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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20250321BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20250321BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
F25B1/00 387L
F24F11/86
F25B1/00 361A
F25B1/00 371Z
F24F5/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021177406
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023066677
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2024-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 和輝
(72)【発明者】
【氏名】岩本 規孝
(72)【発明者】
【氏名】黒田 太郎
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/193952(WO,A1)
【文献】特開2019-132254(JP,A)
【文献】特開2014-126288(JP,A)
【文献】特開2009-222248(JP,A)
【文献】特開2011-064436(JP,A)
【文献】特開2017-187227(JP,A)
【文献】国際公開第2020/174677(WO,A1)
【文献】特開昭58-208545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 11/86
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(14)と、屋外の空気との間で熱交換を行うための第1熱交換器(11)と、冷媒の圧力を下げる減圧装置(13)と、冷媒の熱交換を行う第2熱交換器(12)と、を含む冷媒回路(10)と、
前記冷媒回路に対して、冷凍サイクル運転と、フリークーリング運転と、前記圧縮機に冷凍機油を回収する油回収運転の制御を実施するコントローラ(20)と、
を備え、
前記コントローラは、前記冷凍サイクル運転では前記圧縮機がガス状態の冷媒を吸入するように制御し、前記フリークーリング運転では前記圧縮機が液状態の冷媒を吸入するように制御し、
前記コントローラは、前記フリークーリング運転中に所定条件を満たしたときに前記油回収運転を実施する、冷凍サイクル装置(1)。
【請求項2】
前記冷媒回路は、前記圧縮機、前記第2熱交換器、前記減圧装置、前記第1熱交換器の順に冷媒を流す第1流路に切り換えるための切換機構(15)を含み、
前記コントローラは、前記フリークーリング運転では、前記第1流路を冷媒が流れるように、前記冷媒回路を制御する、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【請求項3】
前記コントローラは、前記油回収運転のときに前記第1流路(100)を冷媒が流れるように前記冷媒回路を制御する、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【請求項4】
前記切換機構は、前記圧縮機、前記第1熱交換器、前記減圧装置、前記第2熱交換器の順に冷媒を流す第2流路(200)に切り換えることができ、
前記コントローラは、前記油回収運転のときに前記第2流路を冷媒が流れるように前記切換機構を制御する、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【請求項5】
前記コントローラは、前記油回収運転のときに、前記圧縮機が吸入して吐出する冷媒がガス状態になるように、前記冷媒回路を制御する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【請求項6】
前記コントローラは、前記油回収運転のときに、前記圧縮機が吸入して吐出する冷媒が液状態になるように、前記冷媒回路を制御する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【請求項7】
前記コントローラは、前記フリークーリング運転における前記圧縮機の駆動時間を積算した積算時間が設定時間に達したときに前記所定条件を満たしたとして前記油回収運転を実施する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【請求項8】
前記コントローラは、前記設定時間を屋外の気温または室内の気温により変更する、
請求項7に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【請求項9】
前記コントローラは、前記冷凍サイクル運転時と前記フリークーリング運転時で重みづけを変えて前記積算時間のカウントを行う、
請求項7または請求項8に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【請求項10】
前記コントローラは、前記フリークーリング運転の終了時に、前記油回収運転を行うように前記冷媒回路を制御する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【請求項11】
前記コントローラは、前記フリークーリング運転における前記圧縮機の運転周波数を前記圧縮機の最低運転周波数に制御する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【請求項12】
前記コントローラは、前記冷凍サイクル運転時に、前記油回収運転とは異なる他の油回収運転を行うよう制御する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フリークーリング運転ができる冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2019-132254号公報)に記載されている圧縮機を液搬送ポンプとして使用して、フリークーリング運転を行う冷凍サイクル冷凍装置が提案されている。冷凍サイクル装置は、通常の冷凍サイクル運転では、ガス状態の冷媒を圧縮機で吸入し、圧縮して吐出する蒸気圧縮式の冷凍サイクルを実施する。例えば、温度の低い外気を冷房の熱源に用いることができるときには、電力消費を抑えるためにフリークーリング運転が行われる場合がある。特許文献1に記載されているように、圧縮機を用いてフリークーリング運転を行う場合には、冷凍サイクル装置は、圧縮機に液状態の冷媒を吸入して液状態の冷媒を吐出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
圧縮機で液状態の冷媒を吸入するフリークーリング運転では、液状態の冷媒で冷凍機油が希釈される。フリークーリング運転を長時間続けて、圧縮機での冷凍機油の希釈が進むと、圧縮機で摺動部の焼き付きのリスクが高くなる。
【0004】
フリークーリング運転を行う冷凍サイクル装置には、フリークーリング運転で進む冷凍機油の希釈による圧縮機の焼き付きのリスクを低減させるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の冷凍サイクル装置は、冷媒回路とコントローラとを備える。冷媒回路は、圧縮機と、屋外の空気との間で熱交換を行うための第1熱交換器と、冷媒の圧力を下げる減圧装置と、冷媒の熱交換を行う第2熱交換器と、を含む。コントローラは、冷媒回路に対して、冷凍サイクル運転と、フリークーリング運転と、圧縮機に冷凍機油を回収する油回収運転の制御を実施する。コントローラは、冷凍サイクル運転では圧縮機がガス状態の冷媒を吸入するように制御し、フリークーリング運転では圧縮機が液状態の冷媒を吸入するように制御する。コントローラは、フリークーリング運転中に所定条件を満たしたときに油回収運転を実施する。
【0006】
第1観点の冷凍サイクル装置では、フリークーリング運転中に油回収運転を行うことで、フリークーリング運転で冷凍機油が不足するのを抑制し、圧縮機で焼き付きが発生するリスクを低減することができる。
【0007】
第2観点の冷凍サイクル装置は、第1観点の冷凍サイクル装置であって、冷媒回路は、圧縮機、第2熱交換器、減圧装置、第1熱交換器の順に冷媒を流す第1流路に切り換えるための切換機構を含む。コントローラは、フリークーリング運転では、第1流路を冷媒が流れるように、冷媒回路を制御する。
【0008】
第2観点の冷凍サイクル装置では、第1流路で冷媒が循環すると圧縮機と第2熱交換器の間に冷凍機油が溜まり易く、圧縮機と第2熱交換器の間に溜まった冷凍機油を圧縮機に吸入することが容易なため、冷凍機油の回収が容易になる。
【0009】
第3観点の冷凍サイクル装置は、第2観点の冷凍サイクル装置であって、コントローラは、油回収運転のときに第1流路を冷媒が流れるように冷媒回路を制御する。
【0010】
第3観点の冷凍サイクル装置では、フリークーリング運転から油回収運転に移行する場合、冷媒の流れ方向を切り換えなくても済むので、流路の切り換えに必要な時間を省いて、油回収運転の時間を短縮することができる。
【0011】
第4観点の冷凍サイクル装置は、第2観点の冷凍サイクル装置であって、切換機構は、圧縮機、第1熱交換器、減圧装置、第2熱交換器の順に冷媒を流す第2流路に切り換えることができる。コントローラは、油回収運転のときに第2流路を冷媒が流れるように切換機構を制御する。
【0012】
第4観点の冷凍サイクル装置では、油回収運転のときに第2熱交換器から圧縮機に向かって冷媒が流れるので、第2熱交換器と圧縮機の間に溜まった冷凍機油を回収し易くなる。
【0013】
第5観点の冷凍サイクル装置は、第1観点または第2観点の冷凍サイクル装置であって、コントローラは、油回収運転のときに、圧縮機が吸入して吐出する冷媒がガス状態になるように、冷媒回路を制御する。
【0014】
第5観点の冷凍サイクル装置では、油回収運転時に、圧縮機をフリークーリング運転よりも高い運転周波数で駆動できるので、冷凍機油を効率よく回収できる。
【0015】
第6観点の冷凍サイクル装置は、第1観点または第2観点の冷凍サイクル装置であって、コントローラは、油回収運転のときに、圧縮機が吸入して吐出する冷媒が液状態になるように、冷媒回路を制御する。
【0016】
第6観点の冷凍サイクル装置では、フリークーリング運転の状態で油回収を行うことができ、フリークーリング運転から油回収運転に切り換える時間を省くことができる。
【0017】
第7観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第6観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、コントローラは、フリークーリング運転における圧縮機の駆動時間を積算した積算時間が設定時間に達したときに所定条件を満たしたとして油回収運転を実施する。
【0018】
第7観点の冷凍サイクル装置では、フリークーリング運転時に冷凍機油が圧縮機から流出するのを考慮した油切れを防ぐ適切なタイミングで油回収運転を行うことができる。
【0019】
第8観点の冷凍サイクル装置は、第7観点の冷凍サイクル装置であって、コントローラは、設定時間を屋外の気温または室内の気温により変更する。
【0020】
第8観点の冷凍サイクル装置では、気温による冷凍機油の冷媒への溶け込みの違いを考慮した適切なタイミングで油回収運転を行うことができる。
【0021】
第9観点の冷凍サイクル装置は、第7観点または第8観点の冷凍サイクル装置であって、コントローラは、冷凍サイクル運転時とフリークーリング運転時で重みづけを変えて積算時間のカウントを行う。
【0022】
第9観点の冷凍サイクル装置では、冷凍サイクル運転時とフリークーリング運転時の冷凍機油が流れ出し易さの違いを考慮した適切なタイミングで油回収運転を実施できる。
【0023】
第10観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第9観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、コントローラは、フリークーリング運転の終了時に、油回収運転を行うように冷媒回路を制御する。
【0024】
第10観点の冷凍サイクル装置では、フリークーリング運転の終了後に蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を実施する場合に、冷凍サイクル運転で圧縮機の焼き付きが発生するリスクを低減することができる。
【0025】
第11観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第10観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、コントローラは、フリークーリング運転における圧縮機の運転周波数を圧縮機の最低運転周波数に制御する。
【0026】
第11観点の冷凍サイクル装置では、フリークーリング運転時に圧縮機で焼き付きが発生するリスクを大幅に低減することができる。
【0027】
第12観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第11観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、コントローラは、冷凍サイクル運転時に、油回収運転とは異なる他の油回収運転を行うよう制御する。
【0028】
第12観点の冷凍サイクル装置では、油回収運転を、圧縮機がガス状態の冷媒を吸入する冷凍サイクル運転と圧縮機が液状態の冷媒を吸入するフリークーリング運転で状況が異なる圧縮機に合わせて行うことができ、圧縮機に不具合が生じるリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第2流路で冷媒が流れる冷凍サイクル装置の冷凍サイクル運転を説明するための模式図である。
図2】第1流路で冷媒が流れる冷凍サイクル装置のフリークーリング運転を説明するための模式図である。
図3】第2流路で冷媒が流れる冷凍サイクル装置の油回収運転を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
(1)全体構成
図1及び図2には、冷凍サイクル装置1の構成の概要が示されている。冷凍サイクル装置1は、冷媒回路10とコントローラ20とを備えている。冷媒回路10には、第1熱交換器11と第2熱交換器12と減圧装置13と圧縮機14とが含まれている。第1熱交換器11と第2熱交換器12と減圧装置13と圧縮機14とは、冷媒を流すための冷媒管16によって接続されている。図1及び図2においては、斜線とドットを用いたハッチングにより冷媒が表されている。斜線によるハッチングは、液状態の冷媒RRを示しており、ドットを用いたハッチングは、ガス状態の冷媒GRを示している。ガス状態の冷媒GRの概念には、ガス状態の冷媒の中に少量の液状態の冷媒が混じった冷媒も含まれ、液状態の冷媒RRの概念には、液状態の冷媒の中に少量のガス状態の冷媒が混じった冷媒が含まれる。図1には、第2流路200を冷媒が流れているときの冷媒回路10が示され、図2には、第1流路100を冷媒が流れているときの冷媒回路10が示されている。冷凍サイクル装置1は、第1流路100と第2流路200とを切り換えられるように、四方弁15をさらに備えている。ここでは、第1流路100と第2流路200の切り換えを行う切換機構として、四方弁15が用いられている。しかし、切換機構は、四方弁15に限られるものではない。例えば、第2流路200と第1流路100の切り換えを行う切換機構は、三方弁を2つ用いて構成することもできる。
【0031】
第2流路200では、圧縮機14、第1熱交換器11、減圧装置13、第2熱交換器12の順に冷媒が流れ、さらに、第2熱交換器12から圧縮機14に冷媒が流れる。言い換えると、第2流路200は、圧縮機14、第1熱交換器11、減圧装置13、第2熱交換器12の順に冷媒が流れるループを形成しているということである。
【0032】
第1流路100では、圧縮機14、第2熱交換器12、減圧装置13、第1熱交換器11の順に冷媒が流れ、さらに、第1熱交換器11から圧縮機14に冷媒が流れる。言い換えると、第1流路100は、圧縮機14、第2熱交換器12、減圧装置13、第1熱交換器11の順に冷媒が流れるループを形成しているということである。
【0033】
第1熱交換器11は、冷媒と屋外の空気OAとの間で熱交換を行うための熱交換器である。図1及び図2において、第1熱交換器11と重ねて描かれている破線で示された矢印が屋外の空気OAの流れを示している。第2熱交換器12は、冷媒と室内の空気IAとの間で熱交換を行うための熱交換器である。図1及び図2において、第2熱交換器12と重ねて描かれている破線で示された矢印が室内の空気IAの流れを示している。
【0034】
減圧装置13は、冷媒の圧力を下げる機能を有する装置である。減圧装置13は、減圧装置13を通過する前の冷媒に比べて、減圧装置13を通過した後の冷媒の圧力を低くすることができる。また、減圧装置13は、通過する冷媒の圧力を変化させない開状態を取ることもできる。言い換えると、開状態のときに、減圧装置13は、流路抵抗が最小になる。
【0035】
圧縮機14は、図1に示されているように、ガス状態の冷媒GRを吸入し、ガス状態の冷媒GRを圧縮して吐出することができる。また、圧縮機14は、図2に示されているように、液状態の冷媒RRを吸入して吐出するポンプ機能を有している。圧縮機14は、内部に冷凍機油を保持している。圧縮機14は、冷媒と冷凍機油とが混じった状態で動作することで、圧縮機14の中で摺動する摺動部の潤滑を冷凍機油で行って、摺動部の焼き付きを防いでいる。圧縮機14は、運転周波数を変更することにより、容量を変更することができる圧縮機である。
【0036】
四方弁15は、第2流路200で冷媒を流すように冷媒回路10を切り換えるときには、圧縮機14から吐出された冷媒を第1熱交換器11に流し、第2熱交換器12から流出する冷媒を圧縮機14に流す。四方弁15は、第1流路100で冷媒を流すように冷媒回路10を切り換えるときには、圧縮機14から吐出された冷媒を第2熱交換器12に流し、第1熱交換器11から流出する冷媒を圧縮機14に流す。
【0037】
冷媒回路10は、コントローラ20により制御されている。詳細には、コントローラ20は、減圧装置13の減圧の程度、圧縮機14の運転周波数及びオンオフ並びに四方弁15の切り換えを制御する。
【0038】
また、冷凍サイクル装置1は、第1熱交換器11に屋外の空気OAの気流を発生させる機能及び第2熱交換器12に室内の空気IAの気流を発生させる機能を有している。そのために、冷凍サイクル装置1は、例えば、第1熱交換器11に屋外の空気OAの気流を発生させるための第1ファン(図示せず)及び第2熱交換器12に室内の空気IAの気流を発生させるための第2ファン(図示せず)を備える。この場合、コントローラ20は、第1ファン及び第2ファンを制御する。
【0039】
(2)冷凍サイクル装置1の動作
(2-1)冷凍サイクル運転
冷凍サイクル装置1は、図1に示されている蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷凍サイクル運転を行うことができる。コントローラ20による冷凍サイクル運転のための制御の実施により、コントローラ20は、圧縮機14でガス状態の冷媒GRを吸入して吐出するように冷媒回路10を制御している。冷凍サイクル運転では、コントローラ20は、圧縮機14から四方弁15を介して第1熱交換器11に冷媒が流れ、第2熱交換器12から四方弁15を介して圧縮機14に冷媒が流れるように、四方弁15を切り換える。また、コントローラ20は、通過する冷媒の圧力を減圧装置13が低下させる状態になるように、減圧装置13を制御している。
【0040】
冷凍サイクル運転では、冷媒回路10において蒸気圧縮式の冷凍サイクルが実施されている。圧縮機14から吐出された冷媒GRは、第1熱交換器11に送られて第1熱交換器11で屋外の空気OAと熱交換する。冷媒GRは、空気OAに熱を与える熱交換により冷却される。第1熱交換器11から流出する液状態の冷媒RRは、第1熱交換器11での熱交換によりガス状態の冷媒GRが凝縮することにより生じた冷媒である。第1熱交換器11から減圧装置13に送られた冷媒RRは、減圧装置13で減圧されて気液二相状態の冷媒になる。減圧装置13から第2熱交換器12に送られた冷媒は、第2熱交換器12で室内の空気IAと熱交換する。第2熱交換器12で熱交換することにより、空気IAから熱を奪って気化したガス状の冷媒GRが第2熱交換器12から圧縮機14に送られる。冷凍サイクル装置1は、このような冷凍サイクル運転により、室内の空気IAを冷やすことができる。冷やされた室内の空気IAを用いて、例えば、室内の冷房が行われる。
【0041】
(2-2)フリークーリング運転
冷凍サイクル装置1は、図2に示されているフリークーリング運転を行うことができる。フリークーリング運転は、液状態の冷媒RRを圧縮機14のポンプ機能により送り出すことで、圧縮機14での実質的なガス状態の冷媒の圧縮を伴わずに、第2熱交換器12で熱を奪える冷媒を第1熱交換器11から第2熱交換器12に運ぶ運転である。コントローラ20によるフリークーリング運転のための制御の実施により、コントローラ20は、圧縮機14で液状態の冷媒RRを吸入して吐出するように冷媒回路10を制御している。フリークーリング運転では、コントローラ20は、圧縮機14から四方弁15を介して第2熱交換器12に冷媒が流れ、第1熱交換器11から四方弁15を介して圧縮機14に冷媒が流れるように、四方弁15を切り換える。また、コントローラ20は、減圧装置13が開状態になるように制御し、減圧装置13を通過する冷媒に対する減圧装置3の流路抵抗を下げる。
【0042】
フリークーリング運転では、冷媒回路10において蒸気圧縮式の冷凍サイクルは実施されない。第1熱交換器11で、屋外の空気OAと熱交換して冷やされた液状態の冷媒RRは、圧縮機14に吸入される。圧縮機14に吸入された液状態の冷媒RRは、圧縮機14のポンプ機能により、第2熱交換器12に送出される。第2熱交換器12では、第1熱交換器11で冷やされた冷媒RRと室内の空気IAが熱交換する。第2熱交換器12では、冷媒RRによって室内の空気IAが冷やされる。空気IAから熱を奪う冷媒RRは、例えば、第2熱交換器12で一部または全部がガス状態の冷媒GRに変化する。第2熱交換器12で熱交換を終えた冷媒GRは、減圧装置13を通過して、第1熱交換器11に流入する。第1熱交換器11に流入した冷媒GRは、再び、屋外の空気OAと熱交換して冷やされ液状態となる。冷凍サイクル装置1は、このようなフリークーリング運転により、室内の空気IAを冷やすことができる。冷やされた室内の空気IAを用いることで、例えば、室内を冷房することができる。
【0043】
フリークーリング運転では、冷房負荷が低いために、圧縮機14の運転周波数を、冷凍サイクル運転時の圧縮機14の平均的な運転周波数に比べて低く抑えることが好ましい。例えば、コントローラ20は、フリークーリング運転における圧縮機14の運転周波数を圧縮機14の最低運転周波数にする
フリークーリング運転では、冷凍サイクル運転と比べて、圧縮機14の吸入口と吐出口の冷媒の差圧が小さいので、圧縮機14に係る負担が小さい。フリークーリング運転では、冷凍サイクル運転の平均的な圧縮機14の運転周波数に比べて低速度で圧縮機14が回転するので、圧縮機14の摺動部に係る負担が小さい。そのため、フリークーリング運転では、冷凍機油の希釈が進んでも、圧縮機14の摺動部に係る負荷が小さいので、冷凍サイクル運転に比べて、摺動部の焼き付きが起こり難い。しかしながら、フリークーリング運転を行って冷凍機油の希釈が進み過ぎた状態で、通常の冷凍サイクル運転に戻ると、摺動部の焼き付きが発生するリスクが高くなる。そこで、フリークーリング運転で冷凍機油の希釈の程度が摺動部の焼付リスクが高くなる前に油回収運転を行う。例えば、冷凍機油の希釈が進み過ぎる前に、フリークーリング運転から冷凍サイクル運転に戻るか、またはフリークーリング運転から冷凍サイクル運転に戻る前に油回収運転を行う。
【0044】
(2-3)油回収運転の動作
コントローラ20は、フリークーリング運転中に所定条件を満たしたときに油回収運転を実施する。油回収運転は、フリークーリング運転の途中で、図1に示されている第2流路200に切り換えて行われる。なお、油回収運転がフリークーリング運転の終わりに行われる場合も、ここでは、フリークーリング運転中に油回収運転が行われる場合に含まれる。
【0045】
油回収運転の準備モードにするために、コントローラ20は、四方弁15を制御し、冷媒回路10を第1流路100から第2流路200に変更する。準備モードでは、コントローラ20は、運転周波数(回転速度)を低く抑えたままで圧縮機14を駆動し、圧縮機14がガス状態の冷媒GRを吸入する状態になるように冷媒回路10を制御する。
【0046】
圧縮機14にガス状態の冷媒GRが継続して吸入される状態になった後に、準備モードから、冷凍機油を圧縮機14に戻す油戻しモードに移行する。フリークーリング運転中の油回収運転の油戻しモードでは、圧縮機14の運転周波数(回転速度)を最大またはそれに近い値にまで上昇させる制御は行わない。フリークーリング運転中の油回収運転の油戻しモードで、コントローラ20は、油が戻ってくる下限の運転周波数またはその下限の運転周波数を超えているけれども最大運転周波数よりも十分小さい運転周波数で、圧縮機14をゆっくりと駆動する。なお、油が戻ってくる下限の運転周波数は、例えば、実機による実験またはシミュレーションにより予め求められている。
【0047】
油戻しモードにおいて、圧縮機14は、第2熱交換器12からガス状態の冷媒GRを吸入する。圧縮機14は、吸入した冷媒GRを圧縮して第1熱交換器11に吐出する。第1熱交換器11を通過した冷媒は、開状態の減圧装置13を介して、第2熱交換器12に流入する。第2熱交換器12では、室内の空気IAとの熱交換により、ガス状態の冷媒GAが発生する。油回収モードは、短時間で終了する。油回収モードで圧縮機14が駆動する短時間は、例えば1分程度である。
【0048】
コントローラ20は、油回収運転では、第1熱交換器11での熱交換を抑制するため、第1ファンを停止させて、第1熱交換器11に屋外の空気OAの気流が発生しないように制御する。
【0049】
(2-4)油回収運転への移行
フリークーリング運転中に所定条件を満たす場合について説明する。例えば、フリークーリング運転における圧縮機14の駆動時間を積算した積算時間が設定時間に達することを、所定条件とすることができる。例えば、設定時間が12時間である場合、コントローラ20は、油回収運転後に一日でフリークーリング運転を12時間連続して行ったときに、12時間経過時点で油回収運転を再度行う。そして、油回収運転が終了した後に、再びフリークーリング運転に切り換える。同様の設定時間で、コントローラ20は、油回収運転後に1日目にフリークーリング運転を2時間実施して停止し、2日目にフリークーリング運転を実施した時間が10時間に達したときに、油回収運転を行う。
【0050】
また、例えば、フリークーリング運転が終了することを所定条件とすることができる。このような条件を設定するのは、フリークーリング運転で冷凍機油の希釈が進んだ状態に続いて実施される通常の冷凍サイクル運転中に圧縮機14で焼き付きが発生するリスクが高くなるのを防ぐためである。さらに詳細には、例えば、油回収運転を行わずにまたは油回収運転後に所定時間以上連続してフリークーリング運転を実施して終了することを所定条件とすることができる。所定時間が5時間の場合は、例えば、フリークーリング運転を8時間行っても、途中で油回収運転を行ってその後フリークーリング運転の終了まで4時間しか経過しないときには終了時点での油回収運転は実施されない。
【0051】
コントローラ20は、前述の設定時間及び所定時間を、屋外の気温または室内の気温により変更できる機能を有してもよい。屋外の気温が低い程また室内の気温が低い程、冷凍機油の希釈が進行し易くなる。そのため、例えば、コントローラ20は、屋外の気温が第1閾値以下になったときに、設定時間及び所定時間を短くする変更を行う。また、例えば、室内の気温が第2閾値以下になったときに、設定時間及び所定時間を短くする変更を行う。
【0052】
コントローラ20は、油回収運転時の圧縮機14の駆動時間を、フリークーリング運転の時間に応じて変更してもよい。例えば、フリークーリング運転を10時間行った後に油回収運転を行う場合と、フリークーリング運転を15時間行った後に油回収運転を行う場合とでは、後者の油回収運転時の圧縮機14の駆動時間を長くする。フリークーリング運転を長く行う程、冷凍機油の希釈が進むので、油回収運転で冷凍機油の回収量が多くなるように調節する。
【0053】
フリークーリング運転における圧縮機14の駆動時間を積算した積算時間が設定時間に達することを所定条件とする場合、冷凍サイクル運転に応じて所定条件を変更する機能をコントローラ20が備えていてもよい。例えば、コントローラ20は、冷凍サイクル運転時とフリークーリング運転時で重みづけを変えて積算時間のカウントを行ってもよい。冷凍サイクル運転時には、圧縮機14の中をガス状態の冷媒GRが通過するのに対し、フリークーリング運転時には、圧縮機14の中を液状態の冷媒RRが通過する。そのため、フリークーリング運転時には、冷凍サイクル運転時よりも、冷凍機油の希釈が速く進む。冷凍サイクル運転時における圧縮機14の駆動時間の積算が軽くなるような重みづけを行って、フリークーリング運転時の積算時間に加える。例えば、コントローラ20は、冷凍サイクル運転時における圧縮機14の駆動時間には1より小さい係数を掛けてカウントし、フリークーリング運転時の圧縮機14の駆動時間をそのままカウントする。また、例えば、コントローラ20は、フリークーリング運転時の圧縮機14の駆動時間のみ積算して冷凍サイクル運転時の圧縮機14の駆動時間を積算時間にカウントしないように構成してもよい。さらに、フリークーリング運転における圧縮機14の駆動時間を積算するときに、フリークーリング運転中の油回収運転だけでなく、冷凍サイクル運転中の油回収運転が行われる度に積算時間をリセットするように構成してもよい。
【0054】
既に説明したように、冷凍サイクル運転を行う場合に、フリークーリング運転時の油回収運転とは異なる他の油回収運転が必要になる場合がある。冷凍サイクル運転時の他の油回収運転では、コントローラ20は、例えば、圧縮機14の運転周波数を最大値または最大値に近い値になるように制御し、減圧装置13を開状態になるように制御して、第2流路200に切り換えて冷媒回路10に蒸気圧縮式の冷凍サイクルを実施させてもよい。
【0055】
また、例えば、屋外の気温が低温の場合、冷凍サイクル装置1を停止した状態でも冷凍機油の希釈が進む場合がある。コントローラ20は、屋外の気温が第1温度値(例えば、0℃)以下になっている時間が、第1時間(例えば、12時間)よりも長くなる場合に、コントローラ20が、さらに他の油回収運転を冷媒回路10に行わせるように構成されてもよい。この場合、コントローラ20は、外気温の状態にあわせて、起動パターンを決めてもよい。低外気時の油回収運転では、コントローラ20は、圧縮機14の起動周波数を油が戻ってくる程度の低速でゆっくりと起動する。例えば、低外気時の油回収運転は、フリークーリング運転時の油回収運転と同様の設定で行ってもよい。低外気時の油回収運転は、例えば、数時間に1度の頻度で実施する。低外気時の油回収運転では、油回収を短時間(例えば1分程度)で完了する。前述のような圧縮機14の起動周波数は、例えば、予め実機による実験またはシミュレーションにより予め決定される。
【0056】
(3)詳細構成
(3-1)第1熱交換器11及び第2熱交換器12
第1熱交換器11及び第2熱交換器12は、冷媒と空気との熱交換を行う熱交換器である。第1熱交換器11及び第2熱交換器12には、例えば、複数の伝熱管(図示せず)と伝熱フィン(図示せず)で構成されたフィンチューブ式の熱交換器を用いることができる。
【0057】
(3-2)圧縮機14
圧縮機14は、インバータ制御により運転周波数を変更できるものであることが好ましい。圧縮機14には、例えば、ロータリー式圧縮機またはスクロール式圧縮機を用いることができる。圧縮機14には、液状の冷媒RRを吸入して吐出するポンプ機能を有する圧縮機が用いられる。
【0058】
(3-3)減圧装置13
この減圧装置13は、減圧の程度を変更するため、開度を変更する機能を有している。減圧装置13が開度を小さくすると、減圧装置13を通過した冷媒の圧力が低下する。減圧装置13が徐々に開度を小さくすることができる構成である場合、開度が徐々に小さくなるに従って、減圧装置13を通過した冷媒の圧力の低下の度合いが徐々に大きくなる。減圧装置13が完全に開いた状態では、減圧装置13を通過する前後の冷媒の圧力が実質的に同じになる。減圧装置13には、例えば、コントローラ20から与えられる信号に応じて開度を変更できる膨張弁を用いることができる。膨張弁としては、例えば、モータによって開度を変更できる電動膨張弁を用いることができる。
【0059】
(3-4)コントローラ20
コントローラ20は、例えば、コンピュータにより実現されるものである。コントローラ20は、制御演算装置と記憶装置とを備える。制御演算装置には、CPU又はGPUといったプロセッサを使用できる。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の画像処理や演算処理を行う。さらに、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。記憶装置には、所定条件、設定時間、第1閾値、第2閾値、所定時間、第1時間などが記憶される。コントローラ20は、積算時間をカウントするためのカウンタ(図示せず)を備えている。
【0060】
コントローラ20は、冷凍サイクル装置1の各部に備えられている温度センサ(図示せず)で測定した温度に関するデータを受信できるように構成されている。コントローラ20は、温度センサから、例えば、屋外の気温、室内の気温、冷媒回路10の各部の冷媒の温度のデータを受信することができる。また、第1ファン及び第2ファンが回転速度を変更可能な場合には、コントローラ20は、第1ファン及び第2ファンの回転速度を制御する。
【0061】
<第2実施形態>
(4)全体構成
第1実施形態では、フリークーリング運転中に行う油回収運転が、図1に示されている第2流路200で冷凍サイクル運転を実施することによって行われる場合について説明した。しかし、フリークーリング運転中に行う油回収運転は、第1実施形態で説明した油回収運転には限られない。
【0062】
図1及び図2に示されている冷凍サイクル装置1の構成で、第2実施形態の油回収運転を行うことができる。冷凍サイクル装置1の構成は、第1実施形態で説明したので、ここでは、冷凍サイクル装置1の構成の説明を省略する。また、冷凍サイクル装置1による冷凍サイクル運転及びフリークーリング運転も、第2実施形態と第1実施形態で同じであるので、ここでは冷凍サイクル運転及びフリークーリング運転の説明を省略する。
【0063】
さらに、フリークーリング運転中の油回収運転への移行につきましても、第1実施形態と第2実施形態のフリークーリング運転が同じであることから、説明を省いている。
【0064】
(5)油回収運転の動作
第2実施形態でも、コントローラ20は、フリークーリング運転中に所定条件を満たしたときに油回収運転を実施する。第2実施形態の油回収運転は、フリークーリング運転と同様に、図2に示されている第1流路100に冷媒が流れている状態で行われる。油回収運転の準備モードでは、コントローラ20は、運転周波数(回転速度)を低く抑えたままで圧縮機14を駆動し、図3に示されているように、圧縮機14がガス状態の冷媒GRを吸入する状態になるように冷媒回路10を制御する。
【0065】
圧縮機14にガス状態の冷媒GRが継続して吸入される状態になった後に、準備モードから、冷凍機油を圧縮機14に戻す油戻しモードに移行する。フリークーリング運転中の油回収運転の油戻しモードでは、圧縮機14の運転周波数(回転速度)を最大またはそれに近い値にまで上昇させる制御は行わない。フリークーリング運転中の油回収運転の油戻しモードで、コントローラ20は、油が戻ってくる下限の運転周波数またはその下限の運転周波数を超えているけれども最大運転周波数よりも十分小さい運転周波数で、圧縮機14をゆっくりと駆動する。
【0066】
油戻しモードにおいて、圧縮機14は、第1熱交換器11からガス状態の冷媒GRを吸入する。圧縮機14は、吸入した冷媒GRを圧縮して第2熱交換器12に吐出する。第2熱交換器12を通過した冷媒が、開状態の減圧装置13を介して、第1熱交換器11に流入する。第1熱交換器11を通過したガス状態の冷媒GAが圧縮機14に吸入される。油回収モードは、短時間で終了する。油回収モードで圧縮機14が駆動する短時間は、例えば1分程度である。
【0067】
コントローラ20は、油回収運転では、第1熱交換器11での冷たい屋外の空気OAとの熱交換を抑制するため、第1ファンを停止させて、第1熱交換器11に屋外の空気OAの気流が発生しないように制御する。
【0068】
<第3実施形態>
(6)全体構成
第1実施形態及び第2実施形態では、フリークーリング運転中に行う油回収運転が、圧縮機14がガス状態の冷媒GRを吸入して行われる場合について説明した。しかし、フリークーリング運転中に行う油回収運転は、第1実施形態及び第2実施形態で説明したガス状の冷媒GRを圧縮機が吸入する油回収運転には限られない。
【0069】
図1及び図2に示されている冷凍サイクル装置1の構成で、第3実施形態の油回収運転を行うことができる。冷凍サイクル装置1の構成は、第1実施形態で説明したので、ここでは、冷凍サイクル装置1の構成の説明を省略する。また、冷凍サイクル装置1による冷凍サイクル運転及びフリークーリング運転も、第3実施形態と第1実施形態で同じであるので、ここでは冷凍サイクル運転及びフリークーリング運転の説明を省略する。
【0070】
さらに、フリークーリング運転中の油回収運転への移行につきましても、第1実施形態と第3実施形態のフリークーリング運転が同じであることから、説明を省いている。
【0071】
(7)油回収運転の動作
第3実施形態でも、コントローラ20は、フリークーリング運転中に所定条件を満たしたときに油回収運転を実施する。第3実施形態の油回収運転は、フリークーリング運転と同様に、図2に示されている第1流路100に冷媒が流れている状態で行われる。第3実施形態の油回収運転では、コントローラ20が、フリークーリング運転に比べて、圧縮機14の運転周波数を上げることにより実施される。言い換えると、コントローラ20は、フリークーリング運転時の圧縮機14の運転周波数をf1とし、油回収運転時の圧縮機14の運転周波数をf2とすると、f2>f1となるように圧縮機14を制御する。運転周波数f2のときには、圧縮機14に冷凍機油が戻ってくる量が圧縮機から冷凍機油が出て行く量よりも多くなる。なお、運転周波数f1のときには逆に、圧縮機14に冷凍機油が戻ってくる量が圧縮機から冷凍機油が出て行く量よりも少なくなる。油回収運転時の圧縮機14の運転周波数f2は、圧縮機14に掛かる負担を減らすため、圧縮機14に冷凍機油が戻ってくる量が圧縮機から冷凍機油が出て行く量よりも多くなるという条件を満たす範囲でできるだけ小さい方が好ましい。
【0072】
油回収運転では、第1熱交換器11で、屋外の空気OAと熱交換して冷やされた液状態の冷媒RRは、圧縮機14に吸入される。圧縮機14に吸入された液状態の冷媒RRは、圧縮機14のポンプ機能により、第2熱交換器12に送出される。第2熱交換器12を通過した冷媒は、減圧装置13を介して、第1熱交換器11に流入する。第1熱交換器11に流入した冷媒GRは、再び、屋外の空気OAと熱交換して冷やされる。コントローラ20は、このような油回収運転では、第2熱交換器12における室内の空気IAの気流の発生を抑えるため、第2ファンを停止させる。
【0073】
(8)変形例
(8-1)変形例A
第1実施形態から第3実施形態では、冷凍サイクル装置1が室内の空気IAをフリークーリング運転で冷却する場合について説明した。このような冷凍サイクル装置1を適用できるのは、例えば、空気調和機である。しかし、冷凍サイクル装置1が適用できるのは、空気調和機には限られない。第2熱交換器12は、空気と冷媒の熱交換ではなく、例えば、水または熱媒体と冷媒との熱交換を行うように構成されてもよい。このような冷凍サイクル装置1は、例えば、ヒートポンプチラー、冷えた水を供給する冷水器に適用することができる。
【0074】
(8-2)変形例B
第1実施形態から第3実施形態では、冷凍サイクル装置1が室内の空気IAをフリークーリング運転で冷却する場合について説明した。しかし、冷凍サイクル装置1は、四方弁15によって第1流路100に切り換えて、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを実施することで、室内の暖房に用いることもできる。
【0075】
(9)特徴
(9-1)
冷凍サイクル装置1のコントローラ20は、冷凍サイクル運転では圧縮機14がガス状態の冷媒GRを吸入するように制御し、フリークーリング運転では圧縮機14が液状態の冷媒RRを吸入するように制御する。コントローラ20は、フリークーリング運転中に所定条件を満たしたときに油回収運転を実施する。冷凍サイクル装置1は、フリークーリング運転中に油回収運転を行うことで、フリークーリング運転で冷凍機油が不足するのを抑制し、圧縮機14で焼き付きが発生するリスクを低減することができる。
【0076】
(9-2)
冷媒回路10は、圧縮機14、第2熱交換器12、減圧装置13、第1熱交換器11の順に冷媒を流す第1流路100に切り換えるための切換機構である四方弁15を含んでいる。コントローラ20は、フリークーリング運転では、第1流路100を冷媒が流れるように、冷媒回路10を制御する。第1流路100で冷媒が循環すると圧縮機14と第2熱交換器12の間に冷凍機油が溜まり易い。例えば図1に示された第2流路200で冷凍サイクル運転を行えば、圧縮機14と第2熱交換器12の間に溜まった冷凍機油が圧縮機14に吸入される。このような冷凍サイクル運転を行えば、圧縮機14の外に溜まった冷凍機油を圧縮機14に容易に吸入することができ、冷凍機油の回収が容易になる。
【0077】
(9-3)
第2実施形態及び第3実施形態のように、コントローラ20が、油回収運転のときに第1流路100を冷媒が流れるように冷媒回路10を制御すれば、フリークーリング運転から油回収運転に移行する場合、冷媒の流れ方向を切り換えなくても済む。このような油回収運転を行えば、流路の切り換えに必要な時間を省いて、油回収運転の時間を短縮することができる。
【0078】
(9-4)
図1に示されているように、切換機構である四方弁15は、圧縮機14、第1熱交換器11、減圧装置13、第2熱交換器12の順に冷媒を流す第2流路200に切り換えることができる。第1実施形態で説明したように、コントローラ20は、油回収運転のときに第2流路200を冷媒が流れるように四方弁15を制御する。このような冷凍サイクル装置1では、油回収運転のときに第2熱交換器12から圧縮機14に向かって冷媒が流れるので、第2熱交換器12と圧縮機14の間に溜まった冷凍機油を回収し易くなる。
【0079】
(9-5)
第1実施形態及び第2実施形態では、コントローラ20は、油回収運転のときに、圧縮機14が吸入して吐出する冷媒がガス状態になるように、冷媒回路10を制御する。このような冷凍サイクル装置1では、油回収運転時に、圧縮機14をフリークーリング運転よりも高い運転周波数で駆動できるので、冷凍機油を効率よく回収できる。
【0080】
(9-6)
第3実施形態のコントローラ20は、油回収運転のときに、圧縮機14が吸入して吐出する冷媒が液状態になるように、冷媒回路10を制御する。このような冷凍サイクル装置1では、フリークーリング運転の状態で油回収を行うことができ、フリークーリング運転から油回収運転に切り換える時間を省くことができる。
【0081】
(9-7)
第1実施形態の「(2-4)油回収運転への移行」で説明したように、コントローラ20は、フリークーリング運転における圧縮機14の駆動時間を積算した積算時間が設定時間に達したときに所定条件を満たしたとして油回収運転を実施するような構成にできる。このような冷凍サイクル装置1では、フリークーリング運転時に冷凍機油が圧縮機14から流出するのを考慮した油切れを防ぐ適切なタイミングで油回収運転を行うことができる。
【0082】
(9-8)
コントローラ20は、設定時間を屋外の気温または室内の気温により変更する機能を有していてもよい。このような冷凍サイクル装置1では、気温による冷凍機油の冷媒への溶け込みの違いを考慮した適切なタイミングで油回収運転を行うことができる。
【0083】
(9-9)
コントローラ20は、積算時間が設定時間に達したときに所定条件が満たされたと判断する場合に、冷凍サイクル運転時とフリークーリング運転時で重みづけを変えて積算時間のカウントを行うように構成することができる。このような冷凍サイクル装置1では、冷凍サイクル運転時とフリークーリング運転時の冷凍機油が流れ出し易さの違いを考慮した適切なタイミングで油回収運転を実施できる。
【0084】
(9-10)
コントローラ20は、フリークーリング運転の終了時に、油回収運転を行うように冷媒回路10を制御するように構成することができる。このような冷凍サイクル装置1では、フリークーリング運転の後で冷凍サイクル運転を行う場合に、常に冷凍機油が圧縮機114に回収された状態になる。そのため、冷凍サイクル装置1は、フリークーリング運転の終了後に蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を実施する場合に圧縮機14の焼き付きが発生するリスクを低減することができる。
【0085】
(9-11)
コントローラ20は、フリークーリング運転における圧縮機14の運転周波数を圧縮機14の最低運転周波数にするように構成できる。このような冷凍サイクル装置1では、フリークーリング運転時に圧縮機14で焼き付きが発生するリスクを大幅に低減することができる。
【0086】
(9-12)
コントローラ20は、冷凍サイクル運転時に、油回収運転とは異なる他の油回収運転を行うよう制御するように構成できる。ガス状態の冷媒GRを圧縮機14が吸入する冷凍サイクル運転と液状態の冷媒RRを圧縮機14が吸入するフリークーリング運転では圧縮機14の状況が異なる。このような冷凍サイクル装置1は、冷凍サイクル運転とフリークーリング運転で状況が異なる圧縮機14に合わせた油回収運転を行うことができ、圧縮機14に不具合が生じるリスクを低減できる。
【0087】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0088】
1 冷凍サイクル装置
10 冷媒回路
11 第1熱交換器
12 第2熱交換器
13 減圧装置
14 圧縮機
15 四方弁(切換機構の例)
20 コントローラ
100 第1流路
200 第2流路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【文献】特開2019-132254号公報
図1
図2
図3