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特許7681408粘着シート貼付け方法、粘着シート貼付け装置、および半導体製品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-14
(45)【発行日】2025-05-22
(54)【発明の名称】粘着シート貼付け方法、粘着シート貼付け装置、および半導体製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20250515BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021015589
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2021197544
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2020100020
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394016601
【氏名又は名称】日東精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】秋月 伸也
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅之
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118584(JP,A)
【文献】特開2013-219175(JP,A)
【文献】特開2015-053377(JP,A)
【文献】特開2012-038880(JP,A)
【文献】特開2009-027054(JP,A)
【文献】特開2009-275222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面の外周に環状凸部を有するワークの環状凸部形成面に粘着シートが付着されて構成されるシート複合体に対して、大気圧よりも高い圧力を加えることにより前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける貼付け過程と、
を備え
前記貼付け過程は、
前記ワークの前記環状凸部形成面とは逆側の面の全体が空間に接している状態で、前記シート複合体に対して、前記粘着シートから前記ワークに向かう第1の押圧力と、前記ワークから前記粘着シートに向かう第2の押圧力を作用させる
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着シート貼付け方法において、
前記シート複合体をチャンバに収容する収容過程を備え、
前記貼付け過程は、
前記収容過程の後、前記チャンバの内部空間の圧力を上げることにより前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項3】
請求項2に記載の粘着シート貼付け方法において、
前記チャンバは上ハウジングと下ハウジングとを備え、
前記貼付け過程は、
前記上ハウジングと前記下ハウジングとによって前記粘着シートを挟み込むことにより、前記チャンバの内部空間を、前記の環状凸部形成面を上向きにした状態の前記ワークが配置される下空間と、前記粘着シートを介在して前記下空間と対向する上空間とに区画する上下空間形成過程と、
前記上空間と前記下空間とのうち少なくとも前記上空間を加圧することにより、前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける空間加圧過程とを有する
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項4】
請求項2に記載の粘着シート貼付け方法において、
前記粘着シートは、前記ワークの環状凸部形成面に応じた所定形状を有し、長尺の搬送用シートに保持されており、
前記チャンバは上ハウジングと下ハウジングとを備え、
前記貼付け過程は、
前記上ハウジングと前記下ハウジングとによって前記搬送用シートを挟み込むことにより、前記チャンバの内部空間を、前記の環状凸部形成面を上向きにした状態の前記ワークが配置される下空間と、前記搬送用シートに保持された前記粘着シートを介在して前記下空間と対向する上空間とに区画する上下空間形成過程と、
前記上空間と前記下空間とのうち少なくとも前記上空間を加圧することにより、前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける空間加圧過程とを有する
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項5】
請求項3に記載の粘着シート貼付け方法において、
前記上ハウジングの内部に配設されているシート状の弾性体を備え、
前記上下空間形成過程において前記上ハウジングと前記下ハウジングとによって前記粘着シートを挟み込むことにより、前記粘着シートに前記シート状の弾性体が当接するように、前記シート状の弾性体は配設される
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の粘着シート貼付け方法において、
前記下空間および前記上空間のうち少なくとも一方を加温することによって前記粘着シートを加温する加温過程を備え、
前記貼付け過程は、前記加温過程によって加温された状態の前記粘着シートに対して大気圧よりも高い圧力を加えることにより前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項7】
一方の面の外周に環状凸部を有するワークの環状凸部形成面に粘着シートが付着されて構成されるシート複合体に対して、大気圧よりも高い圧力を加えることにより前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける貼付け機構と、
を備え
前記貼付け機構は、
前記ワークの前記環状凸部形成面とは逆側の面の全体が空間に接している状態で、前記シート複合体に対して、前記粘着シートから前記ワークに向かう第1の押圧力と、前記ワークから前記粘着シートに向かう第2の押圧力を作用させる
ことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【請求項8】
一方の面の外周に環状凸部を有するワークの環状凸部形成面に粘着シートが貼り付けられた状態となっている半導体製品を製造する半導体製品の製造方法であって、
前記ワークの環状凸部形成面に前記粘着シートが付着されて構成されるシート複合体に対して、大気圧よりも高い圧力を加えることにより前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける貼付け過程と、
を備え
前記貼付け過程は、
前記ワークの前記環状凸部形成面とは逆側の面の全体が空間に接している状態で、前記シート複合体に対して、前記粘着シートから前記ワークに向かう第1の押圧力と、前記ワークから前記粘着シートに向かう第2の押圧力を作用させる
ことを特徴とする半導体製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ(以下、適宜「ウエハ」という)または基板を例とするワークに対して、テープ状の粘着材を例とする粘着シートを貼り付けるために用いる粘着シート貼付け方法、粘着シート貼付け装置、および半導体製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハの表面に回路パターンが形成された後、バックグラインド工程によってウエハの裏面を研削し、さらにダイシング工程によって当該ウエハを多数のチップ部品に分断する。
裏面研削の工程では、ウエハの裏面外周を残して中央部分のみを研削し、バックグラインド域を囲むようにウエハの裏面外周に環状凸部を形成させる場合がある。
【0003】
この場合、ウエハの中央部を薄型化した場合であっても環状凸部によって補強されるので取り扱い時に歪み等が発生することを回避できる。バックグラインド工程の後、リングフレームの中央に環状凸部を有するウエハを載置させ、リングフレームとウエハの裏面とにわたって支持用の粘着テープ(ダイシングテープ)を貼り付ける。ダイシングテープの貼付けによってマウントフレームが作成され、ダイシング工程へと供される。
【0004】
環状凸部によって段差が形成されたウエハに対し、ダイシングテープを例とする粘着シートを貼り付ける方法の一例としては、次のようなものが提案されている。すなわち、上下一対のハウジングからなるチャンバの接合部分に粘着シートを挟み込む。そしてチャンバ内を減圧し、当該粘着シートによって仕切られた2つの空間に差圧を発生させるとともに、当該粘着テープを凹入湾曲させてウエハ裏面に粘着シートを貼り付ける処理を行う。さらにチャンバにおける差圧を解消させた後、環状凸部の内側角部で接着しきれずに浮き上がっている粘着シートの当該内側角部に対し、第1押圧部材から気体を供給することによって2回目の貼付け処理を行っている(特許文献1を参照)。
【0005】
【文献】特開2013-232582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来装置では次のような問題がある。すなわち、従来の粘着シート貼付け方法では、粘着シートを貼り付けてから時間が経過するしたがって、環状凸部の内側角部からウエハ中心に向けて粘着シートが剥がれてゆくといった問題が生じている。また、従来の粘着シート貼付け方法では、粘着シートをウエハに貼り付ける際においてウエハに割れや欠けなどの損傷が発生するという問題も発生している。ウエハの損傷は、ウエハのうち薄型化されている部分、特に環状凸部の内側角部において比較的高い頻度で発生する。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、環状凸部が形成されている半導体ウエハの環状凸部形成面に対して、当該半導体ウエハに損傷が発生することをより確実に回避しつつ、粘着シートを精度よく貼り付けることができる粘着シート貼付け方法、粘着シート貼付け装置、および半導体製品の製造方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明者らが検討した結果、以下のような知見が得られた。すなわち、第1押圧部材を用いて2回目の貼付け処理を行う従来の構成では、粘着シートに作用する力が小さい。そのため、ウエハと粘着シートとの密着性が十分に向上させることが困難であるので、時間の経過とともに粘着シートがウエハから剥がれていくと考えられる。
【0009】
また2回目の貼付け処理において、ウエハの中央部と比べてウエハの環状凸部の内側角部に対して比較的大きい押圧力が作用する。このような押圧力の偏りに起因して、比較的大きい押圧力が作用するウエハの環状凸部の内側角部において特に高頻度で割れまたは欠けが発生すると考えられる。
【0010】
そして、第1押圧部材は気体供給孔を備え、金属または樹脂などによって構成される柱状部材である。そして従来構成では、当該第1押圧部材の底面をウエハに近づけて気体を供給する。第1押圧部材を近づけることにより、薄型化処理を受けて凹状となっているウエハの中央部に第1押圧部材が接触し、ウエハの薄い凹部が損傷するという事態が発生しうる。第1押圧部材の底面の平坦性が低い場合、ウエハの環状凸部の内側角部に第1押圧部材が近接している状態であっても、ウエハの他の部分(例えば中心部)に第1押圧部材が接触し、結果としてウエハに損傷が発生すると考えられる。
【0011】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る粘着シート貼付け方法は、一方の面の外周に環状凸部を有するワークの環状凸部形成面に粘着シートが付着されて構成されるシート複合体に対して、大気圧よりも高い圧力を加えることにより前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける貼付け過程と、
を備え
前記貼付け過程は、
前記ワークの前記環状凸部形成面とは逆側の面の全体が空間に接している状態で、前記シート複合体に対して、前記粘着シートから前記ワークに向かう第1の押圧力と、前記ワークから前記粘着シートに向かう第2の押圧力を作用させる
ことを特徴とするものである。
【0012】
(作用・効果)この構成によれば、貼付け過程において、シート複合体に対して大気圧よりも高い圧力を加えることにより、粘着シートをワークの環状凸部形成面に貼り付ける。この場合、粘着シートに対して十分に大きい押圧力を加えることができるので、ワークに貼り付けられた粘着シートとワークの環状凸部形成面との密着性をより向上できる。よって、時間経過後に粘着シートがワークから剥がれるという事態をより確実に防止できる。
【0013】
また、上述した発明において、前記シート複合体をチャンバに収容する収容過程を備え、前記貼付け過程は、前記収容過程の後、前記チャンバの内部空間の圧力を上げることにより前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付けることが好ましい。
【0014】
(作用・効果)この構成によれば、シート複合体をチャンバに収容した後、チャンバの内部空間の圧力を上げることにより、シート複合体に対して大気圧よりも高い圧力を加える。この場合、内部空間の加圧によって、粘着シートの全体にわたって押圧力を均一に作用させることができる。従って、粘着シートに作用する力の偏りに起因して粘着シートの表面に凹凸が発生することを確実に回避できるので、粘着シートをウエハに貼り付けた状態における粘着シートの平坦性をより確実に向上できる。また、粘着シートに作用する力の偏りに起因して、ウエハの一部に作用する力の偏りが生じてウエハが損傷するという事態も回避できる。
【0015】
また、上述した発明において、前記チャンバは上ハウジングと下ハウジングとを備え、前記貼付け過程は、前記上ハウジングと前記下ハウジングとによって前記粘着シートを挟み込むことにより、前記チャンバの内部空間を、前記の環状凸部形成面を上向きにした状態の前記ワークが配置される下空間と、前記粘着シートを介在して前記下空間と対向する上空間とに区画する上下空間形成過程と、前記上空間と前記下空間とのうち少なくとも前記上空間を加圧することにより、前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける空間加圧過程とを有することが好ましい。
【0016】
(作用・効果)この構成によれば、上ハウジングと前記下ハウジングとによって前記粘着シートを挟み込むことにより、チャンバの内部空間を下空間と上空間とに区画する。このとき、粘着シートがシール材として作用するので、チャンバの内部空間において下空間と上空間との間で気体が漏れることを回避できる。従って、少なくとも上空間を加圧することにより、上空間における加圧力は精度よく粘着シートに作用する。よって、ワークに貼り付けられた粘着シートとワークの環状凸部形成面との密着性をより向上できる。
【0017】
また、上述した発明において、前記粘着シートは、前記ワークの環状凸部形成面に応じた所定形状を有し、長尺の搬送用シートに保持されており、前記チャンバは上ハウジングと下ハウジングとを備え、前記貼付け過程は、前記上ハウジングと前記下ハウジングとによって前記搬送用シートを挟み込むことにより、前記チャンバの内部空間を、前記の環状凸部形成面を上向きにした状態の前記ワークが配置される下空間と、前記搬送用シートに保持された前記粘着シートを介在して前記下空間と対向する上空間とに区画する上下空間形成過程と、前記上空間と前記下空間とのうち少なくとも前記上空間を加圧することにより、前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける空間加圧過程とを有することが好ましい。
【0018】
(作用・効果)この構成によれば、粘着シートは、ワークの環状凸部形成面に応じた所定形状を予め有している。そのため、ワークの環状凸部形成面の位置および形状に応じて粘着シートを適切に環状凸部形成面へ貼り付けることができる。また、粘着シートを適切な所定形状に切断するなどの工程が不要となるので、粘着シートを貼り付ける工程を短縮化できる。
【0019】
また、粘着シートは長尺の搬送用シートに保持されており、上ハウジングと下ハウジングとによって搬送用シートを挟み込むことでチャンバを形成させる。この場合、ワークと粘着シートとをより密着させるために粘着力が高い材料を粘着シートとして用いる場合であっても、両ハウジングは粘着シートに接することなく搬送用シートを挟み込むことができる。そのため、チャンバに粘着シートが粘着して剥離せず、貼付け過程に支障が出るという事態を回避できる。
【0020】
さらに、粘着シートを長尺の搬送用シートに保持させることにより、粘着シートが予め所定形状に成型されている場合であっても、長尺状の搬送用シートを所定の経路に沿って繰り出し供給することにより、粘着シートを当該所定の経路に沿って精度よく搬送できる。すなわち、粘着シートを長尺状にして無駄なコストを発生させることを回避しつつ、粘着シートの搬送精度を向上できる。
【0021】
また、上述した発明において、前記上ハウジングの内部に配設されているシート状の弾性体を備え、前記上下空間形成過程において前記上ハウジングと前記下ハウジングとによって前記粘着シートを挟み込むことにより、前記粘着シートに前記シート状の弾性体が当接するように、前記シート状の弾性体は配設されることが好ましい。
【0022】
(作用・効果)この構成によれば、この構成によれば、差圧によってシート状の弾性体は全体にわたって、より均一な湾曲率で凸状に変形する。そのため、粘着シートはワークの環状凸部形成面の形状に応じて変形し易くなるので、環状凸部形成面と粘着シートとの密着性を向上できる。従って、粘着シートをより精度よく環状凸部形成面に貼り付けることができる。
【0023】
また、上述した発明において、前記下空間および前記上空間のうち少なくとも一方を加温することによって前記粘着シートを加温する加温過程を備え、前記貼付け過程は、前記加温過程によって加温された状態の前記粘着シートに対して大気圧よりも高い圧力を加えることにより前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付けることが好ましい。
【0024】
(作用・効果)この構成によれば、加温過程によって粘着シートを加温することにより、粘着シートはより柔らかくなる。すなわち、粘着シートはワークの環状凸部形成面の形状に応じて変形し易くなるので、環状凸部形成面と粘着シートとの密着性を向上できる。
【0025】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係る粘着シート貼付け装置は、一方の面の外周に環状凸部を有するワークの環状凸部形成面に粘着シートが付着されて構成されるシート複合体に対して、大気圧よりも高い圧力を加えることにより前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける貼付け機構と、を備え、前記貼付け機構は、前記ワークの前記環状凸部形成面とは逆側の面の全体が空間に接している状態で、前記シート複合体に対して、前記粘着シートから前記ワークに向かう第1の押圧力と、前記ワークから前記粘着シートに向かう第2の押圧力を作用させることを特徴とするものである。
【0026】
(作用・効果)本発明に係る貼付け機構は、シート複合体に対して大気圧よりも高い圧力を加えることにより、粘着シートをワークの環状凸部形成面に貼り付ける。この場合、粘着シートに対して十分に大きい押圧力を加えることができるので、ワークに貼り付けられた粘着シートとワークの環状凸部形成面との密着性をより向上できる。よって、時間経過後に粘着シートがワークから剥がれるという事態をより確実に防止できる。
【0027】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係る半導体製品の製造方法は、一方の面の外周に環状凸部を有するワークの環状凸部形成面に粘着シートが貼り付けられた状態となっている半導体製品を製造する半導体製品の製造方法であって、
前記ワークの環状凸部形成面に前記粘着シートが付着されて構成されるシート複合体に対して、大気圧よりも高い圧力を加えることにより前記粘着シートを前記環状凸部形成面に貼り付ける貼付け過程と、
を備え
前記貼付け過程は、
前記ワークの前記環状凸部形成面とは逆側の面の全体が空間に接している状態で、前記シート複合体に対して、前記粘着シートから前記ワークに向かう第1の押圧力と、前記ワークから前記粘着シートに向かう第2の押圧力を作用させる
ことを特徴とするものである。
【0028】
(作用・効果)この構成によれば、一方の面の外周に環状凸部を有するワークの環状凸部形成面に粘着シートが貼り付けられた状態となっている半導体製品を好適に製造できる。すなわち、貼付け過程において、シート複合体に対して大気圧よりも高い圧力を加えることにより、粘着シートをワークの環状凸部形成面に貼り付ける。この場合、粘着シートに対して十分に大きい押圧力を加えることができるので、貼付け過程を経ることによりシート複合体において粘着シートとワークの環状凸部形成面との密着性をより向上できる。よって、時間経過後に粘着シートがワークから剥がれるという事態をより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る粘着シート貼付け方法、粘着シート貼付け装置、および半導体製品の製造方法によれば、シート複合体に対して大気圧よりも高い圧力を加えることにより、粘着シートをワークの環状凸部形成面に貼り付ける。この場合、粘着シートに対して十分に大きい押圧力を加えることができるので、ワークに貼り付けられた粘着シートとワークの環状凸部形成面との密着性をより向上できる。よって、時間経過後に粘着シートがワークから剥がれるという事態をより確実に防止できる。また、当該大きい押圧力をワークの全体にわたって均一に加えることができるので、ワークの作用する押圧力の偏りに起因してワークに割れまたは欠けなどを例とする損傷が発生することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1に係る半導体ウエハの構成を示す図である。(a)は半導体ウエハの一部破断斜視図であり、(b)は半導体ウエハの裏面側の斜視図であり、(c)は半導体ウエハの部分縦断面図である。
図2】実施例1に係る粘着シートの構成を示す縦断面図である。
図3】実施例1に係る粘着シート貼付け装置の平面図である。
図4】実施例1に係る粘着シート貼付け装置の正面図である。
図5】実施例1に係る貼付けユニットの正面図である。
図6】実施例1に係るチャンバの縦断面図である。
図7】実施例1に係る粘着シート貼付け装置の動作を示すフローチャートである。
図8】実施例1に係るマウントフレームの斜視図である。
図9】実施例1に係るステップS2を説明する図である。
図10】実施例1に係るステップS3を説明する図である。
図11】実施例1に係るステップS3を説明する図である。
図12】実施例1に係るステップS4を説明する図である。
図13】実施例1に係るステップS4を説明する図である。
図14】実施例1に係るステップS5を説明する図である。
図15】実施例1に係るステップS6を説明する図である。
図16】実施例1に係るステップS6を説明する図である。
図17】実施例1に係るステップS7を説明する図である。
図18】実施例2に係る粘着シートおよび搬送用シートの構成を示す図である。(a)は粘着シートおよび搬送用シートの裏面側の斜視図であり、(b)は粘着シートおよび搬送用シートの縦断面図である。
図19】実施例2に係る粘着シート貼付け装置の動作を示すフローチャートである。
図20】実施例2に係るステップS1を説明する図である。
図21】実施例2に係るステップS2を説明する図である。
図22】実施例2に係るステップS3を説明する図である。
図23】実施例2に係るステップS3を説明する図である。
図24】実施例2に係るステップS4を説明する図である。
図25】実施例2に係るステップS4を説明する図である。
図26】実施例2に係るステップS5を説明する図である。
図27】実施例2に係るステップS6を説明する図である。
図28】実施例2に係るステップS6を説明する図である。
図29】実施例2に係るステップS7を説明する図である。
図30】変形例に係る構成を説明する図である。
図31】変形例に係る構成を説明する図である。(a)は変形例に係る粘着テープおよび搬送用シートの構成を示す縦断面図であり、(b)は変形例に係るシート切断装置の構成を説明する縦断面図である。
図32】変形例に係る構成を説明する図である。(a)は変形例に係る弾性体を備える構成を示す縦断面図であり、(b)は弾性体を有しない構成において発生しうる問題点を説明する図であり、(c)は弾性体を有する構成における利点を説明する図である。
図33】変形例に係る構成を説明する図である。(a)は変形例に係る加温機構を備える構成を示す縦断面図であり、(b)は加温機構によって粘着テープを加温する工程の一例を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。実施例1に係る粘着シート貼付け装置1では、支持用の粘着テープDT(ダイシングテープ)を粘着シートとして用い、粘着シートを貼り付ける対象であるワークとして半導体ウエハW(以下、「ウエハW」とする)、およびリングフレームfを用いるものとする。すなわち実施例1に係る粘着シート貼付け装置1では、ウエハWおよびリングフレームfにわたって粘着テープDTを貼り付けることにより、マウントフレームMFが作成される。
【0032】
ウエハWは図1(a)ないし図1(c)に示すように、回路パターンが形成された表面に、回路保護用の保護テープPTが貼り付けられている状態でバックグラインド処理されたものである。ウエハWの裏面は、外周部を径方向に約3mmを残して研削(バックグラインド)されている。すなわち、裏面に扁平凹部Heが形成されるとともに、その外周に沿って環状凸部Kaが残存された形状に加工されたものが使用される。一例として、扁平凹部Heにおいて研削される深さdが数百μm、扁平凹部Heのウエハ厚さJが30μmないし50μmになるよう加工されている。したがって、裏面外周に形成された環状凸部Kaは、ウエハWの剛性を高める環状リブとして機能し、ハンドリングやその他の処理工程におけるウエハWの撓み変形を抑止する。なお、環状凸部Kaの内側角部について、符号Kfを用いて示している。内側角部Kfは、環状凸部Kaと扁平凹部Heとの境界に相当する。ウエハWの裏面は、本発明におけるワークの環状凸部形成面に相当する。
【0033】
本実施例に用いられる粘着テープDTは図2に示すように、非粘着性の基材Taと、粘着性を有する粘着材Tbとが積層した長尺状の構造を備えている。粘着材TbにはセパレータSが添設されている。すなわち粘着テープDTの粘着面にセパレータSが添設されており、セパレータSを粘着テープDTから剥離することによって粘着テープDTの粘着面が露出する。
【0034】
基材Taを構成する材料の例として、ポリオレフィン、ポリエチレン、エチレン-ビニル酢酸共重合体、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンメタアクリル酸共重合体、ポリプロピレン、メタアクリル酸テレフタレート、ポリアミドイミド、ポリウレタンエラストマーなどが挙げられる。なお、上述した材料を複数組み合わせたものを基材Taとして用いてもよい。また、基材Taは単層でもよいし、複数の層を積層させた構成でもよい。
【0035】
粘着材Tbは、粘着テープDTがウエハWおよびリングフレームfに粘着する状態を保持できる機能と、後のダイシング工程においてチップ部品の飛散を防止する機能とを担保できる材料で構成されることが好ましい。粘着材Tbを構成する材料の例として、アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。セパレータSの例として、長尺状の紙材やプラスチックなどが挙げられる。なお、粘着材Tbの代わりに接着材または粘接着材を用いてもよい。
【0036】
<全体構成の説明>
ここで、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の全体構成について説明する。図3は、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の基本構成を示す平面図である。粘着シート貼付け装置1は、横長の矩形部1aと、突出部1bとを備えた構成になっている。突出部1bは、矩形部1aの中央部で連接して上側に突出する構成になっている。なお、以後の説明において、矩形部1aの長手方向を左右方向(x方向)、これと直交する水平方向(y方向)を前後方向と呼称する。
【0037】
矩形部1aの右側にはウエハ搬送機構3が配備されている。矩形部1aの下側右寄りの位置には、ウエハWを収容した2個の容器5が並列に載置されている。容器5の内部には、表面に保護テープPTが貼り付けられているウエハWが、表面側を下向きにした状態で多段に収納されている。矩形部1aの左端には、ウエハWのマウントを完了した図8に示すマウントフレームMFを回収するフレーム回収部6が配備されている。
【0038】
矩形部1aの上側の右からアライナ7、昇降テーブル8、保持テーブル9、およびフレーム供給部12の順に配備されている。突出部1bには、支持用の粘着テープDT(ダイシングテープ)をウエハWの裏面とリングフレームfとにわたって貼り付ける貼付けユニット13が配備されている。
【0039】
ウエハ搬送機構3は図4に示すように、矩形部2aの上部に左右水平に架設された案内レール15の右側に左右往復移動可能に支持されたウエハ搬送装置16が備えられている。また、案内レール15の左側には左右移動可能に支持されたフレーム搬送装置17が備えられている。
【0040】
ウエハ搬送装置16は、容器5のいずれか一方から取り出したウエハWを左右および前後に搬送できるよう構成されている。ウエハ搬送装置16は、左右移動可動台18と前後移動可動台19とが装備されている。
【0041】
左右移動可動台18は、案内レール15に沿って左右方向へ往復移動可能となるように構成されている。前後移動可動台19は、左右移動可動台18に備えられた案内レール20に沿って前後方向へ往復移動可能となるように構成されている。
【0042】
さらに、前後移動可動台19の下部には、ウエハWを保持する保持ユニット21が装備されている。保持ユニット21は縦方向に延伸する昇降レール22に沿って上下方向(z方向)に往復移動可能となるよう構成されている。また保持ユニット21は図示しない回転軸により、z方向の軸周りに旋回可能となっている。
【0043】
保持ユニット21の下部には、馬蹄形の保持アーム23が装備されている。保持アーム23の保持面には、僅かに突出した複数個の吸着パッドが設けられており、当該吸着パッドを介してウエハWを吸着保持する。また、保持アーム23は、その内部に形成された流路と、この流路の基端側で連接された接続流路を介して圧空装置に連通接続されている。
【0044】
上記した可動構造を利用することで、吸着保持したウエハWを保持アーム23によって前後移動、左右移動、および、z方向軸周りの旋回移動を行うことができるようになっている。
【0045】
フレーム搬送装置17は、左右移動可動台24と、前後移動可動台25と、左右移動可動台24の下部に連結された屈伸リンク機構26と、屈伸リンク機構26の下端に装備された吸着プレート27などを備えている。吸着プレート27はウエハWを吸着保持する。吸着プレート27の周りには、リングフレームfを吸着保持する複数個の吸着パッド28が配備されている。従って、フレーム搬送装置17は、保持テーブル9に載置保持されたリングフレームfまたはマウントフレームMFを吸着保持して、昇降および前後左右に搬送することができる。吸着パッド28は、リングフレームfのサイズに対応して水平方向にスライド調節可能になっている。
【0046】
昇降テーブル8はウエハWを保持するものであり、一例としてウエハWと同形状以上の大きさを有する金属製のチャックテーブルである。昇降テーブル8の好ましい構成として、内部に設けられている吸引装置によりウエハWを吸着保持するように構成されている。昇降テーブル8は図5などに示すように、昇降テーブル8を支持する支持台51を貫通するロッド52の一端と連結されている。ロッド52の他端はモータなどを備えるアクチュエータ53に駆動連結されている。ロッド52およびアクチュエータ53により、昇降テーブル8は昇降移動が可能となっている。
【0047】
昇降テーブル8は図3および図5に示すように、前後方向に付設されているレール54に沿って、初期位置と貼付け位置との間を往復移動可能に構成されている。初期位置は矩形部1aの内部にあり、図3において昇降テーブル8が実線で示されている位置である。当該初期位置において、ウエハWが昇降テーブル8に載置される。
【0048】
貼付け位置は突出部1bの内部にあり、図3において昇降テーブル8が点線で示されている位置である。貼付け位置へ昇降テーブル8が移動することにより、昇降テーブル8に載置されているウエハWを粘着テープDTに接触させることが可能となる。
【0049】
保持テーブル9は、図5および図6などに示すように、ウエハWと同形状以上の大きさを有する金属製のチャックテーブルであり、外部に配備されている加圧装置32と連通接続されている。加圧装置32の動作は、制御部33によって制御される。また、保持テーブル9は吸引装置が内部に設けられており、ウエハWを吸着保持するように構成されている。
【0050】
実施例1において、保持テーブル9は外周部に環状の突起部9aを備えており全体として中空となっている。突起部9aは平面視においてウエハWの環状凸部Kaの配置と略一致する位置に構成されており、突起部9aがウエハWの環状凸部Kaを支持することによって、保持テーブル9は薄い扁平凹部Heに接触することなくウエハWを保持できる。
【0051】
また図5に示すように、保持テーブル9は、チャンバ29を構成する下ハウジング29Aに収納されており、下ハウジング29Aを貫通するロッド35の一端と連結されている。ロッド35の他端はモータなどを備えるアクチュエータ37に駆動連結されている。そのため、保持テーブル9はチャンバ29の内部で昇降移動が可能となっている。
【0052】
下ハウジング29Aは、当該下ハウジング29Aを外囲するフレーム保持部38を備えている。フレーム保持部38は、リングフレームfを載置したとき、リングフレームfの上面と下ハウジング29Aの円筒頂部とが面一になるように構成されている。また、下ハウジング29Aの円筒頂部は離型処理が施されていることが好ましい。
【0053】
なお図3に示すように、保持テーブル9は下ハウジング29Aとともに、前後方向に付設されているレール40に沿って、初期位置と貼付け位置との間を往復移動可能に構成されている。初期位置は矩形部1aの内部にあり、図3において保持テーブル9が実線で示されている位置である。当該初期位置において、リングフレームfが保持テーブル9に載置される。
【0054】
貼付け位置は突出部1bの内部にあり、図3において保持テーブル9が点線で示されている位置である。貼付け位置へ保持テーブル9が移動することにより、保持テーブル9に載置されているウエハWに対して粘着テープDTを貼り付ける貼付け工程を実行することが可能となる。
【0055】
フレーム供給部12は、所定枚数のリングフレームfを積層収納した引き出し式のカセットを収納する。
【0056】
貼付けユニット13は、図5に示すように、シート供給部71、セパレータ回収部72、シート貼付け部73およびシート回収部74などから構成されている。シート供給部71は、支持用の粘着テープDTが巻回された原反ロールの装填された供給ボビンを備えている。そして、シート供給部71の供給ボビンから粘着テープDTを貼付け位置に供給する過程で剥離ローラ75によってセパレータSを剥離するよう構成されている。なお、シート供給部71に設けられている供給ボビンは、電磁ブレーキに連動連結されて適度の回転抵抗がかけられている。したがって、供給ボビンから過剰なテープの繰り出しが防止されている。
【0057】
セパレータ回収部72は、粘着テープDTから剥離されたセパレータSを巻き取る回収ボビンが備えられている。この回収ボビンは、モータよって正逆に回転駆動制御されるようになっている。
【0058】
シート貼付け部73は、チャンバ29、シート貼付け機構81およびシート切断機構82などから構成されている。
【0059】
チャンバ29は、下ハウジング29Aと上ハウジング29Bとによって構成される。下ハウジング29Aは保持テーブル9を囲繞するように配設されており、保持テーブル9とともに初期位置と封止位置との間を前後方向に往復移動する。上ハウジング29Bは突出部1bに配備されており、昇降可能に構成される。
【0060】
下ハウジング29Aおよび上ハウジング29Bには、図6に示すように、流路101を介して加圧装置32と連通接続されている。なお、上ハウジング29B側の流路101には、電磁バルブ103が備えられている。また、両ハウジング29A、29Bには、大気開放用の電磁バルブ105、107を備えた流路109がそれぞれ連通接続されている。
【0061】
さらに、上ハウジング29Bには、一旦減圧した内圧をリークにより調整する電磁バルブ110を備えた流路111が連通接続されている。なお、これら電磁バルブ103、105、107、110の開閉操作、加圧装置32の作動は、制御部33によって行われている。
【0062】
すなわち加圧装置32は、下ハウジング29A側の空間の気圧と上ハウジング29B側の空間の気圧とを独立して加圧調節できるように構成されている。
【0063】
シート貼付け機構81は、可動台84、貼付けローラ85、ニップローラ86などを備えている。可動台84は、左右方向に架設された案内レール88に沿って左右水平に移動する。貼付けローラ85は、可動台84に備わったシリンダの先端に連結されたブラケットに軸支されている。ニップローラ86はシート回収部74側に配備されており、モータにより駆動する送りローラ89とシリンダによって昇降するピンチローラ90とを備えている。
【0064】
シート切断機構82は、上ハウジング29Bを昇降させる昇降駆動台91に配備されており、z方向に延びる支軸92と、支軸92の周りに回転するボス部93を備えている。ボス部93は、径方向に延伸する複数の支持アーム94を備えている。少なくとも1つの支持アーム94の先端には、粘着テープDTをリングフレームfに沿って切断する円板形のカッタ95が上下移動可能となるように配備されている。他の支持アーム94の先端には、押圧ローラ96が上下移動可能となるように配備されている
【0065】
シート回収部74は、切断後に剥離された不要な粘着テープDTを巻き取る回収ボビンを備えている。この回収ボビンは、図示されていないモータよって正逆に回転駆動制御されるようになっている。
【0066】
フレーム回収部6は、図4に示すように、マウントフレームMFを積載して回収するカセット41が配備されている。このカセット41は、装置フレーム43に連結固定された縦レール45と、この縦レール45に沿ってモータ47でネジ送り昇降される昇降台49が備えられている。したがって、フレーム回収部6は、マウントフレームMFを昇降台49に載置してピッチ送り下降するよう構成されている。
【0067】
<動作の概要>
ここで、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の基本動作を説明する。図7は、粘着シート貼付け装置1を用いて、ウエハWに粘着テープDTを貼り付ける一連の工程を説明するフローチャートである。
【0068】
ステップS1(ワークの供給)
貼付け指令が出されると、フレーム供給部12から下ハウジング29Aのフレーム保持部38へリングフレームfが搬送されるとともに、容器5から昇降テーブル8へウエハWが搬送される。
【0069】
すなわち、フレーム搬送装置17はフレーム供給部12からリングフレームfを吸着してフレーム保持部38に移載する。フレーム搬送装置17がリングフレームfの吸着を解除して上昇すると、リングフレームfの位置合わせを行う。当該位置合わせは、一例としてフレーム保持部38を囲繞するように立設された複数の支持ピンを中央方向へ同期的に移動させることによって行われる。フレーム保持部38がリングフレームfを保持すると、下ハウジング29Aは保持テーブル9とともに、レール40に沿って初期位置からシート貼付け機構81側の貼付け位置へと移動する。
【0070】
フレーム搬送装置17がリングフレームfを搬送する一方、ウエハ搬送装置16は、容器5の内部で多段に収納されているウエハWの同士の間に保持アーム23を挿入する。保持アーム23は、ウエハWを吸着保持して搬出し、アライナ7に搬送する。アライナ7は、その中央から突出した吸着パッドによりウエハWの中央を吸着する。同時に、ウエハ搬送装置16は、ウエハWの吸着を解除して上方に退避する。アライナ7は、吸着パッドでウエハWを保持して回転させながらノッチなどに基づいて位置合わせを行う。
【0071】
位置合わせが完了すると、ウエハWを吸着した吸着パッドをアライナ7の面から突出させる。その位置にウエハ搬送装置16が移動し、ウエハWを吸着保持する。吸着パッドは、吸着を解除して下降する。
【0072】
ウエハ搬送装置16は昇降テーブル8の上方に移動し、保護テープPTが貼り付けられている表面側を下向きにした状態で、ウエハWを昇降テーブル8に載置させる。昇降テーブル8がウエハWを吸着保持すると、昇降テーブル8はレール54に沿って初期位置からシート貼付け機構81側の貼付け位置へと移動する。昇降テーブル8および保持テーブル9の各々が貼付け位置へと移動した状態が、図9に示されている。
【0073】
ステップS2(粘着シートの供給)
ウエハ搬送装置16などによるワークの供給が行われると、貼付けユニット13において粘着テープDTの供給を行う。すなわち、シート供給部71から所定量の粘着テープDTがセパレータSを剥離されながら繰り出される。全体として長尺状である粘着テープDTは、所定の搬送経路に沿って貼付け位置の上方へと案内される。
【0074】
ステップS3(第1貼付け過程)
ワークおよび粘着テープDTが供給されると、第1貼付け過程を開始する。すなわち、制御部33はアクチュエータ53を駆動させて昇降テーブル8を上昇させる。昇降テーブル8の上昇により、図10に示すようにウエハWの裏面が粘着テープDTに接触し、ウエハWの裏面が粘着テープDTによって覆われる。
【0075】
当該接触により、粘着層TbにウエハWの裏面が付着し、ウエハWが粘着テープDTによって保持される。ウエハWと粘着テープDTとが一体化したものを以下、シート複合体Mとする。シート複合体Mが形成された後、粘着テープDTを所定量繰り出すことによって、図11に示すように、シート複合体Mは保持テーブル9の上方へと搬送される。シート複合体Mが搬送されるとともに、昇降テーブル8は下降して初期状態へと復帰する。シート複合体Mが形成されて保持テーブル9へと搬送されることにより、ステップS3に係る第1貼付け過程は完了する。
【0076】
ステップS4(チャンバの形成)
シート複合体Mが保持テーブル9の上方へと搬送されると、貼付けローラ85が下降する。そして図12に示すように、粘着テープDTの上を転動しながらリングフレームfと下ハウジング29Aの頂部とにわたって粘着テープDTを貼り付ける。
【0077】
リングフレームfに粘着テープDTが貼り付けられると、貼付けローラ85を初期位置へと復帰させるとともに、上ハウジング29Bを下降させる。上ハウジング29Bの下降に伴って、図13に示すように、下ハウジング29Aの頂部に貼り付けられている部分の粘着テープDTは上ハウジング29Bと下ハウジング29Aによって挟持され、チャンバ29が構成される。
【0078】
このとき、粘着テープDTがシール材として機能するとともに、チャンバ29は粘着テープDTによって2つの空間に分割される。すなわち、粘着テープDTを挟んで下ハウジング29A側の下空間H1と上ハウジング29B側の上空間H2とに分割される。下ハウジング29A内に位置するウエハWは、粘着テープDTと所定のクリアランスを有して近接対向している。
【0079】
ステップS5(第2貼付け過程)
チャンバ29を形成させた後、第2貼付け過程を開始する。まず、制御部33はアクチュエータ37を制御して保持テーブル9を初期位置へと下降させる。次に、制御部33は、図6に示す電磁バルブ105、107、110を閉じた状態で、加圧装置32を作動させて下空間H1および上空間H2に気体を供給し、下空間H1および上空間H2を特定値にまで加圧する。特定値の例として0.3MPa~0.5MPaが挙げられる。加圧装置32が加圧操作を行うことにより、下空間H1の気圧および上空間H2の気圧はいずれも大気圧より高くなる。
【0080】
上空間H2の加圧により、図14に示すように、上空間H2から粘着テープDTに向けて押圧力V1が作用する。なお、上空間H2の全体が加圧されるので、押圧力V1は粘着テープDTの全体にわたって均一に作用する。また、下空間H1の全体が加圧されることにより、下空間H1からウエハWの下面(本実施例ではウエハWの表面側)に向けて押圧力V2が均一に作用する。すなわち、押圧力V1および押圧力V2の作用によって、粘着テープDTがウエハWの裏面に精度良く貼り付けられていく。その結果、ウエハWと粘着テープDTとの密着性が向上するので、時間の経過によって粘着テープDTがウエハWの裏面から剥がれる、という事態が発生することを回避できる。
【0081】
下空間H1および上空間H2を大気圧より高い気圧に加圧した状態で、粘着テープDTとウエハWとの間に押圧力を所定時間作用させた後、制御部33は加圧装置32を停止させる。そして制御部33は電磁バルブ103、105、107、110を全開にして下空間H1および上空間H2を大気開放させる。制御部33は上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を開放するとともに、保持テーブル9を上昇させてウエハWの表面を保持テーブル9のウエハ保持面に当接させる。第2貼付け過程は本発明における貼付け過程に相当する。
【0082】
ステップS6(シートの切断)
なお、チャンバ29内においてステップS5に係る工程を行っている間に、シート切断機構82を作動させて粘着テープDTの切断を行う。このとき、図15に示すように、リングフレームfに貼り付けられた粘着テープDTをカッタ95がリングフレームfの形状に切断するとともに、押圧ローラ96がカッタ95に追従してリングフレームf上のシート切断部位を転動しながら押圧してゆく。
【0083】
上ハウジング29Bを上昇させた時点でステップS5に係る第2貼付け過程は完了しているので、ピンチローラ90を上昇させて粘着テープDTのニップを解除する。その後、図16に示すように、ニップローラ86を移動させてシート回収部74に向けて切断後の不要な粘着テープDTを巻き取り回収してゆくとともに、シート供給部71から所定量の粘着テープDTを繰り出す。ステップS6までの各工程により、シート複合体Mはリングフレームfと一体化される。その結果、粘着テープDTを介してリングフレームfおよびウエハWが一体化されたマウントフレームMFが形成される。
【0084】
不要な粘着テープDTが巻き取り回収されると、ニップローラ86および貼付けローラ85は初期位置に復帰する。そしてマウントフレームMFを保持している状態で保持テーブル9は貼付け位置から初期位置へと移動する。
【0085】
ステップS7(マウントフレームの回収)
保持テーブル9が初期位置に復帰すると、図17に示すように、フレーム搬送装置17に設けられている吸着パッド28がマウントフレームMFを吸着保持し、下ハウジング29AからマウントフレームMFを離脱させる。マウントフレームMFを吸着保持したフレーム搬送装置17は、マウントフレームMFをフレーム回収部6へと搬送する。搬送されたマウントフレームMFは、カセット41に積載収納される。
【0086】
以上で、ウエハWに粘着テープDTを貼り付ける一巡の動作が終了する。以後、マウントフレームMFが所定数に達するまで上記処理が繰り返される。このように、粘着テープDTがウエハWに密着して貼り付けられた状態となっているシート複合体Mが、粘着シート貼付け装置1によって製造される。第2貼付け過程によって粘着テープDTがウエハWに貼り付けられた状態となっているシート複合体Mは、本発明における半導体製品に相当する。
【0087】
<実施例1の構成による効果>
上記実施例1に係る装置によれば、第1貼付け過程によって粘着テープDTをウエハWに貼り付けた後、第2貼付け過程を行うことにより、粘着テープDTをウエハWに対してさらに精度良く密着するように貼り付ける。本発明に係る第2貼付け過程では、下空間H1および上空間H2の気圧を大気圧より大きくなるように加圧させることにより、粘着テープDTを精度良くウエハWの裏面に貼り付ける。
【0088】
従来の構成では、真空装置を用いてチャンバの内部を減圧することによって発生する差圧によって粘着テープをウエハに貼り付ける。しかし、大気圧状態からの減圧によって発生する差圧の大きさは、大気圧以下となる。すなわち差圧を用いて粘着テープDTをウエハWに貼り付ける場合、ウエハWの裏面に対して粘着テープDTを押圧させる力の大きさに上限が存在する。
【0089】
従って、減圧による差圧を用いて粘着テープDTをウエハWに接触させた状態において、粘着テープDTとウエハWとの密着性は低い。また、第1押圧部材を用いて2回目の貼付けを行う従来の構成では、粘着テープDTのうち限られた部分にしか押圧力を作用させることができない。また、当該押圧力の大きさも不十分であるので、粘着テープDTとウエハWとの密着性を向上させることが困難である。
【0090】
これに対し、本発明では加圧装置32を用いてチャンバ29内の上空間H1および下空間H2を大気圧より大きい気圧となるように加圧する。すなわち第2貼付け過程では減圧によって発生する差圧より十分に大きい押圧力V1、V2を粘着テープDTおよびウエハWに作用させることができる。また、押圧力V1、V2はウエハWに貼り付けられる粘着テープDTの全面にわたって作用する。従って、第2貼付け過程を行うことによって、粘着テープDTとウエハWとの密着性を大きく向上できるので、一連の貼付け処理が完了した後に時間が経過しても、粘着テープDTがウエハWから剥がれることを回避できる。
【0091】
また、第2貼付け過程では加圧装置32を適宜制御することにより、押圧力V1およびV2の大きさを任意の値に調節できる。従って、粘着材Tbの構成材料、またはウエハWのサイズおよび環状凸部Kaの厚みを例とする各種条件が変更される場合であっても、押圧力V1およびV2の大きさを適宜調節することにより、確実に粘着テープDTをウエハWの環状凸部形成面に貼り付けることができる。さらに、適切な大きさの押圧力V1およびV2が粘着テープDTの全体にわたって均一に作用するので、過剰な押圧力の作用または押圧力の偏りに起因してウエハWが破損という事態を回避できる。
【実施例2】
【0092】
以下、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。実施例1では長尺状の粘着テープDTをウエハWの裏面とリングフレームfとにわたって貼り付けた後、ワークの形状(ここでは、ウエハWまたはリングフレームfの形状)に応じた所定の形状に切断する構成を例にとって説明した。実施例2では、予めワークの形状に応じた所定の形状を有する粘着テープを、当該ワークに貼り付ける構成を例にとって説明する。なお、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分について詳述する。
【0093】
まず、実施例2に係る粘着テープDTの構成について説明する。図18(a)は搬送用シートPおよび粘着テープDTの裏面側を示す斜視図であり、図18(b)は搬送用シートPおよび粘着テープDTの縦断面図である。
【0094】
実施例2に係る粘着テープDTは、図18(a)に示すように、長尺状の搬送用シートPに保持されている。すなわち、長尺状の搬送用シートPの一方の面に、所定形状の粘着テープDTが所定のピッチで貼付け保持されている。粘着テープDTはウエハWにおける環状凸部Kaの形成面(本実施例では裏面)の形状に応じた所定の形状に予め切断されている。実施例2において、粘着テープDTは予め円形状に切断されているものとする。
【0095】
搬送用シートPは図18(b)に示すように、非粘着性の基材Paと、粘着性を有する粘着材Pbとが積層した構造を備えている。基材Paを構成する材料の例として、ポリオレフィン、ポリエチレンなどが挙げられる。粘着材Pbを構成する材料の例として、アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。粘着テープDTの基材Taが搬送用シートPの粘着材Tbに貼付けられることにより、搬送用シートPは粘着テープDTを保持する。本実施例において粘着テープDTの形状は円形状であるが、ウエハWの形状に応じて適宜変更可能である。
【0096】
実施例2に係る粘着シート貼付け装置1は、図3ないし図6に示す実施例1に係る装置と基本的構成が共通する。但し、シート供給部71には所定形状に予め成型された粘着テープDTを複数保持している搬送用シートPが装填される。シート切断機構82は、リングフレームfに貼り付けられている部分の搬送用シートPを切断する。シート回収部74は、シート切断機構82によって搬送用シートPが切断された後、マウントフレームMFの周囲に残る不要となった搬送用シートPを回収する構成となっている。
【0097】
<実施例2における動作>
ここで、実施例2に係る粘着シート貼付け装置1の動作を説明する。図19は、実施例2に係る粘着シート貼付け装置1を用いて、ウエハWに粘着テープDTを貼り付ける一連の工程を説明するフローチャートである。実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の動作と同一の工程については説明を簡略化し、異なる工程について詳述する。
【0098】
ステップS1(ワークの供給)
貼付け指令が出されると、実施例1と同様にウエハWおよびリングフレームfの供給を行う。すなわち、フレーム供給部12に収納されているリングフレームfはフレーム搬送装置17によってフレーム保持部38に移載される。フレーム保持部38がリングフレームfを保持すると、下ハウジング29Aは保持テーブル9とともに、レール40に沿って初期位置からシート貼付け機構81側の貼付け位置へと移動する。
【0099】
そして容器5に収納されているウエハWは、ウエハ搬送装置16によってアライナ7を経由して昇降テーブル8に移載される。昇降テーブル8が基板10を吸着保持すると、昇降テーブル8はレール54に沿って初期位置からシート貼付け機構81側の貼付け位置へと移動する。昇降テーブル8および保持テーブル9の各々が貼付け位置へと移動した状態は図20に示されている。
【0100】
ステップS2(粘着シートの供給)
ウエハ搬送装置16などによるワークの供給が行われると、貼付けユニット13において粘着テープDTの供給を行う。すなわち、シート供給部71から所定量の粘着テープDTが、セパレータSを剥離されながら搬送用シートPとともに繰り出される。全体として長尺状である搬送用シートPは、所定の搬送経路に沿って貼付け位置の上方へと案内される。このとき図21に示すように、搬送用シートPに保持されている粘着テープDTは、昇降テーブル8に載置されているウエハWの上方に位置するようにポジショニングが行われる。
【0101】
ステップS3(第1貼付け過程)
ワークおよびウエハWが供給されると、実施例1と同様に第1貼付け過程を実行する。すなわち、制御部33はアクチュエータ53を駆動させて昇降テーブル8を上昇させる。昇降テーブル8の上昇により、図22に示すようにウエハWの裏面が粘着テープDTに接触し、ウエハWの裏面が粘着テープDTによって覆われる。
【0102】
当該接触により粘着層TbにウエハWの裏面が付着し、ウエハWが粘着テープDTによって保持される。そしてウエハWと粘着テープDTとが一体化されたシート複合体Mが作成される。シート複合体Mが作成された後、粘着テープDTを所定量繰り出すことによって、図23に示すように、シート複合体Mは保持テーブル9の上方へと搬送される。シート複合体Mが搬送されるとともに、昇降テーブル8は下降して初期状態へと復帰する。
【0103】
ステップS4(チャンバの形成)
シート複合体Mが保持テーブル9の上方へと搬送されると、チャンバ29を形成させる。すなわち図24に示すように、貼付けローラ85が下降する。そして、搬送用シートPの上を転動しながらリングフレームfと下ハウジング29Aの頂部とにわたって搬送用シートPを貼り付ける。この貼付けローラ85の移動に連動して、シート供給部71から所定量の粘着テープDTがセパレータSを剥離されながら搬送用シートPとともに繰り出される。
【0104】
リングフレームfに搬送用シートPが貼り付けられると、貼付けローラ85を初期位置へと復帰させるとともに、上ハウジング29Bを下降させる。上ハウジング29Bの下降に伴って、図25に示すように、下ハウジング29Aの頂部に貼り付けられている部分の搬送用シートPは上ハウジング29Bと下ハウジング29Aによって挟持され、チャンバ29が形成される。このとき、搬送用シートPがシール材として機能するとともに、チャンバ29は搬送用シートPによって下空間H1と上空間H2とに分割される。
【0105】
ステップS5(第2貼付け過程)
チャンバ29を形成させた後、実施例1と同様に第2貼付け過程を実行させる。まず、制御部33は保持テーブル9を下降させるとともに、加圧装置32を作動させて下空間H1および上空間H2に気体を供給し、下空間H1および上空間H2を特定値にまで加圧する。加圧装置32が加圧操作を行うことにより、下空間H1の気圧および上空間H2の気圧はいずれも大気圧より高くなる。
【0106】
上空間H2の加圧により、図26に示すように、上空間H2から粘着テープDTに向けて押圧力V1が均一に作用する。また、下空間H1の全体が加圧されることにより、下空間H1からウエハWの下向きの面に対して押圧力V2が均一に作用する。すなわち、十分に大きな力である押圧力V1および押圧力V2の作用によって、粘着テープDTがウエハWの裏面に精度良く貼り付けられていき、ウエハWと粘着テープDTとの密着性が向上する。
【0107】
下空間H1および上空間H2を大気圧より高い気圧に加圧した状態で、粘着テープDTとウエハWとの間に押圧力を所定時間作用させた後、制御部33は加圧装置32を停止させる。そして制御部33は電磁バルブ103、105、107、110を全開にして下空間H1および上空間H2を大気開放させる。制御部33は上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を開放するとともに、保持テーブル9を上昇させてウエハWの表面を保持テーブル9のウエハ保持面に当接させる。
【0108】
ステップS6(搬送用シートの切断)
なお、チャンバ29内においてステップS5に係る工程を行っている間に、シート切断機構82を作動させる。実施例2において、シート切断機構82は搬送用シートPを切断するという点で実施例1の工程と異なる。すなわち図27に示すように、リングフレームfに貼り付けられた搬送用シートPをカッタ95がリングフレームfの形状に切断するとともに、押圧ローラ96がカッタ95に追従してリングフレームf上のシート切断部位を転動しながら押圧してゆく。
【0109】
搬送用シートPを円形に切断した後、上ハウジング29Bを上昇させる。上ハウジング29Bを上昇させた時点でステップS5に係る過程は完了しているので、ピンチローラ90を上昇させて粘着テープDTのニップを解除する。その後、図28に示すように、ニップローラ86を移動させてシート回収部74に向けて切断後の不要な搬送用シートPを巻き取り回収してゆくとともに、シート供給部71から所定量の粘着テープDTを搬送用シートPとともに繰り出す。
【0110】
ステップS6までの各工程により、マウントフレームMFが形成される。実施例2に係るマウントフレームMFにおいて、粘着テープDTおよび搬送用シートPを介してリングフレームfおよびウエハWが一体化されている。不要な搬送用シートPが巻き取り回収されると、ニップローラ86および貼付けローラ85は初期位置に復帰する。そしてマウントフレームMFを保持している状態で保持テーブル9は貼付け位置から初期位置へと移動する。
【0111】
ステップS7(マウントフレームの回収)
保持テーブル9が初期位置に復帰すると、図29に示すように、フレーム搬送装置17に設けられている吸着パッド28がマウントフレームMFを吸着保持し、下ハウジング29AからマウントフレームMFを離脱させる。マウントフレームMFを吸着保持したフレーム搬送装置17は、マウントフレームMFをフレーム回収部6へと搬送する。搬送されたマウントフレームMFは、カセット41に積載収納される。
【0112】
以上で、ウエハWに粘着テープDTを貼り付ける一巡の動作が終了する。以後、マウントフレームMFが所定数に達するまで上記処理が繰り返される。実施例2に係る粘着シート貼付け装置1を用いることにより、予め所定の形状に切断されている粘着テープDTを用いる場合であっても、実施例1と同様の効果を得ることができる。すなわち、環状凸部を有するウエハWの環状凸部形成面に粘着テープDTを貼り付ける場合において、ウエハに損傷が発生することを回避しつつ、粘着テープDTを精度よくウエハWに貼り付けることができる。
【0113】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。例として、本発明は下記のように変形実施することができる。
【0114】
(2)各実施例に係るステップS5において、加圧装置32は下空間H1および上空間H2の両方の内部を加圧したが、これに限られない。すなわち、加圧装置32は上空間H2のみを大気圧より高い気圧になるまで加圧し、押圧力V1によって粘着テープDTをより精度良く貼り付けてもよい。
【0115】
(3)各実施例に係るステップS5において、加圧装置32を用いてチャンバ29の内部の気圧を大気圧より高くすることにより、粘着テープDTをウエハWに密着させるように押圧させる押圧力V1を発生させている。しかし、ステップS5に係る工程は、粘着テープDTとウエハWとの間に大気圧より大きい押圧力を発生させる構成であれば、チャンバ29を用いる構成に限られない。
【0116】
チャンバ29を省略する構成の一例として、図30に示すように、保持テーブル9の上方に押圧プレート141を配設し、押圧プレート141を下降させて封止シートSを押圧することによって押圧力V1を加える構成が挙げられる。
【0117】
押圧部材141は、底面が平坦となっており、粘着テープDTの上方に位置するように配設される。そのため、押圧部材141を下降させることにより、平坦な押圧部材141の底面が粘着テープDTを押圧し、粘着テープDTは凸状に変形してウエハWに接触することができる。
【0118】
(4)各実施例において、支持用の粘着テープDTをウエハWに貼り付ける構成を例として説明したが、ウエハWに貼り付ける粘着シートはこれに限ることはない。回路保護用の粘着テープを例とするシート状の粘着材を貼り付ける構成であれば、各実施例に係る構成を適用できる。
【0119】
(5)各実施例において、粘着シートを貼りつける対象となるワークとして、ウエハWおよびリングフレームfを例示したが、ワークはこれに限られない。一例として、リングフレームfを省略し、ウエハWのみに粘着シートを貼り付けてもよい。また、本実施例に係る構成は、基板、パネル、など各種半導体用部材をワークとして適用することができる。さらにワークの形状としては円形状の他、矩形状、多角形状、略円形状などであってもよい。
【0120】
(6)各実施例において、保持テーブル9を所定のタイミングで昇降移動させて粘着テープDTをウエハWに貼り付けているが、保持テーブル9の昇降移動は適宜変更してもよい。一例として、ステップS5に係る加圧処理は保持テーブル9を下降させた後に行う構成に限られず、上昇状態を維持しつつ加圧処理を行ってもよい。
【0121】
(7)各実施例において、フレーム保持部38は下ハウジング29Aの外部に配設されているが、下ハウジング29Aの内部にフレーム保持部38を設けてもよい。この場合、ステップS4以降の過程は、リングフレームfおよびウエハWの各々をチャンバ29の内部に収納した状態で行われる。
【0122】
(8)実施例2において、粘着テープDTは、ウエハWの環状凸部形成面の形状に応じた所定の形状となるように予め成型されているがこれに限られない。すなわちシート供給部71は、長尺状の搬送用シートPが添設されている長尺状の粘着テープDTを装填してもよい。長尺状の搬送用シートPが添設されている長尺状の粘着テープDTの構成は、図31(a)に示す通りである。この場合、粘着シート貼付け装置1はチャンバ29の上流にシート切断装置201を備えており、シート切断装置201が長尺状の粘着テープDTを所定の形状に成型する。
【0123】
シート切断装置201の構成は、図31(b)に示す通りである。シート切断装置201は、支持テーブル203と、カッタ205と、粘着シート回収部207とを備えている。なお、シート供給部71から繰り出される粘着テープDTおよび搬送用シートPは、図示しない反転装置によって反転し、粘着テープDTが搬送用シートPの上側となるような状態でシート切断装置201へと供給される。
【0124】
支持テーブル203は、シート供給部71から方向Lに沿って繰り出し供給された長尺状の粘着テープDTおよび搬送用シートPのうち、下側となっている搬送用シートPを水平に受け止めるように配設されている。カッタ205は支持テーブル203の上方に配設されており、図示しない可動台によって昇降移動可能となっている。カッタ205の一例として円環状のトムソン刃が用いられる。
【0125】
カッタ205が下降することにより、粘着テープDTと搬送用シートPとのうち、粘着テープDTの層が円環状の軌跡Kの形状に切り抜かれる。カッタ205が粘着テープDTを切断する構成はこれに限られず、他の例として、ナイフ状のカッタ205を円形状の軌道に沿って移動させ、粘着テープDTを円形状に切り抜く構成などが挙げられる。
【0126】
粘着シート回収部207は、円形状に切断された粘着テープDTの周囲に残される不要な粘着テープDTnを回収する。不要な部分の粘着テープDTnは、送りローラ208の直後に搬送用シートPから剥離される。剥離された粘着テープDTnは案内ローラ209によって回収ボビン210へと案内される。回収ボビン201は、搬送用シートPから剥離された粘着テープDTnを巻き取り回収する。従って、シート切断装置201によって、カッタ205によって円形に成型された粘着テープDTが搬送用シートPの上に残された状態となる。
【0127】
円形に切断された粘着テープDTは搬送用シートPとともに、チャンバ29へと案内される。なお、粘着テープDTおよび搬送用シートPは、シート切断装置201の下流において図示しない反転装置によって再度反転し、粘着テープDTが搬送用シートPの下側となるような状態でチャンバ29へ案内される。
【0128】
(9)各実施例において、図32(a)に示すように、チャンバ29はシート状の弾性体Dsを備えていてもよい。以下、実施例2の構成を例示して本変形例について説明する。
【0129】
弾性体Dsは上ハウジング29Bの内部に配設されており、上ハウジング29Bの内径に接するように構成されている。また、弾性体Dsの下面と上ハウジング29Bの円筒底部とが面一となるように構成される。従って、下ハウジング29Aと上ハウジング29Bとが搬送用シートPを挟み込んでチャンバ29を形成すると、弾性体Dsは搬送用シートPと当接する。具体的には、搬送用シートPにおいて、粘着テープDTを保持する面とは逆の側(図では上面側)に弾性体Dsが当接される。弾性体Dsを下ハウジング29Aの内径に接するように配設することにより、チャンバ29を形成する際に弾性体Dsが挟み込まれることがないので、チャンバ29の密閉性が弾性体Dsによって低下することを防止できる。弾性体Dsを構成する材料の例として、ゴム、エラストマー、またはゲル状の高分子材料などが挙げられる。
【0130】
チャンバ29が弾性体Dsを備えることにより、ステップS4において粘着テープDTを凸状に変形させる際に、粘着テープDTの屈曲率をより均一にすることができる。ここで弾性体Dsを備える構成の効果について説明する。一例として、粘着テープDTが比較的硬い材料で構成されている場合、図32(b)に示すように、粘着テープDTの屈曲率が不均一になりやすい。
【0131】
すなわち、搬送用シートPのうち、粘着テープDTが搬送用シートPに保持されている領域P1においては、粘着テープDTが存在しているので押圧力V1による搬送用シートPの屈曲率が小さい。一方、搬送用シートPのうち粘着テープDTが搬送用シートPに保持されていない領域P2においては、押圧力V1による搬送用シートPの屈曲率が比較的大きい。すなわち押圧力V1によって領域P2の方が容易に変形することによって、領域P1における搬送用シートPの屈曲率がさらに低下する。
【0132】
また、粘着テープDTのうち領域P2に近い側(周縁部)では粘着テープDTの屈曲率が大きく、粘着テープDTの中央部では粘着テープDTの屈曲率が小さくなる。このように、粘着テープDTおよび搬送用シートPの各々において、押圧力V1による屈曲率が不均一となる。その結果、ウエハWに貼り付けられた粘着テープDTについて、粘着テープDTとウエハWとの密着性が低下する。
【0133】
一方で弾性体Dsを備える場合、図32(c)に示すように、押圧力V1によって弾性体Dsの全体が均一に凸状変形する。そのため、領域P1における搬送用シートPの屈曲率が向上して領域P2における屈曲率との差が小さくなるので、搬送用シートPおよび粘着テープDTの屈曲率は全体的に均一となる。すなわち、粘着テープDTはウエハWの環状凸部形成面の形状に応じて変形し易くなるので、粘着テープDTとウエハWとの密着性をさらに向上できる。
【0134】
(10)各実施例において、粘着テープDTを加温する構成をさらに備えてもよい。粘着テープDTを加温する構成の一例として、シート貼付け機構81は図33(a)に示すように、上ハウジング29Bの内部に加温機構120を有している。加温機構120はシリンダ121および加温部材123を備えている。シリンダ121は加温部材123の上部に連結されており、シリンダ121の動作によって加温部材123はチャンバ29の内部で昇降できる。なお、加温部材123は粘着テープDTを加温可能であれば、昇降移動可能な構成でなくともよい。
【0135】
加温部材123の内部には粘着テープDTを加温するヒータ125が埋設されている。ヒータ125による加温の温度は粘着テープDTが柔らかくなる温度となるように調整される。当該加温の温度の一例として、50℃~70℃程度が挙げられる。加温部材123の底面の形状はウエハWの形状に応じて変更してよい。一例として、加温部材123は全体として円柱状となっている。
【0136】
なお、ステップS5を開始する前に予め、加温機構120を用いて上空間H2を加温させておくことが好ましい。すなわち、制御部33はヒータ125を作動させて加温装置123を所定の温度に加温させる。加温装置123が加温されることにより、熱伝導効果によって上空間H2が加温され、さらに粘着テープDTが加温される。
【0137】
粘着テープDTは加温されることによって柔らかくなるので、押圧力V1による粘着テープDTの変形性が向上する。すなわち、粘着テープDTでウエハWを覆わせる際に、ウエハWに対する粘着テープDTの追従性をより高めることができる。なお図33(b)に示すように、粘着テープDTに近接または当接するように加温部材123を下降させ、粘着テープDTを加温部材123で直接加温してもよい。
【0138】
(11)実施例において、加温機構120はチャンバ29における上空間H2の側に配設され、上空間H2を加温する構成であったがこれに限られない。すなわち加温機構120は下空間H1を加温する構成であってもよい。一例として、ヒータ125を保持テーブル9の内部に配設し、ヒータ125が下空間H1を加温することによって粘着テープDTを加温する構成が挙げられる。また、加温機構120は上空間H1および下空間H2の両方を加温する構成であってもよい。
【0139】
(12)各実施例において、粘着シート貼付け装置1においてステップS3に係る第1貼付け過程を行ってシート複合体Mを作成する構成を例にとって説明したが、シート複合体Mは粘着シート貼付け装置1の内部において作成される構成に限られない。すなわち、粘着テープDTにウエハWが付着されて構成されるシート複合体Mを予め作成しておき、粘着シート貼付け装置1を用いて当該シート複合体Mに対して大気圧よりも高い圧力を加えることにより粘着テープDTをウエハWに貼り付ける構成であってもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 … 粘着シート貼付け装置
3 … ウエハ搬送機構
5 … 容器
6 … フレーム回収部
7 … アライナ
8 … 昇降テーブル
9 … 保持テーブル
12 … フレーム供給部
13 … 貼付けユニット
16 … ウエハ搬送装置
17 … フレーム搬送装置
23 … 保持アーム
27 … 吸着プレート
28 … 吸着パッド
32 … 加圧装置
33 … 制御部
38 … フレーム保持部
71 … シート供給部
72 … セパレータ回収部
73 … シート貼付け部
74 … シート回収部
81 … シート貼付け機構
82 … シート切断機構
85 … 貼付けローラ
86 … ニップローラ
95 … カッタ
f … リングフレーム
DT … 粘着テープ
P … 搬送用シート
M … シート複合体
MF … マウントフレーム
Ta … 基材
Tb … 粘着材
Pa … 基材
Pb … 粘着材


図1
図2
図3
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