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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20250422BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20250422BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20250422BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250422BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20250422BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20250422BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20250422BHJP
   B60L 58/24 20190101ALI20250422BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250422BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250422BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20250422BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250422BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20250422BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20250422BHJP
   H01M 10/6572 20140101ALI20250422BHJP
【FI】
H02J7/02 G
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H02J7/00 P
B60L53/14
B60L53/30
B60L53/66
B60L58/24
H01M10/48 301
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6571
H01M10/6572
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022010299
(22)【出願日】2022-01-26
(65)【公開番号】P2023108963
(43)【公開日】2023-08-07
【審査請求日】2024-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100142918
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 貴志
(72)【発明者】
【氏名】執行 正勝
(72)【発明者】
【氏名】東谷 光晴
(72)【発明者】
【氏名】池本 宣昭
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-4627(JP,A)
【文献】特開2007-143370(JP,A)
【文献】特開2013-198169(JP,A)
【文献】国際公開第2020/084964(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/667
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置(20)から車両(10)への充電を制御する制御装置(200)であって、
前記給電装置は、ケーブル(30)を介して同時に複数の前記車両を接続することが可能なものであり、
前記車両は、供給された電力を蓄える蓄電池(12)と、前記蓄電池の温度を調整する温調機器(14)と、を有するものであり、
前記車両に供給される電力を調整する電力調整部(210)と、
それぞれの前記車両の充電を行わせるタイミング、及び、それぞれの前記車両の温調機器を動作させるタイミング、のそれぞれを調整するタイミング調整部(220)と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記タイミング調整部は、それぞれの前記車両について充電の優先度を設定し、前記優先度の高い前記車両から順に充電を開始させる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記給電装置に接続された前記車両には、第1車両と、前記第1車両よりも前記優先度の低い第2車両と、が含まれ、
前記電力調整部は、
前記第1車両への充電が行われているときに、第2車両にも電力を供給する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記タイミング調整部は、前記第1車両への充電が行われているときに、前記第2車両の前記温調機器を動作させる、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2車両の前記温調機器を動作させるタイミングで、
前記電力調整部は、前記第1車両に供給される電力を減少させる、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記給電装置に接続された前記車両には、第1車両と、前記第1車両よりも前記優先度の低い第2車両と、が含まれ、
前記第1車両の前記蓄電池の温度が、充電に適した所定の温度範囲を外れているときには、
前記タイミング調整部は、前記第1車両の前記温調機器を動作させ、
前記電力調整部は、前記第2車両への電力の供給を開始する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項7】
前記タイミング調整部は、前記第1車両の前記温調機器が動作している間に、前記第2車両への充電を開始させる、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記第2車両は、前記第1車両よりも優先度の低い複数の前記車両のうち、前記蓄電池の温度が前記温度範囲内となっている前記車両である、請求項7に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電装置から車両への充電を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の駆動力により走行する車両は、走行に必要な電力を蓄えておくための蓄電池を備える。蓄電池への充電は、例えば、外部の給電装置と車両との間をケーブルにより接続した状態で、当該ケーブルを介して行われる。
【0003】
下記特許文献1には、給電装置に対し複数台の車両を予め接続した状態としておき、各車両への充電を、所定の優先度に従い順番に行うことについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-90378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電池の温度が低下し過ぎている状態で充電が行われた場合には、十分な速度で充電を行うことが難しいことに加え、蓄電池が劣化してしまう可能性がある。蓄電池の温度が上昇し過ぎている状態で充電が行われた場合も同様であり、やはり蓄電池が劣化してしまう可能性がある。このため、優先度の高い車両の蓄電池の温度が適温となっていない場合には、当該車両への充電に時間がかかり過ぎることや、優先度の低い車両への充電を時間内に開始できなくなること等が生じ得る。
【0006】
本開示は、複数台の車両への充電を効率よく行うことのできる制御装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る制御装置は、給電装置(20)から車両(10)への充電を制御する制御装置(200)である。給電装置は、ケーブル(30)を介して同時に複数の車両を接続することが可能なものである。車両は、供給された電力を蓄える蓄電池(12)と、蓄電池の温度を調整する温調機器(14)と、を有するものである。この制御装置は、車両に供給される電力を調整する電力調整部(210)と、それぞれの車両の充電を行わせるタイミング、及び、それぞれの車両の温調機器を動作させるタイミング、のそれぞれを調整するタイミング調整部(220)と、を備える。
【0008】
このような構成の制御装置によれば、例えば、優先度の高い車両の蓄電池の温度が低下し過ぎているよう場合に、当該車両の温調機器を動作させて短時間のうちに充電可能な状態とすることや、当該車両の充電開始前に、優先度の低い他の車両への充電を先に開始させるなど、柔軟に対応することが可能となる。これにより、給電装置に接続された各車両への充電を効率よく行い、比較的短時間のうちに全車両への充電を完了させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複数台の車両への充電を効率よく行うことのできる制御装置、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、電動車両と給電装置との間がケーブルを介して接続された状態、を模式的に示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る車両の構成を模式的に示す図である。
図3図3は、比較例に係る車両の制御装置により実行される制御、の概要を説明するためのグラフである。
図4図4は、本実施形態に係る車両の制御装置により実行される制御、の概要を説明するためのグラフである。
図5図5は、本実施形態に係る車両の制御装置により実行される処理、の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、内部温調処理が行われるときの、蓄電量の時間変化の例を示すグラフである。
図7図7は、本実施形態に係る車両の制御装置により実行される処理、の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、本実施形態に係る給電装置の制御装置、の構成を模式的に示す図である。
図9図9は、第1実施形態に係る制御が行われたときの、各車両における充電電力等の時間変化の例を示すグラフである。
図10図10は、第2実施形態に係る制御が行われたときの、各車両における充電電力等の時間変化の例を示すグラフである。
図11図11は、第1実施形態に係る制御が行われたときの、各車両における充電電力等の時間変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る制御装置200は、給電装置20の内部に設けられ、給電装置20から各車両10への充電を制御するための装置として構成されている。
【0013】
車両10は、蓄電池12及び回転電機13を備えた電動車両として構成されている。蓄電池12は、車両10の走行に必要な電力を蓄えておくためのものであり、例えばリチウムイオンバッテリーである。回転電機13は、車両10の走行に必要な駆動力を発生させる装置であり、「モータジェネレータ」とも称されるものである。回転電機13は、蓄電池12から供給される電力により駆動される。
【0014】
尚、車両10は、回転電機13の駆動力のみによって走行する電動車両であってもよいが、内燃機関及び回転電機13の両方の駆動力によって走行するハイブリッド車両であってもよい。
【0015】
蓄電池12には、予め外部の給電装置20から供給された電力が蓄えられている。蓄電池12に対する充電は、図1に示されるように、車両10と給電装置20との間をケーブル30で接続した状態で行われる。ケーブル30は、給電装置20から伸びており、その先端が、車両10に設けられた給電口11へと接続される。
【0016】
給電装置20は、例えば屋外に立設された充電用の設備である。給電装置20には、系統22からの電力(系統電力)が供給される。給電装置20は電力変換器21を備える。電力変換器21は、例えば、インバータとDC/DCコンバータとを組み合わせたものであり、交流電力である系統電力を、所定電圧の直流電力に変換するための装置である。電力変換器21で変換された後の直流電力が、ケーブル30を介して車両10へと供給され、蓄電池12への充電に供される。尚、交流電力から直流電力への変換は、給電装置20側ではなく車両10側において行われてもよい。
【0017】
図1に示されるように、1つの給電装置20からは複数のケーブル30が伸びており、それぞれのケーブル30が車両10の給電口11へと接続されている。つまり、給電装置20は、ケーブル30を介して同時に複数の車両10を接続することが可能なものである。このような給電装置20は、例えば、複数台の車両10を用いて事業を行う際の拠点(例えばレンタカー事業所や物流事業所等)に設置されるものであり、夜間等の時間帯に、各車両10への充電を完了させるものである。給電装置20は、接続された1台又は複数台の車両10に対し同時に充電を行うことができる。ただし、同時に充電を行い得る車両10の数は、給電装置20に接続可能な車両10の台数よりも少ない。ケーブル30は、給電装置20から先の部分が複数に分岐しており、分岐したそれぞれの部分が各車両10に接続されるような態様であってもよい。
【0018】
図2には、制御装置100及びこれを備えた車両10の構成が模式的に描かれている。尚、図2においては、回転電機13の図示が省略されている。制御装置100は、車両10の蓄電池12に対する充電を制御するための装置であって、それぞれの車両10に搭載されている。
【0019】
先ず、車両10の構成について説明する。図1に示されるそれぞれの車両10の構成は、互いに同じであるものとする。図2に示されるように、それぞれの車両10は、先に述べた蓄電池12や回転電機13のほか、温調機器14と、電力変換器15と、操作部16と、通信部17と、を備えている。
【0020】
温調機器14は、蓄電池12の温度を調整し適温とするための装置である。ここでいう「適温」とは、蓄電池12の充電や放電に適した所定範囲内の温度のことである。本実施形態の温調機器14は、蓄電池12に蓄えられた電力を用いて動作する電気ヒーターであり、蓄電池12の近傍となる位置に設けられている。温調機器14は、本実施形態のように蓄電池12を加熱する装置であってもよいが、例えばペルチェ素子のように、蓄電池12からの電力により蓄電池12を冷却する装置であってもよい。また、温調機器14が、蓄電池12の加熱及び冷却の両方を行い得る装置であってもよい。温調機器14の動作は制御装置100によって制御される。
【0021】
温調機器14は、本実施形態のように、蓄電池12に蓄えられた電力を用いて動作するものであってもよいが、それ以外のエネルギーを用いるものであってもよい。例えば、車両10が内燃機関を備えている場合には、温調機器14は、内燃機関で生じる熱を利用して蓄電池12を加熱する装置であってもよい。具体的には、内燃機関と蓄電池12との間において流体を循環させ、これにより蓄電池12の温度を調整する装置であってもよい。いずれの場合であっても、温調機器14は、給電装置20から供給される電力以外のエネルギーを用いて、蓄電池12の温度を調整することができる。
【0022】
尚、車両10と給電装置20との間がケーブル30で接続された状態においては、温調機器14は、給電装置20から供給される電力により動作することもできる。また、温調機器14は、蓄電池12から供給される電力と、給電装置20から供給される電力と、の両方を所定の比率で用いながら動作することもできる。
【0023】
電力変換器15は、給電装置20からケーブル30を介して供給される電力を変換し、変換後の電力を蓄電池12に供給し充電するための装置である。電力変換器15の動作は制御装置100によって制御され、これにより、蓄電池12に充電される電力の大きさが調整される。尚、電力変換器15は、変換後の電力を温調機器14に供給することもできる。温調機器14に電力を供給するための専用の電力変換器が、電力変換器15とは別に設けられているような態様であってもよい。
【0024】
本実施形態のように、給電装置20から直流電力が供給される場合には、電力変換器15としてDC/DCコンバータを用いることができる。給電装置20から交流電力が供給される場合には、電力変換器15としてインバータを用いることができる。尚、給電装置20の電力変換器21により変換された後の電力を、蓄電池12に直接供給し得る場合には、電力変換器15は無くてもよい。この場合、蓄電池12に充電される電力の大きさは、給電装置20側の制御のみによって調整されることとなる。給電装置20は、車両10側の情報、具体的には、蓄電池12の許容電流や電圧等の情報を通信により読み取り、当該情報に基づいて、車両10に供給される電力の大きさを制御する。
【0025】
操作部16は、車両10の乗員(例えば運転者)が行う操作を受け付ける部分である。操作部16としては、例えば、車両10の車室に設けられたタッチパネルを用いることができる。操作部16に対し行われた操作の内容は、制御装置100へと送信される。乗員は、操作部16を操作することにより、制御装置100によって行われる制御の態様を調整することができる。操作部16への操作によりどのようなパラメータが設定されるのかについては、後に説明する。
【0026】
通信部17は、制御装置100と外部との間における無線通信を行うための装置である。通信部17は、車両10の乗員が所有する携帯通信端末であってもよい。通信部17は、車両10の外部に設置されたサーバーとの間で無線通信を行うことにより、制御装置100が行う制御に必要なパラメータを取得する。通信部17によりどのようなパラメータが取得されるのかについては、後に説明する。
【0027】
引き続き図2を参照しながら、制御装置100の構成について説明する。制御装置100は、CPU、ROM、RAM等を有するコンピュータシステムとして構成されており、先に述べたように車両10に搭載されている。尚、制御装置100は、本実施形態のように単一の装置として構成されていてもよいが、互いに双方向の通信を行う複数の装置として構成されていてもよい。また、以下に説明する制御装置100の機能の一部又は全部が、車両10とは異なる位置に設置された装置によって実現される構成であってもよい。
【0028】
制御装置100は、その機能を表すブロック要素として、温度調整部110と、取得部120と、決定部130と、を備えている。
【0029】
温度調整部110は、蓄電池12の温度を調整する処理を行う部分である。温度調整部110は、先に述べた温調機器14の動作を制御することにより、蓄電池12の温度を調整する。その際、温度調整部110は、蓄電池12及び給電装置20のそれぞれから温調機器14に供給される電力の比率、を調整することもできる。
【0030】
温度調整部110が行う処理のうち、給電装置20から供給される電力以外のエネルギー(本実施形態では蓄電池12からの電力エネルギー)を用いて蓄電池12の温度を調整する処理のことを、以下では特に「内部温調処理」とも称する。温度調整部110は、給電装置20からの電力の供給が行われていない状態で、内部温調処理を行うことができる。また、温度調整部110は、給電装置20から供給される電力により蓄電池12を加熱する処理をも行うことができる。更に、温度調整部110は、給電装置20から供給される電力により蓄電池12を加熱する処理、と並行して、内部温調処理を行うこともできる。
【0031】
取得部120は、車両10と給電装置20との接続タイミング、を取得する処理を行う部分である。「接続タイミング」とは、車両10が給電装置20の位置に到着し、車両10と給電装置20との間がケーブル30で接続されるタイミング、のことである。取得部120が接続タイミングを取得するために行う具体的な処理の内容については後に説明する。
【0032】
決定部130は、内部温調処理の開始タイミングを決定する処理を行う部分である。先に述べた温度調整部110は、決定部130によって予め決定された開始タイミングにおいて、内部温調処理を開始する。決定部130が開始タイミングを決定するために行う具体的な処理の内容については後に説明する。
【0033】
ところで、例えばリチウムイオンバッテリーのような蓄電池においては、一般に、その充放電性能が温度により変化することが知られている。例えば、蓄電池12の温度が低下し過ぎている状態で充電が行われた場合には、十分な速度で充電を行うことが難しいことに加え、蓄電池12が劣化してしまう可能性がある。蓄電池12の温度が上昇し過ぎている状態で充電が行われた場合も同様であり、やはり蓄電池12が劣化してしまう可能性がある。このため、充電時においては、予め蓄電池12を加熱しておく等により、蓄電池12の温度を充電に適した温度としておく必要がある。
【0034】
蓄電池12の温度を加熱するための従来の方法(比較例)について、図3を参照しながら説明する。図3には、比較例に係る制御によって蓄電池12への充電が行われる場合の、各パラメータの時間変化の例が示されている。図3(A)に示されるのは、給電装置20から車両10に供給される系統電力の時間変化である。図3(B)に示されるのは、蓄電池12の温度の時間変化である。図3(C)に示されるのは、蓄電池12の蓄電量の時間変化である。「蓄電量」とは、蓄電池12に蓄えられた電力量又はそれを示す指標であって、所謂「SOC」とも称されるものである。
【0035】
この比較例では、時刻t1において、車両10と給電装置20とがケーブル30によって接続された状態となっている。時刻t1までの期間は、車両10が給電装置20の近傍に停車しており、充電の順番を待っている期間となっている。このため、当該期間においては、蓄電池12の温度は時間の経過とともに低下している(図3(B))。また、当該期間において車両10に供給される系統電力は0であり、蓄電池12の蓄電量は変化しない(図3(C))。
【0036】
図3(B)に示されるT1は、蓄電池12がその充放電性能を十分に発揮し得る温度範囲、として予め設定された範囲の下限を示す温度である。車両10にケーブル30が接続された時刻t1においては、蓄電池12の温度はT1を下回っているので、この時点では充電を開始することができない。このため、時刻t1からは、系統電力を用いて蓄電池12を加熱する処理が開始される。つまり、ケーブル30から供給される系統電力によって温調機器14を動作させ、蓄電池12を加熱する処理が開始される。これにより、時刻t1以降においては、蓄電池12の温度は次第に上昇していく(図3(B))。ケーブル30から供給される系統電力は、蓄電池12の充電には用いられないので、時刻t1以降においても蓄電池12の蓄電量は変化しない(図3(C))。
【0037】
時刻t2において、蓄電池12の温度がT1に到達すると、以降においては蓄電池12がその充放電性能を十分に発揮し得る状態となる。このため、時刻t2からは蓄電池12への充電が開始される。ケーブル30を介して車両10に供給される系統電力は増加し、そのすべてが蓄電池12に供給され充電される(図3(A))。また、蓄電池12の蓄電量は時間の経過とともに増加していく(図3(C))。蓄電池12への充電は、蓄電池12の蓄電量が所定の目標値C1に到達するまで行われる。尚、時刻t2以降においては、ケーブル30を介して車両10に供給される系統電力のうち、全てではなく一部のみが蓄電池12に供給され、残りの系統電力が引き続き温調機器14を動作させるために用いられることとしてもよい。
【0038】
このように、この比較例においては、給電装置20と車両10との間がケーブル30で接続された後に、ケーブル30から供給される系統電力を用いて蓄電池12の加熱が開始される。蓄電池12の温度が適温となっていない期間、すなわち、時刻t1から時刻t2までの期間では、車両10にケーブル30が接続されているにもかかわらず、蓄電池12への充電を行うことができない。このため、車両10にケーブル30が接続された時刻t1から、充電が完了する時刻t3までの期間は、比較的長くなっている。
【0039】
図4を参照しながら、本実施形態に係る制御装置100で実行される処理の概要について説明する。図4の各グラフに示される項目は、図3の各グラフに示される項目と同じである。
【0040】
図3の例と同様に、図4の例においては、時刻t11において、車両10と給電装置20とがケーブル30によって接続された状態となっている。時刻t11までの期間は、車両10が給電装置20の近傍に停車しており、充電の順番を待っている期間となっている。
【0041】
本実施形態に係る制御装置100は、車両10にケーブル30が接続される時刻t11までの期間において、内部温調処理を行う。先に述べたように、本実施形態の「内部温調処理」とは、蓄電池12に蓄えられている電力により温調機器14を動作させ、これにより蓄電池12の温度を予め適温としておく処理のことである。内部温調処理により、蓄電池12の温度は上昇し、時刻t11よりも前にT1を上回っている。このため、給電装置20と車両10との間がケーブル30で接続されると、その時点(時刻t11)から直ちに充電を開始することができる。
【0042】
尚、図4の例では、時刻t11までの期間において、内部温調処理のために蓄電量が次第に低下している(図4(C))。その結果、蓄電池12に充電すべき電力量は図3の例に比べると大きくなっており、充電の開始から終了までに要する期間は、図3の例(時刻t2から時刻t3までの期間)に比べると僅かに長くなっている。ただし、車両10にケーブル30が接続されてから充電が完了するまでの期間については、図3の例(時刻t1から時刻t3までの期間)に比べると短くなっている。
【0043】
このように、本実施形態に係る制御装置100は、ケーブル30の接続前において予め内部温調処理を実行しておくことで、ケーブル接続から充電完了までに要する時間を、従来に比べて短時間で完了させることが可能となっている。
【0044】
このような制御を実現するために、制御装置100によって実行される具体的な処理の流れについて、図5を参照しながら説明する。図5に示される一連の処理は、車両10にケーブル30が接続されていない期間における所定のタイミングで開始されるものである。
【0045】
最初のステップS01では、車両10と給電装置20との間がケーブル30で接続されるタイミング、である「接続タイミング」を取得する処理が、取得部120によって行われる。
【0046】
例えば、車両10が給電装置20の場所に向かって走行しているときには、取得部120は、車両10の現在地から給電装置20までの距離、及び車両10の走行速度に基づいて、到着時刻を予想することにより、接続タイミングを取得する。また、給電装置20において充電待ちとなっている車両の台数を通信により取得し、到着予想時刻に対し到着後の待ち時間を加算して得られる時刻を、接続タイミングとして取得してもよい。
【0047】
このように、取得部120は、外部から得られる情報に基づいて予測することにより、接続タイミングを取得する。「外部から得られる情報」とは、車両10の現在位置、給電装置20において充電待ちとなっている車両の台数等であるが、その他の情報であってもよい。
【0048】
このような態様に換えて、例えば、乗員が操作部16を操作し、接続タイミングとなる時刻を直接入力することとしてもよい。この場合、取得部120は、入力された時刻をそのまま接続タイミングとして取得する。また、取得部120が、外部のサーバーから入力される時刻を、そのまま接続タイミングとして取得してもよい。「外部のサーバー」とは、例えば、車両10の自動走行を外部から管理するサーバー等である。このように、取得部120が、(予測を行うのではなく)乗員又は外部からの入力により接続タイミングを取得することとしてもよい。
【0049】
ステップS01に続くステップS02では、内部温調処理の「開始タイミング」を決定する処理が、決定部130によって行われる。
【0050】
決定部130は、現在における蓄電池12の温度、外気温、温調機器14の性能、等に基づいて、内部温調処理に要する時間を算出する。その後、接続タイミングから当該時間だけ遡った時刻を、開始タイミングとして決定する。「内部温調処理に要する時間」とは、蓄電池12の温度を、所定の目標温度(例えば、図4(B)のT1)に到達させるために必要な時間である。
【0051】
尚、現在における蓄電池12の温度は、例えば蓄電池12に設けられた不図示の温度センサによって取得することができる。「温調機器14の性能」とは、温調機器14が、蓄電池12の温度を単位時間あたりおいてどの程度変化させることができるか、を示す指標であって、予め算出されたパラメータである。
【0052】
このように、決定部130は、接続タイミングから所定時間だけ遡ったタイミングとして、開始タイミングを決定する。「所定時間」とは、上記のように、内部温調処理に要する時間のことであり都度算出されるものであるが、予め設定された固定長さの時間であってもよい。
【0053】
このような態様に換えて、例えば、乗員が操作部16を操作し、開始タイミングとなる時刻を直接入力することとしてもよい。この場合、決定部130は、入力された時刻をそのまま開始タイミングとして決定する。また、決定部130が、外部のサーバーから入力される時刻を、そのまま開始タイミングとして決定してもよい。「外部のサーバー」とは、例えば、車両10の自動走行を外部から管理するサーバー等である。このように、決定部130が、接続タイミングを考慮することなく、乗員又は外部からの入力により開始タイミングを決定することとしてもよい。
【0054】
ステップS02に続くステップS03では、現在の時刻が開始タイミングとなったか否かが判定される。現在が未だ開始タイミングよりも前の時刻である場合には、ステップS03の処理が再度実行される。現在が開始タイミング又はそれ以降の時刻である場合には、ステップS04に移行する。
【0055】
ステップS04では、蓄電池12の温度が適温か否かが判定される。蓄電池12の温度が、充電に適した所定の温度範囲内である場合には、内部温調処理を行うことなく、図5に示される処理を終了する。蓄電池12の温度が、上記温度範囲の下限を下回っている場合や、上記温度範囲の上限を上回っている場合には、ステップS05に移行する。
【0056】
このように、温度調整部110は、蓄電池12の温度が、充電に適した所定の温度範囲を外れているときに、内部温調処理を行うように構成されている。これにより、不要な内部温調処理が実行されてしまうような事態を防止することができる。
【0057】
ステップS05では、蓄電池12の蓄電量が所定量以上であるか否かが判定される。「所定量」とは、内部温調処理に必要となる電力量として予め設定された下限値である。内部温調処理に必要となる電力量に、一定のマージンを加えたものが、上記の所定量として設定されてもよい。上記の所定量の算出に用いられる「内部温調処理に必要となる電力量」は、蓄電池12の温度等に基づいて都度算出される値であってもよいが、固定値であってもよい。蓄電量が所定量に満たない場合には、内部温調処理を行うことなく、図5に示される処理を終了する。蓄電量が所定量以上である場合には、ステップS06に移行する。
【0058】
このように、温度調整部110は、蓄電池12に蓄えられた電力量が所定量以上のときに、内部温調処理を行うように構成されている。これにより、内部温調処理の実行により蓄電池12の蓄電量が減少し過ぎて、車両10が走行し得ない状態となってしまうような事態を防止することができる。
【0059】
ステップS06では、車両10にケーブル30が接続されてから、充電が完了するまでに要する時間が、内部温調処理の実行により短縮されるか否かが判定される。つまり、内部温調処理を実行する意味があるか否かが判定される。当該判定は温度調整部110によって行われる。
【0060】
温度調整部110は、以下の式(1)に基づいて上記判定を行う。
(目標蓄電量-(現在の蓄電量-内部温調処理に要する電力量))/充電電力<(目標蓄電-現在の蓄電量)/充電電力+系統電力による温調時間・・・・(1)
【0061】
式(1)における「目標蓄電量」とは、蓄電池12の蓄電量についての目標値であって、例えば図3(C)のC1である。「内部温調処理に要する電力量」とは、内部温調処理に必要な電力量の予測値である。「充電電力」とは、蓄電池12に対し供給し得る電力の最大値、すなわち、単位時間あたりに充電可能な電力量の最大値のことである。「充電電力」は、蓄電池12の状態、車両10側における電力変換器15の性能、給電装置20側における電力変換器21の性能、ケーブル30の仕様等により決定されるものである。「系統電力による温調時間」とは、図3を参照しながら説明した比較例のように、ケーブル30から供給される系統電力によって温調機器14を動作させ、蓄電池12を加熱した場合において、蓄電池12の温度を目標温度に到達させるのに要する時間のことである。
【0062】
式(1)の左辺は、内部温調処理を行った場合において、ケーブル接続から充電完了までに要する時間を表している。式(1)の右辺は、内部温調処理を行わなかった場合において、ケーブル接続から充電完了までに要する時間を表している。式(1)の不等式が成り立つ場合、すなわち、内部温調処理を行った場合に要する時間の方が短い場合には、図5のステップS07に移行する。それ以外の場合には、内部温調処理を行うことなく、図5に示される処理を終了する。ステップS07では、図4を参照しながら説明したような内部温調処理が開始される。
【0063】
図6(A)の線L1は、内部温調処理を実行した場合における、蓄電量の時間変化の例を表している。同図の線L2は、内部温調処理を実行しなかった場合における、蓄電量の時間変化の例を表している。時刻t21は、車両10にケーブル30が接続された時刻である。時刻t22は、線L2のように内部温調処理を実行しなかった場合において、系統電力による蓄電池12の加熱が完了した時刻である。
【0064】
図6(A)の線L1のように、内部温調処理を実行する場合には、蓄電池12の蓄電量は、内部温調処理によって当初のC11からC10まで減少し、その後、充電開始に伴って時刻t21から増加していく。一方、図6(A)の線L2のように、内部温調処理を実行しない場合には、蓄電池12の蓄電量は、時刻t22まで当初の蓄電量C11が維持される。その後、充電開始に伴って時刻t22から増加していく。時刻t22以降における線L1と線L2とを比較すると明らかなように、図6(A)の例においては、内部温調処理を実行する場合(線L1)の方が蓄電量において上回っている。このため、内部温調処理を実行すると、実行しない場合に比べて、充電完了までの時間を短くすることができる。これは、式(1)における充電電力が比較的大きく、充電開始後のグラフの傾きが大きくなっていることによる。図6(A)に示されるのは、図5のステップS06において「Yes」と判定される場合の例である。
【0065】
図6(B)には、式(1)における充電電力が比較的小さく、充電開始後のグラフの傾きが小さい場合の例が、図6(A)と同様の方法で示されている。図6(B)の例においては、充電開始後のグラフの傾きが小さいことに伴って、時刻t22以降においては、内部温調処理を実行しない場合(線L2)の方が蓄電量において上回っている。このため、内部温調処理を実行すると、実行しない場合に比べて、充電完了までの時間は逆に長くなってしまう。図6(B)に示されるのは、図5のステップS06において「No」と判定される場合の例である。
【0066】
このように、温度調整部110は、内部温調処理に必要な電力量の予測値と、給電装置20から蓄電池12に供給され得る電力の予測値(上記の「充電電力」)と、の両方に基づいて、内部温調処理の実行可否を判断するように構成されている。これにより、内部温調処理の実行により、充電完了までの時間が長くなってしまうような事態を防止することができる。
【0067】
図5のステップS07において内部温調処理が開始されると、制御装置100は、内部温調処理と並行して、図7に示される処理を実行する。図7に示される一連の処理は、内部温調処理が実行されているときにおいて、所定の周期が経過する毎に繰り返し実行されるものである。
【0068】
最初のステップS11では、蓄電池12の蓄電量が所定の下限値以上であるか否かが判定される。「下限値」とは、車両10が走行し得ない状態とならないよう、最低限確保しておくべき蓄電量の値として、予め設定されたものである。蓄電量が下限値を下回っている場合には、後述のステップS14に移行する。それ以外の場合には、ステップS12に移行する。
【0069】
ステップS12では、蓄電池12の温度変化の速度が、所定速度以上であるか否かが判定される。「所定速度」とは、内部温調処理が正常に実行されているときの、蓄電池12で生じ得る温度変化の下限値として、予め設定されたものである。蓄電池12の温度変化の速度が所定速度未満である場合には、ステップS14に移行する。それ以外の場合には、ステップS13に移行する。
【0070】
ステップS13では、内部温調処理の開始時から、現時点までの経過時間が、所定の上限時間以内であるか否かが判定される。「上限時間」とは、内部温調処理に要する時間の最大長さとして、予め設定されたものである。経過時間が上限時間を超えた場合には、ステップS14に移行する。それ以外の場合には、図7に示される処理が一旦終了し、引き続き内部温調処理が継続される。
【0071】
ステップS11において蓄電量が下限値を下回った場合、ステップS12において蓄電池12の温度変化の速度が所定速度未満であった場合、及び、ステップS13において経過時間が上限時間を超えた場合には、いずれもステップS14に移行する。ステップS14では、内部温調処理を中断する処理が行われる。これにより、蓄電量が不足する状況で内部温調処理が継続されてしまったり、蓄電池12や温調機器14等において何らかの不具合が生じている状況で内部温調処理が継続されてしまったりすることを、防止することができる。
【0072】
図7の各ステップにおける判定は、いずれも温度調整部110によって行われる。このように、温度調整部110は、内部温調処理を行いながら、内部温調処理の継続可否を判断する処理を行っている。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る温度調整部110は、車両10と給電装置20とがケーブル30を介して互いに接続される前に、内部温調処理を開始できるように構成されている。
【0074】
温調機器14による蓄電池12の温度調整は、車両10と給電装置20とがケーブル30を介して互いに接続された後に行われることとしてもよい。この場合、ケーブル30に接続された車両10では、ケーブル30から供給される電力を用いることなく温調機器14を動作させてもよいし、ケーブル30から供給される電力を用いて温調機器14を動作させることとしてもよい。また、ケーブル30から供給される電力と、蓄電池12から供給される電量と、の両方を用いて温調機器14を動作させることとしてもよい。
【0075】
給電装置20に複数台の車両10が接続されている状態においては、各車両10における温調機器14の動作(つまり、蓄電池12の温度調整)や、蓄電池12への充電が、いずれも、給電装置20の制御装置200によって制御されることとしてもよい。この場合、各車両10の制御装置100は、制御装置200から送信される制御信号に基づいて、蓄電池12の温度を調整する処理等を行うこととなる。つまり、以上に説明した例とは異なり、各車両10が蓄電池12の温度を調整し始めるタイミングや、充電を開始するタイミング等は、制御装置100ではなく制御装置200によって決定される。
【0076】
このような処理を実現するための制御装置200の構成について、図8を参照しながら説明する。制御装置200は、CPU、ROM、RAM等を有するコンピュータシステムとして構成されており、先に述べたように給電装置20の内部に設けられている。尚、制御装置200は、本実施形態のように単一の装置として構成されていてもよいが、互いに双方向の通信を行う複数の装置として構成されていてもよい。また、以下に説明する制御装置200の機能の一部又は全部が、給電装置20とは異なる位置に設置された装置によって実現される構成であってもよい。
【0077】
制御装置200は、その機能を表すブロック要素として、電力調整部210と、タイミング調整部220と、を備えている。
【0078】
電力調整部210は、給電装置20に接続された各車両10に供給される電力を調整する処理を行う部分である。「各車両10に供給される電力」には、当該車両10の充電に用いられる電力と、当該車両10の温調機器14の動作に用いられる電力と、の両方が含まれる。例えば、電力調整部210は、電力変換器21の動作を制御することで、各ケーブル30から車両10へと出力される電力を個別に調整する。このような態様に換えて、もしくはこのような態様に加えて、電力調整部210が、各車両10の電力変換器15の動作を、制御装置100との通信を介して制御することで、各車両10に供給される電力を個別に調整することとしてもよい。
【0079】
尚、制御装置200と制御装置100との間の通信は、ケーブル30を介した有線通信であってもよく、無線通信であってもよい。
【0080】
タイミング調整部220は、給電装置20に接続された各車両10のそれぞれについて、充電を行わせるタイミング、及び、温調機器14を動作させるタイミング、のそれぞれを調整する処理を行う部分である。タイミング調整部220は、それぞれの車両10の制御装置100に制御信号を送信することで、各車両10の充電開始タイミング、及び、温調機器14の動作タイミング、のそれぞれを個別に調整する。
【0081】
本実施形態では、給電装置20から各車両10の蓄電池12に供給される電圧を、車両10毎に個別に調整することが可能となっている。このような調整は、各車両10に設けられた電力変換器15によって行われる。また、各ケーブル30に対応して電力変換器21が個別に設けられており、それぞれの電力変換器21によって、上記調整が行われることとしてもよい。この場合、各車両10には電力変換器15が設けられていなくてもよい。
【0082】
制御装置200は、接続された車両10のそれぞれについて、充電の優先度を設定する。制御装置200のタイミング調整部220は、優先度の高い車両10から順に充電を開始させる。優先度は、例えば、車両10の予約状況等に基づいて設定される。例えば、車両10が使用される予定の時刻までの時間が短いほど、当該車両10の優先度を高く設定することとしてもよい。また、蓄電池12の蓄電量が低い車両10ほど優先度を高く設定してもよく、逆に、蓄電池12の蓄電量が高い車両10ほど優先度を高く設定してもよい。その他、車両10を使用したいユーザーが、予約時において希望の優先度を手動で入力したり、サービスを提供する事業者が優先度を手動で入力したりすることとしてもよい。
【0083】
制御装置200によって行われる、優先度に応じた充電制御の具体例について、図9を参照しながら説明する。図9の最上段には、給電装置20から出力される電力の時間変化の例が示されている。その下方側には、優先度において互いに異なる3台の車両10のそれぞれについて、蓄電池12に供給される充電電力の時間変化の例(上段)と、蓄電池12の温度の時間変化の例(下段)と、が示されている。
【0084】
尚、図9における「車両1」とは、優先度が「高」と設定された車両10である。「車両2」とは、優先度が「中」と設定された車両10である。「車両3」とは、優先度が「低」と設定された車両10である。それぞれの車両10のことを、以下では「車両1」、「車両2」、「車両3」のようにも表記する。
【0085】
各車両10について、蓄電池12の温度変化のグラフに示される「T1」は、図4等のT1と同じ温度であり、蓄電池12がその充放電性能を十分に発揮し得る温度範囲、として予め設定された範囲の下限を示す温度である。蓄電池12の温度変化のグラフに示される「T0」は、T1よりも低い温度であって、蓄電池12の充電を実行可能な温度範囲の下限を示す温度である。蓄電池12の温度がT0を下回っているときには、蓄電池12への充電を行うことはできない。蓄電池12の温度がT0からT1までの範囲内であるときには、蓄電池12に供給される電力の大きさを制限しながら、蓄電池12への充電を行うことができる。蓄電池12の温度がT1以上であるときには、電力の制限なく蓄電池12への充電を行うことができる。
【0086】
図9の例において、制御装置200は、最も優先度の高い車両1への充電を最初に行おうとする。ただし、車両1の蓄電池12は、当初の温度がT0よりも低くなっているので、直ちに充電を開始することができない。このため、制御装置200のタイミング調整部220は、車両1の制御装置100に対し制御信号を送信することで、温調機器14を動作させ、車両1において蓄電池12の加熱を開始させる。車両1では、蓄電池12の温度が次第に上昇して行く。当該蓄電池12の温度は、時刻t31においてT0に到達し、その後の時刻t32においてT1に到達している。
【0087】
尚、車両1の蓄電池12の加熱は、この例では、給電装置20から供給される系統電力を用いて行われる。車両1の蓄電池12の加熱は、蓄電池12に蓄えられている電力を用いて行われてもよい。すなわち、内部温調処理によって蓄電池12の加熱が行われてもよい。
【0088】
時刻t31までの期間においては、車両1では蓄電池12への充電を行うことができない。当該期間において、制御装置200のタイミング調整部220は、車両1よりも優先度の低い他の車両10の中から、蓄電池12の温度がT1以上となっている車両10を検索する。図9の例では、車両3の蓄電池12の温度が、当初からT1以上となっている。
【0089】
この場合、制御装置200は、車両1への充電が可能となるまでの間、車両3に対する充電を先に開始する。具体的には、制御装置200の電力調整部210が、車両3に向けた電力の供給を開始する。
【0090】
このように、優先度の高い車両1(第1車両)の蓄電池12の温度が、充電に適した所定の温度範囲を外れているときには、タイミング調整部220が車両1の温調機器14を動作させると共に、電力調整部210が、優先度の低い車両3(第2車両)への電力の供給を開始する。また、タイミング調整部220は、車両1の温調機器14が動作している間に、車両3への充電を開始させる。この場合の車両3は、車両1よりも優先度の低い複数の車両10のうち、蓄電池12の温度が上記温度範囲内となっている車両10として検索されたものである。このような車両10が複数台存在する場合には、その中で最も蓄電池12の温度が高くなっている車両10を充電対象としたり、その中で最も優先度が高くなっている車両10を充電対象としたりすればよい。
【0091】
時刻t31以降は、車両1の蓄電池12の温度がT0を超えるので、車両1では、蓄電池12への充電を制限しながら行うことができる。制御装置200は、車両1における充電を開始させる。車両1では、蓄電池12の温度上昇に伴って、蓄電池12に供給される電力を次第に増加させていく。これに合わせて、車両3では、蓄電池12に供給される電力を次第に減少させていく。制御装置200の電力調整部210は、車両1の蓄電池12に供給される電力と、車両3の蓄電池12に供給される電力と、の和が給電装置20の出力上限を超えないように、それぞれの車両10の制御装置100に対し制御信号を送信し、充電電力を調整させる。
【0092】
時刻t32において、車両1の蓄電池12の温度がT1に到達した後は、車両1では充電を通常通り(つまり、充電電力についての制限無く)行う。また、車両3での充電は、時刻t32の時点で中断される。車両3の蓄電池12の温度は、時刻t32までの期間においてはジュール熱によって次第に上昇し、時刻t32以降は概ね一定となる。
【0093】
図9の例では、車両1における充電が時刻t35において終了している。尚、時刻t34から時刻t35までの期間においては、車両1における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両1の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0094】
車両2の蓄電池12への充電は、車両1の蓄電池12への充電に続いて行われる。図9の例では、車両2の蓄電池12は、車両1の蓄電池12と同様に、当初の温度がT0よりも低くなっている。このため、制御装置200のタイミング調整部220は、車両2の蓄電池12への充電に先立ち、当該蓄電池12を加熱し適温としておく処理を、車両2の制御装置100に予め行わせる。当該加熱は、この例では、給電装置20から車両2に供給される系統電力を用いて行われる。車両2の蓄電池12の加熱は、蓄電池12に蓄えられている電力を用いて行われてもよい。すなわち、内部温調処理によって蓄電池12の加熱が行われてもよい。
【0095】
車両2の蓄電池12の加熱は、時刻t32よりも後であり、且つ時刻t34よりも前の時刻t33において開始される。時刻t33は、車両1において充電が行われている期間内の時刻である。時刻t33以降における車両1の充電電力は、車両2に供給される加熱用の電力分だけ、それまでよりも小さくなっている。車両2の蓄電池12の温度は、時刻t33以降、加熱されることにより次第に高くなっていく。当該温度は、時刻t34よりも前にT0に到達し、時刻t35においてT1に到達している。車両2の蓄電池12を加熱させ始める時刻t33は、車両1の充電が完了する時刻t35までに、車両2の蓄電池12の温度をT1に到達させ得るようなタイミングとして設定されている。
【0096】
このように、制御装置200の電力調整部210は、優先度の高い車両1(第1車両)への充電が行われているときに、優先度の低い車両2(第2車両)にも電力を供給する。タイミング調整部220は、車両1への充電が行われているときに、車両2の温調機器14を動作させる。車両2の温調機器14を動作させるタイミング(時刻t33)で、電力調整部210は、車両1に供給される電力を減少させる。この減少分の電力は、車両2に供給される電力に対応するものである。
【0097】
車両1における充電電力が低下し始める時刻t34から、時刻t35までの期間においては、車両2の蓄電池12の温度がT1よりも低くなっている。このため、車両1では、当該期間において蓄電池12への充電を制限しながら行う。
【0098】
車両2では、蓄電池12の温度上昇に伴って、蓄電池12に供給される電力を次第に増加させていく。制御装置200の電力調整部210は、車両1の蓄電池12に供給される電力と、車両2の蓄電池12に供給される電力と、の和がが給電装置20の出力上限を超えないように、それぞれの車両10の制御装置100に対し制御信号を送信し、充電電力を調整させる。
【0099】
時刻t35において、車両2の蓄電池12の温度がT1に到達した後は、車両2では充電を通常通り(つまり、充電電力についての制限無く)行う。
【0100】
図9の例では、車両2における充電が時刻t39において終了している。尚、時刻t37から時刻t39までの期間においては、車両2における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両2の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0101】
車両3の蓄電池12への充電は、車両2の蓄電池12への充電に続いて再開される。先に述べたように、図9の例では、車両3の蓄電池12の温度は当初から適温となっているので、蓄電池12を予め加熱する処理は不要である。
【0102】
時刻t37以降において、車両3では、蓄電池12に供給される電力を次第に増加させていく。制御装置200の電力調整部210は、車両2の蓄電池12に供給される電力と、車両3の蓄電池12に供給される電力と、の和が給電装置20の出力上限を超えないように、それぞれの車両10の制御装置100に対し制御信号を送信し、充電電力を調整させる。
【0103】
時刻t39において、車両2における充電が完了した後は、車両3では充電を通常通り(つまり、充電電力についての制限無く)行う。図9の例では、車両3における充電が時刻t40において終了している。尚、車両1や車両2と同様に、車両3においても、蓄電池12の蓄電量が目標値に近づくと、車両3の蓄電池12に供給される電力は次第に小さくされている。車両3の蓄電池12の温度は、時刻t37から時刻40までの期間において、ジュール熱によって次第に上昇している。
【0104】
尚、図9に示されるタイムチャートに沿った制御は、任意のタイミングで開始することができる。例えば、複数台の車両10がケーブル30で接続された後、オペレータの手動操作により制御を開始してもよく、所定時刻になったタイミングで自動的に制御を開始してもよい。例えば、充電の料金を時間帯ごとに変化させる場合には、料金が変化する時刻において制御を開始することとしてもよい。また、制御の実行中において新たな車両10が追加で接続された場合には、接続されたタイミングで再度優先度を設定しなおし、新たな優先度に沿って上記と同様の制御を改めて実行することとしてもよい。後に説明する他の実施形態についても同様である。
【0105】
図9の各グラフに示される一点鎖線は、比較例に係る制御が実行された場合の、各パラメータの時間変化を表している。当該比較例においては、予め設定された優先度に忠実に従って、各車両10への充電が行われている。
【0106】
具体的には、この比較例における車両2の蓄電池12の加熱は、車両1への充電が完了した時刻t35から開始されている。このため、車両2への充電は、時刻t35よりも後の時刻t36から開始され、その後の時刻t41に完了している。時刻t36は、車両2の蓄電池12の温度がT0に到達した時刻である。車両2の蓄電池12の温度は、その後の時刻t38においてT1に到達している。尚、時刻t41の直前の期間においては、車両2における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両2の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0107】
この比較例では、最も優先度の低い車両3への充電が、車両2への充電が完了した時刻t41から開始されている。車両3への充電は、時刻t41よりも後の時刻t42に完了している。尚、時刻t42の直前の期間においては、車両3における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両3の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0108】
このように、この比較例では、必要に応じた蓄電池12の加熱と、それに続く蓄電池12への充電が、予め設定された優先度に忠実に従って、各車両10で順に行われる。このため、全ての車両10への充電が完了する時刻t42は、本実施形態において充電が完了する時刻t40よりも遅い時刻となっている。
【0109】
換言すれば、本実施形態に係る制御装置200は、優先度に従った充電を行うことを原則としながらも、優先度の低い車両10において予め蓄電池12の加熱を行わせておくこと等により、各車両10への充電を効率よく行い、充電完了までに要する時間を比較例よりも短くすることが可能となっている。
【0110】
本実施形態では、例えば時刻t31から時刻t32までの期間において、車両1と車両3の両方に対し同時に充電が行われている。このような同時充電が可能なのは、給電装置20から各車両10の蓄電池12に供給される電圧を、車両10毎に個別に調整することができるからである。車両10に電力変換器15が設けられておらず、給電装置20側において電力変換器21が一つしか設けられていない場合には、複数の車両10に同時に充電を行うことができない。
【0111】
図10を参照しながら、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記のように、複数の車両10に同時に充電を行うことができない構成となっている。図10には、本実施形態に係る制御が行われた場合の、各パラメータの時間変化の例が、図9と同様の方法により示されている。
【0112】
本実施形態においても、制御装置200は、最も優先度の高い車両1への充電を最初に行おうとする。ただし、車両1の蓄電池12は、当初の温度がT0よりも低くなっているので、直ちに充電を開始することができない。このため、制御装置200のタイミング調整部220は、車両1の制御装置100に対し制御信号を送信することで、車両1において蓄電池12の加熱を開始させる。車両1では、蓄電池12の温度が次第に上昇して行く。当該蓄電池12の温度は、時刻t51においてT0に到達し、その後の時刻t52においてT1に到達している。
【0113】
尚、車両1の蓄電池12の加熱は、この例では、給電装置20から供給される系統電力を用いて行われる。車両1の蓄電池12の加熱は、蓄電池12に蓄えられている電力を用いて行われてもよい。すなわち、内部温調処理によって蓄電池12の加熱が行われてもよい。
【0114】
時刻t51までの期間においては、車両1では蓄電池12への充電を行うことができない。当該期間において、制御装置200のタイミング調整部220は、車両1よりも優先度の低い他の車両10の中から、蓄電池12の温度がT1以上となっている車両10を検索する。図9の例と同様に、この例でも、車両3の蓄電池12の温度が、当初からT1以上となっている。制御装置200は、車両1への充電が可能となるまでの間、車両3に対する充電を先に開始する。具体的には、制御装置200の電力調整部210が、車両3に向けた電力の供給を開始する。
【0115】
この例では、車両1への充電が可能となるまでの間、車両3に対する充電を行うとともに、制御装置200は、車両2の蓄電池12を加熱させる処理をも行う。車両2の蓄電池12の加熱も、給電装置20から供給される系統電力を用いて行われるが、蓄電池12に蓄えられている電力を用いて行われてもよい。すなわち、内部温調処理によって蓄電池12の加熱が行われてもよい。
【0116】
時刻t51までの期間においては、給電装置20から車両2に対し蓄電池12の加熱用の電力が供給されるとともに、車両3に対し充電電力が供給される。当該期間において車両3に供給される充電電力の大きさは、出力可能な最大電力から、車両2に供給される電力を差し引いた値となる。
【0117】
時刻t51以降は、車両1の蓄電池12の温度がT0を超えるので、車両1では、蓄電池12への充電を制限しながら行うことができる。制御装置200のタイミング調整部220は、車両3における充電を停止させるとともに、車両1における充電を開始させる。車両1では、蓄電池12の温度上昇に伴って、蓄電池12に供給される電力を次第に増加させていく。車両3の蓄電池12の温度は、時刻t51までの期間においてはジュール熱によって次第に上昇し、時刻t51以降は概ね一定となる。
【0118】
時刻t52において、車両1の蓄電池12の温度がT1に到達した後は、車両1では充電を通常通り(つまり、充電電力についての制限無く)行う。車両2に対する蓄電池12加熱用の電力の供給は、時刻t52において一旦中断される。車両2の蓄電池12の温度は、時刻t52までの期間においては次第に上昇し、時刻t52以降は概ね一定となる。
【0119】
本実施形態では、車両1における充電が時刻t54において終了している。尚、時刻t53から時刻t54までの期間においては、車両1における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両1の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。時刻t53以降は、車両2に対する蓄電池12加熱用の電力の供給が再開される。このため、車両2の蓄電池12の温度は再び上昇し始める。車両1における充電が完了する時刻t54においては、車両2の蓄電池12の温度はT1もしくはそれ以上となっている。
【0120】
本実施形態でも、車両2の蓄電池12への充電は、車両1の蓄電池12への充電に続いて行われる。上記のように、車両1における充電が完了する時刻t54までに、車両2の蓄電池12の温度は充電に適した温度まで上昇している。このため、時刻t54においては、車両2では充電を通常通り(つまり、充電電力についての制限無く)開始する。
【0121】
本実施形態では、車両2における充電が時刻t57において終了している。尚、時刻t57の直前の期間においては、車両2における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両2の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0122】
車両3の蓄電池12への充電は、車両2の蓄電池12への充電に続いて再開される。先に述べたように、車両3の蓄電池12の温度は当初から適温となっているので、蓄電池12を予め加熱する処理は不要である。
【0123】
車両3では、時刻t57から充電を通常通り(つまり、充電電力についての制限無く)行う。本実施形態では、車両3における充電が時刻t58において終了している。尚、車両1や車両2と同様に、車両3においても、蓄電池12の蓄電量が目標値に近づくと、車両3の蓄電池12に供給される電力は次第に小さくされている。車両3の蓄電池12の温度は、時刻t57から時刻58までの期間において、ジュール熱によって次第に上昇している。
【0124】
図10においても、比較例に係る制御が実行された場合の各パラメータの時間変化が、一点鎖線で表されている。当該比較例においては、予め設定された優先度に忠実に従って、各車両10への充電が行われている。
【0125】
具体的には、この比較例における車両2の蓄電池12の加熱は、車両1への充電が完了した時刻t54から開始されている。このため、車両2への充電は、時刻t54よりも後の時刻t55から開始され、その後の時刻t59に完了している。時刻t55は、車両2の蓄電池12の温度がT0に到達した時刻である。車両2の蓄電池12の温度は、その後の時刻t56においてT1に到達している。尚、時刻t59の直前の期間においては、車両2における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両2の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0126】
この比較例では、最も優先度の低い車両3への充電が、車両2への充電が完了した時刻t59から開始されている。車両3への充電は、時刻t59よりも後の時刻t60に完了している。尚、時刻t60の直前の期間においては、車両3における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両3の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0127】
このように、この比較例では、必要に応じた蓄電池12の加熱と、それに続く蓄電池12への充電が、予め設定された優先度に忠実に従って、各車両10で順に行われる。このため、全ての車両10への充電が完了する時刻t60は、本実施形態において充電が完了する時刻t58よりも遅い時刻となっている。
【0128】
これに対し、本実施形態に係る制御装置200は、優先度に従った充電を行うことを原則としながらも、優先度の低い車両10において予め蓄電池12の加熱を行わせておくこと等により、各車両10への充電を効率よく行い、充電完了までに要する時間を比較例よりも短くすることが可能となっている。優先度が最も高い車両1の蓄電池12が適温となるまでの間、制御装置200は、優先度の低い車両2における蓄電池12の加熱と、優先度の更に低い車両3における充電と、を同時に行わせる。このとき、車両2や車両3に供給される電力は、優先度が最も高い車両1の充電待機中(~t51)もしくは充電中(t51~t52)の期間における余剰の電力、ということができる。このように、優先度の高い車両10への充電に用いられなかった余剰の電力を、優先度の低い車両10において利用することで、全ての車両10への充電を短時間のうちに完了させることが可能となっている。
【0129】
図11を参照しながら、第3実施形態について説明する。この第3実施形態でも、上記の第2実施形態(図10)と同様に、複数の車両10に同時に充電を行うことができない構成となっている。図11には、本実施形態に係る制御が行われた場合の、各パラメータの時間変化の例が、図9図10と同様の方法により示されている。
【0130】
本実施形態においても、制御装置200は、最も優先度の高い車両1への充電を最初に行おうとする。ただし、車両1の蓄電池12は、当初の温度がT0よりも低くなっているので、直ちに充電を開始することができない。このため、制御装置200のタイミング調整部220は、車両1の制御装置100に対し制御信号を送信することで、車両1において蓄電池12の加熱を開始させる。車両1では、蓄電池12の温度が次第に上昇して行く。当該蓄電池12の温度は、時刻t71においてT0に到達し、その後の時刻t72においてT1に到達している。
【0131】
尚、車両1の蓄電池12の加熱は、この例では、給電装置20から供給される系統電力を用いて行われる。車両1の蓄電池12の加熱は、蓄電池12に蓄えられている電力を用いて行われてもよい。すなわち、内部温調処理によって蓄電池12の加熱が行われてもよい。
【0132】
本実施形態では、車両1の蓄電池12の温度がT1に到達するまでの間は、車両1への充電は行われない。車両1への充電は時刻t72から開始される。時刻t72までの期間において、制御装置200のタイミング調整部220は、車両1よりも優先度の低い他の車両10の中から、蓄電池12の温度がT1以上となっている車両10を検索する。図9図10の例と同様に、この例でも、車両3の蓄電池12の温度が、当初からT1以上となっている。制御装置200は、車両1の蓄電池12の温度がT1以上となるまでの間、車両3に対する充電を先に開始する。具体的には、制御装置200の電力調整部210が、車両3に向けた電力の供給を開始する。
【0133】
時刻t72において、車両1の蓄電池12の温度がT1に到達した後は、車両1では充電を通常通り(つまり、充電電力についての制限無く)開始する。車両3に対する充電電力の供給は、時刻t72において一旦中断される。車両3の蓄電池12の温度は、時刻t72までの期間においてはジュール熱によって次第に上昇し、時刻t72以降は概ね一定となる。
【0134】
本実施形態では、車両1における充電が時刻t76において終了している。尚、時刻t76の直前の期間においては、車両1における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両1の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0135】
車両2の蓄電池12への充電は、車両1の蓄電池12への充電に続いて行われる。本実施形態では、車両2の蓄電池12は、車両1の蓄電池12と同様に、当初の温度がT0よりも低くなっている。このため、制御装置200のタイミング調整部220は、車両2の蓄電池12への充電に先立ち、当該蓄電池12を加熱し適温としておく処理を、車両2の制御装置100に予め行わせる。当該加熱は、この例では、給電装置20から車両2に供給される系統電力を用いて行われる。車両2の蓄電池12の加熱は、蓄電池12に蓄えられている電力を用いて行われてもよい。すなわち、内部温調処理によって蓄電池12の加熱が行われてもよい。
【0136】
車両2の蓄電池12の加熱は、時刻t72よりも後であり、且つ時刻t76よりも前の時刻t73において開始される。時刻t73は、車両1において充電が行われている期間内の時刻である。時刻t73以降における車両1の充電電力は、車両2に供給される加熱用の電力分だけ、それまでよりも小さくなっている。車両2の蓄電池12の温度は、時刻t73以降、加熱されることにより次第に高くなっていく。当該温度は、時刻t76においてT1に到達している。車両2の蓄電池12を加熱させ始める時刻t73は、車両1の充電が完了する時刻t76までに、車両2の蓄電池12の温度をT1に到達させ得るようなタイミングとして設定されている。
【0137】
時刻t76において、車両2では充電を通常通り(つまり、充電電力についての制限無く)開始する。図11の例では、車両2における充電が時刻t79において終了している。尚、時刻t79の直前の期間においては、車両2における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両2の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0138】
車両3の蓄電池12への充電は、車両2の蓄電池12への充電に続いて再開される。先に述べたように、車両3の蓄電池12の温度は当初から適温となっているので、蓄電池12を予め加熱する処理は不要である。
【0139】
車両3では、時刻t79から充電を通常通り(つまり、充電電力についての制限無く)再開する。図11の例では、車両3における充電が時刻t80において終了している。尚、車両1や車両2と同様に、車両3においても、蓄電池12の蓄電量が目標値に近づくと、車両3の蓄電池12に供給される電力は次第に小さくされている。車両3の蓄電池12の温度は、時刻t79から時刻80までの期間において、ジュール熱によって次第に上昇している。
【0140】
本実施形態のように、優先度が最も高い車両1への充電が可能となるまでの期間(~t72)に、車両3への充電を最優先で行うこととしてもよい。
【0141】
図11においても、比較例に係る制御が実行された場合の各パラメータの時間変化が、一点鎖線で表されている。当該比較例においては、予め設定された優先度に忠実に従って、各車両10への充電が行われている。
【0142】
具体的には、この比較例における車両1への充電は、車両1の蓄電池12の温度がT0に到達した時刻t71から開始されている。車両1では、蓄電池12の温度上昇に伴って、蓄電池12に供給される電力を次第に増加させていく。時刻t72において、車両1の蓄電池12の温度がT1に到達した後は、車両1では充電を通常通り(つまり、充電電力についての制限無く)行う。
【0143】
この比較例における車両2の蓄電池12の加熱は、車両1への充電が完了した時刻t75から開始されている。このため、車両2への充電は、時刻t75よりも後の時刻t77から開始され、その後の時刻t81に完了している。時刻t77は、車両2の蓄電池12の温度がT0に到達した時刻である。車両2の蓄電池12の温度は、その後の時刻t78においてT1に到達している。尚、時刻t81の直前の期間においては、車両2における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両2の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0144】
この比較例では、最も優先度の低い車両3への充電が、車両2への充電が完了した時刻t81から開始されている。車両3への充電は、時刻t81よりも後の時刻t82に完了している。尚、時刻t82の直前の期間においては、車両3における蓄電量が目標値に近づいたことに伴い、車両3の蓄電池12に供給される電力が次第に小さくされている。
【0145】
このように、この比較例では、必要に応じた蓄電池12の加熱と、それに続く蓄電池12への充電が、予め設定された優先度に忠実に従って、各車両10で順に行われる。このため、全ての車両10への充電が完了する時刻t82は、本実施形態において充電が完了する時刻t80よりも遅い時刻となっている。
【0146】
これに対し、本実施形態に係る制御装置200は、優先度に従った充電を行うことを原則としながらも、優先度が低く且つ蓄電池12が適温となっている車両10において先に充電を行わせること等により、充電完了までに要する時間を比較例よりも短くすることが可能となっている。優先度が最も高い車両1の蓄電池12が適温となるまでの間、制御装置200は、優先度の低い車両3における充電を最優先に行う。このように、優先度の高い車両10への充電に用いられなかった余剰の電力を、優先度の低い車両10において利用することで、全ての車両10への充電を短時間のうちに完了させることが可能となっている。
【0147】
以上に説明した各実施形態では、給電装置20の最大出力が、各車両10における最大の充電電力よりも小さい場合の例を示してある。給電装置20の最大出力が、各車両10における最大の充電電力よりも大きい場合には、給電装置20の最大出力を超えない範囲で、複数の車両10に対し同時に充電を行ったり、温調機器14を動作させ蓄電池12の加熱を行ったりすることとすればよい。つまり、同時に充電される車両10の数や、同時に温調機器14を動作させる車両10の数は、給電装置20から出力される電力が最大出力を超えない限り、以上に説明した各実施形態の例とは異なっていてもよい。その際、充電の対象となる車両10や、温調機器14を動作させる車両10は、優先度の高い順に選定することとすればよい。
【0148】
以上においては、温調機器14により蓄電池12を加熱する場合の例について説明したが、高温となった蓄電池12を温調機器14により冷却する場合でも、以上と同様の考え方を適用した制御を行うことができる。
【0149】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0150】
本開示に記載の制御装置及び制御方法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置及び制御方法は、1つ又は複数の専用ハードウェア論理回路を含むプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置及び制御方法は、1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ又は複数のハードウェア論理回路を含むプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。専用ハードウェア論理回路及びハードウェア論理回路は、複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0151】
10:車両
12:蓄電池
14:温調機器
20:給電装置
30:ケーブル
200:制御装置
210:電力調整部
220:タイミング調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11