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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】操作入力装置、及び、電子楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/34 20060101AFI20250218BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
G10H1/34
G10H1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023506660
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011332
(87)【国際公開番号】W WO2022195842
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】519359860
【氏名又は名称】InstaChord株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(72)【発明者】
【氏名】永田 雄一
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-324397(JP,A)
【文献】特開2012-189694(JP,A)
【文献】特開2017-126431(JP,A)
【文献】特開2004-295372(JP,A)
【文献】特開昭62-038498(JP,A)
【文献】実開昭61-033336(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00- 7/12
G06F 3/033-3/039
H01H 13/00-13/88
H01H 25/00-25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子楽器に用いられる操作入力装置であって、
長辺同士が所定の間隔を空けて配置された複数の長孔を有する筐体と、
複数の前記長孔にそれぞれ挿入されて前記筐体から先端側壁面を突出させた状態で、前記長孔の短辺方向及び挿入方向に操作可能に前記筐体に保持される複数の操作片と、
所定の厚みを有する弾性材料で形成され、複数の前記操作片の基端側壁面を支持する表面と、複数の前記操作片の前記基端側壁面にそれぞれ対応する位置に複数の突起部が設けられた裏面とを有する弾性支持部材と、
複数の前記突起部によりそれぞれ押圧されることで弾性変形する複数の感圧導電性部材と、
複数の前記感圧導電性部材にそれぞれ接触する複数の電極パターンを有する基板と、
前記弾性支持部材と前記基板との間に配置されるとともに、複数の前記突起部をそれぞれ避けるように配置された複数の開口部を有するスペーサ部材とを備える、
ことを特徴とする操作入力装置。
【請求項2】
複数の前記突起部は、
複数の前記操作片の前記基端側壁面の中心部にそれぞれ対応する位置に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項3】
前記弾性支持部材は、
前記表面に台状に形成され、複数の前記操作片の前記基端側壁面をそれぞれ支持する複数の支持部と、
複数の前記支持部の周囲にそれぞれ形成され、前記支持部が形成された部分よりも厚みが薄い薄肉部とを有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の操作入力装置。
【請求項4】
複数の前記感圧導電性部材は、
短冊状に形成され、前記短冊状の長手方向が前記長孔の前記短辺方向に沿って複数の前記開口部をそれぞれ跨ぐように配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の操作入力装置。
【請求項5】
複数の前記電極パターンにそれぞれ接続されて、複数の前記感圧導電性部材がそれぞれ弾性変形したときの電気抵抗値の変化に基づいて、複数の前記操作片に対する演奏操作をそれぞれ検出する操作検出部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の操作入力装置。
【請求項6】
前記操作検出部は、
前記電気抵抗値を前記操作片に対する操作圧力値に換算し、
前記操作圧力値が所定の第1上限閾値を上回った後に前記第1上限閾値を下回った時点から所定の第1下限閾値を下回る時点までの第1経過時間の長さに応じて、前記操作片が前記短辺方向に操作されたときの前記演奏操作の有無を検出するとともに、
前記操作圧力値が前記第1上限閾値を上回った後の第1ピーク値に応じて、当該演奏操作の強弱を検出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の操作入力装置。
【請求項7】
前記操作検出部は、
前記電気抵抗値を前記操作片に対する操作圧力値に換算し、
前記操作圧力値が所定の第2下限閾値を上回った時点から所定の第2上限閾値を上回る時点までの第2経過時間の長さに応じて、前記操作片が前記挿入方向に操作されたときの前記演奏操作の有無を検出するとともに、
前記操作圧力値が前記第2上限閾値を上回った後の第2ピーク値に応じて、当該演奏操作の強弱を検出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の操作入力装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の操作入力装置と、
前記操作入力装置に対する演奏操作に基づいて、演奏音を発音する発音部とを備える、
ことを特徴とする電子楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作入力装置、及び、電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ギターの弦に相当する操作片に対する弾奏操作を入力可能な電子楽器が知られている。例えば、特許文献1には、一端が固定され、他端が突出して設けられた可撓性の操作片と、該操作片と所定の間隔を置いて、操作方向の両側に設けられた複数の接点パターンと、該接点パターンに対応して、該操作片の両側の位置に設けられた複数の接点部とを有する弾奏情報入力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-308962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された弾奏情報入力装置では、1つの操作片に対して操作方向の両側に複数の接点パターン及び接点部が設けられるため、部品点数が多く、構造が複雑である。そのため、製造コストが増加し、メンテナンス性が低下するという問題点があった。
【0005】
また、特許文献1に開示された弾奏情報入力装置では、操作片が操作方向に操作された場合であっても、接点部が接点パターンに接触しない程度の細かな操作量を検出することができない。さらに、特許文献1に開示された弾奏情報入力装置では、操作片が操作方向に操作された場合には、接点パターン及び接点部により検出可能であるが、例えば、操作片を上から叩いたり押さえたりするような方向の操作を検出することができない。したがって、演奏操作として検出可能な操作量や操作方向が限定されており、様々な演奏操作に対応することができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、簡単な構造で演奏操作の操作性を向上することを可能とする操作入力装置、及び、電子楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る操作入力装置は、
電子楽器に用いられる操作入力装置であって、
長辺同士が所定の間隔を空けて配置された複数の長孔を有する筐体と、
複数の前記長孔にそれぞれ挿入されて前記筐体から先端側壁面を突出させた状態で、前記長孔の短辺方向及び挿入方向に操作可能に前記筐体に保持される複数の操作片と、
所定の厚みを有する弾性材料で形成され、複数の前記操作片の基端側壁面を支持する表面と、複数の前記操作片の前記基端側壁面にそれぞれ対応する位置に複数の突起部が設けられた裏面とを有する弾性支持部材と、
複数の前記突起部によりそれぞれ押圧されることで弾性変形する複数の感圧導電性部材と、
複数の前記感圧導電性部材にそれぞれ接触する複数の電極パターンを有する基板と、
前記弾性支持部材と前記基板との間に配置されるとともに、複数の前記突起部をそれぞれ避けるように配置された複数の開口部を有するスペーサ部材とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る操作入力装置によれば、演奏者が操作片の先端側壁面を長孔の短辺方向に操作した場合、その操作片が長孔の短辺方向に傾斜し、その傾斜した操作片の基端側壁面が、弾性支持部材を変形させることで、弾性支持部材の裏面に設けられた突起部を介して感圧導電性部材を押圧し、弾性変形させる。また、演奏者が操作片の先端側壁面を操作片の挿入方向に操作した場合、その操作片が操作片の挿入方向に押し込まれ、その押し込まれた操作片の基端側壁面が、弾性支持部材を変形させることで、弾性支持部材の裏面に設けられた突起部を介して感圧導電性部材を押圧し、弾性変形させる。そして、感圧導電性部材が弾性変形したときの電気抵抗値の変化に基づいて、操作片に対する演奏操作が検出される。したがって、簡単な構造で演奏操作の操作性を向上することできる。
【0009】
上記以外の課題、構成及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る電子楽器1の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る電子楽器1の一例を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る電子楽器1における和音指定ボタン群3、和音変更ボタン群4及び表示部9の拡大正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る電子楽器1の一例を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係る電子楽器1の一例を示す機能説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る操作入力装置5の一例を示す分解上方斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る操作入力装置5の一例を示す分解下方斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る操作入力装置5の一例を示す横断面図である。
図9】本発明の実施形態に係る操作入力装置5の一例を示す縦断面図である。
図10】操作検出部56が、操作片51が強く弾かれたことにより「強」の演奏操作ありと検出したときの第1の検出方法を示す説明図である。
図11】操作検出部56が、操作片51が弱く弾かれたことにより「弱」の演奏操作ありと検出したときの第1の検出方法を示す説明図である。
図12】操作検出部56が、操作片51が弾かれなかったことにより演奏操作なしを検出したときの第1の検出方法を示す説明図である。
図13】操作検出部56が、操作片51が強く叩かれたことにより演奏操作ありと検出したときの第2の検出方法を示す説明図である
図14】操作検出部56が、操作片51が弱く叩かれたことにより「弱」の演奏操作ありと検出したときの第2の検出方法を示す説明図である。
図15】操作検出部56が、操作片51が叩かれなかったことにより演奏操作なしと検出したときの第2の検出方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0012】
(電子楽器1の各部の構成について)
図1は、電子楽器1の一例を示す斜視図である。図2は、電子楽器1の一例を示す正面図である。図3は、電子楽器1における和音指定ボタン群3、和音変更ボタン群4及び表示部9の拡大正面図である。
【0013】
電子楽器1は、演奏者が片手又は両手を使って演奏操作することにより、様々な音楽の演奏を可能とする楽器である。電子楽器1は、電子楽器1の外形を構成する本体2を備え、本体2の各部に配置された操作部10として、和音指定ボタン群3、和音変更ボタン群4、操作入力装置5、メニューボタン6、オプションボタン群7を備える。また、電子楽器1は、発音部8及び表示部9を備えるとともに、本体2に内蔵された制御部11、記憶部12、バッテリ13及び外部I/F(インターフェース)部14を備える。
【0014】
本体2は、例えば、ギターやベース等の弦楽器の形状を模したものであり、弦楽器のネックに相当するネック部20と、弦楽器のボディに相当するボディ部21とからなる。本体2は、例えば、木材、樹脂、金属等の材料で形成されており、400~500mm程度の全長と、10mm程度の厚みを有する。なお、本体2のサイズ及び形状は、適宜変更してもよい。本実施形態では、本体2は、樹脂成形により薄板状に形成された2つの部材(表側カバー及び裏側カバー)で構成されている。
【0015】
和音指定ボタン群3は、複数の和音指定ボタン3A~3Iからなり、ネック部20に並べられて配置される。複数の和音指定ボタン3A~3Iは、例えば、矩形状に形成されており、2次元配列状又は千鳥配列状に並べられて配置される。
【0016】
複数の和音指定ボタン3A~3Iには、和音がそれぞれ割り当てられる。具体的には、複数の和音指定ボタン3A~3Iには、各和音を構成する第1の根音及び第1の和音種類がそれぞれ割り当てられる。複数の和音指定ボタン3A~3Iにそれぞれ割り当てられた和音の割当状態は、固定的なものではなく、複数の変更方法(詳細は後述する)に従って変更可能なものである。なお、複数の和音指定ボタン3A~3Iには、IからVIまでの主要三和音及び副三和音を少なくとも含む和音が割り当てられるのが好ましい。
【0017】
和音変更ボタン群4は、複数の和音変更ボタン4A~4Kからなり、ネック部20に複数の和音指定ボタン3A~3Iと並べられて配置される。複数の和音変更ボタン4A~4Kは、例えば、矩形状に形成されており、2次元配列状又は千鳥配列状に並べられた状態で和音指定ボタン群3に隣接して配置される。
【0018】
複数の和音変更ボタン4A~4Kには、複数の和音指定ボタン3A~3Iに対する和音の割当状態を変更する複数の変更方法がそれぞれ割り当てられる。和音の割当状態を変更する変更方法は、複数の和音指定ボタン3A~3Iにそれぞれ割り当てられた各和音を構成する第1の根音及び第1の和音種類の少なくとも一方を所定の規則に従って変更する方法である。和音の変更方法は、以下の3つに分類される。
【0019】
「第1の変更方法」では、第1の和音種類に第2の和音種類を付加することにより、又は、第1の和音種類を第2の和音種類に置換することにより、割当状態を変更する。例えば、変更対象の和音を示すコードネームが「Am」であって、第2の和音種類として、「M7」又は「aug」が指定された場合、第1の変更方法では、第1の和音種類「m」に第2の和音種類(「M7」)として指定された構成音の特徴を付加することにより、又は、第1の和音種類「m」を第2の和音種類(「aug」)として指定された構成音の特徴で置換することにより、新たな和音(付加:「Am」→「AmM7」、又は、置換:「Am」→「Aaug」)に変更する。本実施形態では、第1の変更方法として、7個の和音変更ボタン4A、4B、4D~4F、4H、4Kに、「9」、「6」、「sus4」、「7」、「M7」、「dim」、「m7(-5)」という第2の和音種類がそれぞれ割り当てられている。
【0020】
「第2の変更方法」では、第1の和音種類が第3の和音種類に該当するときに、第1の和音種類を、第3の和音種類とは異なる第4の和音種類に置換するとともに、第1の和音種類が第4の和音種類に該当するときに、第1の和音種類を第3の和音種類に置換することにより、割当状態を変更する。和音指定ボタン3A~3Iには、第2の変更方法により割当状態を変更するときの第3の和音種類及び第4の和音種類が割り当てられる。例えば、変更対象の和音を示すコードネームが「C」及び「Am」であって、第3の和音種類として「M」、第4の和音種類として「m」が指定された場合、第2の変更方法では、第3の和音種類と第4の和音種類とを入れ替える(メジャーとマイナーを入れ替える)ことにより、新たな和音(「C」→「Cm」及び「Am」→「A」)に変更する。本実施形態では、第2の変更方法として、和音変更ボタン4Cに、「M」という第3の和音種類及び「m」という第4の和音種類が割り当てられている。
【0021】
「第3の変更方法」では、第1の根音に変化記号(例えば、♯、♭等)を付加することにより、割当状態を変更する。和音指定ボタン3A~3Iには、第3の変更方法により割当状態を変更するときの変化記号が割り当てられる。例えば、変更対象の和音を示すコードネームが「C」であって、変化記号として、「♯」又は「♭」が指定された場合、第3の変更方法では、第1の根音に変化記号を付加することにより、新たな和音(「C」→「D♭」又は「C」→「C♭」)に変更する。本実施形態では、第3の変更方法として、和音変更ボタン4Iに、「#」という変化記号が割り当てられている。
【0022】
操作入力装置5は、演奏操作を入力する演奏操作入力装置として機能し、ギターやベース等の弦を模した複数の操作片51A~51Fを備える。複数の操作片51A~51Fは、細長く全体として丸みを帯びた外観を有し、ボディ部21の中央寄りに並べられて配置される。操作入力装置5は、操作片51A~51Fに対する演奏操作として、ギターやベース等の弦のように指で弾くような演奏操作(弾奏操作)や、指で叩くような演奏操作(打奏操作)を検出可能に構成される。
【0023】
メニューボタン6は、ネック部20に複数の和音指定ボタン3A~3Iと並べられて配置される。
【0024】
オプションボタン群7は、ボディ部21に配置されて、キー(調)を上げたり下げたりするキー上昇ボタン70A及びキー下降ボタン70Bと、記憶部12に記憶されたユーザ設定データを読み出すメモリボタン71A、71Bとからなる。
【0025】
発音部8は、ボディ部21の片側寄りに配置される。発音部8は、例えば、増幅回路、スピーカ等を含む音出力デバイスで構成されている。発音部8は、制御部11により生成された発音情報(詳細は後述する)に基づく信号を増幅しスピーカを介して外部に放音することにより、和音指定ボタン群3及び和音変更ボタン群4に対する操作に応じた演奏音を発音する。なお、発音部8は、無線又は有線により接続される外部のスピーカ、ヘッドホン、イヤホン等の外部機器でもよい。
【0026】
表示部9は、ネック部20とボディ部21の中間に、和音指定ボタン群3及び和音変更ボタン群4と並べられて配置される。表示部9は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネル等の表示デバイスで構成されている。表示部9は、制御部11により生成された表示情報に基づいて、各種の画面(演奏用の演奏画面や設定用の設定画面等)を表示する。
【0027】
演奏画面90は、図3に示すように、複数の和音指定ボタン3A~3Iにそれぞれ割り当てられた和音に対応する複数の和音画像900A~900Iと、複数の和音変更ボタン4A~4Kにそれぞれ割り当てられた変更方法に対応する複数の変更方法画像901A~901Kと、メニューボタン6に対応するメニュー画像902と、キー上昇ボタン70A及びキー下降ボタン70Bにより設定されたキーを示すキー画像903とを含む。なお、図3では、説明のために、各和音指定ボタン3A~3Iに割り当てられたコードネームを表記した。
【0028】
和音画像900A~900Iの各々は、和音を示すコードネームを含む画像である。第1の変更方法に対応する変更方法画像901A、901B、901D~901I、901Kは、第2の和音種類を含む画像である。第2の変更方法に対応する変更方法画像901Cは、第3の和音種類及び第4の和音種類を含む画像である。第3の変更方法に対応する変更方法画像901Jは、変化記号を含む画像である。演奏画面90において、複数の和音画像900A~900I、複数の変更方法画像901A~901K及びメニュー画像902が並べられて配置された画像の並び順は、複数の和音指定ボタン3A~3I、複数の和音変更ボタン4A~4K及びメニューボタン6が並べられて配置されたボタンの並び順と一致する。
【0029】
なお、和音指定ボタン群3、和音変更ボタン群4、メニューボタン6及びオプションボタン群7は、演奏者の操作状態を検出可能なセンサであれば任意の形式のセンサを用いてもよく、例えば、感圧センサ、接触センサ、タッチパネル等で構成されていてもよい。また、和音指定ボタン群3、和音変更ボタン群4、メニューボタン6及び、オプションボタン群7のサイズ、形状及び配置状態は、上記の例に限られず、適宜変更してもよい。操作入力装置5の詳細は後述する。
【0030】
図4は、電子楽器1の一例を示すブロック図である。図5は、電子楽器1の一例を示す機能説明図である。
【0031】
制御部11は、例えば、プロセッサ(CPU等)、サウンドチップ、ビデオチップ等の演算処理デバイスで構成されている。制御部11は、電子楽器1の各部に電気的に接続されている。
【0032】
記憶部12は、例えば、HDD、メモリ等の記憶デバイスで構成されている。記憶部12には、電子楽器1の演奏に必要な各種のデータとして、音階データベース120、演奏方法データベース121、音源データベース122、ユーザ設定データベース123、及び、演奏プログラム124が記憶されている。なお、これらのデータは、電子楽器1がインターネット等のネットワークに接続されることで更新されてもよい。
【0033】
音階データベース120は、和音の各構成音に対応する音階を、例えば、ノート番号で指定するためのデータベースである。音階データベース120は、例えば、和音毎に、各構成音に対応するノード番号を記憶する。
【0034】
演奏方法データベース121は、和音を発音させるときの演奏方法に応じて発音情報を生成するためのデータベースである。演奏方法データベース121は、例えば、コード、ルート、ストローク、アルペジオ等の演奏方法毎に、発音条件(基準の発音量や発音長さ等)を記憶する。
【0035】
音源データベース122は、和音を発音させるときの音色に応じて発音情報を生成するためのデータベースである。音源データベース122は、例えば、ギター、ピアノ、ドラム等の音色毎に音源データを記憶する。音源データとしては、FM音源、MIDI音源、PCM音源等の種々の形式が用いられる。
【0036】
ユーザ設定データベース123は、演奏者により設定可能な各種のパラメータを保存するためのデータベースである。ユーザ設定データベース123は、複数のユーザ設定データからなり、ユーザ設定データ毎に、割当状態、キー、演奏方法、音色等のパラメータを記憶する。ユーザ設定データベース123は、メモリボタン71A、71Bに対する操作に応じて、制御部11により読み出され、設定画面にて変更可能に構成される。
【0037】
バッテリ13は、例えば、一次電池又は二次電池で構成されている。バッテリ13は、電子楽器1の電源スイッチ(不図示)がオンされたとき、電子楽器1の各部に電力を供給する。なお、電子楽器1は、例えば、ACアダプターやUSBケーブル等を介して外部から電力が供給されてもよい。
【0038】
外部I/F部14は、例えば、通信デバイスで構成されており、有線又は無線により外部機器やネットワークと接続されて、情報を送受信する。外部I/F部14は、外部機器と有線で接続される入出力端子と、Bluetooth(登録商標)、無線LAN等の通信規格に対応する無線通信部とを備える。
【0039】
制御部11は、記憶部12に記憶された演奏プログラム124を実行することにより、操作受付部110、和音変更部111、発音情報生成部112、及び、表示情報生成部113として機能する。そして、制御部11は、操作部10に対する操作を受け付けて、その操作に応じて、記憶部12に記憶された各種のデータベース120~123を参照しつつ、発音部8、表示部9及び外部I/F部14を制御する。
【0040】
操作受付部110は、操作部10の各々に対する操作をそれぞれ受け付ける。
【0041】
和音変更部111は、操作受付部110により和音変更ボタン4A~4Kに対する操作が受け付けられたとき、当該操作における和音変更ボタンに割り当てられた変更方法に従って、割当状態を変更する。そして、和音変更部111は、当該和音変更ボタンが操作されている間、当該割当状態を変更した状態を維持し、当該和音変更ボタンに対する操作が解除されたとき、当該割当状態を元の割当状態に戻す。
【0042】
発音情報生成部112は、操作受付部110により和音指定ボタン3A~3Iが受け付けられるとともに、操作入力装置5(複数の操作片51A~51Fの少なくとも1つ)に対する操作が受け付けられたとき、当該操作における和音指定ボタン3A~3Iに割り当てられた和音に基づいて、発音情報80を生成する。
【0043】
発音情報生成部112が発音情報80を生成するときの具体的な処理は、図5に示すとおりである。すなわち、発音情報生成部112は、複数の和音指定ボタン3A~3Iに対する操作が受け付けられたとき、当該操作に応じた和音を、例えば、コードネーム(第1の中間情報81A)で特定することにより、発音部8に発音させる和音を決定する。このとき、複数の和音変更ボタン4A~4Kが操作されている場合には、発音情報生成部112は、当該操作における和音変更ボタン4A~4Kに割り当てられた変更方法に従って割当状態が変更された状態に基づいて、発音部8に発音させる和音を決定する。
【0044】
そして、発音情報生成部112は、第1の中間情報81Aが示すコードネームに基づいて、音階データベース120を参照し、和音の各構成音に対応する音階(第2の中間情報81B)を決定する。発音情報生成部112は、演奏方法データベース121を参照し、和音を発音させるときの発音条件(第3の中間情報81C=音階+発音条件)を決定する。発音情報生成部112は、音源データベース122を参照し、和音を発音させるときの音色(第4の中間情報81D=音階+発音条件+音色)を決定する。発音情報生成部112は、操作入力装置5(複数の操作片51A~51Fの少なくとも1つ)に対する操作が受け付けられたとき、操作入力装置5から送出された演奏操作検出データ(例えば、強弱や長短等)に基づいて発音量や発音長さを決定する。発音情報生成部112は、第5の中間情報81E(音階+発音条件+音色+演奏操作検出データ)に基づいて、当該音階及び当該音色で特定される音を、当該発音条件及び当該演奏操作検出データに従って発音部8に発音させるための発音情報80を生成し、発音部8に送出する。
【0045】
表示情報生成部113は、操作受付部110により受け付けられた操作に応じて、演奏画面90(図3参照)及び設定画面を、表示部9に表示させるための表示情報91を生成する。
【0046】
上記の構成を有する電子楽器1を演奏する際、演奏者は、例えば、本体2のネック部20を左手(又は右手)で持ち、ボディ部21を右手(又は左手)で支えつつ、左手(又は右手)の指で和音指定ボタン群3及び和音変更ボタン群4を押下するとともに、右手(又は左手)の指で複数の操作片51A~51Fを弾くようにして電子楽器1を演奏する。また、演奏者は、本体2を、例えば、テーブルに載置した状態で、左手(又は右手)の指で和音指定ボタン群3及び和音変更ボタン群4を押下するとともに、右手(又は左手)の指で複数の操作片51A~51Fを弾いたり叩いたり押さえたりするようにして電子楽器1を演奏する。
【0047】
(操作入力装置5の詳細な構成について)
図6及び図7は、操作入力装置5の一例を示す分解上方斜視図及び分解下方斜視図である。図8及び図9は、操作入力装置5の一例を示す横断面図及び縦断面図である。なお、図8では、2つの操作片51C、51Dを示し、図9では、1つの操作片51Cを示しているが、他の操作片についても同様に構成される。
【0048】
操作入力装置5は、筐体50、複数の操作片51A~51F、弾性支持部材52、複数の感圧導電性部材53、基板54、スペーサ部材55、及び、操作検出部56を備える。
【0049】
筐体50は、長辺同士が所定の間隔を空けて配置された複数の長孔500を有する。長孔500は、操作片51A~51Fの形状に合わせて、正面視において、例えば、角丸長方形に形成される。なお、長孔の形状は、角丸長方形に代えて、矩形状でもよいし、楕円形状でもよいし、これらに限られない。
【0050】
本実施形態では、筐体50は、電子楽器1の本体2の一部で構成されて、複数の操作片51A~51Fをそれぞれ収容するように立設された収容壁501と、4つのねじ穴502とを有する。
【0051】
複数の操作片51A~51Fは、丸みを帯びた曲面状の先端側壁面510と、その反対側に形成された基端側壁面511と、先端側壁面510と基端側壁面511との間に配置される周側面512と、周側面512に対して周回するように筋状に形成された受け部513とを有する。本実施形態では、操作片51A~51Fは、例えば、樹脂成形により内部が空洞のキャップ状に形成され、3つの補強リブ514が、内部の空洞を長辺方向に等間隔で仕切るように設けられている。
【0052】
複数の操作片51A~51Fは、複数の長孔500にそれぞれ挿入されて筐体50から先端側壁面510を突出させた状態で、長孔500の短辺方向(図8の矢印F1、F2)及び挿入方向(図8の矢印F3)に操作可能に筐体50に保持される。その際、操作片51A~51Fは、長孔500に挿入されたときに周側面512と長孔500との間に所定の隙間(遊び)が存在するとともに、受け部513が長孔500からの抜け止めとして機能するように設計される。
【0053】
弾性支持部材52は、所定の厚みを有する板状の弾性材料(例えば、シリコーンゴム等)で形成される。弾性支持部材52は、複数の操作片51A~51Fの基端側壁面511を支持する表面520と、厚み方向に対して表面520とは反対側に配置されて、複数の操作片51A~51Fの基端側壁面511にそれぞれ対応する位置に複数の突起部523が設けられた裏面521と、側面に沿って縁取りされた側縁部522とを有する。
【0054】
弾性支持部材52は、表面520に台状に形成され、複数の操作片51A~51Fの基端側壁面511を支持面524aでそれぞれ支持する複数の支持部524と、複数の支持部524の周囲にそれぞれ形成され、支持部524が形成された部分よりも厚みが薄い薄肉部525とを有する。弾性支持部材52は、裏面521に凸状及び凹状にそれぞれ形成され、複数の支持部524が形成された部分と重ならないように設けられた凸状部526と、複数の支持部524が形成された部分の周囲を含むように設けられた複数の凹状部527とを有する。したがって、弾性支持部材52は、支持部524及び凸状部526のいずれかが設けられた部分の厚みが相対的に厚く、支持部524及び凸状部526が設けられていない部分、すなわち、薄肉部525の厚みが相対的に薄くなっている。
【0055】
突起部523は、操作片51A~51Fの基端側壁面511に対応する位置として、表面520(支持部524の支持面524a)により支持される基端側壁面511の反対側、すなわち、弾性支持部材52を挟んで支持面524aの反対側に位置する裏面521に、例えば、先細りの円錐台状に設けられる。本実施形態では、突起部523は、基端側壁面511の中心部511aに対応する位置(凹状部527の中心部)に設けられている。なお、突起部523のサイズや形状は、適宜変更してもよく、例えば、円柱状、角柱状又は角錐台状でもよい。
【0056】
複数の感圧導電性部材53は、所定の押圧力により弾性変形したときに電気抵抗値が変化する感圧導電性材料により形成される。感圧導電性材料は、例えば、絶縁性のゴムに導電性の粒子が添加されることで製造され、押圧力が作用していない状態では、電気抵抗値が高く、押圧力が大きくなるほど電気抵抗値が低下するように変化する。
【0057】
複数の感圧導電性部材53は、複数の突起部523と接触する位置にそれぞれ配置されて、複数の突起部523によりそれぞれ押圧されることで弾性変形する。複数の感圧導電性部材53は、例えば、短冊状に形成され、短冊状の長手方向が長孔500の短辺方向F1、F2に沿ってスペーサ部材55が有する複数の開口部550をそれぞれ跨ぐように配置される。
【0058】
基板54は、複数の感圧導電性部材53にそれぞれ接触する複数の電極パターン540を有する。電極パターン540は、例えば、互いに接触しないように櫛形状に形成された一対の電極で構成される。また、基板54は、スペーサ部材55を位置決めするための2つの位置決め孔541と、基板54とスペーサ部材55(ねじ穴553)とをねじ止めするための2つのねじ(不図示)を貫通させる2つの第1の貫通孔542と、基板54と筐体50(ねじ穴502)とをねじ止めするための4つのねじ(不図示)を貫通させる4つの第2の貫通孔543とを有する。
【0059】
スペーサ部材55は、所定の厚みを有する板状の樹脂材料(例えば、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂等)で形成され、矩形状に開口された複数の開口部550と、基板54側に格子状に形成された格子状リブ551とを有する。スペーサ部材55は、弾性支持部材52と基板54との間に配置されるとともに、複数の開口部550は、複数の突起部523をそれぞれ避けるように配置されて、その内部に感圧導電性部材53の長手方向の両端部を配置するために段差状に形成された段差面550aを有する。また、スペーサ部材55は、スペーサ部材55の位置決め孔541に挿入される2つの位置決めピン552と、2つのねじ穴553とを有する。
【0060】
操作入力装置5の組立方法としては、スペーサ部材55の複数の開口部550(段差面550a)に複数の感圧導電性部材53をそれぞれ配置し、位置決めピン552が、基板54の位置決め孔541に挿入されるように位置合わせした状態で、基板54の第1の貫通孔542を貫通させたねじをスペーサ部材55のねじ穴553に締め込む。これにより、複数の感圧導電性部材53が基板54とスペーサ部材55との間に挟み込まれた状態で、基板54とスペーサ部材55とが固定される。
【0061】
そして、筐体50の複数の長孔500に、複数の操作片51A~51Fを先端側壁面510からそれぞれ挿入し、操作片51A~51Fの基端側壁面511に弾性支持部材52の複数の支持部524(支持面524a)をそれぞれ位置合わせした状態で、弾性支持部材52を配置する。そして、弾性支持部材52の複数の突起部523が、基板54とスペーサ部材55とが固定されたスペーサ部材55の複数の開口部550に挿入されるように位置合わせした状態で、基板54の第2の貫通孔543を貫通させたねじを筐体50のねじ穴502に締め込む。これにより、操作入力装置5が組み立てられる。
【0062】
なお、筐体50、操作片51A~51F、弾性支持部材52、感圧導電性部材53、基板54及びスペーサ部材55のサイズ、形状、配置状態及び材料は、上記の例に限られず、適宜変更してもよい。その際、弾性支持部材52の材料となる弾性材料のヤング率(縦弾性係数)を適宜変更してもよい。また、筐体50は、電子楽器1の本体2とは別の部品として構成してもよく、その場合には、組立後の操作入力装置5を本体2に取り付けるようにしてもよい。
【0063】
操作検出部56は、例えば、基板54に設けられた電源回路、電圧センサ、電流センサ及び制御回路(例えば、プロセッサやメモリ等により構成されるマイクロコントローラ)等により構成される。なお、操作検出部56は、基板54とは別の基板に設けられてもよい。また、操作検出部56は、操作入力装置5とは別体の装置に設けられてもよいし、制御部11の一機能として制御部11に組み込まれてもよいし、演奏プログラム124の一部として演奏プログラム124にて実現されてもよい。
【0064】
操作検出部56は、複数の電極パターン540(具体的には、櫛形状の一対の電極)にそれぞれ接続されて、複数の感圧導電性部材53がそれぞれ弾性変形したときの電気抵抗値の変化に基づいて、複数の操作片51A~51Fに対する演奏操作をそれぞれ検出する。そして、操作検出部56は、その演奏操作を検出した演奏操作検出データを制御部11に送出する。演奏操作検出データは、例えば、演奏操作が行われた操作片51A~51Fを示す識別子、演奏操作が行われたときの演奏操作の強弱、演奏操作が行われたときの演奏操作の強弱、演奏操作が行われたときの演奏操作の長短、演奏操作が行われたときの演奏操作の種類(弾奏、打奏等)等を含む。
【0065】
操作検出部56は、感圧導電性部材53の電気抵抗値を圧力値に換算するための換算テーブルや換算式に基づいて、操作片51A~51Fが操作されたときに検出された電気抵抗値を、操作片51A~51Fに対する操作圧力値Pに換算する。そして、操作検出部56は、その操作圧力値Pの変化状態(変化量、変化速度等)を監視することで操作片51A~51Fに対する演奏操作を検出する。なお、操作検出部56は、感圧導電性部材53の電気抵抗値を操作圧力値Pに換算せずに、感圧導電性部材53の電気抵抗値の変化状態を監視することで演奏操作を検出してもよい。
【0066】
操作検出部56が演奏操作を検出するときの検出方法は、演奏方法の違いにより以下の2つに分類される。
【0067】
(操作検出部56による第1の検出方法について)
図10は、操作検出部56が、操作片51が強く弾かれたことにより「強」の演奏操作ありと検出したときの第1の検出方法を示す説明図である。図11は、操作検出部56が、操作片51が弱く弾かれたことにより「弱」の演奏操作ありと検出したときの第1の検出方法を示す説明図である。図12は、操作検出部56が、操作片51が弾かれなかったことにより演奏操作なしを検出したときの第1の検出方法を示す説明図である。第1の検出方法は、演奏者が操作片51を短辺方向F1、F2に指で弾くように操作するときの弾奏操作を検出する方法である。
【0068】
第1の検出方法では、操作検出部56は、操作圧力値Pが上昇した後に下降するときの変化状態を監視することで弾奏操作の有無と強弱を検出する。具体的には、操作検出部56は、操作圧力値Pが所定の第1上限閾値U1を上回った後に第1上限閾値U1を下回った時点から所定の第1下限閾値L1を下回る時点までの第1経過時間T1の長さに応じて、操作片51が短辺方向F1、F2に操作されたときの演奏操作の有無を検出する。さらに、操作検出部56は、操作圧力値Pが第1上限閾値U1を上回った後の第1ピーク値に応じて、当該演奏操作の強弱を検出する。
【0069】
演奏者が、図10乃至図12に示すように、自身の指で操作片51の先端側壁面510を短辺方向F1に操作した場合、操作片51に対して短辺方向F1に操作圧力が作用する。その操作圧力は、操作片51の基端側壁面511から弾性支持部材52の支持部524に伝達され、弾性支持部材52(特に支持部524の短辺方向F1側に形成された薄肉部525)を弾性変形させることで、操作片51が短辺方向F1に傾斜するように操作片51を変位させる。そして、その変位に伴って、突起部523が感圧導電性部材53を押圧するように変位し、感圧導電性部材53に所定の押圧力が作用するため、操作検出部56は、感圧導電性部材53の電気抵抗値の変化量として、操作圧力値Pが上昇し、第1上限閾値U1を上回ったことを検出する。
【0070】
上記の状況において、演奏者が、図10図11に示すように、自身の指を操作片51の反対側に振り抜くようにして操作片51を弾いた場合には、その反動として、弾性支持部材52が元の形状に復元するときの時間が短くなるため、感圧導電性部材53の電気抵抗値の変化速度は速くなる。その際、操作圧力値Pが下降するときに計測される第1経過時間T1(=te1-ts1又はte2-ts2)は短くなるため、操作検出部56は、第1経過時間T1と第1操作検出閾値TAとを比較し、第1経過時間T1が第1操作検出閾値TA以下である場合(図10図11参照)、演奏操作ありと検出する。
【0071】
そして、操作片51が強く弾かれた場合(図10参照)、操作圧力値Pが第1上限閾値U1を上回った後の第1ピーク値P1は大きくなるため、操作検出部56は、その第1ピーク値P1に応じて、「強」の演奏操作ありと検出する。また、操作片51が弱く弾かれた場合(図11参照)、操作圧力値Pが第1上限閾値U1を上回った後の第1ピーク値P1は小さくなるため、操作検出部56は、その第1ピーク値P1に応じて、「弱」の演奏操作ありと検出する。なお、操作検出部56は、第1ピーク値P1の大きさに応じて、演奏操作の強弱を離散値として検出してもよいし、連続値として検出してもよい。
【0072】
一方、演奏者が、図12に示すように、自身の指を操作片51の反対側まで振り抜かずに戻した場合には、その反動として、弾性支持部材52が元の形状に復元するときの時間が長くなるため、感圧導電性部材53の電気抵抗値の変化速度は遅くなる。そのため、操作検出部56が、操作圧力値Pが下降するときに計測した第1経過時間T1(=te3-ts3)は長くなる。その際、操作圧力値Pが下降するときに計測される第1経過時間T1(=te3-ts3)は長くなるため、操作検出部56は、第1経過時間T1と第1操作検出閾値TAとを比較し、第1経過時間T1が第1操作検出閾値TAを超える場合に、演奏操作なしと検出する。
【0073】
(操作検出部56による第2の検出方法について)
図13は、操作検出部56が、操作片51が強く叩かれたことにより演奏操作ありと検出したときの第2の検出方法を示す説明図である。図14は、操作検出部56が、操作片51が弱く叩かれたことにより「弱」の演奏操作ありと検出したときの第2の検出方法を示す説明図である。図15は、操作検出部56が、操作片51が叩かれなかったことにより演奏操作なしと検出したときの第2の検出方法を示す説明図である。第2の検出方法は、演奏者が操作片51を押し込む挿入方向F3に指で叩くように操作するときの打奏操作を検出する方法である。
【0074】
第2の検出方法では、操作検出部56は、操作圧力値Pが上昇するときの変化状態を監視することで打奏操作の有無と強弱を検出する。具体的には、操作検出部56は、操作圧力値Pが所定の第2下限閾値L2を上回った時点から所定の第2上限閾値U2を上回る時点までの第2経過時間T2の長さに応じて、操作片51が挿入方向F3に操作されたときの演奏操作の有無を検出する。さらに、操作検出部56は、操作圧力値Pが第2上限閾値U2を上回った後の第2ピーク値に応じて、当該演奏操作の強弱を検出する。
【0075】
演奏者が、図13乃至図15に示すように、自身の指で操作片51の先端側壁面510を挿入方向F3に操作した場合、操作片51に対して挿入方向F3に操作圧力が作用する。その操作圧力は、操作片51の基端側壁面511から弾性支持部材52の支持部524に伝達され、弾性支持部材52(特に支持部524の全周囲に形成された薄肉部525)を弾性変形させることで、操作片51が挿入方向F3に押し込まれるように操作片51を変位させる。そして、その変位に伴って、突起部523が感圧導電性部材53を押圧するように変位し、感圧導電性部材53に所定の押圧力が作用するため、操作検出部56は、感圧導電性部材53の電気抵抗値の変化量として、操作圧力値Pが上昇し、第2下限閾値L2を上回ったことを検出する。
【0076】
上記の状況において、演奏者が、図13図14に示すように、自身の指で操作片51を挿入方向F3に叩いた場合には、弾性支持部材52が挿入方向F3に押し込まれるように弾性変形するときの時間が短くなるため、感圧導電性部材53の電気抵抗値の変化速度は速くなる。そのため、操作検出部56が、操作圧力値Pが上昇するときに計測した第2経過時間T2(=te3-ts3)は短くなる。
その際、操作圧力値Pが上昇するときに計測される第2経過時間T2(=te4-ts4又はte5-ts5)は短くなるため、操作検出部56は、第2経過時間T2と第2操作検出閾値TBとを比較し、第2経過時間T2が第2操作検出閾値TB以下である場合(図13図14参照)、演奏操作ありと検出する。
【0077】
そして、操作片51が強く叩かれた場合(図13参照)、操作圧力値Pが第2上限閾値U2を上回った後の第2ピーク値P2は大きくなるため、操作検出部56は、その第2ピーク値P2に応じて、「強」の演奏操作ありと検出する。また、操作片51が弱く叩かれた場合(図14参照)、操作圧力値Pが第2上限閾値U2を上回った後の第2ピーク値P2は小さくなるため、操作検出部56は、その第2ピーク値P2に応じて、「弱」の演奏操作ありと検出する。なお、操作検出部56は、第2ピーク値P2の大きさに応じて、演奏操作の強弱を離散値として検出してもよいし、連続値として検出してもよい。
【0078】
一方、演奏者が、図15に示すように、自身の指で操作片51を挿入方向F3に叩くことなく自身の指を載せたような場合には、弾性支持部材52が挿入方向F3に押し込まれるように弾性変形するときの時間が長くなるため、感圧導電性部材53の電気抵抗値の変化速度は遅くなる。そのため、操作検出部56が、操作圧力値Pが上昇するときに計測した第2経過時間T2(=te6-ts6)は長くなる。その際、操作圧力値Pが上昇するときに計測される第2経過時間T2(=te6-ts6)は長くなるため、操作検出部56は、第2経過時間T2と第2操作検出閾値TBとを比較し、第2経過時間T2が第2操作検出閾値TBを超える場合に、演奏操作なしと検出する。
【0079】
なお、操作検出部56は、第1の検出方法及び第2の検出方法のいずれかを用いて演奏操作を検出してもよいし、第1の検出方法及び第2の検出方法の両方を用いて演奏操作を検出してもよい。また、操作検出部56は、メニューボタン6や設定画面にて、第1の検出方法を用いて演奏操作を検出する弾奏モードと、第2の検出方法を用いて演奏操作を検出する打奏モードとを切り替え可能に構成してもよい。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る操作入力装置5によれば、演奏者が操作片51A~51Fの先端側壁面510を長孔500の短辺方向F1、F2に操作した場合、その操作片51A~51Fが長孔500の短辺方向F1、F2に傾斜し、その傾斜した操作片51の基端側壁面511が、弾性支持部材52を弾性変形させることで、弾性支持部材52の裏面521に設けられた突起部523を介して感圧導電性部材53を押圧し、感圧導電性部材53を弾性変形させる。また、演奏者が操作片51A~51Fの先端側壁面510を操作片51A~51Fの挿入方向F3に操作した場合、その操作片51A~51Fが操作片51A~51Fの挿入方向F3に押し込まれ、その押し込まれた操作片51A~51Fの基端側壁面511が、弾性支持部材52を弾性変形させることで、弾性支持部材52の裏面521に設けられた突起部523を介して感圧導電性部材53を押圧し、感圧導電性部材53を弾性変形させる。そして、感圧導電性部材53が弾性変形したときの電気抵抗値の変化に基づいて、操作片51A~51Fに対する演奏操作が検出される。これにより、簡単な構造で演奏操作の操作性を向上することできる。
【0081】
また、操作片51A~51Fが、他の部材と独立した構造となっている。そのため、操作片51A~51Fが破損した場合であっても、操作片51A~51Fの部品交換を簡単に実施することができる。
【0082】
さらに、弾性支持部材52の突起部523は、操作片51A~51Fにおける基端側壁面511の中心部511aに対応する位置(凹状部527の中心部)に設けられる。そのため、操作片51A~51Fが、短辺方向F1、F2や挿入方向F3のいずれの方向に操作された場合であっても、また、操作片51A~51Fが、長辺方向の中央部分や両端部分のようにいずれの位置で操作された場合であっても、その操作片51A~51Fに対する操作圧力を、突起部523を介して感圧導電性部材53に確実に作用させることができる。これにより、演奏操作の検出性能を向上させることができる。また、1つの操作片51A~51Fに対して、複数組の感圧導電性部材53や電極パターン540を設ける必要がないため、製造コストの増加を抑制することができる。
【0083】
また、感圧導電性部材53は、短冊状に形成され、短冊状の長手方向が長孔500の短辺方向F1、F2に沿って配置される。そのため、操作片51A~51Fが、短辺方向F1、F2に操作されて、突起部523が感圧導電性部材53を押圧するように変位したときに、突起部523の先端が、短辺方向F1、F2に沿って変位した場合であっても、操作片51A~51Fに対する操作圧力を、突起部523を介して感圧導電性部材53に確実に作用させることができる。これにより、演奏操作の検出性能を向上させることができる。
【0084】
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【0085】
例えば、上記実施形態では、操作入力装置5が備える複数の操作片51A~51Fの数が、ギターの弦の本数(6本)に対応する場合について説明した。これに対し、操作入力装置5が備える操作片51A~51Fの数は適宜変更してもよい。この場合、操作入力装置5は、操作片51A~51Fの数に応じて、筐体50の長孔500、弾性支持部材52の突起部523、感圧導電性部材53、基板54の電極パターン540及びスペーサ部材55の開口部550の数を変更することで構成される。
【0086】
また、上記実施形態では、操作入力装置5が備える複数の操作片51A~51Fに対して、筐体50、弾性支持部材52、基板54及びスペーサ部材55をそれぞれ共通の部品で構成した場合について説明した。これに対し、操作入力装置5は、1つの操作片51に対して、筐体50、弾性支持部材52、基板54及びスペーサ部材55を個別に備えるものでもよい。この場合、操作入力装置5は、1つの操作片51に対して、筐体50の長孔500、弾性支持部材52の突起部523、感圧導電性部材53、基板54の電極パターン540及びスペーサ部材55の開口部550の数をそれぞれ1つに変更することで構成される。
【0087】
また、上記実施形態では、操作入力装置5が、1つの操作片51A~51Fに対して、1組の弾性支持部材52の突起部523、感圧導電性部材53、基板54の電極パターン540及びスペーサ部材55の開口部550を備えた場合について説明した。これに対し、操作入力装置5は、1つの操作片51に対して、複数組の弾性支持部材52の突起部523、感圧導電性部材53、基板54の電極パターン540及びスペーサ部材55の開口部550を備えるようにしてもよい。この場合、各組の突起部523、感圧導電性部材53、電極パターン540及び開口部550は、その操作片51の長辺方向において所定の間隔を空けて配置されるようにすればよい。
【0088】
また、上記実施形態では、操作入力装置5が、和音指定ボタン群3及び和音変更ボタン群4に応じた和音を演奏する電子楽器1に用いられる場合について説明した。これに対し、操作入力装置5は、他の形態に係る任意の電子楽器に用いられてもよい。例えば、操作入力装置5は、和音指定ボタン群3及び和音変更ボタン群4の代わりとなる操作部10として、ギターやベースのフレット部分に対応する複数の音階センサを備える電子楽器に用いられてもよいし、三味線や大正琴のような和楽器を模した電子楽器に用いられてもよい。また、操作入力装置5は、鍵盤を有する電子楽器の筐体に取り付けられてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、操作入力装置5が、電子楽器1に用いられて、演奏操作を入力する場合について説明した。これに対し、操作入力装置5は、電子楽器1以外の電子機器(例えば、携帯機器、ゲーム機器、家電機器、車載機器、医療機器等)に用いられて、各種の操作を入力するための操作入力装置5として機能させてもよい。この場合、操作入力装置5は、複数の操作片を備えるものでもよいし、1つの操作片を備えるものでもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、演奏プログラム124は、記憶部12に記憶されたものとして説明したが、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、演奏プログラム124は、インターネット等のネットワークに接続されたサーバ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…電子楽器、2…本体、3…和音指定ボタン群、3A~3I…和音指定ボタン、4…和音変更ボタン群、4A…和音変更ボタン~4K…和音変更ボタン、5…操作入力装置、6…メニューボタン、7…オプションボタン群、8…発音部、9…表示部、10…操作部、11…制御部、12…記憶部、13…バッテリ、14…外部I/F部、20…ネック部、21…ボディ部、50…筐体、51、51A~51F…操作片、52…弾性支持部材、53…感圧導電性部材、54…基板、55…スペーサ部材、56…操作検出部、500…長孔、501…収容壁、502…ねじ穴、510…先端側壁面、511…基端側壁面、511a…中心部、512…周側面、513…受け部、514…補強リブ、520…表面、521…裏面、522…側縁部、523…突起部、524…支持部、524a…支持面、525…薄肉部、526…凸状部、527…凹状部、540…電極パターン、541…位置決め孔、542…第1の貫通孔、543…第2の貫通孔、550…開口部、550a…段差面、551…格子状リブ、552…位置決めピン、553…ねじ穴、
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