(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】導電性媒質内での検出方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20250403BHJP
【FI】
G01V3/08 E
G01V3/08 D
(21)【出願番号】P 2022569500
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2021062741
(87)【国際公開番号】W WO2021229010
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2024-04-24
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】522444047
【氏名又は名称】エルウェーヴ
【氏名又は名称原語表記】ELWAVE
(73)【特許権者】
【識別番号】510229496
【氏名又は名称】アンスティテュ・ミーヌ・テレコム
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】デルプランク,カンタン,ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】イフレック,リエス
(72)【発明者】
【氏名】ボワイエ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ルバスタール,ヴァンサン,ポール,ヤニック
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0280773(US,A1)
【文献】特表2010-532863(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047638(WO,A1)
【文献】特開2005-134131(JP,A)
【文献】Oingxuan Ren et al.,Amplitude information-frequency characteristics for multi-frequency excitation of underwater active electrolocation system,Bioinspiration & Biomimetics,2019年11月19日,Vol.15,016004,doi.org/10.1088/1748-3190/ab526b
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出システムを用いた導電性媒質内での検出方法において、検出システムが、
- 前記媒質と直接電気接触状態にあり、{発信、受信、接続解除}なるリストの中から選択され得る状態を有する、複数の電極(Ei)と、
- {電極を横断する電流強度、電極電位}なるリストの中から選択された、発信または受信状態で構成された前記電極の各々についての少なくとも1つの電気値の測定デバイスと、
- 前記電極の各々を、{発信、受信、接続解除}なるリストの中から選択された状態に置くことを可能にするスイッチングデバイスと、
- 測定デバイスおよびスイッチングデバイスと情報を交換する少なくとも1つのプロセッサと、
を含んでいる方法であって、
a.プロセッサが、
- 事前に与えられた指令、
- および/または検出システムの従前の構成、
- および/または測定デバイスによって伝送された前記電極のうちの少なくとも1つのレベルでの従前の測定の結果、
に応じて、検出システムの動作点を決定するステップであって、
検出システムの前記動作点の決定には、
- 発信、受信、接続解除という3つの状態の中から選択された各電極の状態、
- 発信状態で構成された電極のうちの少なくとも1つによって発信された電気信号の少なくとも1つの正弦波成分の周波数、
- 発信状態で構成された電極の少なくとも1つによって発信された電気信号の振幅、という3つのパラメータの決定が含まれているステップと、
b.スイッチングデバイスが、プロセッサにより決定されたシステムの動作点についての情報を受信し、決定された動作点において検出システムを構成するステップと、
c.測定デバイスによって一連の測定が行なわれ、一連の測定が、受信状態または発信状態で構成された電極の各々のレベルでの少なくとも1つの電気値の評価からなり、測定デバイスが測定データをプロセッサに伝送するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
プロセッサが、測定データから導電性媒質の少なくとも1つのマッピングデータを計算する、ステップdと呼ばれる補足的ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
方法のステップが、同じ順序で少なくとも1回反復されること、および遠位のまたは遠位でないオペレータによる検出方法の第1のステップaの前、または遠位のオペレータによる検出方法の最中にステップの反復を制御するために、前記プロセッサに対して指令が伝送されることを特徴とする、請求項
1に記載の検出方法。
【請求項4】
ステップaで決定されたシステムの動作点が、{「到達範囲」モード、「位置特定」モード、「識別」モード}なるリストから選択され得、ここで「到達範囲」モードが、前記媒質の所与の1つまたは複数の方向での最大検出到達範囲を得ることを可能にし、「位置特定」モードが、従前に検出された物体の位置特定についての最大精度を得ることを可能にし、「識別」モードが、従前に検出された物体の形状および/または組成についての最高の解像度を得ることを可能にすることを特徴とする、請求項
1に記載の導電性媒質内での検出方法。
【請求項5】
検出システムの動作点が、自動的に1つのステップaから次のステップに移行すること、すなわち、
- 1つの物体が検出されこの物体が閾値距離d2よりも短い距離に位置特定される場合、システムが「到達範囲」モードにあったならばこのモードから「位置特定」モードに移行し、
- 1つの物体が検出されこの物体が閾値距離d3よりも短い距離に位置特定され、指令に対応する形状および/または性質を伴う場合、システムが「位置特定」モードにあったならばこのモードから「識別」モードに移行し、
- 1つの物体が検出され、検出された物体が存在している距離が閾値距離d2よりも長くなった場合、システムが「位置特定」モードにあったならばこのモードから「到達範囲」モードに移行する、
ことを特徴とする、請求項3および4に記載の導電性媒質内での検出方法。
【請求項6】
ステップaで決定された動作点について発信状態で構成された電極によって発信された信号の形状および/または周波数および/または振幅が、周波数走査の終了時に選択されることを特徴とする、請求項
1に記載の導電性媒質内での検出方法。
【請求項7】
ステップaで決定された動作点について発信状態で構成された電極の少なくとも1つによって発信された信号が、異なる周波数の少なくとも2つの正弦波信号の合成であることを特徴とする、請求項
1に記載の導電性媒質内での検出方法。
【請求項8】
ステップdで1つの物体が検出された場合、後のステップaにおいて決定される動作点について発信状態で構成された電極の各々によって発信された電気信号の正弦波成分の振幅および/または形状および/または周波数が、検出された物体の距離に応じて決定されることを特徴とする、請求項
2に記載の導電性媒質内での検出方法。
【請求項9】
ステップdで1つの物体が検出された場合、後のステップaで決定される動作点について発信状態で構成された電極の前記システム上の位置が、検出された物体の形状および/または位置に応じて決定される、請求項
2に記載の導電性媒質内での検出方法。
【請求項10】
ステップdで少なくとも1つのマッピングデータを決定するために、公知のリファレンスが利用されることを特徴とする、請求項
2に記載の導電性媒質内での検出方法。
【請求項11】
コンピュータ上でプログラムが実行される場合に、請求項
1に記載の方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項12】
導電性媒質内での検出システムにおいて、
- 前記媒質と直接電気接触状態にあり、{発信、受信、接続解除}なるリストの中から選択され得る状態を有する、複数の電極(Ei)と、
- {電極を横断する電流強度、電極電位}なるリストの中から選択された、発信または受信状態に置かれた前記電極の各々についての少なくとも1つの電気値の測定デバイスと、
- 前記電極の各々を、{発信、受信、接続解除}なるリストの中から選択された状態に置くことを可能にするスイッチングデバイスと、
- 測定デバイスおよびスイッチングデバイスと情報を交換し、かつ、
・ 事前に与えられた指令、
・ および/またはシステムの従前の構成、
・ および/または測定デバイスによって伝送された前記電極のうちの少なくとも1つのレベルでの従前の測定の結果、
に応じて、検出システムの動作点を決定するように構成された少なくとも1つのプロセッサと、
を含むシステムであって、
システムの前記動作点の決定には、
- 発信、受信、接続解除という少なくとも3つの状態の中から選択された各電極の状態、
- 発信電極のうちの少なくとも1つによって発信された電気信号の少なくとも1つの正弦波成分の周波数、
- 発信状態で構成された電極の少なくとも1つによって発信された電気信号の振幅、という3つのパラメータの決定が含まれており、
プロセッサが、決定された動作点についての情報を、スイッチングデバイスに伝送する、
システム。
【請求項13】
請求項12に記載の検出システムが備わった導電性媒質内の可動式システム(100)において、請求項
1に記載の方法にしたがって得られた検出システムの測定結果に基づいて前記可動式システムの移動を制御するように適応された制御モジュールをさらに含む、可動式システム。
【請求項14】
検出システムの前記電極が、前記媒質と接触状態にある前記可動式システムの表面の少なくとも一部分の上に分布していることを特徴とする、請求項13に記載の導電性媒質内の可動式システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性媒質内での検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
より厳密には、本発明は、電気的感知を使用できるようにする複数の電極を含むシステムを用いた導電性媒質内での検出方法に関する。
すなわち、いくつかの電極により電界が生成され、この電界に関連する電気値の測定値が、導電性媒質自体または導電性媒質内にある物体についての情報を得るために活用される。
【0003】
導電性媒質内での検出の分野においては、受信電極を用いて電気値を測定して、そこから物体または縁の存在についての情報または、これらの物体または縁ならびに導電性媒質内でのそれらの配向などの幾何学的パラメータを、これらの幾何学的パラメータについての事前の知識無く演繹することが知られている。
【0004】
例えば、国際公開第2013/014392号は、導電性媒質内で可動式システムの移動を制御する方法において、システムが、媒質と接触した状態の少なくとも1つの電極を含んでいる方法について記述している。
この方法は、特に、この場合、受信電極と呼ばれるこの電極による媒質の電気的特性、(より厳密には電流強度)を測定するステップを含む。
特定の一実施形態において、該制御方法は、検出された物体との関係における可動式システムの位置付けの精度または検出到達範囲を最適化する目的で、発生電極および/または受信電極であり得る電極の電気的接続性の、場合によっては自動化された管理ステップを想定している。
【0005】
しかしながら、国際公開第2013/014392号によって記述されている方法は、可動式システムの移動を最適な形で管理することを目的としている。
電極の電気的接続性の管理は、可動式システムの移動に基づいている。
特に、3つの接続性モード、すなわち、物体に接近できるようにする引力モード、物体から遠ざかることができるようにする斥力モード、そして、物体に沿って進むことができるようにする物体の境界追跡モード、が定義される。
同様に、検出到達範囲が最適なものであるモードで電極を構成することも可能である。
【0006】
しかしながら、電極の、測定された電気値(固定された周波数における電圧または電流強度の振幅)ならびに考えられる状態(発生状態、発信状態、または複数の電極に共通の端子(この文書中では端子B1と呼ばれている))は、検出された物体の形状、サイズまたは材料の性質などの可動式システムの検出到達範囲または位置付け精度以外の、知覚のために対象の大きさについて最大限の性能を得ることを可能にするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、任意に、物体の検出到達範囲または位置特定または物体の形状または物体の性質の決定の観点から見た検出システムの性能を動的かつ自動的に最適化することのできる、場合によっては可動式システムとは独立して実施される導電性媒質内での検出方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、導電性媒質と直接電気接触状態にある複数の電極を含む検出システムを用いた導電性媒質内での検出方法に関する。
【0010】
検出システムは、以下のものを含む。
- 前記媒質と直接電気接触状態にあり、{発信、受信、接続解除}なるリストの中から選択され得る状態を有する、複数の電極(Ei)、
- {電極を横断する電流強度、電極電位}なるリストの中から選択された、発信または受信状態で構成された前記電極の各々についての少なくとも1つの電気値の測定デバイス、
- 前記電極の各々を、{発信、受信、接続解除}なるリストの中から選択された状態に置くことを可能にするスイッチングデバイス、
- 測定デバイスおよびスイッチングデバイスと情報を交換する少なくとも1つのプロセッサ。
【0011】
該方法は、以下のステップを含む。
a.プロセッサが、
- 事前に与えられた指令、
- および/または検出システムの従前の構成、
- および/または測定デバイスによって伝送された電極のうちの少なくとも1つのレベルでの従前の測定の結果、
に応じて、検出システムの動作点を決定するステップであって、
検出システムの前記動作点の決定には、
- 発信、受信、接続解除という3つの状態の中から選択された各電極の状態、
- 発信状態で構成された電極のうちの少なくとも1つによって発信された電気信号の少なくとも1つの正弦波成分の周波数、
- 発信状態で構成された電極の少なくとも1つによって発信された電気信号の振幅、という3つのパラメータの決定が含まれているステップ、
b.スイッチングデバイスが、プロセッサにより決定されたシステムの動作点についての情報を受信し、決定された動作点において検出システムを構成するステップ、
c.測定デバイスによって一連の測定が行なわれ、一連の測定が、受信状態または発信状態で構成された電極の各々のレベルでの少なくとも1つの電気値の評価からなり、測定デバイスが測定データをプロセッサに伝送するステップ。
【0012】
これらの措置によって、各々の一連の測定の前に決定された検出目標との関係において検出性能が最大となるように、異なる電極の状態を自動的かつ動的に構成することが可能である。
例えば、一例としてこの目標は、空間の1つまたは複数の方向における検出の到達範囲、さらには検出された物体の位置特定の精度、さらにはこの物体の形状および/または性質の認識の精度を最適化することであり得る。
【0013】
一実施形態において、検出方法は、プロセッサが測定データから導電性媒質の少なくとも1つのマッピングデータを計算する、ステップdと呼ばれる補足的ステップをさらに含む。
【0014】
この措置により、検出システムは、一連の測定の終了後に、検出システムの周囲にある空間の全てまたは一部のマッピングを提供することができる。
その後、可動式システムを移動させるために、このマッピングを活用することができる。
【0015】
一実施形態において、該方法のステップは、同じ順序で少なくとも1回反復され、遠位のまたは遠位でないオペレータによる検出方法の第1のステップaの前、または遠位のオペレータによる検出方法の最中にステップの反復を制御するために、前記プロセッサに対して指令が伝送される。
【0016】
この措置により、検出システムにより提供されるマッピングを、連続する一連の測定に由来する補足的情報によって充実させ、場合によって実時間で適応させることができる。
このマッピングは、その後、可動式システムを移動させるため、さらにはこの周囲の空間内に存在する1つまたは複数の物体の性質および/または位置の推移を追跡するために活用され得る。
【0017】
該方法の一実施形態において、ステップaで決定されたシステムの動作点は、{「到達範囲」モード、「位置特定」モード、「識別」モード}なるリストから選択され得、ここで「到達範囲」モードは、前記媒質の所与の1つまたは複数の方向での最大検出到達範囲を得ることを可能にし、「位置特定」モードは、従前に検出された物体の位置特定についての最大精度を得ることを可能にし、「識別」モードは、従前に検出された物体の形状および/または組成についての最高の解像度を得ることを可能にする。
【0018】
該方法の一実施形態において、検出システムの動作点は、自動的に1つのステップaから次のステップに移行する、すなわち、
- 1つの物体が検出されこの物体が閾値距離d2よりも短い距離に位置特定される場合、システムが「到達範囲」モードにあったならば、このモードから「位置特定」モードに移行し、
- 1つの物体が検出されこの物体が閾値距離d3よりも短い距離に位置特定され、または指令に対応する形状および/または性質を伴う場合、システムが「位置特定」モードにあったならば、このモードから「識別」モードに移行し、
- 1つの物体が検出され、検出された物体が存在している距離が閾値距離d2よりも長くなった場合、システムが「位置特定」モードにあったならば、このモードから「到達範囲」モードに移行する。
【0019】
これらの措置により、検出システムは、検出された物体に接近した場合に到達範囲モードから位置特定モードへ、その後、さらに一層この物体に接近した場合に識別モードへと、自動的に移行し、最後に、位置特定モードに移行した後で物体から遠ざかった場合に到達範囲モードに戻ることができる。
【0020】
該方法の一実施形態において、ステップaで決定された動作点について発信状態で構成された電極によって発信された信号の形状および/または周波数および/または振幅は、周波数走査の終了時に選択される。
【0021】
この措置によって、その後の一連の測定のために最適な作動周波数は、周囲の空間についての事前の知識無く、決定される。
【0022】
該方法の一実施形態において、ステップaで決定された動作点について発信状態で構成された電極の少なくとも1つによって発信された信号は、異なる周波数の少なくとも2つの正弦波信号の合成である。
【0023】
この措置により、各々の周波数に対応する情報が収集され、例えば2つの異なる媒質の間の界面などの周囲空間の特定の要素の検出を可能にする。
【0024】
該方法の一実施形態において、ステップdで1つの物体が検出された場合、後のステップaにおいて決定される動作点について発信状態で構成された電極の各々によって発信された電気信号の正弦波成分の振幅および/または形状および/または周波数は、検出された物体からの距離に応じて決定される。
【0025】
この措置も同様に、周囲空間のマッピングをステップバイステップで構築すること、さらには、可動式システムを動的に、すなわち実施された最後の一連の測定の検出結果に応じてその後の一連の測定の動作点を最適化することによって移動させることを可能にする。
【0026】
該方法の一実施形態において、ステップdで1つの物体が検出された場合、後のステップaで決定される動作点について発信状態で構成された電極の前記システム上の位置は、検出された物体の形状および/または位置に応じて決定される。
【0027】
この措置は、周囲空間のマッピングをステップバイステップで構築すること、さらには、可動式システムを動的に、すなわち実施された最後の一連の測定の検出結果に応じてその後の一連の測定の動作点を最適化することによって移動させることを可能にする。
【0028】
該方法の一実施形態において、ステップdで少なくとも1つのマッピングデータを決定するために、公知のリファレンスが利用される。
【0029】
この措置によって、例えば、検出された物体の性質について結論付けるために、物体の電気的シグネチャを含むチャートを使用することが可能となる。
【0030】
相関的に、本発明は、コンピュータ上でプログラムが実行される場合に、検出方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を含む、コンピュータプログラムに関する。
【0031】
本発明は、同様に、導電性媒質内での検出システムにおいて、
- 前記媒質と直接電気接触状態にあり、{発信、受信、接続解除}なるリストの中から選択され得る状態を有する、複数の電極(Ei)と、
- {電極を横断する電流強度、電極電位}なるリストの中から選択された、発信または受信状態に置かれた前記電極の各々についての少なくとも1つの電気値の測定デバイスと、
- 前記電極の各々を、{発信、受信、接続解除}なるリストの中から選択された状態に置くことを可能にするスイッチングデバイスと、
- 測定デバイスおよびスイッチングデバイスと情報を交換し、かつ、
・ 事前に与えられた指令、
・ および/またはシステムの従前の構成、
・ および/または測定デバイスによって伝送された前記電極のうちの少なくとも1つのレベルでの従前の測定の結果、
に応じて、検出システムの動作点を決定するように構成された少なくとも1つのプロセッサと、
を含むシステムであって、
システムの前記動作点の決定には、
- 発信、受信、接続解除という少なくとも3つの状態の中から選択された各電極の状態、
- 発信電極のうちの少なくとも1つによって発信された電気信号の少なくとも1つの正弦波成分の周波数、
- 発信状態で構成された電極の少なくとも1つによって発信された電気信号の振幅、という3つのパラメータの決定が含まれており、
プロセッサが、決定された動作点についての情報を、スイッチングデバイスに伝送する、
システムにも関する。
【0032】
一実施形態において、可動式システムは、以上で説明した実施形態のうちの1つにおける検出方法にしたがって得られた検出システムの測定結果に基づいて前記可動式システムの移動を制御するように適応された制御モジュールをさらに含む。
【0033】
この措置により、可動式システムは、それが中で推移する媒質についての事前の知識無く移動することができる。
【0034】
可動式システムの一実施形態において、検出システムの電極は、前記媒質と接触状態にある前記可動式システムの表面の少なくとも一部分の上に分布している。
【0035】
以下では、本発明の実施形態について、以下で簡単に説明される図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】表面のレベルに分布して外部媒質と接触する電極を備えた検出システムが備わった可動式システムの一実施形態を表わす。
【
図2】スイッチングボックスの電気的アーキテクチャを表わす。
【
図3】所与の電極のスイッチングセルの一例を詳細に表わす。
【
図4】電極iが測定モードUにあり、電極jが測定モードIにある場合の、接続状態にある電極iおよびjに対応するセルの電気回路を表わす。
【
図5】「等方性」到達範囲モードにある2次元での媒質内検出システムの単純化された事例における、電極が検出システム上のその位置に応じて活動化される時間の比率を表わす。検出システムは、この特定の例において、導電性媒質内で不動である。
【
図6】「異方性」到達範囲モードの特別な実施形態における2次元での媒質内検出システムの単純化された事例における、電極が検出システム上のその位置に応じて活動化される時間の比率を表わす。検出システムは、この特定の例において、導電性媒質内で直線的並進状態である。
【
図7】「異方性」到達範囲モードの特別な実施形態における2次元での媒質内検出システムの単純化された事例における、電極が検出システム上のその位置に応じて活動化される時間の比率を表わす。検出システムは、この特定の例において、その対称軸の1つを中心として回転状態にある。
【
図8】較正モードを実現できるようにするアルゴリズムを表わす。
【
図9】到達範囲モードを実現できるようにするアルゴリズムを表わす。
【
図10】位置特定モードを実現できるようにするアルゴリズムを表わす。
【
図11】識別モードを実現できるようにするアルゴリズムを表わす。
【
図12】「集中型エレクトロニクス」の実施形態におけるシステムの異なる段階を概略的に表わす。
【
図13】「分散型エレクトロニクス」の実施形態におけるシステムの異なる段階を概略的に表わす。
【0037】
図面中、同一のリファレンスは、同一のまたは類似の物体を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
したがって、本発明は、検出システムを用いた導電性媒質内の検出方法に関する。
【0039】
該方法を実施する検出システムは、導電性媒質と直接電気接触状態となるための複数の電極Eiを含む。
【0040】
例えば、電極Eiは、検出システムが装備される可動式システム100の外部表面に、任意に分布させられることができ、こうして、電極が導電性媒質と直接電気接触状態となる。
【0041】
導電性媒質は、例えば水である。
【0042】
図1は、本発明の特定の一実施形態に係る可動式システム100を概略的に表わす。
この可動式システム100は、およそ1000mm×1000mm×1000mmの寸法の平行六面体の本体を含む。
平行六面体の中心Oを中心とするこの平行六面体の3本の軸は、検出システムの座標系のための空間基準座標系(Oxyz)を構成する。
【0043】
検出システムのn個の電極Ei(iは1~nの整数)を、導電性媒質と接触するように可動式システム100の表面に分布させることができる。
ここで説明される特定の実施形態において、所与の電極Eiの導電性媒質に曝露された表面は円盤状であり、24個の電極が平行六面体の稜上および隅に分布させられている。
【0044】
この実施形態は、限定的ではない。
電極Eiの分布および/または形状は、探査すべき導電性媒質および可動式システムの幾何形状に適応させることができる。
詳細には、電極の一部を平行六面体の各面上に設置することが可能である。
【0045】
可動式システム100は、同様に、平行六面体でなくてもよい。
例えば、可動式システムは、円筒形または任意の形状のものであり得る。
【0046】
可動式システム100が、互いとの関係において可動な複数の部分を含む場合、電極Eiは、これらの可動部分全体の上またはこれらの可動部分の一部のみの上に分布させられていてよい。
【0047】
電極Eiの数は、同様に、可動式システムの寸法に適応させることもできる。
およそ1000mmの特徴的寸法の平行六面体の場合、平行六面体の8ヶ所の頂点に配置された8個の電極が、例えば、死角を残さずに平行六面体を取り囲む空間の方向全体を探査することを可能にする。
【0048】
電極は、例えばステンレス鋼316製、さらにはプラチナ、チタンまたは黒鉛、炭素繊維製で、耐食性を有し、ポリ塩化ビニルなどの電気絶縁性支持体上に配置されている。
【0049】
図12にしたがった「集中型エレクトロニクス」の実施形態においては、電極Eiは、可撓性ケーブルハーネスを介して、およそ10センチメートルの寸法の気密性ボックスに電気的に接続される。
【0050】
ここで説明する実施形態において、このボックスは、以下のものを格納している。
- マイクロプロセッサ、マイクロプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムを含む読取り専用メモリ、このプログラムの実行を可能にするランダムアクセスメモリ、およびスイッチングボックスに対する指令の通信手段、およびスイッチングボックスに由来する情報の受信手段を含む、指令生成ブロック。
- 電極と同数のスイッチングセルならびに、
図2にしたがった電気回路を実現するために必要な電子および電気コンポーネントを格納するスイッチングボックス(または、同等のものとしてスイッチングブロック)。
【0051】
各々のスイッチングセルは、1つの電極専用であり、1つの電極につき1つの発電機、電気値の測定手段、および
図3にしたがった電子回路を実現するために必要な電気および電子コンポーネントを含み得る。
発電機を複数の電極間で、さらには全ての電極間で共用することも同様に可能である。
【0052】
したがって、電極Eiについては、スイッチS3iは、電極iを接続または未接続の接続状態に置くことができる。
電極が接続されている場合、スイッチS1iを介して、その電極を発信状態または受信状態に置くことができる。
【0053】
したがって、所与の電極Eiが、発信(したがって接続済み)、受信(したがって接続済み)、接続解除、という3つの異なる状態にあり得る。
【0054】
この場合、スイッチS2iは、電極を以下で定義する測定モードIまたは測定モードUに置く。
【0055】
スイッチS1i、S2i、S3iは、指令生成ボックスによって制御されて、各電極の状態を該方法の各ステップにおいて自由に構成できるようにすることができる。
【0056】
この実施形態においては、スイッチングボックスレベルでいかなる人的介入も必要でない。
したがって、電極の再構成は、後述するように自動的に、遠隔で行なわれ得る。
詳細には、検出システムが導電性媒質中に浸漬される場合、検出システムまたはこの検出システムが装備される可動式システム100の位置を変更することなく、自動的に電極を再構成することが可能である。
【0057】
検出システムの気密性ボックスは、そのままの状態で、またはそれが装備される可動式システム100の内部に組込まれた状態で利用され得、さらには、このような可動式システム100の外部表面上に設置されてもよい。
【0058】
例えば、これは、石油探堀下部構造のような固定構造の振動監視用フレーム内で使用され得る。
【0059】
発信状態に置かれた電極Eiは、適切な電圧発生器に接続されており、こうして電圧発生器が許す範囲内に電極の電位の振幅、周波数および/または形状を印加することが可能になっている。
【0060】
発信状態に置かれた電極の電位の振幅を選択することは、この電極に接続された発電機が供給する電力を選択することに等しい。
策定を単純化するためには、同じ意味で「発信電極が発信する信号の出力を選択すること」に言及することができる。
【0061】
電極の電位の振幅、周波数および/または形状は、発信状態に置かれた他の電極とは独立した形で、発信状態に置かれた各電極について印加され得る。
【0062】
例えば、各電極のために1つの発電機を提供することができる。
【0063】
別の実施形態においては、同じ発電機を発信状態に置かれた複数の電極に接続することができる。
【0064】
非限定的な例として、この電位の振幅を[0V、15V]の範囲内で選択することが可能であり、その周波数を[0Hz、3MHz]の範囲で選択することができる。
電位の形状は、一例として正弦波、方形波、三角波であり得る。
電位は、周期的であってよく、あるいは、1つまたは複数のパルスしか含まなくてもよい。
【0065】
複数の発電機が具備されている場合、発信状態に置かれた電極に接続された全ての発電機が、同時に活動化される。
【0066】
発信電極は、各々、周囲空間内に電界を発生させる。
これらの電界のラインの一部分が、受信状態にある電極上に達する。
この部分は、考慮対象の発信電極-受信電極双極子、すなわち考慮対象の発信電極-受信電極対の電極の相対的位置に左右される。
【0067】
電極全体が発生させる電界は、重畳して合成電界を形成し、そのトポグラフィは、発信電極の位置および形状およびこれらの電極の電位だけでなく、受信電極の位置および形状(その電位は電荷の電位である)、ならびに接続解除された電極の位置および形状によっても左右される。
【0068】
接続解除状態で、電極Eiは、検出システムまたは可動式システムのいかなる要素にも電気接続されていない。
詳細には、接続解除状態に同時に置かれた異なる2つの電極Eiは、互いに接続されない。
接続解除された電極Eiは放置される、すなわちこの電極は、それが接触している媒質の電位を取る。
その電位は、印加されない。
電極は、その環境によって自由に分極する。
【0069】
その上、接続解除状態は、このモードに置かれた電極がいかなる電気的閉回路にも統合されていないことから、この電極内での電流の流れを不可能にする。
したがって、このモードが存在することで、実際電流が通ることになる受信電極を印加することが可能になる。
【0070】
したがって、接続解除状態が存在することにより、検出システムにとって、このモードが不在である場合よりも多くの視点が可能になる。
【0071】
電極タイプの考えられる組合せの多様性は、求められる目的に対する検出システムの最適化を可能にする要因の1つである。
【0072】
電極の再構成すなわち連続する2つの一連の測定(一連の測定の概念については以下で定義する。)間でのシステムの動作点の再構成は、後述するように、一連の測定から後続する一連の測定へ、周囲のシーン内で検出システムが発生させる電界のトポグラフィを変動させることを可能にする。
【0073】
例えば、異方性電界は、等方性電界で得られるシーンについての情報とは異なる情報を提供することになる。
異なるトポグラフィの2つの異方性電界は、たとえ検出システムが位置および/または配向を変更しなかった場合でも、異なる情報を提供することになる。
【0074】
接続解除状態が存在することにより、特に、なかでも「接続解除」状態にない電極によって定められた特定の方向で本質的に有意な強さの電界を発生させることによって、導電性媒質の特定の方向を探査することが可能になる。
【0075】
接続解除状態が存在することにより、
図1に表わされた通りの可動式システムの表面全体にわたり電極が分布している場合でさえ、非常に異方性の強いトポグラフィを有する検出を可能にする電界を定義することが可能になる。
例えば、1つの面の電極以外の全ての電極を接続解除することが可能である。
この場合、場合によっては、この面の電極にのみ電流が通ることができる。
【0076】
受信状態で構成された電極を、以下の異なる2つの測定モードで構成することができる。
- 測定モード「I」の場合、この電極の電位は印加されており、システムの電荷の電位に等しい。
測定される電気値は、受信電極内を流れる電流の強度であり、すなわちその位相およびその振幅が測定される。
このためには、信号の各周期について信号のP個の周期中に、N回の強度の測定が実施される。
信号が複数の正弦波成分を含む場合、検討すべき異なる成分に適応された伝送帯の濾過ステップが、受信電極内を流れる電流の強度の各成分の位相および振幅を測定するような形で実施される。
したがって、この場合、介入する発信電極と受信電極の間の電位差は印加されたもの、すなわち公知のものであり、このため、最終的に、検討対象の各周波数についてのインピーダンス値を測定から演繹することが可能になる。
- 測定モード「U」の場合、受信電極の電位は浮動性である。
発信電極レベルにおける電極内を流れる電流強度ならびに、受信電極レベルの電位が測定される。
すなわち、それら各々の位相および振幅が測定される。
このために、信号の各周期について信号のP個の周期中に、N回の強度の(あるいは電圧の)測定が実施される。
信号が複数の正弦波成分を含む場合、検討すべき異なる成分に適応された伝送帯の電子フィルタを用いた濾過ステップが、発信電極内を流れる電流強度(あるいは受信電極の電位)の各成分の位相および振幅を測定するような形で実施される。
【0077】
フィルタリングステージは、指令生成用ボックスの入口に置かれ、こうして、検出された物体の位置、性質または形状についての情報を得るためにこれらのデータが処理される前に、アナログ-デジタル変換後に測定手段に由来するデジタル信号について異なる成分のフィルタリングが実施されることになる。
【0078】
図4は、電極EiおよびEjが接続されており、測定モードIで第1の電極が発信状態にあり、第2の電極が受信状態にある、動作点の一例を示している。
【0079】
N回の測定の各々に、特徴的な「時間単位」が必要であり、これは、検出システムを実現するために実際に選択された電子機器に左右される。
【0080】
一連の測定は、信号の各成分についてのN*P回の測定の各々が実際に実現された時点で直ちに終了する。
したがって、一連の測定には、受信状態または発信状態で構成された電極各々のレベルでの(電流強度および電位の大きさの中の)少なくとも1つの電気値の評価が含まれる。
【0081】
システムの動作点は、各々の一連の測定の前に、電極の構成によって、より厳密には以下の3つのパラメータの構成によって定められる。
- 発信、受信、接続解除という少なくとも3つの状態の中から選択された、電極各々の状態。
- 発信電極の少なくとも1つによって発信された電気信号の一成分の周波数。
- 発信状態で構成された電極のうちの少なくとも1つによって発信された電気信号の振幅。
【0082】
所与の受信電極-発信電極双極子の発信電極と受信電極の間の導電性媒質の一部分に特徴的なインピーダンスは、このとき、各々の作動周波数について、これら2つの電極間の電位差およびこれらの電極のうちの1つの中を流れる電流から演繹される。
これらのインピーダンスは、その後、検出すべき物体(または物体の不在)を特徴付けるパラメータを得るために検出システムによって活用され得る。
【0083】
したがって、本発明において、検出の概念には、物体の位置特定と特徴付けという2つの面の一方および/または他方が含まれる。
したがって、同じ意味で、知覚に言及することができる。
【0084】
一連の測定が実施される場合、選択された動作点において構成された発信電極-受信電極双極子と同数の電気インピーダンスを、各作動周波数について評価することができる。
【0085】
電極を保護するために、検出システムを振幅制御することができる。
すなわち、測定モードIで電極の1つにおいて検出された電流強度が指令値よりも大きい場合、進行中の一連の測定は停止し、発信状態で電極に接続された発電機の端子における電圧の振幅は、後続する動作点について低下させられる。
【0086】
場合によって検出された物体の位置および/または形状および/または性質についての結果または、いかなる物体も検出されないという事実は、最終的に場合によって、検出システムの指令生成用ボックスにより、例えば
図9~11に表わされたアルゴリズムにしたがって、後続する一連の測定についてのシステムの動作点を決定するために使用される。
【0087】
一実施形態によると、検出方法において、システムの動作点は、それが「到達範囲」モードに対応するように選択され得る。
この場合、発信または受信状態に置かれた電極群は、最大検出到達範囲を得ることが望まれる方向、すなわち回路の電気コンポーネントの公称動作について、物体を検出できる距離が最大である方向に応じて決定される。
【0088】
図5に単純化された形で表わされている到達範囲モードの特定の一実施形態において、発信、受信、接続解除の3つの状態の各々における電極の分布は「等方性」である、すなわち検出システムの電極Eiの位置を考慮して可能なかぎり等方性である。
この分布においては、空間のいずれの方向も優先されない。
【0089】
例えば、検出システムが、
図1に表わされている形で可動式システム100に装備されている場合、到達範囲モードでの測定は6n回反復され得る。
n回の一連の測定のうち6回の一連の測定の各々について、平行六面体の6つの面のうち一度に唯1つの面の稜および/または隅上で、内部の電極のみを、発信状態に置くことができ、6つの面は連続的に走査される。
【0090】
したがって、
図5は、2次元の単純化された事例において、検出システムを備えた単純化された矩形の可動式システムの4つの面の各々の上で電極の活動化に割当てられる時間を表わしている。
【0091】
到達範囲モードにおいて、発信電極レベルでの電圧の振幅は、範囲[0V、15V]内に含まれ得る。
電圧の形状および周波数は、これらの電極全てについて同じであり得る。
到達範囲モードのこのような等方性実施形態は、例えば、同じ到達範囲で同時に可動式システムの座標系の3方向で空間を探査することを可能にする。
【0092】
逆に、検出システムが特定の一方向で物体を検出した場合、または一方向が探査にとって特別に対象となる場合、例えば検出システムが装備されている可動式システム100がこの方向で並進運動している場合、検出システムは、接続された状態で構成された電極の「異方性」管理を伴って到達範囲モードに置かれ得ることになる。
【0093】
図6に表わされている単純化された例において、2次元可動式システムに装備される検出システムについて、対象の方向が方向[Ox]である場合、一連の測定の数の25%を上回る割合(ここでは一例として65%)が、内部で、[Ox]と同じ向きおよび方向の外に向いた法線の面の稜および/または隅上でのみ電極を活動化させることによって実施されることになり、残りの測定の半分超の割合(ここでは一例として15%)が、内部で、反対側の面の稜および/または隅上でのみ電極を活動化させることにとどまることによって実施されることになる。
【0094】
実際の3次元の事例においては、到達範囲モードでのn回の一連の測定が実施されることになり、こうして、n回の一連の測定のうちの6分の1超が、内部で、[Ox]と同じ向きおよび方向の外に向いた法線の面の稜および/または隅上でのみ電極を活動化させることによって実施され、残りの測定の5分の1超の割合が、反対側の面の稜および/または隅の上でのみ電極を活動化させることにとどまることによって実施されることになる。
【0095】
検出システムが、回転状態の可動式システム100に装備される場合、空間の異なる方向で実施される測定の数の分布は、
図7に2次元に単純化された形で説明されている分布に対応し得る。
すなわち、この場合、検出システムの周りの空間は8つの部分に細かく分割され、これらの部分のうちの4つが、各々、測定に割当てられた時間の5分の1の間に探査され、他の4つの部分(最初の4つと交番するもの)が各々、測定に割当てられた時間の20分の1の間に探査される。
【0096】
これらの例は、限定的なものではなく、動作点の選択に融通性があることから、他の変形形態を単純に創出することが可能になっている。
【0097】
スイッチングボックスは、指令生成用ブロックによって伝送された指令にしたがって自動的に電極を再構成することを可能にすることから、検出システムは静的モードにおいて、その環境の全体または一部分を任意にマッピングすることができる。
例えば、従前の測定結果を考慮に入れて電極の構成を管理することだけで、探査される単数または複数の方向ならびにこれらの方向が探査される最大距離を選択することができるため、検出システムまたはこの検出システムが装備される可動式システム100のいかなる運動も、所望されるマップを得るため、すなわち対象となる異なる方向をプロービングするために必要とされない。
【0098】
到達範囲モードでは、少なくとも1つの所与の方向で検出が可能である最大距離が、最適化される。
【0099】
到達範囲モードで発信状態にある電極レベルでの信号の各正弦波成分の振幅および/または周波数が、導電性媒質の性質に応じて決定される。
【0100】
図8のアルゴリズムにしたがった較正段階は、到達範囲モードでの測定段階の前に企図され得る。
このために、探査される媒質内での到達範囲を最大化するために最も適合した単数または複数の周波数を識別する目的で、n回の一連の連続する測定の反復について[0Hz、3MHz]の範囲内の周波数走査を実施することが可能である。
水中では、例えば作動周波数f=10kHzを選択することができる。
【0101】
この較正段階は、同様に、禁止されている作動周波数、詳細には、検出システムが装備される可動式システム100の固有周波数(およびそれらの高調波)を識別するためにも活用可能である。
ここでは、可動式システム100中に、このシステムの機器、例えばソナーを内含させる。
【0102】
特定の一実施形態において、周波数走査は、[0Hz、25kHz]の範囲内で実施され得、低周波数は、最も多くの場合、検出到達範囲を最適化するために最も適切である。
【0103】
これらの例は、当然のことながら、限定的なものではない。
すなわち、例えば導電性媒質の組成が事前に知られていない場合に、導電性媒質の所与の方向における検出到達範囲を最適化する単数または複数の作動周波数を決定するために、[0Hz、3MHz]の範囲内の周波数走査を行なうことが可能である。
【0104】
検出システムが、水/堆積物の界面に近い場合、発信電極の電位は、より有利には、2つの正弦波電位の合成であり得る。
例えば、一方が10kHzに等しく、他方が10kHz超、例えば67kHzである周波数、そして0~15Vの振幅の2つの正弦波電位を合成する。
より大きな周波数の電気信号は、特に、堆積物内でより良い到達範囲を得ることを可能にする。
振幅は、測定モードIの電極レベルで強度の閾値を超えることなく、発信電極レベルで可能なかぎり強い信号を有するような形で定められる。
【0105】
一実施形態によると、検出方法において、システムの動作点は、「位置特定」モードに対応し得る、すなわち、所与の方向での検出システムと検出された物体の間の距離は、公称動作モードにとどまりながら、物体が存在する特定の距離の値について最大限の精度で測定される。
この場合、発信または受信状態に置かれた電極の位置は、例えば、物体が検出された方向に応じて決定される。
【0106】
特定の一実施形態において、発信状態での電極のレベルの信号の正弦波成分の振幅および/または周波数は、位置特定の精度を最適化するために決定される。
信号の振幅は、特に、検出された物体の位置および性質に応じて定められ得る。
詳細には、検出された物体の位置および性質について、受信電極レベルで許可されている最大の強度を超えないようにすることのできる振幅の最大値を選択することができる。
【0107】
信号の周波数は、周波数走査の終了時に選択され得る。
したがって、導電性媒質中に物体が存在する場合、表皮効果のため、測定された信号は、選択された動作点に対応する検出ゾーン内に物体がある場合、物体の不在下で測定されると考えられる信号とは異なるものである。
低周波数であれば、到達範囲は、高周波数の場合よりも大きいが、位置特定の精度はより低いものである。
したがって、周波数が増加するとき、それを超えると測定された信号が物体無しの導電性媒質のものと同一となる限界周波数が存在する。
位置特定のために選択された作動周波数は、位置特定の精度が最大となるように、限界周波数に近い。
【0108】
この実施形態は、検出された物体との関係における検出システム(または検出システムが装備される可動式システム100)の移動を必要としないが、このような移動は依然として可能である。
電極、特に発信された信号の周波数の(自動化された)再構成だけで、位置特定の最適化のために必要な情報を得るのに充分である。
【0109】
一実施形態によると、検出方法は、「識別」モードに対応するようにシステムの動作点を定めることができる。
すなわち、検出された物体の形状および/または性質は、最大の精度で決定される。
【0110】
対象の物体の形状を明示するために、発信または受信状態に置かれた電極は、物体が検出された方向に応じて決定され、内部で、対象となる方向に対応する外に向いた法線の面の稜および/または隅上の電極のみが接続状態にあるように、またn回の一連の測定にわたり異なる電極の組合せが検討されるように、n回の一連の測定が実施され、測定から物体の形状を演繹することになる。
障害物の形状を確認するために、例えば、電極は、所与の方向で1回の一連の測定から後続する一連の測定へと、非対称的にスイッチングされる。
こうして、検出システムの下部面の下にある物体が、方向(X’X)に沿って連続する群毎に下部面の電極を接続すること、すなわちまずは後方面に最も近い電極そして次に方向(X’X)でそれらに隣接する電極、そして前方面に最も近い電極に至るまで接続することによって方向(X’X)に沿った一定の延在部分を有し、ここでこの面の他の電極は、接続解除されていることを確認することができる。
n回の一連の測定の結果の間の差異または類似性により、このとき、方向(X’X)における物体の形状について結論付けることが可能になる。
【0111】
障害物の性質を確認するためには、例えば、「識別」モードにおいてひと続きのn回の一連の測定にわたり[0Hz、3MHz]の範囲内で走査を実施するために、発信状態の電極に印加される電圧の周波数を、修正することができる。
【0112】
このとき、検出された物体の性質についての情報を得ることが可能である。
例えば、電気絶縁性物体の存在は、この物体の不在下で測定された電流強度よりも低い電流強度という形で現われ、一方、物体が導電性を有する場合には、この強度は、この物体の不在下でのものよりも高くなる。
【0113】
鉱物的性質の均質な物体は、例えば、発信された信号と測定された信号の間で位相の差を誘発せず、一方、生物学的性質の物体の存在は、それを構成する細胞がコンデンサとして挙動するかぎりにおいて、発信された信号と測定された信号の間に位相の差の形で現われることになる。
【0114】
例えば、シーンの電気的および機械的推移モデルに基づいてか、または公知のシグネチャベースと測定値の比較によってか、またはミッションの一環として事前に教示された情報によって、公知の基準、すなわち物体、および検出システムが測定した電気信号に対する導電性媒質中へのこの物体の浸漬の影響についてのデータベースと、測定値とを比較することによって、検出された物体についての情報(例えば、物体の形状、サイズ、導電性または絶縁性特性など)を得ることも同様に可能である。
方法は、互いに排他的なものではない。
【0115】
したがって、この動作モードにおいては、(鉱山、ケーブル、配管系などの)対象となる物体の「電気的感知」のシグニチャと呼ばれるシグニチャのデータベースを構成することができる。
検出システムがその場で展開される場合には、データベースに対する比較を行なって、そこから、検出された物体についての1つまたは複数の情報を演繹することができる。
【0116】
位置特定モードの使用には、検出された物体との関係における検出システム(またはそれが装備される可動式システム)の移動は必要でない(但し、排除はしない)。
電極、そして特に、発信された信号の周波数の(自動化された)再構成だけで、識別のために必要な情報を得るには充分である。
【0117】
一実施形態によると、検出方法は、検出システムに内蔵されたプロセッサ上で実行される情報処理プログラムを用いて実施可能である。
このコンピュータプログラムの主要な段階について、ここで
図8~11を参照しながら説明する。
【0118】
特定の一実施形態においては、検出システムを、検出の開始時点で「到達範囲」モードに置くことができる。
「到達範囲」モードについての詳細なアルゴリズム例が、
図9に示されている。
媒質が事前に知られていない場合、このモードにおける最適な作動周波数を決定する目的で、較正段階に対応する任意の第1の周波数走査ステップが実施され得る。
【0119】
媒質内の物体または別の導電性媒質との界面が存在しない場合、媒質の電気インピーダンスは、事前に提供されるかまたは較正段階の際に測定され得る基準値をとる。
物体または界面の存在は、この電気インピーダンスを修正し、これにより物体または界面の距離を評価することが可能になる。
【0120】
閾値距離d1よりも短い距離のところにいかなる物体も界面も検出されないかぎり、システムは到達範囲モードにとどまる。
別の媒質との界面が、閾値距離d1より短い距離のところで検出された場合、周波数走査は繰り返される。
【0121】
そうでなければ、距離d2より短い閾値距離で物体が検出された場合には、システムは、後続する測定のために、
図10でそのアルゴリズム例が示されている「位置特定」モードに置かれ、物体とシステムの間の距離が閾値距離d3より長いかぎり、そこにとどまる。
【0122】
物体とシステムの間の距離が再び距離d2よりも長くなった場合、システムは改めて「到達範囲」モードに移行する。
【0123】
反対に、物体とシステムの間の距離が閾値距離d3よりも短くなった場合、およびミッション上それが求められる場合、システムは、後続する測定のために、「識別」モードに置かれる。
このとき、システムは、可能なかぎり最高の精度で物体の形状および性質についてシステムが結論付けできるようにする複数の一連の測定を実施する。
【0124】
ミッションは、事前に与えられた指令の形で定義され得る。
【0125】
識別が充分なものである場合、ミッションは、後続するタスクに適応されたモードで続行する。
【0126】
検出システムが可動式システムに装備される場合、偶発的な衝突を回避するため、「到達範囲」モードが、他のモードよりも優先され得る。
より厳密には、検出システムは、ウォッチドッグの周期が経過する毎に到達範囲モードに戻ることを検出システムに課すウォッチドッグを含む。
【0127】
一実施形態によると、検出方法は、導電性媒質内にあり検出システムを備えた可動式システム100上で実施され得る。
この場合、検出方法の結果は、例えば障害物を回避する目的で可動式システム100の移動を誘導するため、あるいは、媒質内に存在する間仕切り、界面または物体との関係において対象となる配向で、一定の距離のところに可動式システムを位置付けするために利用可能である。
【0128】
したがって、ミッションには、可動式システム100の移動と関連した指令を組込むことができる。
【0129】
一実施形態において、動作点の構成用ボックスは、後続する動作点を決定するために測定履歴に基づいている。
【0130】
別の一実施形態においては、システムの制御閾値の限界内で、実施された測定とは独立して事前に選択されたアルゴリズムによって動作点を定めることができる。
【0131】
「分散型エレクトロニクス式」と呼ばれる特定の一実施形態において、検出システムは、電極毎に1つの発電機を含み、アセンブリ{発電機-電極-アナログ測定手段-アナログ/デジタル変換ステージ}は、可撓性ケーブルハーネスを介して、
図13にしたがって、指令生成ブロックおよびスイッチングボックスを格納する気密ボックスに接続されている。
この実施形態は、デジタル信号しか可撓性ケーブルによって通過させないようにし、これにより、ノイズに対するより優れた耐性を得ることを可能にする。
【0132】
同様に、接続モードに置かれた全ての電極に給電する唯一の発電機のみを具備することも可能であり、この場合、発電機は、指令生成ブロックを格納する気密ボックスの中にある。
【0133】
最後に、特定の一実施形態においては、検出システムは、遠隔制御ステーションを伴う通信インタフェースを格納し、これによりオペレータは、検出プロセスに由来するデータを視覚化し、かつ検出システムを構成し、特に、遂行すべき一つまたは複数のミッションをシステムに対して特定することが可能になる。
【0134】
したがって、ひとたび検出システムを浸漬させたならば、遠隔のオペレータが、遠隔でミッションを修正し、あるいは、指令生成ブロックを制御して、検出システムに特定の構成を課すことが可能である。
【0135】
したがって、場合によっては遠隔のオペレータの介入を伴って、電極の再構成が自動的である性質と組み合わせた検出システムの電極構成の多くの可能性により、検出システムは、周囲空間についての事前の知識無く、この周囲空間のマッピングデータを提供することができる。
マッピングデータは、検出システムを取り囲む空間の一ゾーンに対応することができ、このゾーンは、静的に選択され得るものの、例えば可動式システム100に装備されることによる検出システムの移動のため、あるいは従前の検出結果のために動的に推移することもできる。
【0136】
マッピングデータとは、導電性媒質についての少なくとも1つの空間的性質を有する情報を意味する。
詳細には、非限定的にではあるものの、これは、他の媒質(液体、気体または固体)との偶発的界面の位置、そして場合によっては形状であり得る。
これは同様に、この媒質内の固体物体の位置(空間座標)、および/またはその形状および/またはこの物体の性質、例えばその絶縁性または導電性でもあり得る。
【0137】
到達範囲モードから位置特定モードに移行することは、例えば、物体が中で検出されたゾーンに集中するために、構成済みのマッピングがカバーする空間のゾーンを削減すること、そして場合によっては、この特定のゾーン内でより重要な詳細度を得るためにマッピングの縮尺を変更することに等しい。
【符号の説明】
【0138】
100 検出システムを備えた可動式システム
Ei(iはl~nの整数) 検出システムのi番目の電極
S1i(iはl~nの整数) 電極iが接続されている場合、電極iの状態を発信状態および受信状態の中から選択できるスイッチ
S2i(iはl~nの整数) モードUとIの中から電極iの測定モードを選択できるスイッチ
S3i(iはl~nの整数) 接続状態および接続解除状態の中から電極iの接続状態を選択できるスイッチ