ光と、第2レーザ光源22からのレーザ光とが重複する。合成光学系5によって、第1レーザ光源21からのレーザ光及び、第2レーザ光源22からのレーザ光は、空間的に重複して同軸となることにより、合成されたレーザ光となる。合成光学系5によって合成されたレーザ光は、ビーム整形光学系6に入射される。
【0025】
ビーム整形光学系6には合成光学系5によって合成されたレーザ光が入射され、当該ビーム整形光学系6は、入射されたレーザ光(合成されたレーザ光)を整形して、シリコン膜への照射に適したビーム形状のレーザ光を生成する。ビーム整形光学系6は、Y方向に沿ったライン状のラインビームを生成する。
【0026】
ビーム整形光学系6は、例えば、レンズアレイから構成されるホモジナイザによって、1つのビームを複数のビームに分割(Z方向に並んだ複数のラインビーム)する。複数のビームに分割後、コンデンサーレンズによって合成することでラインビーム状に整形することができる。ビーム整形光学系6は、生成(整形)したライン状のレーザ光を落射ミラー61に出射する。
【0027】
落射ミラー61は、Y方向に延びる矩形状の反射ミラーであり、ビーム整形光学系6が生成した複数のラインビームであるレーザ光を反射する。落射ミラー61は、例えば、ダイクロイックミラーであり、一部の光を透過する部分反射ミラーである。落射ミラー61は、ライン状のレーザ光を反射させて反射光を生成すると共に、当該ライン状のレーザ光一部を透過させて透過光を生成する。落射ミラー61は、反射光であるレーザ光を基板8のシリコン膜に照射し、透過光でレーザ光を、例えばバイプラナ光電管62等のパルス計測器へ出射する。
【0028】
プロジェクションレンズ65は、基板の上方に配置されている。プロジェクションレンズ65は、レーザ光を基板、すなわち、シリコン膜に投射するための複数のレンズを有している。プロジェクションレンズ65は、レーザ光を基板に集光している。基板8上において、レーザ光がY方向に沿ったライン状の照射領域を形成する。すなわち、基板8上において、レーザ光は、Y方向を長手方向とするラインビームとなっている。また、+X方向に基板8を搬送しながら、レーザ光がシリコン膜に照射される。これにより、Y方向における照射領域の長さを幅とする帯状の領域にレーザ光を照射することができる。
【0029】
落射ミラー61に照射されるラインビーム状のレーザ光は、短軸幅が広がったビーム形状となり、すなわちコンデンサーレンズから出射された以降、当該短軸幅が多少広がり、崩れた形状となっている。落射ミラー61によって反射されたレーザ光は、プロジェクションレンズ65を通過することによって、短軸幅が1/5程度のラインビーム状のレーザ光に整形される。
【0030】
バイプラナ光電管62は、ビーム整形光学系6に隣接して、アニール光学系11の端部に設けられており、落射ミラー61を透過した透過光に基づき、レーザ光源2から出射されたレーザ光のパルス波形を検出する。バイプラナ光電管62は、検出したパルス波形を制御装置9に出力(送信)する。
【0031】
OEDセンサー63は光センサーを含み、レーザ光源2とは別個の光源(別光源)から出射された光の反射光(基板8にて反射された反射光)を検出して、基板8上の結晶表面に関する情報を取得する。OEDセンサー63は、検出した反射光の輝度(検出値)を、制御装置9に出力(信号として送信)する。
【0032】
ムラモニター64はラインカメラとライン照明を含み、レーザ光が照射された基板8の注目領域を当該ラインカメラで撮像し、撮像した画像に含まれる当該注目領域の平均輝度を検出して、基板8の表面形状の散乱光に関する情報を取得する。ムラモニター64は、検出した基板8(注目領域)の平均輝度(検出値)を制御装置9に出力(信号として送信)する。
【0033】
レーザ光源2を構成する第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22(複数台のレーザ光源2)は、全て同じ仕様となっているが、出射されるエネルギー密度は、製品個体差により異なる値(E1≠E2)となっている。第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22は、例えば、パルス間エネルギー安定性(δ/mean)、又はポインティング安定性(P)等の特性情報を有する。第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22において、これらパルス間エネルギー安定性(エネルギー安定性:δ/mean)又はポインティング安定性(pointing:P)等の特性においては、工業製品として個体差が生じるものとなる。
【0034】
パルス間エネルギー安定性(δ/mean)は、例えば0.30%以内(≦0.30%)となるように製品仕様として定義されている。当該パルス間エネルギー安定性を示す値(δ)は、いわゆる、ばらつき度(標準偏差)を示す値に相当するものであり、当該値が小さいほど、安定性は高く(ばらつきが小さい)、特性が良い。当該値(δ)が大きいほど、安定性は低く(ばらつきが大きい)、特性が悪いものとなる。
【0035】
ポインティング安定性(P)は、例えば±0.15mrad以内となるように製品仕様として定義されている。当該ポインティング安定性を示す値(P)は、いわゆる、ばらつき度を示す値に相当するものであり、当該値の絶対値が小さい(0に近い)ほど、安定性は高く(ばらつきが低い)、特性が良い。当該値(P)が大きいほど、安定性は低く(ばらつきが大きい)、特性が悪いものとなる。
【0036】
このように同じ仕様である第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22(複数台のレーザ光源2)において、工業製品として個体差、すなわち特性のばらつき(特性情報の差異)が発生し得る。詳細は後述するが、制御装置9は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のそれぞれの特性情報に基づき、特性が良い(ばらつきが少ない)レーザ光源2に接続されるアッテネータの透過率を、他方のレーザ光源2に接続されるアッテネータの透過率よりも大きくする。これにより、特性が良い(ばらつきが少ない)レーザ光源2から出射されるレーザ光を優先的に用いて、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22からのレーザ光を合成したレーザ光を基板8に照射させ、加工品質を向上させることができる。
【0037】
制御装置9は、レーザアニール装置1の全体的又は統合的な制御又は管理を行うパソコン又はサーバ装置等の情報処理装置である。制御装置9は、制御部91、記憶部92、通信部93及び入出力I/F94を含み、当該通信部93又は入出力I/F94を介して、レーザ光源2又はアニール光学系11における各光学系を制御する制御デバイス(他の制御装置)と通信可能に接続されている。制御装置9は、レーザアニール装置1に含まれるパルス計測器、光検出器等の各種計測装置と通信可能に接続されており、これら各種計測装置から出力された計測データに基づき、レーザ光源2又はアニール光学系11に対する種々の制御を行う。
【0038】
制御部91は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等、計時機能を備えた演算処理装置を有し、記憶部92に記憶されたプログラムP(プログラム製品)を読み出して実行することにより、種々の情報処理及び、レーザ光源2又はアニール光学系11に含まれる各光学系に対する制御処理等を行う。
【0039】
記憶部92は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の揮発性記憶領域及び、EEPROM又はハードディスク等の不揮発性記憶領域を含む。記憶部92には、プログラムP(プログラム製品)及び処理時に参照するデータが予め記憶してある。記憶部92に記憶されたプログラムPは、制御部91が読み取り可能な記録媒体920から読み出されたプログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶部92に記憶させたものであってもよい。
【0040】
通信部93は、例えばイーサネット(登録商標)の規格に準拠した通信モジュール又は通信インターフェイスであり、当該通信部93にはイーサネットケーブルが接続される。通信部93は、当該イーサネットケーブル等の有線である場合に限定されず、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の狭域無線通信モジュール、又は4G、5G等の広域無線通信モジュール等の無線通信に対応した通信インターフェイスであってもよい。
【0041】
入出力I/F94は、例えばRS232C又はUSB等の通信規格に準拠した通信インターフェイスである。入出力I/F94には、キーボード等の入力装置、又は液晶ディスプレイ等の表示装置941が接続される。
【0042】
図3は、制御部91による処理手順の一例を示すフローチャートである。レーザアニール装置1に含まれる制御装置9の制御部91は、例えば入出力に接続されるキーボード等による操作者の操作を受付け、当該受け付けた操作に基づき、以下の処理を行う。
【0043】
制御装置9の制御部91は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報を取得する(S101)。制御装置9の制御部91は、通信部93又は入出力I/F94を介して、パルス計測器等の計測装置から、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報を取得する。又は、制御装置9の制御部91は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の制御デバイスから、これら特性情報を取得するものであってもよい。当該特性情報は、例えば、パルス間エネルギー安定性(エネルギー安定性:δ/mean)、ポインティング安定性(pointing:P)、又はこれら双方の情報を含む。これら計測装置又は制御デバイスは、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報を検出するための特性情報検出部として機能する。
【0044】
制御装置9の制御部91は、例えば、基板8に対するアニール加工の準備工程において第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22それぞれを別個に駆動し、第1レーザ光源21から出射されたレーザ光と、第2レーザ光源22から出射されたレーザ光とのそれぞれに基づき、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のそれぞれの特性情報を取得するものであってもよい。
【0045】
制御装置9の制御部91は、取得した特性情報に基づき、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を導出する(S102)。制御装置9の制御部91は、特性情報として取得した第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のパルス間エネルギー安定性又はポインティング安定性等に基づき、特性の良いレーザ光源2を特定する。制御装置9の制御部91は、当該特性の良いレーザ光源2に接続されているアッテネータの透過率を、他方のレーザ光源2に接続されているアッテネータの透過率よりも大きくなるように、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を導出する。
【0046】
上述のとおり、パルス間エネルギー安定性又はポインティング安定性等の特性情報は、ばらつき度(標準偏差)を示す値にて定義されるものとなるため、当該特性情報の値が小さい(0に近い)ほど、レーザ光源2の特性は良いものとなる。例えば、第1レーザ光源21のパルス間エネルギー安定性(エネルギー安定性:δ1)が、第2レーザ光源22のパルス間エネルギー安定性(エネルギー安定性:δ2)よりも大きい場合(δ1>δ2)、第2レーザ光源22の特性は第1レーザ光源21の特性よりも良いものとなり、第1アッテネータ31の透過率(T1)は、第1アッテネータ31の透過率(T2)よりも小さい値となる(T1<T2)。
【0047】
第1レーザ光源21のポインティング安定性(P1)が、第2レーザ光源22のポインティング安定性(P2)よりも小さい場合(P1<P2)、第1レーザ光源21の特性は第2レーザ光源22の特性よりも良いものとなり、第1アッテネータ31の透過率(T1)は、第1アッテネータ31の透過率(T2)よりも大きい値となる(T1>T2)。
【0048】
例えばパルス間エネルギー安定性(δ)とポインティング安定性(P)とによる複数の特性情報に基づき、特性の良いレーザ光源2を特定する場合、これら特性情報の値を合算した値(δ+P)を用いて、第1レーザ光源21の特性情報の値(δ1+P1)と、第2レーザ光源22の特性情報の値(δ2+P2)とを比較するものであってもよい。
【0049】
制御装置9の制御部91は、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32のそれぞれの特性情報に基づき、特性の良いレーザ光源2を特定して、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率の大小関係を決定する。制御装置9の制御部91は、更に第1アッテネータ31から出射されるエネルギー密度と第2アッテネータ32から出射されるエネルギー密度(E22)との合計値が一定(E1×T1+E2×T2=一定)となるように、これら透過率(T1、T2)を変更する。
【0050】
制御装置9の制御部91は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報(δ1、P1、δ2、P2)を入力因子として、透過率(T1、T2)を算出する関数を用いて、当該透過率を導出するものであってもよい。又は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報(δ1、P1、δ2、P2)の組み合わせパターンに応じて、透過率(T1、T2)を定義(特定)するルックアップテーブルが、制御装置9の記憶部92に記憶されており、制御装置9の制御部91は当該ルックアップテーブルを参照することにより、当該透過率を導出するものであってもよい。
【0051】
制御装置9の制御部91は、導出した透過率に基づき、制御信号を生成する(S103)。制御装置9の制御部91は、生成した制御信号それぞれを第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32に出力する(S104)。制御装置9の制御部91は、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32のそれぞれの透過率(T1、T2)に基づき、第1アッテネータ31用の制御信号、及び第2アッテネータ32用の制御信号を生成する。
【0052】
制御装置9の制御部91は、生成した第1アッテネータ31用の制御信号を第1アッテネータ31に出力し、第2アッテネータ32用の制御信号を第2アッテネータ32に出力する。制御装置9の制御部91は、これら制御信号を出力するあたり、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の制御デバイスに対し、通信部93を介して当該制御信号を出力するものであってもよい。
【0053】
第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32は、制御装置9から出力(送信)された制御信号を取得(受信)し、取得した制御信号に応じて、透過率を変更する。制御装置9の制御部91は、S104の処理の実行後、再度S101からの処理を実行すべく、ループ処理を行うものであってもよい。制御装置9の制御部91は、当該フローによる一連の処理を準備工程に行う場合に限定されず、基板8の加工処理と並行して実行し、基板8の加工処理中(生産工程中)に動的に第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を動的に変更するものであってもよい。
【0054】
本実施形態によれば、レーザアニール装置1(レーザアニール装置1)の制御装置9は、各レーザ光源2の特性情報それぞれに応じて、当該レーザ光源2から出射されるレーザに関する所定の処理を行う。これにより、複数のレーザ光源2を備えるレーザアニール装置1において、当該複数のレーザ光源2において製品個体差がある場合であっても、当該個体差(ばらつき)を吸収した制御を行うことができる。複数のレーザ光源2から出射されるレーザそれぞれを合成するにあたり、合成されたレーザの安定性等を向上させ、当該合成されたレーザが照射されるに基板8等に対する照射ムラが発生することを抑制することができる。
【0055】
本実施形態によれば、レーザアニール装置1(レーザ照射装置)の制御装置9は、第1レーザ光源21と第2レーザ光源22との特性情報に基づき導出した透過率に基づき、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を制御するため、これらアッテネータを適切に制御することができる。
【0056】
本実施形態によれば、レーザアニール装置1の制御装置9は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22において、パルス間エネルギー安定性に関する値(δ)が大きい(ばらつきが大きく、エネルギー安定性が低い)レーザ光源2のアッテネータの透過率を、他方のレーザ光源2のアッテネータの透過率よりも低くする。これにより、パルス間エネルギー安定性に関する値(δ)が小さい(ばらつきが小さく、エネルギー安定性が高い)レーザ光源2に対する透過率を高くすることができ、当該エネルギー安定性が高いレーザ光源2を優先的に用いて、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のレーザ光を合成し、基板8等に対する加工品質を向上させることができる。
【0057】
本実施形態によれば、レーザアニール装置1の制御装置9は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22において、ポインティング安定性に関する値(P)が大きい(ばらつきが大きく、ポインティング安定性が低い)レーザ光源2のアッテネータの透過率を、他方のレーザ光源2のアッテネータの透過率よりも低くする。これにより、ポインティング安定性に関する値(P)が小さい(ばらつきが小さく、ポインティング安定性が高い)レーザ光源2に対する透過率を高くすることができ、当該ポインティング安定性が高いレーザ光源2を優先的に用いて、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のレーザ光を合成し、基板8に対する加工品質を向上させることができる。
【0058】
本実施形態によれば、レーザアニール装置1の制御装置9は、第1レーザ光源21のエネルギー密度に第1アッテネータ31の透過率を乗算した値と、第2レーザ光源22のエネルギー密度に第2アッテネータ32の透過率を乗算した値とを加算した合成エネルギー密度が一定となるように、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を導出する。これにより、レーザアニール装置1の可動中において、動的に第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を変更するにあたり、基板8に照射されるレーザのエネルギー密度(合成エネルギー密度)を一定に保ち、照射ムラが発生することを抑制することができる。
【0059】
(実施形態2)
図4は、実施形態2(偏光比)に係るレーザアニール装置1の構成例を示す図である。実施形態2のレーザアニール装置1は、実施形態1のレーザアニール装置1と同様に、プロジェクションレンズ65等を含むアニール光学系11、レーザ照射室7及び制御装置9を備え、更に第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42を備える。
【0060】
第1偏光比制御ユニット41は、第1アッテネータ31の出射側に配置され、第2偏光比制御ユニット42は、第2アッテネータ32の出射側に配置されている。第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42は、例えば1/2波長板(λ/2板)及び偏光ビームスプリッタにて構成され、入射されたレーザ光のP偏波とS偏波との偏光比を変更する。
【0061】
第1偏光比制御ユニット41は、第1アッテネータ31から出射されたレーザ光の偏光比を変更する。第2偏光比制御ユニット42は、第2アッテネータ32から出射されたレーザ光の偏光比を変更する。第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42は、制御装置9から出力された制御信号に基づき、それぞれの偏光比を変更(可変)するように構成されている。
【0062】
第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を変更した場合、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32から出射されるレーザ光の偏光比は、当該透過率に応じて変更される。これに対し、制御装置9は、変更された透過率に応じて、対応する偏光比を変更することにより、第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42から出射されたレーザ光それぞれの偏光比を一定となるように制御する。
【0063】
制御装置9は、第1アッテネータ31の透過率を変更する場合、第1偏光比制御ユニット41の偏光比を変更し、第1偏光比制御ユニット41から出射されるレーザ光の偏光比が一定となるように制御する。制御装置9は、第2アッテネータ32の透過率を変更する場合、第2偏光比制御ユニット42の偏光比を変更し、第2偏光比制御ユニット42から出射されるレーザ光の偏光比が一定となるように制御する。
【0064】
図5は、偏光比テーブルの一例を示す説明図である。偏光比テーブルは、横軸を透過率とし、縦軸を偏光比として、各透過率に対応する偏光比それぞれが定義されている。制御装置9は、第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42の偏光比を変更するにあたり、例えばテーブル形式にて制御装置9の記憶部92に記憶されている情報(偏光比テーブル)を参照し、透過率に応じて偏光比を特定(導出)するものであってもよい。
【0065】
図6は、制御部91による処理手順の一例を示すフローチャートである。制御装置9の制御部91は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報を取得する(S201)。制御装置9の制御部91は、取得した特性情報に基づき、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を導出する(S202)。制御装置9の制御部91は、実施形態1のS101及びS102と同様にS201及びS202の処理を行う。
【0066】
制御装置9の制御部91は、透過率に基づき、第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42の偏光比を導出する(S203)。制御装置9の制御部91は、例えば、記憶部92に記憶されている偏光比テーブルを参照することより、導出した第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42の透過率(T1、T2)に対応する1偏光比制御ユニット及び第2偏光比制御ユニット42の偏光比を導出する。
【0067】
制御装置9の制御部91は、導出した透過率及び偏光比に基づき、制御信号を生成する(S204)。制御装置9の制御部91は、生成した制御信号それぞれを第1アッテネータ31、第2アッテネータ32、第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42に出力する(S205)。制御装置9の制御部91は、実施形態1のS103及びS104と同様に、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22への制御信号を生成し、出力する。
【0068】
制御装置9の制御部91は、導出したそれぞれの偏光比に基づき、第1偏光比制御ユニット41用の制御信号、及び第2偏光比制御ユニット42用の制御信号を生成する。制御装置9の制御部91は、生成した第1偏光比制御ユニット41用の制御信号を第1偏光比制御ユニット41に出力し、第2偏光比制御ユニット42用の制御信号を第2偏光比制御ユニット42に出力する。制御装置9の制御部91は、これら制御信号を出力するあたり、第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42の制御デバイスに対し、通信部93を介して当該制御信号を出力するものであってもよい。
【0069】
第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32は、制御装置9から出力(送信)された制御信号を取得(受信)し、取得した制御信号に応じて、それぞれの透過率を変更する。第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42は、制御装置9から出力(送信)された制御信号を取得(受信)し、取得した制御信号に応じて、それぞれの偏光比を変更する。制御装置9の制御部91は、実施形態1と同様にS205の処理の実行後、再度S201からの処理を実行すべく、ループ処理を行うものであってもよい。
【0070】
本実施形態によれば、レーザアニール装置1の制御装置9は、導出した透過率に基づき、第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42それぞれから出射するレーザの偏光比が一定となるように、第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42における偏光比を変更する。レーザアニール装置1の制御部91は、例えば記憶部92に記憶されている偏光比テーブルを参照することにより、透過率に応じた偏光比を特定(導出)するものであってもよい。
【0071】
第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率が変化することにより、当該第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32それぞれから出射するレーザの偏光比も変化する。これに対し、偏光比が一定となるように第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42の偏光比を変更して、合成されるレーザの偏光比を一定に保ち、照射ムラを抑制することができる。
【0072】
(実施形態3)
図7は、実施形態3(透過率学習モデル921)に係る透過率学習モデル921の一例を示す説明図である。制御装置9の制御部91は、訓練データを用いてニューラルネットワークを学習させ、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報を入力した場合、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を出力する透過率学習モデル921を生成する。又は、透過率学習モデル921は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報、OEDセンサー63からの輝度(検出値)、及びムラモニター64からの平均輝度(検出値)を入力した場合、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率と、第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42の偏光比とを出力するものであってもよい。
【0073】
当該訓練データは、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報を含む問題データと、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を含む回答データから構成され、制御装置9の記憶部92に記憶されている。又は、当問題データは、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報、OEDセンサー63からの輝度(検出値)、及びムラモニター64からの平均輝度(検出値)を含むものであってもよい。そして、回答データは、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率、第1偏光比制御ユニット41、及び第2偏光比制御ユニット42の偏光比を含むものであってもよい。これら訓練データの元データは、例えば複数のレーザアニール装置1の稼働実績データを集約することにより、生成することができる。
【0074】
訓練データを用いて学習されたニューラルネットワーク(透過率学習モデル921)は、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとして利用が想定される。透過率学習モデル921は、制御装置9にて用いられるものであり、このように演算処理能力を有するこのように演算処理能力を有する制御装置9にて実行されることにより、ニューラルネットワークシステムが構成される。
【0075】
透過率学習モデル921は、DNN(Deep Neural Network)にて構成され、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報の入力を受け付ける入力層と、当該特性情報の特徴量を抽出する中間層と、透過率を出力とする出力層とを有する。又は、当該入力層は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報、OEDセンサー63からの輝度(検出値)、及びムラモニター64からの平均輝度(検出値)の入力を受け付けるものであってもよい。中間層は、これら特性情報及び検出値の特徴量を抽出し、出力層は、それぞれの透過率及び偏光比を出力するものであってもよい。
【0076】
入力層は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報等の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された値を中間層に受け渡す。中間層は、ReLu関数又はシグモイド関数等の活性化関数を用いて定義され、入力されたそれぞれの値の特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した特徴量を出力層に受け渡す。当該活性化関数の重みづけ係数及びバイアス値等のパラメータは、誤差逆伝播法を用いて最適化される。出力層は、例えば全結合層により構成され、中間層から出力された特徴量に基づいて第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を出力し、更に第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42の偏光比を出力するものであってもよい。
【0077】
本実施形態では、透過率学習モデル921は、DNNであるとしたがこれに限定されず、DNN以外のニューラルネットワーク、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long-short term model)、CNN、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、線形回帰、回帰木、重回帰、ランダムフォレスト、アンサンブルなど、他の学習アルゴリズムで構築された学習モデルであってよい。
【0078】
レーザアニール装置1に含まれる制御装置9が透過率学習モデル921を生成するとしたが、これに限定されず、透過率学習モデル921は、当該制御装置9以外となるクラウドサーバ等の外部のサーバ装置等によって、学習及び生成されるものであってもよい。透過率学習モデル921は、制御装置9にて用いられるものとしたが、これに限定されず、制御装置9は、通信部93を介して、例えばインターネット等に接続されるクラウドサーバ等と通信し、当該クラウドサーバに実装された透過率学習モデル921によって出力された透過率を取得するものであってもよい。
【0079】
図8は、制御部91による処理手順の一例を示すフローチャートである。制御装置9の制御部91は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報を取得する(S301)。制御装置9の制御部91は、実施形態1のS101と同様に、S301の処理を行う。
【0080】
制御装置9の制御部91は、取得した特性情報を、透過率学習モデル921に入力することにより、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を導出する(S302)。制御装置9の制御部91は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報を透過率学習モデル921に入力する。透過率学習モデル921は、当該入力された特性情報に応じて、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を出力する。制御装置9の制御部91は、透過率学習モデル921が出力した透過率を取得することにより、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を導出する。
【0081】
制御装置9の制御部91は、導出した透過率に基づき、制御信号を生成する(S303)。制御装置9の制御部91は、生成した制御信号それぞれを第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32に出力する(S304)。制御装置9の制御部91は、実施形態1のS103及びS104と同様に、S303及びS304の処理を行う。
【0082】
本実施形態におけるフローチャートにて、制御装置9の制御部91は、取得した特性情報を透過率学習モデル921に入力し、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率を導出するとしたが、これに限定されない。制御装置9の制御部91は、取得した第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報、OEDセンサー63からの検出値、及びムラモニター64からの検出値を透過率学習モデル921に入力し、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率と、第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42の偏光比とを導出するものであってもよい。
【0083】
この場合、制御装置9の制御部91は、導出した透過率に基づき透過率用の制御信号を生成すると共に、導出した偏光比に基づき偏光比用の制御信号を生成する。制御装置9の制御部91は、透過率用の制御信号それぞれを第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32に出力し、偏光比用の制御信号それぞれを第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42に出力する。
【0084】
本実施形態によれば、レーザアニール装置1の制御装置9は、第1レーザ光源21の特性情報と第2レーザ光源22の特性情報とを入力した場合に第1アッテネータ31の透過率と第2アッテネータ32透過率とを出力する透過率学習モデル921を用いるため、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32のそれぞれの透過率を効率的に導出することができる。又は、透過率学習モデル921用いることにより、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報、OEDセンサー63からの検出値、及びムラモニター64からの検出値に基づき、第1アッテネータ31及び第2アッテネータ32の透過率と、第1偏光比制御ユニット41及び第2偏光比制御ユニット42の偏光比を効率的に導出することができる。
【0085】
(実施形態4)
図9は、実施形態4(同期ずれ)に係るレーザアニール装置1の構成例を示す図である。実施形態4のレーザアニール装置1は、実施形態1のレーザアニール装置1と同様にアニール光学系11、レーザ照射室7及び制御装置9を備え、ステージ71を駆動するためのX軸駆動系73及びY軸駆動系74を備える。
【0086】
実施形態4のレーザアニール装置1は、パルス波形を検出するためのバイプラナ光電管62を備えており、当該バイプラナ光電管62は、アニール光学系11の端部に設けられ、例えば落射ミラー61を透過した透過光に基づき、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22から出射されたレーザ光それぞれのパルス波形を検出する。
【0087】
制御装置9は、通信部93又は入出力I/F94を介してバイプラナ光電管62と通信可能に接続されており、バイプラナ光電管62から、第1レーザ光源21からのレーザ光のパルス波形、及び第2レーザ光源22からのレーザ光のパルス波形を取得する。これら第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のパルス波形は特性情報に相当し、当該パルス波形を検出するバイプラナ光電管62は第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22の特性情報を検出するための特性情報検出部として機能する。
【0088】
制御装置9は、取得した第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のそれぞれのパルス波形に基づき、第1レーザ光源21から出射されたレーザ光と、第2レーザ光源22から出射されたレーザ光との同期ずれを検出する。制御装置9は、検出した同期ずれの大きさ(同期ずれ値)に応じて、許容できる同期ずれ値(許容閾値)を超過した旨を示す報知信号を生成し、例えば表示装置941等に出力する。又は、制御装置9は、検出した同期ずれ値が、許容閾値を超過(許容閾値以上)した場合、レーザアニール装置1の運転を停止する停止信号を出力し、当該レーザアニール装置1を停止するものであってもよい。
【0089】
図10は、同期ずれ値学習モデル922の一例を示す説明図である。制御装置9は、同期ずれを検出するにあたり、制御装置9の記憶部92に記憶されている同期ずれ値学習モデル922を用いる。同期ずれ値学習モデル922を用いることにより、第1レーザ光源21から出射されたレーザ光と、第2レーザ光源22から出射されたレーザ光との同期ずれ値を導出することができる。当該同期ずれ値は、例えば、1nsの時間単位にて示されるものであってもよい。このように同期ずれ値を定義するにあたり、同期ずれ値が0nsであるパルス波形は、同期ずれが発生していないことを示すものとなる。
【0090】
図11は、パルス信号における同期ずれを例示する説明図である。本実施形態における図示では、同期ずれ値が1ns(左上)、2ns(右上)、3ns(左下)、及び4ns(右下)となる第1レーザ光源21のパルス波形と第2レーザ光源22のパルス波形とをグラフ形式にて示している。当該グラフにおいて、縦軸はレーザ光の強度を示し、横軸は時間を示す。
【0091】
制御装置9の制御部91は、訓練データを用いてニューラルネットワークを学習させ、第1レーザ光源21のパルス波形及び、第2レーザ光源22のパルス波形を入力した場合、第1レーザ光源21と第2レーザ光源22との同期ずれ値を出力する同期ずれ値学習モデル922を生成する。当該訓練データは、第1レーザ光源21のパルス波形及び第2レーザ光源22のパルス波形を含む問題データと、同期ずれ値を含む回答データから構成され、制御装置9の記憶部92に記憶されている。これら訓練データの元データは、例えば複数のレーザアニール装置1の稼働実績データを集約することにより、生成することができる。
【0092】
これら個々の問題データと回答データとの組み合わせに関し、訓練データは、同期ずれ値が0nsとなる組み合わせ、すなわち同期ずれが発生していないパルス波形と、同期ずれ値が例えば、1nsから5ns等に段階的に増加するパルス波形とを含むものであってもよい。すなわち、同期ずれ値が、例えば-5nsから5nsまでの11段階にてクラス分けし、それぞれの同期ずれ値(各クラス毎)において100個程度のパルス波形のデータを用いて、訓練データを生成するものであってもよい。学習を行うにあたり、設定条件による波形の高さを合わせるため、当該パルス波形のデータ(波形データ)の正規化を行うものであってもよい。
【0093】
このように、訓練データは、同期ずれが発生していない第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のパルス波形によるデータと、同期ずれが発生している第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のパルス波形によるデータとを含む。同期ずれが発生しているデータにおいては、同期ずれ値を、例えば1ns単位で段階的に異なるものとし、同期ずれ値によって、クラス分けしたものであってもよい。制御装置9の制御部91は、同期ずれがあるパルス波形と、同期がないパルス波形とを収集して訓練データを生成し、生成した訓練データを用いてニューラルネットワークを学習させることにより、同期ずれ値学習モデル922を生成する。
【0094】
同期ずれ値学習モデル922は、例えば、実施形態1の透過率学習モデル921と同様にDNNにて構成され、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のそれぞれのパルス波形の入力を受け付ける入力層と、当該パルス波形の特徴量を抽出する中間層と、同期ずれ値を出力とする出力層とを有する。
【0095】
入力層は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のそれぞれのパルス波形の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された値を中間層に受け渡す。中間層は、ReLu関数又はシグモイド関数等の活性化関数を用いて定義され、入力されたそれぞれの値の特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した特徴量を出力層に受け渡す。当該活性化関数の重みづけ係数及びバイアス値等のパラメータは、誤差逆伝播法を用いて最適化される。出力層は、例えば全結合層により構成され、中間層から出力された特徴量に基づいて同期ずれ値を出力する。
【0096】
本実施形態では、同期ずれ値学習モデル922は、DNNであるとしたがこれに限定されず、実施形態1の透過率学習モデル921と同様にDNN以外のニューラルネットワーク等、他の学習アルゴリズムで構築された学習モデルであってよい。実施形態1の透過率学習モデル921と同様に、当該制御装置9以外となるクラウドサーバ等の外部のサーバ装置等によって、同期ずれ値学習モデル922を学習及び生成するものであってもよい。実施形態1と同様に、制御装置9は、通信部93を介して、例えばインターネット等に接続されるクラウドサーバ等と通信し、当該クラウドサーバに実装された同期ずれ値学習モデル922によって出力された同期ずれ値を取得するものであってもよい。
【0097】
同期ずれ値学習モデル922を生成(学習)するにあたり第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22による2台構成としているが、3台以上のレーザ光源2から出射されるレーザ光それぞれのパルス波形を用いて訓練データを生成し、当該同期ずれ値学習モデル922を学習させるものであってもよい。
【0098】
図12は、実際の同期ずれ値と、同期ずれ値学習モデル922による同期ずれ値とを混同行列にて例示する説明図である。本実施形態にて図示する混同行列は、実際の同期ずれ値と、同期ずれ値学習モデル922によって出力した同期ずれ値との比較を一例として示すものである。
【0099】
同期ずれ値は、例えば、±5nsにて、11段階(11クラス)に分けた同期ずれ値にて、30個のデータセット(第1レーザ光源21のパルス波形、第2レーザ光源22のパルス波形、同期ずれ値)を用意しており、全データセット数は、330個(30×11)としている。例えば、同期ずれ値が-5ns、-1ns及び5nsでは、同期ずれ値学習モデル922が出力した同期ずれ値は、全て実際の同期ずれ値と同じとなり、すなわち正解率が100%となっている。また、他の同期ずれ値においても、90%以上の正解率となっており、同期ずれ値学習モデル922が、比較的に高い精度で、同期ずれ値を出力(推測)できることが示されている。
【0100】
図13は、制御部91による処理手順の一例を示すフローチャートである。制御装置9の制御部91は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22のパルス波形を取得する(S401)。制御装置9の制御部91は、バイプラナ光電管62から、第1レーザ光源21からのレーザ光のパルス波形、及び第2レーザ光源22からのレーザ光のパルス波形を取得する。
【0101】
制御装置9の制御部91は、取得したパルス波形を同期ずれ値学習モデル922に入力することにより、同期ずれ値を導出する(S402)。制御装置9の制御部91は、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22それぞれのパルス波形を、同期ずれ値学習モデル922に入力する。同期ずれ値学習モデル922は、入力されたパルス波形に基づき、これらパルス波形間の同期ずれ値を出力する。制御装置9の制御部91は、同期ずれ値学習モデル922が出力した同期ずれ値を取得することにより、当該同期ずれ値を導出する。導出される同期ずれ値は、例えば1nsごとに区分化されたクラスに分類されるものであってもよい。
【0102】
制御装置9の制御部91は、導出した同期ずれ値が、許容閾値以上か否かを判定する(S403)。制御装置9の制御部91は、例えば、記憶部92に予め記憶されている許容閾値を参照し、導出した同期ずれ値が許容閾値以上であるか、否かを判定する。当該許容閾値は、レーザアニール装置1よる基板8に対する加工処理において、許容される同期ずれ値を示すものであり、同期ずれにより発生する照射ムラが加工品質上、許容される同期ずれ値である。当該許容閾値は、単一の値として設定される場合に限定されず、段階的に異なる複数の値によって定義されているものであってもよい。
【0103】
同期ずれ値が許容閾値以上でない、すなわち許容閾値未満である場合(S403:NO)、制御装置9の制御部91は、再度S301の処理を実行すべく、ループ処理を行う。
【0104】
同期ずれ値が許容閾値以上である場合(S403:YES)、制御装置9の制御部91は、同期ずれ値が許容閾値以上である場合、報知信号を出力する(S404)。制御装置9の制御部91は、同期ずれ値が許容閾値以上である場合、報知信号を例えば表示装置941等に出力する。これにより、レーザアニール装置1の管理者に対し、許容閾値以上となる同期ずれが発生したことを効率的に報知することができる。
【0105】
本実施形態によれば、レーザアニール装置1の制御装置9は、複数のパルス波形を入力した場合に複数のパルス波形における同期ずれ値を出力する同期ずれ値学習モデル922を用いることにより、複数のレーザ光源2それぞれから出射されるレーザ光のパルス波形における同期ずれ値を効率的に導出することができる。これにより、例えばパルス波形の面積値等の特徴量に基づく方法と比較して、本実施形態によるレーザアニール装置1を用いることによって、レーザ光の短い同期ずれを効率的に検出することができる。
【0106】
導出した同期ずれ値が予め定められた許容閾値以上となった場合に報知信号を出力することにより、複数のレーザ光源2間にて発生したパルス波形の同期ずれの状態が、レーザアニール装置1の稼働、すなわち半導体装置の生産の継続が困難となる状態にあることを、当該レーザアニール装置1の操作者に対し報知できる。当該報知を行うことにより、同期ずれに対し適切な対応及び早期の復帰を促すことができ、同期ずれに起因する照射ムラが発生することを効率的に抑制することができる。
【0107】
(その他の実施形態)
図14図15図16図17及び図18は、その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。その他の実施の形態として、上記実施の形態に係るレーザアニール装置1を用いた半導体装置の製造方法について説明する。以下の半導体装置の製造方法のうち、非晶質の半導体膜を結晶化させる工程において、実施の形態1から4に係るレーザアニール装置1を用いたアニール処理を実施している。
【0108】
半導体装置は、TFT(Thin Film Transistor)を備える半導体装置であり、この場合は、アモルファスシリコン膜84にレーザ光を照射して結晶化し、ポリシリコン膜85を形成することができる。ポリシリコン膜85は、TFTのソース領域、チャネル領域、ドレイン領域を有する半導体層として用いられる。
【0109】
上記で説明した実施の形態に係るレーザアニール装置1は、TFTアレイ基板の製造に好適である。以下、TFTを有する半導体装置の製造方法について説明する。
【0110】
まず、図14に示すように、ガラス基板81(基板8)の上に、ゲート電極82を形成する。ゲート電極82は、例えば、アルミニウムなどを含む金属薄膜を用いることができる。次に、図15に示すように、ゲート電極82の上に、ゲート絶縁膜83を形成する。ゲート絶縁膜83は、ゲート電極82を覆うように形成される。その後、図16に示すように、ゲート絶縁膜83の上に、アモルファスシリコン膜84を形成する。アモルファスシリコン膜84は、ゲート絶縁膜83を介して、ゲート電極82と重複するように配置されている。
【0111】
ゲート絶縁膜83は、窒化シリコン膜(SiNx)、酸化シリコン膜(SiO2膜)、又はこれらの積層膜等などである。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜83とアモルファスシリコン膜84とを連続成膜する。アモルファスシリコン膜84付のガラス基板81がレーザアニール装置1(レーザ照射装置)における半導体膜となる。
【0112】
そして、図17に示すように、上記で説明したレーザアニール装置1を用いてアモルファスシリコン膜84にレーザ光L3を照射してアモルファスシリコン膜84を結晶化させて、ポリシリコン膜85を形成する。これにより、シリコンが結晶化したポリシリコン膜85がゲート絶縁膜83上に形成される。この工程を行うにあたり、第1レーザ光源21及び第2レーザ光源22等、複数台構成となるレーザ光源2それぞれにおける特性情報を取得し、取得した特性情報それぞれに応じて、実施形態1から4にて開示されている所定の処理を行うことで、ポリシリコン膜85にムラが生じることを抑えることができる。
【0113】
その後、図18に示すように、ポリシリコン膜85の上に層間絶縁膜86、ソース電極87a、及びドレイン電極87bを形成する。層間絶縁膜86、ソース電極87a、及びドレイン電極87bは、一般的なフォトリソグラフィー法や成膜法を用いて形成することができる。これ以降の製造工程については、最終的に製造するデバイスによって異なるので説明を省略する。
【0114】
上記で説明した半導体装置の製造方法を用いることで、多結晶半導体膜を含むTFTを備える半導体装置を製造することができる。このような半導体装置は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの高精細ディスプレイの制御用に好適である。上記のようにポリシリコン膜85のムラを抑制することで、表示特性の優れた表示用装置を高い生産性で製造することができる。
【0115】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、において、アモルファスシリコン膜84にレーザ光を照射してポリシリコン膜85を形成する例に限らず、アモルファスシリコン膜84にレーザ光を照射してマイクロクリスタルシリコン膜を形成してもよい。また、シリコン膜以外の非晶質膜にレーザ光を照射して、結晶化膜を形成してもよい。
【0116】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
1 レーザアニール装置(レーザ照射装置)
11 アニール光学系
2 レーザ光源
21 第1レーザ光源
22 第2レーザ光源
31 第1アッテネータ
32 第2アッテネータ
41 第1偏光比制御ユニット
42 第2偏光比制御ユニット
5 合成光学系
6 ビーム整形光学系
61 落射ミラー
62 バイプラナ光電管
63 OEDセンサー
64 ムラモニター
65 プロジェクションレンズ
7 レーザ照射室
71 ステージ
72 ベース
73 X軸駆動系
74 Y軸駆動系
8 基板
9 制御装置
91 制御部
92 記憶部
920 記録媒体
P プログラム(プログラム製品)
921 透過率学習モデル
922 同期ずれ値学習モデル
93 通信部
94 入出力I/F
941 表示装置
81 ガラス基板
82 ゲート電極
83 ゲート絶縁膜
84 アモルファスシリコン膜
85 ポリシリコン膜
86 層間絶縁膜
87a ソース電極
87b ドレイン電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図17
図18