(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-22
(45)【発行日】2025-05-01
(54)【発明の名称】消火設備管理システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20250423BHJP
A62C 37/50 20060101ALI20250423BHJP
【FI】
G08B17/00 J
A62C37/50
(21)【出願番号】P 2021046070
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103623(JP,A)
【文献】特開2017-175264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0209725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火設備で計測した所定の計測情報をサーバに送信するスマートメーターが設けられ、
前記スマートメーターは、前記消火設備の点検時に、消火ポンプの吐出側から立ち上げられた給水本管の圧力及び流量を含む計測情報をサーバに送信し、
前記サーバは、
前記消火設備の点検終了時に前記スマートメーターから送信された
、初回点検の前記計測情報と今回点検の前記計測情報に基づき前記消火設備の
劣化の度合を判定して報知することを特徴とする消火設備管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の消火設備管理システムに於いて、
前記スマートメーターは、前記消火設備の点検時
毎に、所定のサンプリング周期で前記計測情報をサーバに送信し、
前記サーバは、
前記消火設備の点検時毎に受信した前記計測情報を記憶し、2回目以降の前記消火設備の点検終了時に、
前記初回点検の前記計測情報と
前記今回点検の前記計測情報の比較に基づいて前記消火設備の劣化の度合を判定して報知することを特徴とする消火設備管理システム。
【請求項3】
請求項1記載の消火設備管理システムにおいて、
前記消火設備は、前記給水本管から流水検知装置を介して分岐された分岐管にスプリンクラーヘッドを接続すると共に前記分岐管の末端に末端試験弁を接続しており、
前記消火設備の点検は、前記末端試験弁の開放により前記分岐管から排水管に消火用水を流し、前記給水本管の圧力低下に基づき前記消火ポンプを起動して試験放水を行っており、
前記スマートメーターは、前記末端試験弁の開放から前記消火ポンプの起動及び前記末端試験弁の閉鎖を経て前記消火ポンプの停止に至るまでの前記給水本管の圧力と流量を前記計測情報として計測して前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記消火設備の初回点検とその後の点検に分け、且つ、前記各点検につき前記分岐管の系統毎に分けて前記圧力と前記流量を記憶することを特徴とする消火設備管理システム。
【請求項4】
請求項3記載の消火設備管理システムにおいて、
前記サーバは、前記分岐管系統毎に、前記圧力と前記流量の何れか一方又は両方につき初回点検と今回点検との差分積分値を生成し、前記差分積分値に基づいて前記分岐管系統毎の劣化の度合を判定して報知すると共に、前記差分積分値の総和に基づいて前記消火設備の劣化の度合を判定して報知することを特徴とする消火設備管理システム。
【請求項5】
請求項4記載の消火設備管理システムに於いて、前記サーバは、前記末端試験弁の開放から前記消火ポンプの起動を含む所定時間の前記圧力と前記流量の何れか一方又は両方に基づいて前記初回点検と今回点検との差分積分値を生成して劣化度合を判定することを特徴とする消火設備管理システム。
【請求項6】
請求項4記載消火設備管理システムに於いて、前記サーバは、前記分岐管系統毎に、前記末端試験弁の開放により低下した前記圧力と前記流量の何れか一方又は両方が前記ポンプ起動により所定値に達するまでの初回点検と今回点検の応答時間の差分時間を生成し、前記差分時間に基づいて前記分岐管系統毎の劣化の度合を判定して報知すると共に、前記差分時間の総和に基づいて前記消火設備の劣化の度合を判定して報知することを特徴とする消火設備管理システム。
【請求項7】
請求項6記載の消火設備管理システムに於いて、
前記サーバは、
前記圧力の応答時間として、前記末端試験弁の開放により低下した前記圧力が前記ポンプ起動により所定圧力に回復するまでの時間を検出し、
前記流量の応答時間として、前記末端試験弁の開放により流れ出した前記流量が前記ポンプ起動により所定流量に安定するまでの時間を検出することを特徴とする消火設備管理システム。
【請求項8】
請求項1記載の消火設備管理システムにおいて、
前記スマートメーターは、前記消火設備に設けた流水検知装置の1次側圧力と2次側圧力を含む計測情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記スマートメーターから送信された前記流水検知装置の1次側圧力と2次側圧力に基づき前記消火設備の状態を判定して報知することを特徴とする消火設備管理システム。
【請求項9】
請求項1記載の消火設備管理システムに於いて、
前記スマートメーターは、前記消火設備の温度、消火用水のpH、消火用水の伝導率、消火用水の比重、配管の振動又は配管の加速度の少なくとも何れかを含む計測情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記スマートメーターから送信された前記消火設備の温度、消火用水のPH、消火用水の伝導率、消火用水の比重、配管の振動又は配管の加速度の何れかに基づき、前記消火設備の状態を判定して報知することを特徴とする消火設備管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラーヘッドを設けた消火設備の経年変化を監視する消火設備管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般ビル向けの消火設備として、スプリンクラー消火設備が知られている。スプリンクラー消火設備は、水による初期消火を目的として、火災感知から消火まで全て自動で行う消火設備である。
【0003】
スプリンクラー消火設備は、消火ポンプを備えた加圧送水設備から建物の高さ方向に給水本管が立ち上げられ、給水本管から階別に分岐管が流水検知装置を介して引き出され、流水検知装置の二次側の分岐管に火災により作動して放水する閉鎖型のスプリンクラーヘッドが接続されている。
【0004】
スプリンクラー消火設備の全配管内には加圧された消火用水が充満されており、火災の熱気流を受けてスプリンクラーヘッドが作動して放水が開始されると、放水に伴う流水により流水検知装置が開いて流水検知信号(火災検出信号)を出力し、給水本管内の圧力低下をポンプ起動用圧力タンクの圧力スイッチで検出することで消火ポンプを起動して消火用水を加圧供給し、毎分80リットル以上の水を連続放水して消火することができる。
【0005】
このような消火設備は年2回の定期点検が義務付けられている。定期点検においては、分岐管の末端に設けられた末端試験弁を開放操作することでスプリンクラーヘッド1台の作動に相当する消火用水を排水管に流す実放水試験を行い、末端試験弁の開放による流水で流水検知装置が開いて流水検知信号(火災検出信号)を出力し、給水本管内の圧力低下をポンプ起動用圧力タンクの圧力スイッチで検出することで消火ポンプを起動して消火用水を加圧供給させ、末端圧力(実放水試験の圧力)を圧力計で見ることにより消火設備が正常に動作していることを確認している。
【0006】
定期点検により正常に動作しなかった場合には、原因となった機器の修理や交換といった対応で設備機能を回復させ、設備の信頼性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-085914号公報
【文献】特開2015-146840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような消火設備は、一度設置すると、設置した建物の耐用年数に相当するような長期間に亘り運用されることとなり、運用期間の増加に伴い設備機器及び配管の劣化が進むが、設備機器や配管の劣化がどの程度進んでいるか分からず、定期点検の際に動作不良が多発したような場合に、設備の劣化が原因ではないかと想定して対処する程度に留まっており、運用期間の増加に伴う設備の劣化度合いが分からないために設備の経年変化を考慮した運用管理が十分にできず、万一、火災が発生した場合に消火設備が正常に動作しないという事態の発生が懸念される。
【0009】
本発明は、インターネット上の機器と通信接続可能なスマートメーターを設けることで、定期点検等に伴う設備動作の状況から設備の劣化度合等の状態を判定して報知可能とする消火設備管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(消火設備管理システム)
本発明は、消火設備管理システムであって、
消火設備で計測した所定の計測情報をサーバに送信するスマートメーターが設けられ、
サーバは、スマートメーターから送信された計測情報に基づき消火設備の状態を判定して報知することを特徴とする。
【0011】
ここで、スマートメーターとは、センサの検出機能に加え、通信機能を備えたメーターを意味する。
【0012】
(消火設備の劣化判定)
スマートメーターは、消火設備の点検時に、消火ポンプの吐出側から立ち上げられた給水本管の圧力及び流量を含む計測情報をサーバに送信し、
サーバは、消火設備の点検終了時に、初回点検の計測情報と今回点検の計測情報の比較に基づいて消火設備の劣化の度合を判定して報知する。
【0013】
(点検動作と圧力及び流量の計測)
消火設備は、給水本管から所定の防護区画毎に流水検知装置を介して分岐された分岐管にスプリンクラーヘッドを接続すると共に分岐管の末端に末端試験弁を接続しており、
消火設備の点検は、末端試験弁の開放により分岐管から排水管に消火用水を流し、給水配管の圧力低下に基づき消火ポンプを起動して実放水試験を行っており、
スマートメーターは、末端試験弁の開放から消火ポンプの起動及び末端試験弁の閉鎖を経て消火ポンプの停止に至るまでの給水本管の圧力と流量を計測情報として計測してサーバに送信しており、
サーバは、消火設備の初回点検とその後の点検に分け、且つ、各点検につき分岐管の系統毎に分けて圧力と流量を記憶する。
【0014】
(圧力と流量の差分に基づく劣化判定)
サーバは、分岐管系統毎に、圧力と流量の何れか一方又は両方につき初回点検と今回点検との差分積分値を生成し、差分積分値に基づいて分岐管系統毎の劣化の度合を判定して報知すると共に、差分積分値の総和に基づいて消火設備の劣化の度合を判定して報知する。
【0015】
(点検中の一定時間の圧力と流量による劣化判定)
サーバは、末端試験弁の開放から消火ポンプの起動を含む所定時間の圧力と流量の何れか一方又は両方に基づいて初回点検と今回点検との差分積分値を生成して劣化度合を判定する。
【0016】
(圧力と流量の応答遅れに基づく劣化判定)
サーバは、分岐管系統毎に、末端試験弁の開放により低下した圧力と流量の何れか一方又は両方がポンプ起動により所定値に達するまでの初回点検と今回点検の応答時間の差分時間を生成し、差分時間に基づいて分岐管系統毎の劣化の度合を判定して報知すると共に、差分時間の総和に基づいて消火設備の劣化の度合を判定して報知する。
【0017】
(圧力と流量の応答時間)
サーバは、
圧力の応答時間として、末端試験弁の開放により低下した圧力がポンプ起動により所定圧力に回復するまでの時間を検出し、
流量の応答時間として、末端試験弁の開放により流れ出した流量がポンプ起動により所定流量に安定するまでの時間を検出する。
【0018】
(流水検知装置の1次側及び2次側圧力)
スマートメーターは、消火設備に設けた流水検知装置の1次側圧力と2次側圧力を含む計測情報をサーバに送信し、
サーバは、スマートメーターから送信された流水検知装置の1次側圧力と2次側圧力に基づき消火設備の状態を判定して報知する。
【0019】
(温度、pH、比重、振動、加速度、導電率の計測)
スマートメーターは、消火設備の温度、消火用水のpH、消火用水の比重、消火用水の伝導率、配管の振動又は配管の加速度の少なくとも何れかを含む計測情報をサーバに送信し、
サーバは、スマートメーターから送信された消火設備の温度、消火用水のPH、消火用水の伝導率、消火用水の比重、配管の振動又は配管の加速度の何れかに基づき、消火設備の状態を判定して報知する。
【発明の効果】
【0020】
(基本的な効果)
本発明の消火設備管理システムによれば、スマートメーターにより消火設備で計測された所定の計測情報がサーバに送信されることで、消火設備の設置現場に出向くことなく、リアルタイムで又は必要なタイミングで、サーバで消火設備の計測情報から消火設備の状態を知ることができ、故障等の異常を例えば予兆現象の段階で知って必要な対処を可能とし、消火設備の運用と維持管理を効率良く進めることができる。
【0021】
(消火設備の劣化判定の効果)
また、消火設備の定期点検による実放水試験で生じた給水本管の圧力と流量をスマートメーターで計測してインターネット上のサーバに送信することで、サーバ上で初回点検と今回点検の計測情報を比較することで、現時点での設備の劣化の度合が判定され、運用期間の増加に伴う消火設備の劣化度合が定量的に示されることで、消火設備の劣化度合を知り、例えば、消火設備の機器の交換等のリニューアル計画を適切な時期に策定して対処することで、火災時には確実に動作するという消火設備の信頼性を確保した維持管理を可能とする。
【0022】
(点検動作と圧力及び流量の計測による効果)
また、末端試験弁の開放により実質的にスプリンクラーヘッド1台が作動したことに相当する実放水試験による給水本管の圧力と流量を計測してサーバ側に送信して記憶させることができ、また、計測情報を初回点検とそれ以降の点検毎に分け、且つ、点検を個別に行う分岐管系統毎に分けて記憶することで、記憶した計測情報に基づく消火設備の劣化判定を行い易くすることができる。
【0023】
(圧力と流量の差分に基づく劣化判定の効果)
また、消火設備は劣化が進むと設備機器の動きが鈍くなり、このため給水本管の圧力と流量は、初回点検とそれ以降との点検では、劣化に応じて差が広がる傾向にあることから、劣化度合を示す値として、例えば圧力と流量の両方につき初回点検と今回点検との差分積分値を生成し、差分積分値が大きくなるほど劣化が進んでいる評価することができることから、差分積分値に基づき劣化の度合を判定することができる。
【0024】
また、差分積分値を分岐管系統毎に生成することで、分岐管系統毎に、劣化の度合を判定でき、更に、分岐管系統毎に生成した差分積分値の総和から消火設備全体としての劣化の度合を判定することができる。
【0025】
(点検中の一定時間の圧力と流量による劣化判定の効果)
また、末端試験弁の開放による点検開始から点検終了までの点検時間は、例えば、末端試験弁を手動操作した場合には、大きくばらつくが、末端試験弁の開放から所定時間の例えば圧力と流量から差分積分値を生成して劣化度合を判定することで、点検動作の時間的なばらつきによる影響を受けることなく、高い精度で設備の劣化度合を判定することができる。
【0026】
(圧力と流量の応答遅れに基づく劣化判定の効果)
また、定期点検で消火ポンプを起動したときの給水本管の圧力及び流量の応答時間は、消火設備の劣化が進むほど長くなって応答遅れを生じることから、初回点検と今回点検の圧力と流量の応答時間を検出して比較することで、消火設備の劣化度合を判定することができる。
【0027】
(圧力と流量の応答時間による効果)
また、設備の劣化により大きく影響を受ける消火ポンプの起動に伴う圧力と流量の変化から応答時間を正確に検出して設備の劣化度合を適切に評価して判定できる。
【0028】
(流水検知装置の1次側及び2次側圧力の計測による効果)
また、建物の高さ方向に設置した給水本管から階別に引き出した分岐管に設けた流水検知装置の1次側圧力(給水本管側圧力)は、水頭に応じて最下階で最も高く、階が上がるにつれて減少する広い圧力範囲にあり、この1次側圧力の関係が崩れた場合に、流水検知装置の1次側の異常を判定して必要な対処ができる。
【0029】
また、流水検知装置の2次側の圧力は階に依存することなく1次側に設けた減圧弁又は流水検知装置に一体化した減圧機構により一定圧力となり、2次側圧力が例えば低下していることで、2次側配管の漏水等の異常を判定して必要な対処ができる。
【0030】
また流水検知装置の1次側圧力と2次側圧力との差圧を監視することで、流水検知装置の1次側の異常や2次側配管の漏水等を判定して必要な対処ができる。
【0031】
(温度、pH、導電率、比重、振動、加速度の計測による効果)
また、消火設備の温度が例えばスプリンクラーヘッドの標示温度(作動温度)に対応した環境最高温度を超える状態が続く場合には、スプリンクラーヘッドの熱による誤作動や腐食による誤作動の可能性が高くなることを判定し、換気等の対策により環境最高温度以下に抑える対処ができる。
【0032】
また、配管に充水している消火用水のpHは、酸性域でのpHの減少とともに鉄製配管の腐食速度が増加し、アルカリ性域ではpHの増加とともに腐食速度が減少する関係にあり、消火用水のpHを監視することで、配管の腐食状況を知り、消火用水のpHを中性或いはアルカリ性域に調整するといった対処を可能とする。
【0033】
また、消火用水の伝導率は、伝導率が高くなるほど腐食性が高くなる関係にあり、消火用水の伝導率を監視することで、配管の腐食状況を知り、消火用水の伝導率を下げるための対処を可能とする。
【0034】
また、消火用水の比重は、不純物が混入するほど比重が増加して腐食性が高くなる関係にあることから、消火用水の比重を監視することで、配管の腐食状況を知り、消火用水の比重を下げるための対処を可能とする。
【0035】
また、配管の振動や加速度は、配管に加わる機械的なストレスを示し、配管の振動や加速度を監視することで、配管の接続部やスプリンクラーヘッドの接続部等に対する影響を判定して必要な対処を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】消火設備管理システムの概略を示した説明図である。
【
図2】
図1に設けられたスマートメーターとサーバの機能構成を示したブロック図である。
【
図3】定期点検の実放水試験による給水本管の圧力と流量、及び末端試験弁と消火ポンプの動作を示したタイムチャートであり、
図3(A)に計測値を示し、
図3(B)に遠隔末端試験弁30の動作を示し、
図3(C)に消火ポンプ11の動作を示す。
【
図4】スマートメーターで計測されてサーバに記憶される消火設備の計測情報のレコード構成を示した説明図であり、
図4(A)はレコード形式を示し、
図4(B)は点検動作に伴い生成された一連の計測情報を示す。
【
図5】消火設備の劣化判定に用いられる複数回の定期点検で得られた消火設備の流量と圧力を示したタイムチャートである。
【
図6】
図5の計測情報から生成される差分積分値に基づく劣化度合の経年変化を示したタイムチャートであり、
図6(A)は分岐管系統(5系統)の経年変化を示し、
図6(B)は消火設備全体としての経年変化を示す。
【
図7】設備の劣化判定に用いる消火設備の流量と圧力の応答時間を分岐管系統毎に分けて示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[消火設備管理システム]
(消火設備の概要)
図1に示すように、消火設備10は、建物の地下階などのポンプ室に加圧送水装置として消火ポンプ11を設置し、モータ12で駆動する。モータ12はポンプ制御盤14により起動・停止の運転制御を受ける。モータ12で駆動された消火ポンプ11は水源水槽15からの消火用水を吸込み、建物の高さ方向に配置した給水本管16に加圧した消火用水を供給する。
【0038】
消火ポンプ11に対してはポンプ始動用圧力スイッチ20を備えたポンプ起動用の圧力タンク18を設け、ポンプ始動用圧力スイッチ20は給水本管16の管内圧力が規定圧力以下に低下したときに作動してポンプ制御盤14に圧力低下検出信号を出力し、モータ12を駆動して消火ポンプ11を始動する。
【0039】
給水本管16からは建物の例えば階別の防護区画毎に分岐管21を引き出している。1Fを例にとると、分岐管21の分岐部分には仕切弁22に続いて流水検知装置24を設け、その2次側の分岐管21に閉鎖型のスプリンクラーヘッド26を接続している。
【0040】
分岐管21の末端側には手動操作で開閉する手動末端試験弁28を設け、手動末端試験弁28と並列に、外部からの信号により開閉制御する遠隔末端試験弁30を接続する。遠隔末端試験弁30は電動弁又は電磁弁である。
【0041】
手動末端試験弁28と遠隔末端試験弁30の2次側は、スプリンクラーベッド26の1台作動に相当する流量を流すオリフィス32を介して排水管33に接続している。消火ポンプ11、給水本管16及びスプリンクラーヘッド26に至る配管内には消火用水が充水している。
【0042】
流水検知装置24は通常の監視状態で弁体を閉じており、1Fでの火災によりスプリンクラーヘッド26が開放作動して消火用水を放水すると、放水に伴う水流により弁体を開き、弁体の動きに連動して流水検知スイッチをオンし、消火制御盤34に流水検知信号を出力して作動表示を行わせ、更に、消火制御盤34から火災受信機36に移報信号を送信して火災警報を出力させる。また流水検知装置24は減圧機構を一体に備え、設置階に応じて広範囲で変化している1次側圧力を減圧して所定の2次側圧力を得るようにしている。このような流水検知装置24の構成と機能は2Fの流水検知装置24を含む他の階の流水検知装置についても同様となる。
【0043】
また、本実施形態の消火制御盤34は、定期点検の際に、点検操作に基づき自動点検制御を行う。消火制御盤34の自動点検制御は、階別に順次行われ、まず、1Fの遠隔末端試験弁30を開制御し、オリフィス32で決まるスプリンクラーヘッド26の1台作動の放水量に相当する毎分80リットル以上の消火用水を排水管33に流して実放水試験を開始する。
【0044】
実試験放水を開始すると、流水により流水検知装置24の弁体が開放して流水検知信号(火災検出信号)を出力し、消火制御盤34で作動表示を行い、火災受信機36に移報信号を出力するが、点検時には移報停止を設定しているので、火災警報は出力しない。
【0045】
また、遠隔末端試験弁30の開放で試験放水を開始すると、給水本管16内の圧力が低下し、圧力低下を圧力タンク18のポンプ始動用圧力スイッチ20が作動(オン)し、ポンプ制御盤14がモータ12の始動により消火ポンプ11を駆動して消火用水を加圧供給し、毎分80リットル以上の消火用水を開放した遠隔末端試験弁30から排水管33に流す試験放水を行う。
【0046】
続いて、消火制御盤34は所定の点検時間が経過すると、遠隔末端試験弁30を閉鎖制御して試験放水を停止し、続いて、ポンプ制御盤14にポンプ停止を指示し、モータ12の駆動停止により消火ポンプ11の運転を停止する。以下、同様に、残りの階別に自動点検制御を繰り返す。
【0047】
[スマートメーター]
図1の消火設備10の消火ポンプ11を含む加圧送水側にはスマートメーター40を設けている。スマートメーター40は、消火ポンプ11の2次側で圧力Pと流量Qを計測して計測情報を生成し、アンテナ76から基地局78及びインターネット42を経由してサーバ46に送信する通信機能を備える。
【0048】
また、各階の流水検知装置24には1次側圧力P1と2次側圧力P1を検出する圧力センサー71,72を設け、圧力センサー71,72の圧力検出値をアダプタ74でまとめてスマートメーター40に送信する。このためスマートメーター40は、圧力Pと流量Qに、各階の流水検知装置24の1次側圧力P1と2次側圧力P2を加えた計測情報を生成し、サーバ46に送信する。
【0049】
図2に示すように、スマートメーター40は、圧力センサー48、流量センサー50、メーター制御部52、メーター通信部54で構成する。メーター制御部52は、CPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路で構成する。
【0050】
圧力センサー48は消火ポンプ11の2次側の給水本管16に充水された消火用水の圧力Pを検出し、流量センサー50は給水本管16を流れる消火用水の流量Qを検出する。
【0051】
メーター制御部52は、圧力センサー48からの圧力検出信号E1、流量センサー50からの流量検出信号E2、消火制御盤34からの通常状態か点検かを示すステータス信号E3、消火制御盤34からの階別の分岐管系統毎に設けた遠隔末端試験弁30の開閉を示す末端試験弁信号E4、ポンプ制御盤14からの消火ポンプ11の起動と停止を示す消火ポンプ運転信号E5、流水検知装置24の圧力センサー71,72からの1次側圧力検出信号E6及び2次側圧力検出信号E7を入力する。
【0052】
これらの信号E1~E7を入力したメーター制御部52は、所定のサンプリング周期毎に、設備ID、分岐系統ID、圧力P、流量Q、末端試験弁、ポンプ運転、ステータス、1次側圧力P1、2次側圧力P2を含む計測情報を生成し、メーター通信部54に指示してサーバ46に送信する制御を行う。
【0053】
図1に示すように、消火設備10の送水口25は建物の外側に設置しており、本実施形態ではスマートメーター40のアンテナ76を送水口25に設け、
図2のメーター通信部54との間はアンテナ線で接続し、建物の外側にアンテナ76を簡単に設置可能としている。
【0054】
[サーバ]
(サーバの概要)
図2に示すように、サーバ46は、サーバ通信部56、サーバ制御部58、ディスプレイを用いた表示部60、キーボード、マウス等の入出力部を備えた操作部62及び記憶部64で構成する。サーバ制御部58は、CPU、メモリ、各種入出力ポート等を備えたコンピュータ回路であり、CPUによるプログラムの実行により、計測情報管理部66と劣化判定部68の機能を実現する。
【0055】
計測情報管理部66は、消火設備10のスマートメーター40が送信した計測情報を受信して記憶し、必要に応じて読み出す管理制御を行う。劣化判定部68は、消火設備10の初回の点検終了時は判定処理を行わず、2回目以降の点検終了時に、初回点検の計測情報と今回点検の計測情報の比較に基づいて消火設備10の劣化の度合を判定し、表示部60に表示するなどして報知する制御を行う。また、劣化判定部68は、点検時又は人的な操作タイミングで、計測情報から消火設備10の状態を判定して報知する制御を行う。
【0056】
(消火設備の点検による計測情報)
消火設備10の定期点検の動作は、
図3に示すように、時刻t1で遠隔末端試験弁30を開制御して試験放水の開始を開始すると、
図3(A)に示す給水本管16内の圧力Pが低下し、時刻t2で所定の設定圧力Pthに低下すると
図1に示した圧力タンク18のポンプ始動用圧力スイッチ20がオンし、消火ポンプ11を始動して運転状態とし、これにより低下した圧力Pが回復し、連続的に試験放水を行う。このとき給水本管16の流量Qは例えば毎分80リットル以上となる試験放水の流量に増加し、これを維持する。
【0057】
所定の点検時間が経過して時刻t4に達すると遠隔末端試験弁30を閉制御し、続いて時刻t5で消火ポンプ11の運転を停止し、給水本管16の流量Qは零となり、また、圧力Pは若干上がって安定し、この分岐管系統の点検を終了する。
【0058】
(定期点検時の計測情報の送信と記憶)
図4(A)に示すように、スマートメーター40で生成し、且つサーバ46に記憶する計測情報70は、インデックス(Index)、設備ID、分岐系統ID、圧力P、流量Q、末端試験弁、ポンプ運転、ステータスを含む。なお、流水検知装置24の1次側圧力P1と2次側圧力P2は省略している。
【0059】
インデックス(Index)は、計測情報70の順番を示すものであり、タイムスタンプでも良い。設備IDは
図1に示したように、サーバ46は複数の消火設備10を管理することから、消火設備10を識別するために設定する。分岐系統IDは、遠隔末端試験弁30の制御により定期点検を行う分岐管系統を識別するために設定する。
【0060】
圧力Pは圧力センサー48で検出した圧力PをAD変換したデジタル圧力値DPであり、流量Qは流量センサー50で検出した流量QをAD変換したデジタル流量値DQである。末端試験弁はその開閉状態を示す。ポンプ運転は運転か停止かを示す。ステータスは通常か点検かを示す。なお、計測情報70の形式は、これに限定されず、圧力P、流量Qを含むものであれば、適宜の形式とすることができる。
【0061】
図1に示す分岐管系統の点検動作を行った場合、
図4(B)に示す一連の計測情報70をスマートメーター40が生成し、サーバ46に送信して記憶する。
図4(B)の計測情報は、所定のサンプリング周期で離散的に生成しており、左側に
図3の時刻t1,t2,t4,t5の計測タイミングを示す。
【0062】
このようにスマートメーター40で計測し、サーバ46に送信して記憶した計測情報70を対象に、サーバ46の劣化判定部68は、
図3に示す遠隔末端試験弁30を開制御する点検開始時刻t1から消火ポンプ11を始動した後の時刻t3まで所定時間Tの計測情報を読み出して消火設備10の劣化判定を行う。
【0063】
[計測値の差分に基づく劣化判定]
(劣化判定に用いる計測情報)
図5に示すように、圧力P1と流量Q1は初回点検で計測した時間分布であり、
図3に示した遠隔末端試験弁30を開放した時刻t1から所定時間Tが経過した時刻t3までの所定時間Tの圧力と流量の計測結果を、設備の劣化判定のために読み出す。
【0064】
ここで、圧力P1は、遠隔末端試験弁30の開放で低下した後に、消火ポンプ11の起動により回復する時間変化を示す。また、流量Q1は、遠隔末端試験弁30の開放で流量が増加した後に消火ポンプ11の起動により回復して所定の流量を保つまでの時間変化を示す。
【0065】
圧力P2と流量Q2は、2回目の定期点検の計測結果であり、初回の圧力P1と流量Q1の立ち上りに対し、2回目の圧力P2と流量Q2の立上りは、設備の経年変化の影響を受けて時間遅れを生じている。
【0066】
圧力P3と流量Q3は3回目の定期点検の計測結果、圧力P4と流量Q4は4回目の定期点検の計測結果であり、それぞれ前回の計測結果に対し立上りに時間遅れを生じている。
【0067】
なお、消火設備の定期点検は半年に1回行われ、この程度の期間毎の定期点検では
図5に示す顕著な圧力と流量の立上り部分での時間遅れは必ずしも起きないが、運用年数が数年を超えると、初回に対する圧力と流量の立上り部分の時間遅れは顕著になることが想定され、
図5にあっては、説明を容易にするため、1回目から4回目の点検で時間遅れが生じたものとして示している。
【0068】
(圧力と流量の差分に基づく劣化判定)
図2に示したサーバ46の劣化判定部68は、2回目以降の定期点検が終了し、計測情報管理部66により記憶部64に初回点検と2回目点検の計測情報が記憶された状態で、例えば、担当者による設備劣化判定の処理要求の操作を受けたとき、
図5に示した初回点検の圧力P1と流量Q1の所定時間T分の計測情報と2回目点検の圧力P2と流量Q2の所定時間T分の計測情報を読み出して初回点検と2回路点検との差分積分値を生成し、差分積分値に基づいて分岐管系統毎の劣化の度合を判定して報知する。
【0069】
具体的には、劣化判定部68は分岐管系統毎に分けて劣化を判定する。ここで、分岐管系統をi=1,2,・・・nとすると、劣化判定部68は、初回点検の圧力P1iと流量Q1iの所定時間T分の計測情報と、2回目点検の圧力P2iと流量Q2iの所定時間T分の計測情報を読み出して差分積分値
ΣΔP12=Σ(P1i-P1i)
ΣΔQ12=Σ(Q1i-Q1i)
を生成し、例えば両者の加算値(ΣΔP12+ΣΔQ12)に基づいて分岐管系統毎の劣化の度合を判定して報知する。
【0070】
ここで、圧力の差分積分値ΣΔP12は
図5に示した初回と2回目の圧力P1,P2の間の面積を示し、また、流量の差分積分値ΣΔQ12は
図5に示した初回と2回目の流量Q1,Q2の間の面積を示し、面積の大きさが初回点検時に対し2回目の点検時に劣化が進んでいる度合いを表す。なお、分岐管系統毎の劣化判定は、圧力の差分積分値(ΣΔP12)と流量の差分積分値(ΣΔQ12)に分けて個別に判定しても良い。
【0071】
また、劣化判定部68は、分岐管系統毎の劣化判定で生成された圧力及び流量の差分積分値の総和を求め、圧力及び流量の差分積分値の総和に基づき消火設備10の全体としての劣化度合を判定して報知しても良い。この場合にも、圧力の差分積分値の総和と流量の差分積分値の総和に分けて消火設備10全体としての判定度合を判定しても良い。
【0072】
(設備の劣化度合)
図6(A)に示すように、分岐管系統における差分積分値で与えられる劣化度合は、例えば10年までは、劣化度合の増加は僅かであるが、10年を超えると増加割合が大きくなり、20年前後では、予め設定した劣化度合の閾値TH1を超えており、閾値TH1以上となった分岐管系統の劣化警報を報知することで、劣化警報となった設備機器や配管を交換修理する計画の策定を促す。
【0073】
図6(B)は、
図6(A)の各分岐管系統の劣化度合の総和を示しており、同様に10年を超えると増加割合が大きくなり、20年を超えると、予め設定した劣化度合の閾値TH2を超えており、設備の劣化警報を報知することで、設備機器や配管を交換修理するリニューアル計画の策定を促す。
【0074】
[圧力と流量の応答遅れに基づく劣化判定]
図2に示したサーバ46の劣化判定部68の他の実施形態として、定期点検における圧力Pと流量Qの応答時間に基づき設備の結果度合を判定して報知する。
【0075】
(応答時間の検出)
図7に示すように、圧力P1~P4と流量Q1~Q4は初回から4回目までの点検で計測した圧力と流量の時間分布であり、本実施形態の劣化判定部68は、消火設備10の2回目以降の定期点検が終了して担当者による劣化判定の処理要求操作を受けたときに、
図3に示した遠隔末端試験弁30を開放した時刻t1から所定時間Tが経過した時刻t3までの所定時間Tの圧力と流量の計測結果を、設備の劣化判定のために読み出す。
【0076】
例えば、2回目の定期点検を終了して担当者による劣化判定の処理要求操作を受けたとき、劣化判定部68は、
図7に示す初回点検の圧力P1及び流量Q1と、2回目点検の圧力P2と流量Q2の計測情報を読み出す。
【0077】
劣化判定部68は、初回点検の圧力P1について、時刻t1で遠隔末端試験弁30を開放してから低下した圧力が消火ポンプ11の始動により所定圧力に回復するまでの時間を圧力応答時間PT1として検出する。
【0078】
また、劣化判定部68は、初回点検の流量Q1については、遠隔末端試験弁30を開放してから流量が増加した後に消火ポンプ11の始動による所定の流量に安定するまでの時間を流量応答時間QT1として検出する。
【0079】
また、劣化判定部68は、2回目点検の圧力P2と流量Q2についても、同様にして、圧力応答時間PT2と流量応答時間QT2を検出する。2回目の定期点検による圧力応答時間PT2と流量応答時間QT2は、初回の定期点検の圧力応答時間PT1と流量応答時間QT1に対し、設備の経年変化の影響を受けて時間遅れを生じている。
【0080】
なお、圧力P3と流量Q3は3回目の定期点検の計測結果であり、劣化判定部68はそれぞれ応答時間PT3,QT3を検出し、また、圧力P4と流量Q4は4回目の定期点検の計測結果であり、劣化判定部68はそれぞれの応答時間PT4,QT4を検出することになる。
【0081】
(応答時間に基づく劣化判定)
続いて、劣化判定部68は、分岐管系統毎に分けて圧力と流量の応答時間に基づき劣化を判定する。ここで、分岐管系統をi=1,2,・・・nとすると、劣化判定部68は、初回点検の圧力応答時間PT1iと流量応答時間QT1iとの時間差分
ΔPT12=(PT1i-PT2i)
ΔQT12=(QT1i-QT2i)
を生成し、例えば両者を加算した時間差分
ΔT1=(ΔPT12+ΔQT12)
に基づいて分岐管系統毎の劣化の度合を判定して報知する。
【0082】
ここで、初回点検と2回目点検の応答時間の時間差分が大きい程、初回点検時の設備に対し2回目の点検時の設備の劣化が進んでいると判定することができる。なお、分岐管系統毎の劣化判定は、圧力時間差分(ΔPT12)と流量時間差分(ΔQT12)に分けて個別に判定しても良い。
【0083】
また、劣化判定部68は、分岐管系統毎の劣化判定で生成された圧力時間差分及び流量時間差分の総和を求め、圧力時間差分及び流量時間差分の総和に基づき消火設備10の全体としての劣化度合を判定して報知する。この場合にも、圧力時間差分の総和と流量時間差分の総和に分けて消火設備10全体としての判定度合を判定しても良い。
【0084】
[流水検知装置の1次側圧力及び2次側圧力の計測と判定]
図1に示すように、スマートメーター40は、消火設備10に設けた流水検知装置24の1次側圧力P1と2次側圧力P2を計測情報に含めてサーバ46に送信している。
図2に示したサーバ46の計測情報管理部66はスマートメーター40からの1次側圧力P1と2次側圧力P2を含む計測情報を受信して記憶し、必要に応じて読み出す。
【0085】
サーバ68の劣化判定部68は、スマートメーター40から送信された流水検知装置24の1次側圧力P1と2次側圧力P2に基づき消火設備10の状態を判定して報知する。
【0086】
例えば、建物の高さ方向に設置した給水本管16から階別に引き出した分岐管21に設けた流水検知装置24の1次側圧力P1は、水頭に応じて最下階で最も高く、階が上がるにつれて減少する広い圧力範囲にある。このためサーバ46は、各階の流水検知装置24の1次側圧力P1を読み出し、階に応じて変化する1次側圧力P1の関係が崩れた場合に、流水検知装置24の1次側の異常を判定して報知し、流水検知装置24の点検等の必要な対処を可能とする。
【0087】
また、流水検知装置24の2次側の圧力は階に依存することなく1次側に設けた減圧弁又は流水検知装置24に一体化した減圧機構により所定圧力となる。このためサーバ46は、2次側圧力P2が所定圧力から低下していることで、2次側の分岐管21の漏水等の異常を判定して報知することで、必要な対処を可能とする。
【0088】
また、サーバ46は流水検知装置24の1次側圧力P1と2次側圧力P2との差圧(P1-P2)を求めて監視し、差圧(P1-P2)が階ごとに異なる所定値から外れたときに、流水検知装置24の1次側の異常や2次側配管の漏水等を判定して報知し、必要な対処を可能とする。
【0089】
[温度、pH、比重、振動、加速度、導電率の計測と判定]
(追加する計測情報)
図1の消火設備10に設けたスマートメーター40は、前述した給水本管16の圧力Pと流量Q、流水検知装置24の1次側圧力P1と2次側圧力P2以外に、消火設備の温度T、消火用水のpH、消火用水の伝導率、消火用水の比重G配管の振動又は配管の加速度を、対応するセンサで検出して生成した計測情報をサーバ46に送信しても良い。
【0090】
サーバ46は、スマートメーター40が送信した消火設備10の温度、消火用水のpH、消火用水の伝導率、消火用水の比重、配管の振動又は配管の加速度に基づき、消火設備の状態を判定して報知する。
【0091】
これ以外にもスマートメーター40で適宜の計測情報を生成してサーバ46に送信し、設備状況を判定して報知する場合を含む。
【0092】
(温度による設備状態の判定)
サーバ46は、スマートメーター40から受信した計測情報に含まれる温度センサで検出した消火設備10の温度Tを監視し、例えばスプリンクラーヘッド26の作動温度である標示温度に対応した環境最高温度を超える状態が続く場合には、スプリンクラーヘッド26の熱による誤作動や腐食による誤作動の可能性が高くなることを判定して温度異常を報知する。これにより換気等の対策により設備温度を環境最高温度以下に抑える対処ができる。
【0093】
(消火用水のpHによる設備状態の判定)
サーバ46は、スマートメーター40から受信した計測情報に含まれるpHセンサで検出した配管に充水している消火用水のpHを監視し、消火用水のpHに基づき設備状態を判定して報知する。
【0094】
配管に充水している消火用水は、酸性域でのpHの減少とともに鉄製の配管の腐食速度が増加し、アルカリ性域ではpHの増加とともに腐食速度が減少する関係にある。そこでサーバ46は消火用水のpHを監視し、酸性域でのpHの減少を判定して配管の腐食が進んでいることを報知する。これにより例えば配管の消火用水を排水して新たな消火用水に入れ替えることで、消火用水のpHを中性或いはアルカリ性域に調整するといった対処を可能とする。
【0095】
(消火用水の導電率による設備状態の判定)
サーバ46は、スマートメーター40から受信した計測情報に含まれる導電率センサで検出した配管に充水している消火用水の伝導率を監視し、消火用水の伝導率に基づき設備状態を判定して報知する。
【0096】
配管に充水している消火用水の伝導率は、伝導率が高くなるほど腐食性が高くなる関係にある。そこでサーバ46は消火用水の伝導率を監視し、伝導率が高くなったことを判定して配管の腐食性が高まったことを報知する。これにより例えば配管の消火用水を排水して新たな消火用水に入れ替えることで、消火用水の伝導率を正常に戻すといった対処を可能とする。
【0097】
(消火用水の比重による設備状態の判定)
サーバ46は、スマートメーター40から受信した計測情報に含まれる比重センサで検出した配管に充水している消火用水の比重を監視し、消火用水の比重に基づき設備状態を判定して報知する。
【0098】
配管に充水している消火用水の比重は、不純物が混入するほど比重が増加し、不純物によっては腐食性が高くなる関係にある。そこでサーバ46は消火用水の比重を監視し、比重が高くなったことを判定して配管の腐食性が高まったことを報知する。これにより例えば配管の消火用水を排水して新たな消火用水に入れ替えることで、消火用水の比重を正常に戻すといった対処を可能とする。
【0099】
(配管の振動や加速度による設備状態の判定)
サーバ46は、スマートメーター40から受信した計測情報に含まれる振動センサや加速度センサで検出した配管の振動や加速度を監視し、配管の振動や加速度に基づき設備状態を判定して報知する。
【0100】
消火設備10の配管の振動や加速度は、配管に加わる機械的なストレスを示しており、継続的に強い振動が加わったり、地震等により大きな加速度の衝撃が加わると、配管の接続部やスプリンクラーヘッド26の接続部等に弛みが生じて漏水し、また大きな衝撃を受けてクラック等の破損か起きる可能性がある。
【0101】
そこでサーバ46は消火設備の振動や加速度を監視し、継続的に強い振動が加わったり、地震等により大きな加速度の衝撃が加わったことを判定して報知する。これにより消火設備の点検を行うことで異常個所を発見し、修理交換といった対処を可能とする。
【0102】
[本発明の変形例]
(末端試験弁)
上記の実施形態は、分岐管21の末端に設けた手動末端試験弁28と並列に遠隔末端試験弁30を設け、定期点検時に消火制御盤34からの制御により開放して放水試験を開始しているが、遠隔末端試験弁30を設けていない場合には、手動末端試験弁28を点検員が現場に出向いて開操作することで放水試験を行うようにしても良い。
【0103】
この場合、消火制御盤34は、手動末端試験弁28の開操作は検知できないことから、これに代えて流水検知装置24の流水検知スイッチのオンによる流水検知信号を計測情報に設定する。
【0104】
(計測情報の記憶)
上記の実施形態にあっては、スマートメーター40で所定のサンプリング周期で計測して送信された計測情報を全てサーバ46で記憶するようにしているが、これに限定されず、例えば、消火制御盤34で点検モードを設定している場合、点検モードが設定されている間にスマートメーター40から受信した計測情報のみを記憶し、これによりサーバ46における計測情報の記憶量を低下させることができる。
【0105】
(定期点検)
上記の実施形態は、消火設備の定期点検時に設備の劣化を判定しているが、これに限定されず、定期点検以外の点検時、或いは、必要に応じて行う放水試験を伴う適宜の点検時に消火設備の劣化を判定しても良い。
【0106】
(他の消火設備)
上記の実施形態は、2次側配管に加圧水を充填した湿式のスプリンクラー消火設備を対象としたが、2次側配管に加圧空気を充填した乾式スプリンクラー消火設備、2次側配管に加圧水を充填した湿式予作動スプリンクラー消火設備や負圧湿式予作動スプリンクラー消火設備、2次側に加圧空気を充填した乾式予作動スプリンクラー設備を対象としても良い。
【0107】
(加圧送水装置)
上記の実施形態は、加圧送水装置として消火ポンプ設備を例にとるものであったが、これ以外に、高架水槽の落差を利用して送水するための圧力を得る高架水槽方式、加圧した水槽により給水する圧力水槽方式としてもよい。
【0108】
(その他)
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0109】
10:消火設備
11:消火ポンプ
12:モータ
14:ポンプ制御盤
15:水源水槽
16:給水本管
18:圧力タンク
20:ポンプ始動用圧力スイッチ
21:分岐管
22:仕切弁
24:流水検知装置
25:送水口
26:スプリンクラーヘッド
28:手動末端試験弁
30:遠隔末端試験弁
32:オリフィス
33:排水管
34:消火制御盤
36:火災受信機
40:スマートメーター
42:インターネット
46:サーバ
48,71,72:圧力センサー
50:流量センサー
52:メーター制御部
54:メーター通信部
56:サーバ通信部
58:サーバ制御部
60:表示部
62:操作部
64:記憶部
66:計測情報管理部
68:劣化判定部
70:計測情報
74:アダプタ
76:アンテナ
78:基地局