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特許7668334バンドルおよび熱交換器並びに排煙処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】バンドルおよび熱交換器並びに排煙処理装置
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/08 20060101AFI20250417BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20250417BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
F23J15/08
F28F21/08 F
F28D7/16 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023223059
(22)【出願日】2023-12-28
【審査請求日】2024-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2023218384
(32)【優先日】2023-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】315016723
【氏名又は名称】三菱重工パワー環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 素明
(72)【発明者】
【氏名】徳重 信
(72)【発明者】
【氏名】吉田 輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆行
(72)【発明者】
【氏名】星 英男
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 英治
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特許第7221440(JP,B1)
【文献】特開2023-105787(JP,A)
【文献】実開昭60-128107(JP,U)
【文献】特開2018-135565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 15/00-15/08
F28F 1/00-99/00
F28D 7/16
B01D 53/00-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排煙脱硫装置からの排ガスが直接導入されるバンドルであって、
熱媒体が供給される入口ヘッダと、
熱媒体が排出される出口ヘッダと、
前記入口ヘッダと前記出口ヘッダを連結して素管の周囲にフィンが固定される複数の伝熱管と、
を備え、
前記複数の伝熱管のうち、少なくとも排ガスの流れ方向の上流側で排ガスの相対湿度が70%以上の領域に配置される前記伝熱管は、排ガスの流れ方向の下流側で排ガスの相対湿度が70%未満の領域に配置される炭素鋼により形成される伝熱管より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管であり、前記ステンレス製伝熱管は、排ガスの入口部から排ガスの流れ方向の下流側に向けて少なくとも2段目までに配置される、
バンドル。
【請求項2】
排煙脱硫装置からの排ガスが直接導入されるバンドルであって、
熱媒体が供給される入口ヘッダと、
熱媒体が排出される出口ヘッダと、
前記入口ヘッダと前記出口ヘッダを連結して素管の周囲にフィンが固定される複数の伝熱管と、
を備え、
前記複数の伝熱管のうち、少なくとも壁部に隣接して排ガスの相対湿度が70%以上の領域に配置される前記伝熱管は、前記壁部から離間して排ガスの相対湿度が70%未満の領域に配置される炭素鋼により形成される伝熱管より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管である、
バンドル。
【請求項3】
排煙脱硫装置からの排ガスが直接導入されるバンドルであって、
熱媒体が供給される入口ヘッダと、
熱媒体が排出される出口ヘッダと、
前記入口ヘッダと前記出口ヘッダを連結して素管の周囲にフィンが固定される複数の伝熱管と、
を備え、
前記複数の伝熱管のうち、少なくとも仕切板に隣接して排ガスの相対湿度が70%以上の領域に配置される前記伝熱管は、前記仕切板から離間して排ガスの相対湿度が70%未満の領域に配置される炭素鋼により形成される伝熱管より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管である、
バンドル。
【請求項4】
排煙脱硫装置からの排ガスが直接導入されるバンドルであって、
熱媒体が供給される入口ヘッダと、
熱媒体が排出される出口ヘッダと、
前記入口ヘッダと前記出口ヘッダを連結して素管の周囲にフィンが固定される複数の伝熱管と、
を備え、
前記複数の伝熱管は、複数の直線部と、前記複数の直線部の一端部同士を連結する第1湾曲部と、前記複数の直線部の他端部同士を連結する第2湾曲部とを有し、
前記複数の伝熱管のうち、少なくとも排ガスの相対湿度が70%以上の領域に配置される前記第1湾曲部および前記第2湾曲部は、排ガスの相対湿度が70%未満の領域に配置される炭素鋼により形成される前記直線部より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管である、
バンドル。
【請求項5】
排ガスの流れ方向に沿って低温バンドルと高温バンドルが直列に配置され、前記ステンレス製伝熱管は、少なくとも前記低温バンドルに配置される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバンドル。
【請求項6】
排ガスの流れ方向の下流側に配置される前記伝熱管は、炭素鋼により形成される炭素鋼製伝熱管である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバンドル。
【請求項7】
前記伝熱管は、複数の直線部と、前記複数の直線部の一端部同士を連結する第1湾曲部と、前記複数の直線部の他端部同士を連結する第2湾曲部とを有し、前記第1湾曲部および前記第2湾曲部への排ガスの流入を抑制する流入防止板が設けられる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバンドル。
【請求項8】
前記伝熱管は、複数の直線部と、前記複数の直線部の一端部同士を連結する第1湾曲部と、前記複数の直線部の他端部同士を連結する第2湾曲部とを有し、前記第1湾曲部および前記第2湾曲部は、腐食防止用ライニング塗装が施される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバンドル。
【請求項9】
前記伝熱管は、複数の直線部と、前記複数の直線部の一端部同士を連結する第1湾曲部と、前記複数の直線部の他端部同士を連結する第2湾曲部とを有し、前記第1湾曲部および前記第2湾曲部は、残留応力除去処理が施される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバンドル。
【請求項10】
排ガス通路を構成するダクトケーシングと、
前記ダクトケーシングの内部に配置される請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバンドルと、
を備える熱交換器。
【請求項11】
排ガスの熱の一部を回収する熱回収装置と、
熱回収後の前記排ガスに含まれるばいじんを除去する集塵装置と、
集塵後の前記排ガスに含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、
脱硫後の前記排ガスを再加熱する請求項10に記載の熱交換器が適用される再加熱器と、
を備える排煙処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バンドル、バンドルが適用される熱交換器、熱交換器を備える排煙処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備などに設けられる排煙処理装置は、熱回収装置と、電気集塵装置と、脱硫装置と、再加熱装置などから構成される。排煙処理装置にて、ボイラから排出される排ガスは、電気集塵装置により含有するばいじんが除去され、脱硫装置により含有する亜硫酸ガスが除去される。このとき、熱回収装置は、排ガスから熱を回収する。再加熱装置は、熱回収装置が回収した熱により脱硫後の排ガスを再加熱し、白煙の排出を抑制する。
【0003】
再加熱装置は、排ガス通路に配置される複数の伝熱管を有する。再加熱装置は、複数の伝熱管内に高温の熱媒体を流動させ、熱媒体と排ガス通路を流れる排ガスとの間で熱交換することで、排ガスを加熱して昇温する。従来の再加熱装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-99418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
再加熱装置に流入する排ガスは、腐食性不純物含有ミストが含まれる。そのため、再加熱装置の伝熱管は、腐食性不純物含有ミストの付着と蒸発の事象が繰り返し生じ、腐食してしまうおそれがある。そこで、伝熱管の材料として、耐腐食性の高い材料を適用することが考えられる。
【0006】
ところが、伝熱管の材料として、耐腐食性の高い材料を適用することは、製造コストの増加を招いてしまうという課題がある。また、材料としての鉄に対してステンレス材料は、熱伝導率が低く、伝熱管の性能が低下してしまうおそれがある。
【0007】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、伝熱管に対して最適な材料を適用することで、性能の低下を抑制しながら製造コストの増加を抑制するバンドルおよび熱交換器並びに排煙処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本開示のバンドルは、熱媒体が供給される入口ヘッダと、熱媒体が排出される出口ヘッダと、前記入口ヘッダと前記出口ヘッダを連結すると複数の伝熱管と、を備え、前記複数の伝熱管のうち、少なくとも排ガスの流れ方向の上流側に配置される前記伝熱管は、排ガスの流れ方向の下流側に配置される前記伝熱管より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管である。
【0009】
また、本開示の熱交換器は、排ガス通路を構成するダクトケーシングと、前記ダクトケーシングの内部に配置される請求項1に記載のバンドルと、を備える。
【0010】
また、本開示の排煙処理装置は、排ガスの熱の一部を回収する熱回収装置と、熱回収後の前記排ガスに含まれるばいじんを除去する集塵装置と、集塵後の前記排ガスに含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、脱硫後の前記排ガスを再加熱する前記熱交換器が適用される再加熱器と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示のバンドルおよび熱交換器並びに排煙処理装置によれば、性能の低下を抑制しながら、耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態の排煙処理装置を表す概略構成図である。
図2図2は、本実施形態の再加熱装置を表す概略構成図である。
図3図3は、本実施形態の再加熱装置を表す斜視図である。
図4図4は、本実施形態の再加熱装置における平面図である。
図5図5は、本実施形態の再加熱装置における正面図である。
図6図6は、排ガスの流れ方向に対する排ガスの温度および湿度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0014】
[排煙処理装置]
図1は、本実施形態の排煙処理装置を表す概略構成図である。
【0015】
図1に示すように、排煙処理装置100は、各種の発電プラントや工場などにて、ボイラ111から排出される排ガス(排煙)Gが煙突112から放出される過程で、排ガスGに含まれるばいじんや硫黄酸化物(SOx)を除去するものである。
【0016】
排煙処理装置100は、熱回収装置101と、電気集塵装置102と、送風装置(誘引通風機)103と、脱硫装置104と、再加熱装置105と、送風装置(脱硫通風機)106とを備える。送風装置103,106が駆動することで、ボイラ111から排出される排ガスGは、熱回収装置101、電気集塵装置102、脱硫装置104、再加熱装置105を通って煙突112に送られる。なお、熱回収装置101の上流側に脱硝装置を設けてもよい。
【0017】
ボイラ111は、2つの排ガス通路121a,121bが設けられる。排ガス通路121aは、熱回収装置101aと電気集塵装置102aと送風装置103aが設けられ、排ガス通路121bは、熱回収装置101bと電気集塵装置102bと送風装置103bが設けられる。2つの排ガス通路121a,121bは、下流側が排ガス通路121cに合流する。排ガス通路121cは、脱硫装置104と再加熱装置105が設けられる。排ガス通路121cは、下流側が2つの排ガス通路121d,121eに分岐する。排ガス通路121dは、送風装置106aが設けられ、排ガス通路121eは、送風装置106bが設けられる。2つの排ガス通路121d,121eは、下流側が排ガス通路121fに合流する。排ガス通路121fは、煙突112に連結される。また、排ガス通路121cにおける脱硫装置104の上流側と排ガス通路121fとを連結する排ガス通路121gが設けられる。排ガス通路121gは、開閉弁122が設けられる。
【0018】
熱回収装置101(101a,101b)は、ボイラ111から排出された排ガスG(約140℃)と熱媒体(水など)との間で熱交換することで、排ガスGから熱を回収する。熱回収装置101で熱回収された排ガスG(約90℃)は、電気集塵装置102(102a,102b)に導入される。電気集塵装置102は、排ガスGからばいじんを除去する。
【0019】
電気集塵装置102でばいじんが除去された排ガスGは、脱硫装置104に導入される。脱硫装置104は、石灰石(CaCO)により、排ガスG中の硫黄酸化物を吸収除去し、副生成物として石膏(CaSO.2HO)を生成する。脱硫装置104は、ミストエリミネータ123を有する。ミストエリミネータ123は、脱硫後の排ガスGからミストを除去する。
【0020】
脱硫装置104により脱硫処理された排ガスG(約50℃)は、ガスガスヒータの再加熱装置105に導入される。再加熱装置105は、熱回収装置101との間で熱媒体を循環する過程で、熱回収装置101により回収された熱により排ガスGを再加熱する。熱回収装置101と再加熱装置105とは、第1熱媒体循環ラインL11および第2熱媒体循環ラインL12により連結される。第1熱媒体循環ラインL11は、循環ポンプ131が設けられる。循環ポンプ131を駆動することで、再加熱装置105の熱媒体を第1熱媒体循環ラインL11により熱回収装置101に戻す。第2熱媒体循環ラインL12は、ヒータ132が設けられる。循環ポンプ131により熱回収装置101の熱媒体を第2熱媒体循環ラインL12により再加熱装置105に供給する。この過程で、必要に応じてヒータ132を作動することで、熱媒体を加熱する。
【0021】
排ガスGは、脱硫装置104で脱硫処理されることで温度が低下し、低温のままでは拡散しにくく白煙になるおそれがある。再加熱装置105は、拡散および白煙低減を目的として排ガスGを再加熱することで昇温(約90℃)させ、煙突112から大気に放出する。
【0022】
[再加熱装置の概略構成]
図2は、本実施形態の再加熱装置を表す概略構成図である。本実施形態では、バンドルおよび熱交換器を、上述した排煙処理装置100における再加熱装置105に適用して説明する。
【0023】
図2に示すように、再加熱装置105は、完全向流方式の熱交換器である。但し、再加熱装置105は、高温予熱向流方式、高温予熱並流方式、中温予熱方式などの他の方式の熱交換器であってもよい。
【0024】
再加熱装置105は、高温加熱部11と、低温加熱部12とを有する。但し、再加熱装置105は、1つの加熱部を有するものであってもよいし、3つ以上の加熱部を有するものであってもよい。高温加熱部11と低温加熱部12は、排ガス通路(ガスパス)121cに配置される。高温加熱部11と低温加熱部12は、排ガスGの流れ方向の下流側から上流側に向けて順に配置される。すなわち、高温加熱部11は、排ガスGの流れ方向の最下流側に位置し、低温加熱部12は、排ガスGの流れ方向の最上流側に位置する。
【0025】
高温加熱部11は、複数の第1伝熱管21を有する。複数の第1伝熱管21は、排ガス通路121cに排ガスGの流れ方向に交差する方向に沿って配置される。複数の第1伝熱管21は、一端部に入口ヘッダ22が連結され、他端部が出口ヘッダ23に連結される。入口ヘッダ22は、排ガスGの流れ方向の最下流側で、複数の第1伝熱管21を流れる熱媒体の流れ方向の最上流側に配置される。出口ヘッダ23は、入口ヘッダ22より排ガスGの流れ方向の上流側で、複数の第1伝熱管21を流れる熱媒体の流れ方向の最下流側に配置される。
【0026】
低温加熱部12は、複数の第2伝熱管31を有する。複数の第2伝熱管31は、排ガス通路121cに排ガスGの流れ方向に交差する方向に沿って配置される。複数の第2伝熱管31は、一端部に出口ヘッダ33が連結され、他端部が出口ヘッダ33に連結される。出口ヘッダ33は、排ガスGの流れ方向の最上流側で、複数の第2伝熱管31を流れる熱媒体の流れ方向の最下流側に配置される。入口ヘッダ32は、出口ヘッダ33より排ガスGの流れ方向の下流側で、複数の第2伝熱管31を流れる熱媒体の流れ方向の最上流側に配置される。
【0027】
第2熱媒体循環ラインL12は、流れ方向の上流側の端部が熱回収装置101に接続され、下流側の端部が高温加熱部11の入口ヘッダ22に接続される。第1熱媒体循環ラインL11は、下流側の端部が熱回収装置101に接続され、上流側の端部が低温加熱部12の出口ヘッダ33に接続される。また、高温加熱部11の出口ヘッダ23と低温加熱部12の出口ヘッダ33とは、接続ラインL21により連結される。
【0028】
第1熱媒体循環ラインL11は、循環ポンプ131とドレンタンク133が設けられ、第2熱媒体循環ラインL12は、ヒータ132が設けられる。そして、蒸気供給源(図示略)からヒータ132、ドレンタンク133に対して蒸気ラインL13が設けられ、ドレンタンク133に蒸気ドレンラインL14が設けられる。そして、蒸気ラインL13は、開閉弁134が設けられる。
【0029】
そのため、熱回収された高温の熱媒体は、第2熱媒体循環ラインL12から高温加熱部11の入口ヘッダ22に供給される。入口ヘッダ22に供給された熱媒体は、複数の第1伝熱管21を通って出口ヘッダ23に流れる。このとき、第1伝熱管21を流れる熱媒体は、排ガスGを高温加熱する。出口ヘッダ23に流れた熱媒体は、接続ラインL21を通って低温加熱部12の入口ヘッダ32に供給される。入口ヘッダ32に供給された熱媒体は、複数の第2伝熱管31を通って出口ヘッダ33に流れる。このとき、第2伝熱管31を流れる熱媒体は、排ガスGを低温加熱する。出口ヘッダ33に流れた熱媒体は、第1熱媒体循環ラインL11に排出される。
【0030】
[再加熱装置の全体構成]
図3は、本実施形態の再加熱装置を表す斜視図である。
【0031】
図3に示すように、再加熱装置105は、高温加熱部11と、低温加熱部12とを有する。高温加熱部11は、複数の第1伝熱管21を有し、低温加熱部12は、複数の第2伝熱管31を有する。複数の第1伝熱管21は、一端部に入口ヘッダ22が連結され、他端部に出口ヘッダ23が連結される。複数の第2伝熱管31は、一端部に入口ヘッダ32が連結され、他端部に出口ヘッダ33が連結される。そして、高温加熱部11の出口ヘッダ23と低温加熱部12の出口ヘッダ33とは、接続ラインL21により連結される。
【0032】
そのため、排ガスGは、低温加熱部12から高温加熱部11に流れる。熱媒体は、高温加熱部11の入口ヘッダ22に供給され、複数の第1伝熱管21を通って排ガスGを高温加熱する。複数の第1伝熱管21の熱媒体は、出口ヘッダ23から接続ラインL21を通って低温加熱部12の入口ヘッダ32に供給され、複数の第2伝熱管31を通って排ガスGを低温加熱し、出口ヘッダ33に流れる。
【0033】
[再加熱装置の詳細構成]
図4は、本実施形態の再加熱装置における平面図である。
【0034】
図4に示すように、再加熱装置105は、高温加熱部11と、低温加熱部12とを有する。高温加熱部11は、高温バンドル(第1バンドル)51を有し、高温加熱部11は、低温バンドル(第2バンドル)52を有する。排ガス通路121cは、ダクトケーシング60により区画される。ダクトケーシング60は、水平方向に沿った矩形の筒形状をなし、内部に排ガス通路121cが区画され、排ガスGが水平方向に沿って流れる。
【0035】
高温バンドル51と低温バンドル52は、ダクトケーシング60の内部に配置され、側壁部60aに連結されて支持される。高温バンドル51と低温バンドル52は、ダクトケーシング60の内部に排ガスGの流れ方向の下流側から上流側に向けて間隔を空けて配置される。
【0036】
高温バンドル51は、入口ヘッダ22と出口ヘッダ23がダクトケーシング60の側壁部60aに固定されて支持される。複数の第1伝熱管21は、水平方向に沿って配置される。入口ヘッダ22は、複数の第1伝熱管21の一端部が連結され、出口ヘッダ23は、複数の第1伝熱管21の他端部が連結される。入口ヘッダ22および出口ヘッダ23は、径方向のおける水平方向の一方側(図4の右方側)が排ガス通路121cに位置し、径方向のおける水平方向の他方側(図4の左方側)が排ガス通路121cの外側に位置する。複数の第1伝熱管21は、排ガス通路121cに位置する。高温バンドル51は、外側に高温ケーシング53が配置される。高温ケーシング53は、複数の第1伝熱管21を取り囲むように水平方向に沿って配置され、長手方向の端部が入口ヘッダ22および出口ヘッダ23に連結され、必要に応じてダクトケーシング60の内面に支持される。高温ケーシング53は、排ガスGの流れ方向の上流側と下流側に開口部を有する。
【0037】
低温バンドル52は、入口ヘッダ32と出口ヘッダ33がダクトケーシング60の側壁部60aに固定されて支持される。複数の第2伝熱管31は、水平方向に沿って配置される。入口ヘッダ32は、複数の第2伝熱管31の一端部が連結され、出口ヘッダ33は、複数の第2伝熱管31の他端部が連結される。入口ヘッダ32および出口ヘッダ33は、径方向のおける水平方向の一方側(図4の右方側)が排ガス通路121cに位置し、径方向のおける水平方向の他方側(図4の左方側)が排ガス通路121cの外側に位置する。複数の第2伝熱管31は、排ガス通路121cに位置する。低温バンドル52は、外側に低温ケーシング54が配置される。低温ケーシング54は、複数の第2伝熱管31を取り囲むように水平方向に沿って配置され、長手方向の端部が入口ヘッダ32および出口ヘッダ33に連結され、必要に応じてダクトケーシング60の内面に支持される。低温ケーシング54は、排ガスGの流れ方向の上流側と下流側に開口部を有する。
【0038】
高温バンドル51にて、入口ヘッダ22は、側部に連結フランジ24を有するフランジ接手25が固定される。フランジ接手25は、円筒形状をなし、入口ヘッダ22の内部に連通する。フランジ接手25は、入口ヘッダ22における長手方向の一端部に配置される。出口ヘッダ23は、側部に連結フランジ26を有するフランジ接手27が固定される。フランジ接手27は、円筒形状をなし、出口ヘッダ23の内部に連通する。フランジ接手27は、出口ヘッダ23における長手方向の他端部に配置される。
【0039】
第1伝熱管21は、複数の直線部21aと、複数の第1湾曲部21bと、複数の第2湾曲部21cとを有する。複数の直線部21aは、素管の周囲に螺旋形状をなすフィンが固定されて構成される。複数の第1湾曲部21bと複数の第2湾曲部21cは、素管だけで構成され、フィンが設けられていない。複数の直線部21aは、隣接するもの同士の一端部が第1湾曲部21bにより連結され、隣接するもの同士の他端部が第2湾曲部21cにより連結される。第1伝熱管21は、排ガスGの流れ方向の下流側の直線部21aの一端部が入口ヘッダ22に連結され、排ガスGの流れ方向の上流側の直線部21aの一端部が出口ヘッダ23に連結される。1つの第1伝熱管21は、直線部21aと第1湾曲部21bと第2湾曲部21cが排ガスGの流れ方向である水平方向に間隔を空けて配置される。複数の第1伝熱管21は、排ガスGの流れ方向に直交する鉛直方向に間隔を空けて配置されることで、第1伝熱管群を構成する。
【0040】
低温バンドル52にて、入口ヘッダ32は、側部に連結フランジ34を有するフランジ接手35が固定される。フランジ接手35は、円筒形状をなし、入口ヘッダ32の内部に連通する。フランジ接手35は、入口ヘッダ32における長手方向の一端部に配置される。出口ヘッダ33は、側部に連結フランジ36を有するフランジ接手37が固定される。フランジ接手37は、円筒形状をなし、出口ヘッダ33の内部に連通する。フランジ接手37は、出口ヘッダ33における長手方向の他端部に配置される。
【0041】
第2伝熱管31は、複数の直線部31aと、複数の第1湾曲部31bと、複数の第2湾曲部31cとを有する。複数の直線部31aは、素管の周囲に螺旋形状をなすフィンが固定されて構成される。複数の第1湾曲部31bと複数の第2湾曲部31cは、素管だけで構成され、フィンが設けられていない。複数の直線部31aは、隣接するもの同士の一端部が第1湾曲部31bにより連結され、隣接するもの同士の他端部が第2湾曲部31cにより連結される。第2伝熱管31は、排ガスGの流れ方向の上流側の直線部31aの一端部が入口ヘッダ32に連結され、排ガスGの流れ方向の下流側の直線部31aの一端部が出口ヘッダ33に連結される。1つの第2伝熱管31は、直線部31aと第1湾曲部31bと第2湾曲部31cが排ガスGの流れ方向である水平方向に間隔を空けて配置される。複数の第2伝熱管31は、排ガスGの流れ方向に直交する鉛直方向に間隔を空けて配置されることで、第2伝熱管群を構成する。
【0042】
第2熱媒体循環ラインL12は、配管により構成され、端部にフランジ接手を有する。第2熱媒体循環ラインL12は、配管のフランジ接手が高温バンドル51における入口ヘッダ22のフランジ接手25に連結される。第1熱媒体循環ラインL11は、配管により構成され、端部にフランジ接手を有する。第1熱媒体循環ラインL11は、配管のフランジ接手が低温バンドル52における出口ヘッダ33のフランジ接手37に連結される。接続ラインL21は、配管により構成され、長手方向の各端部にフランジ接手をそれぞれ有する。接続ラインL21は、配管の一端部側のフランジ接手が高温バンドル51における出口ヘッダ23のフランジ接手27に連結される。また、配管の他端部側のフランジ接手が低温バンドル52における入口ヘッダ32のフランジ接手35に連結される。
【0043】
[再加熱装置の作動]
図1および図2に示すように、熱回収装置101(101a,101b)は、排ガスGと熱媒体との間で熱交換することで、排ガスGから熱を回収する。熱が回収された排ガスGは、電気集塵装置102および脱硫装置104を通って再加熱装置105に流れる。一方、熱を回収した熱媒体は、第2熱媒体循環ラインL12により再加熱装置105に送られる。
【0044】
熱媒体は、第2熱媒体循環ラインL12から高温加熱部11に供給され、入口ヘッダ22から複数の第1伝熱管21に流れる。高温加熱部11は、熱媒体が複数の第1伝熱管21を流れるとき、熱媒体と排ガス通路121cを流れる排ガスGとの間で熱交換することで、排ガスGを加熱する。
【0045】
高温加熱部11で加熱された熱媒体は、出口ヘッダ23から接続ラインL21を通って低温加熱部12の入口ヘッダ32に供給され、複数の第2伝熱管31に流れる。低温加熱部12は、熱媒体が複数の第2伝熱管31を流れるとき、熱媒体と排ガス通路121cを流れる排ガスGとの間で熱交換することで、排ガスGを加熱する。低温加熱部12で加熱した熱媒体は、出口ヘッダ33から第1熱媒体循環ラインL11に排出され、第1熱媒体循環ラインL11により熱回収装置101に送られる。
【0046】
[バンドルにおける伝熱管の配置]
高温バンドル51の第1伝熱管21と、低温バンドル52の第2伝熱管31は、フィンが設けられているフィンチューブである。高温バンドル51と低温バンドル52は、腐食環境が相違することから、配置場所に応じて伝熱管21,31における素管やフィンの材質を異ならせている。低温バンドル52は、最も腐食環境の悪い位置に配置されることから、第2伝熱管31は、高温バンドル51の第1伝熱管21よりも耐食性の高い材料により形成される。
【0047】
また、高温バンドル51は、低温バンドル52に比較して腐食環境は改善されるものの、排ガスGが滞留する領域や排ガスがすり抜けてしまう領域などでは、昇温が不十分となりやすい。特に、高温バンドル51を構成する部材としての壁部近傍では、排ガスGのすり抜け部などでは、低温バンドル52と同様に、腐食環境の悪い。そのため、高温バンドル51であっても、腐食環境の悪い位置に配置される第1伝熱管21は、耐食性の高い材料により形成される。
【0048】
図5は、本実施形態の再加熱装置における正面図、図6は、排ガスの流れ方向に対する排ガスの温度および湿度を表すグラフである。
【0049】
図4および図5に示すように、高温バンドル51は、高温ケーシング53の内部に複数の第1伝熱管21が配置される。第1伝熱管21は、1本が水平方向に沿って配置されると共に、複数本が鉛直方向に間隔を空けて配置される。入口ヘッダ22および出口ヘッダ23は、高温ケーシング53の一端部に連結される。複数の第1伝熱管21は、複数の直線部21aが排ガスGの流れ方向に対して直交する方向に沿って配置され、各端部が入口ヘッダ22および出口ヘッダ23にそれぞれ連結される。
【0050】
高温ケーシング53は、内部に複数の支持板61が配置される。支持板61は、第1伝熱管21における直線部21aに対して直交する方向に沿って配置される。複数の支持板61は、第1伝熱管21における直線部21aの長手方向に間隔を空けて配置され、周囲が高温ケーシング53に固定される。支持板61は、複数の支持孔が形成され、複数の第1伝熱管21は、複数の支持孔に挿通されて支持される。
【0051】
また、高温ケーシング53は、内部に仕切板62が配置される。仕切板62は、第1伝熱管21における直線部21aに対して平行をなす方向に沿って配置される。仕切板62は、水平方向に沿って配置され、鉛直方向に沿って間隔を空けて配置される複数の第1伝熱管21の間に配置される。すなわち、仕切板62は、複数の第1伝熱管21の間に位置し、周囲が高温ケーシング53の内面に固定される。仕切板62は、複数の第1伝熱管21が配置された高温ケーシング53の内部を2つの空間部に区画する。なお、仕切板62を複数配置し、高温ケーシング53の内部を複数の空間部に区画してもよい。仕切板62は、共鳴防止板として機能し、第1伝熱管21が振動することで発生する音の共鳴が抑制される。
【0052】
なお、ここで、高温バンドル51について詳細に説明したが、低温バンドル52も同様の構成となっている。すなわち、低温バンドル52は、低温ケーシング54の内部に支持板63と仕切板64が配置される。
【0053】
再加熱装置105は、高温加熱部11を構成する高温バンドル51と、低温加熱部12を構成する低温バンドル52とを有する。本実施形態にて、高温バンドル51は、排ガスGの流れ方向に沿って10段の第1伝熱管21が配置される。低温バンドル52は、排ガスGの流れ方向に沿って10段の第2伝熱管31が配置される。ここで、10段の第1伝熱管21および第2伝熱管31とは、直線部21a,31aの本数である。
【0054】
本実施形態の高温バンドル51および低温バンドル52において、複数の伝熱管21,31のうち、少なくとも排ガスGの流れ方向の上流側に配置される伝熱管21,31は、排ガスGの流れ方向の下流側に配置される伝熱管21,31より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管である。具体的に、排ガスGの流れ方向に沿って少なくとも2段目までの第2伝熱管31は、ステンレス製伝熱管である。
【0055】
そして、排ガスGの相対湿度が70%以上の領域に配置される伝熱管は、排ガスGの相対湿度が70%未満の領域に配置される伝熱管より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管であることが好ましい。但し、排ガスGの相対湿度が80%以上の領域に配置される伝熱管は、排ガスGの相対湿度が80%未満の領域に配置される伝熱管より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管であることがさらに好ましい。一方、排ガスGの相対湿度が70%(80%)未満の領域に配置される伝熱管は、炭素鋼により形成される炭素鋼製伝熱管であることが好ましい。
【0056】
一般的に、湿度は、空気中に含まれる水蒸気の量である。ここで、相対湿度は、湿り空気の水蒸気分圧と湿り空気における飽和空気の水蒸気分圧との比であり、「%」または「%RH」で表す。
相対湿度(%RH)=ある温度の空気に実際の含まれている水蒸気分圧(Pw)/ある温度の空気に含むことのできる最大水蒸気分圧(Pws)
一方、絶対湿度は、湿り空気に含まれる水蒸気の質量であり、「kg/kg」で表す。
絶対湿度(kg/kg)=水蒸気の質量/1
そのため、ある湿り空気を冷却すると、温度が低下して相対湿度が上昇し、ある湿り空気を加熱すると、温度が上昇して相対湿度が低下する。一方、ある湿り空気を冷却したり、加熱したりしても、絶対湿度は変化しない。
【0057】
本実施形態にて、高温バンドル51は、排ガスGの流れ方向に沿って10段の第1伝熱管21を有し、低温バンドル52は、排ガスGの流れ方向に沿って10段の第2伝熱管31を有する。ここで、低温バンドル52は、排ガスGの入口部から排ガスGの流れ方向の下流側に向けて2段目までにステンレス製伝熱管が配置されるが、10段目までにステンレス製伝熱管を配置してもよい。すなわち、高温バンドル51と低温バンドル52は、排ガスGの流れ方向に沿って直列に配置され、ステンレス製伝熱管は、少なくとも低温バンドル52に配置される。
【0058】
具体的に説明すると、低温バンドル52は、排ガスGが最初に流入することから、腐食環境が最も悪い。そのため、排ガスGの相対湿度が80%以上の領域に配置される全ての第2伝熱管31をフィンチューブとし、ステンレス鋼により形成するステンレス製伝熱管とする。ステンレス製伝熱管としては、例えば、二相ステンレス鋼が適用される。この場合、少なくとも素管は、二相ステンレス鋼における汎用二相鋼により形成されることが好ましい。二相ステンレス鋼は、リーン二相鋼と、汎用二相鋼と、スーパー二相鋼などに分類される。汎用二相鋼は、耐海水腐食性に優れる。汎用二相鋼としては、例えば、SUS329J4Lが最も好ましいが、SUS329J1やSUS329J3Lなどであってもよい。また、スーパー二相鋼としては、例えば、SUS327L1などがある。なお、ステンレス製伝熱管は、二相ステンレス鋼に限るものではない。
【0059】
一方、高温バンドル51は、低温バンドル52を通過した排ガスGが流入することから、腐食環境が低温バンドル52よりも良い。そのため、排ガスGの相対湿度が80%未満の領域に配置される全てまたは一部の第1伝熱管21をフィンチューブとし、炭素鋼により形成する炭素鋼製伝熱管とする。炭素鋼製伝熱管としては、例えば、STB340が適用される。この場合、少なくとも素管は、炭素鋼により形成されることが好ましい。なお、炭素鋼製伝熱管は、STB340に限るものではない。
【0060】
なお、高温バンドル51は、一部の第1伝熱管21をステンレス鋼により形成するステンレス製伝熱管としてもよい。すなわち、複数の伝熱管21のうち、少なくとも壁部に隣接する伝熱管21は、壁部から離間する伝熱管21より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管である。例えば、高温バンドル51は、高温ケーシング53の上壁部と下壁部に隣接する第1伝熱管21にステンレス製伝熱管を適用する。また、高温バンドル51は、仕切板62に隣接する第1伝熱管21にステンレス製伝熱管を適用する。さらに、高温バンドル51は、支持板61に隣接する第1伝熱管21にステンレス製伝熱管を適用してもよい。
【0061】
図5に示すように、高温バンドル51と低温バンドル52が直接に配置され、排ガスGが低温バンドル52から高温バンドル51に流れる。領域A1が排ガスGの相対湿度が80%以上の領域であり、領域A2が排ガスGの相対湿度が80%未満の領域である。そのため、領域A1の配置される伝熱管、つまり、低温バンドル52の第2伝熱管31にステンレス製伝熱管を適用する。一方、領域A2の配置される伝熱管、つまり、高温バンドル51の第1伝熱管21に炭素鋼製伝熱管を適用する。但し、高温バンドル51は、高温ケーシング53の上壁部と下壁部に隣接する第1伝熱管21にステンレス製伝熱管を適用する。また、高温バンドル51は、仕切板62に隣接する第1伝熱管21にステンレス製伝熱管を適用する。
【0062】
図5および図6に示すように、例えば、低温バンドル52に導入される排ガスGは、位置G1にて、温度が45℃で、相対湿度が100%である。排ガスGは、位置G2にて、低温バンドル52に導入され、位置G3にて、高温バンドル51に導入され、位置G4にて、高温バンドル51から排出される。このときに、排ガスGは、第2伝熱管31および第1伝熱管21を流れる高温の熱媒体Wと熱交換することで温度が上昇する。例えば、位置G3にて、温度が65℃で、相対湿度が30%である。また、高温バンドル51から排出された排ガスGは、位置G5にて、温度が90℃となる。一方、高温バンドル51から排出された排ガスGは、相対湿度が3%となる。
【0063】
そして、排ガスGは、低温バンドル52から高温バンドル51に流れるとき、相対湿度が80%となる。温度が低く、且つ、相対湿度が80%以上である領域では、伝熱管の腐食環境が悪く、早期に腐食しやすい。そのため、排ガスGの相対湿度が80%以上の領域に配置される伝熱管をステンレス製伝熱管とする。すなわち、低温バンドル52の入口部から10段目までの伝熱管をステンレス製伝熱管とする。
【0064】
なお、図6にて、排ガスGが低温バンドル52から高温バンドル51に流れることで、排ガスGの温度が上昇し、相対湿度が低下するものであるが、直線状に上昇したり、低下したりするものではない。図6における排ガスGの温度と湿度の変化は、疑似的に直線状に記載したものであり、実際には、二次元曲線で変化するものと考えられる。但し、事前の実験などから、低温バンドル52の入口部から10段目までの領域A1で、排ガスGの相対湿度が80%以上となっていることが明らかである。
【0065】
本実施形態では、低温バンドル52が排ガスGの流れ方向に沿って2段の第2伝熱管31を有し、好ましくは、10段の第2伝熱管31を有するものであることから、低温バンドル52における全ての第2伝熱管31をステンレス製伝熱管とした。但し、低温バンドル52が排ガスGの流れ方向に沿って12段の第2伝熱管31を有するものであると、低温バンドル52における一部の第2伝熱管31、つまり、2段目(または、10段目)までの第2伝熱管31をステンレス製伝熱管とする。しかし、この場合、低温バンドル52における全て(12段目まで)の第2伝熱管31をステンレス製伝熱管としてもよい。また、低温バンドル52が排ガスGの流れ方向に沿って8段の第2伝熱管31を有するものであっても同様である。
【0066】
また、図4に示すように、高温バンドル51および低温バンドル52にて、伝熱管21,31は、複数の直線部21a,31aと、複数の直線部21a,31aの一端部同士を連結する第1湾曲部21b,31bと、複数の直線部21a,31aの他端部同士を連結する第2湾曲部21c,31cとを有する。第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cは、フィンがないことから、排ガスGが流れやすいことから、腐食しやすい環境にある。そのため、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cは、ステンレス製伝熱管が適用されることが好ましい。
【0067】
また、低温バンドル52は、第1湾曲部31bおよび第2湾曲部31cへの排ガスGの流入を阻止する流入防止板71,72,73,74が設けられる。流入防止板71,72は、シールプレートであり、低温バンドル52における排ガスGの入口側に設けられる。流入防止板71,72は、ダクトケーシング60と低温ケーシング54に取付けられる。そのため、流入防止板71,72は、第1湾曲部31bおよび第2湾曲部31cへの低温バンドル入口側からの排ガスGの流入を阻止する。また、流入防止板73,74は、ガスショートパス防止板であり、低温バンドル52における排ガスGの流れの中途部に設けられる。流入防止板73,74は、ダクトケーシング60と直線部31aに取付けられる。そのため、流入防止板73,74は、第1湾曲部31bおよび第2湾曲部31cへのバンドル内部からの排ガスGの流れを阻止する。尚、高温バンドル51についても、同様に、流入防止板71,72,73,74を設けることができる。なお、流入防止板71,72,73,74は、本実施形態のように、第1湾曲部31bおよび第2湾曲部31cへの排ガスGの流入を阻止することが好ましいが、第1湾曲部31bおよび第2湾曲部31cへの排ガスGの流入を抑制する構造、例えば、一部に開口がある形状、切り欠きがある形状としてもよい。
【0068】
そして、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cは、腐食防止用ライニングの塗装が施されることが好ましい。ライニングの塗装は、第1湾曲部21b,31bと直線部21a,31aと第2湾曲部21c,31cの各溶接部を周囲の腐食環境から保護する。ライニングの塗装は、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cと溶接部を全周にわたって隙間なく被覆し、外表面を腐食から守るため、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cと溶接部の外表面を直線部21a,31aや第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cとが異なる材料により所定の厚さだけ被覆するものである。ライニングの塗装には、例えば、塗覆装があり、ライニングの塗装の材料としては、例えば、耐食FRP(強化プラスチック)、樹脂(例えば、王子ゴム化成株式会社のHF281など)、ゴムシート(硬質ゴム、クロロプレンなど)、ガラス、フッ素樹脂などが適用される。また、ライニングの塗装は湾曲部と直線部と湾曲部の溶接部だけを被覆するものではなく、溶接部から直線部における所定の長さまで被覆することが好ましい。被覆膜厚は、400μm以上とすることが好ましい。
【0069】
また、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cは、フェライト系以外のステンレスを採用する場合に、残留応力除去処理が施されることが好ましい。残留応力除去処理の方法は、一般的な方法として、固溶化熱処理、応力除去焼きなまし、ショットピーニング等がある。固溶化熱処理は、炭化物が析出したステンレス鋼を1000℃~1100℃の温度範囲に加熱し、オーステナイト単相の組織となるまで温度保持後、水中で急冷させる。この処理より、再び炭化物を固相内に溶け込ませることで、残留応力除去および粒界腐食などの局部腐食を防ぐ効果がある。ショットピーニングは、無数のショットを金属材料の表面に強く打ちつけ、叩いて鍛えることで、金属部品の表面を強くし、耐久性などを向上させ、金属疲労欠陥の発生源となる引張残留応力を取り除き、圧縮残留応力を高めることにより、疲労強度を大幅に増加させる。
【0070】
なお、低温バンドル52に流入防止板71,72,73,74を設けたが、高温バンドル51に流入防止板81,82,83,84を設けてもよい。
【0071】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係るバンドルは、熱媒体Wが供給される入口ヘッダ22,32と、熱媒体Wが排出される出口ヘッダ23,33と、入口ヘッダ22,32と出口ヘッダ23,33を連結すると複数の伝熱管21,31とを備え、複数の伝熱管21,31のうち、少なくとも排ガスGの流れ方向の上流側に配置される伝熱管21,31は、排ガスGの流れ方向の下流側に配置される伝熱管21,31より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管である。
【0072】
第1の態様に係るバンドルによれば、排ガスGの流れ方向の上流側に配置される伝熱管21,31にステンレス製伝熱管を適用することで、耐久性を考慮しながら、材料コストを低下させることができ、伝熱管21,31に対して最適な材料を適用することで製造コストの増加を抑制することができる。その結果、熱伝導性がよくないステンレス製伝熱管を最小限の領域に配置することで、性能の低下を抑制しながら、耐久性を向上することができる。
【0073】
第2の態様に係るバンドルは、第1の態様に係るバンドルであって、さらに、複数の伝熱管21,31のうち、少なくとも壁部に隣接する伝熱管21,31は、壁部から離間する伝熱管21,31より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管である。これにより、排ガスGが滞留する領域や排ガスがすり抜けてしまう領域に配置される伝熱管21,31にステンレス製伝熱管を適用することで、耐久性を考慮しながら、材料コストを低下させることができ、伝熱管21,31に対して最適な材料を適用することで製造コストの増加を抑制することができる。その結果、熱伝導性がよくないステンレス製伝熱管を最小限の領域に配置することで、性能の低下を抑制しながら、耐久性を向上することができる。
【0074】
第3の態様に係るバンドルは、第1の態様または第2の態様に係るバンドルであって、さらに、ステンレス製伝熱管は、排ガスGの入口部から排ガスGの流れ方向の下流側に向けて少なくとも2段目までに配置される。これにより、腐食環境が悪い領域の伝熱管に対して最適な材料を適用することで、熱伝導性がよくないステンレス製伝熱管を最小限の領域に配置することで、性能の低下を抑制しながら耐久性を向上することができる。
【0075】
第4の態様に係るバンドルは、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係るバンドルであって、さらに、排ガスGの流れ方向に沿って低温バンドル52と高温バンドル51が直段に配置され、ステンレス製伝熱管は、少なくとも低温バンドル52に配置される。これにより、低温バンドル52における全ての第2伝熱管31にステンレス製伝熱管を適用することで、耐久性を向上することができる。
【0076】
第5の態様に係るバンドルは、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係るバンドルであって、さらに、排ガスGの流れ方向の下流側に配置される第2伝熱管31は、炭素鋼により形成される炭素鋼製伝熱管である。これにより、耐久性を考慮しながら、材料コストを低下させることができ、製造コストの増加を抑制することができる。
【0077】
第6の態様に係るバンドルは、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係るバンドルであって、さらに、伝熱管21,31は、複数の直線部21a,31aと、複数の直線部21a,31aの一端部同士を連結する第1湾曲部21b,31bと、複数の直線部21a,31aの他端部同士を連結する第2湾曲部21c,31cとを有し、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cにステンレス製伝熱管が適用される。これにより、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cは、フィンがなく、熱伝導性があまり要求されない部位であるため、腐食発生の抑制となるステンレス製伝熱管を積極的に配置することができ、耐久性を向上することができる。
【0078】
第7の態様に係るバンドルは、第1の態様から第6の態様のいずれか一つに係るバンドルであって、さらに、伝熱管21,31は、複数の直線部21a,31aと、複数の直線部21a,31aの一端部同士を連結する第1湾曲部21b,31bと、複数の直線部21a,31aの他端部同士を連結する第2湾曲部21c,31cとを有し、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cへの排ガスの流入を抑制、好ましくは阻止する流入防止板71,72,73,74が設けられる。これにより、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cに対する排ガスの接触を抑制し、性能の低下を抑制することができると共に、腐食の発生を抑制することができる。なお、流入防止板である73,74は、シールプレートとして機能するガスショートパス防止板であり、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cへの排ガスのすり抜けを抑制することができる。
【0079】
第8の態様に係るバンドルは、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係るバンドルであって、さらに、伝熱管21,31は、複数の直線部21a,31aと、複数の直線部21a,31aの一端部同士を連結する第1湾曲部21b,31bと、複数の直線部21a,31aの他端部同士を連結する第2湾曲部21c,31cとを有し、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cは、腐食防止用ライニング塗装が施される。これにより、腐食の発生を抑制することができる。
【0080】
第9の態様に係るバンドルは、第1の態様から第8の態様のいずれか一つに係るバンドルであって、さらに、伝熱管21,31は、複数の直線部21a,31aと、複数の直線部21a,31aの一端部同士を連結する第1湾曲部21b,31bと、複数の直線部21a,31aの他端部同士を連結する第2湾曲部21c,31cとを有し、第1湾曲部21b,31bおよび第2湾曲部21c,31cは、残留応力除去処理が施される。これにより、腐食割れの発生を抑制することができる。
【0081】
第14の態様に係る熱交換器は、排ガス通路121cを構成するダクトケーシング60と、ダクトケーシング60の内部に配置される第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係るバンドル51,52とを備える。これにより、熱伝導性がよくないステンレス製伝熱管を最小限の領域に配置することで、性能の低下を抑制しながら、耐久性を向上することができる。
【0082】
第15の態様に係る排煙処理装置は、排ガスGの熱の一部を回収する熱回収装置101と、熱回収後の排ガスGに含まれるばいじんを除去する電気集塵装置102と、集塵後の排ガスGに含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置104と、脱硫後の排ガスGを再加熱する第6の態様に係る熱交換器が適用される再加熱装置105とを備える。これにより、熱伝導性がよくないステンレス製伝熱管を最小限の領域に配置することで、性能の低下を抑制しながら、耐久性を向上することができる。
【0083】
なお、上述した実施形態にて、再加熱装置105は、高温加熱部11と低温加熱部12を備える。但し、再加熱装置105は、高温加熱部11と低温加熱部12に加えて中温加熱部や高予熱部などを備えていてもよく、この場合、中温加熱部や高予熱部に対応したバンドルが設けられる。また、第1伝熱管21と第2伝熱管31の長さや本数は、使用形態に応じて適宜設定すればよいものである。
【0084】
また、上述した実施形態では、本発明の熱交換器を排煙処理装置100の再加熱装置105に適用して説明したが、別の熱交換器に適用してもよい。
【符号の説明】
【0085】
11 高温加熱部
12 低温加熱部
21 第1伝熱管
22 入口ヘッダ
23 出口ヘッダ
31 第2伝熱管
32 入口ヘッダ
33 出口ヘッダ
51 高温バンドル
52 低温バンドル
53 高温ケーシング
54 低温ケーシング
60 ダクトケーシング
61,63 支持板
62,64 仕切板
71,72,73,74 流入防止板
81,82,83,84 流入防止板
100 排煙処理装置
101,101a,101b 熱回収装置
102,102a,102b 電気集塵装置
103,103a,103b 送風装置
104 脱硫装置
105 再加熱装置
106,106a,106b 送風装置
111 ボイラ
112 煙突
121a,121b,121c,121d,121e,121f,121g 排ガス通路
122 開閉弁
123 ミストエリミネータ
131 循環ポンプ
132 ヒータ
133 ドレンタンク
134 開閉弁
L11 第1熱媒体循環ライン
L12 第2熱媒体循環ライン
L13 蒸気ライン
L14 蒸気ドレンライン
L21 接続ライン
G 排ガス
W 熱媒体
【要約】
【課題】バンドルおよび熱交換器並びに排煙処理装置において、性能の低下を抑制しながら耐久性の向上を図る。
【解決手段】熱媒体が供給される入口ヘッダと、熱媒体が排出される出口ヘッダと、入口ヘッダと出口ヘッダを連結すると複数の伝熱管と、を備え、複数の伝熱管のうち、少なくとも排ガスの流れ方向の上流側に配置される伝熱管は、排ガスの流れ方向の下流側に配置される伝熱管より耐腐食性の高いステンレス鋼により形成されるステンレス製伝熱管である。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6