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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】パイロテクニックスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 39/00 20060101AFI20250414BHJP
【FI】
H01H39/00 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022513432
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2020073827
(87)【国際公開番号】W WO2021037896
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】1909586
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】プリメル、ヴァレンティン
(72)【発明者】
【氏名】ゴディナ、フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】シャンパンダル、ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ラゴ、ルドヴィック
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】クレシュ、ギルダス
(72)【発明者】
【氏名】レバルフ、カトリーヌ
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012212509(DE,A1)
【文献】特開2017-054774(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106024519(CN,A)
【文献】仏国特許出願公開第03064107(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(10)と、
前記ケーシング(10)を通過する少なくとも1つの導電体(20)と、
前記ケーシング(10)内に収容されたピストン(30)であって、前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリは、前記導電体(20)の残りの部分から分離された少なくとも2つの自由ストランド(21、22)を形成するように、少なくとも3つの別個の点において前記導電体(20)を切断するように設計されている、ピストン(30)と、
前記ピストン(30)に前記導電体(20)を切断させるように設計されたパイロテクニックアクチュエータとを備えるパイロテクニックスイッチであって、
前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリは、
前記導電体(20)を切断し、ウィング(22B、22C)を有しない少なくとも1つの前記自由ストランドと、ベース部分及び前記ベース部分の各側に設けた2つのウィング(22B、22C)を有する少なくとも1つの前記自由ストランド(22)とを形成するように設計されており、
前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリは、切断力を発揮する及び/又は前記導電体が少なくとも切断時にその上に静置される切断突出部を有し、
前記2つのウィング(22B、22C)を有する自由ストランド(22)は、前記2つのウィング(22B、22C)間の前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリの一方の構成要素の切断突出部、及び、前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリの他方の構成要素上の2つの隣接する切断突出部と共に配置されていることを特徴とするパイロテクニックスイッチ。
【請求項2】
前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリは、切断後に前記自由ストランド(21、22)のそれぞれの少なくとも1つの動きをブロックするように配置されている、請求項1に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項3】
記ウィングを有しない自由ストランド(21)は、切断後に、1mm未満、好ましくは0.5mm未満のクリアランスを有する2つの切断突出部の間に配置されている、請求項1又は2に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項4】
前記ウィングを有しない自由ストランド(21)は、少なくとも、
前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリの一方の構成要素内の切断突出部と、
前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリの他方の構成要素上の2つの切断突出部との間に画定された閉鎖空間内に配置されている、請求項3に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項5】
前記切断突出部は、ドラフト角度を有する、請求項3又は4に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項6】
前記ピストン(30)は、ナイフ(31)を形成する切断突出部を備え、
前記ケーシング(10)は、ダイ(11)を形成する切断突出部を備え、
切断後に、前記ピストン(30)の前記ナイフ(31)のそれぞれは、2つのダイ(11)間に配置されている、請求項3~5のいずれか一項に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項7】
切断後に、前記ナイフ(31)のそれぞれの少なくとも1つのドラフト面、好ましくはドラフト面のそれぞれは、ダイ(11)のドラフト面に面する、請求項5に従属する請求項6に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項8】
2つの前記ウィング(22B、22C)を有する自由ストランド(22)の折り目は、対称である、請求項1~7のいずれか一項に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項9】
前記ピストン(30)は、前記パイロテクニックアクチュエータのスラスト力を適用するための軸(100)を有し、
前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリは、前記力適用軸から所定の距離(x1、x2、x3)に位置する点において前記導電体(20)を切断するように配置されており、
前記力適用軸(100)の一方の側上に位置する前記点の前記所定の距離の合計は、前記力適用軸(100)の他方の側上に位置する前記点の前記所定の距離の合計に等しい、請求項1~8のいずれか一項に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項10】
前記導電体(20)は、前記ケーシング(10)内に固定された少なくとも第1の部分と、前記ピストン(30)に面する第2の部分とを有し、前記第2の部分は、前記第1の部分の断面積よりも小さい断面積を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項11】
前記第1の部分は、前記ケーシング(10)とは別個の部分を形成する材料内にオーバーモールドされている、請求項10に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項12】
前記ピストン(30)及び/又はケーシング(10)は、切断突出部において少なくとも1つのインサートを備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項13】
切断後に、前記自由ストランド(21、22)は、前記ケーシング(10)内に捕捉されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のパイロテクニックスイッチ。
【請求項14】
ケーシング(10)と、
前記ケーシング(10)を通過する少なくとも1つの導電体(20)と、
前記ケーシング(10)内に収容されたピストン(30)であって、前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリは、前記導電体(20)の残りの部分から分離された少なくとも2つの自由ストランド(21、22)を形成するように、少なくとも3つの別個の点において前記導電体(20)を切断するように設計されている、ピストン(30)と、
前記ピストン(30)に前記導電体(20)を切断させるように設計されたパイロテクニックアクチュエータとを備えるパイロテクニックスイッチであって、
前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリは、
前記導電体(20)を切断し、ウィング(22B、22C)を有しない少なくとも1つの前記自由ストランドと、ベース部分及び前記ベース部分の各側に設けた2つのウィング(22B、22C)を有する少なくとも1つの前記自由ストランド(22)とを形成し、自由ストランドのそれぞれは、切断前及び切断後の両方で前記ケーシング内の同じ位置を占める少なくとも1つの基準部分を有するように、設計されている
パイロテクニックスイッチ。
【請求項15】
ケーシング(10)と、
前記ケーシング(10)を通過する少なくとも1つの導電体(20)と、
前記ケーシング(10)内に収容されたピストン(30)であって、前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリは、前記導電体(20)の残りの部分から分離された少なくとも2つの自由ストランド(21、22)を形成するように、少なくとも3つの別個の点において前記導電体(20)を切断するように設計されている、ピストン(30)と、
前記ピストン(30)に前記導電体(20)を切断させるように設計されたパイロテクニックアクチュエータとを備えるパイロテクニックスイッチであって、
前記ピストン(30)-ケーシング(10)アセンブリは、
前記導電体(20)を切断し、ウィング(22B、22C)を有しない1つの前記自由ストランド(21)と、ベース部分及び前記ベース部分の各側に設けた2つのウィング(22B、22C)を有する1つの前記自由ストランド(22)とのみを形成するように設計されている
パイロテクニックスイッチ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1つのパイロテクニックスイッチを備える自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電気回路を切断するためのパイロテクニックスイッチ、例えば、事故の事象において自動車の電力電気回路を切断するためのパイロテクニックスイッチに関する。
【0002】
パイロテクニックスイッチは、独国特許出願公開第102012212509号に開示されているものなどの従来技術において既知である。しかしながら、このシステムは、(導電体切断条件に依存する)可変動作リスクの不利点を有する。
【0003】
本発明の1つの目的は、上記の従来技術の欠点を克服することであり、特に、第1に、予測可能な十分に理解された現在の切断条件で信頼性のある回路切断を有するパイロテクニックスイッチを提案することである。
【0004】
したがって、本発明の第1の態様は、
ケーシングと、
ケーシングを通過する少なくとも1つの導電体と、
ケーシング内に収容されたピストンであって、ピストン-ケーシングアセンブリは、導電体の残りの部分から分離された少なくとも2つの自由導電ストランドを形成するように、少なくとも3つの別個の点において導電体を切断するように設計されている、ピストンと、
ピストンに導電体を切断させるように設計されたパイロテクニックアクチュエータとを備えるパイロテクニックスイッチであって、
ピストン-ケーシングアセンブリは、
自由ストランドのそれぞれが、ベース部分のいずれかの側上に配置された折り曲げられた2つの折り曲げられたウィングを有しない、又は2つの折り曲げられたウィングを有する少なくとも1つのベース部分を有するように、導電体を切断し、
2つの折り曲げられたウィングを有する少なくとも1つの自由ストランドを作製する
ように設計されていることを特徴とするパイロテクニックスイッチに関する。
【0005】
上記の実装態様によるパイロテクニックスイッチは、導電体をいくつかのストランドに切断し、これは、スイッチの切断能力を改善する。実際、いくつかの場所で切断することは、可能なアークの長さを延ばすことを意味する。さらに、自由ストランドのそれぞれは、(変形していない)ベース部分のみ、又は2つの折り曲げられたウィングを有するベース部分を備える。換言すれば、自由ストランドのそれぞれは、直線状の若しくは平坦なベース部分、又は2つの折り曲げられたウィングによって囲まれたベース部分である。よって、自由ストランドは対称であり、これは、側のそれぞれ上のバランスの取れた切断を保証し、力は自由ストランドの端のそれぞれにおいて同様であり、これは、切断中の動きのリスクを制限し、よって、スイッチの性能及び/又は完全性に影響を及ぼし得る不規則な動作のリスクを制限する。実際、自由ストランドのそれぞれの端における同様又は対称の力は、切断中又は切断後の安定性、及び不要な動きの不在を保証する。導電性要素のそのような不要な動きは、デバイスの性能に影響を及ぼし得る望ましくないアーク状態を生成し得る、及び/又は構成要素の完全性に影響を及ぼし得るジャミングなどの機械的応力を生成し得る。
【0006】
よって、上記の実装態様によるパイロテクニックスイッチは、(導電体が、連続片であり、電気を伝導することができる)静止位置と、(導電体がもはや完全でなく、もはや電気を伝導することができない)作動位置との間で移動可能なピストンを備える。静止位置から作動位置への移行は、例えば、車両の電子ユニット又はカードによってトリガ又は点火されるパイロテクニックアクチュエータによって引き起こされる。よって、最後に、静止位置から作動位置への移行は、導電体の切断、いくつかの自由ストランドの形成、及び自由ストランドのうちのいくつかの折り曲げを引き起こす。したがって、折り曲げられた自由ストランドは、切断前及び切断後に異なる形状を有する。
【0007】
しかしながら、自由ストランドのそれぞれは、(折り曲げられたウィングを有する又は有しない)ベース部分を含み、このベース部分は変形していない。すなわち、ベース部分は、回路ブレーカの作動前及び作動後に同じ形状を有する導電体の部分である。換言すれば、自由ストランドのそれぞれは、切断前の元の導電体と同じ幾何学的形状を有する部分(ベース部分)を含む。
【0008】
特に、ベース部分は、初期の導電体が切断されたときに塑性変形しなくてもよい。
【0009】
特に、ベース部分は、切断中に単に並進してもよく、最終位置において、ベース部分の初期位置に平行になってもよい。
【0010】
特に、ベース部分は、ピストンの座面に平行であることができ、それ自体は、好ましくは、ピストンの動きの方向に垂直である。
【0011】
一実施形態によれば、回路ブレーカは、剪断によって導電体を切断するように配置され得る。特に、回路ブレーカのピストンは、ベース部分を変形させることなく自由ストランドのそれぞれのベース部分を受容する座面と、座面のいずれかの側上に配置されており、剪断によって導電体を切断するように配置された少なくとも2つの切断角度とを含むことができる。
【0012】
一実施形態によれば、座面は、ピストンの2つの突出部によって囲まれ得、2つの切断角度はそれぞれ、突出部のうちの1つ上に配置され得、
好ましくは、変形していないベース部分及び2つの折り曲げられたウィングを有する自由ストランドを形成するように、座面の反対側の突出部のそれぞれの側部上に、又は
好ましくは、変形していないベース部分及び折り曲げられていないウィングを有する自由ストランドを形成するように、座面に隣接する突出部のそれぞれの側部上に配置され得る。
【0013】
一実施形態によれば、少なくとも1つの自由ストランド、及び好ましくは自由ストランドのそれぞれは、切断前及び切断後の両方でケーシング内の同じ位置を占めることができる少なくとも1つの基準部分を有し得る。そのような実施形態は、切断中の導電体及び自由ストランドの動きを制限することを可能にし、これは、非再現性のリスクを制限する。
【0014】
一実施形態によれば、ピストン-ケーシングアセンブリは、切断後に、自由ストランドのそれぞれの少なくとも1つの動きをブロックするように配置され得る。換言すれば、自由ストランドのそれぞれは、単一のベース部分からなるか、又はベース部分及び2つの折り曲げられたウィングからなるかにかかわらず、ピストン-ケーシングアセンブリによって適所に保持、維持、又はロックされる。
【0015】
一実施形態によれば、ピストン-ケーシングアセンブリは、切断突出部を有してもよく、このため、切断後に、
折り曲げられたウィングを有しない自由ストランドは、1mm未満、好ましくは0.5mm未満のクリアランスを有する2つの切断突出部の間に配置され得、及び/又は
2つの折り曲げられたウィングを有する自由ストランドは、
2つの折り曲げられたウィング間のピストン-ケーシングアセンブリの一方の構成要素の切断突出部、及び
ピストン-ケーシングアセンブリの他方の構成要素上の2つの隣接する切断突出部であって、2つの隣接する切断突出部のそれぞれは、折り曲げられたウィングのそれぞれの一端に接触することができる、切断突出部と共に配置され得る。
【0016】
上記の実施形態によれば、切断突出部とは、切断力を発揮する及び/又は導電体が少なくとも切断時にその上に静置される突出部又は突起部を指す。これらの突出部は、ケーシング上にあり得、若しくはケーシングと一体であり得(したがって、静的と考えられる)、又はピストン上にあり得、若しくはピストンと一体であり得る(したがって、移動可能と考えられる)。
【0017】
上記の実施形態によれば、
折り曲げられたウィングを有しない自由ストランドは、ピストン-ケーシングアセンブリのベース部分に面する又はベース部分においてある、ピストン-ケーシングアセンブリの一方の構成要素の切断突出部と、ピストン-ケーシングアセンブリの他方の構成要素の2つの隣接する切断突出部と接触する又はほぼ接触する端とを有し、当該自由ストランドは、自由ストランドの長さ方向に移動することができず、
2つの折り曲げられたウィングを有する自由ストランドは、ピストン-ケーシングアセンブリの一方の構成要素の切断突出部であって、ピストン-ケーシングアセンブリのベース部分に面する又はベース部分において位置する切断突出部と、ピストン-ケーシングアセンブリの他方の構成要素の2つの隣接する切断突出部であって、2つの隣接する切断突出部のそれぞれは、自由ストランドの端(折り曲げられたウィングのそれぞれの自由端)と接触する、切断突出部とを有する。よって、自由ストランドのそれぞれは、導電体から分離されると、切断突出部によって自由ストランドの端において保持される。
【0018】
一実施形態によれば、折り曲げられたウィングを有しない自由ストランドは、少なくとも、
ピストン-ケーシングアセンブリの一方の構成要素内の切断突出部と、
ピストン-ケーシングアセンブリの他方の構成要素上の2つの切断突出部と
の間に画定された閉鎖空間内に配置され得る。
【0019】
一実施形態によれば、切断突出部は、ドラフト角度を有し得る。
【0020】
一実施形態によれば、
ピストンは、ナイフを形成する切断突出部を備えることができ、
ケーシングは、ダイを形成する切断突出部を備えることができ、
切断後に、ピストンのナイフのそれぞれは、2つのダイ間に配置され得る。
【0021】
一実施形態によれば、切断後に、ナイフのそれぞれの少なくとも1つのドラフト面、好ましくはドラフト面のそれぞれは、ダイのドラフト面に面し得る。この実施形態は、ピストンが自由ストランドの周りの容積を、信頼性をもって閉鎖することを確実にする。これは、ドラフト面は互いの上に静止するためであり、ドラフト面が反転しているためであり、ピストンナイフとケーシングダイとの間の接触が面接触であるためである。次いで、アークは信頼性をもって閉じ込められ、漏れ経路は、面接触する2つの部分間に長距離に及ぶ。
【0022】
一実施形態によれば、切断後に、ピストンのナイフのそれぞれは、ダイの2つの面間、好ましくはダイの2つのドラフト面間に配置され得る。換言すれば、ダイは、側ナイフについても、ナイフのそれぞれのいずれかの側上に設けられ得、側ダイは、側ナイフのそれぞれに面するドラフト面を設けるように、ケーシングのいずれかの側上に設けられ得る。
【0023】
一実施形態によれば、ダイは、ケーシングと一体であってもよく、又はケーシングと直接形成されてもよい。
【0024】
一実施形態によれば、ピストン/ケーシングアセンブリのうちの一方のドラフト角度は、ピストン/ケーシングアセンブリの他方のドラフト角度に等しい。この実施形態によれば、ピストン及びケーシングの側面(ドラフト)は、互いに平行である。
【0025】
一実施形態によれば、ピストン/ケーシングアセンブリの一方の構成要素のドラフト角度は、ピストン/ケーシングアセンブリの他方の構成要素のドラフト角度とは異なり、接触するドラフト面の摩擦円錐内に収容される。この実施形態によれば、ピストン及びケーシングの側面(ドラフト)は、互いに平行ではないが、角度の差は摩擦角未満であり、このため、ピストンが作動位置にあると、くさびが表面間にあり、このため、ピストンは、この位置に留まる。特に、表面がプラスチックである場合、ドラフト角度の差は5°未満に留まる。
【0026】
一実施形態によれば、2つの折り曲げられたウィングを有する自由ストランドの折り目は、対称であり得る。
【0027】
一実施形態によれば、パイロテクニックスイッチは、切断後に、2つの別個の要素を備えてもよく、2つの別個の要素は、
折り曲げられたウィングを有しないベース部分を有する自由ストランドと、
2つの折り曲げられたウィングを有するベース部分を有する自由ストランドとを含む。
【0028】
換言すれば、直線である、又はピストン(ベース部分のみ)の通過によって変形していない自由直線状ストランドと、2つの折り曲げられたウィングを有する折り曲げられたストランドとがある。概して、切断は、折り曲げられたウィングを有しない自由ストランドと、2つの折り曲げられたウィングを有する自由ストランドとの交互を生成することによって行われる。
【0029】
一実施形態によれば、
ピストンは、パイロテクニックアクチュエータのスラスト力を適用するための軸を有することができ、
ピストン-ケーシングアセンブリは、力適用軸から所定の距離に位置する点において導電体を切断するように配置され得、
力適用軸の一方の側上に位置する点の所定の距離の合計は、力適用軸の他方の側上に位置する点の所定の距離の合計に等しくてもよい。導電体に沿う切断点の位置は、力適用軸が中央を通って延びるように分布し、これは、ピストン上に転倒トルクがないことを確実にする。したがって、ピストンは、そり又はジャミングのリスクが制限されつつ、静止位置から作動位置への滑らかで容易な動きを有する。
【0030】
一実施形態によれば、導電体は、ケーシング内に固定された少なくとも第1の部分と、ピストンに面する第2の部分とを有し得、第2の部分は、第1の部分の断面積よりも小さい断面積を有し得る。第2の部分は、典型的には、ピストンがピストンの切断力をその上に発揮する部分であり、第2の部分はより弱く、このため、第1の部分は少ない応力を受ける。第2の部分内の遮断は、保証されている。
【0031】
一実施形態によれば、第1の部分は、ケーシングの別個の部分を形成する材料内にオーバーモールドされてもよい。ピストンナイフがケーシングのダイ間に来る実施形態と併せて、この実装形態は、ピストンが作動位置においてケーシング上で面接触することを確実にしつつ、導電体のオーバーモールドについても、適切なドラフトでのより容易な製造を可能にする。
【0032】
一実施形態によれば、ピストン及び/又はケーシングは、切断突出部において少なくとも1つのインサートを含み得る。
【0033】
一実施形態によれば、切断後に、自由ストランドは、ケーシング内に捕捉され得る。
【0034】
一実施形態によれば、パイロテクニックスイッチは、逆転止め要素を含み得る。例えば、タイトフィット、ピストンストロークの終了時のジャミング、又は戻り止めブラケットとの係合を考慮することが可能である。
【0035】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による少なくとも1つのパイロテクニックスイッチを備える自動車に関する。
【0036】
上記の技術的特徴の全ては、技術的不一致又は非互換性がない限り、互いに組み合わされてもよく、又は互いから分離されてもよいことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明のいくつかの実施形態の詳細な説明を読むと、より明らかとなり、本発明のいくつかの実施形態は、例として提供されているが、これらになんら限定されず、添付の図面によって示されている。
【0038】
図1】トリガ前の、本発明によるパイロテクニックスイッチの第1の実施形態の概略図を示す。
【0039】
図2】トリガ後の、図1のパイロテクニックスイッチを示す。
【0040】
図3】トリガ前の、本発明によるパイロテクニックスイッチの第2の実施形態の概略図を示す。
【0041】
図4】トリガ後の、図3のパイロテクニックスイッチを示す。
【0042】
図5】トリガ前の、本発明によるパイロテクニックスイッチの第3の実装形態の概略図を示す。
【0043】
図6】トリガ後の、図5のパイロテクニックスイッチを示す。
【0044】
図7図1のパイロテクニックスイッチの詳細な断面図を示す。
【0045】
図8】本発明の態様を説明するための、図7の詳細を示す。
【0046】
図9】本発明の別の態様を説明するための、図8の詳細を示す。
【0047】
図1は、上部ケーシング部分10Aと下部ケーシング部分10Bとからなるケーシング10を備えるパイロテクニックスイッチを示す。導電体20はケーシング10を通過し、ピストン30は導電体20の下に位置し、パイロテクニックアクチュエータ(電気パイロテクニック点火器40)は下部ケーシング部分10Bと一体に設けられている。
【0048】
図7を参照すると、より詳細には、ピストン30は、(図1及び図7の)静止位置と(図2の)作動位置との間で、ケーシング10に対して移動可能に取り付けられている。電気パイロテクニック点火器40は、燃焼又は加圧チャンバ41内に開放し、このため、電気パイロテクニック点火器40がトリガされたとき、突然の圧力増加が燃焼チャンバ41内に発生して、ピストン30を静止位置から作動位置に移動させる。
【0049】
典型的には、電気パイロテクニック点火器40のトリガは、導電体20が切断されなければならない状況(例えば、導電体20が、衝撃後に絶縁される、電池を備える電気回路の一部分である場合、車両の衝撃)の検出後に、電子制御ユニットによって引き起こされる。
【0050】
静止位置から作動位置へのピストン30のこの移行中に、導電体20は、ピストン30ケーシング10アセンブリ上に設けられた切断突出部によって切断される。詳細には、ピストン30-ケーシング10アセンブリは、切断(又は以下に説明する切断及び曲げ)突出部を含み、切断突出部は、ケーシング10上のダイ11(図7のみの11A、11B、11C、11D)、及びピストン30上のナイフ31(図7の31A、31B、31C)である。図1及び図7に示すように、作動前に、導電体20は、ケーシング10の切断突出部、すなわち、ケーシング10のダイ11(説明の残りの部分では再び繰り返さない、図7の11A、11B、11C、11D)と、ピストン30の切断突出部、すなわち、ピストン30上のカッター31(説明の残りの部分では再び繰り返さない、図7の31A、31B、31C)との間に配置されている。
【0051】
ピストン30がトリガ後に上昇したとき、ナイフ31は、この時点でダイ11上に静止している導電体20を切断する。
【0052】
次いで、図2に示すように、導電体20は3点において切断され、2つの自由ストランド21及び22が作製又は形成される。これらの自由ストランド21及び22は、導電体の残りの部分から取り外され、図2に示すように、自由ストランド21は、直線状ベース部分(又はナイフ/ダイによって変形していないベース部分、すなわち、形状は、切断前及び切断後に同一である)のみを備え、自由ストランド22は、2つの折り曲げられたウィング22B及び22Cを有するベース部分22Aを備える。
【0053】
加えて、自由ストランド21の端のそれぞれは、ピストン30上の2つの隣接するパンチ31のうちの1つに接触し、折り曲げられたウィング22B及び22Cの端はまたそれぞれ、ピストン30上の2つの隣接するパンチ31のうちの1つに接触する。よって、自由ストランドのそれぞれは、図2の占められた位置に差し込まれる。特に、自由ストランド21及び22は、トリガ前に導電体20の軸方向(図2の水平方向)に移動することができない。
【0054】
可能なアークの経路は、図2に示す位置における端間の経路であるため、安全性及び信頼性が改善される。これは、自由ストランド21及び22の意図されない動き及び変位が排除されているためであり、これは、自由ストランド21及び22が位置に保持されている、又は切断突出部(互いの上に静止して閉鎖空間を形成し、自由ストランドを適所に保持するように自由ストランドに接触するダイ11及びナイフ31)によってブロックされているためである。よって、アークを確立するための条件は、一連のスイッチ上で常に同じである。さらに、適所に留まっていない緩いストランドに起因するピストン30のジャミングのリスクがない。
【0055】
また、図7に戻ると、導電体20は、上部ケーシング部分10A及び下部ケーシング部分10Bとは別個であるインサート部分23内にオーバーモールドされていることに留意されたい。図8に示すように、この構築は、ケーシング10上に位置する切断突出部上のドラフトを可能にし、これは、追加の技術的効果を提供する。
【0056】
実際、右側の切断突出部(図8のダイ11D及びナイフ31C)に着目すると、ナイフ31Cの側面31Csは、ドラフト角度を有し、これは、射出成形による部分の製造を改善することが分かる。同様に、ダイ11Dの側面11Dsは、ドラフト角度を有する。(インサート部分23が、導電体20上にオーバーモールドされているため)ダイ11Dは導電体20上にオーバーモールドされていないため、ダイ11Dの側面11Dsのドラフト角度は、ナイフ31Cの側面31Csのドラフト角度に効果的に相補的である。そのような相補的な角度は、射出成形によってインサート部分23上で得られないことに留意されたい。
【0057】
その結果、ピストン30が作動位置にあるとき、ダイ11Dの側面11Dsは、ナイフ31Cの側面31Csと面接触し得る(線接触ではない)。本明細書で言及されていることは、切断突出部のそれぞれについて有効であり、スイッチピストン30のパンチ31のそれぞれは、ケーシング10のダイ11の側面と面接触する少なくとも1つの側面を有する(すなわち、関連のダイの側面のドラフトに相補的なドラフトを有する)ことに留意されたい。これは、面接触を有する連続する閉鎖空間を作製する。これは、溝などの非接触の特定のゾーンを画定して、アークを常に同じ場所に行かせることによって、電気アークの経路を制御することを可能にする。
【0058】
この第1の実施形態では、導電体20の切断は、ナイフ31A及び31Bによりダイ11Bにおいて、及びナイフ31Cによりダイ11Dにおいて実行される剪断であることに留意されたい。ダイ11A及び11Cは、導電体20及び自由ストランド22の曲げを強制する支点として機能する。したがって、上記の切断突出部は、導電体20の剪断又は曲げに関与する。
【0059】
図9は、剪断切断点の位置、及び軸100からの剪断切断点の距離を詳細に示す。特に、軸100は、ピストン30上のスラスト力適用軸である。軸100の一方の側上で、導電体20は、軸100から距離x1及びx2で離れた点において切断され、軸100の他方の側上で、導電体20は、軸100から距離x3で離れた点において切断される。x1+x2=x3±20%であることが意図されており、このため、ケーシング10内のピストン30の傾斜トルクを回避する。よって、いくつかの点における剪断のときでも、力が、圧力による力の適用の軸の両側上で等しく分布しつつ、ピストン30の動きは信頼性がある。
【0060】
一般に、ピストン30は、例えば、ストロークの端におけるタイトフィット、クリッピング、又は可撓性タブとのロックなどの逆転止め手段によって、作動位置に保持されていることが意図されている。
【0061】
この第1の実施形態の要約では、ピストン30-ケーシング10アセンブリは、3つの異なる点において導電体を剪断するように配置されており、このため、
2つの別個の自由ストランドが形成されており、これは、電気アークの経路を長くし、
第1の自由ストランド21は、折り曲げられたウィングを有さず、対称であり、第2の自由ストランド22は、2つの折り曲げられたウィングを有し、対称であり、これは、自由ストランド21、22の不時又は無作為の変位につながり得る非対称の労力を回避し、
自由ストランド21、22のそれぞれは、切断突出部と接触する端を有し、これは、ケーシング10内の適所に自由ストランド21、22を保持又はロックし、
最終位置又は作動位置において、ピストン30は、漏れ経路又はアーク経路が互いに接触する2つの表面間の数ミリメートルでありつつ、切断チャンバを閉鎖するように、ケーシング10と面接触で接触する。
【0062】
図3は、第2の実施形態を示し、第2の実施形態では、ピストン30は4つのナイフ31を備え、このため、導電体20は、3つの別個の自由ストランド21及び22に切断される。この実装形態では、図4に示すように、(折り曲げられたウィングを有しない)1つの自由ストランド21、及び(2つの折り曲げられたウィングを有する)2つの自由ストランド22が形成されている。技術的詳細及び利点の残りは、第1の実施形態と同じである。
【0063】
図5は、第3の実施形態を示し、第3の実施形態では、ピストン30は4つのナイフ31を備え、このため、導電体20は、3つの別個の自由ストランド21及び22に切断される。この第3の実装形態では、図6に示すように、(折り曲げられたウィングを有しない)2つの自由ストランド21、及び(2つの折り曲げられたウィングを有する)1つの自由ストランド22が形成されている。技術的詳細及び利点の残りは、第1の実施形態と同じである。
【0064】
当業者にとって自明である様々な修正及び/又は改善が、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に説明されている本発明の異なる実施形態になされてもよいことが理解されよう。特に、単一の点において折り曲げられたウィングが言及されているが、大きな曲率半径に沿って又はいくつかの折り目に沿って、自由ストランドを折り曲げることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9