(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】位置測定装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20250411BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20250411BHJP
【FI】
G01D5/244 J
G01D5/245 E
G01D5/245 110J
(21)【出願番号】P 2021040662
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】田中 駿丞
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-29213(JP,A)
【文献】特開2009-204495(JP,A)
【文献】特開2009-2702(JP,A)
【文献】特表2015-503748(JP,A)
【文献】特開平2-55917(JP,A)
【文献】特開平4-343008(JP,A)
【文献】特開2009-19876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1仮想円周上に複数のパターンが配列されて形成されたスケールパターンを有し、前記第1仮想円周の中心点からずれた位置を通過する回転軸線回りに回転するロータリースケールと、
前記回転軸線上に位置する点を中心点とし、前記第1仮想円周と対向させて仮想的に描かれた第2仮想円周上に設けられた3つ以上の受信部と、
前記スケールパターンを介して前記受信部に向かって信号を発信する発信部と、を備えたロータリーエンコーダと、
前記回転軸線と平行であり前記第1仮想円周の前記中心点を通過する延長線が延びる方向から前記第1仮想円周を見たときに、前記受信部毎に、前記第1仮想円周が描かれる仮想面に投影される前記受信部の位置と前記第1仮想円周の前記中心点とを結ぶ直線と、前記スケールパターン上に設定されたスケール原点と前記第1仮想円周の前記中心点とを結ぶ直線との間の角度である受信部配置角度を算出する角度出力算出部と、
前記角度出力算出部によって算出された前記受信部配置角度の組み合わせによって2相正弦波を算出する2相正弦波算出部と、
前記2相正弦波算出部によって算出された前記2相正弦波に基づいてアブソリュート位置を算出するアブソリュート位置算出部と、
を、
備え、
前記角度出力算出部は、前記受信部毎に、前記第1仮想円周の一周分の角度である360°を前記複数のパターンの数で除した値であるインクリメンタル角と、対象となる前記受信部の偏心誤差との和として表される前記受信部配置角度を算出する、
ことを特徴とする位置測定装置。
【請求項2】
前記第2仮想円周上に120°ずつ離して配置された3つの前記受信部を備えた請求項1に記載の位置測定装置。
【請求項3】
前記受信部は受光素子であり、前記発信部は発光素子である請求項1または2に記載の位置測定装置。
【請求項4】
前記受信部は受信コイルであり、前記発信部は送信コイルである請求項1または2に記載の位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、ロータリーエンコーダおよび位置測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリースケールを備えたロータリーエンコーダが知られている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-178227号公報
【文献】特開2016-138759号公報
【文献】特開2018-059714号公報
【文献】特開2019-168410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータリーエンコーダは、測定対象物の回転方向の機械的変位量をデジタル量に変換する位置センサであり、インクリメンタル方式とアブソリュート方式とに大別される。インクリメンタル方式は、測定開始点からの回転角度に対応して発生するパルスを積算する方式であるのに対し、アブソリュート方式は原点に対する絶対角度位置を計測する方式である。現在の角度(アブソリュート位置)が直ちに判明する点でアブソリュート方式は便利である。しかしながら、従来のアブソリュート方式のロータリーエンコーダでは、複雑なスケールパターンが設けられたアブソリュートトラックなどを装備しなければならない等、インクリメンタル方式と比較してその構造が複雑である。
【0005】
1つの側面では、本発明は、簡易な構造でアブソリュート位置を求めることができるロータリーエンコーダおよび位置測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、ロータリーエンコーダは、第1仮想円周上に複数のパターンが配列されて形成されたスケールパターンを有し、前記第1仮想円周の中心点からずれた位置を通過する回転軸線回りに回転するロータリースケールと、前記回転軸線上に位置する点を中心点とし、前記第1仮想円周と対向させて仮想的に描かれた第2仮想円周上に設けられた3つ以上の受信部と、前記スケールパターンを介して前記受信部に向かって信号を発信する発信部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記ロータリーエンコーダは、前記第2仮想円周上に120°ずつ離して配置された3つの前記受信部を備えることができる。
【0008】
また、上記ロータリーエンコーダにおいて、前記受信部は受光素子であり、前記発信部は発光素子とすることができる。
【0009】
さらに、上記ロータリーエンコーダにおいて、前記受信部は受信コイルであり、前記発信部は送信コイルとすることができる。
【0010】
1つの態様では、位置測定装置は、第1仮想円周上に複数のパターンが配列されて形成されたスケールパターンを有し、前記第1仮想円周の中心点からずれた位置を通過する回転軸線回りに回転するロータリースケールと、前記回転軸線上に位置する点を中心点とし、前記第1仮想円周と対向させて仮想的に描かれた第2仮想円周上に設けられた3つ以上の受信部と、前記スケールパターンを介して前記受信部に向かって信号を発信する発信部と、を備えたロータリーエンコーダと、前記回転軸線と平行であり前記第1仮想円周の前記中心点を通過する延長線が延びる方向から前記第1仮想円周を見たときに、前記受信部毎に、前記第1仮想円周が描かれる仮想面に投影される前記受信部の位置と前記第1仮想円周の前記中心点とを結ぶ直線と、前記スケールパターン上に設定されたスケール原点と前記第1仮想円周の前記中心点とを結ぶ直線との間の角度である受信部配置角度を算出する角度出力算出部と、前記角度出力算出部によって算出された前記受信部配置角度の組み合わせによって2相正弦波を算出する2相正弦波算出部と、前記2相正弦波算出部によって算出された前記2相正弦波に基づいてアブソリュート位置を算出するアブソリュート位置算出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記位置測定装置は、前記第2仮想円周上に120°ずつ離して配置された3つの前記受信部を備えることができる。
【0012】
また、上記位置測定装置において、前記受信部は受光素子であり、前記発信部は発光素子とすることができる。
【0013】
さらに、上記位置測定装置において、前記受信部は受信コイルであり、前記発信部は送信コイルとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
簡易な構造でアブソリュート位置を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は実施形態に係るロータリーエンコーダの概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は実施形態に係るロータリーエンコーダに含まれるロータリースケールの概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3(A)は第1角度ANGLE
1、第2角度ANGLE
2及び第3角度ANGLE
3の説明図である。
図3(B)は回転軸線から見たスケール原点と第1受光素子との間の角度(アブソリュート位置θ)の説明図である。
【
図4】実施形態の位置測定装置の構成を例示する説明図である。
【
図5】実施形態の位置測定装置において算出される2相正弦波を例示する説明図である。
【
図6】変形例に係るロータリーエンコーダの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0017】
(実施形態)
まず、
図1から
図3(B)を参照して実施形態のロータリーエンコーダ1の概略構成について説明する。
図1は実施形態に係るロータリーエンコーダ1の概略構成を示す模式図である。
図2は実施形態に係るロータリーエンコーダ1に含まれるロータリースケール2の概略構成を示す模式図である。
図3(A)は実施形態のロータリーエンコーダ1によってアブソリュート位置を検出する際に算出される角度出力である第1角度ANGLE
1、第2角度ANGLE
2及び第3角度ANGLE
3の説明図である。
図3(B)は回転軸線AXから見たスケール原点Oと第1発信部に相当する第1受光素子4aとの間の角度(アブソリュート位置θ)の説明図である。
【0018】
実施形態のロータリーエンコーダ1は、ロータリースケール2と、それぞれ受信部に相当する第1受光素子4a、第2受光素子4b及び第3受光素子4cを備える。また、ロータリーエンコーダ1は、第1受光素子4aから第3受光素子4cに対応させて設けられ、それぞれ発信部に相当する第1発光素子5a、第2発光素子5b及び第3発光素子5cを備えている。
【0019】
図1及び
図2を参照すると、ロータリースケール2は、円盤状の部材であり、第1仮想円周R1上に複数のパターン3aが配列されることで形成されたスケールパターン3を備えている。第1仮想円周R1の半径は、rである。ロータリースケール2は、計測対象が備える回転軸に取り付けられる。本実施形態のロータリーエンコーダ1は、光透過型である。このため、パターン3aは、スリットとして形成されている。なお、
図1に示されたパターン3aは、一例であり、その数は、ロータリーエンコーダ1に求められる分解能に応じて適宜増減することができる。スケールパターン3上には、スケール原点Oが設定されている。スケール原点Oは任意の位置に設定することができる。
【0020】
ロータリースケール2上に描かれる第1仮想円周R1の中心点は、Pc1である(以下、「第1中心点Pc1」という。)が、ロータリースケール2は、第1中心点Pc1からずれた位置を通過する回転軸線AX回りに回転する。ここで、回転軸線AXは、円盤状の部材であるロータリースケール2と直交する線、換言すると第1仮想円周R1を含む面と直交する線である。ロータリースケール2は、第1中心点Pc1からずれた位置を通過する回転軸線AXと計測対象が備える回転軸とを一致させて計測対象に取り付けられる。本実施形態では、第1中心点Pc1と回転軸線AXとのずれ量(偏心量)はSである。
【0021】
図1に示すように、第1受光素子4a、第2受光素子4b及び第3受光素子4cは、ロータリースケール2の一面側に、第1仮想円周R1と対向させて仮想的に描かれた第2仮想円周R2上に配置されている。つまり、第1受光素子4a、第2受光素子4b及び第3受光素子4cは、ロータリースケール2と平行となる面内に描かれる第2仮想円周R2上に配置されている。第2仮想円周R2の中心点はPc2である(以下、「第2中心点Pc2」という。)。第2中心点Pc2は、回転軸線AX上に位置している。
【0022】
つぎに、
図3(A)を参照して、アブソリュート位置を検出する際に算出される角度出力である第1角度ANGLE
1、第2角度ANGLE
2及び第3角度ANGLE
3について説明する。スケールパターン3の中心である第1中心点Pc1とロータリースケール2の回転軸線AXとがずれていることから、各受光素子4a~4cの角度出力には、偏心誤差が生じる。この偏心誤差は、円周1周を周期とする周期的な誤差である。この偏心誤差の位相は、各受光素子4a~4cの配置に依存する。従って、これらの角度出力は、受光素子毎の信号に基づいてインクリメンタル角θincと偏心誤差(振幅a,受光素子の配置角度αn)との和として表すことができる。従って、n番目の受光素子の角度出力ANGLE
nは式1示す一般式によって表される。
(式1) ANGLE
n=θinc+a・sin(θ-αn)
【0023】
式1におけるaは、ロータリーエンコーダ1における偏心誤差の振幅であり、近似的に下記の式2で表される。
【数1】
【0024】
つぎに、
図3(B)を参照して、式1におけるθについて説明する。θは、回転中心角であり、ロータリースケール2の回転中心となる回転軸線AXから見たスケール原点Oと、基準位置に設定した第1受光素子4aとの間の角度であって、アブソリュート位置に相当する。つまり、回転中心角θは、最終的に検出したい角度となる。回転中心角θの値域は、0°≦θ<360°となる。
【0025】
ここで、本実施形態におけるロータリースケール2は、第1仮想円周R1を所定の数に分割してパターン3aを配置したインクリメンタル方式に基づいているため(
図1参照)、インクリメンタル角θincは、回転中心角θを用いて以下の式3によって表記することができる。
(式3) θinc=(θ,360°/div)
ここで、divは、スケールパターン3におけるパターン3aの数、つまり、一周当たりのスケールパターン3の数(分割数)である。なお、インクリメンタル角θincの値域は、0°≦θinc<360°/divである。
【0026】
つぎに、式1におけるαnについて説明する。第1受光素子4a、第2受光素子4b及び第3受光素子4cは、それぞれ第2仮想円周R2の周方向に間隔をあけて配置されている。ここで、
図3(B)に示すように第1受光素子4aが設けられた位置を基準位置とし、第2中心点Pc2と第1受光素子4aとを結んだ線分に対する角度(受光素子の配置角度)αnによって第2受光素子4bと第3受光素子4cの位置を示す。従って、本実施形態では、第1受光素子4aの配置角度α1は、α1=0°となる。また、第2受光素子4bの配置角度α2は、α2=120°、第3受光素子4cの配置角度α3は、α3=240°(=-120°)となる。本実施形態では、一周360°を3等分しているが、不等間隔であってもよい。また、受光素子の数も、4つ以上であってもよく、その場合も、受光素子の間隔は、等間隔であっても不等間隔であってもよい。本実施形態のように、等間隔とすることで、後に説明する角度出力を算出する際に、各受光素子の角度出力に対する重み付けが均等になるため、受光素子を不等間隔に配置した場合と比較してノイズの影響を受けにくい。
【0027】
再び
図1を参照すると、第1発光素子5a、第2発光素子5b及び第3発光素子5cは、ロータリースケール2を隔てて、第1受光素子4a、第2受光素子4b及び第3受光素子4cと反対側に配置されている。第1発光素子5a、第2発光素子5b及び第3発光素子5cは、ロータリースケール2と平行となる面内に仮想的に描かれる第3仮想円周R3上に配置されている。第3仮想円周R3の中心点はPc3である(以下、「第3中心点Pc3」という。)。第3中心点Pc3は、第2中心点Pc2と同様に、回転軸線AX上に位置している。
【0028】
なお、第1仮想円周R1、第2仮想円周R2及び第3仮想円周R3の直径は、エンコーダとしての機能を発揮することができる範囲内であれ、格別の制約はなく、適宜設定することができる。
【0029】
つぎに、
図4を参照して、実施形態の位置測定装置100について説明する。位置測定装置100は、上述したロータリーエンコーダ1、角度出力算出部10、2相正弦波算出部20及びアブソリュート位置算出部30などを備えている。
【0030】
角度出力算出部10は、増幅器、A/Dコンバータ、計算器などを備える。角度出力算出部10は、第1受光素子4aから第1リサージュを形成するための信号を受信し、第2受光素子4bから第2リサージュを形成するための信号を受信し、第3受光素子4cから第3リサージュを形成するための信号を受信する。
【0031】
角度出力算出部10は、各受光素子から受信した信号をA/Dコンバータでデジタル化し、計算器によって角度出力、つまり、第1角度ANGLE1、第2角度ANGLE2及び第3角度ANGLE3を算出する。これらの角度出力は、上述の式1に各受光素子に関する値を反映させた各式に基づいて算出される。以下の各式は、第1受光素子4aにおける偏心誤差が「0」となるようにスケール原点Oの位置が設定されている。
【0032】
第1受光素子4aの信号に基づいて算出される第1角度ANGLE1は、以下の式4-1で算出される。
(式4-1) ANGLE1=θinc+a・sin(θ)
第2受光素子4bの信号に基づいて算出される第2角度ANGLE2は、以下の式4-2で算出される。
(式4-2) ANGLE2=θinc+a・sin(θ+120°)
第3受光素子4cの信号に基づいて算出される第3角度ANGLE3は、以下の式4-3で算出される。
(式4-3) ANGLE3=θinc+a・sin(θ-120°)
【0033】
2相正弦波算出部20は、角度出力算出部10によって算出された第1角度ANGLE1、第2角度ANGLE2及び第3角度ANGLE3に基づいて2相正弦波Xと2相正弦波Yを算出する。2相正弦波算出部20は、2相正弦波Xと2相正弦波Yを算出するために、まず、以下の式5-1~式5-3に基づいて、それぞれの角速度の差、つまり、第1角度差DIFANGLE1、第2角度差DIFANGLE2及び第3角度差DIFANGLE3を算出する。
(式5-1)
DIFANGLE1=ANGLE2-ANGLE1
=√3a・sin(θ+150°)
(式5-2)
DIFANGLE1=ANGLE3-ANGLE2
=√3a・sin(θ+270°)
(式5-3)
DIFANGLE1=ANGLE1-ANGLE3
=√3a・sin(θ+30°)
【0034】
これらの演算を行うことにより、式1における第1項であるインクリメンタル角θincの項が打ち消され、式1における第2項である偏心誤差の項だけが残り、これらは、120°位相差の3相正弦波となる。こうして得られた3相正弦波を3相2相変換することで、
図5に示すような、1周360°を周期とするリサージュ(90°位相差の2相正弦波)を得ることができる。ここで、3相2相変換は、以下の式6に示す行列変換によって行う。式6によって得られたX,Yがリサージュ信号である。
【数2】
【0035】
アブソリュート位置算出部30は、2相正弦波算出部20によって算出された2相正弦波X及び2相正弦波Yに基づいて、アブソリュート位置、すなわち、回転中心角θを算出する。アブソリュート位置算出部30は、2相正弦波Xをcosθとおき、2相正弦波Yをsinθとおく。そして、式7に基づく演算を行う。
【数3】
【0036】
そして、アブソリュート位置算出部30は、求めた値Qの逆正接関数を求めることで、回転中心角θ、すなわち、アブソリュート位置を得ることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態のロータリーエンコーダ1や位置測定装置100によれば、簡易な構造でアブソリュート位置を求めることができる。つまり、本実施形態のロータリーエンコーダ1や位置測定装置100によれば、複雑なスケールパターンが設けられたアブソリュートトラック等を装備することなくアブソリュート位置を求めることができる。
【0038】
本実施形態におけるロータリースケール2は、第1仮想円周R1上に複数のパターン3aが配列されて形成されたスケールパターン3を有する。そして、ロータリースケール2は、第1仮想円周R1の第1中心点Pc1からずれた位置を通過する回転軸線AX回りに回転する。このようなロータリースケール2を駆動することによって得られる信号を処理することで、簡易な構造でアブソリュート位置を求めることができる。
【0039】
なお、第1中心点Pc1と回転軸線AXとのずれ量S自体は、アブソリュート位置の算出に関わってこないが、ロータリーエンコーダ1の設計にあたっては、その値を適切な範囲に設定する必要がある。ずれ量Sは、各受光素子の配置にも依存するが、ロータリースケール2の偏心により生じる誤差のピーク・トゥ・ピークが、スケールピッチ(scale pitch)を超えない範囲で設定することができる。ロータリースケール2の偏心によって生じる誤差のピーク・トゥ・ピークは、2×atan(S/r)で表される。
【0040】
そして、偏心誤差の振幅aは、スケール半径r、すなわち、第1仮想円周R1」の半径rとずれ量Sを用いて上述の式2のように表される。また、スケールピッチは1周のスケールパターン3におけるパターン3aの数divを用いて、以下の式8で表される。
(式8) scale pitch=2π/div
【0041】
これにより、ずれ量Sの許容範囲は、以下の式9で示される範囲とすることができる。
(式9) a<scale pitch
⇔S<2π/div
【0042】
本実施形態のロータリーエンコーダ1は、光透過型であるが、発光素子によって照射された光をロータリースケールによって反射させ、これを受光素子で受光する反射型とすることもできる。また、
図6に示すように、発信部として送信コイル15a~15cを備え、受信部として受信コイル14a~14cを備えた電磁型のロータリーエンコーダ50としてもよい。ロータリーエンコーダ50では、ロータリーエンコーダ1が備える第1受光素子4a、第2受光素子4b及び第3受光素子4cが、第1受信コイル14a、第2受信コイル14b及び第3受信コイル14cに置き換えられている。また、ロータリーエンコーダ50では、ロータリーエンコーダ1が備える第1送信コイル15a、第2送信コイル15b及び第3送信コイル15cに置き換えられている。このようなロータリーエンコーダ50であっても、ロータリーエンコーダ1と同様の要領でアブソリュート位置を求めることができる。
【0043】
また、本実施形態では受信部として3つの受光素子を備えるが、受信部の数はこれに限定されず、4つ以上の受信部を装備することができる。
【0044】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1、50 ロータリーエンコーダ
2 ロータリースケール
3 スケールパターン
3 スリット
4a 第1受光素子
4b 第2受光素子
4c 第3受光素子
5a 第1発光素子
5b 第2発光素子
5c 第3発光素子
10 角度出力算出部
14a 第1受信コイル
14b 第2受信コイル
14c 第3受信コイル
15a 第1送信コイル
15b 第2送信コイル
15c 第3送信コイル
20 2相正弦波算出部
30 アブソリュート位置算出部
100 位置測定装置
AX 回転軸線
R1 第1仮想円周
R2 第2仮想円周
Le 延長線
Pc1 第1中心点