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特許7648955光導波路基板、光デバイス及び光デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】光導波路基板、光デバイス及び光デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/30 20060101AFI20250312BHJP
   G02B 6/24 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
G02B6/30
G02B6/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023565808
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2021045370
(87)【国際公開番号】W WO2023105717
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴
(72)【発明者】
【氏名】菊池 清史
(72)【発明者】
【氏名】川村 百合子
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-062438(JP,A)
【文献】特開2014-048630(JP,A)
【文献】特開2016-071034(JP,A)
【文献】特開平01-302211(JP,A)
【文献】特開昭58-034415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0271810(US,A1)
【文献】特開2016-167005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体と、前記基板本体に形成された光導波路と、を含む光導波路基板であって、
前記基板本体は、
前記基板本体の1つの端面を含み、前記基板本体の上面と下面との間を貫通する貫通孔と、前記貫通孔と連通し、かつ、前記基板本体の主面と平行に延出する長溝部と、を含み、
前記貫通孔は、前記光導波路に対応する位置に形成され、前記長溝部の内面は、前記貫通孔を介して前記長溝部に光ファイバが挿通された場合に前記光ファイバと接する斜面を含む、光導波路基板。
【請求項2】
前記長溝部の前記斜面は、前記長溝部の前記延出の方向と直交する断面がV字形状を有するV字溝である、請求項1に記載の光導波路基板。
【請求項3】
前記貫通孔の上面視における形状は、前記基板本体の前記端面から前記長溝部の前記延出の方向に向かって凸のU字形状部を含む、請求項1または2に記載の光導波路基板。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の光導波路基板と、
前記光導波路基板の一方の主面である実装面に実装された電子回路と、
を含み、
前記貫通孔の前記斜面は、前記長溝部の前記延出の方向に沿う中心線から前記実装面に向かって傾斜する、光デバイス。
【請求項5】
前記貫通孔を介して前記長溝部に挿通される複数の光ファイバをさらに含む、請求項4に記載の光デバイス。
【請求項6】
基板本体と、前記基板本体に形成された光導波路と、を含む光導波路基板と、前記光導波路に位置合わせされて接続される複数の光ファイバと、含む光デバイスの製造方法であって、
前記基板本体は、前記基板本体の1つの端面を含み、前記基板本体の上面と下面との間を貫通する貫通孔と、前記貫通孔と連通し、かつ、前記基板本体の主面と平行に延出する長溝部と、を含み、
複数の前記光ファイバを前記貫通孔に合わせて整列させることと、
整列された複数の前記光ファイバを前記長溝部に沿って並進させることと、
複数の前記光ファイバを前記長溝部の内部に固定することと、
を含む、光デバイスの製造方法。
【請求項7】
複数の前記光ファイバは、固定用ブロックに固定されて整列する、請求項6に記載の光デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記光ファイバは、前記長溝部に沿って並進する際に、前記光導波路基板の面方向に対して1度以上、10度以下の仰角をなす、請求項6または7に記載の光デバイスの製造方法。
【請求項9】
複数の前記光ファイバを前記貫通孔に合わせて整列させることは、電子回路が実装された前記光導波路基板に対して行われる、請求項6から8のいずれか一項に記載の光デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路基板、光デバイス及び光デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンフォトニクス技術を用いた光導波路構造は、Si基板上にSiO2を堆積し、SiO2中にSi層を堆積し、フォトリソグラフィ技術によってSi層を所望のパターンにエッチング加工して形成される。Si基板の表面にはフォトダイオード等の駆動用の機器の配線や基板固定用のパッドが設けられる。配線やパッドは、例えば、AlやAu等の金属層により形成される。このようなシリコンフォトニクスの光導波路基板に光信号を入出力するためには、Si基板の光導波路端面に光学研磨加工を施し、光回路の機能に応じて各光導波路に複数本の光ファイバを接続する必要がある。
【0003】
公知の光学研磨加工は、他の金属製品の磨き工程と同様に、研磨砥粒の種類やサイズを変えて荒研磨工程、中程度の研磨工程、及び微細なシリカ粒子を用いた仕上げ研磨工程を経て実施され、大掛かりな研磨装置や多大な作業時間を必要とする。また、光導波路基板のSi導波路層より上側の層は数μm程度と非常に薄いため、光学研磨工程の際に発生するチッピングにより基板上層に小さな欠けやヒビが発生するおそれがある。欠けが光導波路の端面に達した場合、光ファイバを接続した際に大きな光接続損失をもたらすことになる。
【0004】
また、光ファイバを光導波路端面に接続、固定する場合、光ファイバアレイを用いて複数の光ファイバを一括して光学調芯して固定する。光ファイバアレイは、接続時の光導波路の間隔に合わせて光ファイバを高精度に整列させるように構成されている。そして、光ファイバアレイによる光ファイバの接続は、被覆を除去した光ファイバをV溝加工が施されたガラス基板に配置し、ガラス基板をV溝の法面に光ファイバが密着するように押え付け、更に光接続面とは反対側に光ファイバの被覆部を保護樹脂で覆うことによって行われる。このような光ファイバの接続は、光ファイバの折り曲げ耐性や、V溝からの抜け防止を図ることができる。光ファイバアレイの光学端面に光学研磨を施せば、光学端面の角度を自由に調整することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社、インターネット、WEBページURL: https://keytech.ntt-at.co.jp/optservice/prd_0029.html 2021年11月29日アクセス。
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、上記の構成は、研磨に比較的長い時間を要する点に改善の余地がある。具体的には、光ファイバアレイを用いた光学調芯工程は、低損失な光接続実現のため、光ファイバアレイと光導波路基板との接続端面同士の平行度合わせや間隔調整、アクティブアライメントによる光軸調芯と、紫外線硬化接着剤を用いた接着剤による固定とが必要となる。そして、部材の設置から調芯及び接着剤の紫外線硬化を含む処理時間は10分以上になる。
【0007】
また、シリコンフォトニクスの光導波路基板は光トランシーバの主要部品として制御基板に実装される。実装は、光導波路基板の表面に設けた金バンプや銅ピラーを介するフリップチップが主流である。フリップチップによる実装は、熱工程等を含むために光ファイバが無い方が望ましい。したがって、光ファイバは、フリップチップによる実装後に接続することが好ましい。しかし、実装後に光ファイバを接続する場合、光ファイバと接続される光導波路を視認することが困難になるという課題が生じる。すなわち、光導波路基板は、実装後に表裏が逆になり、光導波路が視認できる側の面(上面)を確認することが困難になる。
【0008】
以上説明したように、公知の光ファイバアレイにおける光導波路端面のアクティブアライメント方法においては、研磨工程を含む作製から調芯、固定までに複雑な工程を含み、作製時間やコストが課題となる。また、フリップチップ実装においては、アクティブアライメントに至る前段階で光導波路の位置を確認することが困難である、という課題があった。本開示は、このような点に鑑みてなされたものであり、研磨工程を含む作製や光ファイバの調芯にかかる時間を短縮し、かつ、実装後の光ファイバとの接続時に光導波路を容易に確認できる光導波路基板、光デバイス及び光デバイスの製造方法に関する。
【0009】
上記目的を達成するために本開示の一形態の光導波路基板は、基板本体と、前記基板本体に形成された光導波路と、を含む光導波路基板であって、前記基板本体は、前記基板本体の1つの端面を含み、前記基板本体の上面と下面との間を貫通する貫通孔と、前記貫通孔と連通し、かつ、前記基板本体の主面と平行に延出する長溝部と、を含み、前記貫通孔は、前記光導波路に対応する位置に形成され、前記長溝部の内面は、前記貫通孔を介して前記長溝部に光ファイバが挿通された場合に前記光ファイバと接する斜面を含む。
【0010】
本開示の一形態の光デバイスは、上記の光導波路基板と、前記光導波路基板の一方の主面である実装面に実装された電子回路と、を含み、前記貫通孔の前記斜面は、前記長溝部の前記延出の方向に沿う中心線から前記実装面に向かって傾斜する。
【0011】
本開示の一形態の光デバイスの製造方法は、基板本体と、前記基板本体に形成された光導波路と、を含む光導波路基板と、前記光導波路に位置合わせされて接続される複数の光ファイバと、含む光デバイスの製造方法であって、前記基板本体は、前記基板本体の1つの端面を含み、前記基板本体の上面と下面との間を貫通する貫通孔と、前記貫通孔と連通し、かつ、前記基板本体の主面と平行に延出する長溝部と、を含み、複数の前記光ファイバを前記貫通孔に合わせて整列させることと、整列された複数の前記光ファイバを前記長溝部に沿って並進させることと、複数の前記光ファイバを前記長溝部の内部に固定することと、を含む。
【0012】
また、本開示の一形態の光デバイスの製造方法は、光導波路基板と、前記光導波路基板の端面に位置合わせされて接続される複数の光ファイバと、含む光デバイスの製造方法であって、前記光導波路基板は、前記端面を含み、前記光導波路基板を厚さ方向に貫通すると共に、前記光導波路基板の光導波路に対応する位置に形成されている貫通孔と、当該貫通孔と連通し、かつ、前記光導波路基板の主面と平行に延出し、内面が前記光ファイバに接する斜面を含む長溝部と、を有し、複数の前記光ファイバを前記貫通孔に合わせて整列させることと、整列された複数の前記光ファイバを前記長溝部に沿って並進させることと、複数の前記光ファイバを前記長溝部の内部に固定することと、を含む。
【0013】
以上の形態によれば、研磨工程を含む作製や光ファイバの調芯にかかる時間を短縮し、かつ、実装後の光ファイバとの接続時に光導波路を容易に確認できる光導波路基板、光デバイス及び光デバイスの製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態の光デバイスの下面斜視図である。
図2図1に示す光デバイスの上面斜視図である。
図3図1中に示す一部を拡大して上面から見た斜視図である。
図4】(a)は光ファイバ接続部の上面図、(b)は縦断面図、(c)は横断面図である。
図5】(a)は光導波路基板の下面図、(b)は横断面図である。
図6】(a)、(b)、(c)は、いずれも光デバイスの製造工程を説明するための図である。
図7】(a)、(b)、(c)は、いずれも図6(c)に続く光デバイスの製造工程を説明するための図である。
図8図7(b)に示した光デバイスを上面から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一実施形態を説明する。本実施形態の説明で使用する図面は、本開示の技術的な思想や構成要素、構成要素の配置や関係を説明することを目的とし、本開示の具体的な形状やそのサイズ、縦、横、厚さの比を必ずしも正確に示すものではない。
【0016】
(光デバイス)
図1は、本開示の一実施形態の光デバイス100の下面斜視図、図2は、図1に示す光デバイス100の上面斜視図、図3は、図1中に示す範囲Aを拡大して上面から見た斜視図である。なお、本実施形態の上面、下面は、図1中の座標系により規定され、z軸の座標が大きい側を小さい側に対して「上」、あるいは「上方」とする。また、z軸の座標が小さい側を大きい側に対して「下」、あるいは「下方」とする。下面10aは、光デバイス100の光導波路基板10の図示しない光導波路が見える側の面と反対の面である。上面10bは、下面10aの裏面にあたる。上面10aと下面10bとの間の面を側面10cとする。側面10cのうち、光ファイバ23aが接続される側の側面を特に端面10dとする。なお、このように、z軸の座標が大きい側を下面10a、小さい側を上面10bとするのは、本実施形態の光ファイバ23aの接続及び調芯が、光導波路基板10の上下を反転して行われるためである。また、図1図2図3の斜視図は、いずれも光ファイバ23aが端面10dに近接した状態を示していて、光ファイバ23aが光導波路基板10内の光導波路と接続された状態を示すものではない。
【0017】
図1から図3に示すように、光導波路基板10は、基板本体101と、基板本体に形成された光導波路102と、を含む。基板本体は、1つの端面10dを含み、基板本体を厚さ方向に貫通する貫通孔12aと、貫通孔12aと連通し、かつ、基板本体101の主面(例えば下面10a)と平行に延出する長溝部12bと、を含む。貫通孔12aは、光導波路102に対応する位置に形成され、長溝部12bの内面は、貫通孔12aを介して長溝部12bに光ファイバ23aが挿通された場合に、光ファイバ23aと接する斜面12c(図4)を含む。このような貫通孔12a、長溝部12bは、後述する光ファイバ接続部12を構成する。
【0018】
ここで、「貫通孔12aが端面10dを含む」とは、上面視において、貫通孔の縁部分が端面10dと交差することを指す。すなわち、貫通孔12aは、光導波路基板10の面内に包含される位置に形成されず、端面10dと交差する箇所において内面が開放される。光ファイバ23aは、貫通孔12aの開放された内面と係り合い、長溝部12bにおいて位置合わせされる。
【0019】
光導波路基板10は、さらに、光ファイバ23aと、電子回路3(図5)と接続することによって光デバイスを構成する。本実施形態は、後に詳述するように、貫通孔12aによって位置合わせされた光ファイバ23aを、光導波路基板10の図示しない光導波路と高い精度で接続する。このため、貫通孔12aは、不図示の光導波路に対応する位置に形成されている。したがって、本実施形態は、貫通孔12aの位置により、間接的に光導波路の位置を確認することが可能になる。このような点についても後述する。
【0020】
以上の構成において、光導波路基板10はSi製のフォトニクス基板であってもよい。光ファイバ23aは、光導波路たるコア層24と、コア層24を保護するクラッド層25とによって構成される。光ファイバ23aの各々はガラスブロック26によって束ねられ、光ファイバ群23を構成する。図2に示すように、ガラスブロック26には挿通された光ファイバ23aを保持する保持孔26aが形成されている。保持孔26aは縦断面が長円形状を有し、この長径は光ファイバ23aの被覆直径×芯数で求まる値より大きく設計されている。保持孔26aに挿通された光ファイバ23aは、互いに平行に、かつ等間隔に保持される。また、光ファイバ23aの光導波路基板10に向かう側の一部は被覆が除去されてクラック層25が露出している。光導波路基板10の上面10bにはフリップフロップ実装用のバンプ13が複数掲載されている。
【0021】
(光ファイバ接続部)
次に、光ファイバ接続部12について説明する。図4(a)、図4(b)、図4(c)、図5(a)及び図5(b)は、光ファイバ接続部12を説明するための図である。図4(a)は光導波路基板10の上面10bの側から見た光ファイバ接続部12を示す上面図、図4(b)は図4(a)中の矢線IVb、IVbに沿う断面図、図4(c)は図4(a)中の矢線IVc、IVcに沿う断面図である。長溝部12bは、斜面の頂角12eと、頂角12eから光導波路基板の下面10aに向かって斜めに伸びる斜面12cと、を有している。頂角12eの連続する頂点は、長溝部12bの延出方向に沿う中心線と一致する。このため、斜面12cは、長溝部12bの延出の方向に沿う中心線から電子回路3が実装される上面10b(実装面)に向かって傾斜するものといえる。
【0022】
本実施形態の斜面12cは、図4(c)に示すように、長溝部12bの延出方向と直交する断面がV字形状を有するV溝となる。光ファイバ23aが長溝部12bに挿通された場合、光ファイバ23aはV溝に接し、頂角12eの両側の斜面12cによって頂角12eから離れる方向の移動を規制され、頂角12eに位置合わせされる。
【0023】
また、図5(a)は、光導波路基板10を下面10aから見た下面図、図5(b)は、図5(a)の図5(a)中の矢線Vb、Vbに沿う断面図である。なお、図5(a)、図5(b)において、光ファイバ23aは貫通孔12aに一部入り、長溝部12bには挿通されていない状態である。図4(a)、図5(a)に示すように、本実施形態の貫通孔12aの縁部は、上面視において、端面10dの側から長溝部12bの延出方向に向かって延び、弧を描いて再び端面12dに向かうように形成される。このような形状を、本実施形態では「U字形状」とも記す。
【0024】
また、本実施形態は、図5(b)に示すように、光導波路基板10の上面10bにバンプ13を介して電子回路3が実装される。このことから、本実施形態の上面10bは、実装面に相当する。電子回路3の実装は、光ファイバ23aの接続、調芯以前に行われる。このため、本実施形態は、複数の光ファイバ23aを貫通孔12aに合わせて整列させることは、電子回路3が実装された光導波路基板10に対して行われる。このような本実施形態は、光ファイバ23aが接続されていない状態で電子化路3を実装でき、電子回路3の実装を容易にしている。
【0025】
図5(b)に示すように、貫通孔12aの内面には、頂角12cの頂点、すなわち長溝部12bの延出方向に沿う中心線から実装面である上面10bに向かって傾斜するスロープ12fが形成されている。このようなスロープ12fは、貫通孔12aによって等間隔、及び平行に位置合わせされた光ファイバ23aが下方に移動する際に光ファイバ23aと接触し、光ファイバ23aをスムーズに長溝部12bに続く貫通孔12aの下部に導く機能を有する。図5(c)に示すように、長溝部12bは光導波路102と対応する位置に形成されている。貫通孔12aの下方に導かれた光ファイバ23aは、長溝部12bに沿って進み、その端面が光導波路102の端面に位置合わせされる。なお、「長溝部12bと光導波路102とが対応する位置」は、このように、長溝部23aに挿通された光ファイバ23aの光軸と、光導波路102の光軸とが一致する位置をいう。
【0026】
V字形状の長溝部12bは、公知のフォトリソグラフィ及びウェットエッチングにより形成可能である。長溝部12bの形成は、光導波路102の位置に合わせて行われる。長溝部12bの深さは、光ファイバ23aのコア層24の中心が光導波路光導波路102の高さと一致するように調整される。本実施形態は、長溝部12bのV溝に光ファイバ23aを配置することにより、光学研磨工程やアクティブアライメント工程を省略しながら低損失な光接続を確立することが可能である。
【0027】
(光デバイスの製造方法)
次に、以上説明した光デバイス100の製造方法を説明する。図6(a)、図6(b)、図6(c)、図7(a)、図7(b)及び図7(c)は、光デバイス100を製造する各工程を説明するための図である。本実施形態の光デバイス100の製造方法においては、先ず、図6(a)に示すように、複数の光ファイバ23aをガラスブロック26の保持孔26aに通し、光ファイバ群23を形成する。このとき、光ファイバ23aの光導波路基板10に向かう一部は、被覆材除去及びクリーブカットされている。次に、光ファイバ群23は、図6(b)に示すように、先端が上方から貫通孔12aにスライド挿入され、等間隔に整列される。なお、電子回路3は、図6(b)、図6(c)に示すように、すでに上面10bに実装されている。
【0028】
この際、貫通孔12aがU字の比較的緩やかな形状を有するため、光ファイバ23aを長溝部12bに向かって押し進めると、貫通孔12aによって水平方向の位置が規制され、水平方向のアライメントが可能になる。さらに光ファイバ23aは、図6(c)に示すように、光導波路基板10を下方に移動する。貫通孔12aのU字形状部の凸部頂点は、長溝部12bの頂角12eの頂点と光導波路基板10の面方向において一致している。このため、下方に移動した光ファイバ23aは、貫通孔12aの内面に接触しながらV字溝の頂角に向けてスムーズに下降する。この際、前述したように、光ファイバ23aが貫通孔12aの内面に設けられたスロープ12fをスライドし、その後長溝部12bにスムーズに装荷される。以上の工程により、本実施形態の光デバイスの製造方法は、光ファイバ23aと光導波路との水平方向の調芯が可能になる。
【0029】
また、本実施形態は、光ファイバ23aを長溝部12bに向かって押し進めるにあたり、光ファイバ23aを光導波路基板10の下面10aに対して1度以上、10度以下の角度で傾けてもよい。このとき、光ファイバ23aの傾きは、光ファイバ23aが下面10aよりも上方を向く、すなわち仰角をなすようにすることが好ましい。このようにすると、光ファイバ23aの長溝部12bの内面に対する密着性を高めて光損失を低減することに寄与する。
【0030】
図7(a)は、光ファイバ23aの装荷後、ガラスブロック26を光導波路基板10の端面10dに近接させた状態を示している。このような状態において、本実施形態は、電子回路3が貼り合わせられていない下面10aから光導波路基板10を見た場合、貫通孔12aの位置により光導波路の位置を確認することができる。
【0031】
次に、本実施形態は、図7(b)に示すように、紫外線(UV)硬化接着剤9をガラスブロック26の保持孔26aの内部にとぎ滴下し、紫外線を適量照射することにより固定される。紫外線硬化接着剤は、貫通孔12a及び長溝部12bの全体に充填され、光ファイバ23aを光導波路基板10に強固に固定する。図7(c)は、ガラスブロック26の保持孔26aの全体に紫外線硬化接着剤9が充填された状態を示している。また、図8は、図7(b)に示した光デバイスを、電子回路3が実装された側、つまり上面10bから見た状態を示している。
【0032】
以上説明したように、本実施形態は、貫通孔12a及び長溝部12bを設けたことによって光導波路基板の光導波路に光ファイバを適正な角度で位置合わせすることができる。このため、本実施形態は、公知の技術よりも光導波路と光ファイバ23aとの大まかなアライメントの精度を高めることができるので、光導波路及び光ファイバ端面の研磨、あるいは調芯にかかる時間を短縮することができる。また、貫通孔12aは、光導波路と位置合わせされる光ファイバの位置に応じて形成されるため、必然的に光導波路に対応する位置に形成されることになる。このため、本実施形態は、光デバイスの下面10aの側から光導波路の位置を確認し、光ファイバ23aの調芯及び接続の作業を容易にすることができる。なお、光ファイバ23aの調芯及び接続の作業は、作業者が手作業で行うものであってもよい。また、ロボット等によって自動的、または作業者がモニタ等をみながら制御してもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 光導波路基板
12a 貫通孔
12b 長溝部
12c 斜面
12d 端面
12e 頂角
12f スロープ
13 バンプ
23 光ファイバ群
23a 光ファイバ
24 コア層
25 クラック層
26 ガラスブロック
26a 保持孔
100 光デバイス
101 基板本体
102 光導波路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8