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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20250304BHJP
   B29C 45/54 20060101ALI20250304BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/54
B22D17/32 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023511419
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015678
(87)【国際公開番号】W WO2022210778
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2021061135
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】谷藤 弘康
(72)【発明者】
【氏名】堀田 大吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 大
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-331160(JP,A)
【文献】特開2005-335078(JP,A)
【文献】特開2012-250528(JP,A)
【文献】特開平06-304976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/54
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置を制御する制御装置と、を有し、
前記射出装置は、前記成形材料を加熱するシリンダと、前記シリンダ内に配置されたスクリュと、前記スクリュを回転させる計量モータと、を有し、
前記制御装置は、
前記計量モータの回転角に基づいて、前記スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、前記スクリュに作用する圧力を検出する圧力検出器から出力される検出値を補正する補正制御部を有する、
射出成形機。
【請求項2】
金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置を制御する制御装置と、を有し、
前記射出装置は、前記成形材料を加熱するシリンダと、前記シリンダ内に配置されたスクリュと、前記スクリュを回転させる計量モータと、を有し、
前記制御装置は、
前記計量モータのエンコーダの検出値に基づいて、前記スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、前記スクリュに作用する圧力を検出する圧力検出器から出力される検出値を補正する補正制御部を有する、
射出成形機。
【請求項3】
金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置を制御する制御装置と、を有し、
前記射出装置は、前記成形材料を加熱するシリンダと、前記シリンダ内に配置されたスクリュと、前記スクリュを回転させる計量モータと、射出スプライン軸と結合される射出モータと、前記スクリュに作用する圧力の検出結果である検出値を出力する圧力検出器と、を有し、
前記制御装置は、
前記射出モータの回転角に基づいて、前記射出スプライン軸の位相に応じて変化する前記検出値の変化に対応して、前記スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、前記圧力検出器から出力される前記検出値を補正する補正制御部を有する、
射出成形機。
【請求項4】
金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置を制御する制御装置と、を有し、
前記射出装置は、前記成形材料を加熱するシリンダと、前記シリンダ内に配置されたスクリュと、前記スクリュを回転させる計量モータと、射出スプライン軸と結合される射出モータと、前記スクリュに作用する圧力の検出結果である検出値を出力する圧力検出器と、を有し、
前記制御装置は、
前記射出モータの回転角に基づいて、前記射出スプライン軸の軸方向の位置に応じて変化する前記検出値の変化に対応して、前記スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、前記圧力検出器から出力される前記検出値を補正する補正制御部を有する、
射出成形機。
【請求項5】
金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置を制御する制御装置と、を有し、
前記射出装置は、前記成形材料を加熱するシリンダと、前記シリンダ内に配置されたスクリュと、前記スクリュを回転させる計量モータと、射出スプライン軸と結合される射出モータと、前記スクリュに作用する圧力の検出結果である検出値を出力する圧力検出器と、を有し、
前記制御装置は、
前記射出モータのエンコーダの検出値に基づいて、前記射出スプライン軸の位相に応じて変化する前記検出値の変化に対応して、前記スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、前記圧力検出器から出力される前記検出値を補正する補正制御部を有する、
射出成形機。
【請求項6】
金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置を制御する制御装置と、を有し、
前記射出装置は、前記成形材料を加熱するシリンダと、前記シリンダ内に配置されたスクリュと、前記スクリュを回転させる計量モータと、射出スプライン軸と結合される射出モータと、前記スクリュに作用する圧力の検出結果である検出値を出力する圧力検出器と、を有し、
前記制御装置は、
前記射出モータのエンコーダの検出値に基づいて、前記射出スプライン軸の軸方向の位置に応じて変化する前記検出値の変化に対応して、前記スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、前記圧力検出器から出力される前記検出値を補正する補正制御部を有する、
射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、成形材料としての樹脂ペレットが供給されるシリンダと、樹脂ペレットを溶融させるためにシリンダを加熱するヒータと、を備えている。射出成形機は、シリンダ内で樹脂ペレットを溶融させ、溶融させた樹脂を金型装置内のキャビティ空間に充填させることで、成形品を製造する。
【0003】
射出成形機には、様々なセンサが設けられている。そして、センサで検出された値から、正確なトルクや応力を認識することが好まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-045904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、計量中の回転トルクを計測、記憶して、予め想定した関数に入力することで、スクリュの回転トルクの許容上限値を設定しているので、複雑な材料力学的強度計算をせずとも、許容上限値に基づいたトルク監視を実現している。
【0006】
一方、射出成形機を適切な制御や監視を行うために、回転トルクだけではなく、正確な樹脂圧の検出が望まれている。しかしながら、駆動部品の摩擦や姿勢変化による偏荷重が、荷重検出器の検出値に影響を与えていた。
【0007】
本発明の一態様は、成形材料を充填させるための圧力制御や、スクリュに作用する圧力の検出の精度を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る射出成形機は、金型装置に成形材料を充填する射出装置と、射出装置を制御する制御装置と、を有する。射出装置は、成形材料を加熱するシリンダと、シリンダ内に配置されたスクリュと、スクリュを回転させる計量モータと、を有する。制御装置は計量モータの回転角に基づいて、スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、スクリュに作用する圧力を検出する圧力検出器から出力される検出値を補正する補正制御部を有する。
【0009】
本発明の一態様に係る射出成形機は、金型装置に成形材料を充填する射出装置と、射出装置を制御する制御装置と、を有する。射出装置は、成形材料を加熱するシリンダと、シリンダ内に配置されたスクリュと、前記スクリュを回転させる計量モータと、を有する。制御装置は、計量モータに対するエンコーダの検出値に基づいて、スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、スクリュに作用する圧力を検出する圧力検出器から出力される検出値を補正する補正制御部を有する。
【0010】
本発明の一態様に係る射出成形機は、金型装置に成形材料を充填する射出装置と、射出装置を制御する制御装置と、を有し、射出装置は、成形材料を加熱するシリンダと、シリンダ内に配置されたスクリュと、スクリュを回転させる計量モータと、射出スプライン軸と結合される射出モータと、スクリュに作用する圧力の検出結果である検出値を出力する圧力検出器と、を有し、制御装置は、射出モータの回転角に基づいて、射出スプライン軸の位相に応じて変化する検出値の変化に対応して、スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、圧力検出器から出力される検出値を補正する補正制御部を有する。
また、本発明の一態様に係る射出成形機は、金型装置に成形材料を充填する射出装置と、射出装置を制御する制御装置と、を有し、射出装置は、成形材料を加熱するシリンダと、シリンダ内に配置されたスクリュと、スクリュを回転させる計量モータと、射出スプライン軸と結合される射出モータと、スクリュに作用する圧力の検出結果である検出値を出力する圧力検出器と、を有し、制御装置は、射出モータの回転角に基づいて、射出スプライン軸の軸方向の位置に応じて変化する検出値の変化に対応して、スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、圧力検出器から出力される検出値を補正する補正制御部を有する。
また、本発明の一態様に係る射出成形機は、金型装置に成形材料を充填する射出装置と、射出装置を制御する制御装置と、を有し、射出装置は、成形材料を加熱するシリンダと、シリンダ内に配置されたスクリュと、スクリュを回転させる計量モータと、射出スプライン軸と結合される射出モータと、スクリュに作用する圧力の検出結果である検出値を出力する圧力検出器と、を有し、制御装置は、射出モータのエンコーダの検出値に基づいて、射出スプライン軸の軸方向の位置に応じて変化する検出値の変化に対応して、スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、圧力検出器から出力される検出値を補正する補正制御部を有する。
また、本発明の一態様に係る射出成形機は、金型装置に成形材料を充填する射出装置と、射出装置を制御する制御装置と、を有し、射出装置は、成形材料を加熱するシリンダと、シリンダ内に配置されたスクリュと、スクリュを回転させる計量モータと、射出スプライン軸と結合される射出モータと、スクリュに作用する圧力の検出結果である検出値を出力する圧力検出器と、を有し、制御装置は、射出モータのエンコーダの検出値に基づいて、射出スプライン軸の軸方向の位置に応じて変化する検出値の変化に対応して、スクリュの圧力制御に用いる圧力設定値を補正する、又は、圧力検出器から出力される検出値を補正する補正制御部を有する。

【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、外乱の影響を抑止して、成形材料を充填させるための圧力制御や、スクリュに作用する圧力の検出の精度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る射出装置の射出開始時の状態を示す図である。
図4図4は、一実施形態に係る射出装置の射出完了時の状態を示す図である。
図5図5は、一実施形態に係る射出装置の射出完了時の状態の一部拡大図である。
図6図6は、一実施形態に係る制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。
図7図7は、第1の実施形態の計量時における、荷重検出器において検出される圧力を表した概念図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る荷重検出器による検出値と、樹脂圧による力と、の関係を例示した図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るスクリュの周方向の位置を固定した上で、射出スプライン軸を動かした場合に荷重検出器が検出する検出値を表した図である。
図10図10は、第1の実施形態に係る登録部に登録された補正情報記憶部のテーブルを例示した図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る制御装置における補正情報記憶部に補正値を登録するフローチャートを示した図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る制御装置における、計量時における表示処理を行うフローチャートである。
図13図13は、スクリュの周方向の位置(回転角)、又はスクリュの位置(射出スプライン軸の位相)に応じて変化する抵抗力(摩擦含む)を例示した図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る補正情報記憶部が保持する速度補正値記憶テーブルの構造を示した図である。
図15図15は、第2の実施形態に係る補正制御部が式(3)を用いて算出した補正値の変動を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0014】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0015】
図1図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0016】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0017】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0018】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0019】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0020】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0021】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0022】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。なお、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0023】
なお、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0024】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0025】
なお、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0026】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0027】
なお、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0028】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0029】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0030】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0031】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0032】
なお、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0033】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0034】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0035】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0036】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0037】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0038】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0039】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0040】
なお、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0041】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0042】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0043】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0044】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。なお、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0045】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。なお、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0046】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。なお、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0047】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。なお、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0048】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0049】
なお、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0050】
なお、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0051】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0052】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0053】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0054】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0055】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0056】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0057】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の軸方向(例えば、スクリュ330が移動可能な方向のうち、X軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の軸方向(例えば、スクリュ330が移動可能な方向のうち、X軸正方向)を後方として説明する。
【0058】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0059】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0060】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0061】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0062】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0063】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0064】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0065】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0066】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0067】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0068】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0069】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0070】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0071】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0072】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0073】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0074】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0075】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0076】
計量工程におけるスクリュ330の軸方向の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0077】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0078】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0079】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0080】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0081】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0082】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0083】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0084】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0085】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の軸方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の軸方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0086】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0087】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。なお、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0088】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0089】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0090】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0091】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0092】
なお、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0093】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0094】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0095】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0096】
なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0097】
なお、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0098】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0099】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0100】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0101】
なお、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0102】
(射出装置の詳細)
図3は、一実施形態に係る射出装置の射出開始時の状態を示す図である。図4は、一実施形態に係る射出装置の射出完了時の状態を示す図である。図5は、図4の一部拡大図である。射出装置300は、射出装置本体303と、射出装置本体303を支持する支持フレーム304とを有する。射出装置本体303は、例えば、シリンダ310と、ノズル320と、スクリュ330と、計量モータ340と、射出モータ350と、荷重検出器360と、を含む。射出装置本体303は、更に、スクリュ330を回転自在に支持する軸受361と、射出モータ350によって回転させられながら進退させられる駆動軸362と、軸受361を介して駆動軸362を回転自在に支持する軸受ホルダ370と、を含む。
【0103】
支持フレーム304は、スライドベース301に設置される。スライドベース301は2本(図3及び図4には1本のみ図示)のガイド302に沿って進退する。2本のガイド302は、射出装置フレーム920に敷設される。2本のガイド302は、それぞれ、X軸方向に延びている。2本のガイド302は、Y軸方向に間隔をおいて配置される。支持フレーム304は、鉛直な旋回軸304Zを中心に旋回自在に、スライドベース301に設置される。支持フレーム304と共に射出装置本体303を旋回できる。
【0104】
支持フレーム304は、前旋回プレート305と、後旋回プレート306とを有する。前旋回プレート305と後旋回プレート306とは、スライドベース301の上面に摺動自在に載置される。前旋回プレート305の予め定められた位置に、旋回軸304Zが配置される。前旋回プレート305の後方に、後旋回プレート306が配置される。
【0105】
支持フレーム304は、前フランジ307と、後フランジ308と、複数本の連結ロッド309とを有する。前フランジ307は、前旋回プレート305に取付けられる。後フランジ308は、後旋回プレート306に取付けられる。連結ロッド309は、前フランジ307と後フランジ308とを間隔をおいて連結する。
【0106】
前フランジ307には、シリンダ310と、計量モータ340とが取付けられる。シリンダ310は、前フランジ307の前方に配置され、筒体315を介して前フランジ307に取付けられる。計量モータ340は、前フランジ307の後方であって且つ後フランジ308の前方に配置される。
【0107】
一方、後フランジ308には、射出モータ350が取付けられる。射出モータ350は、後フランジ308の後方に配置され、後述の荷重検出器360を介して後フランジ308に取付けられる。
【0108】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。計量モータ340は、前フランジ307に対して固定される固定子342と、固定子342の内側において回転する回転子343と、回転子343を回転自在に支持する軸受349と、を有する。固定子342は、軸受349を保持する前フランジ342aと、軸受349を保持する後フランジ342bと、前フランジ342aと後フランジ342bを接続するハウジング342cと、を含む。計量モータ340の回転運動は、軸受ホルダ370に伝達され、更に軸受ホルダ370からスクリュ330に伝達される。
【0109】
軸受ホルダ370は、スクリュ330が取付けられるスクリュ取付部372と、計量モータ340の回転子343がスプライン結合される計量スプライン軸371とを有する。計量スプライン軸371は、計量モータ340の回転子343の内部に配置される。回転子343には、計量スプラインナット344が設けられる。
【0110】
計量スプラインナット344は、その内周面に、周方向に等間隔で配置される複数のキー溝を有する。一方、計量スプライン軸371は、その外周面に、周方向に等間隔で配置される複数のキーを有する。計量スプライン軸371と計量スプラインナット344とは、スプライン結合される。なお、キー溝の数、及びキーの数は1つでもよい。
【0111】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350は、荷重検出器360を介して後フランジ308に対して固定される固定子352と、固定子352の内側において回転する回転子353と、回転子353を回転自在に支持する軸受359と、を有する。射出モータ350の回転運動は、駆動軸362の回転直線運動に変換され、更に軸受ホルダ370の直線運動に変換される。軸受ホルダ370の進退に伴い、スクリュ330が進退する。
【0112】
駆動軸362は、後側から前方に向けて、射出スプライン軸363と、ねじ軸364と、回転軸365とをこの順で同一直線上に有する。
【0113】
射出スプライン軸363は、射出モータ350の回転子353の内部に配置される。回転子353には、射出スプラインナット354が設けられる。射出スプラインナット354は、その内周面に、周方向に等間隔で配置される複数のキー溝を有する。一方、射出スプライン軸363は、その外周面に、周方向に等間隔で配置される複数のキーを有する。射出スプライン軸363と射出スプラインナット354とは、スプライン結合される。なお、キー溝の数、及びキーの数は1つでもよい。
【0114】
ねじ軸364は、ねじナット366と螺合される。ねじ軸364とねじナット366の間には、ボール又はローラが介在してよい。ねじナット366は、荷重検出器360を介して後フランジ308に対して固定されるので、ねじ軸364と共に回転しない。従って、ねじ軸364は、回転しながら進退する。ねじ軸364が回転しながら進退できるように、射出スプライン軸363と、射出スプラインナット354とが、スプライン結合される。
【0115】
回転軸365は、軸受361を介して軸受ホルダ370に保持される。軸受ホルダ370は筒状の計量スプライン軸371を有し、計量スプライン軸371の内周面に軸受361が固定される。軸受361は、回転軸365と共に回転する内輪と、計量スプライン軸371に対し固定される外輪とを有する。軸受361は、回転軸365から軸受ホルダ370への回転駆動力の伝達を防止する。
【0116】
回転軸365が回転しながら進退することにより、軸受ホルダ370が進退し、スクリュ330が進退する。スクリュ330が進退する時、計量モータ340は進退しない。計量モータ340の計量スプラインナット344と、軸受ホルダ370の計量スプライン軸371とは、スプライン結合されるからである。射出モータ350の駆動対象に計量モータ340が含まれないので、射出モータ350の駆動対象のイナーシャが小さく、スクリュ330の前進開始時の加速が速い。
【0117】
なお、射出装置300の構造は、図3及び図4に示す構造には限定されない。例えば、スクリュ330を駆動する駆動源(例えば計量モータ340及び射出モータ350)の配置は、図3及び図4に示す配置には限定されない。具体的には、本実施形態ではスクリュ330の回転中心線と、計量モータ340の回転中心線と、射出モータ350の回転中心線とは同一直線上に配置されるが、同一直線上に配置されなくてもよい。
【0118】
また、駆動源の駆動力をスクリュ330に伝達する伝達機構の構造は、図3及び図4に示す構造には限定されない。伝達機構の構造は、スクリュ330を駆動する駆動源の配置に応じて適宜変更される。例えば、互いに平行な計量モータ340の回転中心線とスクリュ330の回転中心線とがこれらの回転中心線と直交する方向にずらして配置される場合、タイミングベルトが用いられてもよい。同様に、互いに平行な射出モータ350の回転中心線とスクリュ330の回転中心線とがこれらの回転中心線と直交する方向にずらして配置される場合、タイミングベルトが用いられてもよい。
【0119】
カップリング375は、スクリュ330と軸受ホルダ370とを結合する。カップリング375は、スクリュ330の後端部に形成されるスプライン軸332がスプライン結合されるスプラインナット376と、スプライン軸332を前方から押さえるフランジ377と、を有する。フランジ377は、スクリュ330の溝333に嵌合される。溝333は、スプライン軸332の前方に形成される。フランジ377は、2つの円弧状の分割体に分割され、溝333に嵌め込まれ、スプライン軸332を前方から押さえる。
【0120】
フランジ377は、第1ボルト378によって、スプラインナット376に締結される。スプラインナット376は、第2ボルト379によって、軸受ホルダ370に締結され、荷重検出器360を前方から押さえる。第1ボルト378及び第2ボルト379を締めたり緩めたりする作業は、前フランジ307と冷却器312との間に配置される筒体315の窓316から行われる。
【0121】
筒体315は、前フランジ307から前方に突出する筒部315aと、筒部315aの前端面から筒部315aの内側に突出する内フランジ部315bと、を含む。筒部315aには、窓316が形成される。内フランジ部315bの内縁には、シリンダ310の外縁が固定される。
【0122】
軸受ホルダ370の外周面には、環状パッキン381が嵌め込まれる環状溝、スライドリング382が嵌め込まれる環状溝が形成されている。
【0123】
環状パッキン381は、例えば軸受ホルダ370に保持され、計量モータ340の回転子343に摺動自在に接触し、回転子343と軸受ホルダ370との隙間をシールする。これにより、計量スプライン軸371に供給された潤滑剤がスクリュ330側に漏れるのを防止できる。
【0124】
環状パッキン381は、計量スプライン軸371のキー371aよりも前方に取付けられればよく、計量スプライン軸371に取付けられてもよいが、図3図5に示すようにスクリュ取付部372に取付けられてよい。
【0125】
環状パッキン381としては、例えば断面形状が円形のOリングなどが用いられ、適度に圧縮して使用される。環状パッキン381は、シール性を確保するため、スライドリング382よりも柔らかい材料で形成されている。環状パッキン381の材料としては、例えばブチルゴムなどのゴムが挙げられる。
【0126】
なお、環状パッキン381は、本実施形態では軸受ホルダ370に保持されるが、計量モータ340の回転子343に保持され、軸受ホルダ370に摺動自在に接触し、回転子343とスクリュ取付部372との隙間をシールしてもよい。
【0127】
スライドリング382は、例えばスクリュ取付部372に保持され、計量モータ340の回転子343に摺動自在に接触し、回転子343の中心線とスクリュ取付部372の中心線とを合わせる。これにより、回転子343とスクリュ取付部372とのかじりを抑制できる。また、環状パッキン381に偏荷重が加わることを抑制できる。
【0128】
スライドリング382は、回転子343とスクリュ取付部372との偏心を抑制するため、環状パッキン381よりも硬い材料で形成されている。スライドリング382の材料としては、自己潤滑性に富む、結晶性樹脂などが用いられる。結晶性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PEs)、ポリエチレン(PE)などが挙げられる。結晶性の度合いが大きいほど、自己潤滑性が大きくなる。スライドリング382は、結晶性樹脂以外の樹脂で形成されてもよく、例えば布入りのフェノール樹脂で形成されてもよい。
【0129】
スライドリング382は、環状パッキン381とは異なり、シール性を確保するものではないので、周方向一部に切れ目を有している。当該切れ目は、スライドリング382の取付けや取外しのために形成されており、取付け時や取外し時に広げられ、その後、スライドリング382の弾性復元力によって元に戻る。
【0130】
なお、スライドリング382は、本実施形態ではスクリュ取付部372に保持されるが、計量モータ340の回転子343に保持され、スクリュ取付部372に摺動自在に接触し、回転子343の中心線とスクリュ取付部372の中心線とを合わせてもよい。また、スライドリング382の数は複数でもよい。
【0131】
図3図5に示すように、計量スプライン軸371のキー371a側(後側)からスクリュ330の側(前側)に向けて、スライドリング382と環状パッキン381とがこの順で配設されている。環状パッキン381は、計量スプライン軸371に供給されスライドリング382を通過した潤滑剤の、スクリュ330の側への漏れを防止する。潤滑剤をスライドリング382に供給してスライドリング382の摺動抵抗を低減でき、かつ、スクリュ330の側への潤滑剤の漏れを抑制できる。ここで、計量スプライン軸371に供給された潤滑剤は、スライドリング382と計量モータ340の回転子343との間、スライドリング382とスクリュ取付部372との間、スライドリング382に形成されている切れ目などを通過する。
【0132】
射出成形機10は、荷重検出器360を備える。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。荷重検出器360は、軸受361よりも後方にて荷重を検出する。荷重検出器360は、例えばワッシャ型であって、後フランジ308と射出モータ350との間に配置される。
【0133】
荷重検出器360によって検出される荷重は、機械要素の摺動抵抗等を含む。機械要素の摺動抵抗は、例えば、軸受361の外輪と内輪との摺動抵抗と、ねじ軸364とねじナット366との摺動抵抗と、射出スプライン軸363と射出スプラインナット354との摺動抵抗と、計量スプライン軸371と計量スプラインナット344との摺動抵抗と、を含む。
【0134】
図6は、一実施形態に係る制御装置700の構成要素を機能ブロックで示す図である。図6に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU701にて実行されるプログラムにて実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。図6に示すように、制御装置700は、補正情報記憶部601と、取得部602と、登録部603と、補正制御部604と、表示制御部605と、圧力制御部606と、を備える。補正情報記憶部601は、スクリュ330の速度、スクリュ330の軸方向の位相、及び計量モータ340の位相に基づいて、荷重検出器360が検出した圧力の検出値を補正するための情報を記憶する。取得部602は、荷重検出器360が検出した圧力の検出値等の様々な情報を取得する。登録部603は、取得部602が取得した情報に基づいて、補正情報記憶部601に補正するための情報を登録する。補正制御部604は、補正情報記憶部601に記憶された情報に基づいて、荷重検出器360が検出した検出値を補正し、スクリュ330の圧力制御に用いる圧力設定値を補正する。表示制御部605は、補正した圧力値を表示装置760に表示する。圧力制御部606は、補正した圧力設定値に基づいて圧力制御を行う。なお、各構成の具体的な説明について後述する。
【0135】
次に、射出成形機10の動作について説明する。
【0136】
計量工程では、計量モータ340が回転駆動し、スクリュ330が回転する。そうすると、スクリュ330のフライト(ねじ山)が動き、スクリュ330のねじ溝内に充填された樹脂ペレット(固体状の成形材料)が前方に送られる。樹脂ペレットは、シリンダ310内を前方に移動しながら、シリンダ310を介した加熱器313_1~313_5からの熱などで加熱されることで、徐々に溶融される。そして、樹脂ペレットは、シリンダ310の先端部において完全に溶融した状態となる。そして、液状の成形材料(樹脂)がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330は後退する。
【0137】
計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送信する。スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0138】
従来から、射出装置300内部の摩擦や偏荷重が荷重検出器360に作用していた。射出装置300において、スクリュ330の非搭載時に、荷重検出器360によって検出される圧力に関する試験を行った結果、計量スプライン軸371の位相、射出スプライン軸363の位置、射出スプライン軸363の速度によって圧力の検出値に変化があることが判明した。
【0139】
これらの要素によって、荷重検出器360が検出した検出値が同じであっても実際の樹脂にかかっている圧力が、時々刻々と変化したり、ショットごとにばらついたりする可能性がある。
【0140】
図7は、本実施形態の計量時における、荷重検出器360において検出される圧力を表した概念図である。図7に示される例は、計量時に掛かる各力を矢印で示している。例えば、検出値1701は、荷重検出器360による圧力の検出値とする。ところで、荷重検出器360は、樹脂圧による力1702を検出することが望まれている。しかしながら、射出成形機10の内部の摩擦や偏荷重が、荷重検出器360に影響を与えている。このため、検出値1701は下記の式(1)の通りとなる。
【0141】
検出値1701=樹脂圧による力1702-第1の摺動抵抗1703-第2の摺動抵抗1706+計量スプライン軸371のモーメント1704+射出スプライン軸363のモーメント1705……(1)
【0142】
式(1)に示される、計量スプライン軸371のモーメント1704、及び計量スプライン軸371のモーメント1704が、検出値1701に含まれるのは、荷重検出器360が、ねじり方向の力も検出するためである。
【0143】
第1の摺動抵抗1703は、例えば、計量スプライン軸371や、環状パッキン381、及びスライドリング382による摺動抵抗である。計量スプライン軸371の摺動抵抗は、計量スプラインナット344と、計量スプライン軸371と、の間のスプライン結合している箇所に生じている。計量スプライン軸371が偏芯している場合、計量スプライン軸371は、当該計量スプライン軸371の位相に応じて、計量スプラインナット344と接触している面積が変化する。このため、計量スプライン軸371の位相に応じて、摺動抵抗が変化する。ところで、計量スプライン軸371は、軸受ホルダ370を介してスクリュ330と結合している。このため、換言すれば、スクリュ330の周方向の位置(回転角)に応じて、第1の摺動抵抗1703が変化している。
【0144】
第2の摺動抵抗1706は、射出スプライン軸363による摺動抵抗である。つまり、第2の摺動抵抗1706の摺動抵抗は、計量スプラインナット344と、射出スプライン軸363と、射出スプラインナット354と、の間のスプライン結合している箇所に生じている。射出スプライン軸363が偏芯している場合、射出スプライン軸363は、当該射出スプライン軸363の位相に応じて、射出スプラインナット354と接触している面積が変化する。このため、射出スプライン軸363の位相に応じて、第2の摺動抵抗1706が変化する。射出スプライン軸363は、射出モータ350に接続されている。射出モータ350は、スクリュ330の軸方向における位置の移動制御に用いられる。このため、換言すれば、スクリュ330の軸方向における位置(射出モータ350の位相)に応じて、第2の摺動抵抗1706が変化している。
【0145】
このように、樹脂圧による力1702を検出するための補正値を生成する場合、スクリュ330の周方向の位置(回転角)、及びスクリュ330の軸方向における位置に基づいて変化させる必要がある。なお、図7で示した例では、計量時の力を示しているが、充填・保圧時の力も同様の手法で算出可能として、説明を省略する。
【0146】
図8は、第1の実施形態に係る荷重検出器360による検出値と、樹脂圧による力と、の関係を例示した図である。図8に示される例では、計量時の荷重検出器360による検出値1801とし、計量時の機械摩擦等による抵抗力1802とする。抵抗力1802には、上述した摺動抵抗(例えば、第1の摺動抵抗1703、及び第2の摺動抵抗1706)に加えて、モーメント(例えば、計量スプライン軸371のモーメント1704、及び射出スプライン軸363のモーメント1704)も含まれている。
【0147】
計量時はスクリュ330が後退するため、荷重検出器360が検出する検出値1801の向き(例えば、検出値1701の向き)を正の方向とした場合に、計量時の機械摩擦等による抵抗力1802は負の方向に作用する。そして、計量時の樹脂圧による力1803は、検出値1801-抵抗力1802により導き出せる。
【0148】
図8に示される例では、充填・保圧時の荷重検出器360による検出値1804とし、充填・保圧時の機械摩擦等による抵抗力1805とする。抵抗力1805には、上述した摺動抵抗に加えて、モーメントも含まれている。
【0149】
充填・保圧時のスクリュ330が前進するため、荷重検出器360が検出する検出値1801の向きを正の方向とした場合に、充填・保圧時の機械摩擦等による抵抗力1805は正の方向に作用する。充填・保圧時の樹脂圧による力1806は、検出値1804-抵抗力1805により導き出せる。
【0150】
図8に示されるように、計量時の樹脂圧による力1803は、充填・保圧時の樹脂圧による力1806と比べて小さい。換言すれば、機械摩擦等の変動が大きく作用する。本実施形態の制御装置700は、このような計量時の樹脂圧による力1803であっても精度の高い検出を実現する。
【0151】
具体的には、スクリュ330の周方向の位置、スクリュ330の位置、及びスクリュの速度の各々を変数として、当該変数の組み合わせから補正値を特定するテーブルを補正情報記憶部601に予め記憶しておく。そして、補正制御部604が、リアルタイムでテーブルから補正値を取得し、荷重検出器360により検出された圧力の検出値を補正する。なお、射出装置300毎に個体差があると考えられるため、テーブルへの補正値の登録を、出荷前の検査工程、又はユーザの成形立ち上げ時に行うことが考えられる。
【0152】
図6に戻り、取得部602は、荷重検出器360が検出した圧力の検出値を取得する。
【0153】
登録部603は、取得した圧力の検出値に基づいて、荷重検出器360の検出値を補正した補正値(補正情報の一例)を、補正情報記憶部601に登録する。本実施形態の補正値は、機械摩擦等による外乱で生じた力(抵抗力)を表した値とする。そして、本実施形態では、検出値から補正値を減算することで、樹脂圧による力を導出できる。
【0154】
図9は、スクリュ330の周方向の位置を固定した上で、スクリュ330の位置(射出スプライン軸363の位相)を動かした場合に荷重検出器360が検出する検出値を表した図である。図9で示される例では、スクリュ330の周方向の位置(回転角)が初期位置で固定した場合の検出値の変動901と、スクリュ330の周方向の位置(回転角)が+90°で固定した場合の検出値の変動902と、スクリュ330の周方向の位置(回転角)が+180°で固定した場合の検出値の変動903と、スクリュ330の周方向の位置(回転角)が+270°で固定した場合の検出値の変動904と、を表している。
【0155】
そして、検出値の変動901、904等によると、圧力の検出値がスクリュ330の位置に応じて周期的に変化していることが確認できる。この検出値の変化は、射出スプライン軸363の位相(回転角)の変化に対応している。
【0156】
同様に、圧力の検出値は、スクリュ330の周方向の位置(回転角)に応じて変化する。さらには、圧力の検出値は、スクリュ330の速度に応じて変化する。
【0157】
そこで、本実施形態においては、スクリュ330の周方向の位置(回転角)、スクリュ330の軸方向の位置(射出スプライン軸363の位相)、及びスクリュ330の速度に基づいて、荷重検出器360の検出値を補正する。
【0158】
本実施形態においては、補正値が格納されたテーブルを予め作成する手法を用いる。本実施形態では補正値が格納された補正情報記憶部601を作成するために、射出装置300において、スクリュ330のアッセンブリが搭載されていない状態で、荷重検出器360による圧力の検出を行う。スクリュ330のアッセンブリとは、例えば、スクリュ330、筒体315、シリンダ310、及びノズル320を含む構成が考えられる。なお、圧力の検出を行うときの環境は、スクリュ330のアッセンブリ非搭載時に制限するものではなく、成形材料が充填されていない状態で、スクリュ330が金属接触しない状態であればよい。
【0159】
登録部603は、荷重検出器360によって検出された圧力の検出値を、補正情報記憶部601に補正値として登録する。
【0160】
図10は、本実施形態に係る登録部603に登録された補正情報記憶部601のテーブルを例示した図である。図10に示されるように、本実施形態の補正情報記憶部601のテーブルは、スクリュ330の軸方向の位置(射出スプライン軸363の位相)、スクリュ330の周方向の位置(回転角)、及びスクリュ330の速度の組み合わせによって、補正値(樹脂圧による力)を特定できる。図10で示される例では、スクリュ330の速度毎にテーブルが作成され、スクリュ330の速度はV1<V2<V3<最大速度とする。
【0161】
そして、補正制御部604は、補正情報記憶部601を参照し、スクリュ330の周方向の位置、スクリュ330の軸方向の位置、及びスクリュの速度に基づいて補正値を取得し、荷重検出器360から出力される検出値を、補正値に基づいて補正し、補正された検出値を特定する。
【0162】
表示制御部605は、補正制御部604による補正された検出値を、樹脂圧による力として、表示装置760に表示する。
【0163】
圧力制御部606は、補正制御部604により補正された検出値が、型締め時等に射出装置300が成形材料を充填させるために、予め設定された圧力設定値になるように圧力制御を行う。これにより、摺動抵抗やモーメントなどの外乱の影響を除くことができるので、圧力制御の精度を向上させることができる。
【0164】
図11は、本実施形態に係る制御装置700における、補正情報記憶部601に補正値を登録するフローチャートである。図11に示される補正値の登録を行う際には、スクリュ330のアッセンブリが搭載されていない状態とする。
【0165】
まず、制御装置700の登録部603は、初期設定を行う(S1101)。初期設定では、スクリュ330の軸方向の位置(射出スプライン軸363の位相)や、スクリュ330の周方向の位置(回転角)を初期位置(例えば"0")に設定し、スクリュ330の速度を初期速度に設定する。
【0166】
次に、登録部603は、設定された速度で、初期位置(例えば"0")から最大値までスクリュ330のストローク制御を行う(S1102)。
【0167】
取得部602は、ストローク制御中に荷重検出器360によって検出された検出値を取得する(S1103)。
【0168】
登録部603は、取得部602が取得した検出値に対応する補正値を、当該検出値を検出したときの、スクリュ330の軸方向の位置、スクリュ330の速度、及び周方向の位置に対応付けて、補正情報記憶部601に登録する(S1104)。
【0169】
登録部603は、現在のスクリュ330の速度で、スクリュ330の周方向の全ての位置について補正値を登録したか否かを判定する(S1105)。
【0170】
登録部603が、スクリュ330の周方向の全ての位置について補正値を登録していないと判定した場合(S1105:No)、スクリュ330の周方向の位置を変更する(S1106)。本実施形態では、スクリュ330の周方向の位置として、0°、90°、180°270°の順に変更させる。その後、再びS1102から処理を行う。
【0171】
一方、登録部603が、スクリュ330の周方向の全ての位置について補正値を登録したと判定した場合(S1105:Yes)、登録部603が、スクリュ330の全ての速度について補正値を登録したか否かを判定する(S1107)。
【0172】
登録部603が、スクリュ330の全ての速度について補正値を登録していないと判定した場合(S1107:No)、スクリュ330の速度を変更する(S1108)。なお、スクリュ330の速度は、射出モータ350の動作に基づいて変更される。
【0173】
一方、登録部603が、スクリュ330の全ての速度について補正値を登録したと判定した場合(S1108:Yes)、処理を終了する。
【0174】
上述した処理手順によって、補正情報記憶部601に対する補正値の登録が完了する。
【0175】
次に、計量時における表示制御について説明する。図12は、本実施形態に係る制御装置700における、計量時における表示処理を行うフローチャートである。
【0176】
まず、取得部602は、ストローク制御中に荷重検出器360によって検出された圧力の検出値を取得する(S1201)。さらに取得部602は、射出装置300に設けられた各種センサ(例えば、計量モータエンコーダ341、及び射出モータエンコーダ351)の検出結果に基づいて、現在のスクリュ330の速度、スクリュ330の周方向の位置、及びスクリュ330の軸方向における位置を取得する(S1202)。
【0177】
次に、補正制御部604が、補正情報記憶部601を参照して、スクリュ330の速度、スクリュ330の周方向の位置、及びスクリュ330の軸方向における位置と対応付けられた、補正値を取得する(S1203)。
【0178】
そして、補正制御部604は、検出値から補正値を減算して、補正された検出値を導出する。
【0179】
表示制御部605が、補正された検出値を、樹脂圧による力として表示装置760に表示する(S1204)。
【0180】
本実施形態においては、上述した処理手順を行うことで、計量時において、機械摩擦などの外乱の影響を抑止した上で、樹脂圧による力を検出できる。
【0181】
また、図12に示される例では、計量時において荷重検出器360による検出値に基づいて、樹脂圧による力の検出手法について説明した。しかしながら、樹脂圧による力の検出は、計量時に制限するものではない。例えば、充填・保圧時の荷重検出器360による検出値804に基づいて樹脂圧による力を検出してもよい。
【0182】
充填・保圧時においては、圧力制御部606は、補正制御部604が取得した補正値が、射出装置300が成形材料を充填させるために、予め設定された圧力設定値になるように圧力制御を行う。
【0183】
また、本実施形態においては、補正情報記憶部601を参照して、荷重検出器360による検出値を補正する例について説明した。しかしながら、本実施形態は、補正する対象を検出値に制限するものではなく、圧力制御を行うための圧力設定を補正してもよい。
【0184】
この場合、補正情報記憶部601には、スクリュ330の速度、スクリュ330の周方向の位置、及びスクリュ330の軸方向における位置と対応付けられた、圧力設定値が格納される。そして、圧力制御部606は、取得部602が取得した検出値が、機械抵抗などの外乱を考慮して設定された圧力設定値になるように圧力制御を行う。
【0185】
(第2の実施形態)
上述した実施形態においては、補正情報記憶部601が保持するテーブルを参照して、補正値を特定する手法について説明した。しかしながら、第1の実施形態は、補正情報記憶部601が保持するテーブルのみで、補正値を特製する手法に制限するものではない。そこで第2の実施形態では、数式モデルと、テーブルと、を組み合わせて補正値を特定する手法について説明する。
【0186】
図9等で示したように、外乱による力は周期的に変化している。例えば、検出値の変動901、904等によると、圧力の検出値がスクリュ330の位置に応じて周期的に変化している。この検出値の変化は、射出スプライン軸363の位相(回転角)の変化に対応している。同様に検出値の変化は、計量スプライン軸371の位相の変化に対応して生じている。したがって、各要素の周期的な変化を数式モデル化することで、数式モデルから、外乱の要素に対応する補正値を特定できる。
【0187】
図13は、スクリュ330の周方向の位置(回転角)、又はスクリュ330の軸方向の位置(射出スプライン軸363の位相)に応じて変化する抵抗力(摩擦含む)を例示した図である。上述したように、スクリュ330の周方向の位置(回転角)、又はスクリュ330の軸方向の位置(射出スプライン軸363の位相)に応じて、抵抗の変動1301が周期的に変化している。
【0188】
そこで、摩擦等を含めた抵抗の変動1301に対応するsin関数1002を導出できる。この場合、下記の式(2)が導出できる。なお、位相θoffsetは、実際の射出装置300の摩擦変動に応じた位相オフセットとする。変数kは、実際の射出装置300の変動幅に応じた係数とする。そして、位相θは、スクリュ330の周方向の位置(回転角)、又はスクリュ330の位置を移動させる射出スプライン軸363の位相とする。
【0189】
要素ごとの補正値=k・sin2((θ-θoffset)/2)……(2)
【0190】
そして、スクリュ330の周方向の位置(回転角)に対応する補正値を示す数式と、スクリュ330の位置を移動させる射出スプライン軸363の位相に対応する補正値を示す数式と、を組み合わせることで、位置に関する補正値(以下、位置補正値とも称する)の算出可能な数式を導出できる。そして、位置に関する補正値を算出可能な数式と、スクリュ330の速度に対応する補正値(以下、速度補正値)と、を組み合わせることで、補正値を算出する数式モデルを実現できる。
【0191】
具体的には、登録部603は、下記の式(3)の各値(k、θij_offset、θrt_offset、速度補正値Pvのテーブル)を、補正情報記憶部601に登録する。変数kは、実際の射出装置300の変動幅に応じた係数とする。そして、位相θijは、スクリュ330の軸方向に移動させる射出モータ350(射出スプライン軸363)の位相とする。射出モータ350の位相θij(角度)と、スクリュ330の位置との対応関係は、射出モータ350の回転角とスクリュ330の移動量との対応関係から導出できるものとして、説明を省略する。位相θrtは、スクリュ330の周方向の位置(回転角)とする。位相θij_offsetは、実際のスクリュ330の軸方向の位置(射出モータ350の位相)の変動に応じた位相オフセットとする。位相θrt_offsetは、実際のスクリュ330の周方向の位置(回転角)の変動に応じた位相オフセットとする。スクリュ330の速度に応じた速度補正値Pvのテーブルについては後述する。
【0192】
補正値=Pv・k・sin2((θij-θij_offset)/2)・sin2((θrt-θrt_offset)/2)……(3)
【0193】
図14は、本実施形態に係る補正情報記憶部601が保持する速度補正値記憶テーブルの構造を示した図である。図14に示されるように、速度補正値Pvは、スクリュ330の軸方向の速度と対応付けて格納されている。
【0194】
なお、速度補正値Pv、及び変数kは、第1の実施形態の図11のフローチャートで示したように、スクリュ330の速度、及び周方向の位置を異ならせながら、スクリュ330の軸方向の位置毎の検出値を取得することで特定されるものとして、説明を省略する。なお、位相θijの周期及び位相θij_offsetは、射出モータ350の周期及び位相から導出できる。同様に、位相θrtの周期及び位相θrt_offsetは、計量モータ340の周期及び位相から導出できる。これにより、式(3)に基づいて補正値の導出が可能となる。
【0195】
図15は、補正制御部604が式(3)を用いて算出した補正値の変動を例示した図である。図15の周期1551、1552、1553、1554、1555は、射出モータ350の回転周期を示している。
【0196】
図15に示される例では、スクリュ330の周方向の位置(回転角)が初期位置の場合の検出値の変動901に対応する補正値の変動1501とする。また、スクリュ330の周方向の位置(回転角)が+90°の場合の検出値の変動902に対応する、補正値の変動1502とする。また、スクリュ330の周方向の位置(回転角)が+180°の場合の検出値の変動903に対応する、補正値の変動1503とする。また、スクリュ330の周方向の位置(回転角)が+270°の場合の検出値の変動904に対応する、補正値の変動1504とする。
【0197】
このように、本実施形態の補正制御部604は、補正情報記憶部601に格納されたパラメータ及び速度補正値記憶テーブル、スクリュ330の周方向の位置、スクリュ330の軸方向の位置、及びスクリュの速度と、を用いて、式(3)から補正値を算出する。
【0198】
そして、補正制御部604は、取得部602が取得した検出値から、算出された補正値を減算して、補正された検出値を導出する。以降の処理については上述した実施形態と同様として説明を省略する。
【0199】
(第3の実施形態)
上述した実施形態においては、補正値を特定する際に、テーブルを参照する例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、テーブルを参照する手法に限定するものではない。第3の実施形態では、数式モデルのみを用いて補正値を算出する手法とする。
【0200】
第2の実施形態では、速度補正値記憶テーブルを用いたが、速度補正値記憶テーブルから取得される速度補正値Pvの代わりに、速度から速度補正値を算出する数式を式(3)の速度補正値Pvの箇所に当てはめることで、数式モデルのみを用いて補正値を算出できる。
【0201】
例えば、一般的な射出装置では、スクリュ330の速度'0'の時が機械摩擦等の抵抗値、換言すれば速度補正値が最も大きくなり、スクリュ330の速度が大きくなるにしたがって抵抗値(速度補正値)が小さくなる。スクリュ330の速度が所定値に達すると、速度と摩擦の関係は線形に遷移するものとみなして、速度に対して速度補正値を線形に変化させるようにしても良いし、静止摩擦に比べて小さい変動であるため一定として扱うようにしても良い。このような速度補正値の変化を数式として、式(3)に当てはめることで数式モデルのみを用いた補正値の算出が可能となる。
【0202】
上述した実施形態のように、テーブル及び数式モデルの組み合わせは、実施態様に応じて異なるものとする。例えば、演算に要する時間が長いと判断された場合にはテーブルを用いるようにしたり、記憶容量を削減したい場合には数式モデルを用いるようにしたりすることが考えられる。
【0203】
上述した実施形態は、スクリュ330のアッセンブリ非搭載の状態で、補正値を特定する手法を説明したが、当該補正値を特定する手法を制限するものではない。例えば、スクリュ330を搭載している場合にはシリンダ310内に樹脂を充填し、及び昇温した後に、スクリュ330を低速で動作させることで補正値を特定してもよい。この場合、低速時における抵抗力に基づいた補正値のみ特定できる。しかしながら、スクリュ330の速度が速くなるに伴い、抵抗値が低減する傾向にあるため、速度に対応する補正値を推定できる。
【0204】
(変形例)
上述した実施形態は、補正制御部604が、スクリュ330の周方向の位置、スクリュ330の位置、及びスクリュの速度の組み合わせに基づいて、荷重検出器360から出力される検出値を補正する例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、スクリュ330の周方向の位置、スクリュ330の位置、及びスクリュの速度の組み合わせに基づいて補正値を特定する手法に制限するものではない。
【0205】
例えば、補正制御部604は、スクリュ330の周方向の位置、及びスクリュ330の位置の組み合わせに基づいて、補正値を特定してもよい。さらには、補正制御部604が、スクリュ330の周方向の位置、及びスクリュ330の位置の組み合わせに基づいて特定された圧力設定値を特定し、圧力制御部606が、特定された圧力設定値に従って圧力制御を行ってもよい。なお、スクリュ330の周方向の位置、及びスクリュ330の位置の組み合わせに基づいて補正値又は圧力設定値を特定する手法は、テーブルを用いてもよいし、数式モデルを用いてもよい。
【0206】
他の例としては、例えば、補正制御部604は、スクリュ330の周方向の位置、及びスクリュ330の速度の組み合わせに基づいて、補正値を特定してもよい。さらには、補正制御部604が、スクリュ330の周方向の位置、及びスクリュ330の速度の組み合わせに基づいて特定された圧力設定値を特定し、圧力制御部606が、特定された圧力設定値に従って圧力制御を行ってもよい。
【0207】
他の例としては、補正制御部604は、スクリュ330の軸方向の位置、及びスクリュ330の速度の組み合わせに基づいて、補正値を特定してもよい。さらには、補正制御部604が、スクリュ330の軸方向の位置、及びスクリュ330の速度の組み合わせに基づいて特定された圧力設定値を特定し、圧力制御部606が、特定された圧力設定値に従って圧力制御を行ってもよい。
【0208】
このように、スクリュ330の周方向の位置、及びスクリュ330の位置、及びスクリュの速度のうち2つの要素の組み合わせに基づいて、補正値又は圧力設定値を特定する場合であっても、特定された補正値で検出値を補正したり、補正された圧力設定値で圧力制御したりできるので、検出精度の向上や圧力制御の精度向上を実現できる。
【0209】
さらには、2つ以上の要素の組み合わせで補正値を特定する手法に制限するものではなく、一つの要素から補正値を特定してもよい。例えば、スクリュ330の周方向の位置に基づいて、補正値や圧力設定値を特定してもよい。また、スクリュ330の軸方向の位置に基づいて、補正値や圧力設定値を特定してもよい。また、スクリュ330の速度に基づいて、補正値や圧力設定値を特定してもよい。
【0210】
上述した実施形態及び変形例においては、射出・計量工程で圧力制御の精度を向上するとともに、ショット間の樹脂圧による力の検出値のばらつきを低減できる。これにより、成形材料を充填させるための圧力制御や、樹脂圧による力の検出の精度を向上させることができる。
【0211】
以上、本発明に係る射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【0212】
本願は、2021年3月31日に出願した日本国特許出願2021-061135号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0213】
10・・・射出成形機 300・・・射出装置 330・・・スクリュ 340・・・計量モータ 350・・・射出モータ 700・・・制御装置 601・・・補正情報記憶部 602・・・取得部 603・・・登録部 604・・・補正制御部 605・・・表示制御部 606・・・圧力制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15