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特許7686983情報処理装置、情報処理装置の制御方法および情報処理装置のプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理装置の制御方法および情報処理装置のプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20250527BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20250527BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20250527BHJP
   G01K 3/00 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
G01K7/00 321C
G01D21/00 Q
G01K7/02 L
G01K3/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021005954
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110496
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】柘植 健太
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-280900(JP,A)
【文献】特開2009-281800(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012611(WO,A1)
【文献】特開平9-89588(JP,A)
【文献】特開平11-311564(JP,A)
【文献】特開2015-45663(JP,A)
【文献】特開平7-128117(JP,A)
【文献】特開2012-78245(JP,A)
【文献】特開2013-122416(JP,A)
【文献】特開2013-83668(JP,A)
【文献】特開平3-226628(JP,A)
【文献】特開2005-140629(JP,A)
【文献】特開2001-59768(JP,A)
【文献】特開平6-74975(JP,A)
【文献】特開2011-203269(JP,A)
【文献】特開2019-82407(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021962(WO,A1)
【文献】特開平1-200499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0049887(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0158036(US,A1)
【文献】特開2015-190834(JP,A)
【文献】特開2017-9611(JP,A)
【文献】特表2002-540879(JP,A)
【文献】特開2004-245804(JP,A)
【文献】特開2008-138560(JP,A)
【文献】実開昭61-15527(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
G01D 3/00-3/10
G01L 3/00-3/26
G01G 1/00-23/48
G01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログユニットが取り扱うアナログ信号と、前記アナログ信号に関する所定の情報とに基づき前記アナログ信号の精度保証範囲を特定する精度保証特定部と、
前記所定の情報を記憶した記憶部と、を備え、
前記アナログ信号は、アナログデバイスから入力される当該アナログデバイスの計測値を示す信号であり、
前記精度保証特定部は、現在の前記計測値を用いて求められる基準精度および温度係数を用いて前記精度保証範囲としての値の範囲を算出する、情報処理装置。
【請求項2】
前記所定の情報は、前記アナログ信号を取り扱うデバイスに関する情報である請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記所定の情報は、前記アナログユニットの環境情報を含む請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記情報処理装置は、前記環境情報を取得する取得部をさらに備える請求項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記環境情報は、前記アナログユニットの周辺温度を含む請求項またはに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記環境情報は、前記アナログユニットの設置方向を含む請求項からのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記情報処理装置は、前記精度保証範囲を出力する出力部をさらに備える請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記出力部は、精度保証範囲のレベルを表示装置に表示する請求項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記アナログ信号は、熱電対からの入力である請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記アナログ信号は、ロードセルからの入力である請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
アナログユニットが取り扱うアナログ信号に関する所定の情報を記憶部から取得する取得ステップと、
前記アナログ信号と、前記所定の情報とに基づき、前記アナログ信号の精度保証範囲を特定する精度保証特定ステップと、を含み、
前記アナログ信号は、アナログデバイスから入力される当該アナログデバイスの計測値を示す信号であり、
前記精度保証特定ステップでは、現在の前記計測値を用いて求められる基準精度および温度係数を用いて前記精度保証範囲としての値の範囲を算出する、情報処理装置の制御方法。
【請求項12】
請求項に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための情報処理装置のプログラムであって、前記精度保証特定部としてコンピュータを機能させるための情報処理装置のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアナログユニットの精度保証範囲に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫・工場などで用いられるPLC(Programming Logic Controller)による装置では、様々なセンサが用いられている。センサの中には、温度などのアナログ出力のセンサがあり、アナログ入力のIOユニット(Input/Output Unit:以降、アナログユニットとも称する)を用いることがある。アナログ入力のIOユニットでは、AD(Analog-Digital)コンバータによって電圧・電流などのアナログ信号を、デジタル値にAD変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-146103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AD変換した場合、誤差がつきものである。特許文献1には、バッテリセルの電圧測定誤差から、バッテリセルの劣化状態を判断する技術が開示されている。このように、AD変換に伴う測定誤差を把握することで、異常事態を未然に防ぎ、異常原因の究明に役立てることができる。
【0005】
装置におけるアナログ量の測定誤差の把握は、従来では、マニュアル記載の手順に従い、人が手動で計算する必要があった。この場合でも、何等かの異常が発生した場合に原因究明の糸口にはなる。しかしながら、IOユニットのAD変換に伴う誤差の指標である精度保証範囲をユーザが特定するのは時間が掛かり、動的に精度保証範囲を把握するのは難しかった。
【0006】
本発明の一態様は、アナログユニットが扱うアナログ信号の精度保証範囲を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、アナログユニットが取り扱うアナログ信号と、前記アナログ信号に関する所定の情報とに基づき前記アナログ信号の精度保証範囲を特定する精度保証特定部と、前記所定の情報を記憶した記憶部と、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、精度保証範囲を自動で特定することができ、アナログ信号の精度低下を検出することができる。そのため、アナログ信号の精度低下に伴うトラブルを未然に回避することが可能になる。
【0009】
前記所定の情報は、前記精度保証範囲を特定するための手順、前記アナログ信号を取り扱うデバイスに関する情報、および/または、前記アナログユニットの環境情報を含んでもよい。
【0010】
上記の構成によれば、所定の情報は、フローチャートのような所定の手順にしたがって、センサの種類または接続形態などのデバイスの情報、および/または、アナログユニットの周辺の環境情報を合わせて処理することで、精度保証範囲を特定できる。
【0011】
前記情報処理装置は、前記環境情報を取得する取得部をさらに備えてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、環境情報を取得することができ、精度保証範囲の特定に環境情報を用いることができる。
【0013】
前記環境情報は、前記アナログユニットの周辺温度および/または設置方向を含んでもよい。
【0014】
上記の構成によれば、環境情報として、周辺温度および/または設置方向を含めてもよく、アナログユニット内の電子部品の熱特性、および/またはアナログユニットの設置方向に基づくアナログユニット自体の排熱性などを、精度保証範囲の特定時に考慮することができる。
【0015】
前記情報処理装置は、前記精度保証範囲を出力する出力部をさらに備えてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、精度保証範囲を出力し、上位の機器で処理に用いたり、管理者に警告を出したりすることができる。
【0017】
前記出力部は、保証精度のレベルを表示装置に表示してもよい。
【0018】
上記の構成によれば、表示部で精度保証範囲の概算値を表示することができるため、アナログユニットを目視するだけで、アナログユニット自体の状態の悪化を確認することができる。そのため、容易に問題を特定し易く、早期に対策ができる。
【0019】
前記アナログ信号は、熱電対からまたはロードセルからの入力であってもよい。
【0020】
上記の構成によれば、アナログユニットを、温度入力ユニットまたはロードセル入力ユニットとすることができる。
【0021】
他の一態様に係る情報処理装置の制御方法は、アナログユニットが取り扱うアナログ信号に関する所定の情報を記憶部から取得する取得ステップと、前記アナログ信号と、前記所定の情報とに基づき前記アナログ信号の精度保証範囲を特定する精度保証特定ステップと、を含む。
【0022】
本発明の各態様に係る情報処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記情報処理装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記情報処理装置をコンピュータにて実現させる情報処理装置の精度保証プログラム、記憶プログラムおよびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、アナログユニットが扱うアナログ信号の精度保証範囲を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1に係るアナログシステムの要部の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態1に係る温度入力ユニットでの精度保証範囲の特定手順を示すフローチャートである。
図3】実施形態1に係る温度入力ユニットが対応している熱電対の種類を示す表である。
図4】実施形態1に係る温度入力ユニットの精度保証範囲の特定に用いる冷接点補償誤差の特定手順を示すフローチャートである。
図5】実施形態2に係るアナログシステムの要部の構成を示すブロック図である。
図6】実施形態3に係るアナログシステムの要部の構成を示すブロック図である。
図7】実施形態4に係るアナログシステムの要部の構成を示すブロック図である。
図8】実施形態5に係るアナログシステムの要部の構成を示すブロック図である。
図9】実施形態5に係るロードセル入力ユニットでの精度保証範囲の特定手順を示すフローチャートである。
図10】実施形態6に係るアナログシステムの要部の構成を示すブロック図である。
図11】実施形態6に係るアナログ出力ユニットでの精度保証範囲の特定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
§1 適用例
まず、本発明が適用される場面の一例を紹介する。本適用例に係る情報処理装置は、アナログ入出力のアナログユニット(IOユニット(Input/Output Unit))であり、アナログ出力のセンサからアナログ信号を入力している。当該アナログユニットは、入力したアナログ信号のAD変換精度の指標である精度保証範囲を特定する精度保証特定部と、当該精度保証範囲を特定する手順をまとめて記憶している記憶部と、を備えている。ここで、精度保証範囲は、メーカが保証するアナログユニットの入出力精度の値の範囲または入出力精度の状態である。具体的には、精度保証範囲は、AD変換するデバイスのアナログ信号を入出力する電気回路および変換回路の変換に伴う入出力値の誤差、またはアナログデバイスの温度ドリフトなどの程度を表す指標である。
【0027】
前記精度保証特定部は、前記手順にのっとって、前記アナログユニットが入出力したアナログ信号の精度保証範囲を特定する。精度保証範囲を特定することにより、アナログユニットの精度保証範囲の程度を、出力部を介して管理者に通知することができる。
【0028】
§2 構成例
図1は、実施形態1に係るアナログシステム100aの要部の構成を示すブロック図である。アナログシステム100aは、温度入力ユニット1aと、熱電対111とを備える。
【0029】
(熱電対111の構成)
熱電対111は、測定箇所の温度をアナログ信号で出力する機能を持つセンサである。ここでは、アナログユニットの事例として温度入力ユニットに関して説明するために熱電対を用いているが、任意のアナログデバイスであってもよい。アナログデバイスの例としては、熱電対、測温抵抗体、加速度センサ、ロードセル、圧力計、および流量計などが挙げられ、これらに限定されない。アナログデバイスのアナログ出力は、電圧出力・電流出力・IEPE出力でも構わず、出力レンジも任意である。
【0030】
(温度入力ユニット1aの構成)
温度入力ユニット1aは、制御部10aと、記憶部20と、表示器141とを備える。温度入力ユニット1aは、多種類の熱電対を接続でき、熱電対111における熱起電力によって温度を計測するアナログユニットである。
【0031】
記憶部20は、アナログユニットの精度保証範囲の特定に必要なパラメータ、プログラムおよび処理手順を記憶している。記憶部20は不揮発メモリによって構成されてもよい。
【0032】
表示器141は、制御部10aの指令に従い、精度保証範囲の程度を表示する。ここでは、表示器141は、Rank0からRank3までの表示があり、制御部10aの処理の結果、いずれかが点灯する。また、表示器141は、任意の表示を行う表示装置であっても構わない。
【0033】
(制御部10aの構成)
制御部10aは、温度入力ユニット1aの各部を統括して制御する。制御部10aは、計測値取得部11と、環境情報取得部12a(取得部)と、精度保証特定部13と、出力部14とを備える。
【0034】
計測値取得部11は、熱電対入力である、熱電対111から入力されるアナログ信号をAD変換し、デジタル値に変換する処理を行う。計測値取得部11は、変換したデジタル値を精度保証特定部13に出力する。
【0035】
環境情報取得部12aは、アナログユニットの環境情報を取得する。環境情報としては、アナログユニットに隣接するユニットの消費電力、アナログユニットの周辺温度またはアナログユニットの設置方向などが含まれてもよく、一部の環境情報が欠落してもよい。これらの環境情報は、管理者が予め記憶部20に設定しておき、環境情報取得部12aが、設定してある設定値を読み込む。環境情報取得部12aは、環境情報を、精度保証特定部13に出力する。
【0036】
精度保証特定部13は、アナログユニットが取り扱うアナログ信号と、様々なパラメータと精度保証範囲を特定する手順とを含む所定の情報とに基づき、アナログ量の精度保証範囲を特定する。様々なパラメータは、アナログユニットの周辺温度または設置方向などの環境情報、および/またはセンサ種別などのアナログ信号を取り扱うデバイスに関する情報を含む。特定した精度保証範囲を出力部14に出力する。
【0037】
出力部14は、入力された精度保証範囲に基づき、精度保証範囲のレベルを表示器141に表示する。精度保証範囲のレベルとは、特定した精度保証範囲を数段階の区分に分類した指標である。ユーザは、当該レベルを確認するだけで、精度保証範囲が十分かどうかを判断できる。また、出力部14は、アナログユニットで計測したデジタル値(計測値)と、精度保証範囲とを合わせて、上位機器(例えば、PLC)に出力してもよい。
【0038】
§3 動作例
アナログユニットのうち、ある温度入力ユニット1aを例としてあげて、精度保証範囲の特定手順の一例を動作例として説明する。この精度保証範囲の特定手順は一例であり、これに限定されない。
【0039】
図2は、実施形態1に係る温度入力ユニットでの精度保証範囲の特定手順を示すフローチャートである。図3は、実施形態1に係る温度入力ユニットが対応している熱電対の種類を示す表である。図4は、実施形態1に係る温度入力ユニットの精度保証範囲の特定に用いる冷接点補償誤差の特定手順を示すフローチャートである。
【0040】
(温度入力ユニットでの精度保証範囲の特定)
図2に基づき、温度入力ユニット1aでの精度保証範囲の特定手順を説明する。
【0041】
精度保証範囲の特定に先立ち、あらかじめ温度入力ユニット1aの周辺温度変化分を記憶部20に設定しておく必要がある。周辺温度変化分は、機器仕様で定まる基準温度に対する、温度入力ユニット1aの周辺温度の増減分である。すなわち、周辺温度が30℃で、基準温度が25℃であった場合、周辺温度変化分は5℃になる。
【0042】
S11において、精度保証特定部13は、温度入力ユニット1aの通電時間が所定時間以上かを確認する。通電時間とは、アナログユニットの電源を投入してからの経過時間であり、アナログユニットのファームウェアでカウントアップして求める。所定時間は例えば30分などであり、アナログユニット自体およびアナログユニットが設置されている環境の温度により、アナログユニットの温度特性が安定するまでの時間である。通電時間の計測は、温度入力ユニット1aが行う。所定時間以上の場合(S11においてYes)、S12に進む。所定時間未満の場合(S11においてNo)、S17に進む。
【0043】
S12において、精度保証特定部13は、冷接点補償誤差を特定する。冷接点補償誤差の特定手順は後述する。熱電対は、異種金属間で電流が流れるゼーベック効果によって、温度入力ユニットに接続される基準接点(冷接点)と測温地点に設置する測温接点(温接点)間の温度差を計測するセンサである。すなわち、熱電対では、相対的な温度を計測しているため、基準接点での温度を絶対温度として計測できる別のセンサが必要である。冷接点補償誤差は、基準接点での温度を他のサーミスタまたは測温抵抗体などのセンサにより別途計測し、熱電対で測定した相対温度に足し合わせるために発生する誤差である。
【0044】
S13において、精度保証特定部13は、冷接点補償誤差が保証ありの条件かを確認する。冷接点補償誤差が保証ありの条件の場合(S13においてYes)、S14に進む。冷接点補償誤差が保証なしの条件の場合(S13においてNo)、S17に進む。
【0045】
S14において、精度保証特定部13は、記憶部20に記憶されている、変換時間および熱電対の種類に対応した入力モード(入力種類)を参照し、現在の計測値を用いて、基準精度および温度係数を求める。変換時間とは、AD変換にかかる時間を表し、入力モードとは、熱電対111の種類を表す。図3は、ある変換時間における、熱電対の種類ごとの計測できる温度レンジと、温度レンジごとの基準精度および温度係数を示す表である。記憶部20は、変換時間、熱電対の種類、測定温度のレンジ、基準精度、および温度係数が互いに対応付けられたテーブルを記憶している。例えば、K型熱電対の測定温度が500℃の場合は、温度レンジが-200~1300℃であり、測定温度が3段階の区分があり、-100~400℃の区分では、基準精度が±1.5℃で、温度係数が±0.30℃/℃であることを示す。また、環境情報取得部12aは、記憶部20から、周辺温度変化分を読み込む。変換時間はアナログユニットに固有の固定値であり、ここでは一意の値を取る。ただし、アナログユニットによっては、変換時間を変更することで高速な変換をする代わりに、変換精度が低下する場合などもあり、変換時間は基準精度の算出に用いるパラメータである。
【0046】
S15において、精度保証特定部13は、精度保証範囲を次式に従って特定する。
【0047】
精度保証範囲=基準精度+温度特性×周辺温度変化分+冷接点補償誤差
上式において、基準特性、温度特性および冷接点補償誤差の符号は、プラスマイナスの誤差の値であるため、絶対値によって計算を行う。
【0048】
S16において、出力部14は、精度保証範囲が第1の範囲内かを判定する。精度保証範囲が第1の範囲に収まる場合(S16においてYes)、S18に進む。精度保証範囲が第1の範囲に収まらない場合(S16においてNo)、S17に進む。
【0049】
S17において、出力部14は、精度保証ができない条件であると判定し、表示器141にRank0の表示を点灯する指令を出す。
【0050】
S18において、出力部14は、精度保証範囲が第2の範囲内かを判定し、出力部14に精度保証範囲を出力する。第2の範囲は、第1の範囲よりも内側の範囲であり、より高精度である。精度保証範囲が第2の範囲内の場合(S18においてYes)、S20に進む。精度保証範囲が第2の範囲外の場合(S18においてNo)、S19に進む。
【0051】
S19において、出力部14は、精度保証ができる条件であり、精度保証範囲が第1の範囲内であると判定し、表示器141にRank1の表示を点灯する指令を出す。
【0052】
S20において、出力部14は、精度保証範囲が第3の範囲内かを判定し、出力部14に精度保証範囲を出力する。第3の範囲は、第2の範囲よりも内側の範囲であり、より高精度である。精度保証値が第3の範囲内の場合(S20においてYes)、S22に進む。精度保証範囲が第3の範囲外の場合(S20においてNo)、S21に進む。
【0053】
S21において、出力部14は、精度保証ができる条件であり、精度保証範囲が第2の範囲内であると判定し、表示器141にRank2の表示を点灯する指令を出す。
【0054】
S22において、出力部14は、精度保証ができる条件であり、精度保証範囲が第3の範囲内であると判定し、表示器141にRank3の表示を点灯する指令を出す。
【0055】
(冷接点補償誤差の特定)
図4に基づき、温度入力ユニット1aでの、S12における冷接点補償誤差の特定手順を説明する。
【0056】
冷接点補償誤差の特定に先立ち、あらかじめ入力モード、温度入力ユニット1aの設置方向および隣接ユニットの消費電力を記憶部20に設定する必要がある。また、隣接ユニットの消費電力に関しては、設定ソフトがアナログユニットへの設定書き込み時に、設定ソフトで設定したアナログシステム100aの構成から自動で生成し、設定しても構わない。隣接ユニットは、アナログユニットに接続され、アナログユニットと電源を共有しているユニットである。アナログユニットの両側に隣接ユニットが接続されることもある。
【0057】
S31において、環境情報取得部12aは、温度入力ユニット1aの設置方向が所定の設置方向であり、かつ当該温度入力ユニットに隣接するユニットの消費電力が第1の電力閾値以下かを判定する。例えば、温度入力ユニット1aの設置方向は、正面取付け(縦方向または横方向)、天井取付け、床面取付けなどがあり得る。例えば、所定の設置方向としては、正面取付け(縦方向)である。条件を満たさない場合(S31においてNo)、S32に進む。条件を満たす場合(S31においてYes)、S41に進む。
【0058】
S32において、環境情報取得部12aは、温度入力ユニット1aの設置方向が所定の設置方向であり、かつ当該温度入力ユニットに隣接するユニットの消費電力が第2の電力閾値以下、あるいは、温度入力ユニット1aの設置方向が所定の設置方向ではなく、かつ当該温度入力ユニットに隣接するユニットの消費電力が第2の電力閾値以下という条件を満たすかを判定する。要するに、環境情報取得部12aは、当該温度入力ユニットに隣接するユニットの消費電力が第2の電力閾値以下という条件を満たすかを判定する。第2の電力閾値は第1の電力閾値よりも大きい値である。条件を満たさない場合(S32においてNo)、S33に進む。条件を満たす場合(S32においてYes)、S51に進む。
【0059】
S33において、精度保証特定部13は、冷接点補償誤差の保証なしと判定する。
【0060】
S41において、精度保証特定部13は、記憶部20を参照し、接続されている熱電対111の入力モード、および現在の計測値に基づき、第1の条件を満たすかを判定する。第1の条件としては、例えば、熱電対の入力モードがJ,E,K,Nの何れかであり、かつ計測値取得部11で計測した温度が入力モードに応じた温度閾値(例えば-100℃)以下という条件などが挙げられる。このように第1の条件としては、入力モードおよび計測値などによって判定しても構わない。温度閾値は、入力モードに応じて異なり得る。条件を満たす場合(S41においてYes)、S43に進む。条件を満たさない場合(S41においてNo)、S42に進む。
【0061】
S42において、精度保証特定部13は、記憶部20を参照し、接続されている熱電対111の入力モード、および現在の計測値に基づき、第2の条件を満たすかを判定する。第2の条件としては、例えば、熱電対の入力モードがWであるという条件などが挙げられる。条件を満たす場合(S42においてYes)、S43に進む。条件を満たさない場合(S42においてNo)、S44に進む。
【0062】
S43において、精度保証特定部13は、冷接点補償誤差が第1の誤差範囲と判定する。第1の誤差範囲は、例えば±3.0℃である。
【0063】
また、S44において、精度保証特定部13は、冷接点補償誤差が第2の誤差範囲と判定する。第2の誤差範囲は、例えば冷接点補償誤差の保証なしなどである(すなわち、第2の誤差範囲は無限大である)。
【0064】
S51において、精度保証特定部13は、記憶部20を参照し、接続されている熱電対111の入力モード、および現在の計測値に基づき、第1の条件を満たすかを判定する。条件を満たす場合(S51においてYes)、S52に進む。条件を満たさない場合(S51においてNo)、S53に進む。
【0065】
S52において、精度保証特定部13は、冷接点補償誤差が第3の誤差範囲と判定する。第3の値は、例えば±7.0℃であり、第1の誤差範囲より広い。
【0066】
S53において、精度保証特定部13は、記憶部20を参照し、接続されている熱電対111の入力モード、および現在の計測値に基づき、第2の条件を満たすかを判定する。条件を満たす場合(S53においてYes)、S54に進む。条件を満たさない場合(S53においてNo)、S55に進む。
【0067】
S54において、精度保証特定部13は、冷接点補償誤差が第4の誤差範囲と判定する。第4の誤差範囲は、例えば±9.0℃であり、第3の誤差範囲より広い。
【0068】
また、S55において、精度保証特定部13は、冷接点補償誤差が第5の誤差範囲と判定する。第5の誤差範囲は、例えば冷接点補償誤差の保証なしなどであり、第4の誤差範囲より広い。
【0069】
(温度入力ユニットにおける精度保証範囲の特定例)
ここで、ある温度入力ユニット1aでの精度保証範囲の特定事例を示す。特定条件としては、通電時間が30分以上であり、設置方向が正面取付けであり、隣接ユニットの消費電力が1.5W以下であり、入力モードがK熱電対であり、変換時間が250msecであり、測定温度が100℃であり、周辺温度が30℃である場合とする。
【0070】
まず、比較の為に従来の精度保証範囲の特定方法を示す。従来は、人が通電時間および設置方向を確認し、専用ツールを使用して隣接ユニットの消費電力・入力モード・測定温度を確認し、温度センサを設置して周辺温度を計測しばらつきを判断する必要がある。これらをマニュアルまたはデータシートを参照しつつ、所定の手順に従って精度保証範囲を特定する必要があるため、非常に煩雑である。
【0071】
対して、本実施形態では、まず、S11において温度入力ユニット1aの通電開始時からファームウェアによってカウントアップしているタイマを確認し、通電時間が30分以上で所定時間以上なため、S12に処理が進む。S12において、設置方向・隣接ユニットの消費電力・入力モード・測定温度の条件から、冷接点補償誤差を特定すると、S44に処理が進み、例えば冷接点補償誤差が±1.2℃であったとする。
【0072】
冷接点補償誤差があるため、S14に処理が進み、周辺温度が30℃であるから、基準温度が25℃の場合、周辺温度変化分が5℃であり、入力モード・変換時間・測定温度の条件から、基準精度が±1.5℃であり、温度係数が±0.30℃/℃となる。これら条件から精度保証範囲を特定すると、次のようになる。
【0073】
精度保証範囲=±1.5℃+±0.30℃/℃×5℃+±1.2℃=±4.2℃
ここで、精度保証範囲の計算においては、誤差の数値のため±の誤差範囲の足し合わせになっている。誤差範囲の足し合わせに際しては、誤差の絶対値を足し合わせるものとする。すなわち、プラス側の誤差同士を足し合わせた値を誤差範囲の上限とし、マイナス側の誤差同士を足し合わせた値を誤差範囲の下限とする。
【0074】
精度保証範囲が±4.2℃(<第3の閾値)であるため、S22に処理が進み、出力部14によって、Rank3の表示器が点灯する。これらの工程を自動で行う。
【0075】
§4 作用・効果
事前に幾つかのパラメータを記憶部20に設定しておくことで、所定の手順に従って、パラメータと計測値から、自動でリアルタイムに精度保証範囲が特定できる。
【0076】
また、精度保証範囲を確認して処理する専用のプログラムを用意することなく、表示器によって精度保証範囲の概算値を確認できるため、定期保守におけるアナログデバイスの状態の確認が容易である。
【0077】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0078】
図5は、実施形態2に係るアナログシステム100bの要部の構成を示すブロック図である。実施形態2では、実施形態1と異なり、人によって記憶部20に精度保証範囲の特定に必要なパラメータの一部を別途設定することなく、精度保証範囲を特定できる点が異なる。もちろん、入力モードなどの一部のパラメータは別途設定が必要である。
【0079】
アナログシステム100bは、温度入力ユニット1aが温度入力ユニット1bに、制御部10aが制御部10bに、環境情報取得部12aが環境情報取得部12bに変化している。また、温度入力ユニット1bは、温度センサ121と、加速度センサ122とを備える。
【0080】
温度センサ121は、アナログユニット内に内蔵もしくは外付けされた温度センサである。温度センサとしては、サーミスタまたは測温抵抗体などの絶対温度を計測するセンサを用いる。アナログユニットの種類によっては、温度センサ121がなくてもよい。
【0081】
加速度センサ122は、アナログユニット内に内蔵された加速度センサである。加速度センサは傾斜センサでもよく、アナログユニットの設置方向を判断できる任意のセンサであってよい。
【0082】
環境情報取得部12bは、環境情報取得部12aと異なり、予め人によって設定された設定値を読み込むのではなく、アナログユニットの環境情報を自動で取得する点が異なる。環境情報取得部12bは、アナログユニットの周辺温度に関しては、温度センサ121により取得し、アナログユニットの設置方向に関しては、加速度センサ122により取得する。
【0083】
そのため、実施形態2では、人が予め設定していた精度保証範囲の特定に必要なパラメータを自動取得するため、アナログユニットをただ取り付けし起動するだけで、精度保証範囲の判定が可能になり、容易に使用できる。また、環境情報が変化した場合でも、設定変更なく自動で対応することができる利点がある。
【0084】
さらに、出力部14によって、アナログユニットの上位機器であるPLCに精度保証範囲を通知することによって、PLC内でのプログラムによって精度保証範囲に基づく任意の処理を行うことができる。例えば、精度保証範囲が所定の範囲より大きくなり、悪化した場合に、温度入力ユニット1bの情報を取得したPLCが生産を自動で中止し、アナログシステム100bの状態を確認するように、管理者に通知することなどが可能になる。
【0085】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。
【0086】
図6は、実施形態3に係るアナログシステム100cの要部の構成を示すブロック図である。実施形態3では、実施形態1と異なり、精度保証範囲の特定をアナログユニットで行うのではなく、当該アナログユニットのマスタにあたるPLCで行う点が異なる。
【0087】
アナログシステム100cは、PLC2cと、温度入力ユニット3cと、熱電対111とを備える。PLC2cは、制御部10cと、記憶部20と、表示器141とを備える。制御部10cは、環境情報取得部12aと、精度保証特定部13と、出力部14と、ユニット通信部15cとを備える。
【0088】
ユニット通信部15cは、温度入力ユニット3cと通信して、熱電対111のアナログ量のデジタル値を取得する。また、併せて、ユニット通信部15cは、温度入力ユニット3cの不揮発メモリから、入力モード・変換時間を取得する。
【0089】
温度入力ユニット3cは、計測値取得部11を備える。温度入力ユニット3cは熱電対111のアナログ量を、デジタル値に変換し、ユニット通信部15cに通信する。また併せて、温度入力ユニット3cの不揮発メモリから、入力モード・変換時間を取得し、通信する。
【0090】
PLC2cは、温度入力ユニット3cから測定温度・入力モード・変換時間を取得し、環境情報取得部12aが、設置方向・隣接ユニットの消費電力・周辺温度を記憶部20から取得し、実施形態1と同様の処理にて、精度保証範囲を特定する。
【0091】
そのため、実施形態1と異なり、アナログユニットの変更がなく、マスタにあたるPLCのプログラム修正だけで精度保証範囲を特定できるようになるため、既存のシステムを改修するのに適する。
【0092】
さらに、PLC内で精度保証範囲を特定するため、PLC2cの制御部10cは、特定した精度保証範囲に基づいて、ユーザ独自のプログラムを実行することができる。PLC2cの制御部10cは、生産を自動で中止し、アナログシステム100bの状態を確認するように、管理者に通知することなどが可能になる。
【0093】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。
【0094】
図7は、実施形態4に係るアナログシステム100dの要部の構成を示すブロック図である。実施形態4では、実施形態1と異なり、精度保証範囲の特定をアナログユニットで行うのではなく、当該アナログユニットのマスタのPLCで行い、精度保証範囲の特定に必要なパラメータをアナログユニットから全て取得する点が異なる。
【0095】
アナログシステム100dは、PLC2dと、温度入力ユニット3dと、熱電対111とを備える。PLC2dは、制御部10dと、記憶部20と、表示器141とを備える。制御部10dは、精度保証特定部13と、出力部14と、ユニット通信部15dを備える。
【0096】
ユニット通信部15dは、ユニット通信部15cと異なり、実施形態1では環境情報取得部が取得していたパラメータを、温度入力ユニット3dから併せて取得する点が異なる。取得したパラメータを精度保証特定部13に出力する。
【0097】
そのため、温度入力ユニット3dは、計測値取得部11と、環境情報取得部12dと、温度センサ121と、加速度センサ122とを備える。温度入力ユニット3dは、計測値取得部11が、熱電対111のアナログ量を、デジタル値に変換し、ユニット通信部に通信し、入力モード・変換時間を温度入力ユニット3dの不揮発メモリから取得し通信する。また併せて、環境情報取得部12dは、温度センサ121と、加速度センサ122とから取得した、周辺温度と設置方向をユニット通信部15dに通信する。
【0098】
したがって、PLC2dは、温度入力ユニット3dから測定温度・入力モード・変換時間・周辺温度・設置方向を取得し、実施形態1と同様の処理にて、精度保証範囲を特定する。
【0099】
そのため、実施形態1と異なり、アナログユニットのパラメータ設定が不要で、マスタにあたるPLCのプログラム作成のみで精度保証範囲の機能を実装できるため、簡便にシステムを構築でき、容易に立ち上げができる利点がある。
【0100】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。
【0101】
図8は、実施形態5に係るアナログシステム100eの要部の構成を示すブロック図である。実施形態5では、実施形態1と異なり、アナログユニットとして温度入力ユニットを用いるのではなく、ロードセル入力ユニット4を用いる点が異なる。ロードセル入力ユニット4は、圧力を検出するロードセルを接続するアナログユニットである。
【0102】
アナログシステム100eは、アナログシステム100aと異なり、温度入力ユニット1aの代わりにロードセル入力ユニット4を、熱電対111の代わりにロードセル112を、制御部10aの代わりに制御部10eを、計測値取得部11の代わりに計測値取得部11eにより構成されている。計測値取得部11eは、計測値取得部11と基本の機能は同じであるが、熱電対入力ではなく、ロードセル入力である点が異なる。
【0103】
図9は、実施形態5に係るロードセル入力ユニット4での精度保証範囲の特定手順を示すフローチャートである。
【0104】
S61において、精度保証特定部13は、ロードセル入力ユニット4の通電時間が所定時間以上かを確認する。所定時間以上の場合(S61においてYes)、S62に進む。所定時間未満の場合(S61においてNo)、S63に進む。
【0105】
S62において、精度保証特定部13は、記憶部20を参照し、接続されているロードセル112の入力モードが6線式かを確認する。6線式でない場合(S62においてNo)、S63に進む。6線式である場合(S62においてYes)、S64に進む。
【0106】
S63において、精度保証特定部13は、全精度項目で保証なしと判定する。ロードセル入力ユニットでの精度項目としては、ゼロドリフト・ゲインドリフト・非直線性が挙げられる。計測値と実際の圧力との線形近似における切片および傾きの周囲温度変化によるずれ幅がそれぞれ、ゼロドリフトおよびゲインドリフトにあたり、非直線性は、線形近似と構成曲線との乖離を表す指標である。出力部14は、表示器141にRank0の表示を点灯させる。
【0107】
S64において、精度保証特定部13は、環境情報取得部12aによって取得するアナログユニットの周辺温度が所定温度範囲内、かつロードセル入力ユニット4のデジタルフィルタの設定が所定値、かつフルスケール設定が所定値(所定範囲)かを確認する。条件を満たさない場合(S64においてNo)、S65に進む。条件を満たす場合(S64においてYes)、S66に進む。
【0108】
S65において、精度保証特定部13は、一部の精度項目で保証ありと判定する。保証ありの精度項目としては、ゼロドリフトおよびゲインドリフトである。非直線性に関しては、精度保証範囲が定まらない。出力部14は、表示器141にRank1の表示を点灯させる。
【0109】
S66において、精度保証特定部13は、全精度項目で保証ありと判定する。出力部14は、表示器141にRank2の表示を点灯させる。
【0110】
このように、ロードセル入力ユニット4のように、アナログユニットとして多数の精度保証範囲をもつ場合であっても、全ての精度保証範囲を自動で特定できる。また、項目ごとに精度保証範囲の特定手順が異なっていてもよく、一部の項目のみ、精度保証範囲が特定できない場合があってもよい。
【0111】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0112】
図10は、実施形態6に係るアナログシステム100fの要部の構成を示すブロック図である。実施形態6では、実施形態1と異なり、アナログユニットとして温度入力ユニットではなく、アナログ出力ユニット5を使用する場合において精度保証範囲を求める点が異なる。アナログ出力ユニット5は、デジタル値に対応するアナログ電圧または電流を出力するアナログユニットである。
【0113】
アナログシステム100fは、アナログシステム100aと異なり、温度入力ユニット1aの代わりに、アナログ出力ユニット5を、熱電対111の代わりにアナログデバイス113により構成されている。アナログ出力ユニット5の構成は、温度入力ユニット1aの構成と異なり、制御部10aの代わりに制御部10fを、計測値取得部11の代わりにアナログ値出力部11fを備える。
【0114】
アナログ値出力部11fは、内部にDA(Digital-Analog)変換機を備え、入力されたデジタル値をアナログ信号に変換し、アナログデバイス113にアナログ信号を出力する。変換したアナログ信号は、電圧または電流である。また、アナログ値出力部11fは、デジタル値を精度保証特定部13に出力してもよく、この場合、デジタル値を用いて精度保証範囲を計算してもよい。
【0115】
図11は、実施形態6に係るアナログ出力ユニットでの精度保証範囲の特定手順を示すフローチャートである。
【0116】
S71において、環境情報取得部12aは、周辺温度が所定温度範囲内かを確認する。所定温度範囲内ではない場合(S71においてNo)、S72に進む。所定温度範囲内の場合(S71においてYes)、S73に進む。
【0117】
S72において、精度保証特定部13は、精度保証範囲が第1の範囲であると判定する。また、出力部14は、表示器141にRank1の表示を点灯させる。
【0118】
S73において、精度保証特定部13は、精度保証範囲が第2の範囲であると判定する。第2の範囲は、第1の範囲に収まる範囲である。すなわち、第2の範囲の精度が第1の範囲の精度よりも高いといえる。出力部14は、表示器141にRank2の表示を点灯させる。
【0119】
このようにアナログ出力ユニット5のように、アナログユニットとして、アナログ入力だけではなく、アナログ出力する場合においても、精度保証範囲を自動で特定できる。
【0120】
〔実施形態7〕
本発明の一態様のユースケースを紹介する。本実施形態は、実施形態1に基づき、炉によって温度管理をする生産装置において、温度制御に温度入力ユニットを用いた場合の想定事例である。
【0121】
(想定事例)
ある時期より、当該生産装置で不良品が多発するようになった。
【0122】
不良原因を追究する為に、炉内の温度を別の温度測定用の計測機で測定したところ、当該温度入力ユニットが示す温度と異なる温度になっていた。当該温度入力ユニットと、温度測定用の計測機との温度の誤差が、装置の設計精度よりも悪くなっていた。
【0123】
また、温度測定用の計測機で、温度入力ユニットの周辺温度を測定したところ、生産装置の納入時よりも温度が上昇していることがわかった。そのため、精度保証範囲が悪化し、炉が意図した通りに制御できておらず、製造物の品質が劣化していた。温度入力ユニットの周辺温度の上昇原因を調べたところ、納入時期と季節が異なり、環境温度が上昇していたことが原因だった。
【0124】
本発明を実施していなかった場合、炉内の温度が想定通り制御できていないことがわかったとしても、真の不良原因である、温度入力ユニットの精度保証範囲の低下にたどり着くまでに、デバイスおよびユニット交換などの多くの試行を重ね、多くの工数が必要になる。その間、不良品は出続けることになるため、損失も大きくなる。
【0125】
対して、本発明の一態様を実施していた場合、表示器141を確認し、精度保証範囲が納入時期よりも低下していることが一見してわかる。そのため、なぜ精度保証範囲が低下したかという観点で原因調査を行うことができるため、真因に容易に到達できる。すなわち、低工数でトラブル解決ができる。
【0126】
また、精度保証範囲をプログラムによって常時監視していた場合、季節の変わり目の段階で、不良品を出す前に精度保証範囲が悪化してきたことを示す警告を出すことができ、真因に容易に到達できる。そのため、不良品の発生を抑制でき、低工数でトラブルを未然に防ぐことができる。
【0127】
〔ソフトウェアによる実現例〕
温度入力ユニット1a・1b、PLC2c・2d、ロードセル入力ユニット4、またはアナログ出力ユニット5の制御ブロック(特に計測値取得部11・11e、アナログ値出力部11f、環境情報取得12a・12b、精度保証特定部13、および出力部14)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0128】
後者の場合、温度入力ユニット1a・1b、PLC2c・2d、ロードセル入力ユニット4、またはアナログ出力ユニット5は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0129】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
1a、1b、3c、3d 温度入力ユニット(情報処理装置)
2c、2d PLC(情報処理装置)
4 ロードセル入力ユニット(情報処理装置)
5 アナログ出力ユニット(情報処理装置)
10a~10f 制御部
11、11e 計測値取得部
11f アナログ値出力部
12a、12b、12d 環境情報取得部(取得部)
13 精度保証特定部
14 出力部
15c、15d ユニット通信部
20 記憶部
100a~100f アナログシステム
111 熱電対
112 ロードセル
113 アナログデバイス
121 温度センサ
122 加速度センサ
141 表示器(表示装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11