(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】画像形成方法、及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20250311BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250311BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20250311BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20250311BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20250311BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 112
B41J2/01 123
B41J2/01 501
B41J2/175 119
C09D11/54
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2021116112
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2024-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】寶田 達也
(72)【発明者】
【氏名】小飯塚 祐介
(72)【発明者】
【氏名】志村 直人
(72)【発明者】
【氏名】寺井 希
(72)【発明者】
【氏名】廣川 悠哉
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-163349(JP,A)
【文献】特開2020-037252(JP,A)
【文献】特開2021-091765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00
B41J 2/01
B41J 2/175
C09D 11/54
C09D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価金属塩、樹脂T
A、前記樹脂T
Aとは異なる樹脂T
B、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)を、非浸透性基材に対してインクジェット方式で付与する処理液付与工程と、
色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、
を含
み、
前記樹脂T
A
のガラス転移温度Tg
A
がTg
A
≦-15℃であり、
前記樹脂T
B
のガラス転移温度Tg
B
が30℃≦Tg
B
であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記多価金属塩がマグネシウム塩、カルシウム塩の少なくともいずれかを含む、請求項
1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
多価金属塩、樹脂T
A、前記樹脂T
Aとは異なる樹脂T
B、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)を、非浸透性基材に対してインクジェット方式で付与する処理液付与工程と、
色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、を含
み、
前記樹脂T
A
のガラス転移温度Tg
A
がTg
A
≦-15℃であり、
前記樹脂T
B
のガラス転移温度Tg
B
が30℃≦Tg
B
であることを特徴とする印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法、及び印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、現在オフセット印刷やフレキソ印刷といったアナログ印刷が主流である商業印刷や産業印刷の分野においても、版を必要とせず少量多品種なデザインを印刷可能なデジタル印刷としてインクジェットプリンターのニーズが高まっている。
【0003】
商業印刷では、パンフレット、カタログ、ポスター、マニュアルなど、産業印刷では、ラベル、パッケージ、テキスタイル、段ボールなどが主な印刷品目として挙げられる。特に産業印刷の分野では少量多品種なデザインが好まれ、商品の販売促進に活用されている。
【0004】
このようにデジタル印刷にて少量多品種の印刷物を作製する際には、印刷基材としても様々な種類のものが扱われるが、印刷基材によって表面の特性は異なっており、印刷物の品質に影響を与えることがある。
そこで、種々の基材に対して、同等の品質の印刷物を作製するために、インクを塗布する前にインクの受容性を高める前処理液を塗布することが知られている。また、前処理液には印刷物の見た目だけではなく、印刷基材に対する画像の密着性を向上させることや、前処理液自体の吐出安定性が求められている。
このような前処理液としては、例えば、前処理液を用いることで、基材へのインクの浸透を低減させて発色性及び耐擦過性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、吐出安定性に優れた処理液を用いて、非浸透性基材に対して優れた密着性を有する画像を形成することができる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の画像形成方法は、多価金属塩、樹脂T
A、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(
ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)を、非浸透性基材に
対してインクジェット方式で付与する処理液付与工程と、色材、有機溶剤、及び樹脂を含
有するインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、を含み、前記樹脂T
A
のガラス転移温度Tg
A
がTg
A
≦-15℃であり、前記樹脂T
B
のガラス転移温度Tg
B
が30℃≦Tg
B
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、吐出安定性に優れた処理液を用いて、非浸透性基材に対して優れた密着性を有する画像を形成することができる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の印刷物の製造装置の一例を示す斜視説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の印刷物の製造装置におけるメインタンクの一例を示す斜視説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、多価金属塩、樹脂TA、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)を、非浸透性基材に対してインクジェット方式で付与する処理液付与工程と、色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、を含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の画像形成装置は、多価金属塩、樹脂TA、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)を含む処理液収容部と、前記処理液収容部に収容された処理液を非浸透性基材に対してインクジェット方式で付与する処理液付与手段と、色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクを含むインク収容部と、前記インク収容部に収容された前記インクを前記処理液上に付与するインク付与手段と、を有し、さらに必要に応じてその他の手段を有する。
【0010】
従来技術では、形成した画像の基材に対する密着性が不十分であり、基材から画像がはがれてしまう場合があるという問題があった。
また、密着性を向上させるために、前処理液中に樹脂を添加した場合、ノズル近傍で樹脂が乾燥することで、ノズル詰まりやメニスカス制御の不安定化を招き、吐出安定性が悪化する場合があるという問題があった。
【0011】
本発明者らが、鋭意検討を重ねた結果、多価金属塩、樹脂TA、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)にすることにより、非浸透性基材に対する処理液の濡れ性及び基材への画像の密着性を向上させつつ、優れた吐出安定性を有する処理液とすることができることを見出した。
また、前記処理液中に多価金属塩を含むことによって、インク滴の着弾と同時にインク中の顔料が凝集されるので、色間でのにじみが生じず、鮮明な画像を得ることができる(画像にじみの抑制)。
ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まないとは、不純物として常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含む場合を除外するものではなく、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤の含有率が1質量%以下であることを意味する。
【0012】
前記インクを付与する前に、前記処理液を前記非浸透性基材に付与することから、前記処理液を前処理液と称することがある。
【0013】
<処理液付与工程及び処理液付与手段>
前記処理液付与工程は、処理液を、非浸透性基材に対してインクジェット方式で付与する工程である。
前記処理液付与手段は、前記処理液を収容する処理液収容部に収容されている処理液を、非浸透性基材に対してインクジェット方式で付与する手段である。前記処理液収容部としては、特に制限はなく、公知のインクジェットカートリッジなどを用いることができる。
【0014】
-処理液-
前記処理液は、多価金属塩、樹脂TA、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有し、さらに必要に応じて、水、有機溶剤(ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)を含有してもよい。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
なお、有機溶剤、抗菌剤等は、後述するインクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。ただし、常圧下における沸点200℃以上の有機溶剤は含まない。
【0015】
--多価金属塩(凝集剤)--
前記多価金属塩は、凝集剤として機能する。
前記多価金属塩は、記録液中の顔料を着滴後に速やかに凝集させ、カラーブリードを抑制するとともに、発色性を向上させる。
前記多価金属塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価の金属塩が好ましい。
前記2価の金属塩としては、例えば、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられる。これは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記多価金属塩の含有量としては、前記処理液の全量に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、6質量%以上がさらに好ましい。前記多価金属塩の含有量の上限として特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
--樹脂TA--
前記樹脂TAとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0017】
前記樹脂TAとしては、ガラス転移温度TgAがTgA≦-15℃であることが好ましく、-40℃≦TgA≦-15℃であることがより好ましい。
前記処理液中にTgが-15℃以下の樹脂及びシリコーン系界面活性剤を含み、沸点が200℃以上の有機溶剤を含まないことで、非浸透性基材に対してインクが着弾した直後に濡れ広がり、即座に処理膜が形成される。このため、インクを付与する前に本発明における処理液を基材に付与することによって、基材とインク膜との密着性を高めることができる。
【0018】
前記樹脂TAの態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂粒子などが挙げられる。前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、多価金属塩や有機溶剤などの材料と混合して処理液を得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0019】
前記市販品の樹脂粒子としては、例えば、ハイドランWLI―611(DIC株式会社製、TgA:-15℃)、スーパーフレックスE2000(第一工業製薬株式会社製、TgA:-38℃)、スーパーフレックス500M(第一工業製薬株式会社製、TgA:-39℃)、ビニブラン1245L(日信化学工業株式会社製、TgA:-13℃)、ビニブラン4003(日信化学工業株式会社製、TgA:-15℃)などが挙げられる。
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な密着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
【0020】
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0021】
前記樹脂TAの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、形成する画像の密着性、前記処理液の保存安定性の点から、処理液全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0022】
--樹脂TB--
前記樹脂TBとしては、同一の処理液中に含まれる前記樹脂TAと異なる種類の樹脂であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0023】
前記樹脂TBとしては、ガラス転移温度TgBが30℃≦TgBであることが好ましく、30℃≦TgB≦50℃であることがより好ましい。前記処理液にTgが30℃以上の樹脂も含むことで、吐出安定性も担保しつつ密着性を向上させることができる。
【0024】
前記樹脂TBの態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂粒子などが挙げられる。前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、多価金属塩や有機溶剤などの材料と混合して処理液を得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0025】
前記市販品の樹脂粒子としては、例えば、UW―550CS(大成ファインケミカル株式会社製(コアシェルアクリル樹脂)、TgB:40℃)、ビニブラン1008(日信化学工業株式会社製、TgB:30℃)、ビニブランGV―6181(日信化学工業株式会社製、TgB:30℃)、ビニブラン1017―AD(日信化学工業株式会社製、TgB:31℃)などが挙げられる。
【0026】
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0027】
前記樹脂TBの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、形成する画像の密着性、前記処理液の保存安定性の点から、処理液全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0028】
--シリコーン系界面活性剤--
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
一般式(S-1)
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコーン株式会社)、WET-270(エボニック社製)、SAG503A(日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0029】
前記処理液中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0030】
--その他の成分--
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
本発明に用いる記録媒体である非浸透性基材は水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルム、ナイロンフィルムなどを好適に使用することができる。
前記ポリプロピレンフィルムの例としては、東洋紡製P-2002、P-2161、P-4166、SUNTOX製PA-20、PA-30、PA-20W、フタムラ化学製FOA、FOS、FORなどが挙げられる。
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの例としては、東洋紡製E-5100、E-5102、東レ製P60、P375、帝人デュポンフィルム製G2、G2P2、K、SLなどが挙げられる。
前記ナイロンフィルムの例としては、東洋紡製ハーデンフィルムN-1100、N-1102、N-1200、ユニチカ製ON、NX、MS、NKなどが挙げられる。
【0032】
<インク付与工程及びインク付与手段>
前記インク付与工程は、インクを前記処理液上に付与する工程である。
前記インク付与手段は、色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクを含むインク収容部に収容された前記インクを前記処理液上に付与する手段である。前記インク収容容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
-インク-
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0034】
-有機溶剤-
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0035】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0036】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0037】
-色材-
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0038】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な密着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0039】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
[顔料分散体]
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0041】
-樹脂-
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な密着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0043】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、密着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0044】
-水-
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0045】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0046】
-添加剤-
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0047】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
一般式(S-1)
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0049】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0050】
-消泡剤-
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0051】
-防腐防黴剤-
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0052】
-防錆剤-
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0053】
-pH調整剤-
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0054】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0055】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0056】
[記録物]
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0057】
[記録装置、記録方法]
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について
図1乃至
図2を参照して説明する。
図1は同装置の斜視説明図である。
図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材Lにより形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0058】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0059】
なお、前記インクの付与方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
図3は、本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置の一例を示す概略図である。この
図3の画像形成装置100は、処理液を付与する手段(処理液塗布装置)と、インクを吐出する吐出手段(インク吐出ヘッド4)と、搬送ベルト7とを有する。
【0060】
(処理液とインクのセット)
本発明の処理液とインクのセットは、多価金属塩、樹脂TA、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)と、
色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクと、を有し、さらに必要に応じてその他の部材を有する。
本発明の処理液とインクのセットにおける処理液とインクは、本発明の画像形成方法における前記処理液と、前記インクと同様である。
【0061】
(印刷物の製造方法)
本発明の印刷物の製造方法は、多価金属塩、樹脂TA、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)を、非浸透性基材に対してインクジェット方式で付与する処理液付与工程と、色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、を含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の印刷物の製造方法は、本発明の画像形成方法と同様である。
【0062】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【0063】
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例では、特に記載が無い場合、インクの調製、評価は、室温25℃、相対湿度60%RHの条件下で行った。また、実施例の「部」は「質量部」を表し、「%」は、評価基準中のものを除き「質量%」を表す。
【0065】
<シアン顔料分散体(分散剤分散型)の作製>
特開2012-207202号公報の〔顔料表面改質処理〕の-方法A-に記載の方法と同様にして、シアン顔料分散体を得た。
具体的には、C.I.ピグメントブルー15:3(商品名:クロモファインブルー、大日精化工業株式会社製)20g、下記構造式(5)の化合物20mmol、及びイオン交換水200mLを、室温環境下、Silversonミキサー(6,000rpm(0.6質量%))で混合しスラリーを得る。
得られたスラリーのpHが4より高い場合は、硝酸20mmolを添加する。30分間後に、少量のイオン交換水に溶解された亜硝酸ナトリウム(20mmol)を上記スラリーにゆっくりと添加した。
更に、撹拌しながら60℃に加温し、1時間反応させた。前記C.I.ピグメントブルー15:3表面に下記構造式(5)の化合物を付加した改質顔料を得た。
次いで、NaOH水溶液によりpH10に調整することにより、30分間後に改質顔料分散体を得た。前記改質顔料分散体とイオン交換水とを用いて透析膜を用いた限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料濃度が15質量%となる親水性官能基としてビスホスホン酸基を有するシアン顔料分散体(自己分散型)を得た。
【0066】
【0067】
<ブラック顔料分散体(分散剤分散型)の作製>
シアン顔料分散体の作製において、C.I.ピグメントブルー15:3 20gをカーボンブラック(NIPEX160、degussa社製)20gに変更した以外は、シアン顔料分散体の作製と同様にして、顔料濃度が15質量%であるブラック顔料分散体を作製した。
【0068】
<マゼンタ顔料分散体(分散剤分散型)の作製>
シアン顔料分散体の作製において、C.I.ピグメントブルー15:3 20gをC.I.ピグメントレッド122(商品名:トナーマゼンタEO02、クラリアントジャパン株式会社製)20gに変更した以外は、シアン顔料分散体の作製と同様にして、顔料濃度が15質量%であるマゼンタ顔料分散体を作製した。
【0069】
<イエロー顔料分散体(分散剤分散型)の作製>
シアン顔料分散体の作製において、C.I.ピグメントブルー15:3 20gをC.I.ピグメントイエロー74(商品名:ファーストイエロー531、大日精化工業株式会社製)20gに変更した以外は、シアン顔料分散体の作製と同様にして、顔料濃度が15質量%であるイエロー顔料分散体を作製した。
【0070】
(樹脂粒子の調製例1)
<ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子液の調製>
攪拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物(数平均分子量(Mn):1,200)1,500g、2,2-ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と称することもある)220g、及びN-メチルピロリドン(以下、「NMP」と称することもある)1,347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次に、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,445g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加し、混合したものの中から4,340gを抜き出して、強攪拌下、水5,400g、及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。
次に、氷1,500gを投入し、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が40質量%となるように溶媒を留去し、ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子液を得た。
得られたポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子液について、樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」とも称することがある)を測定したところ、Tgは-20℃であった。
【0071】
(樹脂粒子の調製例2)
<ポリエステル系ウレタン樹脂粒子液の調製>
前記樹脂粒子の調製例2において、ポリエーテルポリオール(「PTMG1000」、三菱化学株式会社製、重量平均分子量:1,000)を、ポリエステルポリオール(「ポリライトOD-X-2251」、DIC株式会社製、重量平均分子量:2,000)に変更した以外は、前記樹脂粒子の調製例1と同様にして、固形分濃度30質量%のポリエステル系ウレタン樹脂粒子液を得た。
得られたポリエステル系ウレタン樹脂粒子液について、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子液の調製例1と同様にして測定したTgは57℃であった。
【0072】
(インク1の調製例)
前記ブラック顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)15質量%、前記調製例1のポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子液(固形分濃度40質量%)25質量%、前記調製例2のポリエステル系ウレタン樹脂粒子液(固形分濃度30質量%)15質量%、1,2-プロパンジオール(東京化成工業株式会社製)23質量%、3-メトキシ―3-メチル―1-ブタノール(クラレ株式会社製)10質量%、2,3-ブタンジオール(東京化成工業株式会社製)5質量%、2-エチルヘキシルアルコール(東京化成工業株式会社製)3質量%、ポリエーテル変性界面活性剤(商品名:WET-270:TEGO社製)1質量%、防腐剤として商品名:プロキセルLV(アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製)0.1質量%、及び高純水を残量となるように添加し、混合攪拌して、平均孔径1.0μmのポリプロピレンフィルターにて濾過することにより、インク1を調製した。
【0073】
(インク2~6の調製例)
表1に示す組成になるように、実施例1と同様の方法でインク2~6を調製した。
【0074】
【0075】
(処理液1~18の調製例)
表2~5に記載の組成に基づき、従来公知の方法で材料を混合し、処理液1~18を調製した。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
表2~表5中の各成分の詳細な内容については、以下のとおりである。
[多価金属塩]
・酢酸カルシウム:ナカライテスク株式会社製
・酢酸マグネシウム:ナカライテスク株式会社製
・珪酸アルミニウム:富士フィルム和光純薬株式会社製
[樹脂]
・ノニオン性ウレタン樹脂:スーパーフレックスE2000、第一工業株式会社製、体積平均粒径:700nm、固形分濃度:50%、Tg:38℃
・ノニオン性酢酸ビニル樹脂:ビニブラン4003、日信化学工業株式会社製、固形分濃度:50%、Tg:-15℃
・ノニオン性酢酸ビニル樹脂:ビニブランGV-6181、日信化学工業株式会社製、固形分濃度:50%、Tg:30℃
・ノニオン性酢酸ビニル樹脂:ビニブラン1225、日信化学工業株式会社製、固形分濃度:45%、Tg:9℃
・コアシェルカチオン性アクリル樹脂:UW-550CS、大成ファインケミカル株式会社製、固形分濃度:34%、Tg:40℃
[界面活性剤]
・シリコーン系界面活性剤:WET-270、エボニック社製
・シリコーン系界面活性剤:SAG503A、日信化学工業株式会社製
・オレフィン系界面活性剤:オレフィンEXP.4300(登録商標)、日信化学工業株式会社製
[溶剤]
・1,2-プロパンジオール、沸点:187℃
・3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、沸点:174℃
・グリセリン、沸点:290℃
【0081】
(実施例1~17及び比較例1~6)
表6~9の組み合わせで、調製したインクと処理液を用いて「処理液の吐出安定性」及び得られた画像の「密着性」について評価した。
【0082】
<処理液の吐出安定性>
調製した処理液をインクジェットプリンター(装置名:IPSiO GXe5500改造機、株式会社リコー製)に充填し、デキャップ後の吐出安定性を評価した。
まず、25℃、30%RHの環境下、プリンターのメンテナンスコマンドよりヘッドクリーニングを実行し、テストチャートを印刷してノズルの全チャンネルが吐出状態にあることを確認した。
次に、ヘッドのキャップを外した状態で5分間放置した後、再度テストチャートを印刷した。放置前後のテストチャートより、不吐出チャンネル数をカウントし、以下の基準により判定した。なお、実用に適するのは不吐出チャンネル数が10個未満(評価がA及びB)の場合である。
[評価基準]
AA:不吐出チャンネル数が1個以下
A:不吐出チャンネル数が2個以上10個未満
B:不吐出チャンネル数が10個以上20個未満
C:不吐出チャンネル数が20個以上
【0083】
<密着性>
インクジェットプリンター(装置名:IPSiO GXe5500改造機、株式会社リコー製)に充填した。
PET基板(HiFi Industrial Film社製)に対し、処理液1滴の体積を21pLとし、解像度600×600dpiの印刷率10~90%のハーフトーン画像(処理液)を印刷した。
その後、70℃の熱風乾燥ユニットに印刷物を通過させて画像(処理液)を乾燥させ、定着を行った。
次に、画像(処理液)が印刷されたPET基材に対し、インクを付与して画像を印刷した。インク1滴の体積を21pLとし、解像度600×600dpiの100%階調のカラーベタ画像を印刷した。その後、70℃の熱風乾燥ユニットに印刷物を通過させ画像(インク)を乾燥させ、定着を行った。
PET記録媒体に形成されたベタ画像に対し、布粘着テープ(ニチバン株式会社製、123LW-50)を用いた碁盤目剥離試験により、試験マス目100個の残存マス数をカウントし、下記評価基準に基づいて、記録媒体に対する「密着性」を評価した。評価がB以上であることが実使用上望ましい。
[評価基準]
AA:残存マス数が98個以上
A:残存マス数が90個以上98個未満
B:残存マス数が70個以上90個未満
C:残存マス数が70個未満
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 多価金属塩、樹脂TA、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)を、非浸透性基材に対してインクジェット方式で付与する処理液付与工程と、
色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法である。
<2> 前記樹脂TAのガラス転移温度TgAがTgA≦-15℃であり、
前記樹脂TBのガラス転移温度TgBが30℃≦TgBである、前記<1>に記載の画像形成方法である。
<3> 前記多価金属塩がマグネシウム塩、カルシウム塩の少なくともいずれかを含む、前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<4> 多価金属塩、樹脂TA、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)と、
色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクと、を有することを特徴とする処理液とインクのセットである。
<5> 多価金属塩、樹脂TA、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)を、非浸透性基材に対してインクジェット方式で付与する処理液付与工程と、
色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、
を含むことを特徴とする印刷物の製造方法である。
<6> 多価金属塩、樹脂TA、前記樹脂TAとは異なる樹脂TB、及びシリコーン系界面活性剤を含有する処理液(ただし、常圧下における沸点が200℃以上の有機溶剤を含まない)を含む処理液収容部と、
前記処理液収容部に収容された処理液を非浸透性基材に対してインクジェット方式で付与する処理液付与手段と、
色材、有機溶剤、及び樹脂を含有するインクを含むインク収容部と、
前記インク収容部に収容された前記インクを前記処理液上に付与するインク付与手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0089】
前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像形成方法、前記<4>に記載の処理液とインクのセット、前記<5>に記載の印刷物の製造方法、及び前記<6>に記載の画像形成装置によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0090】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【文献】特開2018-154118号公報
【文献】特許第6814365号公報