(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】円盤状基板の製造装置、及び円盤状基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/08 20120101AFI20250219BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20250219BHJP
B24B 7/17 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
B24B37/08
B24B45/00 Z
B24B7/17 Z
(21)【出願番号】P 2024109913
(22)【出願日】2024-07-08
【審査請求日】2024-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524259126
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・ハードディスク
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 幸隆
(72)【発明者】
【氏名】間舘 秀雄
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005636(JP,A)
【文献】特開2023-088070(JP,A)
【文献】特開2014-024168(JP,A)
【文献】特開2024-003680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B7/17
B24B37/00-37/34
B24B45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状基板が載置される下定盤と、
前記下定盤との間に前記円盤状基板を挟んで回転し、前記円盤状基板を研磨又は研削する上定盤と、
前記上定盤の上方に設けられ、上下方向に延びる軸部と、
前記軸部の下部にて径方向に張り出すフランジであって、上下方向に貫通する複数の貫通孔が前記径方向に配置されているフランジと、
前記貫通孔を通じて前記フランジを前記上定盤に締結し、前記複数の貫通孔に付け替え可能な締結部材と、
を備え、
前記複数の貫通孔には、前記締結部材が締結される締結箇所と、前記締結部材が締結されていない非締結箇所と、が存在し、
前記締結箇所にて締結された前記締結部材を前記非締結箇所へ付け替えることが可能とされている円盤状基板の製造装置。
【請求項2】
前記複数の貫通孔は、前記フランジの周方向に複数配置されている
請求項1に記載の円盤状基板の製造装置。
【請求項3】
上定盤が下定盤との間に円盤状基板を挟んで回転し、前記円盤状基板を研磨又は研削する第一工程と、
前記上定盤の下面の平面度に応じて、締結部材の締結位置を変更する第二工程と、
を備え、
前記締結部材は、貫通孔を通じてフランジを前記上定盤に締結し、
前記フランジは、軸部の下部にて径方向に張り出すフランジであって、上下方向に貫通する複数の前記貫通孔が前記径方向に配置され、
前記軸部は、前記上定盤の上方に設けられ、上下方向に延び、
前記複数の貫通孔には、前記締結部材が締結される締結箇所と、前記締結部材が締結されていない非締結箇所と、が存在し、
前記第二工程において、前記締結箇所にて締結された前記締結部材を前記非締結箇所へ付け替えることで、前記締結部材の締結位置を変更する
円盤状基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円盤状基板の製造装置、及び円盤状基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円盤状基板の製造装置としては、特許文献1及び2に開示されるように、下定盤と上定盤とを備える製造装置が知られている。特許文献1及び2の製造装置では、上下方向に延びる軸部が、上定盤の上方に設けられている。この軸部の下端には、径方向に張り出すフランジが設けられている。
このフランジ及び上定盤の各々に対して、プーリが複数取り付けられている。この複数のプーリに対して1本のワイヤが掛け渡されている。そして、ワイヤの張力を調整することで、上定盤の形状を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-216492号公報
【文献】特開2006-150507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1及び2の製造装置では、上定盤がワイヤ、支柱等によってフランジに吊り下げられているため、上定盤の重量によって、フランジ自体が変形するおそれがある。フランジが変形した場合には、上定盤の形状を高精度に補正できない。この結果、上定盤の下面と、下定盤の上面との平面度にズレが生じ、円盤状基板の加工精度が低下する。
【0005】
そこで、本開示では、円盤状基板の加工精度の低下を抑制できる円盤状基板の製造装置、及び円盤状基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、以下の態様が含まれる。
<1>円盤状基板が載置される下定盤と、
前記下定盤との間に前記円盤状基板を挟んで回転し、前記円盤状基板を研磨又は研削する上定盤と、
前記上定盤の上方に設けられ、上下方向に延びる軸部と、
前記軸部の下部にて径方向に張り出すフランジであって、上下方向に貫通する複数の貫通孔が前記径方向に配置されているフランジと、
前記貫通孔を通じて前記フランジを前記上定盤に締結し、前記複数の貫通孔に付け替え可能な締結部材と、
を備える円盤状基板の製造装置。
<2> 前記複数の貫通孔は、前記フランジの周方向に複数配置されている
<1>に記載の円盤状基板の製造装置。
<3> 上定盤が下定盤との間に円盤状基板を挟んで回転し、前記円盤状基板を研磨又は研削する第一工程と、
前記上定盤の下面の平面度に応じて、締結部材の締結位置を変更する第二工程と、
を備え、
前記締結部材は、貫通孔を通じてフランジを前記上定盤に締結し、
前記フランジは、軸部の下部にて径方向に張り出すフランジであって、上下方向に貫通する複数の前記貫通孔が前記径方向に配置され、
前記軸部は、前記上定盤の上方に設けられ、上下方向に延びる
円盤状基板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、円盤状基板の加工精度の低下を抑制できる円盤状基板の製造装置、及び円盤状基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る製造装置を示す斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る製造装置を示す側断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る上定盤及びフランジを示す平面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素は、特に明示した場合を除き、必須ではない。
本開示において図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における構成要素の大きさは概念的なものである。したがって、各構成要素における前後、左右、上下の寸法比、各構成要素同士の前後、左右、上下の寸法比は、図示された寸法比に限定されない。また、各構成要素における前後、左右、上下の寸法比は、現実のものとは異なる場合がある。
また、本開示中に特段の断りが無い限り、本開示の各構成要素の個数は、1つに限定されず、複数存在してもよい。なお、以下の図面の記載において、同様の部分には、同様の符号を付している。
【0010】
<製造装置10>
本実施形態に係る製造装置10について、図面を参照しながら説明する。なお、本開示の円盤状基板の製造装置は、製造装置10に限定されるものではない。
製造装置10は、一例として、円盤状基板100を研磨して、円盤状基板200を製造する装置である。円盤状基板200は、円盤状基板100に対して、研磨処理が実行された加工済の円盤状基板である。
【0011】
製造装置10は、
図1及び
図2に示されるように、下定盤12と、上定盤20と、軸部28と、フランジ29と、締結部材34と、太陽歯車40と、内歯歯車42と、キャリア44と、を備えている。
以下、円盤状基板100、製造装置10の各部、製造装置10の変形例、円盤状基板200の製造方法、及び製造方法の変形例について説明する。
【0012】
<円盤状基板100>
円盤状基板100は、円盤状に形成されている基板である。具体的には、円盤状基板100は、平面視にて、孔を有する円環状に形成されている。なお、ここでの平面視とは、円盤状基板100の厚み方向の一方から円盤状基板100を見た場合という。円盤状基板100は、研磨処理が実行される前の基板である。
【0013】
円盤状基板100としては、例えば、磁気記録媒体用の基板であってよい。さらに、円盤状基板100としては、アルミニウム、アルミニウム合金基板等の金属材料、ガラスなどにより構成される基板を用いることが可能である。以降、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板、ガラス基板等を総称して「基板」ともいう。以降、アルミニウム基板及びアルミニウム合金基板を総称して「アルミニウム基板」ともいう。アルミニウム基板の表面には、めっき層が形成されていてもよい。
なお、円盤状基板100における用途、材料、種類、形状等は、前述のものに限られず、円盤状基板100として、種々の円盤状基板を用いることが可能である。
【0014】
<下定盤12>
下定盤12は、
図1及び
図2に示されるように、円盤状の部材である。下定盤12は、円環状の水平な上面を有している。下定盤12の上面には研磨布14が配置されている。この研磨布14に円盤状基板100が載置される。
下定盤12は、垂直軸VAを中心として回転可能に不図示の支持部に支持されている。下定盤12は、駆動部16の回転力を受けて回転する。
【0015】
<上定盤20、軸部28、フランジ29及び締結部材34>
上定盤20は、
図1及び
図2に示されるように、円盤状の部材である。上定盤20は、円環状の水平な下面を有している。上定盤20の下面には研磨布24が配置されている。上定盤20に配置されている研磨布24の位置は、下定盤12に配置されている研磨布14と対向する位置である。
軸部28は、上定盤20の上方に設けられており、垂直軸VAに沿って上下方向に延びている。フランジ29は、軸部28の下部にて径方向に張り出している。フランジ29は、円盤状に形成されている。フランジ29の外径は、例えば、上定盤20の外径に対して例えば、50%以上100%未満とされている。
フランジ29と軸部28とは、接続部27によって接続されている。接続部27は、例えば、フランジ29の角度を軸部28に対して変更可能なユニバーサルジョイントで構成されている。
【0016】
フランジ29には、上下方向に貫通する複数の貫通孔32が形成されている。複数の貫通孔32は、
図1、
図2及び
図3に示されるように、フランジ29の径方向に配置されている。以下、フランジ29の径方向に配置されている複数の貫通孔32を孔群33という。
本実施形態では、孔群33は、フランジ29の径方向に列状に並ぶ3つの貫通孔32で構成されている。孔群33は、フランジ29の周方向に複数配置されている。本実施形態では、孔群33は、フランジ29の周方向に、等角度間隔で4組が配置されている。すなわち、孔群33は、フランジ29の周方向に90度間隔で配置されている。
【0017】
締結部材34は、貫通孔32を通じて、フランジ29を上定盤20に締結する。本実施形態では、貫通孔32に差し込まれる締結部材34が、フランジ29の下面と上定盤20の上面が接触している状態で、上定盤20とフランジ29とを締結する。このように、貫通孔32が配置されている位置が、締結部材34による締結位置となる。
なお、上定盤20における貫通孔32に対応する位置には、メネジを構成するナット35が設けられている。締結部材34は、ナット35に対してねじ止めされる。
締結部材34は、孔群33の各貫通孔32に付け替え可能とされている。
図1及び
図2に示される例では、締結部材34は、孔群33のうち、最も内周側の貫通孔32にて、フランジ29を上定盤20に締結している。当該締結部材34は、外周側の貫通孔32に付け替えることが可能である。
【0018】
上定盤20は、フランジ29及び軸部28を介して、垂直軸VAを中心として回転可能に支持部22に支持されている。上定盤20は、駆動部26の回転力を受けて回転する。 本実施形態では、上定盤20は、下定盤12との間に円盤状基板100を挟んで回転し、円盤状基板100を研磨する。
支持部22は、上定盤20を垂直軸VAに沿って昇降可能に昇降部23に支持されている。支持部22及び上定盤20は、昇降部23の駆動によって昇降する。上定盤20は、昇降により、下定盤12に対し接近及び離隔する。
【0019】
<太陽歯車40、内歯歯車42及びキャリア44>
太陽歯車40は、
図1及び
図2に示されるように、下定盤12の中央位置に設けられている。太陽歯車40は、駆動部41の駆動により、垂直軸VAを中心として回転する。太陽歯車40としては、側面部に歯列が一体形成されている平歯車、ピン歯車等が用いられる。
【0020】
内歯歯車42は、太陽歯車40と同心円状に配置されている。内歯歯車42は円環状の筒体49を有している。筒体49の内周面には内歯が形成されている。
本実施形態の内歯歯車42は、不図示の保持部材に対し回転不能に保持されている。これに代えて、内歯歯車42を回転駆動する駆動部を設け、垂直軸VAを中心にして内歯歯車42を回転させる構成でもよい。内歯歯車42を回転動作させる場合は、太陽歯車40は回転不能に保持されていてもよい。また、内歯歯車42においても、平歯車のほか、ピン歯車等を用いてもよい。
【0021】
キャリア44は、薄板状の円盤部材である。キャリア44の外周面には外歯が形成されている。
図1に示されるように、キャリア44には、保持孔46が複数個形成されている。保持孔46には、円盤状基板100が保持される。
【0022】
下定盤12には、複数個のキャリア44が配置される。キャリア44は、太陽歯車40及び内歯歯車42に噛み合い、太陽歯車40及び内歯歯車42の少なくとも一方の回転に応じて、太陽歯車40の周囲を公転しつつ自転する。
【0023】
本実施形態では、キャリア44に保持された円盤状基板100の上面に上定盤20が接触し、当該円盤状基板100の下面に下定盤12が接触する。この状態でキャリア44を公転及び自転させることにより、円盤状基板100の上下両面が、研磨布14、24によって研磨される。
【0024】
<製造装置10の変形例>
前述の実施形態では、孔群33は、3つの貫通孔32で構成されているが、孔群33における貫通孔32の数は、3つに限られず、複数であればよい。
前述の実施形態では、孔群33は、フランジ29の周方向に、90度間隔で配置されているが、これに限られない。孔群33は、例えば、30度、45度、60度、180等の間隔で配置されていてもよい。また、孔群33は、等角度間隔で配置されていない構成であってもよい。
【0025】
前述の実施形態の製造装置10は、円盤状基板100に対して研磨を行う装置とされているが、これに限られない。製造装置10としては、円盤状基板100に対して、研削を行う装置であってもよい。
前述の実施形態の製造装置10は、さらに、1つ以上の他の装置を含んでいてもよい。当該他の装置としては、また、加工前の円盤状基板100又は加工後の円盤状基板200を収容する収容ラック、円盤状基板200を洗浄する洗浄装置、円盤状基板200を乾燥する乾燥装置等が挙げられる。
【0026】
<円盤状基板200の製造方法>
以下、本開示の円盤状基板の製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、本開示の円盤状基板の製造方法は、以下の例に限定されるものではない。
本実施形態の製造方法は、円盤状基板200を製造する方法である。本実施形態の製造方法は、一例として、製造装置10を用いて実行される。
【0027】
例えば、円盤状基板100がアルミニウム基板である場合、円盤状基板200の製造方法は、
図4に示されるように、以下の工程を含む。
ブランク基板用意工程:所望の寸法のアルミニウム基板を用意する。所望の寸法のアルミニウム基板は、例えば、アルミニウム合金鋳塊を圧延して、厚さ2mm以下程度のアルミニウム合金板材を得て、得られたアルミニウム合金板材を円盤状に打ち抜いて得られる。
切削工程:用意されたアルミニウム基板に対して、内外径の面取り加工及び両主面の切削加工を施す。
研削工程:切削加工後のアルミニウム基板の両主面に砥石による研削加工を施す。研削工程によって、例えば、切削加工後のアルミニウム基板の表面粗さ、うねり等を下げることが可能である。
めっき工程:研削加工が施されたアルミニウム基板に対して、アルミニウム基板の表面にNiP等のめっきを施す。めっきによって、例えば、表面を硬くしたり、表面欠陥を抑制したりすることが可能である。
研磨工程:めっき被膜が形成されたアルミニウム基板の両主面に対して、研磨加工を施す。
研磨工程では、上定盤20が下定盤12との間に円盤状基板100を挟んで回転し、円盤状基板100の表面を研磨する。
【0028】
円盤状基板100がガラス基板である場合、円盤状基板200の製造方法は、例えば、以下の工程を含む。なお、円盤状基板100がガラス基板である場合では、製造方法が切削工程を有していない点で、円盤状基板100がアルミニウム基板である場合と異なる。
製造装置用意工程:製造装置10を用意する。
ブランク基板用意工程:所望寸法のガラスブランク基板を用意する。所望寸法のガラスブランク基板は、例えば、一対の主表面を有する板状の磁気記録媒体用ガラス基板の素材となるガラスブランクをプレス成形等により作製し、作製されたガラスブランクの中心部分に円孔を形成し円環状としたものである。次に、形状加工を行って、面取り面を有するガラス基板が得られる。形状加工されたガラス基板の内外周端面に対して、研削及び研磨を行う。
研削工程:端面研磨後のガラス基板の主表面に、固定砥粒による研削を施す。
研磨工程:研削工程後のガラス基板の主表面に対して、研削加工が施された基板に対して、所定の研磨剤による研磨を行う。研磨工程の間に、ガラス基板に対して化学強化処理を行ってもよい。
研磨工程では、上定盤20が下定盤12との間に円盤状基板100を挟んで回転し、円盤状基板100の表面を研磨する。
【0029】
さらに、本実施形態の製造方法は、
図4に示されるように、測定工程と、変更工程と、を含む。測定工程及び変更工程は、例えば、研磨工程を実行した後に、実行される。なお、測定工程及び変更工程は、研磨工程を実行する毎に実行してもよく、あるいは、研磨工程を複数回実行した後に実行してもよい。また、測定工程及び変更工程は、製造装置10を用意した後において、上定盤20及び下定盤12を使用していないタイミングであれば、何時においても実行可能である。
なお、前述の製造装置用意工程は、第一工程の一例である。前述の研磨工程は、第二工程の一例である。測定工程は、第三工程の一例である。変更工程は、第四工程の一例である。
【0030】
<測定工程>
測定工程では、上定盤20の下面の平面度を測定する。上定盤20の平面は、例えば、上定盤20に取り付けられる測定センサにより測定される。測定センサとしては、歪みセンサ、変位センサ等を用いることが可能である。
【0031】
<変更工程>
変更工程では、測定工程にて測定された上定盤20の平面度に応じて、締結部材34の締結位置を変更する。例えば、上定盤20の外周側において下方へ撓みが生じている場合に、締結部材34を孔群33において外周側の貫通孔32に付け替えることにより、締結位置を外周側に変更することが可能である。
なお、締結位置は、各孔群33において、フランジ29の周方向で一致していなくてもよい。すなわち、各孔群33において、フランジ29の周方向の異なる位置にて締結してもよい。さらに、各孔群33において、複数の締結位置で締結してもよい。
また、測定工程において測定された平面度が許容範囲である場合には、変更工程の実行は任意である。すなわち、本実施形態の製造方法は、平面度が許容範囲を超える場合に、変更工程を実行するようにしてもよい。
【0032】
変更工程では、測定工程にて測定された上定盤20の平面度に応じて、締結部材34の締結位置を変更したが、これに限られない。例えば、変更工程では、当該平面度の測定結果によらずに、定期的に、締結位置を変更してもよい。また、加工後の円盤状基板200の品質(縁ダレ、平面度、微小ウネリ等)に基づき、上定盤20の平面度が悪化したものとして、締結位置を変更してもよい。このように、当該平面度の測定結果によらずに、締結位置を変更する場合には、測定工程の実行を省略してもよい。すなわち、本開示の製造方法としては、測定工程の実行は任意である。
【0033】
以上のように、本実施形態では、締結部材34が複数の貫通孔32に付け替え可能とされているため、上定盤20の平面度に応じて、締結部材34の締結位置を変更できる。
この結果、上定盤20の下面と、下定盤12の上面との平面度にズレを解消でき、円盤状基板100の加工精度の低下を抑制できる。
本実施形態では、前述のように、孔群33は、フランジ29の周方向に複数配置されているため、フランジ29の周方向の各部分において、上定盤20に作用する荷重を変更できる。この結果、上定盤20の下面の平面度を高精度に補正できる。これにより、上定盤20と下定盤12とによる研磨又は研削の加工精度の低下を抑制できる。また、製造装置による精度の高い加工処理を長期間にわたり実現可能にすることができる。
【0034】
<製造方法の変形例>
本開示の円盤状基板の製造方法としては、前述の例に限定されるものではなく、少なくとも、測定工程、及び変更工程を備えるものであればよい。
本実施形態の製造方法では、前述の製造装置10を用いて実行しているが、前述の製造装置10を用いずに実行してもよい。
本開示では、円盤状基板200の製造方法は、円盤状基板200の種類に応じて、通常公知の1つ以上の他の処理を含んで構成されてよい。
本実施形態の製造方法では、製造装置10を用いて、研磨工程を実行しているが、これに限られない。製造装置10を用いて、研削工程を実行してもよい。本実施形態では、製造装置10を用いて、例えば研削工程及び研磨工程のいずれかで実施してもよく、これら双方で実施してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 製造装置
12 下定盤
20 上定盤
28 軸部
29 フランジ
32 貫通孔
100 円盤状基板
【要約】
【課題】円盤状基板の加工精度の低下を抑制できる円盤状基板の製造装置、及び円盤状基板の製造方法を提供する。
【解決手段】円盤状基板の製造装置は、円盤状基板が載置される下定盤と、前記下定盤との間に前記円盤状基板を挟んで回転し、前記円盤状基板を研磨又は研削する上定盤と、前記上定盤の上方に設けられ、上下方向に延びる軸部と、前記軸部の下部にて径方向に張り出すフランジであって、上下方向に貫通する複数の貫通孔が前記径方向に配置されているフランジと、前記貫通孔を通じて前記フランジを前記上定盤に締結し、前記複数の貫通孔に付け替え可能な締結部材と、を備える。
【選択図】
図2