(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-18
(45)【発行日】2025-06-26
(54)【発明の名称】油中水型乳化固形化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20250619BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20250619BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20250619BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20250619BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/92
A61K8/06
A61Q1/02
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021017142
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2020019232
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 井手・小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 美紀
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247831(JP,A)
【文献】特開2006-036769(JP,A)
【文献】特開平11-228343(JP,A)
【文献】特開2000-044432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(F);
(A)重量平均分子量(Mw)が25000~100000のポリプロピレン重合体
(B)融点が60℃~100℃である炭化水素系ワックスを1種または2種以上
1~10質量%
(C)融点が60℃~100℃であるロウワックスから選ばれる1種または2種以上
(D)揮発性油剤 2~40質量%
(E)水 15~60質量%
(F)疎水化処理着色粉体
を含有する油中水型乳化固形化粧料。
【請求項2】
成分(C)が、水添ホホバ油、水添パーム油、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、ライスワックス、ヒマワリワックス、モクロウ、ミツロウ、およびシリコーンワックスから選ばれる1種または2種以上を含む請求項1記載の油中水型乳化
固形化粧料。
【請求項3】
前記成分(B)と成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.001~1.0である請求項1または2記載の油中水型乳化固形化粧料。
【請求項4】
前記成分(F)の疎水化処理剤が、金属石鹸、トリエトキシカプリリルシラン、シリコーン、脂肪酸、アシル化アミノ酸、トリイソステアリン酸イソプロピルチタネート、リン脂質、デキストリン脂肪酸エステル、酸化ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上である請求項1~3の何れかに記載の油中水型乳化固形化粧料。
【請求項5】
成分(B)と(C)に対する(D)の質量割合(D)/〔(B)+(C)〕が、0.01~8.0である請求項1~4の何れかに記載の油中水型乳化固形化粧料。
【請求項6】
前記成分(F)が、さらに成分(G)球状粉体の表面に付着、または複合化している請求項1~5の何れかに記載の油中水型乳化固形化粧料
。
【請求項7】
前記油中水型乳化固形化粧料が、棒状化粧料である請求項1~6の何れかに記載の油中水型乳化固形化粧料
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型乳化固形化粧料に関し、さらに詳しくは、滑らかな伸び広がりと、エモリエント感の高い使用感をもちつつ、みずみずしい使用感に優れ、べたつきの無い、均一な化粧膜を速く形成しやすく、化粧持ちと製造安定性と経時安定性に優れた油中水型乳化固形化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーション、チーク等のメークアップ化粧料においては、油性成分の含有量が多い油性化粧料のような、滑らかな伸び広がりでツヤがあり、エモリエント感の高い使用感と、水性化粧料のようなみずみずしい使用感に加え、仕上がった後はベタツキを感じさせないパウダリーな感触を併せ持った油中水型乳化化粧料が好まれており、種々の検討がなされている。
近年、その中でも、使用の簡便性や、携帯の利便性から、固形状の化粧料が好まれている。特に小型化が可能なスティック状化粧料は、携帯に便利である。そこで、油中水型乳化化粧料を固形化する化粧料が検討されてきた。例えば、特許文献1のような、肌のうるおい補給用に用いることのできるスティック状の化粧料の開発や、感触や成型性を向上させた化粧料の開発(例えば、特許文献2、3)が検討されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-218113号公報
【文献】特開2018-199646号公報
【文献】特開平11-228343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、油中水型乳化固形化粧料においては、外層が油性成分であるため、伸び広がりを良くしすぎると、化粧膜が薄く伸び広がってしまい、肌上で軽く伸ばしただけで均一な化粧膜を簡単に作ることが難しいという課題があった。
特に、特許文献1のようにシリコーンエラストマーを用いて肌のうるおい補給をする技術では、シリコーンエラストマーを含有することにより伸び広がりが高くなることから、付着性が低く、指でしっかり伸ばさないと均一な化粧膜を簡単に作ることができず、含有量によっては塗布時に崩れやすいという傾向があった。また、例えば特許文献2の技術では、水以外の揮発性成分を含まない為みずみずしい感触ではあるものの、仕上がった後に残る油剤が多く、べたつきのある化粧膜になりやすく、化粧持続性に優れない傾向があった。また、例えば特許文献3の固形状油中水型化粧料の技術では、油分の不均一化や、水の蒸発が抑制され、充填成形性と経時安定性に優れ、清涼感と潤い感、塗布後の化粧持続性も良好であるという特徴があるものの、固形化する際のワックスの結晶の大きさを均一化できていないため、化粧膜を作る際に指や小道具で良く伸ばさなくてはならず、均一な化粧膜を早く簡単に形成する効果に課題が生じる場合があった。また、充填成型する際に、固まるものと固まらないもののばらつきが生じるという製造安定性に課題が生じる場合があり、界面活性剤や固形油を増量対応する必要が生じ、べたつきのなさや滑らかな伸び広がりが十分でない場合があった。
つまり、油性成分の含有量が多い油中水型乳化固形化粧料において、滑らかな伸び広がりとエモリエント感の高い使用感と、みずみずしい使用感に加え、仕上がった後はベタツキを感じさせず、均一な化粧膜を早く形成することができ、製造安定性に優れた油中水型乳化固形化粧料を提供すること、さらには使い切るまでこの効果を継続できる経時安定性にも優れた油中水型乳化固形化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を行った結果、特定の分岐の非晶質ワックスを炭化水素系ワックスと複数組み合わせ、特定のエステル油と特定のロウワックス、揮発性油剤、水、さらには疎水化処理着色粉体を含有する油中水型乳化固形化粧料とすることにより、上記課題を解決することを見出した。
斯様にして、本発明者は、本発明を完成させ、本発明は以下の通りである。
【0006】
すなわち本発明は、
[1]次の成分(A)~(F);
(A)重量平均分子量(Mw)が25000~100000のポリプロピレン重合体
(B)融点が60℃~100℃である炭化水素系ワックスを1種または2種以上
(C)融点が60℃~100℃であるロウワックスから選ばれる1種または2種以上
(D)揮発性油剤 2~40質量%
(E)水 15~60質量%
(F)疎水化処理着色粉体
を含有する油中水型乳化固形化粧料である。
[2]成分(C)が、水添ホホバ油、水添パーム油、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、ライスワックス、ヒマワリワックス、モクロウ、ミツロウ、およびシリコーンワックスから選ばれる1種または2種以上である前記油中水型乳化固形化粧料。
[3]前記成分(B)と成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.001~1.0である前記油中水型乳化固形化粧料。
[4]前記成分(F)の疎水化処理剤が、金属石鹸、トリエトキシカプリリルシラン、シリコーン、脂肪酸、アシル化アミノ酸、トリイソステアリン酸イソプロピルチタネート、リン脂質、デキストリン脂肪酸エステル、酸化ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上である前記油中水型乳化固形化粧料。
[5]成分(B)と(C)に対する(D)の質量割合(D)/〔(B)+(C)〕が、0.01~8.0である前記油中水型乳化固形化粧料。
[6]前記成分(F)が、さらに成分(G)球状粉体の表面に付着、または複合化している前記油中水型乳化固形化粧料
[7]前記油中水型乳化固形化粧料が、棒状化粧料である前記油中水型乳化固形化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油中水型乳化固形化粧料は、滑らかな伸び広がりと、エモリエント感の高い使用感をもちつつ、みずみずしい使用感に優れ、べたつきの無い、均一な化粧膜を早く形成しやすく、化粧持続性が高く、固形化粧料として溶融・固化する際の充填成型性のばらつきを低減する製造安定性と、経時での温度変化による強度変化を低減させ最後まで変わらない使用感で使用することができる経時安定性に優れた油中水型乳化固形化粧料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において「%」は特に断りのない限り質量%表示であり、「~」を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値を含むものとする。なお、本発明における粉体の平均粒子径は、電子顕微鏡を用いた画像解析法による長径のメジアン径(D50)をとるものとする。
本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0009】
本発明に用いられる成分(A)のポリプロピレン重合体とは、プロピレンを重合して得られる非晶性の分岐構造を有する固体油であり、化粧料に配合した際の経時での結晶成長が少なく、油剤中で安定配合できる経時安定性を向上させる効果と、肌への付着性に優れるため、粉を均一に肌に付着させる効果を有する。従って、疎水化された粉体と一緒に含有することで、化粧膜の均一性を向上させることができる。また、油系中の成分(B)のワックス結晶に入り込み、成分(B)の極端な結晶成長をも抑制し、カードハウス構造を均質化し、固形化粧料として溶融・固化する際の充填成型性のばらつきを低減する製造安定性や、経時での温度変化による強度変化を低減させ、最後まで使用感が変わらない経時安定性を付与する目的で用いられる。また、成分(B)とともに均質化したワックス結晶が、滑らかな伸び広がりと、付着性による均一な化粧膜を素早く形成する。以上の特徴を有するために下記に示す物性であることが好ましい。
【0010】
本発明における成分(A)のポリプロピレン重合体の重量平均分子量(以下、単にMwとする)は、25000~100000であり、より好ましくは、25000~40000である。Mwが25000未満では、べたつきが発生することがあり、また、100000を超えると、柔らかな使用感に劣ることがある。Mwの算出は、GPC測定装置(カラム:TOSO GMHHR-H(S)HT、検出器:液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C)を用い、詳細な測定条件は、溶媒として1,2,4-トリクロロベンゼン、測定温度は145℃、流速は1.0ミリリットル/分、試料濃度:2.2mg/ミリリットル、注入量は160マイクロリットル、さらに、検量線はUniversal Calibration、解析プログラム:HT-GPC(Ver.1.0)とする。
【0011】
また、本発明に用いられる成分(A)のポリプロピレン重合体は、GPC法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4以下であることが好ましく、より好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.0以下である。分子量分布(Mw/Mn)が4を超えると、べたつきが発生することがある。
【0012】
本発明に用いられる成分(A)のポリプロピレン重合体の融点は、60℃~100℃が好ましく、更に好ましくは、70℃~90℃である。融点の測定は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下-10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm)とする。
【0013】
本発明に用いられる成分(A)のポリプロピレン重合体の重合方法は特に制限されず、スラリー重合法、気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のいずれの方法を用いてもよいが、分子量分布の観点から、メタロセン錯体を用いて合成する方法が好ましく、例えば、国際公開WO2003/091289号公報に記載された方法に基づいて製造することができる。
【0014】
このような成分(A)の市販品としては、特に限定されないが、L-MODU S400(重量平均分子量:45000、Mw/Mn:2~3、融点:70~80℃、出光興産社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明における成分(A)のポリプロピレン重合体の含有量は、特に制限されないが、下限として、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上、上限として、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、更に好ましくは2.0%以下を含有することができる。この範囲であれば、塗布時に崩れにくく、滑らかな伸び広がりと化粧膜の均一性が付与できる点でより好ましい。
【0016】
本発明における成分(B)ワックスは、板状に形成された結晶のカードハウス構造の空隙に油剤を保持するものである。その融点は60℃~100℃のものが好ましく、さらに好ましくは70℃~95℃のものが良い。成分(B)は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、石油ワックス、合成炭化水素のいずれを用いても良い。具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライトワックス、マイクロクリスタリンワックス、水添マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、(エチレン/プロピレン)コポリマー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、成型性の観点から、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、水添マイクロクリスタリンワックス、(エチレン/プロピレン)コポリマーから選ばれる1種または2種以上が好ましい。このような成分(B)は、市販品として、EPSワックス(融点90~99℃:日本ナチュラルプロダクツ社製)、PERFORMALENE 500(融点83~92℃:ニューフェーズテクノロジー社製)、PERFORMALENE 655(融点96~102℃:ニューフェーズテクノロジー社製)、CIREBELLE 109L(融点91~96℃:CIREBELLE社製)、CIREBELLE 108(融点79~84℃:CIREBELLE社製)等が例示できる。さらに、(A)は、分岐構造を有するため、(B)も分岐構造を有するワックスとより相溶しやすく、(B)の結晶化を制御しやすいため、(B)の成分として、分岐構造を有する炭化水素ワックスが、化粧料中に、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上含有されることが経時安定性、製造安定性の観点から望ましい。さらに、分岐構造と直鎖構造のワックスを併用すること、または2種以上を併用することが、経時安定性や製造安定性を制御する上でさらに好ましい。
【0017】
本発明における成分(B)の含有量は、特に限定されないが、下限として、好ましくは1.0%以上、より好ましくは2.0%以上、更に好ましくは3.0%以上、上限として、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、更に好ましくは6.0%以下である。この範囲であれば、滑らかな伸び広がりと均一な化粧膜が両立し、油系中のワックスのカードハウス構造が安定化し、製造量の大小にかかわらず、季節等の温度変化にも寄らず、一定した品質が製造できる製造安定性、最後まで同じ品質で使用できる経時安定性に優れる点でより好ましい。
【0018】
本発明における成分(B)中の成分(A)の質量割合は、特に限定されないが、(A)/(B)は、下限として、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、上限として、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下である。この範囲であれば、化粧膜の均一性に優れ、固形化粧料として溶融・固化する際の充填成型性のばらつきを低減する製造安定性と、製造量の大小にかかわらず、季節等の温度変化にも寄らず、一定した品質が製造できる経時安定性に優れる点でより好ましい。
【0019】
本発明における成分(C)ロウワックスは、天然ロウおよび合成ロウであり、天然ロウとしては、植物性でも動物性でもよい。その融点は60℃~100℃のものが好ましく、さらに好ましくは70℃~95℃のものである。油中水型固形化粧料中において、板状に形成された結晶のカードハウス構造の空隙に油剤を保持するものである。本発明における成分(B)ワックスは、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、水添ホホバ油、水添パーム油、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、ライスワックス、ヒマワリワックス、モクロウ、ゲイロウ、ジロウ、モンタンワックス、ステアリル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ミツロウ等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、製造安定性の観点から、水添ホホバ油、水添パーム油、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、ライスワックス、ヒマワリワックス、モクロウ、ミツロウ、シリコーンワックスから選ばれる1種または2種以上が好ましい。市販品としては、NC-1630キャンデリラワックス(セラリカ野田社製)、精製キャンデリラワックスSR-3、高融点キャンデリラワックスFR100、精製キャンデリラワックスMD-21、精製カルナウバワックス1号(日本ナチュラルプロダクツ社製)、WHITE BEES WAX(三木化学社製)、BEES WAX S(クローダ社製)等が挙げられる。これらを1種または2種以上含有することができる。
【0020】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定しないが、下限として、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.3%以上、更に好ましくは0.5%以上、上限として、好ましくは8.0%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは3.0%以下である。この含有量は、以下の成分(D)の種類に応じて量を調節することが好ましく、適宜成分(B)とともに調整されるものである。
【0021】
本発明における成分(D)として揮発性油剤を含有する。揮発性油剤とは、常圧における沸点が260℃以下の、常温(25℃)で流動性を有する液状の油分を意味する。特に限定されないが、炭化水素油、およびシリコーン油(形状はいずれでもよく、例えば、環状、直鎖状、又は分岐鎖状)を、1種又は2種以上用いることが出来る。
【0022】
本発明における成分(D)の炭化水素油は、特に限定されないが、化粧料に一般的に用いられる軽質イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン等を挙げることができ、市販品としては、IPソルベント1620、IPソルベント2028(以上、出光石油化学社製)、PERMETHYL 99A(PRESPERS社製)、AECイソドデカン(A and E Connock(Perfumery and Cosmetics)Ltd.社製)、クレアシルID CG(CIT Sarl社製)、ファンコールID(Elementis Specialties社製)、オリスターIDD(オリエントスターズLLC社製)、パーメチル 99A(Presperse Corp社製)、ISODODECANE(IMCD INEOS Oligomers社製)、Ritacane ID(リタコーポレーション社製)等が挙げられる。これらの揮発性炭化水素油は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。揮発性炭化水素油としては、乾燥速度の点でイソドデカンが好適に用いられる。
【0023】
本発明における成分(D)の揮発性シリコーン油は、特に限定されないが、化粧料に一般的に用いられるジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等を挙げることができ、市販品としては、DC345 FLUID、SH245 FLUID(東レ・ダウコーニング社製)、KF-995、TMF1.5、シリコンKF-96L-1.5CS、KF-96L-2CS(以上信越化学工業社製)、BELSIL DM 1 PLUS(Wacker Chemical Corporation製)等が挙げられる。これらの揮発性シリコーン油は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。揮発性シリコーン油としては、沸点が200℃未満のものが乾燥速度の点で好ましく、例えばメチルトリメチコン、ジメチコンが好適に用いられる。
【0024】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されないが、下限として、好ましくは2.0%以上、より好ましくは5.0%以上、上限として、好ましくは40%以下、より好ましくは25%以下、更に好ましくは15%以下である。この範囲であれば、伸び広がりが良く、塗布時のみずみずしさが得られ、ベタツキが無く、化粧持続性、製造安定性に優れる点でより好ましい。
【0025】
本発明における成分(B)と(C)に対する(D)の質量割合(D)/〔(B)+(C)〕は、特に限定されないが、下限として0.01以上が好ましく、より好ましくは、0.1以上、更に好ましくは1.0以上、上限として8.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましい。この範囲であれば、季節等の温度変化にも寄らず、一定した品質が製造できる製造安定性、最後まで同じ品質で使用できる経時安定性に優れる点でより好ましい。なお、成分(D)の分子構造により、形状保持しやすい成分(B)と成分(C)を適宜調整することができる。成分(B)と成分(C)の含有量は、成分(E)との質量割合に応じても適宜調整されるものである。
【0026】
本発明における成分(E)は、精製水に限定されるものではなく、天然より抽出された水、植物の水蒸気蒸留水等の水でもよい。その際のpH、塩類、その他の不純物等の含有量は特に限定されないものとする。成分(E)の含有量は、下限として、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、上限として、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下である。この範囲であれば、塗布時のみずみずしさが得られ、ベタツキが無く化粧持続性に優れる点でより好ましい。
【0027】
本発明における成分(F)疎水化処理着色粉体は、油中水型乳化固形化粧料の耐水、耐汗、耐皮脂性等の化粧持続性を向上させることや成分(A)とのなじみやすさの効果を有する。成分(F)の着色粉体は、特に素材、大きさは限定されないが、可視光領域を反射する粉体であれば特に限定するものではない。好ましくは、平均粒子径(D50)が0.1~2.0μmの範囲である。
具体的には、金属酸化物、または色素等が好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン末、グンジョウ、コンジョウ、マンガンバイオレッド、カルミン、タール色素、セルロース粉体、が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明における成分(F)の疎水化処理剤としては、親油性を付与するものであれば特に限定せず、表面処理方法も特に限定しない。具体的には、例えば粉体表面に、金属石鹸、トリエトキシカプリリルシラン、シリコーン、脂肪酸、アシル化アミノ酸、トリイソステアリン酸イソプロピルチタネート、リン脂質、デキストリン脂肪酸エステル、酸化ポリエチレン、パーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物で処理する方法が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。特に、金属石鹸、脂肪酸、アシル化アミノ酸、リン脂質、デキストリン脂肪酸エステル、酸化ポリエチレン等の、炭素数14以上の疎水基が含まれるものが、肌への付着性に優れ、化粧膜の均一性を向上させるためより好ましい。
【0029】
なお、成分(F)を化粧料中で分散する成分との屈折率差が高いと、より着色効果を有するので好ましく、外層の油剤に分散しても内層の水性成分に分散してもよい。
【0030】
本発明における成分(F)の含有量は、下限として、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上、上限として、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下である。
【0031】
本発明における成分(F)は、さらに成分(G)の球状粉体の表面に付着、または複合化されていても良い。本発明における成分(G)は、形状が球状であることを意味するが、長径/短径の比が、1~2の範囲であればよく、特に表面状態は限定せず、平均粒子径の1/7以下の凹凸があっても良い。素材は特に限定されないが、無機粉体の場合は、例えば、無水ケイ酸が好ましく、有機粉体の場合は、ナイロンパウダー、メチルシロキサン網状重合体、架橋型ジメチルポリシロキサン粉体、アクリル系樹脂粉体及びポリエチレン粉末のような合成樹脂粉末、セルロース、デンプン、シルク、デキストリン等の天然粉末から選ばれる1種又は2種以上が用いられる。本発明における成分(F)を、成分(G)の表面に付着させた場合、本発明における成分(F)の着色粉体が、肌表面に直接付着することがない為、キメや、毛穴と言った肌表面の凹凸に則さずに塗膜が形成されるため、均一な化粧膜となる。また、成分(F)の平均粒子径が比較的小さいため、成分(F)の伸び広がりを良くし、分散性を向上させる効果を有する。
【0032】
本発明における成分(F)を、成分(G)の表面に付着させる方法としては、特に限定されないが、例えば、互いに混合、粉砕等力を加えて接触させ付着させる、メカノケミカル的な方法や、溶剤中で(G)の表面に(F)を析出させる方法がある。
【0033】
本発明における成分(H)は、ヒドロキシステアリン酸エステル、およびフィトステロールエステルから選ばれる1種または2種以上であり、成分(C)と共に溶解することで、油系中の成分(C)のワックスの経時での結晶を安定化し、また、抱水力を有するため、経時安定性や製造安定性に優れる効果を付与する。具体的には、水酸基を有する骨格としては、ジペンタエリスリトール骨格、フィトステロール骨格、およびトリメチロールプロパン骨格から選ばれる1種または2種以上のエステル油が好ましい。特に、ジペンタエリスリトールエステル、フィトステロールエステルがより好ましい。また、脂肪酸骨格としては、炭素数14~~24の脂肪酸のエステルが好ましく、特に炭素数16以上の飽和脂肪酸、炭素数16以上の分岐脂肪酸から選ばれる1種または2種以上のエステル油がより好ましい。特に、ヒドロキシステアリン酸エステルがより好ましい。
例えば、具体的には、(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/オレイン酸)グリセリルエステルズ、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、(ジ-ヒドロキシステアリン酸グリセリル、ステアロイルヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/ポリヒドロキシステアリン酸)ジペンタエリスリチル、テトラヒドロキシステアリン酸ジトリメチロールプロパン、テトラヒドロキシステアリン酸スクロース、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)が好ましく挙げられ、1種又は2種以上を含有することができる。
【0034】
本発明における成分(H)の含有量は、特に限定しないが、下限として、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上、更に好ましくは1%以上、上限として、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。この範囲であると、べたつきの無さを維持しつつ、エモリエント感を付与できて、製造安定性により優れる。
【0035】
本発明における成分(H)以外の全エステル油は、化粧料に通常使用されるエステル油であれば、限定されず、例えば、具体的には、ステアリン酸2-エチルヘキシル、イソノイソステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸ミリスチリル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸イソステアリル、ラウリン酸ヘキシル、リシノレイン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、2-エチルヘキサン酸イソステアリル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、カプリン酸セチル、カプリル酸セチル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸エチル、エルカ酸オクチルドデシル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、ステアロイルオキシステアリン酸イソステアリル、ステアロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリメリト酸トリトリデシル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、ヤシ油、オリーブ油、パーム油、マカデミアンナッツ油、メドウフォーム油、ホホバ油、菜種油、コメヌカ油、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ホホバアルコール、テトライソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステリン酸デカグリセリル、デカ2-エチルヘキサン酸デカグリセリル、油溶性紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0036】
本発明における成分(H)を含み、成分(C)を含まない、全エステル油の含有量は、特に限定されないが、8~20%が好ましく、より好ましくは,10~18%であり、さらに好ましくは、12~15%である。この範囲であれば、滑らかな伸び広がりと、べたつきの無さと、化粧後のエモリエント感が両立する。
【0037】
なお、本技術の固形化粧料は、上記成分以外に本技術の効果を損なわない範囲で医薬分野に又は化粧分野で使用可能な任意成分を適宜含有させてもよい。任意成分として、例えば、界面活性剤、成分(A)~(D)、(H)以外の油性成分、成分(F)、(G)以外の粉体成分、水溶性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等、各種の効果を付与するために通常化粧品に用いられる他の成分を適宜用いることができる。
【0038】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればよく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸及びそれらの無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α-スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-メチル-N-アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシル-N-アルキルアミノ酸塩、ο-アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノルアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、大豆リン脂質が挙げられる。
【0039】
成分(A)~(D)、(H)、全エステル油以外の油性成分としては特に制限されず、通常化粧料に用いられるものであればいずれのものも使用できる。例えば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、水添ロジン酸エステル、アクリルーシリコーン共重合体、トリメチルシロキシケイ酸等の樹脂類、ワセリン、ラノリン、カカオ脂、シアバター、硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のペースト油類、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素油等が挙げられる。
【0040】
本発明に用いられる成分(F)、(G)以外の粉体は、化粧料中で粒子として存在し、化粧料一般に使用される粉体であれば、特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、黒酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、N-アシルリジン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0041】
水溶性成分としては特に制限されず、通例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液類、アルカリゲネス産生多糖体、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子類が挙げられる。
【0042】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばα-トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、タンパク質、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0043】
本発明の油中水型乳化固形化粧料は、棒状、塊状、板状等の固形物としての成型体や、皿状容器等に充填成型したもの、ディスペンサー容器やボトル、チューブ等に充填した形で製品化することができ、ファンデーション、下地、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイブロウ、コンシーラー等のメーキャップ化粧料、日焼け止め化粧料等のスキンケア化粧料等が挙げられ、特に限定されないが、本発明の効果が顕著に発揮される化粧料は、ファンデーション、アイシャドウ、下地等のメーキャップ化粧料である。特に、ペンシル状、またはスティック状の棒状化粧料や、皿状容器等に充填成型したものが好ましく、棒状化粧料が最も本発明の効果を有効に利用できてより好ましい。
【0044】
本発明の油中水型乳化固形化粧料の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、少なくとも成分(E)を除き、及びその他の成分を混合溶解した油系と、(E)及びその他の成分を混合溶解した水系を混合乳化し、次いで得られた乳化物を容器に充填することにより製造できる。乳化後に溶融後、容器に充填する際は、成分(A)~(C)の融点以上にする必要はなく、成分(D)、成分(E)の蒸発を制御しつつ充填することが好ましく、最適な充填温度を設定して製造するものである。
【実施例】
【0045】
次に以下に製造例及び実施例をあげて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら製造例及び実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例1~18及び比較例1~8:ファンデーション
表1に示す組成のファンデーションを以下に示す製造方法により調製し、「みずみずしさ」、「滑らかな伸び広がり」、「エモリエント感」、「ベタツキの無さ」、「化粧膜の均一性」、「化粧持続性」、「経時安定性」、「製造安定性」について以下に示す評価方法及び判断基準により評価し、結果を併せて表1、2に示した。
【0047】
【0048】
*1:L-MODU S400(出光興産社製)
*2:PERFORMALENE 500(ニューフェーズテクノロジー社製)
*3:精製キャンデリラワックス SR-3(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*4:精製カルナバワックス1号(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*5:WHITE BEES WAX(三木化学社製)
*6:コスモール 168ARNV(日清オイリオグループ社製)
*7:PLANDOOL-S(日本精化社製)
*8:エルデューPS-304(味の素社製)
*9:CROPURE MEADOWFOAM-LQ-(JP)(クローダジャパン社製)
*10:KF-995(信越化学社製)
*11:KF-96L-1.5CS(信越化学社製)
*12:シリコーン TMF-1.5(信越化学社製)
*13:ISODODECANE(IMCD(IMEO S OLIGOMERS)社製)
*14:シリコーンKF-96A(6CS)(信越化学工業社製)
*16:KSP-102 (信越化学社製)
*17:東レ ナイロン粉末SP-500(東レ社製)
【0049】
【0050】
*15:MTXO70-NL(ハヤテマテリアル社製)の各母体原料
【0051】
(製造方法)
A:成分1~18を110°Cで加熱溶解後、成分23~26、27~43を添加混合する。ただし、複合FG記載の原料は、各々別途予め混合し、分散機器にて粉砕または吸着複合化させたものを使用した。
B:その後成分19~22を混合し、80°Cに調温する。
C:成分44~47を混合し70°Cとする。
D:BにCを添加乳化する。
E:Dを再溶解後、棒状容器に加温後80℃前後で充填し、放冷後、スティック状ファンデーションを得た。
【0052】
(評価方法)
各試料に対して、化粧品評価専門パネル20名に、「みずみずしさ」、「滑らかな伸び広がり」、「エモリエント感」、「ベタツキの無さ」、「化粧膜の均一性」、「化粧持続性」、の其々の項目について、各自が以下の評価基準に従って7段階評価し、更に全パネルの評点の平均点を用いて、以下の判定基準に従って判定した。
【0053】
[評価基準]
(評価結果) :(評点)
非常に良好 : 6点
良好 : 5点
やや良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
非常に不良 : 0点
[判定基準]
(評点の平均点) :(判定)
5.0以上 : ◎
3.5以上~5.0未満 : ○
1.5以上~3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0054】
(評価方法)経時安定性
経時安定性については、容器に充填した化粧料について、5℃、30℃、40℃、50℃の恒温槽に保管し、1ヶ月後の表面状態を目視観察し、下記基準により評価した。
また、室温で2か月持ち歩き使用試験を化粧品評価専門パネル5名に実施し、下記基準により評価した。
(評価基準)
(外観の状態変化) :(評点)
全く変化無し :4
僅かに変化が見られる :3
変化が見られる :2
著しく変化が発生し、外観を損なう:1
(判定基準)
上記の外観の状態変化の各水準の評価結果の平均点を総合判定とした。
(判定):(n=5の評点の平均点)
◎:3.5点以上
○:3.0点以上~3.5点未満
△:2.0点以上~3.0点未満
×:2.0未満
【0055】
(評価方法)製造安定性
製造安定性については、製造方法Dまでの乳化サンプル10kgをEの充填工程において、密閉容器で一括加熱溶解後、各容器に充填温度にて充填を開始し、開始初期30個、充填開始1時間後の30個、充填開始2時間後の30個をサンプリングし、化粧品評価専門パネル20名に、以下の評価基準に従って7段階評価し、更に全パネルの評点の平均点を用いて、以下の判定基準に従って判定した。
【0056】
[評価基準]
(評価結果) :(評点)
差がない : 5点
僅かに差がある : 4点
差がある : 3点
かなり差がある : 2点
非常に差がある : 1点
[判定基準]
(評点の平均点) :(判定)
4.0以上 : ◎
3.0以上~4.0未満 : ○
2.0以上~3.0未満 : △
2.0未満 : ×
【0057】
表1、2の結果から明らかなように、本発明の実施品である実施例1~18のスティック状ファンデーションは、「みずみずしさ」、「滑らかな伸び広がり」、「エモリエント感」、「ベタツキの無さ」、「化粧膜の均一性」、「化粧持続性」、「経時安定性」「製造安定性」の全ての項目に優れたファンデーションであった。一方、成分(A)を含有していない比較例1では、「滑らかな伸び広がり」と、「化粧膜の均一性」がなく、「経時安定性」に劣るものであった。また、成分(B)を含有していない比較例2では、「ベタツキの無さ」と、「化粧膜の均一性」と、「エモリエント感」がなく、「経時安定性」、{製造安定性}に劣るものであった。また、成分(C)を含有していない比較例3は、「滑らかな伸び広がり」と「エモリエント感」が低く、「化粧膜の均一性」がなく、「化粧持続性」に劣るものであり、「経時安定性」、「製造安定性」も好ましいものではなかった。また、成分(E)が多く、成分(D)がない比較例4では、「みずみずしさ」と、「ベタツキの無さ」は優れているものの、「滑らかな伸び広がり」、「エモリエント感」、がなく、「経時安定性」に劣り、1日後には発汗して、使用時に崩れる傾向が見られ、「製造安定性」が非常に悪く、充填初期がみずみずしいものの、時間がたつと同一の品質を維持することができなかった。成分(E)を配合せず、または少ない比較例5、6は、「みずみずしさ」と「化粧膜の均一性」と、「ベタツキの無さ」と、「化粧持続性」が劣る傾向が見られた。また、疎水化処理着色粉体を含有していない比較例7では、「みずみずしさ」と、「エモリエント感」には優れるものの、疎水化表面でないことで粉体の分散性が悪く、「滑らかな伸び広がり」と「化粧膜の均一性」と、化粧後1時間経過後目尻のシワや、ほうれい腺にヨレが見られ「化粧持続性」に劣り、「経時安定性」、特に加温状態が続く「製造安定性」に劣るものであった。さらに、成分(D)が多い比較例8は、「化粧膜の均一性」がなく、「みずみずしさ」と「製造安定性」に劣るものであった。
【0058】
実施例19 アイカラー
(成分) (%)
1.水添ホホバ油(融点66~70℃) 2.8
2.マイクロクリスタリンワックス(融点93℃) 4.2
3.ポリエチレンワックス(融点92~98℃)*18 1.5
4.ポリプロピレン重合体 *1 0.5
5.ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル*19 0.5
6.ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 5.0
7.リンゴ酸ジイソステアリル *20 5.0
8.メチルフェニルポリシロキサン 5.0
9.(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 1.0
10.イソドデカン*13 10.0
11.ジメチコン(動粘度1.8~2.2mm2/S) 5.0
12.シリコーンベンガラ 0.5
13.シリコーン処理黄酸化鉄 1.0
14.シリコーン処理黒酸化鉄 0.1
15.(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)*21 5.0
16.雲母チタン *22 10.0
17.セリサイト 残量
18.精製水 25.0
19.ジプロピレングリコール 8.0
20.塩化ナトリウム 0.5
21.カルボマー 0.05
22.クロルフェネシン 0.1
23.香料 0.1
*18:LIPWAX A-4(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*19:コスモール168ARM(日清オイリオグループ社製)
*20:コスモール222(日清オイリオグループ社製)
*21:ミクロマイカMK-200K(片倉コープアグリ社製)
*22:FLAMENCO ULTRA SPARKLE 4500
【0059】
(製造方法)
A:成分1~8を110°Cで加熱溶解後、成分12~17を添加混合する。
B:その後成分9~11を混合し、80°Cに調温する。
C:成分21を成分18の一部で膨潤し、成分18~23を混合し70°Cとする。
D:BにCを添加乳化する。
E:Dを再溶解後、棒状気密容器に加温後80℃前後で充填し、放冷後、ペンシル状アイカラーを得た。
【0060】
実施例19のアイカラーは、「みずみずしさ」、「滑らかな伸び広がり」、「エモリエント感」、「ベタツキの無さ」、「化粧膜の均一性」、「化粧持続性」、「経時安定性」、「製造安定性」の全ての項目において優れたアイカラーであった。
【0061】
実施例20 日焼け止め化粧下地
(成分) (%)
1.合成ワックス(融点91~96℃)*23 5.0
2.コメヌカロウ(融点78~80℃) 3.0
3.ポリプロピレン重合体 *1 2.0
4.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル
/ベヘニル)*7 5.0
5.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5.0
6.ジメチコン(動粘度5~7mm2/S) 5.0
7.シクロメチコン 20.0
8.イソヘキサデカン 5.0
9.微粒子酸化チタン、酸化アルミニウム、ステアリン酸、ナイロン末の混合物*15
5.0
10.レシチン処理酸化亜鉛 3.0
11.精製水 35.0
12.13BG 10.0
13.エタノール 2.0
14.クロルフェネシン 0.1
15.香料 0.1
*23:CIREBELLE 109L(CIREBELLE社製)
【0062】
(製造方法)
A:成分1~6を110°Cで加熱溶解後、成分9~10を添加混合する。
B:その後成分7~8、15を混合し、80°Cに調温する。
C:成分11~14を混合し70°Cとする。
D:BにCを添加乳化する。
E:Dを再溶解後、棒状容器に加温後80℃前後で充填し、放冷後、スティック状日焼け止め化粧下地を得た。
【0063】
実施例20の日焼け止め化粧下地は、「みずみずしさ」、「滑らかな伸び広がり」、「エモリエント感」、「ベタツキの無さ」、「化粧膜の均一性」、「化粧持続性」、「経時安定性」、「製造安定性」の全ての項目において優れた日焼け止め化粧下地であった。
【0064】
実施例21 口紅
(成分) (%)
1.マイクロクリスタリンワックス(融点93℃) 2.4
2.パラフィンワックス(融点75~85℃) 5.6
3.ヒマワリワックス(融点76℃) 2.0
4.ポリプロピレン重合体 *1 1.0
5.ペンタヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-10 2.0
6.トリメリト酸トリトリデシル*24 10.0
7.メチルフェニルポリシロキサン 10.0
8.トリイソステアリン酸ポリグリセリル 5.0
9.赤色226 0.5
10.ジメチコン処理シリカ被覆赤色202 30%被覆酸化チタン
(平均粒子径:1.0μm) 2.0
11.イソドデカン 15.0
12.ジメチコン(動粘度1.8~2.2mm2/S) 10.0
13.精製水 22.8
14.グリセリン 5.0
15.13BG 8.0
16.クロルフェネシン 0.1
17.香料 0.1
*24:LIPONATE TDTM(LIPOCHEMICALS INC社製)
(製造方法)
A:成分1~7を110°Cで加熱溶解後、成分9~10を添加混合し、成分8~10を三本ローラーにて分散し、43v処理顔料とする。
B:A、B、11、12、17を混合し、80°Cとする。
C:成分13~16を混合し70°Cとする。
D:BにCを添加乳化する。
E:Dを再溶解後、棒状容器に加温後80℃前後で充填し、放冷後、スティック状容器に充填し、放冷後、スティック状口紅を得た。
【0065】
実施例21の口紅は、「みずみずしさ」、「滑らかな伸び広がり」、「エモリエント感」、「ベタツキの無さ」、「化粧膜の均一性」、「化粧持続性」、「経時安定性」、「製造安定性」の全ての項目において優れた口紅であった。
【0066】
実施例22 ファンデーション
(成分) (%)
1.セレシンワックス(融点75~85℃) 2.4
2.マイクロクリスタリンワックス (融点93℃) 0.6
3.トリベヘニン 1.0
4.ベヘニル変性メチルポリシロキサン 0.5
5.ポリプロピレン重合体*1 0.3
6.ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)*8
1.0
7.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7.0
8.メドウフォーム油*9 2.0
9.トリメチルシロキシケイ酸固形分 *25 1.5
10.ジメチコン(動粘度1.8~2.2mm2/S) 20.0
11.メチルトリメチコン*12 5.0
12.ステアロイルグルタミン酸2Na処理酸化チタン 5.0
13.シリコーン処理ベンガラ 0.2
14.シリコーン処理黄酸化鉄 1.5
15.シリコーン処理黒酸化鉄 0.1
16.精製水 39.65
17.1.3BG 8.0
18.ジプロピレングリコール 5.0
19.キサンタンガム 0.05
20.シロキクラゲ多糖体 0.02
21.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
22.香料 0.1
*25:KF-9021Lの固形分(信越化学工業社製)
【0067】
(製造方法)
A:成分1~8を110°Cで加熱溶解後、成分12~15を添加混合する。
B:その後成分9~11、22を混合し、80°Cに調温する。
C:成分19を成分16の一部で膨潤し、成分17~21を混合し70°Cとする。
D:BにCを添加乳化する。
E:Dを再溶解後、耐熱皿容器に加温後80℃前後で充填し、放冷後、平皿状ファンデーションを得た。
【0068】
実施例22のファンデーションは、「みずみずしさ」、「滑らかな伸び広がり」、「エモリエント感」、「ベタツキの無さ」、「化粧膜の均一性」、「化粧持続性」、「経時安定性」、「製造安定性」の全ての項目において優れたファンデーションであった。