(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】プトレシン生産性乳酸菌
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20250422BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20250422BHJP
A23L 2/84 20060101ALI20250422BHJP
C12P 13/00 20060101ALI20250422BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20250422BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A23L2/84
C12P13/00
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2021084514
(22)【出願日】2021-05-19
【審査請求日】2024-03-12
【微生物の受託番号】NPMD NITE P-03449
【微生物の受託番号】NPMD NITE P-03450
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【氏名又は名称】太田 千香子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 祐子
(72)【発明者】
【氏名】守谷 直子
(72)【発明者】
【氏名】木元 広実
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/214843(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/146916(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/091988(WO,A1)
【文献】特開2016-73260(JP,A)
【文献】特開2001-245660(JP,A)
【文献】日本醸造協会誌,2021年02月16日,Vol.116, No.2,p.89-93
【文献】International Journal of Food Microbiology,2001年,Vol.68,p.211-216
【文献】J. Microbiol. Biotechnol.,2015年,Vol.25, No.4,p.464-468
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 7/08
C12P 1/00 - 41/00
A23L 31/00 - 33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レビラクトバチルス・パウシボランスN36株(受託番号:NITE P-03449)又はN50株(受託番号:NITE P-03450)である、乳酸菌。
【請求項2】
請求項1記載の乳酸菌を含有する、飲食品。
【請求項3】
請求項1記載の乳酸菌を培養するスキムミルク培地中に、グルコースを添加することを特徴とする、プトレシン生産量の増加方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プトレシン生産性乳酸菌、当該乳酸菌を含有する飲食品及び、プトレシン生産量の増加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プトレシンは、生体においてアミノ酸であるオルニチンから生成されるポリアミンの1種であり、化学名「1,4-ジアミノブタン」の物質である。その機能として、核酸との相互作用による核酸の安定化と構造変化、核酸合成系の促進作用、タンパク質合成系の活性化、ヒストンのアセチル化、非ヒストンクロマチン蛋白質のリン酸化の促進、細胞膜の安定化及び物質の透過性の強化、及び二価金属に影響を受ける酵素の活性化などの生理的作用、並びに油脂に対する抗酸化作用などが知られている。
ヒトの体細胞内や腸内細菌においてもプトレシンは生成されるものの、その生成量は加齢とともに減少することが報告されている。
こうした状況から、近年、プトレシンは健康食品として利用されつつある。
プトレシンは、化学合成により合成することも可能であるが、猛毒性のシアン化水素を使用することから、環境負荷のみならず安全性の面でも問題があった。
この他のプトレシンの製造方法として、ポリアミンを多く含む魚類の白子、乳素材、酵母、または植物等からプトレシンを抽出し精製する方法や、微生物を用いてプトレシンを生産する方法(例えば、特許文献1、2等)も報告されているものの、その生産量やヒトへの安全性などの観点から、新たなプトレシンの製造方法が望まれている。
【0003】
一方、乳酸菌はヨーグルトやチーズなどの乳製品や、漬物、味噌、醤油などの発酵食品の製造に用いられており、近年はプロバイオティクスとして消化管内の細菌叢の改善による整腸効果、免疫力向上効果、抗腫瘍効果などの種々の健康保持効果を有することから、人類にとって健康に深く関わる有用な微生物資源として知られている。しかしながら、食品として摂取された乳酸菌は、胃酸や胆汁酸などの様々なストレスに曝されることで、腸内での生存率や乳酸菌が本来有する有用な効果が低減してしまうといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-191808号公報
【文献】特開2010-057396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、プトレシンの生産能が高く、かつ、プロバイオティクスとして活用可能な新規な乳酸菌の提供と、当該乳酸菌を用いたプトレシン生産量の増加方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、レビラクトバチルス・パウシボランスに属する特定の菌株が、プトレシンを生産する能力を有し、かつ、胆汁酸に対する耐性を有することも見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0007】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.レビラクトバチルス・パウシボランスN36株(受託番号:NITE P-03449)又はN50株(受託番号:NITE P-03450)である、乳酸菌。
2.1.記載の乳酸菌を含有する、飲食品。
3.1.記載の乳酸菌を培養するスキムミルク培地中に、グルコースを添加することを特徴とする、プトレシン生産量の増加方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレビラクトバチルスに属する特定の乳酸菌は、プトレシンを生産する能力を有し、かつ、胆汁酸に対する耐性を有するため、プロバイオティクスとして活用可能である。
本発明の乳酸菌は、スキムミルクなどの乳中で培養し、生産したプトレシンと共に安全性の高い飲食品として利用することもでき非常に有用である。
さらに、当該乳酸菌をスキムミルク培地中で培養する際に、グルコースを添加することによりプトレシン生産量を増加させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の乳酸菌N36株の16S rDNA塩基配列を示す図である。
【
図2】本発明の乳酸菌N50株の16S rDNA塩基配列を示す図である。
【
図3】実施例2のプトレシン生産確認試験における、高速液体クロマトグラフィーによる分析結果を示すチャートである。
【
図4】実施例3のプロバイオティクス適性試験における、GG株、本発明の乳酸菌N36株、N50株の胆汁酸耐性(%)を示すグラフである。
【
図5】実施例4のスキムミルク培養中でのプトレシン生産量の確認試験1における、本発明の乳酸菌N36株、N50株の無糖時と加糖時のプトレシン生産量を示すグラフである。
【
図6】実施例5のスキムミルク培養中でのプトレシン生産量の確認試験2における、本発明の乳酸菌N36株、N50株とスターター乳酸菌との共培養時のプトレシン生産量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、レビラクトバチルス・パウシボランスN36株(受託番号:NITE P-03449)又はN50株(受託番号:NITE P-03450)の乳酸菌に関する。
本発明におけるレビラクトバチルス属は、2020年、それまでにラクトバチルス属に分類されていた全ての菌種(261菌種、2019年8月19日時点)の基準株のゲノムデータを用いゲノムレベルで属分類の再評価を行った結果、合計25属に再分類された内の1つの属である。レビラクトバチルス属には、再分類を実施した全ての菌種に対して約9.2%(24菌種)が含まれていた。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
<レビラクトバチルス・パウシボランスN36株、N50株>
レビラクトバチルス・パウシボランス(Levilactobacillus paucivorans)N36株、N50株は、「ぬか漬け」より分離された乳酸菌であり、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門内 畜産物研究領域 畜産物機能ユニットが有する乳酸菌ライブラリーに保存されていた菌株である。16S rDNA塩基配列による相同性検索の結果により、レビラクトバチルス・パウシボランス(Levilactobacillus paucivorans)と同定された。米国において一般的に安全と認められる食品として「GRAS(Generally Recognized As Safe)」認証を取得している乳酸菌ラクトバチルス属に属する菌種であることからも、ヒトへの安全性は極めて高いものである。
本発明のN36株、N50株ともに、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託されており、その受託番号は、N36株がNITE P-03449(受託日:2021年 3月19日)、N50株がNITE P-03450(受託日:2021年 3月19日)である。
レビラクトバチルス・パウシボランスN36株、N50株それぞれの、菌株特性は以下のとおりである。
(N36株)
細胞形状:桿菌
グラム染色性:陽性
生育温度:20~35℃で増殖する。40℃で増殖しない。
運動性:なし
糖資化性:リボース、グルコース、フルクトース、マルトース
グルコースを炭素源としたガス産生:+
耐塩性:6%
胆汁酸耐性:0.6%
(N50株)
細胞形状:桿菌
グラム染色性:陽性
生育温度:20~35℃で増殖する。40℃で増殖しない。
運動性:なし
糖資化性:リボース、グルコース、フルクトース、マルトース
グルコースを炭素源としたガス産生:+
耐塩性:6%
胆汁酸耐性:0.6%
【0012】
<プトレシンの製造方法>
本発明の乳酸菌N36株、N50株を用いて、プトレシンを製造することができる。このプトレシン製造方法は、本発明の乳酸菌N36株、N50株を、プトレシン生産性基質含有培地で培養する方法に関する。
【0013】
(培養工程)
本発明の乳酸菌N36株、N50株を用いて、プトレシンを製造するための培養培地としては、レビラクトバチルス属に属する乳酸菌が資化可能な炭素源、窒素源又は無機塩類などの必要な栄養源に加えて、プトレシン生産性基質を含有する培地を挙げることができる。ここでプトレシン生産性基質としては、好ましくはオルニチンを挙げることができる。
培地に含まれるプトレシン生産性基質の濃度としては、特に制限されないものの、通常0.01~2重量/容量%、好ましくは0.1~1重量/容量%程度を挙げることができる。
乳酸菌が生育できる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよく、当業者であれば使用する適切な公知の培地を適宜選ぶことができる。炭素源としてはグルコース、フルクトースなどを使用することができ、窒素源としては肉エキス、ペプトン、イーストエキストラクト、カゼイン加水分解物、ホエータンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物などを使用することができる。また無機塩類としては、リン酸塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどを用いることができる。乳酸菌の培養に適した培地としては、例えばM17培地(上記の炭素源添加)、MRS液体培地などが挙げられる。
なお、本発明の乳酸菌N36株、N50株は、スキムミルク培地にグルコースを添加することにより、プトレシン生産量が増加することが後述する実験例により確認されている。
【0014】
培養条件は、乳酸菌が生育し得る条件であれば特に制限はない。
培地のpHは特に制限されないものの、通常pH5~8、好ましくはpH6~7の範囲を挙げることができる。なお、培地や培養装置は105~121℃、15分間殺菌して利用することができる。
培養温度は、乳酸菌N36株、N50株の生育温度の範囲、好ましくは最適生育温度の範囲に設定すればよく、例えば20℃~35℃の範囲を挙げることができ、好ましくは25℃~30℃程度である。培養時間は、制限はされないものの、例えば1~6日程度を挙げることができる。
培養に際して、酸素は特に遮断する必要も供給する必要もない。このため、培養器を簡易の蓋で覆うことによって、プトレシンの生産が可能である。培養の形式は、静置培養、振とう培養、タンク培養などが挙げられる。
【0015】
<飲食品>
本発明の乳酸菌N36株、N50株は、そのプトレシン生産能を利用してプロバイオティクスとして活用することができ、その1つの態様として飲食品としての利用が挙げられる。
本発明における飲食品としては、例えば、乳飲料など飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む)、加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品、キムチやぬか漬け等の乳酸菌発酵食品などが挙げられる。
また、医薬品又は医薬部外品(サプリメント)とすることもでき、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、液剤、乳剤、注射液等の製剤として使用することができる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術範囲はこれらにより限定されるものではない。
<実施例1:乳酸菌株選抜試験>
(1)試験検体
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門内 畜産物研究領域 畜産物機能ユニットが有する食品由来の乳酸菌ライブラリー44菌種、360株を使用して、プトレシン生産能を有する乳酸菌を選抜する試験として、まず、アミンを生産するか否かの確認試験を行った。
(2)試験方法
乳酸菌生育液体培地(MRS培地)を用いて、30℃、24時間培養した後、遠心分離して培養上清を廃棄し、得られた菌体を生理食塩水にて洗浄した。洗浄後、プトレシン生産性基質としてオルニチンを添加した下記アミン生産試験培地を加えて、30℃、24時間培養した。
[アミン生産試験培地、pH5.0]
トリプトン5g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L、グルコース1g/L、界面活性剤(Tween80)0.5g/L、硫酸マグネシウム7水和物0.2g/L、炭酸カルシウム0.1g/L、ブロモクレゾールパープル0.06g/L、硫酸マンガン4水和物0.05g/L、硫酸鉄7水和物0.04g/L、オルニチン10g/Lを精製水に溶解させ、1規定の塩酸でpHを5.0に調製した後、121℃、15分加熱殺菌した。
(3)アミン生産能有無の判断
ブロモクレゾールパープルの存在により、アミンを生産する場合は培地の色が紫色に、酸のみを生産する場合は培地の色が黄色に変色することで、確認される。
(4)結果
上記試験の結果より、試験検体360株の乳酸菌のなか、本発明の乳酸菌N36株、N50株の2株がアミンを生産することが確認された。
【0017】
<実施例2:プトレシン生産確認試験>
(1)試験検体
上記「実施例1:乳酸菌株選抜試験」で、培地が紫色に変色した乳酸菌N36株、N50株のアミン生産培地を使用した。
(2)試験方法
上記(1)の試験検体を0.1N塩酸で希釈した後、内部標準物質として1,7-ジアミノヘプタンを使用し、次いで、5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニルクロリド(ダンシルクロリド)を添加してアミノ基をダンシル化した。これをエーテルにより抽出し、抽出液をアセトニトリルに溶解して、下記分析装置と条件に基づいて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行った。
(分析装置と条件)
装置:株式会社島津製作所製 高速液体クロマトグラフィー(LC-VPシリーズ)
ポンプ:LC-10ADvp
カラムオーブン:CTO-10ASvp
検出器:SPD-M10vp
カラム:Kromasil C18(250×4.6mm)
オーブン温度:30℃
流量:0.8mL/min
移動相:アセトニトリル
試料注入量:10μL
(3)結果
下記
図3に示すとおり、本発明の乳酸菌N36株、N50株のアミン生産培地ではプトレシンのピークが検出され、プトレシンを産生することが確認された。
【0018】
<実施例3:プロバイオティクス適性試験>
プトレシン生産能を有することが確認された本発明の乳酸菌N36株、N50株について、プロバイオティクス適性を明らかにするために胆汁酸に対する耐性を確認する試験を行った。対照となる乳酸菌にはプロバイオティクス乳酸菌として広く用いられているラクチカゼイバチルス・ラムノーサス GG株を用いた。GG株はAmerican Type Culture Collection(ATCC)(Manassas, VA, USA)に、アクセッション番号ATCC 53103として登録されているものを用いた。各菌株をMRS培地で生育至適温度にて一晩前培養した後、胆汁無添加のMRS培地および0.3および0.6%胆汁を添加したMRS培地(各4mL)に20μLずつ接種し、GG株は生育至適温度の37℃で、N36株、N50株は30℃で、48時間培養した。培養後のOD620を測定し、胆汁無添加のMRS培地のOD620の値を100として、胆汁を添加したMRS培地の培養後の値を
図4に示した。
N36株、N50株ともに、GG株と比較して、胆汁添加培地での生育が良好であることから、胆汁酸耐性を有しており、プロバイオティクスとしての効果が期待できることが確認された。
【0019】
<実施例4:スキムミルク培養中でのプトレシン生産量の確認試験1>
プトレシン生産能を有することが確認された本発明の乳酸菌N36株、N50株について、スキムミルク培養中でのプトレシン生産量を確認するための試験を行った。また、スキムミルク培養時に加糖することによる、プトレシン生産量の確認も行った。
各菌株をMRS培地で一晩前培養(30℃)して、菌体を洗浄した後、この菌体洗浄液を10×10
9cfu/mLとなるように、10%スキムミルク培地(無糖)またはグルコースを0.5%加えた10%スキムミルク培地(加糖)に再懸濁した。cfuはコロニー形成単位(colony forming unit)の意味である。各乳酸菌を接種したスキムミルク培地は30、35、40℃で24~48時間培養した。この培養液をボルテックスでよく撹拌し、1N塩酸で希釈した後、内部標準物質として1,7-ジアミノヘプタンを使用し、次いで、5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニルクロリド(ダンシルクロリド)を添加してアミノ基をダンシル化した。これをエーテルにより抽出し、抽出液をアセトニトリルに溶解して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行った結果を
図5に示した。
N36株、N50株ともに、30~40℃の培養温度で10%スキムミルク培地中にプトレシンを生産することが示された。また0.5%グルコースの添加により培地中のプトレシン濃度が1.5倍増加した。
【0020】
<実施例5:スキムミルク培養中でのプトレシン生産量の確認試験2>
本発明の乳酸菌N36株、N50株について、市販のヨーグルトスターター菌存在下におけるスキムミルク培養中でのプトレシン生産量を確認する試験を行った。
各菌株をMRS培地で一晩前培養(30℃)して、菌体を洗浄した後、この菌体洗浄液を10×10
7cfu/mLとなるように、10%スキムミルク培地に再懸濁した。市販のヨーグルトスターター菌は10%スキムミルク培地に接種し、37℃で16時間培養しておいたものを、1%添加した。各乳酸菌とヨーグルトスターター菌を接種したスキムミルク培地は37℃で6~168時間培養した。この培養液をボルテックスでよく撹拌し、1N塩酸で希釈した後、内部標準物質として1,7-ジアミノヘプタンを使用し、次いで、5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニルクロリド(ダンシルクロリド)を添加してアミノ基をダンシル化した。これをエーテルにより抽出し、抽出液をアセトニトリルに溶解して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行った結果を
図6に示した。
市販のヨーグルトスターターはスキムミルク培地中にプトレシンを生産しなかった。N36株、N50株ともに、ヨーグルトスターター菌存在下においてもプトレシンを生産することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のレビラクトバチルスに属する特定の乳酸菌は、プトレシンを生産する能力を有し、かつ、胆汁酸に対する耐性を有するため、プロバイオティクスとして活用可能である。また、当該乳酸菌をスキムミルク培地中で培養する際に、グルコースを添加することによりプトレシン生産量を増加させることが出来る。
さらに、本発明の乳酸菌は、スキムミルクなどの乳中で培養し、生産したプトレシンと共に安全性の高い飲食品として利用することもでき非常に有用である。
【配列表】