(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】スープとその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20250219BHJP
【FI】
A23L23/00
(21)【出願番号】P 2023169304
(22)【出願日】2023-09-29
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】523372282
【氏名又は名称】佐藤 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信雄
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074028(JP,A)
【文献】Bowl of Seaweed Soup, ID#:2878967,Mintel GNDP [online],2015年02月,[検索日2024.9.20], インターネット:URL<https://portal.mintel.com>
【文献】免疫力を高める「ふのり」を使って塩ラーメンを作りました。,Ameba,2020年04月10日,[検索日2024.9.20], インターネット:URL<https://ameblo.jp/mocki/entry-12588491789.html>
【文献】味の決め手は海鮮より海藻 三陸の磯ラーメン,地域の宝を探す旅 食文化を旅する,2022年02月18日,[検索日2024.9.20], インターネット:URL<https://www.gastronomy.town/5226/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 23/00- 25/10
A23L 35/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煮て得られた節類、煮干し類、旨味素材、野菜素材の少なくとも一種類以上の素材の破砕物2.0質量%~40.0質量%と、煮て得られた布海苔の破砕物0.05質量%~10.0質量%を含む、
ことを特徴とするスープ。
【請求項2】
請求項
1記載のスープに、タレ及び仕上油が
混合されている、
ことを特徴とするスープ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のスープが中間素材スープと混合され
たものであり、
中間素材スープが、請求項1又は請求項2記載のスープ
を得るのに使用した節類、煮干し類、旨味素材、野菜素材以外
の素材から得られた成分を含むスープである、
ことを特徴とするスープ。
【請求項4】
節類、煮干し類、旨味素材
、野菜素材の少なくとも一種類以上の素材と布海苔を煮て、それら素材の成分及び布海苔の成分を含むスープとする、
ことを特徴とするスープ製造方法。
【請求項5】
節類、煮干し類、旨味素材
、野菜素材の少なくとも一種類以上の素材2.0質量%~40.0質量%と、布海苔0.05質量%~10.0質量%を煮て、それら素材の成分及び布海苔の成分を含むスープとする、
ことを特徴とするスープ製造方法。
【請求項6】
請求項
4記載のスープ製造方法において、
旨味素材と野菜素材の少なくとも一種類以上の素材をミキサーで破砕し、
破砕した素材に液体を入れ、火にかけて加熱して、破砕した素材を液体になじませ、
その素材に布海苔を添加して煮る、
ことを特徴とするスープ製造方法。
【請求項7】
請求項
5記載のスープ製造方法において、
旨味素材と野菜素材の少なくとも一種類以上の素材をミキサーで破砕し、
破砕した素材に液体を入れ、火にかけて加熱して、破砕した素材を液体になじませ、
その素材に布海苔を添加して煮る、
ことを特徴とするスープ製造方法。
【請求項8】
請求項
4記載のスープ製造方法において、
素材を10分~2時間煮る、
ことを特徴とするスープ製造方法。
【請求項9】
請求項
5記載のスープ製造方法において、
素材を10分~2時間煮る、
ことを特徴とするスープ製造方法。
【請求項10】
請求項
6記載のスープ製造方法において、
布海苔を添加した素材を10分~2時間煮る、
ことを特徴とするスープ製造方法。
【請求項11】
請求項
7記載のスープ製造方法において、
布海苔を添加した素材を10分~2時間煮る、
ことを特徴とするスープ製造方法。
【請求項12】
請求項
4から請求項
11のいずれか1項に記載のスープ製造方法において、
布海苔を添加して煮て得たスープをミキサーにかけて、スープに含まれる固形物を破砕する、
ことを特徴とするスープ製造方法。
【請求項13】
請求項
4から請求項
11のいずれか1項に記載のスープ製造方法において、
布海苔を添加して煮て得たスープから破砕しない方がよい固形物を取り除き、そのスープをミキサーにかけてスープ内に残った固形物を破砕する、
ことを特徴とするスープ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とろみのあるスープと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中華料理では、とろみをつけるのに片栗粉等が使われている。片栗粉等は水で溶いて料理を提供する直前に加えられるが、ダマになることがあり、長時間加熱すると、とろみが弱くなり、いつも同じ状態で料理を提供するのが難しい。
【0003】
ラーメン、つけ麺のスープでは、麺に絡むスープを作るために、ゲンコツ、背ガラ、鶏ガラ、鶏の足(通称、モミジ)等の動物系素材を5時間以上煮ている。煮ることにより素材のゼラチン質等が液に溶け出すことで麺に絡むスープになる。
【0004】
このスープは、通常、単体で使うか、または、それに、かつお節、そうだ節等の節類、片口イワシ、マイワシ、アゴ等の煮干し類、昆布、シイタケ、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビ等の旨味素材、玉ネギ、長ネギ、生姜、ニンジン、ジャガイモ等の野菜素材の少なくとも一種類以上の素材で取った出汁を合わせて使っている。場合によっては、前記動物系素材と旨味素材と野菜素材を同じ鍋で5時間以上煮て出汁をとっている。
【0005】
しかし、前記のように5時間以上煮ることで、ゼラチン質、その他の成分を液に溶けださせて、麺に絡むスープを作る手法は、煮る時間が長く、旨味素材の旨味が奪われる(損なわれる)場合もある。
【0006】
従来は、前記のように、5時間以上煮ることで麺に絡むスープを作る手法が主流であり、どこの料理店でも行われている手法であるため、味に大差がない。
【0007】
近年は、動物系の濃厚なとんこつ、鶏白湯ではなく、魚介系であっさりしていて、それでも麺に絡む旨味の強いスープのニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-268698号公報
【文献】特開2017-143825号公報
【文献】特許第7127790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決課題は、麺に絡みやすいスープと、素材を5時間以上煮ることなく、麺に絡みやすいスープを得ることができるスープ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件発明者は、麺に絡みやすいスープとその製造方法について、長年に亘って種々研究し、実験を繰り返して本発明のスープとその製造方法を完成するに至った。
【0011】
本発明のスープは、かつお節、そうだ節等の節類、片口イワシ、マイワシ、アゴ等の煮干し類、昆布、シイタケ、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビ等の旨味素材、玉ネギ、長ネギ、生姜、ニンジン、ジャガイモ等の野菜素材の少なくとも一種類以上の素材の成分と、布海苔の成分を含むスープである。
【0012】
本発明のスープは、かつお節、そうだ節等の節類、片口イワシ、マイワシ、アゴ等の煮干し類、昆布、シイタケ、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビ等の旨味素材、玉ネギ、長ネギ、生姜、ニンジン、ジャガイモ等の野菜素材の少なくとも一種類以上の素材2.0質量%~40.0質量%と、0.05質量%~10.0質量%の布海苔を煮て得られたスープである。
【0013】
本発明のスープ製造方法は、かつお節、そうだ節等の節類、片口イワシ、マイワシ、アゴ等の煮干し類、昆布、シイタケ、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビ等の旨味素材、玉ネギ、長ネギ、生姜、ニンジン、ジャガイモ等の野菜素材の少なくとも一種類以上の素材に、布海苔を添加し、それらを液体に入れて煮て得たスープである。煮る時間は10分~2時間、素材の成分が溶出し、布海苔の粘性成分であるフノランが溶出する程度の時間が適する。
【0014】
本発明のスープ製造方法は、前記素材に動物系素材を添加して煮ることもできるが、添加する動物系素材の質量は、それらを煮て得られるスープに含まれる動物系素材の成分が濃厚にならない程度の量が望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスープは次のような効果がある。
(1)布海苔のフノランという成分が含まれているので、粘度が高く、麺に絡み易くなり、太い麺に対しては布海苔の添加量の多いスープ(粘度の高いスープ)を用意することで、麺を食す時に多くのスープを麺と共に口に運ぶことができ、スープの旨味をバランスよく感じることができる。太い麺を粘度の低いサラサラのスープで食すると、少ない量のスープしか麺と共に口に運ぶことができない。この場合、塩味を増さないと物足りなくなり、その結果、塩分の摂取量が増加して健康被害を生じかねない。
(2)かつお節、そうだ節等の節類、片口イワシ、マイワシ、アゴ等の煮干し類の成分が含まれている場合は、布海苔だけを含む場合よりも粘度が高く、麺に絡みやすくなる。
(3)昆布、シイタケ、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビ等の旨味素材が含まれている場合は旨味が強くなる。
(4)素材が、節類、煮干し類を主とする場合は、魚介系で、あっさりしており、しかも粘度が高く、旨味が強く、近年のお客様のニーズに合ったスープである。
(5)動物系素材の成分が含まれていても、その量が少ない場合は、その成分が多く含まれるスープのような動物系素材による濃厚さがない。
【0016】
本発明のスープ製造方法は次のような効果がある。
(1)素材を10分~2時間煮ればよいため、スープ製造時間が短縮される。また、煮過ぎにより旨味素材の旨味が奪われることもない。
(2)布海苔の添加量でスープの粘度を調節できるので、所望とする粘度のスープを作り易い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のスープ及びスープ製造方法について、以下に、詳細に説明する。
【0018】
本発明のスープは、かつお節、そうだ節等の節類、片口イワシ、マイワシ、アゴ等の煮干し類、昆布、シイタケ、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビ等の旨味素材、玉ネギ、長ネギ、生姜、ニンジン、ジャガイモ等の野菜素材の少なくとも一種類以上の素材の成分と、布海苔の成分を含むスープである。
【0019】
本発明のスープは、ゲンコツ、背ガラ、鶏ガラ、モミジ等の動物系素材の少なくとも一種類以上の動物系素材の成分を少量含むものであってもよい。
【0020】
本発明のスープ製造方法は、かつお節、そうだ節等の節類、片口イワシ、マイワシ、アゴ等の煮干し類、昆布、シイタケ、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビ等の旨味素材、玉ネギ、長ネギ、生姜、ニンジン、ジャガイモ等の野菜素材の少なくとも一種類以上の素材2.0質量%~40.0質量%に、0.05質量%~10.0質量%の布海苔を添加し、10分~2時間煮てスープとする方法である。この場合の布海苔は粉末状のものでも、粉末にしない乾燥状態のままでもよい。
【0021】
本発明のスープ製造方法では、動物系素材は除外してもよいが、少量であれば添加してもかまわない。動物系素材としてはゲンコツ、背ガラ、鶏ガラ、モミジ等がある。
【0022】
キサンタンガム等の食品添加物増粘剤は顧客からの支持を得られにくいため除外するのが望ましい。
【0023】
10分~2時間煮て得たスープは、ミキサーにかけて、スープに含まれる固形物を粉砕するのが望ましい。ミキサーにかけても破砕(粉砕を含む)できないような大きい固形物や破砕しない方がよい固形物は取り除いてからミキサーにかけるのが望ましい。
【0024】
液量が1L程度の場合は、ミキサーにかける時間は30秒~10分が適する。30秒より短いと固形物の破砕が十分でなく、10分より長くても固形物が格別に細かく破砕されるわけでもない。
【0025】
スープの粘度が高すぎると、スープがどろどろし過ぎて、ミキサーにかけてもスープがミキサーの中で流動せず、固形物の破砕が困難になるが、本願では、旨味素材と野菜素材の少なくとも一種類以上の素材2.0質量%~40.0質量%に、0.05質量%~10.0質量%の布海苔を添加し、10分~2時間煮てスープとする方法であるため、スープの粘度が高すぎず、スープがどろどろし過ぎず、ミキサーにかけるとスープがミキサーの中で十分に流動する。
【0026】
各種素材の含有量が2.0質量%以下ではそれら素材の成分の溶出が不足し、40.0質量%以上では質量が多い割にはそれら素材の成分の溶出量が少なく、有効活用できない(素材が無駄になる)ので、2.0質量%~40.0質量%が適し、より望ましくは3.0質量%~30.0質量%である。
【0027】
添加する布海苔は0.05質量%以下では添加しない場合との有意差が見られず、10.0質量%以上ではスープの粘度が高すぎて、ミキサーにかけてもスープを攪拌することができず、スープに含まれる固形物を破砕できないので、0.05質量%~10.0質量%が適する。
【0028】
布海苔を添加した素材を煮るのに使用する液体は水が適する。水は水道水でも、不純物を除去した濾過水、純水等であってもよい。水以外でも、出汁を取るのに適した液体があればその液体であってもよい。
【0029】
煮る時間は、10分より短いと素材や布海苔の成分が十分に溶出せず、2時間より長いと旨味素材の旨味が損なわれるため10分~2時間が適する。
【0030】
[サンプルの作成]
鯖節54g、片口イワシ煮干し72g、マイワシ煮干し180g、アゴ煮干し72gをミキサー(株式会社エピック、Vitamix Vitaprep3)で粉砕し、75.6gずつ五等分し、A、B、C、D、Eの5つのサンプルとした。
【0031】
5つのサンプルA~Eのそれぞれを、別々の鍋に移し、水660gを入れ、30分なじませた。Aに布海苔((株)大脇萬蔵商店の乾燥布海苔)6.3g、Bに寒天((株)真田「粉寒天」)6.3g、Cにゼラチン(マルハニチロ(株)「ゼライス」)13.2g、Dに片栗粉(馬鈴薯でんぷん:(株)幸田商店)9gを投入した。この場合、片栗粉9gのみ水18gに混ぜておき、火を止める5分前に投入して良く混ぜた。Eには添加物を入れなかった。それぞれを火にかけ、沸騰したら弱火にし、30分したら火を止め、熱いまま、回転速度可変の前記ミキサーを最高速度にして2分撹拌した。
【0032】
[サンプルの評価]
作成したばかりで、まだ熱い各サンプルに、6分茹でて水に晒した中華麺((株)森住製麺UC086.5S200)6g~10gを正確に秤量し(評価前の麺重量)、それをどぶ漬けし、持ち上げて、5秒後に秤量した(評価後の麺重量)。この秤量を2回行った(表1)。秤量の増加率が高いほど、スープを麺と共に口に多く運ぶことができることになる。その結果を表1にまとめた。サンプルEには添加物を入れなかったので、サンプルEの添加物欄はブランクとした。
【0033】
【0034】
[表1の説明]
表1から明らかなように、秤量の平均増加率は、サンプルAが35%と最も高く、添加物を入れなかったEサンプルの平均増加率5%の7倍、サンプルBの平均増加率17%の約2倍もあった。
【0035】
本発明のスープは、そのまま単品でスープとして使用できる。ラーメン、つけ麺以外、例えば、日本蕎麦、うどん、そうめん等の麺類、パスタその他の洋麺のスープ、或いは調味液として使用することもできる。
【0036】
本発明のスープは、塩味、醤油味、味噌味等のタレ、鶏油(チーユ)、背脂といった仕上油等を添加し、味を調えて、ラーメン用スープ、つけ麺用スープ、チャーハンや他の料理に添えるスープ、その他、各種用途のスープとして使用することができる。
【0037】
0.05質量%~10.0質量%の布海苔を含有する本発明のスープは、本発明のスープを得るのに使用した素材以外の素材(中間素材)を煮て作ったスープ、例えば、特異な味をスープに付加することができる甘海老の頭を粉砕したものを煮て出汁をとった海老スープ、烏賊煮干しを煮て出汁をとった烏賊スープ、その他の素材を煮て出汁をとった各種スープ(中間素材スープ)と混ぜて使用することもできる。中間素材スープは布海苔を含有するものでも、含有しないものでもよい。中間素材は一種類だけでも、二種類以上であってもよい。本発明のスープを中間素材スープに混ぜて混合スープとすることにより、混合スープにとろみがつき、混合スープに含まれる素材成分の分離を抑えることができるので有効である。本発明のスープと中間素材スープの混合比率は、混合スープにとろみがつき、混合スープに含まれる素材成分の分離を抑えることができる程度が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
前記実施形態は本発明の一例である。本発明のスープとその製造方法で使用する各種素材、それら素材の使用量、二以上の素材の混合割合(質量%)、それら素材への布海苔の添加割合(質量%)、煮る時間、ミキサーにかける時間といった製法上の各種条件は、本発明の解決課題を解決可能な範囲で変更することができる。
【要約】
【課題】 麺に絡みやすいスープと、スープの製造方法を提供することにある。
【解決手段】 かつお節、そうだ節等の節類、片口イワシ、マイワシ、アゴ等の煮干し類、昆布、シイタケ、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビ等の旨味素材、玉ネギ、長ネギ、生姜、ニンジン、ジャガイモ等の野菜素材の少なくとも一種類以上の素材の成分と、布海苔の成分を含むスープ。かつお節、そうだ節等の節類、片口イワシ、マイワシ、アゴ等の煮干し類、昆布、シイタケ、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビ等の旨味素材、玉ネギ、長ネギ、生姜、ニンジン、ジャガイモ等の野菜素材の少なくとも一種類以上の素材と布海苔を煮て、それら素材の成分及び布海苔の成分を含むスープとするスープ製造方法。
【選択図】なし