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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】研磨組成物およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250304BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20250304BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20250304BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021536263
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 US2019029138
(87)【国際公開番号】W WO2020131155
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】62/781,648
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/356,685
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バイェステロス、カール
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ、アブフダヤ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、エリック
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-507739(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163847(WO,A1)
【文献】特開2006-179678(JP,A)
【文献】特開2016-222867(JP,A)
【文献】特開2000-144111(JP,A)
【文献】特開2012-084906(JP,A)
【文献】特開2006-100835(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0107289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの研磨剤;
12からC 32 の炭化水素基を含む疎水性部分と、ホスフェート基およびホスホネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含む親水性部分とを含み、前記疎水性部分および前記親水性部分が0個のアルキレンオキシド基によって分離されている、少なくとも1つの窒化物除去速度低減剤;
酸または塩基;および
水;
を含み、塩を含まず、2~6.5のpHを有し、少なくとも酸化ケイ素で覆われた少なくとも窒化ケイ素パターンを含むパターン化ウェハーを研磨するときに、少なくとも10:1の酸化ケイ素の除去速度対窒化ケイ素の除去速度の比を有する、研磨組成物。
【請求項2】
前記疎水性部分がC14からC32の炭化水素基を含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項3】
前記疎水性部分がC16からC22の炭化水素基を含む、請求項1又は請求項2に記載の研磨組成物。
【請求項4】
前記親水性部分がホスフェート基またはホスホネート基を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの窒化物除去速度低減剤が、リン酸ラウリル、リン酸ミリスチル、リン酸ステアリル、オクタデシルホスホン酸、リン酸オレイル、リン酸ベヘニル、リン酸ラッセリル、オレス-3-ホスフェート、およびオレス-10-ホスフェートからなる群より選択される、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの研磨剤が、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、それらの共形成生成物、被覆研磨剤、表面改質研磨剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの研磨剤が、カチオン性研磨剤、中性の研磨剤、及びアニオン性研磨剤からなる群より選択される、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項8】
前記研磨剤が、シリカ系研磨剤である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項9】
さらに、少なくとも1つのディッシング低減剤を含み、
前記少なくとも1つのディッシング低減剤は、ヒドロキシル基、スルフェート基、ホスホネート基、ホスフェート基、スルホネート基、アミン基、ニトレート基、ニトライト基、カルボキシレート基、およびカーボネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含む化合物である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのディッシング低減剤が、多糖類および置換多糖類からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項11】
窒化ケイ素に対する酸化ケイ素の除去速度の選択性が少なくとも25:1であり、多くとも1000:1である、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項12】
前記組成物は酸化ケイ素のディッシングが多くとも1000Åであり、および少なくとも0Åである、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項13】
前記組成物は酸化ケイ素のディッシングが多くとも375Åである、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項14】
前記組成物は窒化ケイ素の浸食が多くとも500Åであり、少なくとも0Åである、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項15】
前記組成物は窒化ケイ素の浸食が多くとも75Åである、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項16】
前記組成物は平坦化効率が少なくとも14%である、請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項17】
前記組成物は平坦化効率が少なくとも14%であり、多くとも100%である、請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項18】
前記組成物を用いてパターン化ウェハーを研磨するとき、前記組成物は直径300mmのパターン化ウェハー上に多くとも175の欠陥を生成する、請求項1~請求項17のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項19】
前記研磨組成物が、ポリマーを含まない、請求項1~請求項18のいずれか1項に記載の研磨組成物。
【請求項20】
少なくとも窒化ケイ素および少なくとも酸化ケイ素を有する基板の表面上に、請求項1~請求項19のいずれか1項に記載の研磨組成物を適用すること、
パッドを前記基板の表面と接触させ、前記基板に対して前記パッドを移動させること、を含む方法。
【請求項21】
前記窒化ケイ素および前記酸化ケイ素のうちの少なくとも1つが、炭素、窒素、酸素、および水素からなる群より選択される少なくとも1つのドーパントでドープされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基板から半導体デバイスを形成することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記基板から半導体デバイスを形成することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨組成物およびそれを使用する方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年3月18日に出願された米国実用出願シリアル番号16/ 356,685に優先権を主張し、2018年12月19日に出願された米国仮出願第62/781,648に優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
半導体産業はプロセスと集積化の革新によるデバイスのさらなる微細化により、チップ性能を向上させるために絶えず駆動されている。化学的機械研磨/平坦化(CMP)はトランジスタレベルで多くの複雑な集積方式を可能にし、それによってチップ密度の増加を容易にする、強力な技術である。
【発明の概要】
【0004】
トランジスタは一般に、FEOL(Front End of Line)トランジスタ製造工程で製造される。FEOL材料積層体は、典型的には金属ゲートと、誘電体材料の複数の積層体とを含む。各集積回路における何十億もの活性要素の電気的絶縁はFEOLにおける目標であり、浅いトレンチ分離(STI)プロセスを用いて達成され得る。STIプロセスの一部は、説明のために図1に示されている。図1から分かるように、STI CMPプロセスの前に、シリコン(例えば、シリコンウェハー)(図1(a))の上に熱酸化シリコンおよびSiNを堆積させ、次いで、トレンチ/分離および「活性」非トレンチ領域を形成するためにエッチングアウトさせ(領域を含むトランジスタを形成する)(図1(b))、その後、これらのトレンチ/分離領域はトレンチ内の活性非トレンチ領域がシリコン酸化物によって隔離され得るように(例えば、プラズマ増強化化学蒸着(PECVD)酸化シリコン(例えば、TEOS)をトレンチ内に堆積させることによって)充填することができ(図1(c))、その後、活性非トレンチ領域の上の「オーバーロード/エクストラ」シリコン酸化物を、浅いトレンチ内にシリコン酸化物を維持しながら選択的に除去することができる(図1(d)))。酸化ケイ素の選択的除去は浅いトレンチ分離(STI)化学的機械研磨/平坦化(CMP)プロセスによって達成される。ここで、窒化ケイ素(例えば、SiN)に対する酸化ケイ素の高い材料除去速度(MRR)選択性を有するCMPスラリー組成物(本開示に記載されるものなど)は、好ましくは実質的に窒化ケイ素(ストップオン層)を除去することなく、高い率で酸化ケイ素を除去するために使用される。上記のSTI CMPステップの後、エッチングを使用して、シリコンを露出させて、分離を完了し、活性非トレンチ領域内に形成された隣接するトランジスタが互いに接触するのを防止し、それによって、電気回路のショートを防止することができる。
【0005】
STIで広く使用されている誘電体膜は窒化ケイ素(例えば、SiN)、酸化ケイ素(例えば、TEOS:テトラエチルオルソシリケート)、ポリシリコン(P-Si)、炭窒化ケイ素(例えば、SiCN)、および低誘電率(low-k)/超低誘電率誘電体膜(例えば、SiCOH)である。45nmでのhigh‐kメタルゲート技術と22nmチップ生産でのFinFET技術の導入により、SiN、TEOS、SiCNおよびP-Si膜がFEOLにおいてより頻繁にそしてより多くの応用において使用され始めている。加えて、配線工程(BEOL)では、従来のバリア材料(例えば、Ta/TaNまたはTi/TiN)の抵抗率が先進的なサブ10nm製造ノードのために効果的にスケールダウンしないことが示されているように、これらのバリア材料は様々なBEOL材料スタックのために、SiN、TEOS、SiCN、およびP-Siのような誘電体によって置き換えることができる。したがって、FEOLおよびBEOLの両方に対して、これらの誘電体膜は、エッチストップ層、キャッピング材料、スペーサ材料、追加ライナー、拡散/不動態化障壁、ハードマスクおよび/またはストップオン層として使用することができる。
【0006】
一般に、誘電体膜は、高度な半導体製造においてはるかに汎用的に使用されている。CMPの観点から、誘電体を組み込んだこれらの集積化のほとんどは、SiNを除去することができるがTEOS/P-Siを除去(停止)できないスラリー、またはTEOS/P-Siを除去することができるがSiNを除去(停止)できないスラリーのような、これらの膜を加工/研磨および/または停止することができる研磨組成物(スラリー)を必要とする。
【0007】
本開示はSiCN(炭窒化ケイ素)のような窒化ケイ素および関連するケイ素および窒素ベースの膜上で非常に低い研磨/除去速度を達成しながら、多種多様な材料(例えば、酸化ケイ素などの酸化物)を選択的に研磨することができる安定な水性スラリーに関する。例えば、研磨組成物は比較的速い物質除去速度(MRR)で酸化ケイ素(例えば、SiO)を研磨し、非常に遅い率で窒化ケイ素(例えば、SiN)または関連する膜上で止まるか、または研磨することができる。例えば、本明細書に記載の研磨組成物によって除去することができる酸化ケイ素には、TEOSから選択される酸化ケイ素、熱酸化物(TOX)(例えば、裸のケイ素のオートクレーブ誘起酸化によって引き起こされる)、プラズマ強化PVD堆積によって形成される酸化ケイ素(例えば、高密度プラズマまたは高アスペクト比プラズマ)、プラズマ表面硬化後のCVD堆積によって形成される酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素(SiOC)、および酸化物前駆体の液体塗布に続いて光または熱誘起硬化によって形成される酸化ケイ素が含まれる。ある例では、高MRRで除去されるターゲット膜が酸化シリコン誘電体ではなく、金属または金属酸化物または金属窒化物であり得る。金属、金属酸化物、金属窒化物の一般的な例としては、金属としては銅、コバルト、ルテニウム、アルミニウム、チタン、タングステン、タンタルが、金属酸化物としては酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、およびルテニウム、アルミニウム、チタン、タングステン、タンタルの窒化物が挙げられる。そのような場合、ストップオン/低除去速度膜は依然として窒化ケイ素膜であり得、したがって、本開示からの窒化物除去速度低減剤を含有する研磨組成物は所望の選択性を達成するために利用され得る。
【0008】
より詳細には、本開示が研磨剤、窒化物除去速度低減剤、酸または塩基、水、および任意選択でディッシング低減剤(例えば、アニオンディッシング剤)を含む研磨組成物に関する。本明細書に記載される研磨組成物のpHは、2~6.5の範囲、またはより具体的には2~4.5の範囲であり得る。本開示の組成物はまた、(例えば、使用時点で)希釈して、性能を低下させることなく研磨組成物を形成することができる。本開示はまた、前述の研磨組成物を使用して半導体基板を研磨するための方法を論じる。
【0009】
一態様では、本明細書に開示される実施形態が少なくとも1つの研磨剤、少なくとも1つの窒化物除去速度低減剤、酸または塩基、および水を含む研磨組成物に関する。窒化物除去速度低減剤はC12からC40の炭化水素基を含む疎水性部分と、スルフィナイト基、スルフェート基、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、およびホスホネート基からなる群より選択される少なくとも1つを含む親水性部分とを含み、疎水性部分および親水性部分は、0~10個のアルキレンオキシド基によって分離されている。研磨組成物は、約2~約6.5のpHを有する。
【0010】
別の態様では本明細書に開示される実施形態が少なくとも1つの研磨剤と、疎水性部分および親水性部分を含む少なくとも1つの窒化物除去速度低減剤と、酸または塩基と、水とを含み、研磨組成物は約2~約6.5のpHを有し、研磨組成物は少なくとも窒化ケイ素パターンを含むパターン化ウェハーを研磨する間に、窒化ケイ素の除去速度に対する酸化ケイ素の除去速度の比が少なくとも約3:1であり、窒化ケイ素パターンは少なくとも酸化ケイ素(および任意選択で、金属または誘電体などの他の材料)で覆われる、研磨組成物に関する。
【0011】
さらに別の態様では、本明細書に開示される実施形態が少なくとも1つの研磨剤と、疎水性部分および親水性部分を含む少なくとも1つの窒化物除去速度低減剤と、酸または塩基と、水とを含み、研磨組成物が約2~約6.5のpHを有し、研磨組成物で少なくとも酸化ケイ素で覆われた少なくとも窒化ケイ素パターンを含むパターン付きウェハーを研磨するときに約1000オングストローム未満の酸化ケイ素ディッシングが生じ、研磨によってパターン付きウェハー上の窒化ケイ素パターンが露出される研磨組成物に関する。
【0012】
さらに別の態様では、本明細書に開示される実施形態が少なくとも1つの研磨剤と、疎水性部分および親水性部分を含む少なくとも1つの窒化物除去速度低減剤と、酸または塩基と、水とを含み、研磨組成物が約2~約6.5のpHを有し、研磨組成物で少なくとも酸化ケイ素で覆われた少なくとも窒化ケイ素パターンを含むパターン化ウェハーを研磨するときに約500オングストローム未満の窒化ケイ素浸食が生じ、研磨によってパターン化ウェハー上の窒化ケイ素パターンが露出される研磨組成物に関する。
【0013】
さらに別の態様では、本明細書に開示される実施形態が本明細書に記載される研磨組成物を、基板の表面上に少なくとも窒化ケイ素および少なくとも酸化ケイ素を有する基板に塗布するステップと、パッドを基板の表面と接触させるステップと、パッドを基板に対して移動させるステップとを含む方法に関する。
【0014】
同じ組成物における研磨剤、窒化物RR低減剤、および任意のディッシング低減剤の相乗的使用は、現在入手可能なスラリーには見られない独特の利点を提供する。とりわけ、これらの利点には以下のものが含まれる:
【0015】
1.本明細書に記載の組成物は非常に低い窒化ケイ素(例えば、SiN)除去速度を達成することができる。優れた窒化ケイ素保護は、窒化ケイ素除去速度低減剤の賢明な選択と処方/装填によって達成することができる。さらに、低窒化ケイ素除去速度は本開示で実証されるように、ブランケットウェハー(すなわち、窒化ケイ素膜のみを含むウェハー)およびパターンウェハー(すなわち、窒化ケイ素膜および他の膜、例えば、TEOSをパターンでエッチングしたウェハー)の両方で観察される。
【0016】
2.非常に低い窒化ケイ素除去速度は窒化ケイ素の最小損失を得ることを可能にし、それによってパターン化されたウェハー上の窒化ケイ素の非常に低い浸食後研磨を可能にする。
【0017】
3.組成物は、低い酸化ケイ素ディッシング/ステップ高さを達成することができる。ディッシング性能は、ディッシング低減剤の賢明な選択および負荷/濃度によって調整することができる。
【0018】
4.組成物は、多種多様な研磨剤と適合性である。粒子改質によって、研磨剤のゼータ電位を調整して、ターゲットフィルム上の除去速度をさらに調整することができる。アニオン性、カチオン性、および中性研磨剤はすべて、より高い酸化ケイ素除去速度および比較的低い窒化ケイ素除去速度を有する安定なスラリーを形成することができる。
【0019】
5.組成物は、研磨剤として高純度コロイドシリカを有する安定なスラリーを形成することができる。これは、従来使用されているセリア研磨剤(一般に研磨されたウェハー上に大量の欠陥を発生する)で研磨されたウェハーと比較した場合、低い微量金属計数が少なくそして大粒子計数も少ないスラリーの生成を可能にし、その結果、研磨されたウェハー上の欠陥が減少することを可能にする。さらに、本明細書に記載される組成物は従来のシリカベースのSTI CMP組成物の特定の欠点(例えば、それらの高い窒化ケイ素除去速度および酸化ケイ素と窒化ケイ素との低い除去選択性)を克服し得る。
【0020】
6.この組成物は、様々な研磨条件にわたって低い窒化物除去速度を生成する。例えば、窒化ケイ素除去速度は硬質研磨パッド(例えば、ポリウレタンベースのパッド)および軟質研磨パッド(例えば、ポロメリックおよび低ショアD硬度値パッド)の両方で低いままである。加えて、ダウンフォースおよび速度は、ストップオンフィルム挙動がノンプレストニアン(non-prestonian)であるため、良好なCMP特性である窒化ケイ素除去速度に顕著に影響を及ぼさないことが観察されている。本開示の組成物が圧力および速度の関数として除去速度の変動がほとんどないことは、非常に良好なトポグラフィをもたらし、高い歩留まりで、ポストパターン化されたウェハー研磨をもたらす。この分野の言語では、本開示の組成物が窒化ケイ素の浸食/損失の低い値とともに、酸化ケイ素ディッシングおよびステップ高さの低い値をもたらす。
【0021】
本開示の研磨組成物および研磨濃縮物は現在利用可能な現代のスラリーとは対照的に、現在世代の集積回路基板上の性能維持を提供する一方で、次世代基板および集積化スキームのための顕著な利点を同時に表す。本開示の組成物は、窒化ケイ素の除去よりも種々の金属および誘電体を非常に高い選択性でうまくかつ効率的に除去することができる。この組成物は、浅いトレンチ分離(STI)プロセス、自己整合コンタクトプロセス、または極めて低い窒化ケイ素材料除去速度が望まれる他のプロセスに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は半導体製造における浅いトレンチ分離(STI CMPを含む)プロセスにおけるプロセスフローの概略図である。図1(a)は、熱酸化シリコン(TOX)および窒化シリコン(SiN)が浅いトレンチ分離(STI)化学的機械平坦化(CMP)の前にシリコン(Si)の上に堆積されることを示す。これに続いて、活性領域を形成するためにエッチングが行われる。図1(b)は、トレンチがTOXおよびSiNによって覆われたシリコンの活性領域を残して作成されたことを示す。次に、これを誘電体-通常はPE-CVD酸化シリコン(SiO )で満たす。図1(c)は、浅いトレンチで活性領域がシリカ誘電体によって隔離されていることを示している。STIを完成するために、浅いトレンチ内にSiO を保ちながら、活性領域からSiO を選択的に除去する。これは、SiO が高速で除去され、SiN(ストップオン層)が除去されない、本発明の主題であるSTI CMPによって行うことができる。図1(d)はSiNを除去し、STIを完成させるためにSiを露出させるためにエッチングを使用できることを示している。シリコンの活性領域は、いったんゲート、金属配線、およびデバイスの製造が完了すると、トランジスタになるのであろう。
図2図2は、研磨前のSTIパターン化されたウェハー膜積層の概略図である。
図3図3は、本開示によるシリカベースの研磨組成物を使用したSTI CMP後の全体的な欠陥を示すウェハーマップである。
図4図4は、市販のセリア研磨剤含有組成物を用いたSTI CMP後の全体的な欠陥を示すウェハーマップである。
【発明の詳細な説明】
【0023】
本開示は、研磨組成物、およびそれを使用して半導体基板を研磨するための方法に関する。いくつかの実施態様において、本開示は、窒化ケイ素表面上で酸化ケイ素表面を選択的に研磨することに関する。窒化ケイ素上の酸化ケイ素の選択的研磨は半導体製造において重要なプロセスであり、浅いトレンチ分離(STI)プロセス中に一般的に行われる。従来、STI研磨組成物(スラリー)はシリカ研磨剤を使用する組成物が適切に機能していない(例えば、高い窒化ケイ素除去速度)ため、STIプロセスにおいて必要とされる研磨性能(例えば、選択性)を達成するためにセリア研磨剤を利用する。しかしながら、セリア研磨剤はそれらの「無機硬質」性質のために、研磨組成物に使用される場合、高い欠陥率および引っ掻き傷を与えることが知られている。さらに、セリアベースの研磨組成物はシリカベースの研磨組成物よりも短い貯蔵寿命(例えば、より低い貯蔵能力、より低い使用可能期間、およびより早い有効期限)、より短いポットライフ(例えば、容器を開けた後および/または保持タンクもしくは分配ループ中の活性)を示し、セリアはシリカよりも価格の変動性が大きい。さらに、セリアは希土類金属を含み、シリカよりも高価である。本開示による組成物はSTIスラリーのために、セリア研磨剤よりも柔らかいシリカ研磨剤の使用を可能にする。シリカ含有研磨組成物は窒化ケイ素(例えば、SiN)上の酸化ケイ素(例えば、TEOS)の材料除去速度(MRR)において非常に良好な選択性を与えることができ、同時に、セリア研磨剤を利用するSTIプロセスと比較した場合、非常に低い欠陥率を有する研磨されたウェハー表面を提供することもできる。したがって、本出願による研磨組成物は、セリア研磨剤を利用する従来の研磨組成物と比較して、ウェハーのデバイス歩留まりを増加させることができる。
【0024】
本明細書に記載の研磨組成物は(a)研磨剤、(b)窒化物除去速度低減剤、(c)酸または塩基、(d)水、および任意に(e)ディッシング低減剤(例えば、アニオン性ディッシング低減剤)を含むことができる。研磨組成物は、少なくとも約2~最大約6.5のpHを有することができる。本開示の研磨組成物は、窒化ケイ素を研磨する上で誘電体または金属を研磨するための高い選択性を有することができる。本開示はまた、半導体基板を研磨するために研磨組成物を使用する方法を提供する。特に、本開示は、窒化ケイ素に対して高い選択性を有する誘電体または金属を研磨するための方法を提供する。
【0025】
1つ以上の実施形態では少なくとも1つ(例えば、2つまたは3つ)の研磨剤はカチオン性研磨剤、実質的に中性の研磨剤、およびアニオン性研磨剤から選択される。1つまたは複数の実施形態では、少なくとも1つの研磨剤がアルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、それらの共成形製品、被覆研磨剤、表面改質研磨剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの研磨剤はセリアを含まない。
【0026】
1つまたは複数の実施形態では、研磨剤がコロイドシリカ、ヒュームドシリカ、およびそれらの混合物からなる群より選択されるものなどのシリカベースの研磨剤である。1つ以上の実施形態では、研磨剤が有機基および/または非ケイ質無機基で修飾された表面を有する。例えば、カチオン性研磨剤は、式(I)の末端基を含むことができる:
【0027】
-Om -X-(CH)n -Y (I)
ここで、m は1 ~3 の整数、n は1 ~10 の整数、X はAl、Si、Ti、またはZrであり、Y はカチオン性アミノ基またはチオール基である。別の例として、アニオン性研磨剤は、式(I)の末端基を含むことができる:
【0028】
-Om -X-(CH)n -Y (I)
ここで、m は1 ~3 の整数、n は1 ~10 の整数、X はAl、Si、Ti、またはZrであり、Y は酸基である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの研磨剤は組成物の総重量に基づいて、本明細書に記載の研磨組成物中に少なくとも約0.05重量%(例えば、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約3重量%、または少なくとも約5重量%)~最大約20重量%(例えば、最大約15重量%、最大約10重量%、最大約8重量%、最大約6重量%、最大約4重量%、または最大約2重量%)の量で存在することができる。
【0029】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される研磨剤が少なくとも約1nm(例えば、少なくとも約5nm、少なくとも約10nm、少なくとも約20nm、少なくとも約40nm、少なくとも約50nm、少なくとも約60nm、少なくとも約80nm、または少なくとも約100nm)~最大約1000nm(例えば、最大約800nm、最大約600nm、最大約500nm、最大約400nm、または最大約200nm)の平均粒子サイズを有することができる。本明細書で使用されるように、平均粒子サイズ(MPS)は、動的光散乱技法によって決定される。
【0030】
1つ以上の実施形態では、少なくとも1つ(例えば、2つまたは3つの別個の)窒化物除去速度低減剤はC12からC40の炭化水素基(例えば、アルキル基および/またはアルケニル基を含有する)を含有する疎水性部分と、スルフィナイト基、スルフェート基、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、およびホスホネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含有する親水性部分とを含む化合物である。1つ以上の実施形態において、疎水性部分および親水性部分は0~10個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、または9個)のアルキレンオキシド基(例えば、nが1、2、3、または4であり得る-(CH)nO-基)によって分離される。1つ以上の実施形態では、窒化物除去速度低減剤が疎水性部分と親水性部分とを分離するゼロアルキレンオキシド基を有する。理論に束縛されることを望むものではないが、窒化物除去速度低減剤内のアルキレンオキシド基の存在はスラリー安定性の問題を引き起こし、窒化ケイ素除去速度を増加させるので、いくつかの実施形態では好ましくないと考えられる。
【0031】
1つ以上の実施形態では、窒化物除去速度低減剤が組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.1ppm(例えば、少なくとも約0.5ppm、少なくとも約1ppm、少なくとも約5ppm、少なくとも約10ppm、少なくとも約25ppm、少なくとも約50ppm、少なくとも約75ppm、または少なくとも約100ppm)~最大約1000ppm(例えば、最大約900ppm、最大約800ppm、最大約700ppm、最大約600ppm、最大約500ppm、または最大約250ppm)の量で本明細書に記載の研磨組成物に含まれる。
【0032】
1つ以上の実施形態では、窒化物除去速度低減剤が少なくとも12個の炭素原子(C12)(例えば、少なくとも14個の炭素原子(C14)、少なくとも16個の炭素原子(C16)、少なくとも18個の炭素原子(C18)、少なくとも20個の炭素原子(C20)、または少なくとも22個の炭素原子(C22))および/または最大40個の炭素原子(C34)(例えば、最大38個の炭素原子(C38)、最大36個の炭素原子(C36)、最大34個の炭素原子(C34)、最大32個の炭素原子(C32)、最大30個の炭素原子(C30)、最大28個の炭素原子(C28)、最大26個の炭素原子(C26)、最大24個の炭素原子(C24)、または最大22個の炭素原子(C22))を含む炭化水素基を含む疎水性部を有する。本明細書で言及される炭化水素基は炭素および水素原子のみを含有する基を指し、飽和基(例えば、直鎖、分枝鎖、または環状アルキル基)および不飽和基(例えば、直鎖、分枝鎖、または環状アルケニル基;直鎖、分枝鎖、または環状アルキニル基;または芳香族基(例えば、フェニルまたはナフチル))の両方を含むことができる。1つ以上の実施形態において、窒化物除去速度低減剤の親水性部分は、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも1つの基を含む。「ホスホネート基」という用語は、ホスホン酸基を含むことを明確に意図することに留意されたい。
【0033】
1つまたは複数の実施形態では、窒化物除去速度低減剤がナフタレンスルホン酸-ホルマリン縮合物、リン酸ラウリル、リン酸ミリスチル、リン酸ステアリル、オクタデシルホスホン酸、リン酸オレイル、リン酸ベヘニル、硫酸オクタデシル、リン酸ラッセリル、オレイス-3-フォスフェート、およびオレイス-10-フォスフェートからなる群より選択される。
【0034】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される研磨組成物が任意選択で、少なくとも1つ(例えば、2つまたは3つ)のディッシング低減剤(例えば、アニオン性ディッシング低減剤)をさらに含む。1つ以上の実施形態では、少なくとも1つのディッシング低減剤がヒドロキシ、サルフェート、ホスホネート、ホスフェート、スルホネート、アミン、ニトレート、ニトライト、カルボキシレート、およびカーボネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含む化合物である。1つ以上の実施形態では、少なくとも1つのディッシング低減剤は、多糖類および置換多糖類からなる群より選択される少なくとも1つである。1つ以上の実施形態において、少なくとも1つのディッシング低減剤は、カラギーナン、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1つである。1つまたは複数の実施形態では、少なくとも1つの窒化物除去速度低減剤および少なくとも1つのディッシング低減剤が互いに化学的に異なる。
【0035】
1つ以上の実施形態において、ディッシング低減剤は組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.1ppm(例えば、少なくとも約0.5ppm、少なくとも約1ppm、少なくとも約5ppm、少なくとも約10ppm、少なくとも約25ppm、少なくとも約50ppm、少なくとも約75ppm、または少なくとも約100ppm)~最大約1000ppm(例えば、最大約900ppm、最大約800ppm、最大約700ppm、最大約600ppm、または最大約500ppm)の量で、本明細書に記載の研磨組成物に含まれる。
【0036】
1つ以上の実施形態において、酸は、ギ酸、酢酸、マロン酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、シュウ酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、2-ホスホノ-1、2,4-ブタントリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、アミノ酢酸、過酢酸、酢酸カリウム、フェノキシ酢酸、グリシン、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、チロシン、安息香酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、塩酸、過ヨウ素酸及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0037】
1つ以上の実施形態において、塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化リチウム、イミダゾール、トリアゾール、アミノトリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ピラゾール、イソチアゾール、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0038】
1つ以上の実施形態では、酸または塩基が組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.01重量%(例えば、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、または少なくとも約1重量%)~最大約10重量%(例えば、最大約8重量%、最大約6重量%、最大約5重量%、最大約4重量%、または最大約2重量%)の量で本明細書に記載の研磨組成物中に存在することができる。例えば、酸または塩基は、研磨組成物のpHを所望の値に調整するのに十分な量で添加することができる。
【0039】
1つ以上の実施形態において、水は組成物の総重量に基づいて、少なくとも約50重量%(例えば、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、または少なくとも約75重量%)~最大約99.9重量%(例えば、最大約99.5重量%、最大約99重量%、最大約97重量%、最大約95重量%、または最大約90重量%)の量で、本明細書に記載の研磨組成物(例えば、液体媒体またはキャリアとして)に存在することができる。
【0040】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物が少なくとも約2(例えば、少なくとも約2.5、少なくとも約3、少なくとも約3.5、または少なくとも約4)~最大約6.5(例えば、最大約6、最大約5.5、最大約5、または最大約4.5)のpHを有することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、6.5を超えるpHを有する研磨組成物は酸化ケイ素/窒化ケイ素除去速度選択性を低下させ得、安定性の問題を有すると考えられる。
【0041】
1つまたは複数の実施形態では、本明細書に記載される研磨組成物が塩(例えば、ハロゲン化物塩)、ポリマー(例えば、カチオン性またはアニオン性ポリマー、またはディッシング低減剤以外のポリマー)、界面活性剤(例えば、窒化物除去速度低減剤以外のもの)、可塑剤、酸化剤、腐食防止剤(例えば、アゾールまたは非アゾール腐食防止剤)、および/または特定の研磨剤(例えば、セリア研磨剤または非イオン性研磨剤)などの特定の成分の1つまたは複数を実質的に含まなくてもよい。研磨組成物から除外することができるハロゲン化物塩には、アルカリ金属ハロゲン化物(例えば、ハロゲン化ナトリウムまたはハロゲン化カリウム)またはハロゲン化アンモニウム(例えば、塩化アンモニウム)が含まれ、塩化物、臭化物、またはヨウ化物であってもよい。本明細書で使用されるように、研磨組成物から「実質的に含まない」成分は、研磨組成物に意図的に添加されない成分を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物が研磨組成物を実質的に含まない上記成分の1つ以上を最大で約1000ppm(例えば、最大で約500ppm、最大で約250ppm、最大で約100ppm、最大で約50ppm、最大で約10ppm、または最大で約1ppm)有することができる。いくつかの実施形態では、記載される研磨組成物が1つ以上の上記成分を完全に含まなくてもよい。
【0042】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される研磨組成物が酸化ケイ素(例えば、TEOS)の除去速度対窒化ケイ素の除去速度(すなわち、除去速度選択性)の比が少なくとも約3:1、または少なくとも約4:1、または少なくとも約5:1、または少なくとも約10:1、または少なくとも約25:1、または少なくとも約50:1、または少なくとも約60:1、または少なくとも約75:1、または少なくとも約100:1、または少なくとも約150:1、または少なくとも約200:1、または少なくとも約250:1、または少なくとも約300:1、または少なくとも約500:1、または少なくとも約750:1、または最大約1000:1、または最大約5000:1である。1つまたは複数の実施形態では、上述の比率がブランケットウェハーまたはパターン化ウェハー(すなわち、窒化ケイ素パターンが少なくとも酸化ケイ素(および任意選択で金属および誘電体などの他の材料)で覆われている、少なくとも窒化ケイ素パターンを含むウェハー)のいずれかを研磨するための除去速度を測定するときに適用可能であり得る。
【0043】
1つ以上の実施形態では、最大約1000オングストローム、最大約500オングストローム、または最大約375オングストローム、または最大約250オングストローム、または最大約200オングストローム、または最大約100オングストローム、または最大約50オングストローム、および/または少なくとも約0オングストロームの酸化シリコン(例えば、TEOS)ディッシングはパターン化されたウェハー(少なくとも酸化シリコンで覆われた少なくとも窒化シリコンパターンを含むことができる)を研磨組成物で研磨するときに(例えば、研磨がパターン化されたウェハー上の窒化シリコンパターンを露出させるまで)生じる。1つまたは複数の実施形態では、多くとも約500オングストローム、または多くとも約400オングストローム、または多くとも約300オングストローム、または多くとも約250オングストローム、多くとも約200オングストローム、多くとも約100オングストローム、または多くとも約75オングストローム、または多くとも約65オングストローム、または多くとも約50オングストローム、または多くとも約32オングストローム、および/または少なくとも約0オングストロームの窒化ケイ素侵食がパターン化ウェハー(少なくとも酸化ケイ素で覆われた少なくとも窒化ケイ素パターンを含むことができる)を研磨組成物で研磨するときに(例えば、研磨がパターン化ウェハー上の窒化ケイ素パターンを露出させるまで)生じる。
【0044】
1つ以上の実施形態では、平坦化効率(すなわち、研磨中に除去される酸化ケイ素ステップ高さの変化を100で割ったもの)は本開示による研磨組成物を使用してパターン付きウェハーを研磨する場合、少なくとも約14%(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約38%、少なくとも約40%、少なくとも約46%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約74%)および最大約100%(例えば、最大約99.9%、最大約99%、最大約95%、最大約90%、最大約80%、最大約70%、および最大約60%)である。1つまたは複数の実施形態では、本開示による研磨組成物(例えば、シリカ研磨剤および窒化物除去速度低減剤を含む組成物)を使用してパターン化ウェハーを研磨する場合、12インチ(すなわち、約300mm)の直径を有するパターン化ウェハー上の総欠陥数は最大で175(例えば、最大で170、最大で160、最大で150、最大で125、最大で100、最大で75、最大で50、最大で25、最大で10、または最大で5)である。本明細書に記載されるように、カウントされる欠陥は、サイズが少なくとも約90nmのものである。
【0045】
1つまたは複数の実施形態では、本開示が本開示による研磨組成物を、基板の表面上に少なくとも窒化ケイ素および酸化ケイ素を有する基板(例えば、ウェハー)に塗布するステップと、パッドを基板の表面と接触させるステップと、パッドを基板に対して移動させるステップとを含むことができる研磨方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、基板が少なくとも酸化ケイ素(例えば、シリコン系誘電体(例えば、炭化ケイ素など)、金属、金属酸化物および窒化物などの他の材料の存在下で酸化ケイ素)で被覆された少なくとも窒化ケイ素パターンを含む場合、上記の方法は窒化ケイ素を露出するために、酸化ケイ素(例えば、活性な、非トレンチ領域上の酸化ケイ素)の少なくとも一部を除去することができる。本明細書に記載される用語「窒化ケイ素」および「酸化ケイ素」は、窒化ケイ素および/または酸化ケイ素のドープされていないバージョンおよびドープされたバージョンの両方を含むことが明確に意図されることに留意されたい。例えば、1つまたは複数の実施形態では、窒化ケイ素および酸化ケイ素が独立して、炭素、窒素(酸化ケイ素の場合)、酸素、水素、または窒化ケイ素または酸化ケイ素のための任意の他の公知のドーパントから選択される少なくとも1つのドーパントでドープすることができる。シリコン酸化膜の種類の例としては、例えば、TEOS (Tetra-ethyl orthosilicate)、SiOC、SiOCN、SiOCH、SiOH、SiON等が挙げられる。窒化ケイ素膜の種類のいくつかの例は、いくつか挙げると、SiN(純粋な窒化ケイ素)、SiCN、SiCNH、およびSiNHを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物を使用する方法が研磨組成物によって処理された基板から半導体デバイスを製造するための1つまたは複数の追加のステップをさらに含むことができる。例えば、本方法は上述の研磨方法の前に、(1)基板(例えば、シリコンウェハー)上に酸化シリコン(例えば、熱酸化シリコン)を堆積して酸化シリコン層を形成するステップと、(2)窒化シリコン層上に窒化シリコンを堆積して窒化シリコン層を形成するステップと、(3)溝および非溝領域を形成するために基板をエッチングするステップと、(4)溝をシリコン酸化物で満たすためにエッチングされた基板に酸化シリコンを堆積するステップのうちの1つ以上を含むことができる。別の例として、本方法は基板をエッチングする(例えば、窒化ケイ素および酸化ケイ素を除去する)など、上述の研磨方法の後に、シリコンおよび/または酸化ケイ素、または他の不均質膜をウェハー基板上に露出させる少なくとも1つの追加ステップを含むことができる。
【実施例
【0047】
実施例は、本開示の研磨組成物および方法の能力をさらに説明するために提供される。提供される実施例は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、限定するものと解釈されるべきではない。列挙したパーセンテージは特に明記しない限り、重量(wt%)によるものである。実施例に記載される窒化物除去速度低減剤は様々な供給業者から得られたものであり、場合によっては、以下の表に特定されるものよりも小さいかまたは大きい炭素鎖長を有する少量の類似の化合物を含むことができる。表中に特定される炭素鎖長は、窒化物除去速度低減剤の大部分の成分を同定する。
【0048】
実施例1:窒化物停止の実証
この実施例では、サンプル1A~1Fで使用された研磨組成物が主に、3w/w%の中性コロイドシリカ研磨剤、pH調整剤としてのマロン酸、窒化物除去速度低減剤(存在する場合)、および液体キャリアとしての水を含んでいた。研磨組成物のpHは2.3であった。Dow VP6000パッド200mm酸化シリコン(TEOS)および窒化シリコン(SiN)ブランケットウェハー上で研磨するために、Applied Materials Mirra CMPポリッシャを2psiのダウンフォースおよび175mL/minの流速で使用した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果は対照研磨組成(窒化物除去速度低減剤を含まなかった)が酸化ケイ素と窒化ケイ素との間の除去速度選択性が8であることを示した。これは低い窒化ケイ素率を必要とするほとんどの用途に対して低すぎる。しかし、窒化物除去速度低減剤の添加により、研磨組成物の窒化ケイ素除去速度は1Å/minと低くなり、除去速度選択性は868まで上昇した。
【0051】
実施例2:pH範囲および異なる研磨剤表面電荷の実証
この実施例では、サンプル2A~2Iで使用した研磨組成物が3w/w%のコロイド状シリカ研磨剤、pH調整剤としての有機酸、n-オクタデシルホスホン酸、および液体キャリアとしての水を含んでいた。n-オクタデシルホスホン酸は、本明細書に記載の窒化物除去速度低減剤のクラスの代表例である。さらに、この実施例では、表2に示すように、中性、カチオン性、およびアニオン性シリカを使用することによって、コロイド状シリカの電荷を変化させた。研磨組成物のpHは、約2.25から約4.25まで変化させた。Applied Materials Mirra CMPポリッシャを、200mm酸化シリコン(TEOS)および窒化シリコンブランケットウェハーを研磨するために、Dow VP6000パッド上で2psiのダウンフォースおよび175mL/minの流速で使用した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2に示すように、窒化物除去速度低減剤は、中性、カチオン性、およびアニオン性シリカを用いて、約2.25~約4.25のpH範囲で窒化ケイ素除去速度を制御することができた。シリカ研磨剤の表面電荷に関係なく上記システムのロバストな窒化物速度低減は驚くべきことである。例えば、カチオン性研磨剤は、アニオン性窒化物除去速度低減剤との相溶性が低いと一般に考えられている。対照的に、この系では、スラリーは安定なままであり、窒化物除去速度低減剤は活性なままであった。
【0054】
従来、アニオン研磨剤を使用した場合の窒化ケイ素除去速度は、一般的に非常に高く(~400Å/分)、制御が困難である。有意に、本明細書に記載された窒化物除去速度低減剤は、窒化ケイ素除去速度を著しく低減することができた。この種のシステムは、アニオン性研磨剤(例えば炭化ケイ素膜)によって十分に研磨されたフィルム上で高い除去速度で低いTEOSおよび窒化ケイ素除去速度が望まれる場合に有用であり得る。
【0055】
実施例3:窒化物除去速度低減剤のチェーン長さとヘッドタイプの効果の実証
この実施例では、試料3A~3Lで使用した研磨組成物が3w/w%のコロイダルシリカ研磨剤、pH調整剤としてのマロン酸、表3に示す窒化物除去速度低減剤、および液体キャリアとしての水を含んでいた。研磨組成物のpHは2.25であった。具体的には、サンプル3A~3Lで使用された窒化物除去速度低減剤が表3に記載されたヘッドタイプおよび疎水性物質を含み、アルキレンオキシド基は全く含まなかった。さらに、サンプル3I、3J、および3Kで使用された窒化物除去速度低減剤は界面活性剤の混合物を含み、ラウリル/リン酸ミリスチル、リン酸ステアリル、およびリン酸ラセリルがそれぞれ主成分であった。
【0056】
Applied Materials Mirra CMPポリッシャを、200mm酸化シリコン(TEOS)および窒化シリコンブランケットウェハーを研磨するために、Dow VP6000パッド上で2psiのダウンフォースおよび175mL/minの流速で使用した。
【0057】
【表3】
【0058】
表3に示すように、窒化物除去速度低減剤中の疎水化物の大きさは、窒化けい素の速度低減の効率を決定する上で重要な役割を果たす。表3は、試験された薬剤の中で、12以上の鎖長が試験された条件下で有効な窒化物停止のために最良に機能することを示す。窒化物除去速度低減剤中の12以上の炭素鎖長(表3のサンプル3D、3E、3F、3G、3I、3J、3K、および3Lを参照のこと)は低いSiN RR(典型的には<5A/分)を保証し、ブランケットフィルムについてのTEOS: SiN RR(>250)について高い選択比を生成する。従って、このような研磨組成物は、酸化ケイ素対窒化ケイ素の高い選択比が望まれるSTI CMPプロセスに理想的に適している。
【0059】
実施例4:ダウンフォース効果の実証
この実施例では、サンプル4A~4Cで使用される研磨組成物が3w/w%コロイダルシリカ研磨剤、pH調整剤としての有機酸、n-オクタデシルホスホン酸、および液体担体としての水を含んだ。研磨組成物のpHは2~6.5であった。Applied Materials Mirra CMP研磨機を、2、3、および4psiのダウンフォースおよび175mL/分の流速で、Dow IC1010パッド上で使用して、200mm高密度プラズマ(HDP)酸化ケイ素、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)、および窒化ケイ素被覆ウェハーを研磨した。
【0060】
【表4】
【0061】
表4に示すように、酸化シリコン膜(HDP、TEOS、およびBPSG)はPrestonian挙動を示し、一方、窒化シリコン除去速度は非Prestonian挙動を示し、加えられたダウンフォースにかかわらず良好に制御されたままであった。CMP言語において、除去速度のPrestonian挙動は、研磨速度が研磨圧力および/または研磨機の角速度/rpm(毎分あたりの回転数)の増加と共に直線的に増加することを意味する。高レートターゲット膜には、プレストニア挙動が望ましい(ここではシリコン酸化膜)。非Prestonianの挙動は、研磨速度が圧力または速度の変化に対して感知できるほど変化しないことを意味する。非プレストニアン挙動は、膜(ここではSiN)上のストップにとって幾分望ましい。表4に見られるように、酸化ケイ素膜の除去速度はダウンフォースの増加と共に直線的に/プレストニアン的に増加する(例えば、TEOS RRは2から3から4psiの圧力へのダウンフォースの増加と共に、1835から2324から3140 A/分へ増加する)。逆に、SiN(膜上停止)除去速度は圧力の増加に伴って目に見えるほど変化しない(すなわち、SiN RRは、2から3から4psiの圧力への下向きの力の増加に伴って、4から2から1A/分に変動する)。さらに、この実施例は、研磨組成物が先に定義したように、酸化ケイ素ファミリーの膜に対して同様の挙動を有することを証明する。さらに明確にするために、表4では、シリコン酸化膜の3つの例、HDP、TEOS、およびBPSGを示す。本開示の研磨組成物は、全ての異なる種類の酸化ケイ素膜に高い材料除去速度を与える際に非常に効果的に働く。異なる種類の窒化ケイ素膜(SiN、SiCNなど)の例を用いた等価実験は、表4に描かれたSiN膜上で達成されたものと同様のスラリー停止挙動を示した。簡単にするために、SiN膜速度のみを表4に示す。
【0062】
実施例5:パッド効果の実証
この実施例では、試料5A~5Cで使用した研磨組成物が3w/w%のコロイダルシリカ研磨剤、pH調整剤としての有機酸、窒化物除去速度低減剤、および液体キャリアとしての水を含んでいた。研磨組成物のpHは2~6.5であった。Applied Materials Mirra CMP研磨機を、2psiのダウンフォースおよび175mL/分の流速で、Dow VP6000またはFujibo H800パッド上で使用して、200mmのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)および窒化ケイ素(SiN)ブランケットウェハーを研磨した。
【0063】
【表5】
【0064】
窒化物除去速度低減剤は表5に示すように窒化けい素保護に効果があった。中程度の硬度を有するDow VP6000パッド上で、全てのサンプル(5A~5C)は低いSiN除去速度および高いTEOS/SiN除去速度選択性によって実証されたように、効果的な窒化物保護を提供した。しかし、ソフトパッドであるFujibo H800パッド上では、長鎖飽和疎水剤(5A,5B)を有する窒化物除去速度低減剤を含むサンプルのみが効果的な窒化物停止を提供した。したがって、この実施例は、本開示の研磨組成物があらゆる種類の研磨パッドに効果的に作用することを実証する。さらに、この例は窒化物除去速度低減剤がより長い疎水性物質を含み、より飽和し、および/またはより疎水性である場合に、窒化物保護が増加する傾向を示唆する。
【0065】
実施例6:ディッシング低減の実証
この実施例では、試料6A~6Dで使用される研磨組成物が3w/w%コロイダルシリカ研磨剤、pH調整剤としての有機酸、n-オクタデシルホスホン酸、アニオン性ディッシング低減ポリマー(存在する場合)、および液体キャリアとしての水を含んだ。研磨組成物のpHは3.0であった。Applied Materials Mirra CMPポリッシャを、ダウンフォース2psi、流量175mL/minでDow VP6000パッド上に用いて、200mm STI 1酸化シリコン/窒化シリコンパターン形成ウェハーを研磨した。約50秒、20秒の過研磨後、レーザ測定によりウェハーを先端に向けた。
【0066】
【表6】
【0067】
表6に示すように、アニオン性ディッシング低減ポリマーの添加は酸化物ディッシングを制御するのに、特に小さい特徴に対して有効である。試料6Aはディッシング低減剤を含まなかったが、試料6B、6Cおよび6Dは3つの異なるタイプのディッシング低減剤を含んでいた。表6から分かるように、サンプル6Aと比較した場合、サンプル6B、6C、及び6Dの場合、5μm及び20μmフィーチャの両方の酸化シリコンディッシング値は、はるかに小さい。
【0068】
実施例7:濃縮物の実証
この実施例では、試料7A~7Cで使用される研磨組成物が3w/w%中性コロイダルシリカ研磨剤、pH調整剤としての有機酸および/または水酸化カリウム、n-オクタデシルホスホン酸、および液体担体としての水の使用点配合に対応する濃縮物を含んだ。単一ポット溶液は研磨に必要な全ての成分を含有し、一方、二液系は、有機酸を除く全ての成分を含有した。平均粒径(MPS)はスラリー安定性の信頼できる指標である。不安定なシステムでは、粒子は時間の経過と共に凝集し、測定可能なMPS成長を引き起こす。動的光散乱法を用いてMalvernツール上でMPSを測定した。スラリーを60℃に設定したオーブン中に貯蔵し、7日毎に測定した。加速老化試験のためのArrhenius関係によると、21日間の完全な試験運転は、室温老化のおよそ1年に相当する。言い換えれば、スラリーを60℃で21日間保持し、シリカのMPSがあまり成長しない場合、スラリーが1年のリアルタイム貯蔵寿命/有効期限を有することを証明することができる。
【0069】
【表7】
【0070】
表7に示すように、全ての配合物は、完全な試験運転を通して安定である。中性シリカの酸性領域での安定性は、典型的には達成するのが困難である。単一ポット溶液は2×濃度(表7に示す選択データ)および他の濃度レベル(例えば、3×、4×および10×までの濃度)で約2~約6.5のpHで安定であった(示さず)。二液溶液(7C)では、酸を除く全ての成分がはるかに高い程度に濃縮され、安定なままであった(10倍までも安定なままであった)。使用時点で、酸および水を添加して、研磨工具上でスラリーを流す前にスラリーを再構成する。
【0071】
実施例8:パターン化されたウェハー除去速度選択性の実証
本実施例では表1、3、5に示すコロイド状シリカ研磨剤と窒化物除去速度低減剤を含有する試料8A、8B、8Cに用いた研磨組成物を用いて、図2に示すように、パターニングされた窒化ケイ素が高密度酸化ケイ素で充填された200mmのSTIパターニングされたウェハーを研磨した。窒化ケイ素中のパターンは幅広いラインスペース、正方形、チェッカー、および密度の異なるメッシュアレイのアレイがウェハー面全体にわたって配列されるようなものであった。
【0072】
研磨はDowDupont VP6000パッド、3M A165 CIP1コンディショニングディスクを装備し、2 PSIウェハー背圧を採用したApplied Materials 200mm Mirra研磨ツール上で行われた。研磨時間は、モータトルクと赤色レーザ(650nm)吸光度の両方によるその場終点検出に基づいて変化させた。研磨中に、フィルム積層体の活性ライン中のシリコン酸化物の除去及び下にあるシリコン窒化物の露出を示すエンドポイント信号の両方の特徴を観察することができる。パターン化された酸化ケイ素除去速度は、窒化ケイ素の暴露前に除去された材料の量を研磨時間で割ったものに基づいて計算された。逆に、パターニングされた窒化ケイ素除去速度は、除去された材料の量を研磨組成物に曝された後の時間で割ったもので計算される。研磨が完了すると、ウェハーは、富士フィルムWako 8901ポストCMP洗浄化学品を使用して、200mm OnTrackポストCMP洗浄ツール(Lam Research社より)を介して洗浄された。すべてのウェハーの膜厚測定(例えば、除去速度を決定するため)は、KLA Tencor F5Xエリプソメータを使用して測定された。
【0073】
【表8】
【0074】
表8に示されたデータから、ブランケットウェハー上で以前に観察された酸化ケイ素と窒化ケイ素材料除去速度の間の高い選択性も、酸化ケイ素(頂部)と窒化ケイ素(底部)の両方を含むパターン化ウェハー上で観察される。表8から分かるように、試料8Aについては、酸化シリコンから窒化シリコンへの選択性がパターンの大きさ、密度及びピッチに応じて、86から190まで全面的に変化する。サンプル8Bの場合、窒化ケイ素に対する酸化ケイ素の選択性は54であるのに対し、サンプル8Cの場合、選択性は4である。表8は、パターン化されたウェハー上の性能の代表例のみを提供する。本発明者らの社内実験では、選択比が膜の複雑さに応じて、パターン化された試験ウェハー上で、3(パターン化されたウェハーに対して満足できると考えられる)から約1000まで変化することが観察された。さらに、本明細書に提示される窒化物除去速度低減剤を含有する研磨組成物の選択性は、従来技術に提示される多くのレガシー、工業標準、商業的に入手可能なセリアベースのSTI研磨組成物の選択性を超える。
【0075】
実施例9:パターン付きウェハーのディッシング及びエロージョンの実証
この例では、エンドポイントでの酸化ケイ素ディッシング/ステップ高さおよび窒化ケイ素エロージョン/ロスを定量化するために、実施例8で使用されたものと同様のパターン化されたウェハーがPark Systems AFMツールで測定された。試料9A、9Bに用いた研磨組成物は表1、3、5に示す窒化物除去速度低減剤を含有しており、図2にその積層を描いたパターンウェハーの研磨に用いた。酸化シリコンディッシング/ステップ高さおよび窒化シリコンエロージョン/ロスの結果を表9に示す。平坦化効率(PE)はパーセンテージで報告され、酸化ケイ素ステップ高さの変化を研磨中に除去された酸化物の量で割り、次に100を掛けたもの(パーセンテージに変換するため)に等しい。
【0076】
【表9】
【0077】
表9から分かるように、酸化シリコンディッシングと窒化シリコンエロージョンは非常に小さい。典型的には、ディッシングおよび浸食のためには非常に少ない数が好ましい。ディッシングおよびエロージョン数は、パターン化されたウェハーのCMP研磨後の最終トポグラフィの平坦性を表す。したがって、これらの数字の低い値(Å単位)は、これらの数字がパターン化されたウェハー内に複数のフィルムタイプを含むウェハー上のフィルムのピークおよび谷における分離を測定するので、望ましい。数が低いほど、ピークとトラフとの間に存在する分離が少なくなり、半導体製造におけるCMPプロセスステップの全体的な目標であるウェハー表面がより平坦であることを意味する。理想的には、ディッシング及びエロージョン値がゼロであることが好ましい(完全に平坦なウェハー表面を意味する)。しかしながら、従来、これらの数は一般に、実際のデバイス/製品パターン化されたウェハー上では、数百または数千Åの値にある。したがって、表9に示すデータは、研磨組成物が非常に低いディッシング値およびエロージョン値、したがって、パターン化されたウェハーの非常に良好なトポグラフィを供給する際に、独特の/異常な性能を提供することを示す。表9から分かるように、酸化シリコンディッシングは35Åと低く、375Åと高いことができる。エロージョン数が30Åと低く、74Åと高いので、SiNエロージョンはディッシングよりもはるかに優れている。ここでも、これらは代表的な例であり、我々の実験ではこれらのディッシングおよびエロージョン数が1000Åと高く、1Åと低いことを見てきた。これは本発明の目的に対してなお満足できるものであり、半導体製造業者にとって許容できるものである。
【0078】
平坦化効率(PE)の場合、数字が大きいほど良い結果が得られる。理想的には、ウェハー全体が平坦化され、平坦であること、すなわち、山と谷の間に段差がないことを手段する値として、100%のPEが望ましい。表9のデータから、PEが14%の低い値から74%までずっと変化することが分かる。従って、これらの研磨組成物はパターン付きウェハー上に良好な平坦化効率を与える。
【0079】
更に、表9に示されるデータは、本明細書に示される研磨組成物が最先端の市販のセリアベースのSTI研磨組成物の酸化物ディッシング、窒化ケイ素浸食および平坦化効率を超えることを示す。
【0080】
実施例10:研磨後のパターン付きウェハーの欠陥性の実証
この実施例では、実施例8および9で使用したものと同様のパターン化ウェハーの欠陥を、市販のセリアベースのSTI配合物および実施例8で説明した組成物8A(窒化物除去速度低減剤を含有するシリカベースの研磨組成物である)を使用することによって、KLA-AIT XUV欠陥カウンタツールで測定した。組成物8Aを用いることによって研磨されたウェハーに関するウェハーマップを図3に示す。市販のセリア系STI研磨組成物を用いて研磨したウェハーのウェハーマップを図4に示す。
【0081】
図4によって実証されたように、セリアベースの処方は研磨剤の相対的な硬度およびサイズのために、ウェハー全体に広がる多くの欠陥を伴う重いアークスクラッチを生じやすかった(総欠陥数は10,000よりも大きかった)。欠陥のより厳密な検査は多くの残留物を伴う多くのマクロ及びマイクロスクラッチが存在することを示し、その多くは、全体的な装置キラー欠陥と考えることができる。しかしながら、図3は、研磨剤として高純度コロイドシリカを含有する研磨組成物8Aがセリアベースの組成物(図4)よりもはるかに少ない引っ掻き傷を有することを示す。実際、シリカ研磨組成物は、「欠陥のない」に近く、清浄な表面を示す。総欠陥数は、サイズが少なくとも90nmの欠陥に対して約175である。欠陥は最終的なデバイス歩留まり、および販売可能なチップの製造にとって重要である。図4に示されるパターン化されたウェハーにおいて、パターン化されたウェハーあたり1000個のダイ(各正方形)があるとする。欠陥を有するダイの各々は、欠陥が装置キラー欠陥である場合には売れないことが判明し得る。したがって、セリアベースの研磨組成物は、多量の欠陥を示すので、ウェハー当たりの販売可能なチップの歩留まりは低くなる。逆に、本開示の研磨組成物では、欠陥は著しく少なく、したがって、ウェハー当たりの販売可能なチップの歩留まりは著しく高い。
【0082】
したがって、本開示の研磨組成物を使用することによって得られる低欠陥性は、半導体会社にとって、それらの収益のトップラインおよびボトムラインを増加させるので、非常に魅力的である。技術的観点から、セリア研磨剤は本質的に無機であり(例えば、セリウムランタニド金属ベースの酸化物)、一般に硬く、シリカ研磨剤よりもサイズが大きいので、ウェハー表面に多量の引っ掻き傷および欠陥を与える傾向がある。逆に、コロイダルシリカ研磨剤は本質的に有機(シリコン非金属ベースの酸化物およびコロイダル分散形態)であり、一般に軟質であり、したがって研磨中に引っ掻きまたは欠陥を生じない。
【0083】
当業者は、窒化ケイ素に対する酸化ケイ素の十分な除去選択性を有するシリカベースのSTI研磨組成物を開発することができなかった。本明細書に開示されるように、本発明者らは、シリカベースのSTI研磨組成物を産業に供給することができる、シリカおよび窒化ケイ素除去速度低減剤の相乗的組合せを見出した。また、本開示に記載の発明は、シリカ以外の研磨剤(アルミナ、チタニア等)にも適用することができる。
【0084】
本開示は本明細書に記載された例に関して記載されてきたが、添付の特許請求の範囲に
定義された本開示の精神および範囲から逸脱することなく、他の修正および変形が可能であることが理解される。
本開示は下記の態様<1>~<24>も含む。
<1>
少なくとも1つの研磨剤;
12 からC 40 の炭化水素基を含む疎水性部分と親水性部分とを含み、前記疎水性部分および前記親水性部分が0から10のアルキレンオキシド基によって分離されている、少なくとも1つの窒化物除去速度低減剤;
酸または塩基;および
水;
を含み、約2~約6.5のpHを有し、少なくとも酸化ケイ素で覆われた少なくとも窒化ケイ素パターンを含むパターン化ウェハーを研磨するときに、少なくとも約3:1の酸化ケイ素の除去速度対窒化ケイ素の除去速度の比を有する、研磨組成物。
<2>
前記疎水性部分がC 14 からC 32 の炭化水素基を含む、<1>に記載の研磨組成物。
<3>
前記疎水性部分がC 16 からC 22 の炭化水素基を含む、<1>に記載の研磨組成物。
<4>
前記親水性部分が亜硫酸基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基およびホスホネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含む、<1>に記載の研磨組成物。
<5>
前記親水性部分がリン酸基またはホスホネート基を含む、<1>に記載の研磨組成物。
<6>
前記少なくとも1つの窒化物除去速度低減剤が、ナフタレンスルホン酸-ホルマリン縮合物、リン酸ラウリル、リン酸ミリスチル、リン酸ステアリル、オクタデシルホスホン酸、リン酸オレイル、リン酸ベヘニル、硫酸オクタデシル、リン酸ラッセリル、オレイス-3-フォスフェート、およびオレイス-10-フォスフェートからなる群より選択される、<1>に記載の研磨組成物。
<7>
前記少なくとも1つの研磨剤が、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、それらの共形成生成物、被覆研磨剤、表面改質研磨剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される、<1>に記載の研磨組成物。
<8>
前記少なくとも1つの研磨剤が、カチオン性研磨剤、本質的に中性の研磨剤、及びアニオン性研磨剤からなる群より選択される、<1>に記載の研磨組成物。
<9>
前記研磨剤が、シリカ系研磨剤である、<1>に記載の研磨組成物。
<10>
さらに、少なくとも1つのディッシング低減剤を含み、
前記少なくとも1つのディッシング低減剤は、ヒドロキシル基、スルフェート基、ホスホネート基、ホスフェート基、スルホネート基、アミン基、ニトレート基、ニトライト基、カルボキシレート基、およびカーボネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含む化合物である、<1>に記載の研磨組成物。
<11>
前記少なくとも1つのディッシング低減剤が、多糖類および置換多糖類からなる群より選択される少なくとも1つである、<10>に記載の研磨組成物。
<12>
少なくとも酸化ケイ素で覆われた少なくとも窒化ケイ素パターンを含むパターン化ウェハーを研磨するときに、前記研磨組成物が、少なくとも約4:1の酸化ケイ素の除去速度対窒化ケイ素の除去速度の比を有する、<1>に記載の研磨組成物。
<13>
窒化ケイ素に対する酸化ケイ素の除去速度の選択性が少なくとも約5:1であり、多くとも約1000:1である、<1>に記載の研磨組成物。
<14>
前記組成物は酸化ケイ素のディッシングが多くとも約1000Åであり、および少なくとも約0Åである、<1>に記載の研磨組成物。
<15>
前記組成物は酸化ケイ素のディッシングが多くとも約375Åである、<1>に記載の研磨組成物。
<16>
前記組成物は窒化ケイ素の浸食が多くとも約500Åであり、少なくとも約0Åである、<1>に記載の研磨組成物。
<17>
前記組成物は窒化ケイ素の浸食が多くとも約75Åである、<1>に記載の研磨組成物。
<18>
前記組成物は平坦化効率が少なくとも約14%である、<1>に記載の研磨組成物。
<19>
前記組成物は平坦化効率が少なくとも約14%であり、多くとも100%である、<1>に記載の研磨組成物。
<20>
前記組成物を用いてパターン化ウェハーを研磨するとき、前記組成物は直径約300mmのパターン化ウェハー上に多くとも175の欠陥を生成する、<1>に記載の研磨組成物。
<21>
少なくとも窒化ケイ素および少なくとも酸化ケイ素を有する基板の表面上に、<1>に記載の研磨組成物を適用すること、
パッドを前記基板の表面と接触させ、前記基板に対して前記パッドを移動させること、を含む方法。
<22>
前記窒化ケイ素および前記酸化ケイ素のうちの少なくとも1つが、炭素、窒素、酸素、および水素からなる群より選択される少なくとも1つのドーパントでドープされる、<21>に記載の方法。
<23>
前記基板から半導体デバイスを形成することをさらに含む、<21>に記載の方法。
<24>
前記基板から半導体デバイスを形成することをさらに含む、<22>に記載の方法。
図1
図2
図3
図4