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  • 特許-コンクリートスラブの仕上げ管理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】コンクリートスラブの仕上げ管理方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/10 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
E04G21/10 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021112962
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009566
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】浦野 真次
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-117950(JP,A)
【文献】特開2021-050469(JP,A)
【文献】特開2015-142964(JP,A)
【文献】特開2020-020117(JP,A)
【文献】特開2020-176483(JP,A)
【文献】特開2020-059979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートスラブ打設工事における表面の仕上げ作業を管理する方法であって、
所定の計測位置におけるコンクリートの表面に土壌硬度計を配置して、硬度を計測するステップと、計測した硬度が所定の閾値に達した際に、コンクリートの表面の押え作業を開始するとともに、所定の基準時からの経過時間を取得するステップと、その後、取得した経過時間と仕上げ精度に基づいて、コンクリートの表面の仕上げ作業を開始するステップとを有することを特徴とするコンクリートスラブの仕上げ管理方法。
【請求項2】
土壌硬度計は、山中式土壌硬度計であり、閾値として25mmの指標硬度を用いることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートスラブの仕上げ管理方法。
【請求項3】
均し後からの経過時間を取得することを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリートスラブの仕上げ管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスラブの仕上げ管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートスラブ打設後の押え作業は、(1)レベル出し(かき板均し)→(2)定規ずり→(3)アマ出し(機械コテ(円盤)使用)→(4)金ゴテ仕上げ(機械コテ(プロペラ)使用)の作業順序で概ね行われる。コンクリートスラブの仕上げ精度は、高い精度が要求される順に、直仕上げ>塗床仕上げ下地>防水下地やカーペット下地となっており(図4を参照)、高い精度が要求されるスラブほど、不陸調整に時間を要し、金ゴテによる仕上げ作業が何度も繰り返されることになる。
【0003】
各仕上げ作業のタイミングは、コンクリートの凝結硬化速度によって異なり、実施工においてはそのタイミングの把握が重要であるが、従来はコンクリート表面のツヤ、足跡を付けた際の沈み具合など、作業者の感覚によってそのタイミングの把握がなされていた。このため、施工品質は作業者の技量に左右される傾向にあった。
【0004】
一方、本特許出願人は、コンクリートスラブの施工管理方法に関して、既に特許文献1、2に記載のものを提案している。特許文献1は、コンクリートの表面の硬度を計測し、計測した硬度をコンクリートの貫入抵抗値に換算し、換算した貫入抵抗値に基づいてコンクリートの凝結時間を判定するものである。特許文献2は、打設したコンクリートの貫入抵抗値を測定し、測定した貫入抵抗値に基づいて、打設したコンクリートの表面を仕上げるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-117950号公報
【文献】特開2021-50469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年の建設業従事者の減少に伴い、左官工の熟練技術者が減少しており、安定した施工品質を確保することが難しくなってきている。このため、熟練技術者の感覚のみに頼らずに、要求される仕上げ精度に対応して、仕上げ作業のタイミングを容易に把握することができる技術が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、要求される仕上げ精度に対応して、仕上げ作業のタイミングを容易に把握することができるコンクリートスラブの仕上げ管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るコンクリートスラブの仕上げ管理方法は、コンクリートスラブ打設工事における表面の仕上げ作業を管理する方法であって、所定の計測位置におけるコンクリートの表面に土壌硬度計を配置して、硬度を計測するステップと、計測した硬度が所定の閾値に達した際に、コンクリートの表面の押え作業を開始するとともに、所定の基準時からの経過時間を取得するステップと、その後、取得した経過時間と仕上げ精度に基づいて、コンクリートの表面の仕上げ作業を開始するステップとを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの仕上げ管理方法は、上述した発明において、土壌硬度計は、山中式土壌硬度計であり、閾値として25mmの指標硬度を用いることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの仕上げ管理方法は、上述した発明において、均し後からの経過時間を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコンクリートスラブの仕上げ管理方法によれば、コンクリートスラブ打設工事における表面の仕上げ作業を管理する方法であって、所定の計測位置におけるコンクリートの表面に土壌硬度計を配置して、硬度を計測するステップと、計測した硬度が所定の閾値に達した際に、コンクリートの表面の押え作業を開始するとともに、所定の基準時からの経過時間を取得するステップと、その後、取得した経過時間と仕上げ精度に基づいて、コンクリートの表面の仕上げ作業を開始するステップとを有するので、要求される仕上げ精度に対応して、仕上げ作業のタイミングを容易に把握することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの仕上げ管理方法によれば、土壌硬度計は、山中式土壌硬度計であり、閾値として25mmの指標硬度を用いるので、仕上げ作業のタイミングを山中式土壌硬度計の読み値を利用して簡易に把握することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの仕上げ管理方法によれば、均し後からの経過時間を取得するので、仕上げ作業のタイミングを均し後からの経過時間を利用して簡易に把握することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係るコンクリートスラブの仕上げ管理方法の実施の形態を示す概略フロー図である。
図2図2は、金ゴテ押えのタイミングの一例を示すテーブル図である。
図3図3は、土壌硬度計の計測位置の一例を示すスラブ平面図である。
図4図4は、従来のコンクリートスラブの仕上げ方式と精度測定例を示すテーブル図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るコンクリートスラブの仕上げ管理方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
(本発明の基本原理)
まず、本発明の基本原理を説明する。
本発明は、土壌の硬さを測定するのに用いる土壌硬度計を使用して、コンクリートの凝結硬化の状態を把握し、これにより金ゴテ押えのタイミングを推定するものである。アマ出しのタイミングまでは、測定跡の補修は容易なため、各所で土壌硬度計による測定を実施する。また、使用するコンクリート、打ち込みのタイミングが異なる場所ごとに実施する。金ゴテ仕上げに入る段階になると、測定跡の補修が難しくなるため、均し後から土壌硬度計の硬度が閾値(例えば25mm)になるまでの時間をベースに、その後の凝結硬化を予測して設定する。図2に、施工するスラブ用途と仕上げ作業内容の目安を示す。なお、図2は普通ポルトランドセメントを使用した場合の目安であり、セメント種類が変わる場合や、より精緻に仕上げ時間を把握したい場合は、事前の試験により目安値を取得することが望ましい。
【0017】
(土壌硬度計)
土壌硬度計は、山中式土壌硬度計を用いることが望ましい。計測する場合は、計測位置において、コンクリートのブリーディングがひいて水分が見えなくなった後、土壌硬度計を水平に持ち、土壌硬度計の先端の円錐部をコンクリート表面に円錐部上のつばが密着するまで確実に押し付ける。土壌硬度計の本体の指標が移動しないように静かに円錐部を引き抜き、本体の硬度目盛の値(指標硬度)を読む。
【0018】
コンクリート用型枠の近傍は、型枠にコンクリート中の水分を奪われることで他の部位よりも凝結硬化が速い傾向にあるため、土壌硬度計の計測位置は、型枠から50cm以上スラブの中央側(内側)の位置とするのがよい。計測は、原則として、打込みの開始位置のみとすることが好ましい。なお、打込み途中で中断が発生した場合は、図3に示すように、打込み開始位置に設定した計測位置1の他に、打込み再開位置にて新たに土壌硬度計の計測位置2を設定し、以降の打込み位置の凝結硬化を把握することが望ましい。
【0019】
ブリーディング水の上昇が確認される間は実施しなくてよい。ブリーディング水の上昇が停止したことを確認し、30分間隔を基本として計測行う。なお、n回目の計測値が(n-1)回目と同じである場合は計測間隔を1時間に延長してよい。1度の計測で、5回計測を行い、最大値と最小値を除いた3回の平均値を取得することが望ましい。
【0020】
土壌硬度計で計測した指標硬度は、支持強度(N/mm)に換算可能であり、支持強度は貫入抵抗値に換算可能である。上記の特許文献1に記載されているように、コンクリートに対する貫入抵抗値と、土壌硬度計から得た支持強度との関係は、凝結の始発時間に対応する貫入抵抗値3.5N/mmを境に異なる回帰式で表すことができる。貫入抵抗値3.5N/mm以下の場合は、凝結の貫入抵抗値=1.25×支持強度(換算値)+0.3(N/mm)という関係式を用いることができる。貫入抵抗値3.5N/mmを超えた場合は、凝結の貫入抵抗値=1.75×支持強度(換算値)+0.17(N/mm)という関係式を用いることができる。上記の関係式に土壌硬度計から得た支持強度を代入することで、貫入抵抗値を求めることができる。求めた貫入抵抗値に基づいて、コンクリートの凝結時間を推定可能である。この推定結果に基づいて、押え作業(例えば、アマ出し(機械コテ(円盤)使用)、金ゴテ仕上げ(機械コテ(プロペラ)使用))の着手タイミングを決定することができる。
【0021】
(具体的な実施手順)
次に、本実施の形態に係るコンクリートスラブの仕上げ管理方法の具体的な実施手順について、図1を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、まず、施工対象区画にコンクリートを打込む(ステップS1)。打込み順序は、図3に示すように、例えば施工対象区画の平面形状が略矩形の場合は、隅角部の位置を打込みの開始位置として、そこから短辺方向と長辺方向についてジグザグ状に打込みを進めてもよい。
【0023】
次に、均し後からの経過時間の計測を開始する(ステップS2)。
【0024】
次に、打込み開始位置のコンクリートの表面に土壌硬度計を立てて指標硬度を計測する(ステップS3)。こうすることで、コンクリートの硬化状況を把握する。打込み開始位置以降のコンクリートの硬化状況は、打設時のトレーサビリティから経過時間Xを考慮して推定することができる。
【0025】
土壌硬度計による計測は、土壌硬度計の読み値(指標硬度)が予め設定した閾値(例えば25mm)になるまでとする(ステップS4)。そして、読み値が閾値に達した際に(ステップS4でYes)、円盤を装着したハンドトロウェルを用いて、アマ出しの作業を開始する(ステップS5)。その際、均し後からの経過時間をX(基本時間)として取得する。なお、Xは当日打込みを行う各区画でそれぞれ取得することが望ましい。
【0026】
次に、経過時間Xが予め設定した所定の閾値(例えば1.5X)に達したか否かを判定する(ステップS6)。判定の結果、閾値に達した際に(ステップS6でYes)、プロペラを装着したハンドトロウェルを使って仕上げ作業(1回目)を行う(ステップS7)。
【0027】
次に、仕上げ作業を実施した回数が、予め設定したスラブ用途に必要な回数以上か否かを判定する(ステップS8)。防水下地やカーペット下地など、特に平滑性が要求されないスラブ用途であれば、必要な仕上げ作業の回数を例えば1回に設定することができる。この場合、仕上げ作業を実施した回数は必要な回数以上であると判定し(ステップS8でYes)、その後、仕上げ作業を終えてよい。
【0028】
直仕上げなど、一定の平滑性が要求されるスラブ用途では、必要な仕上げ作業の回数を例えば2回に設定することができる。仕上げ作業を実施した回数が1回の場合、必要な回数未満であると判定し(ステップS8でNo)、ステップS6に戻る。その後、所定の閾値(例えば2.0X)に達したか否かを判定する。判定の結果、閾値に達した際に(ステップS6でYes)、ハンドトロウェル(プロペラ)で仕上げ作業(2回目)を行った後、フレスノでコテムラをとる。これにより、仕上げ作業を実施した回数は2回となり、ステップS8において、必要な回数(2回)以上であると判定される(ステップS8でYes)。その後、仕上げ作業を終えてよい。
【0029】
より高精度な直仕上げが要求されるケースにおいては、必要な仕上げ作業の回数を例えば3回に設定することができる。仕上げ作業を実施した回数が2回の場合、必要な回数未満であると判定し(ステップS8でNo)、ステップS6に戻る。その後、所定の閾値(例えば2.5X)に達したか否かを判定する。判定の結果、閾値に達した際に(ステップS6でYes)、騎乗式トロウェルを使用して金ゴテで仕上げ作業(3回目)を実施後、フレスノでコテムラをとる。これにより、仕上げ作業を実施した回数は3回となり、ステップS8において、必要な回数(3回)以上であると判定される(ステップS8でYes)。その後、仕上げ作業を終えてよい。
【0030】
本実施の形態によれば、対象とするスラブに要求される仕上げ精度に対応して、仕上げ作業などの押え作業のタイミングを容易に把握することができる。
【0031】
また、熟練工は、コンクリート表面のツヤ、足跡を付けた際の沈み具合でタイミングを評価するのに対し、本実施の形態では、土壌硬度計の読み値をそのままアマ出しの作業タイミングの評価に使用するため、経験の比較的少ない者でも一定の精度で作業タイミングの評価が可能である。したがって、熟練工の感覚のみに頼らないで、金ゴテによる仕上げ作業の施工管理を容易に行うことができる。
【0032】
なお、土壌硬度計による計測は非破壊計測ではないため、コンクリート表面に陥没穴があく。しかし、アマ出しのタイミングであれば、すぐに補修可能である。
【0033】
その後の金ゴテ仕上げのタイミングを土壌硬度計で評価することは、補修が困難になるため好ましくない。そこで、本実施の形態では、若干の精度低下は許容し、均し時を基準時として、均し後から土壌硬度計の読み値が閾値(例えば25mm)になるまでの経過時間を基本時間Xとしている。そして、図2に示すように、この基本時間Xに対して、仕上げ精度に応じて設定した係数(1.5、2.0、2.5等)を乗じて得られる時間を、その後の金ゴテ仕上げのタイミングとして予測するようにしている。
【0034】
以上説明したように、本発明に係るコンクリートスラブの仕上げ管理方法によれば、コンクリートスラブ打設工事における表面の仕上げ作業を管理する方法であって、所定の計測位置におけるコンクリートの表面に土壌硬度計を配置して、硬度を計測するステップと、計測した硬度が所定の閾値に達した際に、コンクリートの表面の押え作業を開始するとともに、所定の基準時からの経過時間を取得するステップと、その後、取得した経過時間と仕上げ精度に基づいて、コンクリートの表面の仕上げ作業を開始するステップとを有するので、要求される仕上げ精度に対応して、仕上げ作業のタイミングを容易に把握することができる。
【0035】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの仕上げ管理方法によれば、土壌硬度計は、山中式土壌硬度計であり、閾値として25mmの指標硬度を用いるので、仕上げ作業のタイミングを山中式土壌硬度計の読み値を利用して簡易に把握することができる。
【0036】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの仕上げ管理方法によれば、均し後からの経過時間を取得するので、仕上げ作業のタイミングを均し後からの経過時間を利用して簡易に把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係るコンクリートスラブの仕上げ管理方法は、コンクリートスラブの施工管理に有用であり、特に、スラブ用途ごとに要求される仕上げ精度に対応して、仕上げ作業のタイミングを容易に把握するのに適している。
図1
図2
図3
図4