(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】フロス張力を調整するための手段を有するデンタルフロッサ
(51)【国際特許分類】
A61C 15/04 20060101AFI20250217BHJP
【FI】
A61C15/04 504
(21)【出願番号】P 2022511263
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 CA2020051105
(87)【国際公開番号】W WO2021030901
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-07-12
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522065451
【氏名又は名称】シュイ,モン
【氏名又は名称原語表記】XU, Meng
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,モン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-267141(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110738(WO,A1)
【文献】特開2002-143189(JP,A)
【文献】特表2002-535072(JP,A)
【文献】特開2018-064752(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067021(US,A1)
【文献】特開2014-138855(JP,A)
【文献】米国特許第01512633(US,A)
【文献】米国特許第03993085(US,A)
【文献】米国特許第04807651(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンタルフロッサであって、互いに離間された第1アームおよび第2アームを有するU形部と、前記U形部から延びた手持ち部と、長さがあって第1端および第2端を有するフロス束と、フロス束取り付け部材とを備え、前記フロス束の前記第1端が前記U形部の前記第1アームに埋め込まれて固定され、前記フロス束の前記第2端が前記フロス束取り付け部材に固定され、前記フロス束の中間部が前記U形部の前記第2アームにスライド可能に装着され、前記フロス束取り付け部材は、前記のフロス束の張力を増加する、減少するまたは維持するように、ユーザによって操作可能であり、
前記手持ち部は
溝を含み、
前記フロス束取り付け部材は、前記フロス束の張力を増加するまたは減少するように、前記溝に受けられて前記溝に沿ってスライド可能であり、
前記フロス束取り付け部材は両端を有し、前記フロス束取り付け部材の一端は雌部材を含み、前記フロス束取り付け部材の他端は雄部材を含み、前記フロス束取り付け部材は、前記雄部材を前記雌部材に接続させるように、折り畳み可能である、デンタルフロッサ。
【請求項2】
前記フロス束取り付け部材は、前記フロス束の張力を増加するように、前記U形部の前記第1アームから離れる方向に前記ユーザによって移動可能である、請求項1に記載のデンタルフロッサ。
【請求項3】
前記フロス束取り付け部材は、前記フロス束の張力を減少するように、前記U形部の前記第1アームへ向かう方向に前記ユーザによって移動可能である、請求項2に記載のデンタルフロッサ。
【請求項4】
前記手持ち部は、手動的、機械的または電気的な操作機構を有し、前記フロス束取り付け部材は、前記手動的、機械的または電気的な操作機構に前記ユーザによって取り付け可能であり、前記フロス束取り付け部材、または、前記手動的、機械的または電気的な操作機構は、前記フロス束の張力を増加するまたは減少するように前記ユーザによって操作可能である、請求項1に記載のデンタルフロッサ。
【請求項5】
歯清浄中に、前記フロス束は、前記ユーザによって、その張力が増加されて2つの隣接する歯の間の歯間空間内に挿入可能である、請求項4に記載のデンタルフロッサ。
【請求項6】
歯清浄中に、前記フロス束は、さらに、歯の前面、後面、および歯間表面を清浄するように、前記ユーザによって、その張力が減少されて前記歯の輪郭の周りで曲がる、請求項5に記載のデンタルフロッサ。
【請求項7】
前記U形部、前記手持ち部、および前記フロス束取り付け部材は同じ熱可塑性材料で製造される、請求項6に記載のデンタルフロッサ。
【請求項8】
前記フロス束の前記第1端は、常に前記U形部の前記第1アームに取り付けられ、前記U形部の前記第1アームから引き抜けない、請求項1に記載のデンタルフロッサ。
【請求項9】
前記フロス束の前記第2端は、常に前記フロス束取り付け部材に取り付けられ、前記フロス束取り付け部材から引き抜けない、請求項8に記載のデンタルフロッサ。
【請求項10】
前記フロス束の張力の調整は、前記フロス束の前記第1端の位置を前記U形部の前記第1アームに対して移動させずに、前記フロス束取り付け部材に取り付けられた前記フロス束の前記第2端のみを移動させることによって達成される、請求項9に記載のデンタルフロッサ。
【請求項11】
前記U形部は、剛性構造を有する、請求項1に記載のデンタルフロッサ。
【請求項12】
前記U形部の前記第1アームと前記第2アームとの間の前記フロス束の長さは、前記フロス束の張力を調整するように前記フロス束取り付け部材が前記ユーザによって移動されるときに、変化可能である、請求項
11に記載のデンタルフロッサ。
【請求項13】
前記U形部と前記手持ち部とは、ほぼ平坦な部分であって、実質的に同じ平面にある、請求項1に記載のデンタルフロッサ。
【請求項14】
前記U形部の前記第1アームと前記第2アームとの間の前記フロス束は、張力がかかった状態では、前記手持ち部と同じ平面にある、請求項
13に記載のデンタルフロッサ。
【請求項15】
前記手持ち部は、つまようじまたは歯茎刺激装置(gum stimulator)として機能する尖った末端を有する、請求項
14に記載のデンタルフロッサ。
【請求項16】
前記フロス束取り付け部材は、狭い接続点において前記手持ち部に取り外し可能に接続され、取り外されたフロス束取り付け部材を生成するように、前記ユーザによって前記手持ち部から取り外し可能である、請求項1に記載のデンタルフロッサ。
【請求項17】
前記フロス束取り付け部材は、前記手持ち部から分離されるとともに、前記手持ち部の前記手動的、機械的または電気的な操作機構に接続可能であり、前記手動的、機械的または電気的な操作機構は
、前記溝である、請求項4に記載のデンタルフロッサ。
【請求項18】
前記U形部の前記第2アームは、前記第2アームの末端にあるチャネル、または前記第2アームの近傍にあるチャネルを有し、前記フロス束の前記中間部は、前記チャネルを通って、前記チャネル内でスライド可能である、請求項1に記載のデンタルフロッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には歯および口腔の清浄装置に関し、特には、フロス張力を調整するための手段を有する手持ち式のデンタルフロッサ(hand-held dental flosser)(例えば、デンタルフロスピック(dental floss pick)またはデンタルフロスホルダ(dental floss holder))に関し、このようなデンタルフロッサの製造方法および使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には、歯の間の隙間および歯の表面は、磨き、機械駆動式の水噴射、ようじなどの様々な方法によって清浄可能であり、デンタルフロスまたはデンタルテープまたは類似の糸によっても清浄可能である。デンタルフロスとは、細い繊維からなるひもであって、一般的には歯から食べ物および歯垢を歯から除去するように使用される。
【0003】
齲蝕(虫歯)の主な原因の1つ、そして歯周病(歯茎および歯根)の重要な原因の1つは、歯の表面に発生する歯垢の形成にある。除去すると、新たな歯垢は24時間内に再度に形成可能である。よって、最適な歯の衛生および健康を維持するために、毎日には少なくとも1回のフロスの使用が必要とされる。
【0004】
典型的なデンタルフロスを使用する手順が難しく冗長であるため、多くの人は日常的に歯にフロスを使用していない。手持ち式のデンタルフロッサ(フロスホルダまたはフロスピックとも知られている)の使用によれば、フロスの使用がより便利かつより容易になる。一般的には、デンタルフロッサは、薄いプラスチック本体(またはハンドル)から延びた2つの先端部を含む。フロス束(floss strand)が当該2つの先端部の間において張られる。一例として、「Dental floss pick」と題する米国意匠出願第D618396号には典型的なデンタルフロッサが開示されている。典型的なデンタルフロッサは、多くの場合では硬くて柔軟性のないプラスチック材料から製造され、2つの先端部の間のフロス束は固定されている。
【0005】
典型的なデンタルフロッサの主な欠点は、以下通りである。すなわち、フロス束の張力が固定されたものなので、デンタルフロスを歯の間に適切に挿入するという、デンタルフロス束が張力を維持すべき動作に必要とされる比較的高い張力によって、デンタルフロス束は歯間空間から離れた歯の輪郭の周りで湾曲することができない。その結果、歯間表面以外の歯の表面からの歯垢および細菌を適切に清浄することは容易に実行できない。
【0006】
よって、改良され、フロス張力を調整するための手段を有し、歯の輪郭の周りでより効率的に歯の表面(歯の前面、後面、および歯間表面を含む)を清浄する手持ち式のデンタルフロッサの提供が望ましい
【0007】
図面には本発明の非限定的な実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例に係るデンタルフロッサの側面図であって、スライド部材がデンタルフロッサの手持ち部に取り外し可能に接続される、側面図
【
図2】スライド部材がデンタルフロッサの手持ち部から分離された、
図1のフロスホルダを示す図
【
図3】デンタルフロッサの残りの部分から分離されたスライド部材の断面図であって、当該スライド部材の一端が雌部材を備え、当該スライド部材の他端が対応する寸法を有する雄部材を備え、スライド部材が折り畳み可能であり、雄部材が雌部材に嵌合可能である、断面図
【
図4】
図3のスライド部材の断面図であって、雄部材を雌部材に接続させるように、当該スライド部材が折り畳まれている、断面図
【
図5】折り畳まれたスライド部材がデンタルフロッサの手持ち部におけるガイド溝またはチャネルに嵌合された、
図2のデンタルフロッサを示す図
【
図6】スライド部材が
図3および
図4に示されたように折り畳まれた、
図5のデンタルフロッサを示す図
【
図7】フロス束の張力を増加するように、スライド部材が第1方向に沿ってガイド溝またはチャネルにおいて移動する、
図6のデンタルフロッサを示す図
【
図8】フロス束の張力を減少するように、スライド部材が第2方向に沿ってガイド溝またはチャネルにおいて移動する、
図6のデンタルフロッサを示す図
【
図9】隣接する2つの歯、および、歯の間の歯間空間内に挿入されたフロス束の清浄部の概略上面図
【
図10】隣接する2つの歯、ならびに、1つの歯の歯間表面、前面および後面を囲むフロス束の清浄部の概略上面図
【
図11】本発明の他の実施例に係るデンタルフロッサの側面図であって、フロス束の末端の1つがフロス束取り付けピースに接続され、デンタルフロッサが回転機構を備える、側面図
【
図12】フロス束取り付けピースが回転機構に取り付けられ、フロス束が緩んだ、
図11のデンタルフロッサを示す図
【
図13】フロス束取り付けピースが回転機構に取り付けられ、回転機構がフロス束の張力を増加するように反時計回りの方向に回転する、
図11のデンタルフロッサを示す図
【
図14】
図11のデンタルフロッサに使用可能な例示的な回転機構の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明を通して、具体的な詳細は、本発明についてより完全に理解してもらうために記載されている。しかしながら、本発明はこれらの委細をなくても実行され得る。他の例示において、発明のポイントが無益に逸らされることを回避するために、周知の要素については詳細に示されていないまたは説明されていない。よって、明細書および図面は、制限的なシーンに関するものよりも、例示に関するものである。
【0010】
本発明の1つの概念は手持ち式のデンタルフロッサに関する。デンタルフロッサは、互いに離間された2つのアーム(第1アームおよび第2アーム)を有するU形部と、U形部と接続された手持ち部とを備える。デンタルフロッサはフロス束をさらに備える。フロス束は第1末端および第2末端を有する。フロス束の第1末端はU形部の第1アームに固定的に取り付けられ、よって、フロス束の第1末端の位置はU形部の第1アームに対して移動しない。当該取り付けの位置は、U形部の第1アームの末端であってもよく。U形部の第1アームの末端の近傍であってもよい。フロス束の第2末端はフロス束取り付けピースに取り付けられる。ユーザは、フロス束の張力を増加する、減少するまたは維持するように、手動的に(または機械的にまたは電気的に)フロス束取り付けピースを操作し、フロス束の第2末端を移動させることができる。フロス束の中間部がU形部の第2アームにスライド可能に装着され、よって、フロス束の中間部はU形部の第2アームに対してスライド可能である。フロス束の中間部をU形部の第2アームにスライド可能に装着させるために、装着可能な機構の部材、例えば、固定滑車、枢軸、輪、ロータ、チャネル、通路、穴、または他の適した手段は適用され得る。装着機構の位置は、U形部の第2アームの末端であってもよく。U形部の第2アームの末端の近傍であってもよい。装着機構によれば、フロス束がU形部の第2アームから完全に分離することを防ぎながら、フロス束がスライド可能にすることができる。
【0011】
本発明の1つの概念は手持ち式のデンタルフロッサに関する。デンタルフロッサは、互いに離間された2つのアームを有するU形部と、U形部と接続された手持ち部と、手持ち部(もしくはU形部)から分離された、または手持ち部(もしくはU形部)と取り外し可能に接続されたスライド部材部とを備える。いくつかの実施例において、U形部、手持ち部、およびスライド部材部の全部は、同じ適した材料(例えば、プラスチック)で製造され、射出成形プロセスを用いて製造される。いくつかの実施例において、デンタルフロッサは、互いに接続されたU形部と手持ち部とスライド部材部とを有する一体成形の製品として製造される。スライド部材部は、狭い接続点において手持ち部またはU形部に接続され得て、ユーザは、力を接続点に加えてスライド部材部を手持ち部またはU形部から分離させることができ、よって、スライド部材が分離された要素となる。
【0012】
デンタルフロッサはフロス束をさらに備える。いくつかの実施例において、フロス束はデンタルフロッサとともにその場で射出成形される。フロス束は両端を有する。フロス束の第1端はU形部の第1アーム(すなわち、手持ち部に対して遠位側のアーム)に固定されて埋め込まれる。フロス束の第2端はスライド部材に固定されて埋め込まれる。フロス束の端部を固く固定する方法はいくつかがある。方法の一例は、射出成形プロセスにおいてフロス束の端部をプラスチック材から延ばして、フロス束の端部を加熱してまたは燃やして、フロスより大きい直径を有するビーズ(beads)に合体させる方法であり、当該フロスによれば、フロス束はプラスチック材から引き抜かれることが回避される。
【0013】
フロス束の中間部分は、U形部の第2アーム内のチャネルを通っている。当該チャネルは、フロス束がンタルフロッサとともにその場で射出成形されるときに生成されるものである。フロス束の中間部分はU形部の第2アーム内のチャネルにおいてスライド可能である。
【0014】
フロス束はデンタルフロッサに対して3つの接触点(または接触区域)を有する。フロス束は、U形部の第1アームに固定された第1端を有する。これが第1接触点である。フロス束は、スライド部材に固定された第2端を有する。これが第2接触点である。その第1端とその第2端との間、フロス束は、U形部の第2アーム内のチャネルまたは何かの他の装着機構を通ることによって、U形部の第2アームにも接触する。これが第3接触点である。この概念では、フロス束に関してU形部の第2アームの機能は固定滑車と同様であり、当該第2アームによって、フロス束が第2アームに装着されて第2アームの周りでスライドすることができる。フロス束はその両端間の長さが固定である。しかしながら、U形部の第1アームと第2アームとの間のフロス束の部分はユーザによって調整可能である。
【0015】
本発明の1つの概念は、ここで開示される手持ち式のデンタルフロッサを使用する方法に関する。フロス束取り付けピース(例えば、スライド部材部)がデンタルフロッサの手持ち部に接続された場合、ユーザはまずデンタルフロッサからスライド部材部を分離させてもよい。次に、ユーザは、U形部の第1アームと第2アームとの間のフロス束の張力を増加するまたは維持するように、フロス束を引っ張ってまたは保持してもよい。代替的に、ユーザは、フロス束の張力を増加するまたは維持するように、フロス束取り付けピースを機械的または電気的な機構に装着してもよい。フロス束が張力のかかっている状態にあるとき、ユーザはデンタルフロッサを操作してフロス束を隣接する2つの歯の間に挿入してもよい。フロス束が歯間空間内に挿入されると、ユーザは、手動的に、または、機械的または電気的な機構を介して、フロス束の張力を減少させてもよい(すなわち、フロス束を緩ませてもよい)。このようにすれば、フロス束は歯の輪郭の周りで曲がって当該歯の複数の表面を清浄することができ、当該複数の表面は、歯間表面だけではなく、歯の前面と後面とも含む。ユーザが歯を清浄した後、ユーザは、フロス束の張力を再び増加してまたは維持して、歯の間からフロス束を引き出してもよい。ユーザは、フロス束の張力を調整してユーザの口腔内の他の歯を清浄するように、このプロセスを繰り返してもよい。
【0016】
いくつかの実施例において、デンタルフロッサは、手持ち部において長手方向のガイド溝またはチャネルを備える。当該溝またはチャネルは、スライド部材が当該溝またはチャネルに嵌合できて当該溝またはチャネルに沿ってスライド可能なように、寸法が決められる。ユーザは、スライド部材を溝またはチャネルに嵌合させてから、その親指または他の指を用いてスライド部材を溝またはチャネルに沿ってスライドさせてもよい。スライド部材は、1つの方向に移動されるときに、フロス束の張力を増加させる。スライド部材は、もう1つの方向に移動されるときに、フロス束の張力を減少させる。したがって、ユーザは、スライド部材をガイド溝に沿ってスライドさせることによって、フロス束の張力を任意に調整することができる。
【0017】
理解されるべきことに、フロス束の張力の調整はフロス束取り付けピース(例えば、スライド部材)を介して達成され、フロス束取り付けピースはフロス束の一端のみに接続され、フロス束の他端はU形部のアームの1つに固く固定される。したがって、フロス束の一端は固定され、フロス束の他端は、ユーザがフロス束取り付けピースを移動するまたは操作するときに移動可能である。このようにすれば、フロス束の一端の位置が固定されるため、ユーザはフロス束の張力を容易に調整することができる。
【0018】
理解されるべきことに、フロス束の張力の調整はU形部の変形を介して達成されるものではない。U形部は容易に変形しないほぼ剛性構造である。デンタルフロッサは、十分な剛性または靱性を有する熱可塑性材料で製造され得る。U形部の第1アームと第2アームとの間の距離はほぼ変化しない。
【0019】
図1および
図2は、本発明の例示的な実施例に係るデンタルフロッサ10を示す。デンタルフロッサ10は、U形部12と、手持ち部14と、取り外し可能なスライド部材部16とを備える。
図1において、スライド部材部16は狭い接続点18で手持ち部14に接続される。デンタルフロッサ10は射出成形プロセスを介して一体成形の製品として製造される。デンタルフロッサ10の製造のための材料は熱可塑性材料であってもよい。
【0020】
図2において、スライド部材部16は手持ち部から分離されて、分離されたスライド部材要素を形成する。この分離は一般的にはユーザによって行われる。U形部12は、ベース20と、ベース20から延びて離間された一対のアーム22およびアーム24とを備える。
図1において、アーム22およびアーム24は、互いに実質的に平行して配向されるように示されているが、別のように配向されて、分離された端部を提供してもよいことが理解され得る。
【0021】
デンタルフロスの束26は、アーム22からアーム24に延びており、さらにスライド部材部16までに延びている。フロス束26の第1端はアーム22に固く固定される。フロス束26の第2端はスライド部材部16に固く固定される。フロス束26の端部の部分はアーム22およびスライド部材16に埋め込まれる。製造プロセスにおいて、デンタルフロッサ10がフロス束26とともにその場で射出成形されるため、フロス束26はアーム22、アーム24、およびスライド部材部16を通る。フロス束26はアーム24内のチャネルをスライドする。フロス束26の端部は、アーム22またはスライド部材部16に固定される。方法の一例は、射出成形プロセスにおいてフロス束26の端部をプラスチック材から延ばして、フロス束の端部を加熱してまたは燃やして、フロスより大きい直径を有するビーズに合体させる方法であり、当該フロスによれば、フロス束はアーム22またはスライド部材部16から引き抜かれることが回避される。
【0022】
U形部12および手持ち部14はほぼ平坦な部材である。U形部12の平面は、手持ち部14と実質的に同じ平面である。したがって、フロス束26は、張力がかかった状態では、手持ち部14の平面と同じ平面にある。この特徴によれば、ユーザは、手持ち部14を持ってフロス束26を歯の間の歯間空間内に置くことによってデンタルフロッサ10を使用するときに、フロス束26の配向をより容易に知ることができる。
【0023】
デンタルフロッサ10は、手持ち部14において溝28をさらに備える。溝28は細長い溝である。溝28の横方向の寸法および深さは、スライド部材16が溝28に受けられて溝28に沿って溝28の長手方向に移動可能なように設定される。溝28の長手方向の長さによって、スライド部材16が溝28に沿って移動可能な最大限は制御される。
【0024】
図3はデンタルフロッサの残りの部分から分離されたスライド部材16の断面図である。簡略化のため、フロス束は
図3に示されていない。スライド部材16の一端が雌部材を備え、当該スライド部材の他端が対応する寸法を有する雄部材を備え、スライド部材が折り畳まれたときに雄部材が雌部材に嵌合することができる。
【0025】
図4は、
図3のスライド部材の断面図であって、雄部材を雌部材に接続させるように、当該スライド部材が折り畳まれている。折り畳まれたスライド部材16は、ユーザの親指または他の指によってより持ちやすくて操作しやすい。
【0026】
図5は、折り畳まれたスライド部材16がデンタルフロッサ10の溝28に嵌合されたデンタルフロッサ10を示す。
図6は折り畳まれたスライド部材16を示し、よって、ユーザはスライド部材16をより持ちやすくて操作しやすい。
【0027】
図7は、フロス束26の張力を増加するように、スライド部材16が溝28に沿って第1方向に移動することを示す。
図7において、アーム22とアーム24との間のフロス束26は、張力がかかった状態では直線状である。フロス束26の張力がかかった状態で、ユーザは、デンタルフロッサ10を下方へ押して、隣接する2つの歯の間の歯間空間内にフロス束26を挿入することができる。
【0028】
図8は、フロス束26の張力を減少するように、スライド部材16が溝28に沿って第2方向に移動することを示す。
図8において、アーム22とアーム24との間のフロス束26は、緩んで、増加された長さを有する。ユーザは、デンタルフロッサ10を横向きに操作し、フロス束26を歯の輪郭の周りで曲げる。
【0029】
理解されるべきことに、デンタルフロッサ10に提供されたフロス束26の全長は固定的なものである。フロス束26は製造プロセスにおいてデンタルフロッサ10にすでに固定される。ユーザはフロス束26をデンタルフロッサ10に装着するまたは張る必要がない。しかしながら、ユーザは、スライド部材16を操作して、フロス束26においてアーム22とアーム24との間の部分の長さ(および張力)を調整することができる。
【0030】
図9は、隣接する2つの歯、および、これらの歯の間の歯間空間内において張力がかかったデンタル束の位置を示す概略上面図である。
図10は、隣接する2つの歯、ならびに、歯の歯間空間、前面、および後面を囲む、緩んだデンタル束の位置を示す概略上面図である。
【0031】
典型的なデンタルフロッサと比べて、デンタルフロッサ10は複数の方面で有利である。1つ目は、デンタルフロッサ10は1つ歯の3つの表面(歯間表面、前面、および後面)を同時に清浄するように使用可能なことである。2つ目は、ユーザはフロス束の張力を任意に調整することができることである。フロス束の一端がアーム22に固定されて動かないため、ユーザは、スライド部材16に取り付けられたフロス束の他端のみを移動させる必要があるのみである。3つ目は、ユーザは、異なるサイズおよび寸法を有する歯に適合するように、アーム22とアーム24との間のフロス束の長さを調整できることである。4つ目は、デンタルフロッサ10が、フロス束と、取り外したまたは取り外し可能なスライド部材部と含む一体成形の製品として、射出成形プロセスにおいて便利に製造されることである。5つ目は、デンタルフロッサ10の製造のための材料の量は、典型的なデンタルフロッサの製造のための材料の量よりはあまり多くないことである。スライド部材が小さい要素であるため、デンタルフロッサ10の製造のための材料の量をあまり増やさない。射出成形設備はデンタルフロッサ10の製造に利用可能または適用可能である。デンタルフロッサ10の製造には、専用の設備または機械または組み立てを必要としない。6つ目は、デンタルフロッサ10は、使い捨て製品として販売可能であり、特定の顧客に対してより便利性を提供できることである。7つ目は、フロス束26がデンタルフロッサ10に常に固く固定されるため、ユーザは、フロス束26が間違えてデンタルフロッサ10から分離すると心配する必要がないことである。
【0032】
図11から
図13は、本発明の別の例示的な実施例に係るデンタルフロッサ100を示す。デンタルフロッサ100は、U形部112と、手持ち部114と、フロス束取り付け構造116とを備える。U形部112は、ベース120と、ベース120から延びて離間された一対のアーム(第1アーム122および第2アーム124)とを備える。デンタルフロッサ100はフロス束126を備える。フロス束100は、U形部112の第1アーム122に固定的に取り付けられた第1末端を有する。フロス束126の第1末端の位置は、U形部112の第1アーム122に対して移動しない。
図11から
図13に示されているように、フロス束126の第1末端は第1アーム122の端部に固定的に取り付けられる。フロス束100は、フロス束取り付け構造116に固定的に取り付けられた第2末端を有する。
図11から
図13に示されているように、フロス束取り付け構造116は、手持ち部114から分離可能でありながら、手持ち部114における回転機構128に接続可能である。ユーザは、フロス束の張力を増加する、減少する、または維持するように、手動的に(または機械的にまたは電気的に)フロス束取り付け構造116を操作し、フロス束126の第2末端を移動させてもよい。
【0033】
フロス束126の中間部はU形部112の第2アーム124にスライド可能に装着され、よって、フロス束の中間部はU形部112の第2アーム124に対してスライド可能である。フロス束の中間部をU形部の第2アームにスライド可能に装着させるために、いくつかの装着機構は適用され得て、例えば、固定滑車、枢軸、輪、ロータ、チャネル、通路、穴、または他の適した手段は適用され得る。
図11に示された例示において、装着機構は、U形部112の第2アーム124の端部にあるチャネル、またはU形部112の第2アーム124の端部の近傍にあるチャネルである。フロス束126の中間部は第2アーム124におけるチャネルをスライドすることができる。
【0034】
デンタルフロッサ100は回転機構128を備える。回転機構は、手動的、機械的または電気的な回転機構であってもよい。
図12および
図13に示されているように、ユーザはフロス束取り付け構造116を回転機構128に取り付けてもよい。取り付けると、ユーザは、フロス束126の張力を増加するように、回転機構128を1つの方向(例えば、反時計回り)に回転させてもよい。また、ユーザは、フロス束126の張力を減少するように、回転機構128をもう1つの方向(例えば、時計回り)に回転させてもよい。必要がある場合、ユーザは、回転機構128からフロス束取り付け構造116を外してもよい。
図14は使用可能な例示的な回転機構128の拡大断面図を示す。回転機構128は、フロス束取り付け構造116を受けるための凹み130と、フロス束126を巻くための環状溝132とを備える。
【0035】
前述した説明に照らして本分野の当業者にとって明らかであるように、本発明の実施において多くの代替例および変化例が可能である。特許請求の範囲は、例示に記載された好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての説明と一致する、最も広い解釈をとるべきである。