(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】端子構造およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/02 20060101AFI20250306BHJP
H01R 9/16 20060101ALI20250306BHJP
H01R 4/70 20060101ALI20250306BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20250306BHJP
H01R 43/24 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
H01R4/02 Z
H01R9/16
H01R4/70 K
H01R43/02 A
H01R43/24
(21)【出願番号】P 2021194102
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穴井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】滝本 和哉
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-318573(JP,A)
【文献】実開昭49-150687(JP,U)
【文献】実開昭49-106886(JP,U)
【文献】特開2001-257444(JP,A)
【文献】特開平10-247535(JP,A)
【文献】特開昭57-174879(JP,A)
【文献】特開昭62-229675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
H01R 9/16
H01R 4/70
H01R 43/02
H01R 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材が溶融はんだのはんだ付けにより導通接続される端子部が端子設置面に複数配置され、前記導電材と共に前記端子部を取り囲むように樹脂モールドして絶縁性を確保する端子構造であって、
前記端子部は、前記端子設置面に接着剤により接着固定されており、
前記端子部は、端部側が前記導電材のはんだ付け領域にされると共に、前記溶融はんだが前記はんだ付け領域から隣接する前記端子設置面側に延長されることを制限し、前記はんだ付け領域および前記接着剤の間における前記樹脂モールドの当該端子部との密着を実現する制限部が形成されて、前記はんだ付け領域のはんだ表面および前記端子設置面側の接着剤表面に形成される可能性のある前記樹脂モールドとの間の隙間が連通して生じる前記端子設置面側での当該端子部間の絶縁破壊を回避することを特徴とする端子構造。
【請求項2】
前記制限部は、前記端子部の前記はんだ付け領域よりも幅狭に形成されて前記溶融はんだが前記端子設置面側に延長しようとするのを制限することを特徴とする請求項1に記載の端子構造。
【請求項3】
前記制限部は、前記端子部の幅方向の両側辺間に開口部が形成されて、あるいは、前記端子部の幅方向の片側または両側に切欠部が形成されて前記はんだ付け領域よりも幅狭にされていることを特徴とする請求項2に記載の端子構造。
【請求項4】
前記制限部は、前記端子部の前記はんだ付け領域の隣接する領域が前記溶融はんだの馴染まない表面に形成されて前記溶融はんだが前記端子設置面側に延長しようとするのを制限することを特徴とする請求項1に記載の端子構造。
【請求項5】
前記端子部は、前記はんだ付け領域が前記溶融はんだに馴染む表面にされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の端子構造。
【請求項6】
前記端子部は、前記はんだ付け領域の隣接する領域が前記樹脂モールドに密着する表面にされていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の端子構造。
【請求項7】
導電材が溶融はんだのはんだ付けにより導通接続される端子部が端子設置面に複数配置され、前記導電材と共に前記端子部を取り囲むように樹脂モールドして絶縁性を確保する端子構造の作製方法であって、
前記端子部は、前記端子設置面に接着剤により接着固定された後に、
前記端子部の端部側を前記導電材のはんだ付け領域にするように、前記溶融はんだが前記はんだ付け領域から前記端子設置面側に延長しようとするのを制限し、前記はんだ付け領域および前記接着剤の間における前記樹脂モールドの当該端子部との密着を実現することで、前記はんだ付け領域のはんだ表面および前記端子設置面側の接着剤表面に形成される可能性のある前記樹脂モールドとの間の隙間が連通して生じる前記端子設置面側での当該端子部間の絶縁破壊を回避しつつ、前記導電材を前記端子部にはんだ付けして導通接続することを特徴とする端子構造の作製方法。
【請求項8】
前記端子部の端部側を前記導電材のはんだ付け領域にするように、前記溶融はんだが前記はんだ付け領域から前記端子設置面側に延長されることを制限する制限部が形成されている前記端子部を準備し、
前記導電材を前記端子部にはんだ付けして導通接続することを特徴とする請求項7に記載の端子構造の作製方法。
【請求項9】
前記端子部の端部側を前記導電材のはんだ付け領域にするように、前記溶融はんだが前記はんだ付け領域から延長されることを制限するマスクを仮置きしつつ、前記導電材を前記端子部にはんだ付けして導通接続することを特徴とする請求項7に記載の端子構造の作製方法。
【請求項10】
導電材が溶融はんだのはんだ付けにより導通接続される端子部が端子設置面に複数並列配置され、前記導電材と共に前記端子部を取り囲むように樹脂モールドして絶縁性を確保する端子構造であって、
前記端子部は、前記端子設置面に接着剤により接着固定されると共に、端部側が前記導電材のはんだ付け領域にされており、
前記端子部は、隣接箇所間の前記端子設置面における沿面距離が一直線上に並列される直列状態での隣接間隔よりも大きくなるように配置されて、前記はんだ付け領域のはんだ表面および前記端子設置面側の接着剤表面に形成される可能性のある前記樹脂モールドとの間の隙間が連通するときにも前記端子設置面側での当該端子部間の絶縁破壊の発生の可能性を前記直列状態に並列される場合よりも低減することを特徴とする端子構造。
【請求項11】
前記端子部は、相互に直交関係にあるX方向、Y方向、およびZ方向のうち、当該端子部の設置箇所が一直線上に並列される直列方向をX方向としたときに、前記端子設置面に対する平行方向のY方向、および当該端子設置面に対する直交方向のZ方向の、一方または双方にずれたオフセット位置に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の端子構造。
【請求項12】
導電材が溶融はんだのはんだ付けにより導通接続される端子部が端子設置面に複数並列配置され、前記導電材と共に前記端子部が樹脂モールドされて絶縁性を確保される端子構造であって、
前記端子構造は、上記請求項1から請求項6のいずれか1項
に記載の前記端子構造と、上記請求項10または請求項11
のいずれか1項に記載の
前記端子構造とを組み合わせた構造であることを特徴とする端子構造。
【請求項13】
導電材が溶融はんだのはんだ付けにより導通接続される端子部が端子設置面に複数配置され、前記導電材と共に前記端子部を取り囲むように樹脂モールドして絶縁性を確保する端子構造であって、
前記端子部は、前記端子設置面に接着剤により接着固定されており、
前記端子部は、端部側が前記導電材のはんだ付け領域にされると共に、前記溶融はんだの馴染む表面の前記はんだ付け領域にされ、前記はんだ付け領域および前記接着剤の間における前記樹脂モールドの当該端子部との密着を実現して、前記はんだ付け領域のはんだ表面および前記端子設置面側の接着剤表面に形成される可能性のある前記樹脂モールドとの間の隙間が連通して生じる前記端子設置面側での当該端子部間の絶縁破壊を回避することを特徴とする端子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けする端子間の短絡を防止する端子構造およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力検出素子としてセンサチップなどの電子部品(半導体素子)を搭載した半導体圧力センサが知られている。また、近年では、圧力検出素子と信号処理回路を同一のシリコンチップ上に集積化したワンチップ半導体圧力センサも開発されている。例えば、特許文献1には、防水性を向上させた半導体圧力センサが記載されている。
【0003】
この半導体圧力センサは、圧力センサ本体における出力端子として、半導体圧力検知ユニットからの接続ピン(リードピン)にFPC(フレキシブルプリント基板)からなる結線材で接続されたコンタクトピンをその圧力センサ本体内に設け、外部への電線の先端に結合されている端子に該コンタクトピンが嵌め込まれるようにし、該電線の端子とコンタクトピンの接続部(コネクタ部)を常温硬化性樹脂によってモールドするようにしている。
【0004】
上述のように、従来の半導体圧力センサにおいては、外部機器と接続する電線の端子にコンタクトピンが嵌め込まれるコネクタ部が設けられており、防水性を要求される場合には、該コネクタ部を含めて樹脂を充填するようになされていた。このような防水型の圧力センサにおいて、接続の信頼性向上やコストダウンを図るために、上記のコネクタ部をなくして、外部への電線を圧力センサ本体内の端子台に設置されている上記コンタクトピンと一体の端子に直接接続することが考えられる。このような電線直付け型の半導体圧力センサで要求される電線は通常3線式(出力、電源、接地)が多く、外部機器との接続に使用される長さは0.5~3m程度である。
【0005】
この端子台のような端子構造としては、外部への導線端部(導電材)が端子設置面に配置されている端子毎にはんだ付けされて導通接続された後に、その端子接続部を取り囲むように樹脂モールドされて絶縁性を確保することが多用されている(例えば、特許文献2、3を参照)。
【0006】
ここで、導線の端子への接続として、例えば、超音波溶着を利用して撚り線形態の導線を端子に接合する方式を採用すると、ホーン・アンビル等の型摩耗による研磨、交換、それに伴う接合条件出しなどで管理工数の増大を招くと共に、捻りなどの機械的負荷で撚り線導線に破断等が発生する可能性がある。そのような管理工数増大への対策や機械的負荷に対する剛性(耐性)に優れるはんだ付けが採用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-141588号公報
【文献】特開昭63-241883号公報
【文献】特許3131229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような端子構造にあっては、端子台に端子を挿通し、もしくは一緒にインサート成形を行ない、端子の固定、もしくは端子と端子台との隙間を封止する為に接着剤を塗布することがある。この場合、この固定用接着剤とモールド用樹脂との間で剥離が生じると、隙間が形成され易い。
【0009】
例えば、
図13に示すように、端子1は、端子台2の端子設置面2bに挿通され、接着剤3により固着されると共に挿通部の隙間が接着剤により埋められており(
図13(a)を参照)、その端子1の端子台2より突出した終端部に電源ラインや信号ラインなどの電線4の芯線である導線(導電材)4e端部がはんだ材5によりはんだ付けされて導通接続されている(
図13(b)、
図13(c)を参照)。
【0010】
そして、この端子台2では、設置環境によって電線4の図示していない相手側回路、基板の側である端子1の終端部から、その電線4の芯線(導線)4eを伝わってくる水分wが浸透する可能性がある。またそのはんだ材5と樹脂モールドの樹脂材6との間で界面剥離が生じると、その隙間Gが端子設置面2b側まで連続してしまう(
図13(d)を参照)。このような条件が重なった場合、後述するように、その端子設置面2b側の端子1間が短絡して絶縁破壊を発生させてしまう可能性がある。
【0011】
詳細には、
図14に示すように、端子1は端子台2の端子設置面2bに複数並列に配置されており、その端子台2の端子設置面2b側においても、接着剤3と樹脂モールドの樹脂材6との間に界面剥離による隙間Gが形成されて水分wが浸入して来ると、その端子設置面2b側の端子1間が短絡して絶縁破壊を発生させてしまう可能性がある。なお、はんだ材5などの金属材料は表面においてマイグレーションやウィスカが発生する場合があり、その表面側に隙間が存在すると制限なく成長して短絡させてしまう場合もある。
【0012】
そこで、本発明は、端子間に絶縁破壊が発生する可能性を低減することのできる端子構造やその作製方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する端子構造の発明の一態様は、導電材が溶融はんだのはんだ付けにより導通接続される端子部が端子設置面に複数配置され、前記導電材と共に前記端子部を取り囲むように樹脂モールドして絶縁性を確保する端子構造であって、前記端子部は、端部側が前記導電材のはんだ付け領域にされると共に、前記溶融はんだが前記はんだ付け領域から隣接する前記端子設置面側に延長されることを制限する制限部が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、上記課題を解決する端子構造の作製方法の発明の一態様は、導電材が溶融はんだのはんだ付けにより導通接続される端子部が端子設置面に複数配置され、前記導電材と共に前記端子部を取り囲むように樹脂モールドして絶縁性を確保する端子構造の作製方法であって、前記端子部の端部側を前記導電材のはんだ付け領域にするように、前記溶融はんだが前記はんだ付け領域から前記端子設置面側に延長しようとするのを制限しつつ、前記導電材を前記端子部にはんだ付けして導通接続することを特徴としている。
【0015】
これらの態様では、端子部の端部側のはんだ付け領域から端子設置面側に溶融はんだが拡散される(濡れ拡がる)ことが制限され、その端子設置面側の端子部表面にははんだが介在することなく樹脂が接触してモールド化される。
【0016】
この構造により、仮に端子部の端部側に位置するはんだ表面と樹脂モールドとの間に隙間が形成される場合に、そのはんだ付けする導通端部側から水分が浸透してきても端子部の端子設置面側まで浸入してしまうことを抑制することができる。
【0017】
上記課題を解決する端子構造の発明の一態様は、導電材が溶融はんだのはんだ付けにより導通接続される端子部が端子設置面に複数並列配置され、前記導電材と共に前記端子部を取り囲むように樹脂モールドして絶縁性を確保する端子構造であって、前記端子部は、隣接箇所間の前記端子設置面における沿面距離が一直線上に並列される直列状態での隣接間隔よりも大きくなるように配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
この形態では、隣接する端子部の端子設置面における沿面距離がその端子部間の絶縁性を確保する隣接間距離、言い換えると、並列方向の正面から見たときの隣接間隔よりも大きくされて樹脂モールドされる。
【0019】
この構造により、仮に端子設置面と樹脂モールドとの間に隙間が形成される場合に、その端子設置面側に水分が浸入するときでも、その端子部間における端子設置面の沿面距離を長くして、その端子部間に水分が連続してしまう可能性を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明の一態様によれば、隣接する端子部間に水分が連続して絶縁性を低下させてしまうことを抑制することができ、端子部間に絶縁破壊が発生する可能性を低減することのできる構造や作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の端子構造およびその作製方法に係る第1実施形態を実施する圧力センサの端子接続構造の一例を説明する図であり、(a)はその圧力センサを示す外観図、(b)はその圧力センサを電線の延長方向から見た平面図である。
【
図2】
図2は、その内部構造を示す図であり、(a)は立てた状態の圧力センサの
図1に示すIIa-IIaの一部断面正面図、(b)は
図2(a)に示すIIb-IIbの断面平面図である。
【
図3】
図3は、その端子を説明する図であり、(a)はその単一の端子構造を示す立面正面図、(b)は樹脂モールド後の端子を示す立面正面図、(c)は樹脂モールド後の端子を示す立面側面図、(d)は端子周りに形成される隙間を示す立面側面図である。
【
図4】
図4は、その第1の他の態様を示す図であり、(a)はその単一の端子構造を示す立面正面図、(b)は樹脂モールド後の端子を示す立面正面図である。
【
図5】
図5は、その第2の他の態様を示す図であり、(a)はその単一の端子構造を示す立面正面図、(b)は樹脂モールド後の端子を示す立面正面図である。
【
図6】
図6は、その第3の他の態様を示す図であり、(a)はその単一の端子構造を示す斜視図、(b)はその立面側面図である。
【
図7】
図7は、その第4の他の態様を示す図であり、(a)はその単一の端子構造を示す斜視図、(b)はその立面側面図である。
【
図8】
図8は、本発明の端子構造およびその作製方法に係る第2実施形態を実施する圧力センサの端子接続構造の一例を説明する図であり、(a)はその単一の端子構造を示す立面正面図、(b)は樹脂モールド後の端子を示す立面正面図、(c)は樹脂モールド後の端子を示す立面側面図、(d)は端子周りに形成される隙間を示す立面側面図である。
【
図9】
図9は、本発明の端子構造およびその作製方法に係る第3実施形態を実施する圧力センサの端子接続構造の一例を説明する図であり、(a)はその単一の端子構造を示す立面正面図、(b)は樹脂モールド後の端子を示す立面正面図、(c)は樹脂モールド後の端子を示す立面側面図、(d)は端子周りに形成される隙間を示す立面側面図である。
【
図10】
図10は、本発明の端子構造の作製方法に係る第4実施形態を実施する圧力センサの端子接続構造の一例を示す図であり、(a)はその水平状態の端子へのはんだ付けを説明する側面図、(b)は樹脂モールド後の端子を示す立面正面図、(c)は樹脂モールド後の端子を示す立面側面図、(d)は端子周りに形成される隙間を示す立面側面図である。
【
図11】
図11は、本発明の端子構造に係る第4実施形態を備える圧力センサの端子接続構造の一例を示す図であり、(a)はその並列する樹脂モールド後の端子を示す立面正面図、(b)はその樹脂モールド後の端子を示す平面図、(c)は端子周りに形成される隙間を示す立面正面図である。
【
図12】
図12は、本発明の端子構造に係る第5実施形態を備える圧力センサの端子接続構造の一例を示す図であり、(a)はその並列する樹脂モールド後の端子を示す立面正面図、(b)はその樹脂モールド後の端子を示す平面図、(c)は端子周りに形成される隙間を示す立面正面図である。
【
図13】
図13は、その端子構造の従来技術を説明する図であり、(a)はその単一の端子構造を示す立面正面図、(b)は樹脂モールド後の端子を示す立面正面図、(c)は樹脂モールド後の端子を示す立面側面図、(d)は端子周りに形成される隙間を示す立面側面図である。
【
図14】
図14は、その端子構造の従来技術を説明する図であり、その並列する樹脂モールド後の端子を示す立面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1~
図3は本発明の端子構造およびその作製方法に係る第1実施形態を実施する圧力センサの端子接続構造の一例を示す図である。
【0023】
<端子構造の第1実施形態>
図1および
図2において、圧力センサ100は、例えば、出力、電源、接地の3線式の電線4を収容して防水機能を有するコネクタ101Aと、不図示のセンサチップや回路基板等の防水機能を有するセンサ本体に導通接続されている信号線を収容するセンサエレメント101Bとを備えて構築されている。この圧力センサ100は、コネクタ101A、センサエレメント101B内で導線間の絶縁破壊を生じさせないように、それぞれコネクタケース102A、センサケース102Bの内部における防水性(絶縁性)が確保されて電気的に接続されている。
【0024】
特に、本実施形態の装置側のコネクタ101Aでは、センサエレメント101Bに接続する入出力線(電源電圧、ゼロV、信号出力)の各電線4の芯線(導線)4eがコネクタケース102A内に収容されて端子台2の端子(端子部)10毎にはんだ付けされて導通接続されており、その端子10には、図示することを省略するが、センサエレメント101Bのセンサケース102B内の各種導線が導通接続されて電気的に接続されている。ところで、コネクタ101Aでは、コネクタケース102A内に樹脂材6を充填して端子10全体を取り囲むように樹脂モールドすることにより、端子10周りの防水性が確保されており、センサエレメント101Bでもセンサケース102B側からコネクタ101A側に水分等が浸入しないように防水性が確保されている。
【0025】
端子10は、端子台2内に挿通、もしくはインサート成形されて、端子設置面2bに接着剤3が塗布されて端子台2の挿通箇所の隙間が封止、若しくは固定されており、その一端側の終端部10uに電線4の芯線4eが溶融はんだ5mによりはんだ付けされて電気的に導通接続されている。
【0026】
この端子10は、端子表面10fが溶融はんだ5mの馴染む親和面に形成されており、その端子表面10fに溶融はんだ5mが馴染んで表面張力を発生させつつ広がって終端部10uから端子設置面2b側の端子基部10bに向かう方向に延長されており、その溶融はんだ5mの固化したはんだ材5が電線4の芯線4eと共に導通接続されている。
【0027】
このとき、溶融はんだ5mは、端子10の端子設置面2bに近接する端子基部10b側まで延長されている状態ではんだ材5に固化してはんだ付けする場合もある。この場合には、端子10は、樹脂モールドする樹脂材6と馴染まない非親和性のはんだ材5で端子表面10fの全体が覆われているとともに、その樹脂材6が端子10を端子台2に固定する接着剤3とも馴染まない非親和性のときには、それらの境界面に剥離が発生して連続する隙間Gが形成される可能性がある。すなわち、この端子構造では、電線4の芯線4e側からはんだ材5および接着剤3の表面を介して端子設置面2bに至る隙間Gが形成されてしまう可能性がある(
図13および
図14を参照)。そうすると、この端子台2の端子10では、その隙間Gを介して設置環境によっては電線4の相手側回路、基板側である終端部10u側から浸透する水分wが、隣接する端子10同士の間を短絡させてしまう可能性がある。
【0028】
そこで、本実施形態の端子10は、
図3(a)に示すように、端子表面10fに電線4の芯線4eをはんだ付けされるのに十分な所定面積、例えば、端子表面10fの半分以上の面積をはんだ付け領域10aとし、そのはんだ付け領域10aの端子設置面2b側の両側辺10sの間に長方形の開口部13が形成されている。
【0029】
この端子10の開口部13は、両側辺10sとの間で電流容量を確保することができる程度の大きさに形成されており、
図3(b)および
図3(c)に示すように、電線4の芯線4eを終端部10uにはんだ付けする溶融はんだ5mが自重や表面張力によりはんだ付け領域10aよりも端子設置面2b側に向かって拡散して延長しようとするのを、両側辺10sとの間の間隔を狭めることによって制限する制限部として機能する。ここで、本実施形態では、端子10を立てた状態ではんだ付けする場合を一例として説明するが、これに限るものではなく、端子10を横向きにして溶融はんだ5mを載せるようにしてはんだ付けする場合でも、表面張力で広がる溶融はんだ5mの延長を制限することができる。
【0030】
これにより、端子10は、
図3(d)に示すように、電線4の芯線4eのはんだ付け後に、樹脂材6をコネクタケース102A内に充填して樹脂モールドして絶縁性を確保する際に、はんだ材5の存在しない端子表面10fに樹脂材6が密接して隙間Gが形成されることを制限することができる。
【0031】
このため、端子10は、端子設置面2bの接着剤3やはんだ材5と樹脂材6との間に隙間Gが形成される場合でも、その接着剤3側とはんだ材5側の隙間Gが連通してしまうことを抑制することができる。このとき、端子10の開口部13内側に樹脂材6が充填されることから、制限部がない状態よりも端子10裏表の樹脂材6同士の食いつきがより強固となる為、端子10と樹脂材6との密着性を向上することができる。
【0032】
<端子構造の作製方法の第1実施形態>
図1~
図3において、圧力センサ100のコネクタ101Aは、予め開口部13が形成されて端子台2の端子設置面2bに挿通もしくはインサート成形され、接着剤3により隙間が封止、もしくは固定されている端子10を準備して、その端子10の終端部10uに電線4の芯線4eをはんだ付けして電気的に導通接続し、この後に、コネクタケース102A内に樹脂材6を充填して端子10全体を取り囲むように樹脂モールドすることにより、端子10周りの防水性を確保する手順により作製されている。
【0033】
この作製手順(作製方法)においては、端子10毎の端子台2より突出した終端部10uに電線4の芯線4eを接触させる状態ではんだ付け領域10a側に溶融はんだ5mを流し込むように供給することにより、電気的な導通を確保しつつ接続状態を維持可能にはんだ材5を固化させて端子10の設置構造を作製する。
【0034】
このとき、端子10では、溶融はんだ5mがはんだ付け領域10a側に流し込まれる際に、はんだ付け領域10aから端子設置面2b側に向かう流動経路が両側辺10sと開口部13との間に狭められることによって、その開口部13の縁と共に自身の表面張力によって、そのはんだ付け領域10aから拡散するのが制限される。
【0035】
これにより、上述するように、端子10のはんだ付け領域10a内にはんだ材5を留めて樹脂材6との間に形成される隙間Gが端子設置面2bの接着剤3と樹脂材6との間に形成される隙間Gに連通してしまうことを抑制することができる。
【0036】
このように、本実施形態の端子10の設置構造およびその作製方法にあっては、電線4の相手側回路、基板の側から浸透してきた水分wがはんだ材5側の隙間Gを介して接着剤3側の隙間Gまで浸入して端子設置面2b表面に広がってしまうことを未然に防止することができる。
【0037】
したがって、圧力センサ100は、端子台2内の隣接する端子10間に水分wが浸入して短絡させてしまうことを回避することができ、その端子10間に絶縁破壊が発生してしまうことを防止することができる。
【0038】
本実施形態の第1の他の態様の端子10としては、
図4(a)に示すように、はんだ付け領域10aの端子設置面2b側に、その端子10の片側の側辺10sから幅方向に広がる切欠部14が形成されている。この端子10の切欠部14は、本実施形態の開口部13と同様に、
図4(b)に示すように、溶融はんだ5mがはんだ付け領域10aから拡散(延長)しようとするのを片側側辺10sとの間の間隔を狭めて制限する制限部として機能する。
【0039】
本実施形態の第2の他の態様の端子10としては、
図5(a)に示すように、はんだ付け領域10aの端子設置面2b側に、その端子10の両側の側辺10sから幅方向に広がる一対の切欠部15が形成されている。この端子10の切欠部15は、本実施形態の開口部13と同様に、
図5(b)に示すように、溶融はんだ5mがはんだ付け領域10aから拡散(延長)しようとするのを側辺10s間中央の間隔を狭めて制限する制限部として機能する。
【0040】
このように、これら他の態様の端子10でも、端子設置面2bの接着剤3側やはんだ材5側と樹脂材6との間に形成される隙間Gが連通してしまうことを抑制して、電線4の相手側回路、基板の側から浸透してきた水分wが端子設置面2b表面に広がってしまうことを未然に防止することができる。そのため、圧力センサ100の端子台2内で隣接する端子10間が浸入する水分wで短絡して絶縁破壊が発生してしまうことを防止することができる。このように端子10に開口部13、切欠部14、15を設けることにより、端子10の幅の狭くなった箇所での端子10表裏における樹脂材6間の接合接着面積を増やすことができることから、端子10から樹脂材6が剥離することを抑制して密着性を向上させることができる。
【0041】
さらに、本実施形態の第3、第4の他の態様の端子10としては、開口部13や切欠部14、15に代えて、端子表面10fに突出するリブ形状や段差を形成してもよく、また、その側辺10s間に連続するリブ形状を形成してもよい。具体的には、第3の他の態様の端子10は、
図6に示すように、端子10を湾曲させて一面側の端子表面10fに突出するリブ形状17を形成してもよい。また、第4の他の態様の端子10は、
図7に示すように、端子10を2段のL字形に屈曲する鉤の手形状に形成して段差部18を形成してもよい。この場合にも、本実施形態の開口部13などと同様に、溶融はんだ5mがはんだ付け領域10aから拡散(延長)しようとするのを制限する制限部として、リブ形状17や段差部18が機能することができ、同様の作用効果を得て、端子10間が浸入する水分wで短絡して絶縁破壊が発生してしまうことを防止することができる。
【0042】
<端子構造の第2実施形態>
図8は本発明の端子構造およびその作製方法に係る第2実施形態を実施する圧力センサの端子接続構造の一例を示す図である。ここで、本実施形態は上述実施形態と略同様の構成を備えることから同様の構成には同一の符号を用いることにより主に特徴部分を説明する(以下で説明する他の実施形態においても同様)。
【0043】
図8(a)において、圧力センサ100は、上述実施形態と同様に、圧力センサチップへの入出力用の電線4の芯線4eがはんだ付けされて導通接続される端子(端子部)20がコネクタケース102A内の端子台2に並列されており、その端子20はコネクタケース102A内に樹脂材6を充填して端子20全体を取り囲むように樹脂モールドすることにより、防水性が確保されている。
【0044】
端子20は、端子表面10fのはんだ付け領域10aにめっき(予備はんだでもよい)21が形成されて上述実施形態の端子10よりも溶融はんだ5mが馴染む親和面にされている。そして、
図8(b)および
図8(c)に示すように、電線4の芯線4eをはんだ付けする溶融はんだ5mは、はんだ付け領域10aのめっき21に効果的に馴染むのに対して、このはんだ付け領域10a自体は、そのはんだ付け領域10aから外れて端子設置面2b側に向かって溶融はんだ5mが積極的に拡散することを抑制(制限)することになって制限部として機能することになる。めっきの種類としては、一般的なすずめっき、または金めっきなどでよいし、これに限らず、はんだの濡れ性が改善できるような他の種類の金属めっきでもよい。この親和面を形成する方法は、端子がステンレスなどのはんだが濡れにくい材料であると更に効果が得られる。また、プレス前にはんだ付け領域となる部分に部分めっきを形成した材料を使用することで、両側の側辺10sははんだの濡れにくい素材面が露出することから、当該箇所にはんだが拡散することを抑制することができ更に効果が得られる。
【0045】
これにより、端子20でも、
図8(d)に示すように、電線4の芯線4eのはんだ付け後に樹脂モールドして絶縁性を確保する際に、はんだ材5の存在しない端子表面10fに樹脂材6を密接させて隙間Gが形成されることを制限することができ、端子設置面2bの接着剤3やはんだ材5と樹脂材6との間に形成される可能性のある隙間G同士が連通してしまうことを抑制することができる。
【0046】
<端子構造の作製方法の第2実施形態>
図8において、圧力センサ100のコネクタ101Aは、端子表面10fのはんだ付け領域10aに溶融はんだ5mの馴染む親和面としてめっき21が予め形成されて端子台2の端子設置面2bに挿通、もしくはインサート成形されて、接着剤3により隙間が封止、もしくは固定されている端子20を準備して、その端子20の終端部10uに電線4の芯線4eをはんだ付けして電気的に導通接続し、この後に、コネクタケース102A内に樹脂材6を充填して端子20全体を取り囲むように樹脂モールドすることにより、端子20周りの防水性を確保する手順により作製されている。
【0047】
この作製手順においては、端子20毎の終端部10uに電線4の芯線4eを接触させる状態ではんだ付け領域10a側に溶融はんだ5mを流し込むように供給することにより電気的な導通を確保しつつ、接続状態を維持可能にはんだ材5を固化させて端子20の設置構造を作製する。
【0048】
このとき、端子20では、溶融はんだ5mがはんだ付け領域10a側に流し込まれる際に、はんだ付け領域10aのめっき21に積極的に馴染むとともに自身の表面張力によって、そのはんだ付け領域10aから拡散するのを制限される。
【0049】
これにより、上述するように、端子20のはんだ付け領域10a内にはんだ材5を留めて樹脂材6との間に形成される隙間Gが端子設置面2bの接着剤3と樹脂材6との間に形成される隙間Gに連通してしまうことを抑制することができる。
【0050】
このように、本実施形態の端子20の設置構造およびその作製方法にあっても、上述実施形態と同様に、電線4の相手回路、基板側から浸透してきた水分wがはんだ材5側の隙間Gを介して接着剤3側の隙間Gまで浸入して端子設置面2b表面に広がってしまうことを未然に防止することができ、圧力センサ100の端子20間に絶縁破壊が発生してしまうことを回避することができる。
【0051】
ここで、本実施形態の他の態様としては、図示することは省略するが、上述の第1実施形態と組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0052】
<端子構造の第3実施形態>
図9は本発明の端子構造およびその作製方法に係る第3実施形態を実施する圧力センサの端子接続構造の一例を示す図である。
【0053】
図9(a)において、圧力センサ100は、上述実施形態と同様に、圧力センサチップへの入出力用の電線4の芯線4eがはんだ付けされて導通接続される端子(端子部)30がコネクタケース102A内の端子台2に並列されており、その端子30はコネクタケース102A内に樹脂材6を充填して端子30全体を取り囲むように樹脂モールドすることにより、防水性が確保されている。
【0054】
端子30は、
図9(b)および
図9(c)に示すように、端子表面10fのはんだ付け領域10aから下方の隣接領域30nがそのはんだ付け領域10aよりも溶融はんだ5mの馴染まない非親和面に形成されており、その隣接領域30nが端子設置面2b側に向かう溶融はんだ5mの降下を制限する制限部として機能する。
【0055】
また、端子30は、その隣接領域30nが樹脂材6に馴染む親和面に形成されており、樹脂モールドする際に樹脂材6が端子表面10fとの境界面で剥離して隙間Gが形成されることを抑制するようになっている。はんだの非親和面、樹脂材の親和面の具体例としては、コーティング、ポリウレタンなどの樹脂塗装被膜、電着塗装など、はんだの濡れ拡がりを阻害しつつ、樹脂材6の密着性、および接着剤3の接着性に影響の出ない方法で形成される。
【0056】
これにより、端子30でも、
図9(d)に示すように、電線4の芯線4eのはんだ付け領域10aへのはんだ付け後に樹脂モールドして絶縁性を確保する際に、はんだ付け領域10aの隣接領域30nにはんだ材5が存在することを抑制しつつ樹脂材6が密接することを促進することができ、端子設置面2bの接着剤3やはんだ材5と樹脂材6との間に形成される可能性のある隙間G同士が連通してしまうことを抑制することができる。
【0057】
<端子構造の作製方法の第3実施形態>
図9において、圧力センサ100のコネクタ101Aは、予めはんだ付け領域10aに隣接する端子設置面2b側の隣接領域30nがそのはんだ付け領域10aよりも溶融はんだ5mの馴染まない非親和面、かつ、樹脂材6に馴染む親和面に形成されて、端子台2の端子設置面2bに挿通、もしくはインサート成形されて、接着剤3により隙間が封止、もしくは固定されている端子30を準備して、その端子30の終端部10uに電線4の芯線4eをはんだ付けして電気的に導通接続し、この後に、コネクタケース102A内に樹脂材6を充填して端子30全体を取り囲むように樹脂モールドすることにより、端子30周りの防水性を確保する手順により作製されている。
【0058】
この作製手順においては、端子30毎の終端部10uに電線4の芯線4eを接触させる状態ではんだ付け領域10a側に溶融はんだ5mを流し込むように供給することにより電気的な導通を確保しつつ、接続状態を維持可能にはんだ材5を固化させて端子30の設置構造を作製する。
【0059】
このとき、端子30では、溶融はんだ5mがはんだ付け領域10a側に流し込まれる際に、はんだ付け領域10aから下方の隣接領域30nに拡散するのを制限されるとともに、樹脂モールドする樹脂材6はその隣接領域30nに積極的に馴染んで密着する。
【0060】
これにより、上述するように、端子30のはんだ付け領域10a内にはんだ材5を留めつつ、その隣接領域30nに樹脂材6を積極的に密着させることができ、そのはんだ材5と樹脂材6との間に形成される隙間Gが端子設置面2bの接着剤3と樹脂材6との間に形成される隙間Gに連通してしまうことを抑制することができる。
【0061】
このように、本実施形態の端子30の設置構造およびその作製方法にあっても、上述実施形態と同様に、電線4の相手回路、基板側から浸透してきた水分wがはんだ材5側の隙間Gを介して接着剤3側の隙間Gまで浸入して端子設置面2b表面に広がってしまうことを未然に防止することができ、圧力センサ100の端子10間に絶縁破壊が発生してしまうことを回避することができる。
【0062】
ここで、本実施形態の他の態様としては、図示することは省略するが、上述の第1実施形態および第2実施形態の一方または双方と組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0063】
<端子構造の作製方法の第4実施形態>
図10において、圧力センサ100のコネクタ101Aは、
図13に示す従来の端子1を準備して、溶融はんだ5mの馴染まない非親和性を有する材料よりなる板状のマスク材41をはんだ付け領域10aに隣接する境界箇所に突き当てつつ、そのはんだ付け領域10aにはんだごて45により溶融させた溶融はんだ5mを供給することにより、端子1の終端部10uに電線4の芯線4eをはんだ付けして電気的に導通接続し、この後に、コネクタケース102A内に樹脂材6を充填して端子1全体を取り囲むように樹脂モールドすることにより、端子1周りの防水性を確保する手順により作製されている。
【0064】
この作製手順においては、端子1毎の終端部10uに電線4の芯線4eを接触させる状態ではんだ付け領域10a側に溶融はんだ5mを流し込むように供給することにより電気的な導通を確保しつつ、接続状態を維持可能にはんだ材5を固化させて端子1の設置構造を作製する。
【0065】
このとき、端子1では、溶融はんだ5mがはんだ付け領域10a側に流し込まれる際に、はんだ付け領域10aの隣接境界よりも端子設置面2b側に拡散するのをマスク材41により制限される。
【0066】
これにより、上述実施形態と同様に、端子1のはんだ付け領域10a内にはんだ材5を留めて樹脂材6との間に形成される隙間Gが端子設置面2bの接着剤3と樹脂材6との間に形成される隙間Gに連通してしまうことを抑制することができる。
【0067】
ここで、本実施形態では、マスク材41を突き当ててはんだ付け領域10aの隣接箇所にはんだ付けされることを制限するが、これに限るものではなく、例えば、マスク材41に代えて、溶融はんだ5mの付着を避けるマスクとしてレジスト材を塗布(仮置き)してはんだ付け後にそのレジスト材を除去するようにしてもよい。
【0068】
このように、本実施形態の端子1の作製方法にあっても、上述実施形態と同様に、電線4の相手側回路、基板の側から浸透してきた水分wがはんだ材5側の隙間Gを介して接着剤3側の隙間Gまで浸入して端子設置面2b表面に広がってしまうことを未然に防止することができ、圧力センサ100の端子1間に絶縁破壊が発生してしまうことを回避することができる。
【0069】
ここで、本実施形態の他の態様としては、図示することは省略するが、上述の第1実施形態から第3実施形態の1つまたは複数と組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0070】
<端子構造の第4実施形態>
図11は本発明の端子構造に係る第4実施形態を備える圧力センサの端子接続構造の一例を示す図である。
【0071】
図11(a)において、圧力センサ100は、上述実施形態と同様に、圧力センサチップへの入出力用の電線4の芯線4eがはんだ付けされて導通接続される端子(端子部)50a~50cがコネクタケース102A内の端子台52に並列に配置されており、コネクタケース102A内に樹脂材6を充填して端子50a~50c全体を取り囲むように樹脂モールドすることにより、端子50a~50cの防水性が確保されている。
【0072】
端子台52は、端子50a~50cが端子設置面52a~52cにそれぞれ挿通もしくはインサート成形され、接着剤3により隙間が封止、もしくは接着剤3により固定されており、そのうちの中央の端子設置面52bが両側方の端子設置面52a、52cよりも端子の終端側に位置するオフセット配置になるように作製されている。
【0073】
これに対して、
図11(b)に示すように、端子50a~50cは、端子表面50fが幅方向の延長面50eに一致するように並列配置されているとともに、電線4の芯線4eのはんだ付け位置になることから終端部50uが同じ高さになるように端子設置面52a~52cに固定されている。なお、端子50a~50cは、端子50bを端子50a、50cよりも短尺に作製して端子設置面52a~52cに埋設固定してもよく、また共通の長さに作製して端子50bを端子50a、50cよりも深く埋設して固定するようにしてもよい。
【0074】
ここで、本実施形態における端子50a~50cは、
図11に示す延長面50eの延長線の一直線上に端子表面50fが一致するように並列される直列状態に設置されており、上述実施形態における並列(直列)方向の隣接箇所における隣接間隔が同一にされつつ、端子設置面52a~52cがオフセット位置にされている。このため、以下では、立体空間を説明する、相互に直交関係にあるX方向、Y方向、およびZ方向を利用して端子50a~50cのオフセット設置された隣接箇所における相互関係を説明する。要するに、端子50a~50cのオフセット関係を、端子表面50fの幅方向が直列する並列方向(延長面50eの延長線を延長する端子設置面52a~52cに対する平行方向)をX方向として説明する。そして、同様に、この端子50a~50cの端子表面50fの表裏間の厚さ方向、すなわち、端子設置面52a~52cに対する平行方向かつX方向に対する直交方向をY方向としてそのオフセット関係を説明する。また、その端子50a~50cの端子設置面52a~52cから終端部50uに向かう長手方向、すなわち、端子設置面52a~52cと平行なX方向およびY方向に対する直交方向をZ方向としてそのオフセット関係を説明する。
【0075】
すなわち、端子50a~50cは、設置平面が長手方向に互い違いにずれている、所謂、Z方向オフセット位置の端子設置面52a~52cに設置されており、隣接する箇所間のX方向+Z方向の沿面距離が同じ高さの端子設置面2bでの隣接間隔(並列方向に直交する正面から見たときのX方向のみの隣接間隔)よりも大きくなるように配置されている。
【0076】
これにより、端子50a~50cは、
図11(c)に示すように、電線4の芯線4e側から水分wが浸透する場合に、仮にはんだ材5や接着剤3と樹脂材6との間に隙間Gが形成されて連通する状態でも、端子設置面52a~52cにおける設置箇所間における沿面距離を、
図14に示す端子設置面2bの端子1間よりも大きく(長く)することができ、その水分wにより短絡してしまう可能性を抑制することができる。また、端子50a~50cと樹脂材6が界面又は界面付近で剥離して割れが生じた場合、その割れが繋がり難くなるため、水分wにより短絡してしまう可能性を抑制することができる。
【0077】
このように、本実施形態の端子50a~50cの設置構造にあっては、電線4の相手側回路、基板の側から浸透してきた水分wがはんだ材5側および接着剤3側の隙間Gを介して浸入する場合にも、端子設置面52a~52cでの隣接する設置間の沿面距離を長くして短絡してしまうことを抑制することができ、圧力センサ100の端子10間に絶縁破壊が発生してしまう可能性を低減することができる。
【0078】
ここで、本実施形態の他の態様としては、図示することは省略するが、上述の第1実施形態~第3実施形態の1つ以上と組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0079】
<端子構造の第5実施形態>
図12は本発明の端子構造に係る第5実施形態を備える圧力センサの端子接続構造の一例を示す図である。
【0080】
図12(a)において、圧力センサ100は、上述実施形態と同様に、圧力センサチップへの入出力用の電線4の芯線4eがはんだ付けされて導通接続される端子(端子部)60a~60cがコネクタケース102A内の端子台62に並列に配置されており、コネクタケース102A内に樹脂材6を充填して端子60a~60c全体を取り囲むように樹脂モールドすることにより、端子60a~60cの防水性が確保されている。
【0081】
端子台62は、端子60a~60cが長手方向(Z方向)には同一レベルの端子設置面62bにそれぞれ挿通もしくはインサート成形され、接着剤3により隙間が封止、もしくは接着剤3により固定されるように作製されている。
【0082】
これに対して、
図12(b)に示すように、中央の端子60bは、端子表面60fの幅方向の延長面60eが両側の端子60a、60cの延長面60eから隣接する方向に対する垂直方向、すなわち、Y方向にずれるように並列配置される、所謂、平面内オフセット位置にて固定されている。
【0083】
言い換えると、端子60a~60cは、並列X方向に対する直交Y方向に互い違いにずれている、所謂、平面内のY方向オフセット位置の端子設置面62bに設置されており、隣接する箇所間のX方向+Y方向の沿面距離が端子設置面2bでの隣接間隔(並列方向に直交する正面から見たときのX方向のみの隣接間隔)よりも大きくなるように配置されている。
【0084】
これにより、端子60a~60cは、
図12(c)に示すように、電線4の芯線4e側から水分wが浸透する場合に、仮にはんだ材5や接着剤3と樹脂材6との間に隙間Gが形成されて連通する状態でも、端子設置面62bの設置箇所間における沿面距離を、
図14に示す端子設置面2bの端子1間よりも大きく(長く)することができ、その水分wにより短絡してしまう可能性を抑制することができる。また、端子60a~60cと樹脂材6が界面又は界面付近で剥離して割れが生じた場合、その割れが繋がり難くなるため、水分wにより短絡してしまう可能性を抑制することができる。
【0085】
このように、本実施形態の端子60a~60cの設置構造にあっても、電線4の相手側回路、基板の側から浸透してきた水分wがはんだ材5側および接着剤3側の隙間Gを介して浸入する場合にも、端子設置面62bでの隣接する設置間の沿面距離を長くして短絡してしまうことを抑制することができ、圧力センサ100の端子10間に絶縁破壊が発生してしまう可能性を低減することができる。
【0086】
ここで、本実施形態の他の態様としては、図示することは省略するが、上述の第1実施形態~第4実施形態の1つ以上と組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0087】
本実施例では、圧力センサを例に説明をおこなったが、圧力センサに限らず、他にも圧力スイッチ、電磁弁コイル、中継コネクタなど、またその他一般の防水性が要求される機器において、端子と電線とがはんだ付け接続され、これらが防水カバー内部に収容され、防水カバー内部に樹脂材が充填される端子構造に応用可能である。
【0088】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0089】
1、10、20、30、50a~50c、60a~60c……端子
2、52、62……端子台
2b、52a~52c、62b……端子設置面
3……接着剤
4……電線
4e……芯線
5……はんだ材
5m……溶融はんだ
6……樹脂材
10a……はんだ付け領域
10s……側辺
10u、50u、60u……終端部
13……開口部
14、15……切欠部
21……めっき
30n……隣接領域
41……マスク材
45……はんだごて
100……圧力センサ
101A……コネクタ
101B……センサエレメント
102A……コネクタケース
102B……センサケース
G……隙間
w……水分