(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-06
(45)【発行日】2025-06-16
(54)【発明の名称】ストール検出を伴うモータコントローラ
(51)【国際特許分類】
H02P 21/26 20160101AFI20250609BHJP
H02P 21/13 20060101ALI20250609BHJP
【FI】
H02P21/26
H02P21/13
(21)【出願番号】P 2023526937
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 US2021064273
(87)【国際公開番号】W WO2022164541
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-12-19
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ホスラビー,カムヤー
(72)【発明者】
【氏名】栗原 雅平
(72)【発明者】
【氏名】アディブ,アンドリュー
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-051151(JP,A)
【文献】特開2018-143035(JP,A)
【文献】特開2011-078222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/26
H02P 21/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の巻線を有するモータの動作を制御するためのモータ制御システムであって、
前記複数の巻線に印加される電圧を制御する1つまたは複数のスイッチング素子に制御信号を与えるゲートドライバと、
前記ゲートドライバに結合するためのPWM信号を生成するように構成されたフィールド指向制御(FOC)コントローラであって、印加されるd軸電圧を生成するように構成されたd軸制御ループと、印加されるq軸電圧を生成するように構成されたq軸制御ループとを備えるFOCコントローラと、
前記モータのストール条件を検出するために、
観測されたモータ速度から計算した電圧および印加されるq軸電流から計算した電圧に基づいて、前記q軸電圧の推定を計算し、前記印加されるq軸電圧を前記推定に基づくしきい値と比較するように構成されたストール検出器と
を備えるモータ制御システム。
【請求項2】
前記ストール検出器が、前記印加されるq軸電圧との比較のために、前記q軸電圧の前記推定に基づいて高しきい値および低しきい値を生成するように構成されたしきい値発生器を備える、請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項3】
前記ストール検出器がタイマをさらに備え、前記印加されるq軸電圧が前記高しきい値より高くなった場合、または低しきい値未満となった場合、前記ストール検出器が前記タイマをリセットするように構成される、請求項2に記載のモータ制御システム。
【請求項4】
前記印加されるq軸電圧が、前記タイマの所定のタイムアウト間隔を超えて前記高しきい値より高いままであり、または前記低しきい値未満のままである場合、前記モータの前記ストール条件が検出される、請求項3に記載のモータ制御システム。
【請求項5】
前記ストール検出器が、前記ストール条件の検出に応答して、前記モータの前記ストール条件を示すストール信号を生成するように構成される、請求項4に記載のモータ制御システム。
【請求項6】
前記ストール検出器が、前記ストール信号を生成するように構成されたデバウンスフィルタをさらに備える、請求項5に記載のモータ制御システム。
【請求項7】
前記ストール検出器が、
【数1】
に従って前記推定q軸電圧を計算するように構成され、Wrが
前記観測されたモータ速度であり、KtがBEMF定数であり、Iqが
前記印加されるq軸電流であり、Rがモータ位相抵抗である、請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項8】
前記FOCコントローラが、モータ位置推定θおよび前記観測されたモータ速度Wrを生成するように構成された位置周波数オブザーバをさらに備える、請求項7に記載のモータ制御システム。
【請求項9】
前記複数の巻線のうちの1つまたは複数を通る電流を測定するために前記複数の巻線のうちの前記1つまたは複数に結合された電流測定回路をさらに備える、請求項8に記載のモータ制御システム。
【請求項10】
前記FOCコントローラの前記d軸制御ループおよび前記q軸制御ループのそれぞれが、比例積分(PI)ユニットを備える、請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項11】
複数の巻線を有するモータでのストール条件を検出する方法であって、
前記複数の巻線に制御された電圧を印加するステップと、
前記複数の巻線のうちの1つまたは複数を通る電流を測定するステップと、
印加されるd軸電圧を生成するように構成されたd軸制御ループと、印加されるq軸電圧を生成するように構成されたq軸制御ループとを備えるフィールド指向制御(FOC)コントローラを用いて、前記制御された電圧を前記複数の巻線に印加するように構成されるゲートドライバに結合するためのPWM信号を生成するステップと、
観測されたモータ速度から計算した電圧および印加されるq軸電流から計算した電圧に基づいて、前記q軸電圧の推定を計算するステップと、
前記印加されるq軸電圧を前記q軸電圧の前記推定に基づくしきい値と比較するステップと、
前記比較に基づいて前記モータのストール条件を検出するステップと
を含む方法。
【請求項12】
プログラム可能変数に基づいて前記しきい値を生成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
しきい値を生成するステップが、高プログラム可能変数に基づいて高しきい値を生成するステップと、低プログラム可能変数に基づいて低しきい値を生成するステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ストール条件を検出するステップが、前記印加されるq軸電圧が前記高しきい値未満となったとき、または前記低しきい値より高くなったとき、タイマをリセットするステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記印加されるq軸電圧が、前記タイマの所定のタイムアウト間隔を超えて前記高しきい値より高いままであり、または前記低しきい値未満のままである場合、前記モータの前記ストール条件が検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ストール条件の検出を示すストール信号を生成するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ストール信号を生成するステップが、デバウンスフィルタを使用するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記推定q軸電圧を計算するステップが、
【数2】
を使用するステップを含み、Wrが
前記観測されたモータ速度であり、KtがBEMF定数であり、Iqが
前記印加されるq軸電流であり、Rがモータ位相抵抗である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
複数の巻線を有するモータの動作を制御するためのモータ制御システムであって、
受け取った要求信号に基づいて、ゲートドライバに結合するためのPWM信号を生成するように構成されたフィールド指向制御(FOC)コントローラであって、印加されるd軸電圧を生成するように構成されたd軸制御ループと、印加されるq軸電圧を生成するように構成されたq軸制御ループとを備えるFOCコントローラと、
前記q軸電圧の推定に基づいて前記モータのストール条件を検出するための手段と
を備え
、
前記q軸電圧の推定は観測されたモータ速度から計算した電圧および印加されるq軸電流から計算した電圧に基づくモータ制御システム。
【請求項20】
前記ストール条件検出手段が、
前記q軸電圧の推定を計算するための手段と、
前記q軸電圧の前記推定に基づいてしきい値を生成するための手段と、
前記印加されるq軸電圧を前記しきい値と比較するための手段と
を備える、請求項19に記載のモータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にはモータコントローラに関し、より詳細には、センサレスフィールド指向制御(FOC)モータコントローラでのストール検出に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、様々な適用分野でモータ制御を実装するために様々なタイプの制御システムが使用される。たとえば、いくつかのモータ制御システムでは、スピニングモータによって生成される起電力または逆EMF(BEMF)が測定され、モータの位置および/または速度が求められ、コントローラにフィードバックされる。
【0003】
ベクトル制御またはフィールド指向制御(FOC)システムと呼ばれる別のモータ制御システムでは、固定子電流が、モータ内の磁場の強さをそれによって制御して、回転子磁束に対して直交する磁場を維持するために制御される。いわゆるd軸、または直軸はモータの位置に対応し得、q軸、または横軸はd軸に対して垂直である。モータを回転させるために、印加される磁場がd軸に対して垂直に維持される。FOCは、最小限の電力消費で所与の速度で最大トルクを与えることによって効率を改善する。
【0004】
制御方法の如何に関わらず、いくつかのモータ制御システムは、別々のセンサを利用して、コントローラによって使用するためのモータの位置および/または速度を検出する。こうしたタイプのシステムは「センサベースの」システムと呼ばれることがある。センサベースの制御システムを一般に利用する1つのモータタイプは、永久磁石同期モータ(PMSM)である。
【0005】
別のモータ制御システムでは、モータ位置および/または速度を検出するために別々のセンサが使用されず、「センサレスシステム」と呼ばれることがある。そのようなシステムは、モータ位置および/または速度を推定するための電子回路を含む。センサレス制御をしばしば利用する1つのモータタイプは、ブラシレスDCモータ(BLDC)である。
【0006】
モータおよびその制御システムは、自動車および他のセーフティクリティカルな適用分野で広く使用されている。許容できるモータ制御品質レベル、故障率、および全体の機能安全性に関する要件を記述する様々な仕様がある。
【0007】
電動機は、時折ストールすることがある。たとえば、電動機は、予期しない負荷条件のために特定の位置で動かなくなることがあり、前後に振動する(すなわち、揺動する)ことがある。ストール条件を補正する能力は、条件の正確な検出に依存する。
【発明の概要】
【0008】
FOC制御システムでのモータストール条件を検出するためのモータ制御装置および技法が本明細書で説明される。検出は、印加されるq軸電圧Vqと、q軸電圧の計算された推定VqEに基づいて生成される1つまたは複数のしきい値との比較に基づく。記載の構成の利点は、モータ揺動中のストール検出、不正確なセンサレス制御周波数ロックの検出、モータパラメータ変動誤差からの独立性(モータインダクタンスパラメータはq軸電圧を推定するために使用されないため)、比較的低い計算強度および複雑さ、ならびにデバウンス機能を使用することによる始動および高速過渡条件下の検出精度の改善を含む。
【0009】
本開示によれば、複数の巻線を有するモータの動作を制御するためのモータ制御システムが、複数の巻線に印加される電圧を制御する1つまたは複数のスイッチング素子に制御信号を与えるゲートドライバと、フィールド指向制御(FOC)コントローラと、ストール検出器とを含む。FOCコントローラは、ゲートドライバに結合するためのPWM信号を生成するように構成され得、印加されるd軸電圧を生成するように構成されたd軸制御ループと、印加されるq軸電圧を生成するように構成されたq軸制御ループとを含み得る。ストール検出器は、モータのストール条件を検出するために、q軸電圧の推定を計算し、印加されるq軸電圧を推定に基づくしきい値と比較するように構成され得る。
【0010】
特徴は、以下のうちの1つまたは複数を個々に、または他の特徴と組み合わせて含み得る。ストール検出器は、印加されるq軸電圧との比較のために、q軸電圧の推定に基づいて高しきい値および低しきい値を生成するように構成されたしきい値発生器を含み得る。ストール検出器はタイマをさらに含み得、印加されるq軸電圧が高しきい値未満となった場合、または低しきい値より高くなった場合、ストール検出器は、タイマをリセットするように構成され得る。印加されるq軸電圧が、タイマの所定のタイムアウト間隔を超えて高しきい値より高いままであり、または低しきい値未満のままである場合、モータのストール条件が検出され得る。ストール検出器は、ストール条件の検出に応答して、モータのストール条件を示すストール信号を生成するように構成され得る。ストール検出器は、ストール信号を生成するように構成されたデバウンスフィルタを含み得る。ストール検出器は、次に従って推定q軸電圧を計算するように構成され得る。
【0011】
【0012】
ここで、Wrは観測されたモータ速度であり、KtはBEMF定数であり、Iqは印加されるq軸電流であり、Rはモータ位相抵抗である。FOCコントローラは、モータ位置推定θおよび観測されたモータ速度Wrを生成するように構成された位置周波数オブザーバを含み得る。電流測定回路が、巻線を通る電流を測定するために複数の巻線のうちの1つまたは複数に結合され得る。FOCコントローラのd軸制御ループおよびq軸制御ループのそれぞれは、比例積分(PI)ユニットを含み得る。
【0013】
複数の巻線を有するモータでのストール条件を検出する方法も説明され、方法は、複数の巻線に制御された電圧を印加することと、複数の巻線のうちの1つまたは複数を通る電流を測定することと、印加されるd軸電圧を生成するように構成されたd軸制御ループと、印加されるq軸電圧を生成するように構成されたq軸制御ループとを含むフィールド指向制御(FOC)コントローラを用いて、制御された電圧を複数の巻線に印加するように構成されるゲートドライバに結合するためのPWM信号を生成することとを含む。方法は、q軸電圧の推定を計算することと、印加されるq軸電圧を推定に基づくしきい値と比較することと、比較に基づいてモータのストール条件を検出することとをさらに含み得る。
【0014】
特徴は、以下のうちの1つまたは複数を個々に、または他の特徴と組み合わせて含み得る。方法は、プログラム可能変数に基づいてしきい値を生成することをさらに含み得る。しきい値を生成することは、高プログラム可能変数に基づいて高しきい値を生成することと、低プログラム可能変数に基づいて低しきい値を生成することとを含み得る。ストール条件を検出することは、印加されるq軸電圧が高しきい値未満となったとき、または低しきい値より高くなったとき、タイマをリセットすることを含み得る。印加されるq軸電圧が、タイマの所定のタイムアウト間隔を超えて高しきい値より高いままであり、または低しきい値未満のままである場合、モータのストール条件が検出され得る。方法は、ストール条件の検出を示すストール信号を生成することをさらに含み得る。ストール信号を生成することは、デバウンスフィルタを使用することを含み得る。推定q軸電圧を計算することは、次式を使用することを含み得る。
【0015】
【0016】
ここで、Wrは観測されたモータ速度であり、KtはBEMF定数であり、Iqは印加されるq軸電流であり、Rはモータ位相抵抗である。
【0017】
複数の巻線を有するモータの動作を制御するためのモータ制御システムも説明され、モータ制御システムは、受け取った要求信号に基づいて、ゲートドライバに結合するためのPWM信号を生成するように構成され、印加されるd軸電圧を生成するように構成されたd軸制御ループと、印加されるq軸電圧を生成するように構成されたq軸制御ループとを含むフィールド指向制御(FOC)コントローラと、q軸電圧の推定に基づいてモータのストール条件を検出するための手段とを含む。ストール条件検出手段は、q軸電圧の推定を計算するための手段と、q軸電圧の推定に基づいてしきい値を生成するための手段と、印加されるq軸電圧をしきい値と比較するための手段とを含み得る。
【0018】
上記の特徴は、以下の図面の説明からより完全に理解され得る。図面は、開示される技術を説明し、理解する助けとなる。あらゆる可能な実施形態を図示し、説明することは、多くの場合、実際的ではなく、または不可能であるので、与えられる図は、1つまたは複数の例示的実施形態を示す。したがって、図は、本明細書で説明される広範な概念、システム、および技法の範囲を限定するものではない。各図の同様の番号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示による、ストール検出を伴うモータ制御システムの概略ブロック図である。
【
図2】
図1のモータコントローラでのストール検出を示すフローチャートである。
【
図3】
図2のストール検出を実装する例示的モータコントローラの図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照すると、モータ制御システム10が、FOCコントローラ14と、インバータおよび電流感知ブロック20と、モータ40を制御するように構成されたストールオブザーバ30とを含む。モータ40は複数の巻線を有し、インバータブロック20によって電圧22が巻線に印加される。FOCコントローラ14は、印加されるd軸電圧Vd60を生成するように構成されたd軸制御ループと、印加されるq軸電圧Vq72を生成するように構成されたq軸制御ループとを含む。FOCコントローラ14のゲートドライバが、ユーザが与えた速度要求信号Wr
*24に対応する所望の速度を達成するために、インバータブロック20のスイッチに制御信号18(すなわち、PWM信号)を与えてモータ巻線電圧22を制御する空間ベクトルパルス幅変調(SVPWM)ブロック16を含み得る。
【0021】
本開示によれば、ストールオブザーバ30(本明細書では代替としてストール検出器30とも呼ばれる)が、モータのストール条件を検出するために、q軸電圧VqEの推定を計算し、推定q軸電圧に基づいて1つまたは複数のしきい値を生成し、印加されるq軸電圧Vqをしきい値と比較するように構成される。ストール検出器30は、印加されるq軸電圧Vqとの比較のために、高しきい値VqEHおよび低しきい値VqELを生成するように構成されたしきい値発生器を含み得る。この構成を用いて、モータのストール条件が検出され得、ストール条件信号、または単にストール信号36が、ストール条件が発生したか否かの表示を与えるために生成され得る。ストール信号36は、モータをオフにし、かつ/または再始動するなどの処置を取るように構成された回路およびシステムに与えられ得る。
【0022】
モータ巻線を通る電流28が、ブロック20の電流感知回路によって測定され得る。この目的で様々な回路が可能である。たとえば、1つまたは複数のセンス抵抗器が、もう1つのモータ巻線を通る電流28を測定し得る。そのようないわゆる「シャント抵抗器」は、モータ電流に対する著しい効果を避けるために、比較的低い抵抗を有する。3つの相電流の和はゼロに等しく、したがって第3の電流は2つの測定された巻線電流の負の和として計算され得るので、すべての3つの相電流を測定する必要はないことを理解されよう。
【0023】
FOCコントローラ14のd軸制御ループは、印加されるd軸電圧Vd60を生成するために、測定された相電流28、さらには観測されたモータ位置信号θr82に応答する変換器50と、総和素子58と、比例積分(PI)制御ユニット70とを含み得る。観測されたモータ位置信号θr82は、以下でさらに説明されるが、ここでは、この信号が観測された回転子位置の推定を表すと言うにとどめておく。d軸フィードバック電流Id56が総和素子58に結合され得、総和素子58を用いて、d軸基準電流信号52Id*がフィードバック電流と合計され得る(すなわち、差が求められる)が、弱め界磁が印加されない適用分野では、d軸基準電流信号52Id*がゼロに設定され得る。総和素子58の出力は、PI制御ユニット70に結合するための信号54を与える。PI制御ユニット70は、印加されるd軸電圧信号Vd60を生成するために、信号54に比例積分制御を適用するように構成される。したがって、d軸基準電流信号52Id*がゼロであるとき、信号54はd軸フィードバック電流Id56に等しく、印加されるd軸電圧60はd軸フィードバック電流Id56の比例積分表現である。
【0024】
FOCコントローラ14のq軸制御ループは、印加されるq軸電圧信号Vq72を生成するために、変換器50、総和素子68、およびPI制御ユニット70を含み得る。より具体的には、変換器50は、モータトルク出力を制御し、総和素子68に結合され得るq軸フィードバック電流Iq66を生成し、総和素子68を用いて、PI制御ユニット70に結合するための信号64を生成するために、q軸基準電流信号Iq*62がq軸フィードバック電流信号Id66と比較される(すなわち、差が求められる)。q軸基準電流信号62Iq*は、速度要求信号Wr*24と、観測された速度信号Wr26との間の差を(たとえば、総和素子32を用いて)取ることによって生成され得る。PI制御ユニット70は、印加されるq軸電圧信号Vq72を生成するために、信号64に比例積分制御を適用するように構成される。
【0025】
変換器50は、モータ巻線電流Ia,b,c28を2次元直交静止量iα,iβに変換するためにクラーク変換または他の処理を実装し得、さらにパーク変換を適用して、2軸静止系iα,iβを2軸回転系iq,idに変換し得、d軸電流が回転子磁束と整列され、q軸電流(トルク生成成分)が回転子磁束に直交する。三相モータ巻線電流Ia,b,c28から2次元量iα,iβへの変換のために、観測されるモータ位置信号θr82が変換器50によって使用される。
【0026】
変換器76は、印加されるd軸電圧Vd60、印加されるq軸電圧Vq72、および観測されるモータ位置信号θr82を受けるように結合され、こうした制御信号を、SVPWMブロック16に結合するためにd,q領域から三相モータ制御信号78に変換するように構成される。たとえば、変換器76は、逆パーク変換を実装して、2軸回転信号Vq,Vdを静止2軸系に変換し、最終的には3軸信号78に変換し得る。この構成では、PI制御ユニット70の出力(すなわち、印加されるd軸電圧信号Vd60および印加されるq軸電圧信号Vq72)が、変換角を使用して回転されて静止基準フレームに戻され、直交電圧値VαおよびVβが得られる。次いで、電圧VαおよびVβが数学的に変換されて三相電圧Va、Vb、およびVcに戻され、三相電圧Va、Vb、およびVcが新しいPWMデューティサイクルを決定する。観測されたモータ位置信号θr82が、2次元量VαおよびVβから三相電圧Va、Vb、およびVc78への変換のために変換器76によって使用される。
【0027】
速度要求信号Wr*24は、外部デバイスから受け取った、ユーザ提供の入力であり得、一般には、モータ40の要求される速度を示す。速度要求信号Wr*24は、様々なフォーマット、たとえばSingle Edge Nibble Transmission(SENT)フォーマット、Serial Peripheral Interface(SPI)フォーマット、Local Interconnect Network(LIN)フォーマット、CAN(Controller Area Network)フォーマット、Inter-Integrated Circuit(I2C)フォーマット、または他の信号フォーマットで与えられ得る。速度要求信号Wr*24は、モータ40の所望の速度を示す、選択された電圧値を有する電圧信号であり得る。速度要求信号Wr*24はまた、モータ40の所望の速度を表す選択されたデューティサイクルを有するパルス幅変調(PWM)信号であり得る。速度要求信号Wr*24がPWM信号である実施形態では、PWM制御信号18のデューティサイクルは、速度要求信号のデューティサイクルに比例し得る。さらに、速度要求信号Wr*24は、モータ40の所望の速度を表すデジタル値を有するデジタル信号であり得る。
【0028】
位置周波数オブザーバ80は、印加されるd軸電圧60および印加されるq軸電圧72、d軸フィードバック電流Id56およびq軸フィードバック電流Iq66に応答して、さらにはモータ抵抗値Rおよびモータ磁気抵抗値L(集合的に84と符号が付けられる)に応答して、観測されたモータ位置信号θr82および観測された速度信号Wr26を生成し得る。モータ40の仕様に基づき得るように、モータ抵抗Rおよびモータ磁気抵抗Lは、ユーザプログラム可能であり得る。オブザーバ80は、ニューラルネットワークベースの「オンライン」学習、モデル規範形適応システム(MRAS)、カルマンフィルタ、適応非線形磁束オブザーバ、および/またはスライディングモードオブザーバを含み得る。前述のように、観測されたモータ位置信号θr82は、信号変換のための変換角を与えるために変換器50によって使用され得、観測された速度信号Wr26は、q軸基準電流信号62Iq*を生成するために使用され得る。
【0029】
前述のように、ストール検出器30は、モータのストール条件を検出するために、q軸電圧VqEの推定を計算し、計算したq軸電圧の推定に基づいて1つまたは複数のしきい値を生成し、印加されるq軸電圧Vq72をしきい値と比較するように構成される。この目的で、ストール検出器30は、以下で説明されるように、印加されるq軸電圧Vq72、q軸フィードバック電流Iq66、さらにはモータ巻線抵抗値Rおよびbemf定数Kt(集合的に74と符号が付けられる)に応答し得る。
【0030】
ストール検出器30はプロセッサ100を含み得、プロセッサ100を用いてq軸電圧VqEの推定が計算される。q軸電圧VqEは、次式(1)に基づいて推定され得る。
【0031】
【0032】
ここで、Rはオーム単位のモータ位相の抵抗を表し、Iqはアンペア単位のq軸電流66であり、Wrはラジアン/秒単位の観測された回転子速度信号26によって与えられ、Ldは、ユーザプログラム可能値であり得るような、ヘンリー単位の1つのモータ位相のd軸インダクタンスであり、Idはアンペア単位のd軸電流56であり、Ktは、ユーザプログラム可能値であり得るような、V/(rad/s)単位のbemf定数であり、Lqは、ユーザプログラム可能値であり得るような、ヘンリー単位の1つのモータ位相のq軸インダクタンスであり、ρはLqとIqの積の変化率(すなわち、導関数)を表す。
【0033】
式(1)は、弱め界磁を適用しないことによって(すなわち、Id*=0に設定することによって)、かつ定常状態でIqパラメータの変化がない(すなわち、ρがほぼゼロである)と仮定することによって単純化され得る。得られるq軸電圧VqEの推定の単純化された計算が、次式(2)によって与えられる。
【0034】
【0035】
有利には、このような形のq軸電圧VqEの推定の計算の単純化は、マイクロコントローラ100での処理の複雑さおよび時間を最小限に抑え得る。しかしながら、代替として、必要なら式(2)から省かれた式(1)の追加の項が使用され得ることを当業者は理解されよう。
【0036】
ストール検出器30は、モータ制御サイクル(すなわち、PWMサイクル)当たり1回など、様々な時および比率でq軸電圧VqEの推定を計算し得る。例示的実施形態では、そのような更新率は、約15KHzから35KHzの間であり得る。しかしながら、この範囲は一例に過ぎず、特定の適用要件に適合するように変化し得ることを当業者は理解されよう。このように計算されたq軸電圧推定は、EEPROMなどのメモリ内に格納され得る。
【0037】
プロセッサ100は、1つまたは複数のしきい値、または印加されるq軸電圧Vq72がそれと比較され得るしきい値を生成し得る。たとえば、プロセッサ100は、推定q軸電圧VqEに基づいて高しきい値VqEHおよび低しきい値VqELを生成し得る。実施形態では、高しきい値および低しきい値が次式のように生成され得る。
【0038】
【0039】
ここで、KHおよびKLは、それぞれ高しきい値変数および低しきい値変数である。一例として、KHは1.0から3.0の間であり得、KLは1未満であり得る。いくつかの実施形態では、高しきい値変数KHおよび低しきい値変数KLは、製造中に調整され得る。たとえば、これらの変数KHおよびKLは、通常動作中にストール条件の検出がなくなるまで調節され得る。このようにして生成されたしきい値VqEHおよびVqELは、EEPROM内に格納され得る。
【0040】
本明細書では、「プロセッサ」および「コントローラ」という用語は、機能、動作、または動作のシーケンスを実施する電子回路を記述するために使用される。機能、動作、または動作のシーケンスは、電子回路内にハードコーディングされ、またはメモリデバイス内に保持される命令によってソフトコーディングされ得る。機能、動作、または動作のシーケンスは、デジタル値を使用して、またはアナログ信号を使用して実施され得る。いくつかの実施形態では、プロセッサまたはコントローラが、特定用途向け集積回路(ASIC)はアナログASICもしくはデジタルASICであり得るASIC、関連するプログラムメモリを有するマイクロプロセッサ、および/またはアナログもしくはデジタルであり得るディスクリート電子回路で具体化され得る。プロセッサまたはコントローラは、機能、動作、または動作のシーケンスの部分を実施する内部プロセッサまたはモジュールを含み得る。同様に、モジュールが、モジュールの機能、動作、または動作のシーケンスの部分を実施する内部プロセッサまたは内部モジュールを含み得る。
【0041】
プロセッサ100は、モータのストール条件を検出するために、印加されるq軸電圧Vq72をしきい値VqEHおよびVqELと比較するように構成され、したがって、いわゆる比較器を含むように見なされ得る。より具体的には、プロセッサ100は、印加されるq軸電圧72が高しきい値VqEHよりも高く、または低しきい値VqEL未満であるか否かを判定する。比較機能が、入力信号がしきい値レベルよりそれぞれ上または下であり、あるいはデジタル値がデジタルしきい値(または別のデジタル値)よりそれぞれ上または下であることを示す少なくとも2つの状態を有する出力信号を有するデジタル回路(たとえば、プロセッサ100)から構成され得ることを当業者は理解されよう。代替として、そのような比較機能は、入力信号がしきい値レベルより上または下であることを示す2状態出力信号を有するアナログ比較器と共に実装され得る。
【0042】
ストール検出器30は、ストール条件信号36を生成する際に使用するためのタイマ106およびデバウンスフィルタ110をさらに含み得る。以下でさらに説明されるように、印加されるq軸電圧Vq72が、タイマ106の所定のタイムアウト間隔を超えて高しきい値VqEHより高いままであり、または低しきい値VqEL未満のままである場合、モータのストール条件が検出され得る。「所定の」により、製造時に工場で、またはその後で外部手段、たとえばプログラミングによって値が設定され、または固定されることを意味する。たとえば、タイムアウト間隔はユーザプログラム可能であり得る。高しきい値VqEHよりも高かった、印加されるq軸電圧Vq72が、次いで高しきい値未満に降下した場合、または低しきい値VqEL未満であった、印加されるq軸電圧が、増加して低しきい値を超えた場合、ストール検出器30は、タイマ106をリセットするように構成され得る。
【0043】
デバウンスフィルタ110の使用は、条件が、実際のモータストール条件以外の理由で、印加されるq軸電圧Vq72に誤って高しきい値Vq
EHを超過させ、または低しきい値Vq
EL未満に降下させ得るとき、始動中および高速過渡条件中のストール条件の誤検出を防止し得る。デバウンス機能は
図2に関連して以下でさらに説明される。ここでは、始動中および高速過渡条件下で、(たとえば、印加されるq軸電圧Vqが推定回転子位置信号θ
r82に部分的に基づき、そのような推定がパワーアップの直後または過渡中に正確ではないことがあるので)印加されるq軸電圧Vq72が急速に上昇し得、q軸電圧Vq
Eの計算された推定がわずかに遅れ得ると言うにとどめておく。過渡条件は、限定はしないが、たとえば、低速から最大速度になること、または高速から低速への急速な減速を含み得る。高しきい値Vq
EHとデバウンスフィルタ時間の組合せは、過渡中および始動中のストール条件の偽検出を防止し得る。
【0044】
記載の方式でのストール検出は、限定はしないが、モータ揺動中のストール検出、不正確なセンサレス制御周波数ロックの検出、モータパラメータ変動誤差からの独立性(モータインダクタンスパラメータが使用されないため)、比較的低い計算強度および複雑さ、およびデバウンス機能を使用することによる始動および高速過渡条件下の検出精度の改善を含む、いくつかの利点をもたらす。
【0045】
ブロックおよびその機能の図示される描写は例示的なものに過ぎないこと、およびストール検出器30の実装は、設計上の考慮事項に応じて様々であり得ることを当業者は理解されよう。さらに、本明細書の図に示される電子回路はアナログブロックまたはデジタルブロックの形式で示され得るが、アナログブロックが同一または類似の機能を実施するデジタルブロックで置き換えられ得、デジタルブロックが同一または類似の機能を実施するアナログブロックで置き換えられ得ることを理解されよう。アナログ-デジタルまたはデジタル-アナログ変換は図には明示的に示されないことがあるが、そのことを理解されたい。
【0046】
モータ制御システム10の構成要素が様々な形態で実装され得ることも当業者は理解されよう。たとえば、いくつかの実施形態では、
図3の例示的モータコントローラで示されるように、FOCコントローラ14およびストール検出器30が集積回路(IC)で実装される。
【0047】
図2も参照すると、モータストール条件を検出するための方法200のフローチャートが示されている。方法はボック204から始まり、ストール制御が開始し、タイマ(たとえば、
図1のタイマ106)がリセットされる。方法200が最初に実施されるのは、モータを動作させるコマンドが開始されるときである。前述のように、ストール検出プロセス200が様々な時および比率で実施され得る。たとえば、プロセス200は、モータ制御周期当たり1回実施され得る。
【0048】
ブロック208で、式(2)に関連して上記で説明されたように、q軸電圧VqEの推定が計算される。プロセス200が最初に実施された後(すなわち、第1のPWMサイクルの後)、プロセス200はブロック208を開始する(すなわち、タイマはブロック204で再び初期化されない)。
【0049】
ブロック212で、1つまたは複数のしきい値が生成される。たとえば、高しきい値VqEHおよび低しきい値VqELが、それぞれ式(3)および(4)に関連して上記で説明されたように、q軸電圧VqEの推定に基づいて生成され得る。
【0050】
ブロック214で、タイムアウトが生じたか否か(すなわち、タイマが所定の時刻に達したか否か)が判定される。例示的実施形態では、タイムアウト間隔は5PWMサイクル程度であり得る。タイムアウト間隔はユーザプログラム可能であり、または所定のものであり、またはプリセットされ得る。
【0051】
タイムアウトが生じた場合、ブロック232でストール条件が検出され、その後に続いて、ブロック236でストール制御プロセスが終了する。ストール条件の検出は、ストール信号36(
図1)を生成することを含み得る。
【0052】
タイムアウトが発生していないとブロック214で判定された場合、ブロック216で、印加されるq軸電圧Vq72(
図1)が高しきい値Vq
EHおよび低しきい値Vq
ELと比較され、印加されるq軸電圧Vq72が高しきい値Vq
EHより高く、または低しきい値Vq
EL未満であるかどうかが判定される。印加されるq軸電圧Vq72が高しきい値Vq
EHより高くなく、かつ低しきい値Vq
EL未満ではない場合、ブロック220でタイマがリセットされる。一方、印加されるq軸電圧Vq72が高しきい値Vq
EHより高く、または低しきい値Vq
EL未満であるとブロック216で判定された場合、ブロック236でストール制御プロセスは終了する。
【0053】
記載のプロセス200では、プログラム可能タイムアウト期間または間隔よりも長い間にわたって、印加されるq軸電圧Vq72が高しきい値VqEHよりも高く、または低しきい値VqEL未満である場合、ストール条件が検出され、一方、条件がタイムアウト期間の前に変化した場合、タイマが(ブロック220で)リセットされ、ストール条件の検出がトリガされる前は、別の全タイムアウト期間にわたってストール条件が永続的である必要がある。このようにして、方法200は、始動時に、または過渡条件に応答して生じる可能性が特に高いような、ストール条件を誤って検出することを回避するために、デバウンス機能を提供する。
【0054】
モータストール条件が生じるとき、推定q軸電圧VqEは、印加されるq軸電圧Vq72よりもかなり高く、または低いことがある。さらに、q軸電流Iq66は一般に、所与の印加されるq軸電圧Vqについての通常の動作条件下よりもずっと高くなる。したがって、このストールシナリオでは、q軸電圧72は低しきい値VqEL未満に降下し、したがってストール条件が検出される。適用されるモータ速度がセンサレス推定未満であり、コントローラがそれを確認できない別のシナリオでは(すなわち、不正確なセンサレス制御周波数ロックのために生じ得るように)、推定q軸電圧VqEは(式2による推定モータ速度に部分的に基づくように)再び高くなり、したがって、印加されるq軸電圧Vqは再びVqEL未満に降下し、それによってストール条件検出をトリガする。
【0055】
モータ40が前後に揺動するモータ揺動シナリオでは、回転方向が変化する度にモータがずっと高いトルクを必要とするので、q軸電流Iq66は、通常の動作条件下よりもずっと高くなる。このシナリオでは、印加されるq軸電圧Vq72が低しきい値VqEL未満に降下し、それによってストール条件検出をトリガする。
【0056】
前述のように、始動中および高速過渡条件下で、(たとえば、印加されるq軸電圧Vqが推定回転子位置信号θr82に部分的に基づき、そのような推定がパワーアップの直後または過渡中に正確でないことがあるので)印加されるq軸電圧Vq72が急速に上昇し得、q軸電圧VqEの計算された推定がわずかに遅れ得る。こうした条件下で、印加されるq軸電圧Vqは高しきい値VqEHを超過し、それによってストール検出をトリガする。
【0057】
(要素208によって代表される)矩形要素は、本明細書では「処理ブロック」として示され、(要素216によって代表される)ダイヤモンド形状の要素は本明細書では「判定ブロック」として示され、そのどちらかまたは両方は、コンピュータソフトウェア命令または命令のグループを表すことを理解されよう。
図2のフローチャートは本明細書で開示される例示的実施形態を表し、略述されるプロセスの後に一般に続く変形形態は、本明細書で説明され、特許請求される概念、システム、および技法の範囲内にあると見なされることに留意されたい。ブロックの一部またはすべては、機能的に等価な回路によって実施される動作を表し得る。さらに、いくつかのブロックは手動で実施され得、他のブロックは機械によって実施され得る。フローチャートは、何らかの特定のプログラミング言語の構文を示すわけではない。むしろ、フローチャートは、特定の装置の必要とされる処理を実施するために回路を製造し、かつ/またはコンピュータソフトウェアを生成するのに当業者が必要とする情報を示す。ループおよび変数の初期化や、一時的変数の使用などの多くのルーチンプログラム要素は図示されていないことに留意されたい。本明細書に別段に規定されていない限り、記載の特定のシーケンスは例示的なものに過ぎず、ある場合には、本明細書で説明され、かつ/または特許請求される概念の趣旨から逸脱することなく変更され得ることを当業者は理解されよう。したがって、別段に記載されていない限り、以下で説明されるプロセスは順序がなく、可能なときは、図に示される動作が、同時を含む任意の好都合な順序または望ましい順序で実施され得ることを意味する。
【0058】
図3も参照すると、例示的モータ制御システム300が、モータ340を制御するように構成されたFOCコントローラ314、インバータ306、およびストールオブザーバ330を含む。システム300のモータ制御素子は、制御システムの他の部分ならびに他の外部回路およびシステムとの間で信号を与え、受け取るための接続(たとえば、ピンまたは端子)を有するボックス310で表されるように集積回路の形態で実装され得る。FOCコントローラ314は、
図1のFOCコントローラ14と同一または同様であり得、ストールオブザーバ330は、
図1のストールオブザーバ30と同一または同様であり得る。コントローラIC310に対してどの素子が内部にあり、どの素子が外部にあるかの描写は変化し得ることを当業者は理解されよう。
【0059】
モータ340は複数の巻線を有し、インバータ306によって電圧が巻線に印加される。三相モータとして示されているが、モータ340はより多くの位相または少ない位相を含み得、その場合、モータコントローラ310は、三相より多くの位相または少ない位相でモータを制御するように適合され得る。図示されるインバータ306は、半ブリッジ構成で構成された複数のスイッチQ1~Q6(たとえば、電界効果トランジスタ、FET)を含み、各半ブリッジ(すなわち、Q1/Q2、Q3/Q4、およびQ5/Q6)が、モータの対応する位相についての駆動信号を生成する。ゲートドライバ316は
図1のSVPWM回路16と同一または同様であり得、したがって所望の速度を達成するために、インバータ306のスイッチQ1~Q6に制御信号(すなわち、PWM信号)を与えて、モータ巻線を通る電流を制御する。PWM制御信号は、高電位側ゲート駆動出力端子GHxおよび低電位側ゲート駆動出力端子GLxを通じてスイッチQ1~Q6のゲート端子に選択的に結合され得る。より具体的には、所与の半ブリッジ回路内の上側トランジスタ(たとえば、トランジスタQ1、Q3、およびQ5のうちの1つ)をオンにして、上側トランジスタを通じて供給電圧VBBをモータに結合し、別の半ブリッジ回路内の下側トランジスタ(たとえば、トランジスタQ2、Q4、およびQ6のうちの1つ)をオンにして、下側トランジスタを通じて接地電位GNDをモータに結合し、それによって電流がモータの対応する巻線を流れることを可能にすることによって、電力がモータ340に供給される。
【0060】
所望の速度は、(
図1の速度要求信号Wr
*24と同一または同様であり得るような)PWM_in信号の形で速度制御端子PWM/SPDで与えられるユーザ入力であり得る。PWM_in信号はEEPROM332内に格納され得、追加のブロック350に結合され得、追加のブロック350を用いて、選択可能な速度制御モードが制御される。たとえば、PWMモードでは、モータ速度が、PWM_in信号のデューティサイクルによって制御され得、アナログモードでは、モータ速度が、PWM/SPDピンに印加されるアナログ電圧の振幅によって制御され得、クロックモードでは、モータ速度が、入力クロックの周波数によって制御され得、スタンドバイモードでは、(チャージポンプおよびVREG以外の)すべての回路がオフにされ得る。図示されるように、コントローラIC310は、スイッチの下側ソースに結合するための端子LSSを含み得る。
【0061】
モータ相電流は、入力SENPおよびSENNでコントローラIC310に結合するためのセンス抵抗器344によって感知され得る。電流増幅器348が、(
図1の電流信号28と同一または同様であり得る)感知された電流をFOCコントローラ314に結合するために、感知されたモータ電流を増幅し得る。
【0062】
コントローラIC310は、外部+48V電源によって供給され得るような供給電圧をVBB端子で受け得る。供給電圧はまた、電力損失ブレーキユニット320に結合するためのVIN端子に結合され得、電力損失ブレーキユニット320は、入力電力の損失がある場合にモータ340を減速するように動作し得る。バイアス電圧が外部インダクタおよびコンデンサによって生成され得、VBIAS端子を通じて1つまたは複数の調整器324に結合され得る。たとえば、VBIAS端子は、図示されるように、インダクタおよびコンデンサを含む外部Buck調整器328に結合され得る。スイッチ端子SWが、Buck調整器328のスイッチ(図示せず)に結合され得る。調整器324は、オンチップ回路に電力供給し、さらにはVREF端子で基準電圧を供給するための調整電圧を生成し得る。
【0063】
コントローラIC310は、モータ340の動作に関するパラメータを格納するためのEEPROMまたは他のタイプの不揮発性メモリと、様々な値およびパラメータを格納し、一定の機能を制御するための制御ロジックとを含み得るような、メモリおよび制御ロジックブロック332を含み得る。
【0064】
コントローラIC310の追加の端子は、EEPROM332を通じてプログラムされ得る選択可能な機能に基づいて速度情報(FG)または回転検出情報(RD)が与えられ得るFG/RD出力を含み得る。Nbrake端子が、モータブレーキング機能を制御するための外部信号を受け取り得る。内部システムクロックユニット338に結合するためのシステムクロック基準信号がROSC端子で受け取られ得る。
【0065】
制御ロジック332からの信号に応答して、障害がnFLT端子でレポートされ得る。たとえば、ストールオブザーバ330の動作に基づいて、ストール検出がnFLT端子でレポートされ得る。過電流、過電圧、不足電圧条件などの他の障害も検出およびレポートされ得る。
【0066】
ストールオブザーバ330(本明細書では代替としてストール検出器330とも呼ばれる)が、モータのストール条件を検出するために、q軸電圧VqEの推定を計算し、推定q軸電圧に基づいて1つまたは複数のしきい値を生成し、印加されるq軸電圧Vqをしきい値と比較するように構成される。ストール検出器30は、印加されるq軸電圧Vqとの比較のために、高しきい値VqEHおよび低しきい値VqELを生成するように構成されたしきい値発生器を含み得る。この構成を用いて、モータ340のストール条件が検出され得、ストール条件信号、または単にストール信号336が、ストール条件が発生したか否かの表示を与えるために生成され得る。ストール信号336は、コントローラ端子nFLTに結合するための制御ロジック332に与えられ得る。
【0067】
本明細書で引用されたすべての参考文献が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
好ましい実施形態を説明したので、その概念を組み込む他の実施形態が使用され得ることが当業者には今や明らかであろう。本明細書で説明された相異なる実施形態の要素が組み合わされて、上記で具体的には説明されていない他の実施形態が形成され得る。単一の実施形態の文脈で説明される様々な要素はまた、別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで提供され得る。本明細書で具体的には説明されていない他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。たとえば、三相モータが説明されるが、記載の原理および技法は、三相よりも多くの位相または少ない位相を有する電動機に当てはまる。
【0069】
したがって、こうした実施形態は、開示される実施形態に限定されるべきではなく、むしろ添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲のみによって限定されるべきであると思われる。