(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】センサ及び部分放電測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20250617BHJP
【FI】
G01R31/12 A
(21)【出願番号】P 2021046164
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】余 増強
(72)【発明者】
【氏名】華表 宏隆
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-508791(JP,A)
【文献】中国実用新案第203054160(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-2192609(KR,B1)
【文献】特開2019-211233(JP,A)
【文献】特開2013-134133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0285761(US,A1)
【文献】特開昭61-173612(JP,A)
【文献】実開昭59-49970(JP,U)
【文献】特開2011-149896(JP,A)
【文献】特開2010-28247(JP,A)
【文献】特開2013-134134(JP,A)
【文献】特開2015-206772(JP,A)
【文献】特開2003-57290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
G01R 31/50
G01R 31/08
G01R 29/00
H02B 1/00
H02B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属壁の内側で発生する部分放電によって前記金属壁に流れる電流を検出するセンサであって、
前記金属壁の外面に近接することで前記外面との間に静電容量を形成する電極と、
前記電極に電気的に接続されたコネクタと、
前記電極が前記金属壁の外面に近接するように、前記センサを前記金属壁の外面に着脱自在に取り付ける取り付け具と、
前記静電容量を調節する調節機構と、
誘電体と、
前記電極を収容する導電性のケースと、を備え、
前記ケースと前記電極は、前記誘電体によって電気的に絶縁され、
前記取り付け具は、前記誘電体が前記電極と前記金属壁の外面との間に介在するように、前記センサを前記金属壁の外面に着脱自在に取り付ける、センサ。
【請求項2】
前記誘電体は、前記センサの底壁を形成する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記誘電体は、前記底壁を形成する板状部材である、請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記誘電体は、前記センサの筐体の一部である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
金属壁の内側で発生する部分放電によって前記金属壁に流れる電流を検出するセンサであって、
前記金属壁の外面に近接することで前記外面との間に静電容量を形成する電極と、
前記電極に電気的に接続されたコネクタと、
前記電極が前記金属壁の外面に近接するように、前記センサを前記金属壁の外面に着脱自在に取り付ける取り付け具と、
前記静電容量を調節する調節機構と、
誘電体
である基板と、を備え、
前記取り付け具は、前記誘電体が前記電極と前記金属壁の外面との間に介在するように、前記センサを前記金属壁の外面に着脱自在に取り付ける、センサ。
【請求項6】
前記取り付け具は、前記誘電体が前記金属壁の外面に接触するように、前記センサを前記金属壁の外面に着脱自在に取り付ける、請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記電極は、前記誘電体に接触する、請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記電極は、前記誘電体の上面に接触する、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記ケース
は、シールドケースとして機能する、請求項
1に記載のセンサ。
【請求項10】
前記ケースは、前記コネクタを支持する、請求項
1に記載のセンサ。
【請求項11】
前記調節機構は、前記電極が前記外面に対向する面積を変更することで、前記静電容量を調節する、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項12】
前記電極は、第1電極と第2電極を含み、
前記調節機構は、前記第1電極と前記第2電極のうち少なくとも一方の可動電極を動かすことで、前記第1電極と前記第2電極が前記外面に対向する面積を変更し、前記静電容量を調節する、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
金属壁の内側で発生する部分放電によって前記金属壁に流れる電流を検出するセンサであって、
前記金属壁の外面に近接することで前記外面との間に静電容量を形成する電極と、
前記電極に電気的に接続されたコネクタと、
前記電極が前記金属壁の外面に近接するように、前記センサを前記金属壁の外面に着脱自在に取り付ける取り付け具と、
前記静電容量を調節する調節機構と、を備え、
前記電極は、第1電極と第2電極を含み、
前記調節機構は、前記第1電極と前記第2電極のうち少なくとも一方の可動電極を回転させる回転軸を有し、前記回転軸を回転させることで、前記第1電極と前記第2電極が前記外面に対向する面積を変更し、前記静電容量を調節する、センサ。
【請求項14】
金属壁の内側で発生する部分放電によって前記金属壁に流れる電流を検出するセンサであって、
前記金属壁の外面に近接することで前記外面との間に静電容量を形成する電極と、
前記電極に電気的に接続されたコネクタと、
前記電極が前記金属壁の外面に近接するように、前記センサを前記金属壁の外面に着脱自在に取り付ける取り付け具と、
前記静電容量を調節する調節機構と、を備え、
前記電極は、第1電極と第2電極を含み、
前記第1電極と前記第2電極のうち少なくとも一方は、可動電極であり、
前記調節機構は、前記第1電極と前記第2電極とを重複させることで、前記第1電極と前記第2電極が前記外面に対向する面積を変更し、前記静電容量を調節する、センサ。
【請求項15】
前記第1電極は、固定電極であり、
前記第2電極は、可動電極である、請求項12から14のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項16】
前記電極は、複数の部分電極を含み、
前記調節機構は、前記複数の部分電極の間の導通と非導通とを切り替える少なくとも一つのスイッチ素子を有し、前記スイッチ素子のオン又はオフによって、前記複数の部分電極が前記外面に対向する有効面積を変更し、前記静電容量を調節する、請求項11に記載のセンサ。
【請求項17】
前記調節機構は、前記電極が前記外面に対向する距離を変更することで、前記静電容量を調節する、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項18】
前記調節機構は、前記電極を動かすことで、前記距離を変更する、請求項17に記載のセンサ。
【請求項19】
前記調節機構は、前記電極に固定
された棒を有し、前記棒を移動させること前記電極を動かす移動機構を有する、請求項18に記載のセンサ。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載のセンサと、
前記コネクタから出力されるセンサ信号に基づいて、前記部分放電を測定する測定器と、を備える、部分放電測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ及び部分放電測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属筐体に囲まれた高電圧電力機器(例えば、変圧器、遮断器、配電盤など)では、その内部で電界が局所的に集中し、部分放電が発生することがある。部分放電が発生し続けると、絶縁破壊に至るおそれがあるため、絶縁破壊の前駆現象として発生する部分放電を測定する技術が求められている。
【0003】
部分放電とは、機器内部において、電界ストレスの集中などの原因で局部に発生する微小な放電である。部分放電が周囲の絶縁構造の腐食を進行させ、機器の絶縁性能が低下し、絶縁破壊に至るおそれがある。
【0004】
このような部分放電を測定する技術として、電力機器の容器の壁面に容量センサを取り付けて、壁面の電位を測定することによって、容器内で発生する部分放電を測定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この容量センサは、電力機器の容器の壁面との間に静電容量を形成する対向電極と、対向電極と接地電位部との間に接続されるインピーダンス素子とを備える。容器内で発生する部分放電によって壁面に流れるパルス電流が上記の静電容量を経由してインピーダンス素子に流れると、インピーダンス素子の両端にパルス電圧が発生する。従来の測定方法は、このパルス電圧を測定することで、容器内で発生する部分放電を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属壁の内側で発生する部分放電によって金属壁に流れる電流(以下、 "部分放電信号"ともいう)に、何らかのノイズが重畳する場合がある。部分放電信号に重畳するノイズの周波数がセンサの検出帯域に含まれていると、部分放電信号とノイズとの比(SN比)が低下するので、部分放電信号の検出精度が低下する。
【0007】
本開示は、部分放電信号を高SN比で検出可能なセンサ及び当該センサを備える部分放電測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、
金属壁の内側で発生する部分放電によって前記金属壁に流れる電流を検出するセンサであって、
前記金属壁の外面に近接することで前記外面との間に静電容量を形成する電極と、
前記電極に電気的に接続されたコネクタと、
前記電極が前記金属壁の外面に近接するように、前記センサを前記金属壁の外面に着脱自在に取り付ける取り付け具と、
前記静電容量を調節する調節機構と、を備える、センサを提供する。
【0009】
また、本開示は、当該センサと、前記コネクタから出力されるセンサ信号に基づいて、前記部分放電を測定する測定器と、を備える、部分放電測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の技術によれば、金属壁の内側で発生する部分放電によって金属壁に流れる電流(部分放電信号)を高SN比で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る部分放電測定装置の構成例を示す図である。
【
図2】静電容量の調節によるセンサの検出帯域の調整を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態に係るセンサの構成例を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るセンサにおける静電容量の調節機構の構成例を示す図である。
【
図5】調節機構における静電容量の調節動作を例示する図である。
【
図6】可動電極の回転角度と静電容量との関係を例示する図である。
【
図7】第2実施形態に係るセンサの構成例を示す断面図である。
【
図8】各スイッチ素子状態における複数のスイッチ素子のオン又はオフの組み合わせを例示する図である。
【
図9】各スイッチ素子状態と静電容量との関係を例示する図である。
【
図10】第3実施形態に係るセンサの構成例を示す断面図である。
【
図11】第3実施形態に係るセンサにおける静電容量の調節機構の動作例を示す図である。
【
図12】電極と誘電体との距離と、静電容量との関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る部分放電測定装置の構成例を示す図である。
図1に示す部分放電測定装置100は、接地された金属筐体に囲まれた高電圧機器11の内部の発生源12で発生する部分放電を測定する装置である。部分放電測定装置100は、部分放電によって金属筐体の表面に流れるパルス電流等の部分放電信号を検出するセンサ17と、センサ17から出力されるセンサ信号に基づいて、その部分放電の大きさ等を測定する測定器18と、を備える。
【0014】
高電圧機器11は、高電圧電源14にリード線15を介して電気的に接続されるブッシング13を有する。ブッシング13は、高電圧電源14から供給される高電圧HVを高電圧機器11に導入する高電圧導入部の一例である。高電圧機器11は、ブッシング13を介して導入された高電圧HVが印加される内部導体を有する。高電圧機器11は、高電力を扱う電力機器であり、その具体例として、配電盤、変圧器、遮断器などが挙げられる。高電圧機器11は、これらの具体例に限られない。
【0015】
高電圧機器11は、金属壁1を有する。金属壁1は、高電圧機器11の金属筐体の一部である。金属壁1は、金属筐体の壁に限られず、金属扉の壁などでもよい。金属壁1は、誘電体の塗装膜を有してもよい。
【0016】
センサ17は、接地された金属壁1の外面1aに取り付けて使用される検出装置である。センサ17は、金属壁1の内側で発生する部分放電によって金属壁1に流れるパルス電流等の部分放電信号を静電結合方式で検出し、その検出結果を表すセンサ信号を測定器18に出力する。センサ17は、TEV(Transient Earth Voltage)センサとも称される。センサ17の取り付け場所は、金属壁1の外面1a上の任意の場所でよい。
【0017】
センサ17は、金属壁1の外面1aに近接することで外面1aとの間に静電容量Cを形成する電極3と、電極3に電気的に接続されたコネクタ5と、電極3が金属壁1の外面1aに近接するように、センサ17を金属壁1の外面1aに磁石等で着脱自在に取り付ける取り付け具40とを備える。外面1aと電極3との間に介在する誘電体は、樹脂等の固体でも、空気等の気体でもよい。固体と気体の両方の誘電体が介在してもよい(例えば、外面1aと電極3との間の少なくとも一方と固体の誘電体との間に隙間がある場合など)。
【0018】
センサ17は、部分放電によって金属壁1に流れるパルス電流等の部分放電信号を静電容量Cにより検出し、静電容量Cにより検出された部分放電信号をコネクタ5からセンサ信号として測定器18に出力する。
【0019】
測定器18は、センサ17のコネクタ5から出力されたセンサ信号に基づいて、金属壁1の内側で発生した部分放電の大きさ等を測定する。測定器18は、部分放電の大きさ等の測定結果を外部に出力する。これにより、ユーザは、その測定結果を把握できる。測定器18は、例えば、所定のレベルを超えるセンサ信号が所定の回数以上検知された場合、部分放電による劣化を知らせるアラームを出力してもよい。これにより、ユーザは、実際に絶縁破壊が発生する前に、部品交換などの予防措置を講ずることができる。測定器18は、データロガーやオシロスコープなどの測定器自体でもよいし、測定器を備える制御機器でもよい。
【0020】
測定器18は、例えば、メモリとプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit))を有する。測定器18の機能は、メモリに記憶されたプログラムによって、プロセッサが動作することにより実現される。
【0021】
ところで、金属壁1を伝搬する部分放電信号には、発生源12から接地線16を経由して金属壁1に流れる低周波成分(例えば、100MHz未満)の接地電流と、発生源12から放射された電磁波等に由来する高周波成分(例えば、100MHz以上)の電流とが含まれている。また、高電圧機器11が稼働する現場では、放送波、インバータサージ、開閉サージなどの環境ノイズが発生することがある。このような環境ノイズは、低周波成分(例えば、数10MHz以下)のノイズ電流を金属壁1に誘起させる。
【0022】
そのため、
図2に示すように、数10MHz以下の周波数帯域では、ノイズ電流等の環境ノイズが部分放電信号に重畳していることがある。部分放電信号に重畳する環境ノイズの周波数がセンサの検出帯域に含まれていると、センサは、部分放電信号に重畳した環境ノイズも検出し、SN比が低下してしまう。
【0023】
図1に示す本実施形態に係るセンサ17は、静電容量Cを自動又は手動により調節する調節機構19を備える。調節機構19は、例えば、電極3が外面1aと対向する面積Sと、電極3と外面1aとの間の誘電体の厚さd(電極3と外面1aとの距離)と、当該誘電体の誘電率εとのうち、少なくとも一つを変更することで、静電容量Cを調節する。
【0024】
調節機構19は、静電容量Cを減少させることで、センサ17の検出帯域を、環境ノイズの周波数を含む低周波領域よりも高い周波数帯域に調整できる(
図2参照)。これにより、センサ17は、部分放電信号を高SN比で検出できる。その結果、センサ17による部分放電信号の検出の精度が向上するとともに、測定器18による部分放電の測定の精度が向上する。
【0025】
調節機構19は、静電容量Cを調整することで、外面1aとコネクタ5との間を電気的に結ぶ信号線のインダクタンスを調整する不図示の機構に比べて、センサ17の検出帯域を高周波数側に調整する範囲が広くなる。外面1aとコネクタ5との間を電気的に結ぶ信号線のインダクタンスを調整する機構では、調整のためのインダクタンスが増大するので、センサの検出帯域を高周波領域側にシフトすることが難しい。これに対し、センサ17は、静電容量Cを調節する調節機構19を備えるので、環境ノイズの周波数を含む低周波領域を避けて、高周波の部分放電信号を高SN比で抽出できる。
【0026】
次に、センサ17のいくつかの実施形態について説明する。
【0027】
図3は、第1実施形態に係るセンサの構成例を示す断面図である。
図3に示すセンサ17Aは、上記のセンサ17の一例である。センサ17Aは、接地された金属壁1の外面1aに取り付けて、金属壁1の内側(外面1aとは反対側)で発生する部分放電によって金属壁1に生じる部分放電信号を検出する。
【0028】
センサ17Aは、電極3、コネクタ5、ケース2、磁石8、誘電体7及び調節機構19Aを備える。
【0029】
電極3は、金属壁1の外面1aに近接することで外面1aとの間に静電容量Cを形成する。電極3は、例えば、平板状の導体である。
【0030】
コネクタ5は、電極3に電気的に接続され、この例では、導線6を介して電極3に電気的に接続される。コネクタ5は、例えば、同軸ケーブルの一端が接続され、同軸ケーブルの他端は、上記の測定器18(
図1)に接続される。同軸ケーブルの信号線は、導線6を介して電極3に電気的に接続され、同軸ケーブルのシールド線は、ケース2に電気的に接続される。
【0031】
ケース2は、電極3及び導線6を収容し、コネクタ5を支持する導電性の容器である。ケース2は、外来ノイズを抑制するシールドケースとして機能する。
【0032】
誘電体7は、センサ17Aの底壁を形成する板状部材である。誘電体7は、センサ17Aの筐体の一部でもよいし、ケース2に組み付けられた基板でもよい。電極3は、誘電体7の上面に接触する。これにより、静電容量Cのばらつきが抑えられるので、部分放電信号の検出精度が向上する。また、ケース2と電極3は、誘電体7によって電気的に絶縁されているので、電極3を通る部分放電信号がケース2に回り込むことを誘電体7により防止できる。
【0033】
磁石8は、上記の取り付け具40(
図1)の一例である。磁石8は、誘電体7が電極3と外面1aとの間に介在するように、センサ17Aを外面1aに着脱自在に取り付ける。これにより、外面1aと電極3との間の誘電体が空気等の気体である形態に比べて、静電容量Cのばらつきが抑えられるので、部分放電信号の検出精度が向上する。
【0034】
磁石8は、誘電体7が金属壁1の外面1aに接触するように、センサ17Aを金属壁1の外面1aに着脱自在に取り付ける。誘電体7と外面1aとの接触により、静電容量Cのばらつきが抑えられるので、部分放電信号の検出精度が向上する。
【0035】
図3に示す例では、センサ17Aを金属壁1に取り付けるため、磁石8は、センサ17Aの誘電体7に開けられた穴に埋められている。誘電体7に開けられた穴は、誘電体7を貫通しもよいし、誘電体7を貫通しないように底部を有してもよい。磁石8の位置が穴の底部で固定されるため、磁石8の取り付けが容易になる。
【0036】
図3に示す例では、センサ17Aは、磁石8の吸引力を利用して金属壁1の外面1aに付着し、誘電体7の底面は、外面1aと接触する。誘電体7の上面は、電極3と接触する。つまり、電極3と外面1aとの間に誘電体7が介在するコンデンサ構造が得られる。センサ17Aは、このコンデンサ構造によって部分放電信号を検出し、検出した部分放電信号を導線6及びコネクタ5を介して測定器18へ伝送する。
【0037】
調節機構19Aは、静電容量Cを調節する上記の調節機構19(
図1)の一例である。調節機構19Aは、電極3が誘電体7を介して外面1aに対向する面積Sを変更し、静電容量Cを調節する。
図3に示す例では、電極3は、固定電極9と可動電極10を含む。固定電極9は、第1電極の一例であり、可動電極10は、第2電極の一例である。
【0038】
図4は、調節機構19Aの構成例を示す図である。
図4(a)は、調節機構19Aを平面視で示す模式図である。
図4(b)は、調節機構19Aを側面視で示す模式図である。調節機構19Aは、可動電極10を動かすことで、固定電極9と可動電極10が誘電体7を介して金属壁1の外面1aに対向する面積Sを変更し、静電容量Cを調節する。
【0039】
この例では、調節機構19Aは、可動電極10を回転させる回転軸4を有する。調節機構19Aは、回転軸4を手動又はモータにより回転させることで、可動電極10を回転させる。調節機構19Aは、可動電極10を回転させることで、固定電極9と可動電極10が誘電体7を介して金属壁1の外面1aに対向する面積Sを変更し、静電容量Cを調節する。
【0040】
調節機構19Aは、固定電極9及び可動電極10の平面視で、固定電極9と可動電極10を重複させることで、固定電極9と可動電極10が誘電体7を介して金属壁1の外面1aに対向する面積Sを変更し、静電容量Cを調節する。固定電極9と可動電極10を重複させることで、調節機構19Aを小型化できる。
【0041】
固定電極9は、誘電体7の上面に接着剤などで固定されている。固定電極9と可動電極10は、同じ半円形状であり、回転軸4は、接着剤などで可動電極10の直径中心部に固定されている。導線6は、半田等で固定電極9に固定され、例えば
図5に示すように、固定電極9の外縁部に固定されている。
【0042】
図5は、調節機構における静電容量の調節動作を例示する図である。センサ17Aの外部に突出する回転軸4を平面視で時計方向に回すと、電極3の有効面積を変化させることができ、上記のコンデンサ構造の静電容量Cを調整することが可能である。
【0043】
固定電極9及び可動電極10の平面視での形状を半円とし、その半円の面積をS1とする場合、回転軸4が約180°回転することで、電極3の有効面積が約2×S1になる。これにより、上記コンデンサ構造の静電容量Cが2倍になり、センサ17の信号検出帯域の調整が可能になる。なお、固定電極9と可動電極10の形状は、半円に限られない。
【0044】
図6は、可動電極10の回転角度と静電容量Cとの関係を例示する図である。調節機構19Aは、可動電極10の回転角度を増やすことで、電極3の有効面積が広くなるので、静電容量Cが増大する。
【0045】
なお、調節機構19Aは、一対の電極のうち、一方の電極(この例では、可動電極10)を動かすことで静電容量Cを調節するが、両方の電極を動かすことで静電容量Cを調節してもよい。
【0046】
図7は、第2実施形態に係るセンサの構成例を示す断面図である。
図7に示すセンサ17Bは、上記のセンサ17の一例である。センサ17Bは、接地された金属壁1の外面1aに取り付けて、金属壁1の内側(外面1aとは反対側)で発生する部分放電によって金属壁1に生じる部分放電信号を検出する。第2実施形態において、上述の実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。
【0047】
センサ17Bは、電極3、コネクタ5、ケース2、磁石8、誘電体7及び調節機構19Bを備える。
【0048】
調節機構19Bは、静電容量Cを調節する上記の調節機構19(
図1)の一例である。調節機構19Aは、電極3が誘電体7を介して外面1aに対向する有効面積Sを変更することで、静電容量Cを調節する。
図7に示す例では、電極3は、複数の部分電極31~35を含む。
【0049】
複数の部分電極31~36は、互いに間隔を空けて接触しない状態で、誘電体7の上面に接着剤などで固定されている。
図7に示す例では、電極3は、6個の同一形状の部分電極31~36を含む。部分電極の個数は、複数であればよく、6個に限られない。
【0050】
調節機構19Bは、複数の部分電極31~36の間の導通と非導通とを切り替える少なくとも一つのスイッチ素子(この例では、部分電極31~36の個数よりも一つ少ない5つのスイッチ素子21~25)を有する。調節機構19Bは、複数のスイッチ素子21~25のそれぞれをオン又はオフにすることによって、複数の部分電極31~36が誘電体7を介して外面1aに対向する有効面積Sを変更し、静電容量Cを調節する。
【0051】
この例では、導線6とスイッチ素子21~25を介して、複数の部分電極31~36のうち隣接する部分電極同士を並列に接続する。スイッチ素子21~25は、ケース2に設けられ、手動又は不図示の駆動回路により独立にオン又はオフされる。
【0052】
図8は、各スイッチ素子状態S1~S6における複数のスイッチ素子21~25のオン又はオフの組み合わせを例示する図である。
図9は、各スイッチ素子状態S1~S6と静電容量Cとの関係を例示する図である。スイッチ素子21~25が全てオフ状態の場合、センサ17Bの有効面積Sは、1個の部分電極31の面積s
1になる。全てオフ状態のスイッチ素子21~25を昇順にオンすると、有効面積Sは、s
1ずつ拡大し、静電容量Cが増加する。全てオン状態のスイッチ素子21~25を降順にオフすると、有効面積Sは、s
1ずつ縮小し、静電容量Cが減少する。
【0053】
図10は、第3実施形態に係るセンサの構成例を示す断面図である。
図10に示すセンサ17Cは、上記のセンサ17の一例である。センサ17Cは、接地された金属壁1の外面1aに取り付けて、金属壁1の内側(外面1aとは反対側)で発生する部分放電によって金属壁1に生じる部分放電信号を検出する。第3実施形態において、上述の実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。
【0054】
センサ17Cは、電極3、コネクタ5、ケース2、磁石8、誘電体7及び調節機構19Cを備える。
【0055】
調節機構19Cは、静電容量Cを調節する上記の調節機構19(
図1)の一例である。調節機構19Cは、電極3が誘電体7を介して外面1aに対向する距離dを変更することで、静電容量Cを調節する。例えば、調節機構19Cは、電極3を動かすことで、距離dを変更する。
【0056】
図10に示す例では、調節機構19Cは、距離dが変化する方向に電極3を動かす移動機構43を有する。移動機構43は、距離dが変化する方向に移動する棒42と、棒42を支える支持部44と、棒42を支持部44に固定するねじ41とを有する。棒42は、誘電体7からの電極3の高さを調整するための部材である。棒42の先端部は、電極3の主面に接着剤等で固定されている。支持部44は、ケース2の外側に固定された筒状部である。ケース2を貫通した棒42の中間部は、筒状の支持部44の中空部を貫通し、支持部44の側面から中空部に向けて進入するねじ41によって支持部44の内壁に固定される。ねじ41を緩めることで、距離dが変化する方向に棒42は移動可能となる。棒42が上下方向に移動することで、距離dは変化する。
【0057】
調節機構19Cは、ねじ41が緩んだ状態で、棒42を手動又はモータにより上下方向に移動させることで、電極3を上下方向に移動させる(
図11参照)。調節機構19Cは、電極3を上下方向に移動させることで、電極3と誘電体7との距離d1を変更し、静電容量Cを調節する。調節機構19Cは、目標の静電容量Cが得られる距離d(距離d1)の状態で棒42の上下移動を止め、ねじ41が締まることで棒42を支持部44に固定する。
【0058】
図12は、距離d1と静電容量Cとの関係を例示する図である。距離d1が長くなるほど、電極3と外面1aとの距離dが長くなるので、静電容量Cは、減少する。
【0059】
以上、実施形態を説明したが、本開示の技術は上記の実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 金属壁
1a 外面
2 ケース
3 電極
4 回転軸
5 コネクタ
6 導線
7 誘電体
8 磁石
9 固定電極
10 可動電極
11 高電圧機器
12 発生源
13 ブッシング
14 高電圧電源
15 リード線
16 接地線
17,17B,17C センサ
18 測定器
19,19A,19B,19C 調節機構
21,22,23,24,25 スイッチ素子
31,32,33,34,35 部分電極
40 取り付け具
41 ねじ
42 棒
43 移動機構
44 支持部
100 部分放電測定装置