(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】密閉型粉塵回収方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/16 20060101AFI20250218BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20250218BHJP
B23K 26/12 20140101ALI20250218BHJP
B08B 5/04 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
B23K26/16
B23K26/70
B23K26/12
B08B5/04 Z
(21)【出願番号】P 2024109956
(22)【出願日】2024-07-09
【審査請求日】2024-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524259528
【氏名又は名称】一般社団法人クリーンレーザー工法協会
(73)【特許権者】
【識別番号】519130694
【氏名又は名称】クリーンレーザージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】新川 光浩
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特表平04-502272(JP,A)
【文献】特開2020-040115(JP,A)
【文献】米国特許第6149252(US,A)
【文献】特開2024-035776(JP,A)
【文献】国際公開第2022/054793(WO,A1)
【文献】特開2023-103841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/16
B23K 26/70
B23K 26/12
B08B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー照射装置から対象物にレーザーを照射して発生する粉塵を回収する粉塵回収方法であって、
除去する対象物の周囲を被服体で囲み、被服体の外側から内側に突出した作業手袋を介して被服体内のレーザー照射装置を操作し、レーザー照射で発生した粉塵を、レーザー照射装置の吸引口から吸引ホースを介して被服体外部の集塵機に回収することを特徴とする密閉型粉塵回収方法。
【請求項2】
前記被服体は略箱状を成し、前記作業手袋の上に作業窓が形成され、作業窓を通して対象物を目視しながら被服体内のレーザー照射装置を操作する請求項1記載の密閉型粉塵回収方法。
【請求項3】
前記作業窓と前記作業手袋は、被服体に複数個設けられ、作業者は対象物の作業範囲に近い前記作業窓と前記作業手袋とを選択してレーザー照射装置を操作する請求項2記載の密閉型粉塵回収方法。
【請求項4】
前記被服体内部に前記レーザー照射装置を保持移動する移動装置を備え、移動装置を介して前記レーザー照射装置を移動する請求項1記載の密閉型粉塵回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面などの大型の対象物にレーザーを照射して塗膜・錆等を蒸散・昇華させて回収する際に、作業者を保護しながら粉塵を回収する密閉型粉塵回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物にレーザーを照射して錆や塗料などを蒸散・昇華させて除去する場合、対象物から周囲に金属等の粉塵や有害物質が飛散する。この種の作業に使用するレーザー照射装置には、予めレーザー照射口の近くに吸引口を備えており、吸引ホースを介して集塵機に粉塵等を回収する構成になっている。
【0003】
特許文献1に、レーザー照射装置の吸引口の吸引力を高めるヒューム捕集ノズルが記載されている。この捕集ノズルは、ノズル本体の先端に吸引口03形成を形成すると共に、ノズル本体の手元側にも上方吸引口04を形成している。そして、これら二つの吸引口でレーザー照射時の粉塵を捕集するように構成したものである。
【0004】
特許文献2に、密閉された空間内で発生する粉塵の飛散を防止する粉塵飛散防止具が記載されている。この飛散防止具は、作業空間を密閉するブース2を形成したものである。すなわち、ブース2内の粉塵を含む気体を排気装置30で建設物外に排気し、吸気フィルタ20を介してブース2外からブース2内に気体を吸気することで、ブース2内の気圧を一定に維持する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6936534号公報
【文献】特開2015-199029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の捕集ノズルによると、レーザー照射装置の吸引力を高めることは可能になっても、周囲に飛散する全ての粉塵を吸引することは困難である。特に、作業者は粉塵発生位置に近いので、飛散した粉塵が付着し易く、また、気化した有害物質を吸引する恐れもある。
【0007】
一方、特許文献2に記載の粉塵飛散防止具は、密閉されたブース2内で発生する粉塵を排気する構成になっている。ところが、ブース2内で作業する作業員の安全性は全く確保をされていない。すなわち、密閉されたブース2内で発生する粉塵は、ブース2内部の作業員に付着し、吸引される可能性がある。
【0008】
しかも作業員は、密閉されたブース2内に出入りすることが極めて困難になる。また、ブース2内で作業を行った後は、衣服等に粉塵が付着している可能性があるので、そのままブース2から出ることはできない。そのため、付着した粉塵を除去するなど、使用後のメンテナンスに多くの手間を要する課題もある。
【0009】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく案出されたもので、壁面などの大型の対象物にレーザーを照射する際に、飛散する粉塵が作業員に付着するのを防止すると共に、気化した有害物質の吸引も防止することで、作業員の安全を保全する密閉型粉塵回収方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、レーザー照射装置1から対象物Pにレーザーを照射して発生する粉塵を回収する粉塵回収方法であって、除去する対象物Pの周囲を被服体2で囲み、被服体2の外側から内側に突出した作業手袋4を介して被服体2内のレーザー照射装置1を操作し、レーザー照射で発生した粉塵を、レーザー照射装置1の吸引口1Aから吸引ホース1Bを介して被服体2外部の集塵機5に回収することにある。
【0011】
第2の手段の前記被服体2は略箱状を成し、前記作業手袋4の上に作業窓3が形成され、作業窓3を通して対象物Pを目視しながら被服体2内のレーザー照射装置1を操作する。
【0012】
第3の手段の前記作業窓3と前記作業手袋4は、前記被服体2に複数個設けられ、前記対象物Pの作業範囲に近い前記作業窓3と前記作業手袋4とを選択して前記レーザー照射装置1を操作する。
【0013】
第4の手段は、前記被服体2内部に前記レーザー照射装置1を保持移動する移動装置6を備え、移動装置6を介して前記レーザー照射装置1を移動する回収方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、作業者は被服体2と作業手袋4とで保護されながらレーザーを照射して錆等の除去物を除去する作業を行えるので、粉塵が作業員に付着する虞が解消した。また、気化した有害物質が作業員に吸引されることもない。
【0015】
しかも、作業者は対象物Pの作業範囲に近い位置の作業手袋4を選択してレーザー照射装置1を操作できるので、効率的な作業を行うことができる。
【0016】
更に、被服体2に備えた移動装置6により、被服体2内部のレーザー照射装置1の移動が容易になるので、壁面など大型の対象物Pのように作業範囲が広範囲になっても対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】本発明のケース他の実施例を示す概略内面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は、レーザー照射装置1から壁面などの対象物Pにレーザーを照射して錆や塗膜等を除去する際に発生する粉塵を回収する方法である。
【0019】
先ず、除去する対象物Pの周囲を被服体2で囲む(
図2参照)。図示例の被服体2は粉塵を遮蔽できる板体を使用し対象物P側の面と底面とを開放した略箱状を成す。すなわち、左右の側板2Aと両側板2Aを連結する天板2Bと作業者が対面する作業板2Cとを備えている。被服体2の構成は除去する対象物Pの位置により適宜に変更するものである。例えば、対象物Pが床面等にある場合は、作業板2Cに対向する背板を設けたり、あるいは対象物Pが天井面等にある場合は、天板2Bを無くして床板や背板を設けたりする(図示せず)。
【0020】
また、粉塵を遮蔽できる板体を使用せずに透明なシート材で被服体2を形成することも可能である。この場合、対象物Pを囲む支持材等(図示せず)との併用で自由な形状の被服体2を構成することが可能である。このように、被服体2の形状や材質は任意に変更することが可能である。
【0021】
この被服体2には、対象物Pを目視する作業窓3が設けられ、被服体2外側から被服体2内部に突設された作業手袋4を作業窓3の下方に備えている(
図1参照)。この作業手袋4は、被服体2の外側が開口し、被服体2の内部に指先部が突出した状態で設けられている(
図2参照)。
【0022】
作業窓3はレーザーシールド加工された遮光保護具が使用される。したがって、作業者は保護具を使用せずに作業が可能になる。図示例では、横長の四角い作業窓3を示しているが、作業窓3の形状や遮光手段は任意に選択することができる。
【0023】
作業時は、作業板2Cの作業窓3を通して対象物Pを目視すると共に、作業手袋4を介してレーザー照射装置1を操作する(
図1参照)。図示例では、作業窓3の下に1双の作業手袋4を配置している(
図3参照)。また、作業板2Cに多数の作業窓3を配置すると共に、各作業窓3に配置された作業手袋4を選択することで、対象物Pの作業範囲に近い作業手袋4で作業することが可能になる(
図4参照)。
【0024】
図5は、被服体2内部に配置した移動装置6を示している。この移動装置6は、被服体2内でレーザー照射装置1を移動する際に使用する。図示の移動装置6は、作業板2Cの内側に水平に設置したレール6Aと、このレール6Aに沿って移動する滑車6Bと、滑車6Bに懸吊された保持ベルト6Cとを備えている。
【0025】
そして、レーザー照射装置1を保持ベルト6Cで保持し、滑車6Bで任意の位置へ移動する。この移動装置6により、作業者は被服体2内に入らずにレーザー照射装置1を移動することが可能になる。尚、移動装置6は図示例に限られるものではなく、レーザー照射装置1を任意の位置に移動可能な機構であればよい。
【0026】
レーザー照射で発生した粉塵は、レーザー照射装置1の吸引口1Aから吸引ホース1Bを介してレーザー照射装置1外部の集塵機5に回収する(
図1参照)。図示では、側板2Aの一部に吸引ホース1Bを通す挿通口2Aaを形成している。そして、この挿通口2Aaから吸引ホース1Bを外に出して集塵機5に連結する。このとき、集塵機5にHEPAフィルタを使用することで超微細な粉塵でも外部への流出を防止することができる。
【0027】
尚、本発明の手段は図示例に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲の変更は自由に行えるものである。
【符号の説明】
【0028】
P 対象物
1 レーザー照射装置
1A 吸引口
1B 吸引ホース
2 被服体
2A 側板
2Aa 挿通口
2B 天板
2C 作業板
3 作業窓
4 作業手袋
5 集塵機
6 移動装置
6A レール
6B 滑車
6C 保持ベルト
【要約】
【課題】飛散した粉塵が作業員に付着し吸引される恐れを解消し、作業員の安全を保全する密閉型粉塵回収方法を提供する。
【解決手段】レーザー照射装置1から対象物にレーザーを照射する。照射時に発生する粉塵を回収する。除去する対象物の周囲を被服体2で囲む。被服体2に設けられた作業窓3を通して対象物を目視する。被服体2内部に突設された作業手袋4を介してレーザー照射装置1を操作する。粉塵をレーザー照射装置1の吸引口1A、吸引ホース1Bを介し集塵機5に回収する。
【選択図】
図1