(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】船舶推進機の冷却装置
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20250527BHJP
B63H 20/28 20060101ALI20250527BHJP
B63H 20/00 20060101ALI20250527BHJP
F01P 11/04 20060101ALI20250527BHJP
F01P 11/06 20060101ALI20250527BHJP
F01P 7/14 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
B63H21/38 A
B63H20/28 100
B63H20/00 410
F01P11/04 F
F01P11/06 A
F01P7/14 J
(21)【出願番号】P 2024220372
(22)【出願日】2024-12-16
(62)【分割の表示】P 2022003016の分割
【原出願日】2022-01-12
【審査請求日】2024-12-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】大穂 泰正
(72)【発明者】
【氏名】二橋 尚範
(72)【発明者】
【氏名】北畠 将博
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-163872(JP,A)
【文献】特開2021-191652(JP,A)
【文献】Micro Plastic Collecting Device,Suzuki Marine UK,2020年10月01日,https://www.youtube.com/watch?v=Oge7DnT8m90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/38
B63H 20/28
B63H 20/00
F01P 11/04
F01P 11/06
F01P 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶推進機に設けられ、前記船舶推進機外の水を前記船舶推進機内に取り込み、当該取り込んだ水を冷却水として前記船舶推進機の動力源の周囲または内部に流すことにより前記動力源を冷却し、前記動力源の周囲または内部を流れた後の冷却水を前記船舶推進機外に排出する船舶推進機の冷却装置であって、
前記動力源の周囲または内部を流れた後の冷却水を前記船舶推進機外へ排出するための排水通路と、
前記排水通路の上流部と下流部との間に介在し、前記排水通路の上流部と下流部との間を接続する捕集通路と、
前記捕集通路の途中に設けられ、前記捕集通路を通って前記排水通路の上流部から前記排水通路の下流部に向かって流れる冷却水に含まれる微細物体を捕集する捕集器と、
前記排水通路の上流部と下流部との間に前記捕集通路と並列に接続されたバイパス通路と、
前記排水通路の上流部が前記捕集通路と前記バイパス通路とに分岐する分岐部と、
前記捕集通路と前記バイパス通路とが前記排水通路の下流部に合流する合流部とを備え、
前記排水通路の下流部、前記捕集通路および前記バイパス通路は、前記バイパス通路から前記合流部に流入する冷却水の流れ方向と前記合流部から前記排水通路の下流部に流入する冷却水の流れ方向との相違が、前記捕集通路から前記合流部に流入する冷却水の流れ方向と前記合流部から前記排水通路の下流部に流入する冷却水の流れ方向との相違よりも小さくなるように配置され
、
前記合流部において、前記捕集通路と前記バイパス通路とは互いに鋭角に交わっていることを特徴とする船舶推進機の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水、湖水等の水中に拡散した微細な物体を捕集する機能を備えた船舶推進機の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチック等の微細なゴミが海水、湖水、河川水等の水中に拡散することによって起こる海、湖、河川等の汚染が問題となっている。また、養殖に用いられた餌の滓等が海水、湖水、河川水等の水中に拡散することによって海、湖、河川等が汚染されることが知られている。このような汚染を抑制すべく、マイクロプラスチック等の微細なゴミ、餌の滓等(以下、これらを「微細物体」という。)を捕集して回収することが望まれている。
【0003】
下記の特許文献1には、微細物体を捕集する機能を備えた冷却装置が搭載された船外機が記載されている。当該冷却装置は、ポンプを利用して、海水または湖水等の水を船外機内に取り込み、取り込んだ水を、冷却水として、船外機のエンジンに設けられたウォータジャケットに供給する。ウォータジャケットに供給された冷却水は、ウォータジャケット内を流通し、これによりエンジンが冷却される。また、ウォータジャケット内を流通した後の冷却水は、排水パイプ内を流れ、排水パイプの途中に設けられたろ過装置内を通過し、その後、船外機外へ排出される。冷却水がろ過装置内を通過することにより、冷却水中の微細物体がろ過装置により捕捉され、冷却水から除去される。このように、当該冷却装置によれば、海水または湖水等を船外機内に取り込み、取り込んだ海水または湖水等に含まれる微細物体をろ過装置により捕集することができる。
【0004】
また、特許文献1に記載された冷却装置において、ろ過装置が設けられた排水パイプには、ろ過装置が目詰まりした場合に、ろ過装置を迂回して冷却水を流すためのバイパス通路が接続されている。また、当該冷却装置において、バイパス通路の上流端と排水パイプとの接続部分にはリリーフバルブが設けられている。リリーフバルブは、ろ過装置が目詰まりしていないときには閉弁し、排水パイプを流れる冷却水をろ過装置へ導き、ろ過装置が目詰まりしたときには開弁して、排水パイプを流れる冷却水を、ろ過装置を迂回してバイパス通路に導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8(A)および(B)は、上記特許文献1に記載された従来の冷却装置の排水側の構成と同等の構成を示している。
図8(A)および(B)において、133は排水通路である。排水通路133は、上記特許文献1に記載された冷却装置における排水パイプに対応するものである。また、135はろ過装置であり、145はバイパス通路であり、144はリリーフバルブである。ろ過装置135が目詰まりしていないときには、
図8(A)に示すように、リリーフバルブ144が閉弁する。このとき、冷却水は、
図8(A)中の矢印Vが示すように、ろ過装置135内を通るように排水通路133を流れる。一方、ろ過装置135が目詰まりしたときには、
図8(B)に示すように、リリーフバルブ144が開弁する。このとき、冷却水は、
図8(B)中の矢印Wが示すようにバイパス通路145を流れる。
【0007】
ところで、本出願の発明者は、例えば
図8(A)および(B)に示すような冷却装置の排水側の構成からリリーフバルブ144を除去することを検討している。リリーフバルブ144を除去することにより、部品点数を減らして、冷却装置の製造コストを下げることができ、また、リリーフバルブ144の故障等の不具合の発生や、リリーフバルブ144のメンテナンスの負担をなくすことができる。しかしながら、冷却装置の排水側の構成からリリーフバルブ144を除去することにより、次のような問題が生じる。
【0008】
図9(A)は、
図8(A)および(B)に示す冷却装置の排水側の構成からリリーフバルブ144を除去したものを示している。冷却装置の排水側の構成からリリーフバルブ144を除去した場合には、バイパス通路145の入口が排水通路133と常時連通した状態になる。したがって、
図9(A)中の矢印X1およびX2が示すように、ろ過装置135が目詰まりしていないときでも、冷却水がバイパス通路145内に流入することがある。この現象は、
図9(A)中の二点鎖線が示すように、排水通路133からバイパス通路145が分岐している分岐部分において、排水通路133からバイパス通路145に向かって伸長する直線状の流路が形成されており、そのため、排水通路133から分岐部分に流入する冷却水の流れ方向(矢印X1)と、分岐部分からバイパス通路145内に流入する冷却水の流れ方向(矢印X2)とが互いに同一になっている場合に起こり易い。このように、ろ過装置135が目詰まりしていないときでも、冷却水がバイパス通路145内に流入すると、ろ過装置135内を流れる冷却水の量が減少する。その結果、冷却装置の微細物体の捕集能力が低下する。
【0009】
また、
図8(A)および(B)に示す冷却装置の排水側の構成からリリーフバルブ144を除去したものにおいては、バイパス通路145を流れた冷却水が、バイパス通路145の出口から流出した後に排水通路133を逆流することにより、ろ過装置135内に蓄積された微細物体が巻き上げられ、巻き上げられた微細物体が冷却水と共にバイパス通路145および排水通路133を順次流れて船外機外へ排出されることが懸念される。
【0010】
図9(B)は、
図9(A)と同様に、
図8(A)および(B)に示す冷却装置の排水側の構成からリリーフバルブ144を除去したものを示している。バイパス通路145を流れた冷却水は、通常、
図9(B)中の矢印Y1およびY2が示すように、バイパス通路145の出口から流出した後、排水通路133を下方へ流れる。ところが、バイパス通路145を流れる冷却水の量が多い場合には、バイパス通路145を流れた冷却水が、バイパス通路145の出口から流出するときに、その流れが乱れ、冷却水が、
図9(B)中の矢印Y3が示すように、排水通路133を上方へ逆流することがある。この逆流は、
図9(B)中の二点鎖線が示すように、バイパス通路145が排水通路133に合流している合流部分において、バイパス通路145から排水通路133にかけての流路が屈曲しており、そのため、バイパス通路145から合流部分に流入する冷却水の流れ方向(矢印Y1)と、合流部分から排水通路133を下方へ流れる冷却水の流れ方向(矢印Y2)とが互いに相違している場合に生じ易い。冷却水が排水通路133を逆流すると、逆流した冷却水がろ過装置135内を下から上へ流れ、ろ過装置135内に蓄積された微細物体がこの冷却水により巻き上げられるおそれがある。リリーフバルブ144が除去された構成においては、バイパス通路145の入口が排水通路133と常時連通しているので、巻き上げられた微細物体が冷却水と共にバイパス通路145の入口からバイパス通路145内に入り、バイパス通路145および排水通路133を順次下方に流れて、船外機外へ排出される可能性がある。このような冷却水の逆流により、ろ過装置135に一旦蓄積された微細物体が船外機外へ排出されてしまう可能性があるのであるから、このような冷却水の逆流は、冷却装置の微細物体の捕集能力の低下に繋がる。
【0011】
また、
図8(A)および(B)に示す冷却装置の排水側の構成からリリーフバルブ144を除去したものにおいては、船外機の動力源がエンジンである場合に、エンジンの排気ガスが排水通路133を逆流することにより、ろ過装置135内に蓄積された微細物体が巻き上げられ、巻き上げられた微細物体が冷却水と共にバイパス通路145および排水通路133を順次流れて船外機外へ排出されることが懸念される。
【0012】
すなわち、エンジンを動力源とする船外機の多くは、船外機の下部の後部に排気室が設けられ、エンジンから排出された排気ガスが排気通路を介して排気室に送られるように構成されている。このような構成を有する船外機が水冷式の冷却装置を有する場合、その冷却装置は、排水通路を流れた冷却水が排気室内に放出されるように構成されているものが多い。冷却装置がこのような構成を有する場合、排水通路と排気通路とが排気室を介して繋がっているため、排水通路内の圧力が排気室内の圧力よりも低くなったときに、排気通路から排気室内に送られた排気ガスが排気室から排水通路内に流入し、排水通路内を逆流することがある。
【0013】
図9(C)は、
図9(A)および
図9(B)と同様に、
図8(A)および(B)に示す冷却装置の排水側の構成からリリーフバルブ144を除去したものを示している。
図9(C)中の矢印Zが示すように、排気室から排水通路133を逆流する排気ガスが、ろ過装置135に到達し、ろ過装置135内を下から上へ流れることがある。排水通路133を逆流する排気ガスがろ過装置135に到達する現象は、
図9(C)中の二点鎖線が示すように、排水通路133において、ろ過装置135の下方からろ過装置135に至る流路が直線状であり、そのため、排水通路133を逆流する排気ガスがろ過装置135に向かって直線状に流れる場合に起こり易い。排気ガスがろ過装置135内を下から上へ流れると、ろ過装置135内に蓄積された微細物体がこの排気ガスにより巻き上げられ、巻き上げられた微細物体が冷却水と共にバイパス通路145および排水通路133を順次下方に流れて、船外機外へ排出される可能性がある。よって、このような排気ガスの逆流も、冷却装置の微細物体の捕集能力の低下に繋がる。
【0014】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、捕集器(ろ過装置)の目詰まりの有無に応じてバイパス通路を開閉するバルブ等を用いない場合でも、微細物体の捕集能力を十分に確保することができる船舶推進機の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、船舶推進機に設けられ、前記船舶推進機外の水を前記船舶推進機内に取り込み、当該取り込んだ水を冷却水として前記船舶推進機の動力源の周囲または内部に流すことにより前記動力源を冷却し、前記動力源の周囲または内部を流れた後の冷却水を前記船舶推進機外に排出する船舶推進機の冷却装置であって、前記動力源の周囲または内部を流れた後の冷却水を前記船舶推進機外へ排出するための排水通路と、前記排水通路の上流部と下流部との間に介在し、前記排水通路の上流部と下流部との間を接続する捕集通路と、前記捕集通路の途中に設けられ、前記捕集通路を通って前記排水通路の上流部から前記排水通路の下流部に向かって流れる冷却水に含まれる微細物体を捕集する捕集器と、前記排水通路の上流部と下流部との間に前記捕集通路と並列に接続されたバイパス通路と、前記排水通路の上流部が前記捕集通路と前記バイパス通路とに分岐する分岐部と、前記捕集通路と前記バイパス通路とが前記排水通路の下流部に合流する合流部とを備え、前記排水通路の下流部、前記捕集通路および前記バイパス通路は、前記バイパス通路から前記合流部に流入する冷却水の流れ方向と前記合流部から前記排水通路の下流部に流入する冷却水の流れ方向との相違が、前記捕集通路から前記合流部に流入する冷却水の流れ方向と前記合流部から前記排水通路の下流部に流入する冷却水の流れ方向との相違よりも小さくなるように配置され、前記合流部において、前記捕集通路と前記バイパス通路とは互いに鋭角に交わっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、捕集器の目詰まりの有無に応じてバイパス通路を開閉するバルブ等を用いない場合でも、微細物体の捕集能力を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例の冷却装置が設けられた船外機を示す全体図である。
【
図2】本発明の実施例における船外機のエンジンを左方から見た状態を示す外観図である。
【
図3】
図2中のエンジンを後方から見た状態を示す外観図である。
【
図4】本発明の実施例の冷却装置の構成を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施例の冷却装置における微細物体捕集装置の基本的な構成を示す説明図である。
【
図6】
図3中の切断線VI-VIに沿って切断した排水通路の上流部、微細物体捕集装置、および排水通路の下流部を示す断面図である。
【
図7】
図6中のケースおよびフィルタカートリッジを拡大して示す断面図である。
【
図8】従来の冷却装置の排水側の構成を示す説明図である。
【
図9】従来の冷却装置の排水側の構成からリリーフバルブを除去したものを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態の船舶推進機の冷却装置は、船舶推進機に設けられ、船舶推進機外の水を船舶推進機内に取り込み、当該取り込んだ水を冷却水として船舶推進機の動力源の周囲または内部に流すことにより動力源を冷却し、動力源の周囲または内部を流れた後の冷却水を船舶推進機外に排出する冷却装置であって、動力源の周囲または内部を流れた後の冷却水を船舶推進機外へ排出するための排水通路と、排水通路の上流部と下流部との間に介在し、排水通路の上流部と下流部との間を接続する捕集通路と、捕集通路の途中に設けられ、捕集通路を通って排水通路の上流部から排水通路の下流部に向かって流れる冷却水に含まれる微細物体を捕集する捕集器と、排水通路の上流部と下流部との間に捕集通路と並列に接続されたバイパス通路と、排水通路の上流部が捕集通路とバイパス通路とに分岐する分岐部と、捕集通路とバイパス通路とが排水通路の下流部に合流する合流部とを備えている。
【0019】
また、本実施形態の冷却装置において、排水通路の上流部、捕集通路およびバイパス通路は、排水通路の上流部から分岐部に流入する冷却水の流れ方向と分岐部から捕集通路に流入する冷却水の流れ方向との相違が、排水通路の上流部から分岐部に流入する冷却水の流れ方向と分岐部からバイパス通路に流入する冷却水の流れ方向との相違よりも小さくなるように配置されている。
【0020】
排水通路の上流部、捕集通路およびバイパス通路がこのように配置されていることにより、捕集器が目詰まりしていないときには、排水通路の上流部から流出した冷却水がバイパス通路よりも捕集通路に流入し易くなる。したがって、捕集器の目詰まりの有無に応じてバイパス通路を開閉するバルブ等を用いることなく、捕集器が目詰まりしていないときに排水通路の上流部から流出した冷却水の大部分を捕集通路に円滑に流入させ、捕集器へ送ることができる。すなわち、排水通路の上流部とバイパス通路の入口とが常時連通している場合でも、捕集器が目詰まりしていないときに排水通路の上流部から流出した冷却水がバイパス通路に流入することを抑制することができる。よって、捕集器が目詰まりしていないときに、冷却水がバイパス通路に流入することによって捕集器内を流れる冷却水の量が減少することを抑えることができ、冷却装置の微細物体の捕集能力が低下することを抑制することができる。
【0021】
また、本実施形態の冷却装置において、排水通路の下流部、捕集通路およびバイパス通路は、バイパス通路から合流部に流入する冷却水の流れ方向と合流部から排水通路の下流部に流入する冷却水の流れ方向との相違が、捕集通路から合流部に流入する冷却水の流れ方向と合流部から排水通路の下流部に流入する冷却水の流れ方向との相違よりも小さくなるように配置されている。
【0022】
排水通路の下流部、捕集通路およびバイパス通路をこのように配置したことにより、バイパス通路から排水通路の下流部への冷却水の流れ方向を直線に近づけ、または直線にすることができる。したがって、捕集器が目詰まりしているときに、冷却水をバイパス通路から排水通路の下流部へ円滑に流すことができ、バイパス通路を流れた冷却水が捕集通路を逆流することを抑制することができる。また、排水通路の下流部、捕集通路およびバイパス通路を上述したように配置したことにより、船舶推進機の排気室から排水通路の下流部を排気ガスが逆流したとき、排水通路の下流部からバイパス通路への排気ガスの流れ方向を直線に近づけ、または直線にすることができ、かつ、排水通路の下流部から捕集通路への排気ガスの流れ方向を屈曲させることができる。したがって、船舶推進機の排気室から排水通路の下流部を逆流した排気ガスをバイパス通路へ円滑に流すことができ、排水通路の下流部を逆流した排気ガスが捕集通路を逆流することを抑制することができる。
【0023】
このように、捕集通路への冷却水または排気ガスの逆流を抑制することにより、冷却水または排気ガスが捕集器内を下から上へ通ることにより、捕集器内に蓄積された微細物体が巻き上げられることを抑制することができる。したがって、捕集通路の入口とバイパス通路の入口とが分岐部において常時連通している場合でも、捕集器内に一旦蓄積された微細物体が巻き上げられてバイパス通路および排水通路の下流部を通って船舶推進機外へ排出されることを抑制することができる。このように、本実施形態によれば、捕集器の目詰まりの有無に応じてバイパス通路を開閉するバルブ等が設けられていない場合でも、冷却水または排気ガスの逆流により捕集器内に一旦蓄積された微細物体が船舶推進機外へ排出されてしまうことを抑制することができ、それゆえ、冷却装置の微細物体の捕集能力を十分に確保することができる。
【実施例】
【0024】
以下、
図1~7を参照しながら、本発明の船舶推進機の冷却装置の実施例について説明する。なお、実施例において、前(Fd)、後(Bd)、上(Ud)、下(Dd)、左(Ld)、右(Rd)の方向を述べる際には、
図1~7中の左下に描いた矢印に従う。
【0025】
(船外機)
図1は、船舶推進機の一形態である船外機1の全体を左方から見た状態を示している。
図1に示すように、船外機1は、動力源としてのエンジン2と、エンジン2の動力を受けて回転するドライブシャフト3と、船舶の推進力を生成するプロペラ4と、プロペラ4が取り付けられたプロペラシャフト5と、ドライブシャフト3の回転をプロペラシャフト5に伝達するギヤ機構6とを備えている。また、図示を省略しているが、ギヤ機構6には、ドライブシャフト3からプロペラシャフト5へ伝達される回転の方向を切り替えるシフト装置が設けられている。エンジン2は船外機1の上部に配置されている。ギヤ機構6、プロペラシャフト5およびプロペラ4は船外機1の下部に配置されている。ドライブシャフト3はエンジン2とギヤ機構6との間を上下方向に伸長している。
【0026】
また、エンジン2の下部はエンジンボトムカバー7により覆われ、エンジン2の上下方向中間部および上部はエンジントップカバー8により覆われている。エンジントップカバー8はエンジンボトムカバー7に着脱可能に取り付けられている。エンジントップカバー8を取り外すことにより、エンジン2において上下方向中間部から上部にかけての広範囲の部分を露出させることができる。また、ドライブシャフト3の上部はアッパーケース9により覆われ、ドライブシャフト3の上下方向中間部はミドルケース10により覆われている。また、ドライブシャフト3の下部、ギヤ機構6およびプロペラシャフト5の前部はロアケース11により覆われている。
【0027】
図2はエンジン2を左方から見た状態を示している。
図3はエンジン2を後方から見た状態を示している。エンジン2は例えば4サイクル4気筒のガソリンエンジンであり、エンジン2の冷却方式は水冷式である。エンジン2はクランクシャフトの伸長方向が上下方向となるように配置されている。
図2に示すように、エンジン2において、前部にクランクケース12が配置され、クランクケース12の後方にシリンダブロック13が配置され、シリンダブロック13の後方にシリンダヘッド14が配置されている。また、シリンダヘッド14の後部はシリンダヘッドカバー15により覆われている。
【0028】
また、
図1に示すように、船外機1には、エンジン2から排出された排気ガスを船外機1外へ排出するための排気通路16が設けられている。排気通路16の上端側は、エンジン2のシリンダヘッド14に設けられた排気口に接続され、排気通路16の下端側は、船外機1における下部の後部に設けられた排気室17に接続されている。本実施例の船外機1においては、排気室17は、ミドルケース10内の後部からロアケース11内の後部にかけての部分に設けられている。エンジン2の排気口から排出された排気ガスは、排気通路16を介して排気室17に送られ、その後、例えばプロペラ4の軸部に設けられた排出口を介して船外機1外へ排出される。なお、
図2および
図3では、エンジン2の排気口および排気通路16の図示を省略している。
【0029】
(冷却装置)
船外機1は、海水、湖水または河川水等、船外機1の周囲の水を冷却水として用いることにより、船外機1におけるエンジン2その他の発熱部分を冷却するための冷却装置21を備えている。
図4は冷却装置21の構成を示している。
【0030】
冷却装置21は、
図4に示すように、取水口22、取水通路23、ウォータポンプ24、給水通路25、ウォータジャケット26、排水通路27、サーモスタット28、プレッシャーバルブ29、および微細物体捕集装置31を備えている。
【0031】
取水口22は、船外機1の周囲の水を船外機1内に取り込む口であり、船外機1において水面下に沈む部分、具体的にはロアケース11の一部に設けられている(
図1参照)。また、取水口22には、石、藻等、微細物体よりも大きい物体が海水、湖水または河川水等と共に船外機1内に入ることを防止するためのストレーナ、または多数の小孔を有するカバーが設けられている。
【0032】
取水通路23は、取水口22から船外機1内に取り込まれた水をウォータポンプ24に吸水させるための通路であり、ロアケース11の内部に設けられている。
【0033】
ウォータポンプ24は、取水口22から船外機1内に取り込まれた水を吸水し、吸水した水を冷却水として吐出するポンプであり、例えばロアケース11またはミドルケース10の内部に設けられている。また、ウォータポンプ24はドライブシャフト3の回転を利用して作動する。
【0034】
給水通路25は、ウォータポンプ24から吐出された冷却水をウォータジャケット26に送水するための通路であり、例えば、ミドルケース10、アッパーケース9およびエンジンボトムカバー7の内部に設けられたホースまたはパイプ等により形成されている。
【0035】
ウォータジャケット26は、給水通路25を介して送水された冷却水をエンジン2の周囲または内部に流すことによりエンジン2を冷却する機構であり、エンジン2の周囲または内部に設けられている。
【0036】
排水通路27は、ウォータジャケット26内を流れた後の冷却水を船外機1外へ排出するための通路であり、例えば、エンジントップカバー8、エンジンボトムカバー7およびアッパーケース9等の内部に設けられたホースまたはパイプ等により形成されている。排水通路27の途中には微細物体捕集装置31が介在しており、そのため、排水通路27は、微細物体捕集装置31よりも上流側の部分である上流部27Aと、微細物体捕集装置31よりも下流側の部分である下流部27Bとに分かれている。
【0037】
排水通路27の上流部27Aは、
図2および
図3に示すように、シリンダヘッド14の上方からシリンダヘッドカバー15の上部の左方にかけての領域に配置されている。排水通路27の上流部27Aは、耐熱性および剛性の高い樹脂製もしくは耐食性の高い金属製のパイプ、または耐熱性および剛性の高いゴム製のホース等により形成されている。排水通路27の上流部27Aの上端部は、シリンダヘッド14の上部に配置されたウォータジャケット26の出口26Aに接続されている。また、排水通路27の上流部27Aは、ウォータジャケット26の出口26Aから左方に伸長した後に曲がり、その後、エンジン2の後ろ上側部分の左方を下方に傾斜しつつ後方に伸長した後に曲がり、その後、エンジン2の後ろ上側部分の左方を後方に水平に伸長した後に曲がり、その後、エンジン2の後ろ上側部分の左方を下方に垂直に伸長している。そして、排水通路27の上流部27Aの下端の口は下を向いている。また、排水通路27の上流部27Aの下端部には、微細物体捕集装置31の捕集通路32およびバイパス通路34のそれぞれの上端部(具体的には分岐管41の流入管部41Aの上端部)が接続されている。
【0038】
また、排水通路27の下流部27Bは、エンジン2の後部の左下部から排気室17に至るまでの領域に配置されている。排水通路27の下流部27Bの上端部は、エンジン2の筐体の後部の左下部に形成された排水穴30により形成されている。排水穴30は、右方に若干傾斜しているものの下方に伸長しており、排水穴30の上端の口は上を向いている。また、排水穴30の上端部には捕集通路32およびバイパス通路34のそれぞれの下端部(具体的には合流管54の流出管部54Cの下端部)が接続されている。また、排水通路27の下流部27Bにおいて、その排水穴30よりも下の部分は、エンジンボトムカバー7およびアッパーケース9等の内部に設けられたホースまたはパイプ等により形成されている。また、排水通路27の下流部の下端部は、
図4に示すように排気室17に接続されている。
【0039】
サーモスタット28は、エンジン2の暖機を行うため、またはエンジン2の過冷却を防ぐために冷却水の流れを制限する装置であり、例えばウォータジャケット26の出口26Aの付近に設けられている。サーモスタット28は、ウォータジャケット26内を流れる冷却水の温度が所定の基準温度以上となったときに開弁し、当該冷却水の温度が上記基準温度未満となったときに閉弁する。
【0040】
プレッシャーバルブ29は、サーモスタット28により冷却水の流れが制限されているときに、ウォータポンプ24から吐出された冷却水を排気室17側へ逃がすことにより、給水通路25内またはウォータジャケット26内の水圧を下げるためのバルブである。プレッシャーバルブ29は、例えばノーマルクローズ弁であり、給水通路25内の水圧が所定の基準圧を超えたときに開弁する。
【0041】
微細物体捕集装置31は、船外機1外から船外機1内に取り込まれ、エンジン2を冷却する冷却水として用いられた海水、湖水または河川水等に含まれる微細物体を捕集する装置である。微細物体捕集装置31については後に詳述する。
【0042】
このような構成を有する冷却装置21において、ウォータポンプ24が作動し、サーモスタット28が開弁し、かつプレッシャーバルブ29が閉弁しているときには、船外機1の周囲の水が取水口22から船外機1内に取り込まれ、その水が取水通路23および給水通路25を順次流れ、冷却水としてウォータジャケット26に送られる。ウォータジャケット26に送られた冷却水は、ウォータジャケット26内を流れ、これにより、エンジン2が冷却される。ウォータジャケット26内を流れた冷却水は、ウォータジャケット26の出口26Aから排水通路27の上流部27A内に流入し、排水通路27の上流部27Aを流れ、続いて微細物体捕集装置31内を流れ、続いて排水通路27の下流部27Bを流れ、その後、排気室17内に放出される。排気室17内に放出された冷却水は、排気ガスと共に、例えばプロペラ4の軸部に設けられた排出口を介して船外機1外へ排出される。一方、ウォータポンプ24が作動し、サーモスタット28が閉弁し、かつプレッシャーバルブ29が開弁しているときには、取水口22から船外機1内に取り込まれた水は、取水通路23および給水通路25を順次流れるも、ウォータジャケット26に到達する前に、開弁しているプレッシャーバルブ29を介して排気室17側へ送られ、排気室17内に放出される。排気室17内に放出された冷却水は、排気ガスと共に船外機1外へ排出される。
【0043】
(微細物体捕集装置)
微細物体捕集装置31は、上述したように、船外機1外から船外機1内に取り込まれ、エンジン2を冷却する冷却水として用いられた海水、湖水または河川水等に含まれる微細物体を捕集する装置である。微細物体捕集装置31は、
図2および
図3に示すように、エンジン2の後部の左方に配置されている。また、微細物体捕集装置31はエンジントップカバー8内に配置されている。
【0044】
微細物体は、例えばマイクロプラスチック等の微細なゴミ、または養殖に用いられた餌の滓等である。微細物体の大きさは、例えば、約0.1mm以上かつ約5mm以下である。微細物体は、このような大きさであるため、取水口22に設けられたストレーナまたは多数の小孔を有するカバーにより除去されない。すなわち、ウォータポンプ24が作動し、サーモスタット28が開弁し、かつプレッシャーバルブ29が閉弁しているとき、微細物体は、海水、湖水または河川水等と共に取水口22から船外機1内に入り、取水通路23、給水通路25、ウォータジャケット26および排水通路27の上流部27Aを通って微細物体捕集装置31に流入する。
【0045】
図5は微細物体捕集装置31の基本的な構成を示している。微細物体捕集装置31は、
図5に示すように、捕集通路32、捕集器33、バイパス通路34、分岐部35、および合流部36を備えている。
【0046】
捕集通路32は、排水通路27の上流部27Aと下流部27Bとの間に介在し、排水通路27の上流部27Aと下流部27Bとの間を接続する通路である。捕集通路32は、排水通路27の上流部27Aを流れる冷却水を、捕集器33を経由させて、排水通路27の下流部37Bへ流す。
【0047】
捕集器33は、捕集通路32の途中に設けられ、捕集通路32を通って排水通路27の上流部27Aから排水通路27の下流部27Bに向かって流れる冷却水に含まれる微細物体を捕集する装置である。捕集器33は、後述するように、捕集通路32を流れる冷却水をフィルタ43に通すことにより、冷却水中の微細物体を捕捉し、冷却水から微細物体を除去する。
【0048】
バイパス通路34は、排水通路27の上流部27Aと下流部27Bとの間に捕集通路32と並列に接続された通路である。バイパス通路34は、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしたとき等に、排水通路27の上流部27Aを流れる冷却水を、捕集器33を経由させずに、排水通路27の下流部37Bへ流す。
【0049】
分岐部35は、排水通路27の上流部27Aが捕集通路32とバイパス通路34とに分岐する部分である。合流部36は、捕集通路32とバイパス通路34とが排水通路27の下流部27Bに合流する部分である。
【0050】
(分岐部における捕集通路およびバイパス通路等の配置)
図5において、排水通路27の上流部27A、捕集通路32、およびバイパス通路34は、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と分岐部35から捕集通路32に流入する冷却水の流れ方向との相違が、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と分岐部35からバイパス通路34に流入する冷却水の流れ方向との相違よりも小さくなるように配置されている。
【0051】
具体的には、排水通路27の上流部27Aと捕集通路32とは、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と分岐部35から捕集通路32に流入する冷却水の流れ方向とが互いに同一となるように配置されている。これに対し、排水通路27の上流部27Aとバイパス通路34とは、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と分岐部35からバイパス通路34に流入する冷却水の流れ方向とが互いに相違するように配置されている。
【0052】
さらに具体的には、排水通路27の上流部27Aは、矢印Aが示すように、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ鉛直となるように配置されている。また、捕集通路32は、矢印Bが示すように、分岐部35から捕集通路32に流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ鉛直となるように配置されている。これに対し、バイパス通路34は、矢印Cが示すように、分岐部35からバイパス通路34に流入する冷却水の流れ方向が鉛直とならないように配置されている。
【0053】
本実施例においては、分岐部35において互いに接続された排水通路27の上流部27Aの下端部と捕集通路32の上端部とが、いずれも鉛直に伸長し、互いに同軸に配置されている。これにより、排水通路27の上流部27Aの下端部から捕集通路32の上端部にかけて、鉛直に伸長した直線状の流路が形成されている。これに対し、分岐部35において排水通路27の上流部27Aの下端部に接続されたバイパス通路34の上端部は、鉛直に対して傾斜している。これにより、排水通路27の上流部27Aの下端部からバイパス通路34の上端部にかけて、屈曲した流路が形成されている。
【0054】
また、分岐部35において、捕集通路32とバイパス通路34とは互いに鋭角に交わっている。捕集通路32の上端部とバイパス通路34の上端部とのなす角Pは、例えば約20度以上かつ90度未満である。なお、バイパス通路34の上端部を水平に伸長するようにし、分岐部35において、捕集通路32とバイパス通路34とが直角に交わるようにしてもよく、この場合には、Pは90度になる。
【0055】
(合流部における捕集通路およびバイパス通路等の配置)
捕集通路32、バイパス通路34、および排水通路27の下流部27Bは、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向との相違が、捕集通路32から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向との相違よりも小さくなるように配置されている。
【0056】
具体的には、バイパス通路34と排水通路27の下流部27Bとは、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向とが互いに略同一となるように配置されている。これに対し、捕集通路32と排水通路27の下流部27Bとは、捕集通路32から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向とが互いに相違するように配置されている。
【0057】
なお、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向との関係につき、「略同一」と表現した理由は、
図3に示すように、エンジン2を後方から見た状態で、排水通路27の下流部27Bの上端部(排水穴30)が鉛直に対して右方に若干傾斜しているからである。この排水通路27の下流部27Bの上端部が鉛直に対して右方に若干傾斜していることは、バイパス通路34を流れた冷却水の捕集通路32への逆流を抑制することができるという本実施例の冷却装置21の効果をほとんど低下させず、また、排気室17から逆流した排気ガスが捕集通路32の下端部から捕集通路32内に流入することを抑制することができるという本実施例の冷却装置21の効果をほとんど低下させない。
【0058】
さらに具体的には、バイパス通路34は、矢印Eが示すように、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ鉛直となるように配置されている。また、排水通路27の下流部27Bは、矢印Fが示すように、合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ略鉛直となるように配置されている。これに対し、捕集通路32は、矢印Dが示すように、捕集通路32から合流部36に流入する冷却水の流れ方向が鉛直とならないように配置されている。
【0059】
本実施例においては、バイパス通路34の下端部と排水通路27の下流部27Bの上端部とが合流部36において互いに接続されており、バイパス通路34の下端部が鉛直に伸長し、排水通路27の下流部27Bの上端部が略鉛直に伸長し、バイパス通路34の下端部と排水通路27の下流部27Bの上端部とが互いに略同軸に配置されている。これにより、バイパス通路34の下端部から排水通路27の下流部27Bの上端部にかけて、略鉛直に伸長した略直線状の流路が形成されている。これに対し、合流部36において排水通路27の下流部27Bの上端部に接続された捕集通路32の下端部は、鉛直に対して傾斜している。これにより、捕集通路32の下端部から排水通路27の下流部27Bの上端部にかけて、屈曲した流路が形成されている。
【0060】
また、合流部36において、捕集通路32とバイパス通路34とは互いに鋭角に交わっている。捕集通路32の下端部とバイパス通路34の下端部とのなす角Qは、例えば約20度以上かつ90度未満である。なお、捕集通路32の下端部を水平に伸長するようにし、合流部36において、捕集通路32とバイパス通路34とが直角に交わるようにしてもよく、この場合には、Qは90度になる。
【0061】
捕集通路32は、分岐部35から鉛直かつ下方に伸長した後に曲がり、その後、鉛直に対して傾斜しつつ下方に伸長し、合流部36に達している。また、捕集器33は、捕集通路32において、鉛直に伸長した部分の途中に設けられている。また、バイパス通路34は、分岐部35から鉛直に対して傾斜しつつ下方に伸長した後に曲がり、その後、鉛直かつ下方に伸長し、合流部36に達している。
【0062】
(微細物体捕集装置における冷却水の流れ)
図5において、排水通路27の上流部27Aの下端部、および捕集通路32の上端部はいずれも鉛直に伸長している。また、排水通路27の上流部27Aの下端部と捕集通路32の上端部とは互いに同軸に配置され、排水通路27の上流部27Aの下端部から捕集通路32の上端部にかけて、鉛直に伸長した直線状の流路が形成されている。それゆえ、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と、分岐部35から捕集通路32に流入する冷却水の流れ方向とは、矢印AおよびBが示すように、いずれも下向きかつ鉛直であり、互いに同一である。これに対し、バイパス通路34の上端部は鉛直に対して傾斜しており、排水通路27の上流部27Aの下端部からバイパス通路34の上端部にかけて、屈曲した流路が形成されている。それゆえ、分岐部35からバイパス通路34に流入する冷却水の流れ方向は、矢印Cが示すように、鉛直とならない。その結果、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と、分岐部35からバイパス通路34に流入する冷却水の流れ方向とが互いに相違する。したがって、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしていない場合には、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入した冷却水の大部分は捕集通路32に流入する。捕集通路32に流入した冷却水は捕集器33内のフィルタ43を通り抜ける。冷却水がフィルタ43を通るときに、冷却水中の微細物体が除去される。フィルタ43を通り抜けた冷却水は、捕集通路32の下部、および合流部36を順次通って排水通路27の下流部27Bに流入する。このように、本実施例によれば、捕集器33のフィルタ43の目詰まりの有無に応じてバイパス通路34を開閉するバルブ等を用いることなく、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしていないときに排水通路27の上流部27Aから流出した冷却水の大部分を捕集通路32に流入させ、捕集器33へ送ることができる。
【0063】
一方、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしている場合には、冷却水がフィルタ43を通り抜けることが困難になり、捕集器33内、および捕集通路32の上部(捕集器33よりも上の部分)において冷却水の流れが滞る。それゆえ、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしている場合には、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入した冷却水の大部分は、バイパス通路34に流入し、バイパス通路34および合流部36を順次通って排水通路27の下流部27B内に流入する。ここで、バイパス通路34の下端部は鉛直に伸長し、排水通路27の下流部27Bの上端部は略鉛直に伸長し、バイパス通路34の下端部と排水通路27の下流部27Bの上端部とは互いに略同軸に配置されている。これにより、バイパス通路34の下端部から排水通路27の下流部27Bの上端部にかけて、略鉛直に伸長した略直線状の流路が形成されている。それゆえ、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と、合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向とは、矢印EおよびFが示すように、いずれも下向きかつ略鉛直であり、互いに略同一である。したがって、冷却水は、バイパス通路34から排水通路27の下流部27Bへ略直線状に略鉛直に下方へ円滑に流れる。よって、本実施例によれば、バイパス通路34から合流部36に流入した冷却水の流れが乱れてバイパス通路34の下端部から捕集通路32を逆流することを抑制することができる。それゆえ、冷却水が捕集器33内を下から上へ通ることにより、捕集器33のフィルタ43に蓄積された微細物体が巻き上げられることを抑制することができる。
【0064】
(排気室から逆流した排気ガスの流れ)
図1および
図4を見るとわかる通り、船外機1の排気室17には、排気通路16および排水通路27の下流部27Bが接続されている。その結果 排気通路16と排水通路27の下流部27Bとが排気室17を介して繋がっている。そのため、排水通路27の下流部27B内の圧力が排気室17内の圧力よりも低くなったときに、排気通路16から排気室17内に送られた排気ガスが排気室17から排水通路27の下流部27B内に流入し、排水通路27の下流部27Bを逆流することがある。船外機1においては、バイパス通路34の下端部と排水通路27の下流部27Bの上端部とは、いずれも略鉛直に伸長している。また、バイパス通路34の下端部と排水通路27の下流部27Bの上端部とは互いに略同軸に配置され、バイパス通路34の下端部から排水通路27の下流部27Bの上端部にかけて、略鉛直に伸長した略直線状の流路が形成されている。したがって、排水通路27の下流部27Bを逆流した排気ガスの大部分は、この略直線状の流路を下から上へ略直線状に流れる。すなわち、逆流した排気ガスの大部分は、排水通路27の下流部27Bからバイパス通路34に円滑に流入する。そして、バイパス通路34に流入した排気ガスは、バイパス通路34を下から上へ流れ、続いて分岐部35を通って排水通路27の上流部27Aへ流れる。このように、本実施例によれば、排水通路27の下流部27Bを逆流した排気ガスが捕集通路32に流入することを抑制することができ、逆流した排気ガスが捕集器33内を下から上へ通ることにより、捕集器33のフィルタ43に蓄積された微細物体が巻き上げられることを抑制することができる。
【0065】
(微細物体捕集装置の構成の詳細)
図6は微細物体捕集装置31の構成の詳細を示しており、この図は、
図3中の切断線VI-VIに沿って切断した排水通路27の上流部27A、微細物体捕集装置31、および排水通路27の下流部27Bの上端部の断面を左方から見た状態を示している。
図7は
図6中の捕集器33を拡大して示している。
【0066】
微細物体捕集装置31は、具体的には、
図6に示すように、分岐管41、捕集器33、接続ホース51、バイパス管52、連結管53、および合流管54を備えている。分岐管41の第1の流出管部41B、接続ホース51および合流管54の第1の流入管部54Aは捕集通路32を形成している。また、分岐管41の第2の流出管部41C、バイパス管52、連結管53および合流管54の第2の流入管部54Bはバイパス通路34を形成している。また、分岐管41において、流入管部41Aが第1の流出管部41Bと第2の流出管部41Cとに分岐している部分が分岐部35に相当する。また、合流管54において、第1の流入管部54Aと第2の流入管部54Bとが流出管部54Cに合流している部分が合流部36に相当する。
【0067】
分岐管41は、排水通路27の上流部27Aと捕集器33とを接続し、かつ排水通路27の上流部27Aとバイパス管52とを接続する管である。分岐管41は、耐熱性および剛性の高い樹脂、または耐食性の高い金属等により形成されている。分岐管41は流入管部41A、第1の流出管部41B、および第2の流出管部41Cを有している。分岐管41において、流入管部41Aは上側に位置し、第1の流出管部41Bは下側に位置している。流入管部41Aと第1の流出管部41Bとは同軸に配置され、分岐管41において流入管部41Aから第1の流出管部41Bにかけての部分は鉛直に直線状に伸長している。また、流入管部41Aは排水通路27の上流部27Aの下端部と同軸に配置され、流入管部41Aの上端部は排水通路27の上流部27Aの下端部に接続されている。第2の流出管部41Cは、分岐管41において流入管部41Aから第1の流出管部41Bにかけての部分の上下方向略中間部から下方に傾斜しつつ前方に伸長している。
【0068】
捕集器33は、フィルタカートリッジ42およびケース46を有している。
図7に示すように、フィルタカートリッジ42は、微細物体を捕え、冷却水を通過させるフィルタ43、およびフィルタ43を保持するホルダ44を有している。フィルタ43は、例えば不織布または樹脂メッシュ等により形成され、上側が開き、下側が閉じた袋状に形成されている。ホルダ44は、耐熱性および剛性の高い樹脂、または耐食性の高い金属等により、鉛直に伸長した軸線を有する筒状に形成されている。また、ホルダ44の周壁部には複数の通水穴45が設けられている。フィルタ43は、各通水穴45およびホルダ44の下側の開口部を覆うようにホルダ44の内部に配置されている。また、フィルタ43の上部は、例えば接着剤等によりホルダ44の上部の内周面に貼り付けられ、フィルタ43の上部が上方に開口した状態でホルダ44内に固定されている。
【0069】
ケース46は、フィルタカートリッジ42を収容する部材である。ケース46は、耐熱性および剛性の高い樹脂、または耐食性の高い金属等により、鉛直に伸長した軸線を有する筒状に形成されている。また、ケース46は、当該ケース46の上部を形成する上側ケース部47と、当該ケース46の下部を形成する下側ケース部48とに分割されている。フィルタカートリッジ42は上側ケース部47と下側ケース部48との間に保持されている。また、フィルタカートリッジ42はケース46と同軸に配置されている。
【0070】
上側ケース部47の上側の開口部には分岐管41の第1の流出管部41Bの下端部が接続されている。本実施例においては、上側ケース部47が分岐管41の第1の流出管部41Bと一体形成されている。また、下側ケース部48の下方には接続管部49が設けられ、下側ケース部48と接続管部49とは一体化している。
【0071】
また、下側ケース部48は結合部材50により上側ケース部47に分離可能に結合されている。結合部材50は例えば樹脂または金属により筒状に形成されている。結合部材50は、下側ケース部48の外周側に、下側ケース部48に対して回転可能に、かつ下側ケース部48に対して上下方向に移動可能に保持されている。上側ケース部47の下端部の外周面、および結合部材50の内周面にはそれぞれねじが形成されており、下側ケース部48に回転可能に保持された結合部材50を上側ケース部47の下端部に螺着することにより、下側ケース部48は上側ケース部47に結合されている。また、結合部材50を、ねじが緩む方向に回転させて上側ケース部47の下端部から取り外すことにより、下側ケース部48は上側ケース部47から分離する。
【0072】
接続ホース51は、ケース46と合流管54の第1の流入管部54Aとを接続する管である。接続ホース51は、耐熱性および剛性の高いゴムホースにより形成されている。接続ホース51は剛性が高いものの、可撓性を有している。接続ホース51の上端部は、
図6に示すように、ケース46と同軸に配置されており、下側ケース部48に一体形成された接続管部49の下端部に接続されている。接続ホース51は、その上端部から鉛直に下方に伸長した後に緩やかに曲がり、その後、右後方に傾斜しつつ下方に伸長した後に緩やかに曲がり、その後、左前方に傾斜しつつ下方に伸長している。このように、接続ホース51の一部が鉛直に対して傾斜しているので、結合部材50をねじが緩む方向に回転させて下側ケース部48を上側ケース部47から分離可能な状態にした後、接続ホース51の上端部を手で握って、接続ホース51の上端部を押し下げ、下側ケース部48を上側ケース部47から引き離すことができる。下側ケース部48を上側ケース部47から引き離すことにより、フィルタカートリッジ42をケース46から取り外すことが可能になる。利用者は、このようにフィルタカートリッジ42をケース46から取り外して、フィルタ43に蓄積された微細物体を除去することができる。
【0073】
バイパス管52は、耐熱性および剛性の高いゴム製のホース、または耐熱性および剛性の高い樹脂製もしくは耐食性の高い金属製のパイプ等により形成されている。バイパス管52の上端部は分岐管41の第2の流出管部41Cの下端部に接続されている。バイパス管52は、その上端から、鉛直に対して前方に傾斜しつつ下方に伸長した後に曲がり、その後、鉛直に下方に伸長している。
【0074】
連結管53は、耐熱性および剛性の高い樹脂、または耐食性の高い金属等により形成されている。連結管53は鉛直に伸長し、バイパス管52と同軸に配置され、連結管53の上端部はバイパス管52の下端部に接続されている。
【0075】
合流管54は、接続ホース51と排水通路27の下流部27Bとを接続し、かつバイパス管52を連結管53を介して排水通路27の下流部27Bに接続する管である。合流管54は、耐熱性および剛性の高い樹脂、または耐食性の高い金属等により形成されている。合流管54は第1の流入管部54A、第2の流入管部54B、および流出管部54Cを有している。合流管54において、第2の流入管部54Bは上側に位置し、流出管部54Cは下側に位置している。第2の流入管部54Bと流出管部54Cとは同軸に配置され、合流管54において第2の流入管部54Bから流出管部54Cにかけての部分は鉛直に直線状に伸長している。また、第2の流入管部54Bと連結管53とは互いに同軸に配置され、第2の流入管部54Bの上端部には連結管53の下端部が接続されている。また、流出管部54Cの下端部は排水通路27の下流部27Bの上端部を形成している排水穴30と略同軸に配置され、流出管部54Cの下端部は排水穴30の上端部に接続されている。第1の流入管部54Aは、合流管54において第2の流入管部54Bから流出管部54Cにかけての部分の上下方向略中間部から右上方に傾斜しつつ後方に伸長している。第1の流入管部54Aの上端部には接続ホース51の下端部が接続されている。
【0076】
また、分岐管41の流入管部41A、分岐管41の第1の流出管部41B、分岐管41の第2の流出管部41C、接続ホース51、バイパス管52、連結管53、合流管54の第1の流入管部54A、合流管54の第2の流入管部54B、および合流管54の流出管部54Cの内径はそれぞれ略等しい。
【0077】
以上説明した通り、本発明の実施例の船外機1の冷却装置21において、排水通路27の上流部27A、捕集通路32、およびバイパス通路34は、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と分岐部35から捕集通路32に流入する冷却水の流れ方向との相違が、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と分岐部35からバイパス通路34に流入する冷却水の流れ方向との相違よりも小さくなるように配置されている。排水通路27の上流部27A、捕集通路32およびバイパス通路34がこのように配置されていることにより、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしていないときには、排水通路27の上流部27Aから流出した冷却水がバイパス通路34よりも捕集通路32に流入し易くなる。したがって、捕集器33のフィルタ43の目詰まりの有無に応じてバイパス通路34を開閉するバルブ等を用いることなく、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしていないときに排水通路27の上流部27Aから流出した冷却水の大部分を捕集通路32に円滑に流入させ、捕集器33へ送ることができる。すなわち、排水通路27の上流部27Aとバイパス通路34の入口とが常時連通している場合でも、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしていないときに排水通路27の上流部27Aから流出した冷却水がバイパス通路34に流入することを抑制することができる。よって、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしていないときに、冷却水がバイパス通路34に流入することによって捕集器33内を流れる冷却水の量が減少することを抑えることができ、冷却装置21の微細物体の捕集能力が低下することを抑制することができる。
【0078】
また、本実施例の冷却装置21において、排水通路27の上流部27Aと捕集通路32とは、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と分岐部35から捕集通路32に流入する冷却水の流れ方向とが互いに同一となるように配置され、排水通路27の上流部27Aとバイパス通路34とは、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と分岐部35からバイパス通路34に流入する冷却水の流れ方向とが互いに相違するように配置されている。この構成により、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしていないときに排水通路27の上流部27Aから流出した冷却水の大部分を捕集通路32に一層円滑に流入させることができ、冷却装置21の微細物体の捕集能力を十分に確保することができる。
【0079】
また、本実施例の冷却装置21において、排水通路27の上流部27Aは、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ鉛直となるように配置され、捕集通路32は、分岐部35から捕集通路32に流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ鉛直となるように配置され、バイパス通路34は、分岐部35からバイパス通路34に流入する冷却水の流れ方向が鉛直とならないように配置されている。この構成により、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしていないときに排水通路27の上流部27Aから流出した冷却水の大部分を捕集通路32に、より一層円滑に流入させることができる。
【0080】
また、分岐部35において捕集通路32とバイパス通路34とは互いに鋭角に交わっている。したがって、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしているときに、排水通路27の上流部27Aから流出した冷却水をバイパス通路34に円滑に流入させることができる。よって、捕集器33のフィルタ43の目詰まりによって排水通路27における冷却水の流れが悪化することを防ぐことができる。
【0081】
また、本実施例の冷却装置21において、捕集通路32、バイパス通路34、および排水通路27の下流部27Bは、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向との相違が、捕集通路32から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向との相違よりも小さくなるように配置されている。排水通路27の下流部27B、捕集通路32およびバイパス通路34をこのように配置したことにより、バイパス通路34から排水通路27の下流部27Bへの冷却水の流れ方向を直線に近づけ、または直線にすることができる。したがって、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしているときに、冷却水をバイパス通路34から排水通路27の下流部27Bへ円滑に流すことができ、バイパス通路34を流れた冷却水が捕集通路32の出口から捕集通路32に流入し、捕集通路32を逆流することを抑制することができる。また、排水通路27の下流部27B、捕集通路32およびバイパス通路34を上述したように配置したことにより、船外機1の排気室17から排水通路27の下流部27Bを排気ガスが逆流したとき、排水通路27の下流部27Bからバイパス通路34への排気ガスの流れ方向を直線に近づけ、または直線にすることができ、かつ、排水通路27の下流部27Bから捕集通路32への排気ガスの流れ方向を屈曲させることができる。したがって、排気室17から排水通路27の下流部27Bを逆流した排気ガスをバイパス通路34へ円滑に流すことができ、排水通路27の下流部27Bを逆流した排気ガスが捕集通路32の出口から捕集通路32に流入し、捕集通路32を逆流することを抑制することができる。このように、捕集通路32への冷却水または排気ガスの逆流を抑制することができるので、冷却水または排気ガスが捕集器33内を下から上へ通ることにより、フィルタ43に蓄積された微細物体が巻き上げられることを抑制することができる。したがって、捕集通路32の入口とバイパス通路34の入口とが分岐部35において常時連通している場合でも、フィルタ43に一旦蓄積された微細物体が巻き上げられてバイパス通路34および排水通路27の下流部27Bを通って船外機1外へ排出されることを抑制することができる。このように、本実施例によれば、捕集器33のフィルタ43の目詰まりの有無に応じてバイパス通路34を開閉するバルブ等が設けられていない場合でも、冷却水または排気ガスの逆流によりフィルタ43に一旦蓄積された微細物体が船外機1外へ排出されてしまうことを抑制することができ、それゆえ、冷却装置21の微細物体の捕集能力を十分に確保することができる。
【0082】
また、本実施例の冷却装置21において、バイパス通路34と排水通路27の下流部27Bとは、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向とが互いに略同一となるように配置され、捕集通路32と排水通路27の下流部27Bとは、捕集通路32から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向とが互いに相違するように配置されている。この構成により、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしているときにバイパス通路34から排水通路27の下流部27Bへ流れる冷却水の流れの円滑性を高めることができ、また、排水通路27の下流部27Bからバイパス通路34へ逆流する排気ガスの流れの円滑性を高めることができる。したがって、捕集通路32への冷却水または排気ガスの逆流を抑制する効果を高めることができ、フィルタ43に蓄積された微細物体の巻き上げを抑制する効果を高めることができる。
【0083】
また、本実施例の冷却装置21において、バイパス通路34は、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ鉛直となるように配置され、排水通路27の下流部27Bは、合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ略鉛直となるように配置され、捕集通路32は、捕集通路32から合流部36に流入する冷却水の流れ方向が鉛直とならないように配置されている。この構成により、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしているときにバイパス通路34から排水通路27の下流部27Bへ流れる冷却水の流れの円滑性をさらに高めることができる。したがって、捕集通路32への冷却水の逆流を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0084】
また、合流部36において、捕集通路32とバイパス通路34とは互いに鋭角に交わっている。したがって、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしていないときには、捕集器33から流出した冷却水を捕集通路32を介して排水通路27の下流部27Bへ円滑に流すことができる。また、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしているときには、バイパス通路34を流れた冷却水が捕集通路32の出口から捕集通路32に流入することを抑制することができる。
【0085】
なお、上記実施例において、排水通路27の上流部27Aと捕集通路32とは、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と分岐部35から捕集通路32に流入する冷却水の流れ方向とが互いに同一となるように配置されている。排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向と分岐部35から捕集通路32に流入する冷却水の流れ方向とは、互いに完全に同一でなくてもよく、捕集器33のフィルタ43が目詰まりしていないときの排水通路27の上流部27Aから捕集通路32への冷却水の流れの円滑性を確保できる範囲で若干相違していてもよい。
【0086】
また、上記実施例において、バイパス通路34と排水通路27の下流部27Bとは、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向とが互いに略同一となるように配置されている。バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向とは、排水通路27の下流部27Bの上端部(排水穴30)の伸長方向が鉛直に対して若干傾斜している結果、互いに完全に同一ではなく、若干相違している。しかしながら、相違がこの程度であれば、バイパス通路34から排水通路27の下流部27Bへの冷却水の流れの円滑性、および排水通路27の下流部27Bからバイパス通路34への排気ガスの流れの円滑性を確保できるので、この程度の相違は同一と同視し得る。もっとも、排水通路27の下流部27Bの上端部(排水穴30)の伸長方向を鉛直とし、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向と合流部36から排水通路27の下流部27Bに流入する冷却水の流れ方向とを完全に同一にしてもよい。
【0087】
また、上記実施例において、排水通路27の上流部27Aは、排水通路27の上流部27Aから分岐部35に流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ鉛直となるように配置され、具体的には、排水通路27の上流部27Aの下端部は鉛直に伸長している。また、捕集通路32は、分岐部35から捕集通路32に流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ鉛直となるように配置され、具体的には、捕集通路32の上端部は鉛直に伸長している。また、バイパス通路34は、バイパス通路34から合流部36に流入する冷却水の流れ方向が下向きかつ鉛直となるように配置され、具体的には、バイパス通路34の下端部が鉛直に伸長している。これら流れ方向および伸長方向は完全に鉛直でなくてもよく、鉛直に対して若干傾斜していてもよい。
【0088】
また、上記実施例では、微細物体捕集装置31をエンジン2の後部の左方に配置したが、微細物体捕集装置31をエンジン2の後部の右方等、エンジン2の周囲の他の位置に配置してもよい。
【0089】
また、船外機1の動力源はエンジンに限らず、電動モータでもよい。また、本発明の冷却装置は、船外機に限らず、船内外機または船内機等、他の種類の船舶推進機にも設けることができる。
【0090】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う船舶推進機の冷却装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 船外機(船舶推進機)
2 エンジン(動力源)
21 冷却装置
27 排水通路
27A 上流部
27B 下流部
32 捕集通路
33 捕集器
34 バイパス通路
35 分岐部
36 合流部