(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】ペレット製造装置及びペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B30B 9/28 20060101AFI20250218BHJP
B01J 2/20 20060101ALI20250218BHJP
B30B 11/08 20060101ALI20250218BHJP
C10L 5/44 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
B30B9/28 L
B01J2/20
B30B11/08 D
C10L5/44
(21)【出願番号】P 2023220112
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2024-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524386776
【氏名又は名称】アライドコーヒーロースターズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505025357
【氏名又は名称】新興工機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514043573
【氏名又は名称】ラブ・フォレスト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523080974
【氏名又は名称】株式会社PEO技術士事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 昇
(72)【発明者】
【氏名】田中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】千田 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】福田 和明
(72)【発明者】
【氏名】小島 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】笹内 謙一
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-125827(JP,A)
【文献】特開昭59-059240(JP,A)
【文献】特開2015-047575(JP,A)
【文献】特開2014-221858(JP,A)
【文献】特開2024-008658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 9/28
B01J 2/00 - 2/22
B30B 11/00 - 11/08
C10L 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー抽出残渣を含む原料を用いてペレットを製造するペレット製造装置であり、
駆動主軸を軸として公転しつつ、ローラー軸を軸に自転する、前記駆動主軸を中心に円形状に配列された、所定の幅の複数のローラーと、
前記ローラーと当接する原料押込面を有するペレット製造用ダイスと、
前記ローラーを駆動するモータと、を備え、
前記ペレット製造用ダイスは、前記原料押込面に直交する方向に貫通する、所定の断面積S及び所定の深さLの複数の貫通孔を有し、
前記ローラーが、前記ペレット製造用ダイスの原料押込面上を所定の回転速度で転がり、原料押込面上に蓄積された原料を、前記ローラーを原料押込面に押し当てながら前記貫通孔に押し込み、ペレットを成形するもので、
前記貫通孔は、
前記所定の断面積が7mm
2以上50mm
2以下であり、
前記所定の深さが30mm以上100mm以下であり、
前記駆動主軸を軸として水平回転して、前記ペレット製造用ダイスの原料押込面上の原料を前記駆動主軸側に寄せるガイド板をさらに備え、
前記ガイド板は、その下端部が前記原料押込面上に近接していて、前記原料押込面の前記貫通孔がある領域を通過する部分に切り欠きを有する、ことを特徴とする、
ペレット製造装置。
【請求項2】
前記原料押込面における前記ローラーが回転して通過する面積S
0と、貫通孔の断面積
Sと個数kと、が下記式を満たす、
請求項1記載のペレット製造装置。
(式1)
0.15<kS/S
0<0.5
【請求項3】
前記貫通孔の断面が円形断面であり、
前記円形断面の径Rが、3mm以上8mm以下である、
請求項1記載のペレット製造装置。
【請求項4】
前記ローラーの回転速度が、70rpm以上120rpm以下である、
請求項1記載のペレット製造装置。
【請求項5】
前記ペレット製造用ダイスを冷却する、液体を用いた冷却手段をさらに備える、
請求項1記載のペレット製造装置。
【請求項6】
前記ガイド板は、
回転の進行方向に直交する方向よりも、進行方向に向けて傾斜している、
請求項1記載のペレット製造装置。
【請求項7】
前記ガイド板は、
回転の進行方向に直交する方向よりも、進行方向に向けて湾曲している、
請求項6記載のペレット製造装置。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項記載のペレット製造装置により、コーヒー抽出残渣を含む原料を用いてペレットを製造するペレットの製造方法であり、
前記ローラーを、ペレット製造用ダイスの原料押込面上を転がし、前記ローラーによって、前記原料押込面上に蓄積された原料を前記原料押込面に押し当てながら、ペレット製造用ダイスの複数の貫通孔に押し込み、ペレットを成形するものであり、
前記原料は、ロジン・ラムラー分布における粒度特性数Deが、0.4以上1.51未満であることを特徴とする、ペレットの製造方法。
【請求項9】
前記原料は、ロジン・ラムラー分布における粒度特性数Deが、0.4以上1.2以下であることを特徴とする、請求項
8記載のペレットの製造方法。
【請求項10】
前記原料は、ロジン・ラムラー分布における粒度特性数Deが、0.4以上0.7未満であることを特徴とする、請求項
8記載のペレットの製造方法。
【請求項11】
前記原料は、含水率が5%以上20%未満である、
請求項
8記載のペレットの製造方法。
【請求項12】
前記原料は、含水率が5%以上14%以下である、
請求項
8記載のペレットの製造方法。
【請求項13】
前記ペレットは、含水率が4%以上12%以下である、
請求項
8記載のペレットの製造方法。
【請求項14】
前記ペレットは、含水率が4%以上10%以下である、
請求項
8記載のペレットの製造方法。
【請求項15】
前記コーヒー抽出残渣を醗酵する工程を備えることを特徴とする、
請求項
8記載のペレットの製造方法。
【請求項16】
前記原料は、コーヒー抽出残渣、又は、コーヒー抽出残渣に木質材料が混合されたものである、
請求項
8記載のペレットの製造方法。
【請求項17】
前記ペレット
製造用ダイスは、ダイスを冷却する冷却手段を有し、
前記冷却手段により、前記ペレット
製造用ダイスを80℃以下の温度に保持しながら、ペレットを製造する、
請求項8に記載のペレットの製造方法。
【請求項18】
前記ペレット
製造用ダイスは、ダイスを冷却する冷却手段を有し、
前記冷却手段により、前記ペレット
製造用ダイスを60℃以下の温度に保持しながら、ペレットを製造する、
請求項8に記載のペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として抽出後の含水率の高いコーヒー抽出残渣(コーヒーグラウンズ)を原料として用いる、ペレット製造装置及びペレットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コーヒー飲料が嗜好飲料として消費量が大きく増え、それに伴いコーヒー豆の消費量も増加している。そのため、大量のコーヒー抽出残渣(コーヒーを飲用するために焙煎・粉砕したコーヒー豆を熱水抽出したコーヒー抽出カス)が発生している。
【0003】
しかし、有効利用されているのはほんの一部で、そのほとんどは一般廃棄物や産業廃棄物として廃棄され、焼却処理されているのが現状である。
【0004】
そこで、そのようなコーヒー抽出残渣に着目し、コーヒー抽出残渣による燃料用ペレットの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の発明者においても、環境への配慮などから、コーヒー抽出残渣を利用して燃料用ペレットを製造することを考え、鋭意研究を行った。当初、従来のペレット製造装置を用いて、コーヒー抽出残渣をペレット化しようとしたが、木質材料などの従来のバイオマス材料とは違い、十分な耐久値を有するペレットは完成しなかった。
【0007】
そこで、長年に渡る研究の末、コーヒー抽出残渣を利用してペレットを製造しようとする場合、ペレット製造装置のダイスの孔の断面積や深さが、耐久値に大きく影響していることを突き止め、さらにダイスを押圧するローラーの回転速度やダイスの温度管理によって、ペレットの耐久性が向上することを突き止め、本発明をなした。
【0008】
一方、別の観点では、コーヒー豆を挽くとき、挽かれた粉の大きさの違いはコーヒーの味や香りに大きな影響を持つから、全ての粉が完全に同じ大きさにはならず、小さな粉、中くらいの粉、大きな粉、色々な大きさの粉が混ざっている。
【0009】
コーヒーの挽き粒度のように、様々な大きさが混ざっている場合には、ロジン・ラムラー分布(Rosin-Rammler分布)を使って分析することで、コーヒーの挽き具合をより詳しく、そして正確に知ることができる。ロジン・ラムラー分布は、様々な大きさのものが混ざっている時に、それらの大きさの分布(どれくらいの大きさのものがどれくらい含まれているか)を表すのに適している。
【0010】
【0011】
ロジン・ラムラー(Rosin-Rammler)分布において、粒度特性数Deは、挽いたコーヒーの粒子の大きさのうち、36.8%がその大きさ以上である粒子の大きさを指す。正規分布において平均からマイナス1標準偏差の位置に相当し、データの分布を表す際に統計的によく使用される指標である。粒度特性数Deは、挽いたコーヒーの中の粒子のうち、36.8%がその特定のサイズ以上であることを示す。これにより、そのサイズよりも大きい粒子がどれだけあるのか、また、そのサイズを境にして挽き具合を評価することができる。なお、一般のふるい震とう機とふるいがあれば、粒度特性数Deと均等数nは算出できる。
【0012】
ペレットを燃料として利用するには、コーヒー抽出残渣は、粒度が細かいほど、耐久性が高くなるが、細かすぎると搬送時にブリッジしやすくなり、また、粉塵が舞いやすくなることから望ましくない。コーヒー抽出残渣の粒度がペレットの耐久性に大きく影響することから、前述したロジン・ラムラー分布において粒度の目安となる粒度特性数Deについても研究を重ね、本発明をなした。
【0013】
本発明は、必要な耐久性が得られ、燃料として利用できるペレットの製造装置及び製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の態様に係るペレット製造装置は、コーヒー抽出残渣を含む原料を用いてペレットを製造するペレット製造装置であり、駆動主軸を軸として公転しつつ、ローラー軸を軸に自転する、前記駆動主軸を中心に円形状に配列された、所定の幅の複数のローラーと、前記ローラーと当接する原料押込面を有するペレット製造用ダイスと、前記ローラーを駆動するモータとを備え、
前記ペレット製造用ダイスは、前記原料押込面に直交する方向に貫通する、所定の断面積S及び所定の深さLの複数の貫通孔を有し、前記ローラーが、前記ペレット製造用ダイスの原料押込面上を所定の回転速度で転がり、原料押込面上に蓄積された原料を、前記ローラーを原料押込面に押し当てながら前記貫通孔に押し込み、ペレットを成形するもので、
前記貫通孔は、前記所定の断面積が7mm2以上50mm2以下であり、前記所定の深さが30mm以上100mm以下であることを特徴とする。
【0015】
この構成の製造装置を用いることで、コーヒー抽出残渣を用いたペレットにおいても、十分な耐久値を有するペレットを製造することが可能となる。
【0016】
また、この製造装置は、前記原料押込面における前記ローラーが回転して通過する面積S
0
と、貫通孔の断面積Sと個数kと、が下記式を満たすことを特徴とする。
(式) 0.15<kS/S
0
<0.5
【0017】
この構成によれば、貫通孔の断面積と数をこの範囲とすることで、すなわち、ダイス上のローラー通過面積に対する貫通孔の開口の総面積、つまり開口率をこの範囲とすることで、さらに耐久性の高いペレットを製造することが可能となる。開口率が大き過ぎるとローラーが原料を押圧する範囲が広がるために力が分散されて、成形されるペレットの耐久性が落ちる。なお、開口率が小さ過ぎると、押圧する力は増加するが、生産数が減少してしまう。
【0018】
また、この製造装置は、前記貫通孔の断面が円形断面であり、前記円形断面の径が、3mm以上8mm以下であることを特徴とする。この構成によれば、十分な耐久性を持つ円柱形のペレットを製造することができ、また角状のペレットと違い、角部がないため、荷重の集中が生じにくく、外力に対する耐久性も向上する。
【0019】
また、この製造装置は、前記貫通孔が、原料の入口部となる前記原料押込面側にザグリが形成されていることが望ましい。この構成によれば、ザグリによって、原料が貫通孔に導入しやすくなり、生産性が向上する。また、ザグリによって開口面積も増えるので、ローラーによる押圧の効率も上がる。
【0020】
また、この製造装置は、前記貫通孔が、原料の出口部となる前記原料押込面と反対側の面側にザグリが形成されていることが望ましい。この構成によれば、ダイスの下方から成形されたペレットが押し出される際に、ダイスからの離れがよくなり、生産性が向上する。
【0021】
また、この製造装置は、前記ローラーの回転速度が70rpm以上120rpm以下であることを特徴とする。この構成によれば、ローラーをこの範囲の回転速度でダイスを押圧することで、さらに耐久性の高いペレットを製造することが可能となる。ローラーの回転速度が速ければ速いほど、単位時間あたりに原料を押圧して貫通孔に押し込む回数が増加するため、ペレットの耐久性は向上する一方、速すぎると、しっかりと原料を押圧できなくなったり、モータへの負荷が増大してしまう。
【0022】
また、この製造装置は、前記ペレット製造用ダイスを冷却する、液体を用いた冷却手段をさらに備えることを特徴とする。この構成によれば、冷却手段によりペレット製造用ダイスを冷却しながらペレットを製造することで、摩擦等により温度上昇するペレット製造用ダイスを冷却して所定温度に保持することができる。これにより、耐久性の高いペレットを製造することができる。
【0023】
ここで、液体を用いた冷却手段には、例えば水冷や油冷などが含まれ、安全面やコスト面などから水冷手段であることが望ましい。なお、冷却手段には、上記以外に空冷などもあるが、ペレット製造時にダイス温度の上昇が大きいため、液体を用いた冷却手段により、ダイスを冷却することが望ましい。
【0024】
また、水冷手段としては、例えば、ペレット製造用ダイスの外周や内周や下面を覆うように設けた、内部に液体を通過可能な水冷ジャケットや、液体が通過可能なパイプをペレット製造ダイスに這わして取り付ける構成や、ペレット製造用ダイスの内部に液体が通過可能な通路を設ける方法などが考えられる。
【0025】
また、この製造装置は、駆動主軸を軸として水平回転して、前記ペレット製造用ダイスの原料押込面上の原料を前記駆動主軸側に寄せるガイド板をさらに備えることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、ローラーの回転等によって、ダイス上の原料が外側に運ばれるところ、ガイド板によって原料を中心側に案内して、ペレットを成形する貫通孔に案内することができ、生産性を向上することができる。
【0027】
また、この製造装置は、前記ガイド板が、回転の進行方向に直交する方向よりも、進行方向に向けて傾斜していることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、ガイド板を上記の傾斜形状とすることで、さらに原料を中心側に案内することができ、生産性を向上することができる。
【0029】
また、この製造装置は、前記ガイド板が、回転の進行方向に直交する方向よりも、進行方向に向けて湾曲していることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、ガイド板を上記の湾曲形状とすることで、確実に原料を中心側に案内することができ、生産性をさらに向上することができる。
【0031】
この構成によれば、ローラーの回転等によって、ダイス上の原料が外側に運ばれるところ、ガイド板によって原料を中心側に案内して、ペレットを成形する貫通孔に案内することができ、生産性を向上することができる。
【0032】
また、この製造装置は、前記ガイド版の下端部が前記原料押込面上に近接していて、前記原料押込面の前記貫通孔がある領域を通過する部分に切り欠きを有することを特徴とする。この構成によれば、ガイド板の切り欠きによって、ガイド板が原料を貫通孔が配された領域に案内することができる。
【0033】
また、この製造装置は、前記ペレット製造用ダイス及び前記ローラーの周囲を囲む周壁を備える。この構成によれば、原料が外側に飛散することを防止できる。なお、ペレット製造用ダイス及びローラーの周囲を囲む周壁とは、ペレット製造用ダイスの一部、ローラーの一部の周囲を囲む周壁が含まれる。また、原料の外側への飛散を防止するため、少なくともペレット製造用ダイスのダイス表面の付近の上下が囲まれていればよい。
【0034】
本発明の一の態様に係るペレットの製造方法は、上記に記載のペレット製造装置により、コーヒー抽出残渣を含む原料を用いてペレットを製造するペレットの製造方法であり、前記ローラーを、前記ペレット製造用ダイスの原料押込面上を転がし、前記ローラーによって、前記原料押込面上に蓄積された原料を前記原料押込面に押し当てながら、ペレット製造用ダイスの複数の貫通孔に押し込み、ペレットを成形するものであり、前記原料は、ロジン・ラムラー分布における粒度特性数Deが、0.4以上1.51未満であることを特徴とする。
【0035】
これにより、原料をロジン・ラムラー分布における粒度特性数Deが、0.4以上1.51未満の粒度とすることで、十分な耐久性を持ち、燃料として利用できるペレットを製造することができる。上記範囲としているのは、細かいほど耐久性は上がるが、一方で細かすぎるとダイスの貫通孔に詰まりペレットが押し出されない可能性が高くなるためである。
【0036】
また、このペレットの製造方法は、前記原料が、ロジン・ラムラー分布における粒度特性数Deが、0.4以上1.2以下であることがより好ましく、ロジン・ラムラー分布における粒度特性数Deが、0.4以上0.7未満であることがさらに望ましい。このようにすれば、さらにペレットの耐久性を向上することができる。
【0037】
また、このペレットの製造方法は、前記原料の含水率が5%以上20%未満であることを特徴とする。ここで、含水率は、原料調整後の目標値である。これにより、製造されたペレットが十分な耐久性が確保される。含水率を上記範囲としているのは、5%未満であると、押し出された原料が固まらない場合や、ダイスの貫通孔に詰まるおそれがあるためであり、また20%以上であると押し出された原料が固まらないおそれがあるためである。
【0038】
また、このペレットの製造方法は、前記原料の含水率が5%以上14%以下であることがより望ましい。含水率を上記範囲とすることで、耐久性が高いペレットが製造できるためである。
【0039】
また、このペレットの製造方法は、前記ペレットの含水率が4%以上12%以下であることを特徴とする。これにより、製造されたペレットが十分な耐久性が確保することができるとともに、ペレットの含水率が12%を超えるとカビ発生のリスクが上がるため、この範囲が好適である。また、前記ペレットの含水率が10%以下であることがより望ましい。
【0040】
また、このペレットの製造方法は、前記コーヒー抽出残渣を醗酵する工程を備えることを特徴とする。この構成によれば、コーヒー抽出残渣を醗酵する工程を経ることで、成形されるペレットの強度を上げることが可能である。醗酵の方法は、抽出したコーヒー抽出残渣を1日や数日間置いておくことで醗酵されていく。そして、ある程度醗酵された後に、コーヒー抽出残渣を乾燥して原料とする。なお、乾燥後のコーヒー抽出残渣に加水して醗酵してもよい。
【0041】
また、このペレットの製造方法は、前記原料が、コーヒー抽出残渣、又は、コーヒー抽出残渣に木質材料が混合されたものであることを特徴とする。この構成より、コーヒー抽出残渣を廃棄することなく有効活用できるとともに、十分な耐久性のペレットを製造することができる。
【0042】
また、このペレットの製造方法は、前記ペレット製造用ダイスがダイスを冷却する冷却手段を有し、前記冷却手段により、前記ペレット製造用ダイスを80℃以下の温度に保持しながらペレットを製造することを特徴とする。
【0043】
発明者らがペレット製造の試験研究を行って見出したところ、ダイスが80℃より高い温度となると、木質ペレットの場合には問題ないが、コーヒー抽出残渣を原料に用いる場合、コーヒーに含まれる油分が、結合の阻害要因となり十分な結合が得られないこと、またダイスの貫通孔に原料がつまるリスクがあることがわかった。上記構成のように、ダイスを80℃以下の温度に保持しながら製造することで、このようなリスクを抑えることが可能となる。
【0044】
また、このペレットの製造方法は、前記ペレット製造用ダイスがダイスを冷却する冷却手段を有し、前記冷却手段により、前記ペレット製造用ダイスを60℃以下の温度に保持しながらペレットを製造することを特徴とする。
【0045】
さらに、冷却手段によってダイスの温度上昇を抑えてダイスの温度を60℃以下とすることで、上記のリスクを抑えながら、さらに高い耐久性を持ったペレットを製造することができる。すなわち、温度を60℃以下とすることで、コーヒーの油分の浮きやつまりを抑制しながら、製造されたペレットが高い耐久性を持つものとなる。
【発明の効果】
【0046】
本発明のペレットの製造装置及び製造方法は、十分な耐久性を持ったペレットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の一実施形態に係るペレット製造装置を示す斜視図である(原料ホッパ除く)。
【
図2】本発明の一実施形態に係るペレット製造装置の構成を示す概略図である。
【
図3】同ペレット製造装置のペレット製造用ダイスを示す図である。(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図4】同ペレット製造装置の部分拡大図である。(a)はペレット製造用ダイスの部分拡大図、(b)はローラーとペレット製造用ダイスの部分拡大図である。
【
図5】同ペレット製造装置のペレット製造用ダイスに設けたガイドとペレット成形孔との関係を示す図である。
【
図6】同ペレット製造装置の水冷手段を示す断面図である。
【
図7】(a)は耐久性試験器の回転箱を示す斜視図、(b)は耐久性試験器(ツイン回転箱)を示す斜視図である。
【
図8】ペレット製造装置のペレット製造用ダイスに設けたガイドの変形例を示す図であり、該ガイドとペレット成形孔との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
<1.ペレット製造装置の構造>
以下、本発明の一実施形態に係るペレット製造装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るペレット製造装置を示す斜視図である(原料ホッパ除く)。
図2は、本実施形態のペレット製造装置の構成を示す概略図である。
図3は、ペレット製造装置のペレット製造用ダイスを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4は、ペレット製造装置の部分拡大図であり、(a)はペレット製造用ダイスの部分拡大図、(b)はローラーとペレット製造用ダイスの部分拡大図である。
図5は、ペレット製造装置のペレット製造用ダイスに設けたガイドとペレット成形孔との関係を示す図である。
図6は、ペレット製造装置の水冷手段を示す断面図である。
【0049】
図1、
図2に示すように、ペレット製造装置10は、回転駆動される駆動主軸1と、これを鉛直軸として公転しつつローラー軸2aを軸に自転する2つのローラー2と、その下方に配されるペレット製造用ダイス3と、を主要な構成として備える。
【0050】
駆動主軸1は、モータ(図示なし)によって回転駆動され、駆動主軸1に接続されたローラー軸2aの両側に接続されたローラー2が自転しながら、ペレット製造用ダイス3の原料押込面3a上を転がる。そして、ペレットの原料が、駆動主軸の上方に配された原料を投入する原料ホッパ8から原料押込面3a上に投入され、ローラー2の回転により、原料押込面3a上に蓄積された原料が、原料押込面3aに押し当てられながら、ペレット製造用ダイス3の厚み方向に貫通する複数のペレット成形孔3aaに押し込まれていく。
【0051】
そして、ペレット成形孔3aaを通過した原料が、ペレット製造用ダイス3の下面から、細長の円柱形状のペレットとして押し出された後、ペレット製造用ダイス3の下面に取り付けられた回転カッター7によって所定長さに切断され、シューター9Aを介してペレット収容部9Bに順次収容されていく。なお、カッターを設けず、押し出されたペレットが自重によって破断、落下する構成とすることもできるが、カッターを配することで所定長さのペレットを成形できるので、カッターを設けることが望ましい。
【0052】
また、ペレット製造装置10は、ローラー2及びペレット製造用ダイス3の周囲を囲むように、所定高さの周壁を具備するカバー4が設けられている。このカバー4により、原料の飛散を防止する。
【0053】
ローラー2の幅は、
図3及び
図4に示すように、ペレット成形孔3aaが形成されている、駆動主軸1を中心とする環状の領域Sの幅よりも大きい幅とされ、特に外側部分を従来のローラーよりも幅広くして、原料がペレット成形孔3aa上にスムーズに押し込まれるようにしている。
【0054】
また、ローラー2は、凹部と凸部が連続する歯車状の形状としており、凹部で原料を掻き出しながら、凸部で原料を押圧するように構成されている。また、凹部と凸部が連続することで、ペレット製造用ダイス3の原料押込面3a上を滑らずに、しっかり回転するように構成されている。
【0055】
ローラー2の回転速度は、回転数が大きいほど時間当たりの原料を押し込む回数が増えるため、成形されたペレットの耐久性は上昇するが、本実施形態では100rpmとしている。このとき、モータは70Hzとなっている。なお、ローラー2の回転数は大きければ大きい程、成形されたペレットの耐久性は向上するが、回転数を増やせばモータの負荷が大きくなるため、回転速度は70rpm以上115rpm以下が望ましい。この範囲であれば、十分な耐久性を持つペレットができ、またモータへの負荷も抑えることができる。
【0056】
図3及び
図4に示すように、ペレット製造用ダイス3は、平面が円形の略円柱形状に構成されている。そして、ローラー2が通過する位置に、円環状に複数のペレット成形孔3aaが配されている。このペレット成形孔3aaは、断面が円形の貫通孔であり、ペレット製造用ダイス3を厚み方向に貫通していて、上方の原料押込面3a側と、下方の原料押出面3b側に、ザグリが形成されている。これにより、原料をスムーズにペレット成形孔3aaに導入するとともに、原料押出面3bからの離れをスムーズにしている。
【0057】
また、本実施形態のペレット成形孔3aaは、断面が直径5mmの円形状断面となっていて、断面積が約19.6mm2、深さがザグリを含めて80mmとなっている。また、本実施形態のペレット成形孔3aaの個数は、ローラー2が通過するペレット製造用ダイス3の原料押込面3a上に、円環状の領域に384個配されている。
【0058】
なお、このペレット成形孔3aaの寸法は一例であり、断面の直径は4mmや6mm、7mmなどの径や、深さが40mmや60mm、100mmなどとしてもよく、また断面の形状も円形以外の矩形や楕円形などの形状としてもよい。
【0059】
また、
図5に示すように、原料押込面3a上には、外側に位置する原料を、中心側に向けて、すなわち環状の領域(ペレット成形孔3aa)がある側に案内する板状のガイド5が設けられている。ガイド板5は、湾曲した細長い長板状であり、駆動主軸1に取り付けられ、ペレット製造用ダイス3の外周に向けて伸びていて、径方向に対して回転の進行方向に向けて離れるように湾曲している。
【0060】
また、このガイド板5の湾曲形状は、駆動主軸側の端部からペレット製造用ダイス3の外周に向けて湾曲して伸び、ペレット製造用ダイス3の外周に沿うように回転の進行方向に所定寸法伸びるように構成されている(ガイド板5の先端側)。そして、ガイド板5は、長板状の下端が原料押込面3aに近接するように立設していて、原料押込面3aのペレット成形孔3aaがある領域を通過する部分に切り欠き5aが形成されている。
【0061】
このガイド板5がローラー2の回転とあわせて回転することで、原料がペレット成形孔3aaのある領域に寄せるように案内される。このガイド板5がないと遠心力によって原料が外側に運ばれるところ、このガイド板5の形状によって、原料をペレット成形孔3aaの領域に確実に運ぶことで、ペレットの生産性を向上することができる。
【0062】
すなわち、(i)ローラー2がペレット成形孔3aaの領域上を通過する際に、ペレット成形孔3aaの上の原料が不均等になること、(ii)ローラー2の中心側(内側)と外周側(外側)とで、下に押し込む力が異なることなどにより、完全に均等に使用することは困難であるが、できるだけ均等にすべてのペレット成形孔3aaを使用し、生産性を高めることができる。
【0063】
なお、ガイド5によっても、中心側と外周側とでは製造量にいくらかの差は生じるが、ガイド5によって、外側を含め全てのペレット成形孔3aaを使用できるため、生産量を大幅に向上させることが可能になる。
【0064】
また、ローラー2の外周側部分は、一回転する際に長い距離を移動するため、外周側部分での原料を押し込む力は、広範囲にわたり一定に分散する。一方、ローラー2の中心側部分は、一回転する際に短い距離しか移動しないため、中心側部分での原料を押し込む力は狭い範囲に集中しやすく、ここでは力がより集中しているので、ローラー2の外周側部分とローラー2の中心側部分とでの下に押し込む力の差が起こるが、その影響を小さくすることもできる。
【0065】
また、
図1、
図2、
図6に示すように、ペレット製造用ダイス3の周囲には、ダイスの温度上昇を抑制する水冷ジャケット6が設けられている。この水冷ジャケット6は、内部に液体が通過する空間を有する中空の円環状に構成されているジャケット本体6Aと、これに水を供給する給水管6Bが下方に伸びていて、水を排出する排水管6C(図示なし)が上方に伸びて接続されている。また、給水管6Bと排水管6Cは、図示しないラジエーター及び循環ポンプに接続されていて、ジャケット本体6Aに供給する水を循環させている。
【0066】
この水冷ジャケット6は、ペレット成形時にダイス及び原料の温度が上がらないように、冷却水を流して温度が一定温度を超えないように調整している。本実施形態においては、ダイス温度を60℃以下に保持するように調整している。
【0067】
ダイス温度を60℃以下に保持するのは、ペレット製造用ダイス3をローラー2が回転するに際して、摩擦等によってダイス温度が上昇するところ、ダイス温度が高温のままペレットを成形すると、原料が高温となり、成形したペレットの耐久値が下がるためである。そこで、水冷ジャケット6により、ダイス温度を60℃以下に保持することで、成形したペレットの耐久値を上げることができる。
【0068】
<2.ペレットの製造方法>
このようにして構成されたペレット製造装置10は、駆動主軸1が回転すると、駆動主軸1を軸に固定されたローラー2が、駆動主軸1を軸として公転しつつローラー軸を軸に自転し、ペレット製造用ダイス3の原料押込面3a上を転がる。そして、原料ホッパ8を通じて原料を供給すると、原料が原料ホッパ8からペレット製造用ダイス3の原料押込面3a上に投入される。
【0069】
その際、駆動主軸1に取り付けられたガイド板5が、ローラー2とともに回転することで、原料がペレット成形孔3aaのある領域に寄せるように案内され、原料をペレット成形孔3aaの領域に案内する。
【0070】
そして、回転するローラー2が、蓄積された原料を外周面に形成された溝2bでかき込み、原料押込面3aに押し当てながらペレット成形孔3aaに押し込んでいく。ペレット成形孔3aaに押し込まれた原料は、ペレット成形孔3aaにおいて、細長い円柱形の筋状に成形されていき、原料押出面b側から押し出される。
【0071】
そして、筋状に連なったペレット材は、原料押出面3b側に取り付けられた回転カッター7で適当な長さに切断され、シューター9Aを通過して、ペレット収容部9Bに収容される。
【0072】
なお、原料については、回収したコーヒー抽出残渣を1日乃至数日間かけて醗酵させた後、これを乾燥して、ペレット製造用の原料として用いる。なお、乾燥後のコーヒー抽出残渣に加水して醗酵してもよい。また、原料はコーヒー抽出残渣のみとしてもよく、コーヒー抽出残渣を主原料として木質チップや、コーンスターチなどのバインダを混ぜた原料を使用することも可能である。コーヒー抽出残渣を醗酵する理由は、醗酵工程を経ずに乾燥させた原料と比較して、成形されたペレットの強度が向上するためである。
【0073】
<3.ペレット製造装置の条件>
上記のように構成されたペレット製造装置10においては、コーヒー抽出残渣を原料として成形されるペレットの耐久性が重要となる。耐久性が低くて脆いと、ペレットの運搬時やハンドリング時などに、ペレットが粉々になってしまい使えなくなるおそれがあるためである。また、ペレットの耐久性については、後述する方法により測定を行った。
【0074】
そして、コーヒー抽出残渣を用いて十分な耐久性を備えたペレットを製造するためには、製造装置のペレット成形孔3aaなどの条件が重要となる。特に重要なのが、ペレット成形孔3aaの断面積と深さである。
【0075】
前記した通り、本実施形態のペレット成形孔3aaは、断面が直径5mmの円形状断面となっていて、断面積が約19.6mm2、深さがザグリを含めて80mmとなっている。
【0076】
そして、断面の直径が3mmを下回ると、原料であるコーヒー抽出残渣が入り込みづらいことに加えて、孔径による圧縮が強すぎてペレットが詰まり孔から出づらく、また断面の直径が8mm以上であると、圧縮が弱くて脆いペレットとなる。また、孔の深さが30mmを下回ると、原料であるコーヒー抽出残渣が孔を通過する距離が短いために成形されたペレットが脆くなり、100mmを超えると孔の圧縮が強く成形されたペレットが詰まり孔から出づらい。したがって、断面の直径は、3mm以上8mm以下が望ましく、4mm以上7mm以下がより望ましい。
【0077】
また、本実施形態のペレット成形孔3aaの個数は、ローラー2が通過する円環状の領域に384個配されている。なお、ペレット成形孔3aaの断面積Sと個数kと、原料押込面3aをローラー2が回転して通過する面積S0とした場合に、0.15<kS/S0<0.5となるように、ペレット成形孔3aaを配する。
【0078】
この値が0.5以上であると、ローラー2が押圧する力が分散されてしまい、ペレットの耐久性が落ちる。また、0.15以下であると、成形されるペレットが少なく、生産性が落ちる。なお、本実施形態では、kS/S0≒19.7としている。この場合、ペレットの耐久値は92.8%となる。なお、この数値は、後述する試験により測定されたペレットの機械的耐久性の数値である。
【0079】
また、下記の表の通り、ペレット成形孔3aaの孔径を7mmに変えた場合、kS/S0≒38.6となり、その時のペレットの耐久性は74.8となる。74.8でもなんとか使える耐久性ではあるが、上記の通り、望ましくは80%以上、より望ましくは90%以上である。
【0080】
【0081】
また、ペレット成形孔3aaの深さ、すなわちペレット製造用ダイス3は、厚い方が成形されたペレットの耐久性は上がるが、厚くすればする程よいというわけではなく、厚過ぎると下に押す力がその分必要になり、圧縮も強くなるため、原料が孔に詰まり出なくなるおそれがある。
【0082】
なお、成形されたペレットの耐久値は、後述する耐久性試験において、最低限70%以上が必要であり、望ましくは80%以上、より望ましくは90%以上である。また、上記した製造装置の条件以外に、ローラーの回転速度のほか、原料の粒度や含水率、温度などによってもペレットの耐久性は向上する。以下、耐久性試験やその他の好ましい条件について説明する。
【0083】
<4.耐久性試験について>
続いて、粒度(粒度特性数De)とペレットの機械的耐久性との関係について調べた。ここで、ペレットの機械的耐久性とは、ペレットの壊れにくさを示すもので、一定量の機械的衝撃を与えた後に壊れなかった部分の質量割合DU(%)で規定される。
【0084】
(機械的耐久性の試験方法)
この試験方法は、機械的衝撃力に対する木質ペレットの耐粉化性能を求める方法で、木質ペレットに関する欧州規格EN15210―1に準拠して規格化したものである。なお、ふるいとして、JISZ8801-2に規定する円孔径(公称目開き)3.15mmの金属製ふるいを用い、はかりとして、最大で1kgまでは測ることができ、かつ0.1gの桁まで計測できるものを用いた。
【0085】
(測定器具)
耐久性試験器の構造と仕様は、
図7に示す通りである。
回転箱11は、
図7(a)に示すように、表面は平滑なスチール、アルミニウムあるいはアクリル樹脂製で、リベットやネジ釘などの突出部はできるだけ小さく角を丸く仕上げ、又は微粉が漏れないように隙間のない構造である。寸法は300(縦)×300(横)×125(幅)mmで、内部には緩衝翼11a(230×50mm)を対角線方向に強固に取り付けられ、試料の投入扉11bが側面に一箇所設けられている。
【0086】
回転箱11を50rpmの速度で回転するため、
図7(b)に示すように、計測器12を挟んで、300(縦)×300(横)mmの壁(側面)の中心位置に、壁に直角に回転軸13を取り付けられている。
耐久性試験器は、回転箱11を2つ持つツイン方式で、一度に2測定ができるようになっている。
【0087】
【0088】
表2より、粒度は細かい程、機械的耐久性が高くなることが分かった。なお、粒度が細かい程、機械的耐久性は高くなるが、細か過ぎると搬送時にブリッジしやすくなり、また、粉塵が舞いやすくなる。また、粒度をより細かくするには粉砕機の生産能力が落ち込み、価格も高くなってしまう。これらのことから、ロジン・ラムラー分布における粒度の目安となる粒度特性数Deは0.60~0.65(mm)が望ましい。なお、粉砕機はコーヒー豆のグラインダーを使用した。次いで、含水率と機械的耐久性との関係を調べた。
【0089】
【0090】
表3において、バイオ原料の含水率目標値(含水目標値)11%、15%の場合で試験した結果は、目標値が高い15%の方が、耐久性が高かった。
【0091】
また、目標値15%、17%、19%の場合で試験した結果は、15%の場合と他の場合とを比較すると、目標値が高い17%や19%の場合の方が耐久性は上がったが、17%と19%とでは差がなかった。
【0092】
よって、目標値は、17%程度が耐久性の面から、よいと考えられる。但し、圧縮する力が大きくなると、適度な含水率にも影響する可能性はある。
【0093】
また、耐久性だけを考慮すると、上記の結果となるが、一方で水分が多いとカビが繁殖するリスクが高くなる。カビのリスクを考慮すると、相反して含水率は低い方がよい。結論としては、これらの条件を考慮すると、含水率13%以下の条件で製造する必要があることが分かった。よって、バイオ原料の含水率は、9~13%の範囲が望ましい。
【0094】
一方、ペレットは、含水率が10%以下であることが望ましい。低過ぎると脆くなる傾向があるからである。また、12%を超えるとカビ発生のリスクが上がるため、安全係数を確保して10%以下と設定することが望ましい。10%以下にするには、成形前の原料の含水率を13%以下にすることが望ましい。
【0095】
続いて、添加物(バインダ)の添加、バイオ原料の充填量(投入量)、ローラーの回転速度、冷却水の有無と、機械的耐久性との関係について試験した結果を表4~表7に示す。
【0096】
【0097】
添加物の割合を増やしても、耐久性にはほとんど影響がなかった。添加すること自体に影響はあると考えられるが、割合を増やしても大きな効果はなかった。コーヒーは、紛体のため粒形が異なること、リグニンなどの結合性のある成分がないこと、成形時に熱をかけないことなどが、従来の木質ペレットの成形の場合とは異なり、この異なる点の何かが要因になっていると考えられる。
【0098】
添加物の種類としては、でんぷん系のコーンスターチは影響が多少あり、セルロース系のCMCやメトローズはコーンスターチよりも影響が大きい結果となった。
【0099】
機械的耐久性が高くなるほど、添加物の有無の差は小さくなる傾向がある。耐久性が80%を超えてくると最大3%程度、90%付近だと1-2%程度、添加物を加えることによって耐久性が上がるデータが得られたが、コストが大きくなり、カビの発生リスクが大きくなるデメリットがある。
【0100】
よって、添加物がある方が、耐久性が高まるメリットはあるが、デメリットを考えると、添加物はなくて構わないと考えられる。
【0101】
そして、コスト面やカビのリスク、そして、なくても燃焼には使用できることを考慮すると、添加物はなしで問題ないが、用途によって、耐久性を上げる必要がある場合には、添加物があることが望ましい。
【0102】
【0103】
投入量(充填量kg/h)は少ない方が耐久性は上がるが、これは原料がダイスの中に保持されている時間が長いためであると考えられる。その結果、生産量を減らすほど耐久性は上がることになるが、どこかの時点で飽和状態になるし、生産性を考慮する必要がある。よって、バイオ原料の充填量は100kg/h程度は最低限確保することが望ましい。
【0104】
【0105】
また、ローラー回転速度(回転数)が高い程、耐久性が上がるが、これは単位時間あたりに押し込むバイオ燃料の量は同じでも、押し込む回数が多くなるためである。60Hzが通常の回転速度であり、モータの負担を考えると、80Hzを超えると負荷が大きすぎると考えられる。よって、70Hz程度での運転が実用的となり、このときの回転速度は100rpmとなる。
【0106】
(冷却水の有無)
また、ペレット製造装置10が備える水冷ジャケット6による冷却の効果についても検証した。この試験は、ペレットとダイスの温度が高温の場合と、そうでない場合(ペレット温度90℃以下、ダイス温度60℃以上)とで、機械的耐久性を測定したものである。
なお、これらの温度を上げる方法は、ヌカを過剰に投入し、摩擦による温度で強引に上昇させ、表面温度の分かる温度計を使用してペレットの温度を測定した。結果は表7に示す通りである。
【0107】
【0108】
この結果から、コーヒー抽出残渣を用いたペレットの場合、木質ペレットとは異なり、温度が上がることによって、耐久性が低下することがわかった。これは、木質ペレットの場合には、熱可塑性樹脂の性質があるリグニンが含まれ、温めることで柔らかくなり、冷やすと固くなる。要するに、木質ペレットの場合は、高温で成形すると固まるが、コーヒーにはリグニンがないため、結合には水素結合や分子間結合の力を頼りにしていると考えられ、コーヒー中の油分は温度が高い程バイオ原料の表面に浮いてくるため、コーヒーに含まれる油分が結合の阻害要因となり、温度を上げることで耐久性が低下することが考えられる。
【0109】
よって、コーヒー抽出残渣を用いてペレットを成形するためには、ダイスを低い温度(60℃以下)で成形することが重要であることが分かった。よって、ペレット製造装置10が備える水冷ジャケット6を用いて、ダイス温度を60℃以下の温度にすることが望ましい。
【0110】
<5.その他の実施形態>
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。
【0111】
・前記実施の形態では、原料として、コーヒー抽出残渣を用いているが、そのようなコーヒー抽出残渣にそのほかのバイオ材料が混合されたものを用いることも可能である。
【0112】
・ローラーの溝形状は、軸線に平行な直線溝のほか、軸線に対して傾斜する斜め溝、V字形状の溝、ディンプル形状の溝とすることもできる。
【0113】
・ガイド板の形状は、上記の湾曲形状以外に、回転の進行方向に直交する方向よりも、進行方向に向けて傾斜している構成とすることもできる(
図8参照)。湾曲形状よりも効果が低い可能性はあるが、原料の引き込みについて一定の効果は期待できる。
【0114】
・また、前記実施の形態では、水冷ジャケット6がペレット製造用ダイス3の外周側を覆う構成であるが、これに限らず、例えば内周側に水冷ジャケットが取り付けられた構成や、外周及び内周双方に水冷ジャケットが取り付けられた構成、ペレット製造用ダイスの下面に水冷ジャケットが取り付けられた構成などとすることもできる。このようにすれば、例えばペレット製造用ダイスの径が大きい時などに、外周側の水冷ジャケットだけでは中心側が冷却しづらい場合や温度ムラが生じるおそれがあるところ、それを解消することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 駆動主軸
2 ローラー
2a ローラー軸
2b 溝
3 ペレット製造用ダイス
3a 原料押込面
3aa ペレット成形孔
3b 原料押出面
4 カバー
5 ガイド板
5a 切り欠き
6 水冷ジャケット
6A ジャケット本体
6B 給水管
6C 排水管
7 回転カッター
8 原料ホッパ
9A シューター
9B ペレット収容部
【要約】 (修正有)
【課題】必要な機械的耐久性が得られ、燃料として利用できるペレットを製造する装置を提供する。
【解決手段】コーヒー抽出残渣を含む原料を用いたペレットの製造装置であり、駆動主軸を軸として公転しつつローラー軸を軸に自転する、駆動主軸を中心に円形状に配列された所定の幅の複数のローラーと、ローラーと当接する原料押込面を有するペレット製造用ダイスと、ローラーを駆動するモータとを備え、ペレット製造用ダイスは、原料押込面に直交する方向に貫通する、所定の断面積S及び所定の深さLの複数の貫通孔を有し、ローラーが、ペレット製造用ダイスの原料押込面上を所定の回転速度で転がり、原料押込面上に蓄積された原料をローラーを原料押込面に押し当てながら貫通孔に押し込みペレットを成形するもので、貫通孔は、所定の断面積が7mm
2以上50mm
2以下であり、所定の深さが30mm以上100mm以下であることを特徴とする。
【選択図】
図1