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特許7700405衛星航法システムにおける補正情報の生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】衛星航法システムにおける補正情報の生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/07 20100101AFI20250624BHJP
   G01S 19/41 20100101ALI20250624BHJP
【FI】
G01S19/07
G01S19/41
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024233326
(22)【出願日】2024-12-25
【審査請求日】2024-12-25
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 丈泰
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特許第7550426(JP,B1)
【文献】特許第7326650(JP,B1)
【文献】特開2015-169503(JP,A)
【文献】特開2001-116820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-G01S 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位信号を送信する複数の航法衛星と,
前記複数の航法衛星が送信する測位信号を受信してそれらとの間の距離を測定するユーザ局と,
地上に固定された受信機により前記航法衛星の各々が送信する測位信号を受信してそれらとの間の距離を測定する基準局と,
前記基準局が測定した距離の情報から前記航法衛星の各々に対応する補正値を生成し,これらを前記複数の航法衛星についてまとめて補正情報として前記ユーザ局に提供する補正局を備え,
前記ユーザ局には前記基準局の公称の基準局位置が提供される衛星航法システムにおいて,
前記補正局は,前記航法衛星の各々について,
前記基準局の正確な位置より計算される本来測定されるべき距離から,前記基準局が測定した距離を差し引くことで,前記基準局に対応する補正値を生成し,
前記基準局の正確な位置における対流圏伝搬遅延量を計算して,この計算により得た対流圏伝搬遅延量を前記補正値に加えることで,前記基準局における対流圏伝搬遅延の成分を含まない補正値を得て,
前記公称の基準局位置における対流圏伝搬遅延量を計算して,この計算により得た対流圏伝搬遅延量を,前記対流圏伝搬遅延の成分を含まない補正値から差し引くことで,新たな補正値を生成し,
この新たな補正値を前記複数の航法衛星についてまとめて前記補正情報として前記ユーザ局に提供することを特徴とする,衛星航法システムにおける補正情報の生成方法。
【請求項2】
測位信号を送信する複数の航法衛星と,
前記複数の航法衛星が送信する測位信号を受信してそれらとの間の距離を測定するユーザ局と,
地上に固定された受信機により前記航法衛星の各々が送信する測位信号を受信してそれらとの間の距離を測定する複数の基準局と,
前記複数の基準局が測定した距離の情報から前記航法衛星の各々に対応する補正値を生成し,これらを前記複数の航法衛星についてまとめて補正情報として前記ユーザ局に提供する補正局を備え,
前記ユーザ局には前記複数の基準局を代表する公称の基準局位置が提供される衛星航法システムにおいて,
前記補正局は,前記航法衛星の各々について,
前記基準局の各々の正確な位置より計算される本来測定されるべき距離から,前記基準局の各々が測定した距離を差し引くことで,前記基準局の各々に対応する補正値を生成し,
前記基準局の各々の正確な位置における対流圏伝搬遅延量を計算して,この計算により得た対流圏伝搬遅延量を前記補正値に加えることで,前記基準局の各々における対流圏伝搬遅延の成分を含まない補正値を得て,
前記複数の基準局についてこれらの平均を求め,
前記公称の基準局位置における対流圏伝搬遅延量を計算して,この計算により得た対流圏伝搬遅延量を,前記平均から差し引くことで,新たな補正値を生成し,
この新たな補正値を前記複数の航法衛星についてまとめて前記補正情報として前記ユーザ局に提供することを特徴とする,衛星航法システムにおける補正情報の生成方法。
【請求項5】
前記補正局は,前記重み付き平均を求めるのであるが,このとき,前記基準局の各々について,重み付き平均を求める対象は座標値に対して線形であるとの仮定のもとで,当該基準局の座標値を用いて最小二乗法により決定した重みを用いることを特徴とする,請求項3に記載の衛星航法システムにおける補正情報の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,衛星航法システムにおける補正情報の生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工衛星により位置を測定する衛星航法システムはGNSS(Global Navigation Satellite System)と総称され,その代表例は米国によるGPS(Global Positioning System)である。GNSSは一般に,航法衛星と呼ばれる人工衛星が送信する測位信号を受信機により受信し,航法衛星と受信機との間の距離を測定することで,受信機の位置を計算により求める。位置を求めるべき受信機を,ユーザ受信機あるいはユーザ局などと呼ぶ。求められた位置の真の位置に対する誤差を,測位誤差という。
【0003】
一般に,人工衛星が送信する無線信号(測位信号を含む)が,地上に到達するまでの間に,電離圏及び対流圏を通過するが,それぞれの領域を無線信号が通過する際に遅延が生じる。これらの遅延は,それぞれ電離圏伝搬遅延及び対流圏伝搬遅延と呼ばれている。従って,この無線信号を測位信号として用いる場合,これらの電離層伝搬遅延及び対流圏伝搬遅延が測位誤差の要因になっている。距離に換算した電離圏伝搬遅延及び対流圏伝搬遅延の大きさを,それぞれ電離圏伝搬遅延量及び対流圏遅延量という。
【0004】
これに対して,地上に固定された基準局に受信機を設置して,これにより測定した距離から,電離圏伝搬遅延や対流圏伝搬遅延などにより生じる距離の測定誤差に対する補正情報を作成し,これをユーザに対して提供することで,ユーザ局において測定した距離を補正情報に基づいて補正し,ユーザ局における位置の測定精度(「測位精度」と呼ぶ)を改善することが行われている。この方式はディファレンシャルGPS(Differential GPS。以下,「DGPS」とする)と呼ばれる。DGPSでユーザ局に提供される補正情報には,複数の航法衛星の各々についての距離の補正値が含まれている。
【0005】
DGPSでは,基準局の位置における距離の測定誤差から補正情報を作成するのであるから,補正情報による測位精度の改善効果は,基準局に近い場所では高いが,基準局から離れるに従い,改善効果が小さくなることが知られている。このため,ユーザ局においてDGPSを利用する場合は,基準局から限定された範囲内で利用するか,あるいは複数の基準局を利用できる場合には,最寄りの基準局を選択して利用するのが一般的である。
【0006】
DGPSの実用例としては,船舶向け中波ビーコンやFM多重ディジタル放送によるものがあったが,現在ではいずれも廃止された。一方,2018年に運用を開始した日本の準天頂衛星システムはSLAS(Submeter-Level Augmentation Service)としてDGPSの補正情報を人工衛星から送信している。SLASサービスでは,単一の人工衛星からの信号を受信することで,日本全国に配置された13局の基準局における補正情報を一括して得られる特徴がある。SLASサービスを利用するユーザ受信機は,最寄りの基準局の補正情報を選択して利用することとされている。
【0007】
ディファレンシャルGPSの方式には,上に述べた個々の基準局による方式のほかにも,多数の基準局の測定データを統合して広い地理的範囲で有効な広域補正情報を作成する広域ディファレンシャルGPSと呼ばれる方式がある。広域ディファレンシャルGPSのサービスとして,日本のMSASや米国のWAASが普及したため,複数の基準局による補正情報が提供されるDGPSは,準天頂衛星システムのSLASサービス以外には現状では存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第7326650号
【非特許文献】
【0009】
【文献】久保信明著,「GPSによる測定値と誤差要因」,https://www.denshi.e.kaiyodai.ac.jp/wp-content/uploads/pdf/content/201004.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
DGPSでは一般に基準局から離れるに従い補正情報による補正の効果が小さくなるから,ユーザ局においてDGPSを利用する場合は,基準局から限定された範囲内で利用するか,あるいは,複数の基準局を利用できる場合には,最寄りの基準局を選択して利用することが行われている。
【0011】
例えば,準天頂衛星システムのSLASサービスでは日本全国に配置された13局の基準局における補正情報が提供され,ユーザ局は最寄りの基準局を選択して利用することとされている。複数の基準局から最寄りの基準局を選択するためには,当該複数の基準局の各々の位置情報が必要となる。このため,SLASサービスでは,基準局の位置情報を,補正情報とあわせて送信している。
【0012】
さらに,SLASサービスの仕様書においては13局の基準局の位置があらかじめ定義されており,基準局の位置情報を受信する前でもSLASサービスを利用できるように配慮されている。これらの,補正情報にあわせて送信される基準局の位置及びDGPSサービスの仕様書にて定義されている基準局の位置を,基準局の公称の位置という。
【0013】
複数の基準局から最寄りの基準局を選択するために利用される基準局の公称の位置情報については,必ずしも高精度な情報である必要はない。例えば,SLASサービスの場合は経緯度については0.005度,高度については50メートルの分解能をもって基準局の位置情報が送信される。従って,この例では,基準局の正確な位置と公称の位置は,経緯度については0.0025度以内,高度については25メートル以内の差異がある。
【0014】
一方,基準局設備に対して工事を行う際や災害時その他何らかの事情により,基準局設備(特に受信アンテナ)の位置を一時的にあるいは恒久的に変更することは実用上あり得ることである。このような場合は基準局の正確な位置の変更にあわせて,当該基準局の公称の位置を変更することが考えられる。
【0015】
しかしながら,例えばSLASサービスでは,SLASサービスの仕様書において基準局の位置があらかじめ定義されているから,実際の基準局の位置にあわせて変更した公称の位置をユーザ局に送信することにしても,ユーザ局が基準局の位置情報を受信するまでの間は,ユーザ局において使用する基準局の正確な位置と当該基準局の公称の位置との間には想定以上の大きな差異を生じる可能性がある。また,ユーザ受信機によっては,補正情報にあわせて送信される基準局の位置は使用せず,SLASサービスの仕様書にて定義されている基準局の位置を専ら使用する設計もあり得る。
【0016】
ユーザ局において使用する基準局の正確な位置と当該基準局の公称の位置の差異が,実際にどの程度の補正値の変化をもたらすかを考える。一般に,非特許文献1(46ページ)に述べられているように,DGPSユーザ局の測位計算においては,基準局との間に高度差がある場合には対流圏伝搬遅延の取扱いに注意が必要であることが知られている。これは,対流圏伝搬遅延量が受信機の高度(標高)の関数であることから,高度差がない場合は,ある航法衛星に関するユーザ局及び基準局における対流圏伝搬遅延量をほぼ等しいものとみなせば,基準局によるディファレンシャル補正が適切に作用してユーザ局の距離測定誤差を補正できるが,高度差がある場合はユーザ局及び基準局における対流圏伝搬遅延量が異なるから,単純な補正では高度差に起因する成分を取り除けないことによる。
【0017】
図3には,受信局の標高と対流圏伝搬遅延量の関係を表示してある。受信機の東の方向に航法衛星があるものとして,仰角5度,7.5度,10度のそれぞれの場合について,受信局の標高と対流圏伝搬遅延量の関係をプロットしてある。遅延量の差は航法衛星の仰角が低くなるほど大きく,仰角5度の航法衛星では25メートルの高度差で遅延量差が7センチメートル程度に達する。すなわち,例えば基準局の正確な位置と公称の位置に25メートルの高度差があるとき,基準局が生成する補正値には,公称の位置に基準局を設置した場合と比べると最大で7センチメートル程度のずれがある。
【0018】
DGPS基準局とユーザ局の水平面内の位置の違いによる影響は,高度差による対流圏伝搬遅延量の違いに比べると大きくない。しかしながら,基準局の正確な位置と公称の位置の差異が大きくなると,図4に示すように無視できない影響があらわれる。
【0019】
図4には,受信局の経度と対流圏伝搬遅延量の関係を表示してある。受信機の東の方向に航法衛星があるものとして,仰角5度,7.5度,10度のそれぞれの場合について,受信局の経度(東経140度からの相対値)と対流圏伝搬遅延量の関係をプロットしてある。遅延量の差は航法衛星の仰角が低くなるほど大きく,仰角5度の航法衛星では0.1度の経度差(日本付近では10キロメートル程度の距離に相当する)で遅延量の差が30センチメートル以上に達する。すなわち,例えば基準局の正確な位置と公称の位置に0.1度の経度差があるとき,基準局が生成する補正値には,公称の位置に基準局を設置した場合と比べると最大で30センチメートル以上に達する程度のずれがある。
【0020】
一般に,DGPSにおいては,基準局が測位信号を受信している航法衛星の各々について,基準局の正確な位置より計算される本来測定されるべき距離から,基準局が(その正確な位置において)実際に測定した当該航法衛星との間の距離を差し引くことで,補正値を生成する。このようにして生成された補正値をユーザ局で適用することで,ユーザ局においては,基準局の正確な位置に対応した補正値が適用されるのであって,基準局の位置は通常のDGPSの計算処理には明示的にはあらわれない。
【0021】
このため,DGPSでは基準局の位置はユーザ局に与えられないことがめずらしくない。基準局の位置がユーザ局に与えられる場合であっても,例えばSLASサービスで設定されている基準局の公称の位置の分解能から分かる通り,正確な位置が与えられるとは限らない。すなわち,DGPSにおいては,十分な性能で補正可能なユーザ局の地理的範囲を示す目安として基準局の位置を用いる程度であって,従って基準局の位置に関する情報は重要ではないとみなされている。DGPS基準局の正確な位置と公称の位置の差異についても,DGPSの補正性能に影響するものとは考えられていなかった。ユーザ局においては基準局の位置は通常のDGPSの計算処理には明示的にはあらわれないから,そのような差異があることはそもそも意識されていなかった。
【0022】
ただし,上述したように,DGPS基準局の正確な位置と公称の位置の差異により,実際に基準局が生成する補正値は,公称の位置に基準局を設置した場合と比べると無視できない差を生じることがある。本発明の課題は,DGPSにおいて基準局の公称の位置に適合する補正情報を生成することで,DGPS基準局の正確な位置と公称の位置の差異による測位計算への影響を除去することである。
【0023】
数式を用いて本発明の課題を説明する。基準局の正確な位置をPt,基準局において測定される複数の航法衛星との間の距離情報をM(Pt),Pt及びM(Pt)にもとづいて生成された補正情報をC(Pt),測定データMに対して補正情報Cを適用するDGPSの測位計算を関数f(M|C)とあらわす。雑音による影響を無視すれば,これらの関係は次のように書ける。すなわち,補正情報C(Pt)を適用するDGPSの測位計算により,測定データM(Pt)のもとで正しい位置Ptが求められる。
【0024】
【数1】
【0025】
基準局の公称の位置Pnは正確な位置Ptとは異なるから,公称の位置PnにおけるDGPSによる測位計算の結果はPtとPnの差異による影響を受け,補正情報C(Pt)を適用する限り一般にはPnにはならない。この関係は次式のようにあらわされる。
【0026】
【数2】
【0027】
本発明の課題は,基準局の公称の位置Pnに適合する補正情報C(Pn)を生成することで,公称の位置PnにおけるDGPS測位計算の結果として正しく公称の位置Pnを得られるようにすることである。すなわち,次の関係を得られる補正情報C(Pn)を生成することである。
【0028】
【数3】
【0029】
なお,DGPSにおいて,基準局の位置としてPtに代えてPeを設定すると,DGPS測位計算の結果としてPtの代わりにPeが得られることは知られている。基準局における測定データM(Pt)にもとづいて,基準局の位置をPeとして生成した補正情報をC(Pt→Pe)とあらわすと,この関係は次の通りであり,Pe=Pnにした場合でも依然として[数3]の関係は得られない。
【0030】
【数4】
【課題を解決するための手段】
【0031】
基準局が生成する補正値は,基準局の正確な位置における各航法衛星までの距離の測定値にもとづいて生成される。この測定される距離には対流圏伝搬遅延量が含まれているから,生成される補正値には対流圏伝搬遅延量を打ち消す成分が含まれている。この対流圏伝搬遅延量は,基準局の正確な位置に対応していることになる。
【0032】
本発明の課題を達成するには,基準局が生成した補正値に含まれる,基準局の正確な位置に対応している対流圏伝搬遅延量を,基準局の公称の位置に対応する対流圏伝搬遅延量に置き換えることができればよい。衛星航法システムにおける対流圏伝搬遅延量以外の誤差要因については,DGPS基準局の正確な位置と公称の位置の差異による測位計算への影響は大きくないことから,本発明の課題は対流圏伝搬遅延の取扱いにより解決できる。
【0033】
対流圏伝搬遅延量を得るための数式は各種が知られているが,もっとも簡単な数式の一例は次式の通りである。ここで,衛星iが送信した測位信号を位置xにある受信機で受信した場合に,対流圏伝搬遅延量T(i,x)を生じるものとし,EL(i,x)はその際の衛星iの仰角,H(x)は位置xの標高である。T(i,x)及びH(x)の単位はメートルとする。
【0034】
【数5】
【0035】
DGPS基準局が航法衛星iについて生成した補正値C(i,Pt)は,基準局の正確な位置Ptに対応している対流圏伝搬遅延量T(i,Pt)を打ち消す成分をもつから,これを基準局の公称の位置Pnに対応する対流圏伝搬遅延量T(i,Pn)に置き換えるには,次式のようにして新たな補正値C(i,Pn)を生成すればよい。
【0036】
【数6】
【0037】
補正値C(i,Pt)を修正して得たこの新たな補正値C(i,Pn)をユーザ局に提供すれば,ユーザ局は基準局の公称の位置に対応した補正値を得ることができるから,DGPS基準局の正確な位置と公称の位置の差異による測位計算への影響を除去することができる。対流圏伝搬遅延量は一例として[数5]の計算式により得られるが,これとは異なる計算式を用いる場合も,まったく同様に計算処理を実行できる。
【0038】
複数の基準局がある場合は,それら基準局の各々が生成した補正値から,それらの基準局群を代表する公称の位置における新たな補正値を求めることができる。すなわち,複数の基準局の各々の補正値にそれぞれ対応する対流圏伝搬遅延量を加え,その結果の平均を求めて,これより基準局群を代表する公称の位置に対応する対流圏伝搬遅延量を差し引くことで新たな補正値を生成し,この新たな補正値をユーザ局に提供する。このような方法により,DGPS基準局群の正確な位置と公称の位置の差異による測位計算への影響を除去することができる。
【0039】
特許文献1には,複数の基準局が生成した補正値の平均を用いるディファレンシャルGPSにおける補正情報の生成方法が説明されている。この方法では,ユーザ局の位置において有効な補正情報を生成するために,対流圏伝搬遅延について[0038]と類似の取扱いをしたうえで,複数の基準局が生成した補正値の平均を用いている。この方法は,ユーザ局の位置において有効な補正情報を生成するものであるから,ユーザ局にしか実行できない。
【0040】
この計算処理の過程では基準局の位置が明示的に用いられるのであるが,その際には基準局の正確な位置を使用する必要がある。その理由は,基準局の公称の位置を使用した場合は,[0016]~[0019]に説明したように,基準局の正確な位置と公称の位置の差異に起因する補正値のずれを生じるからである。しかしながら,一般的なDGPSの計算処理では基準局の位置は必要ないことから,一般に基準局の正確な位置はユーザ局には与えられない。SLASサービスのように基準局の公称の位置がユーザ局に与えられる場合もあるが,そのような場合でも分解能は粗く抑えられており,基準局位置は重要ではないというのが当業者の共通認識である。
【0041】
しかしながら,基準局の公称の位置がユーザ局に与えられる場合は,本発明の方法を適用して,基準局がその正確な位置において生成した補正情報を当該基準局の公称の位置に適合するように修正した新たな補正情報をユーザ局に提供する構成にすれば,特許文献1の方法を適用する場合にあっても,ユーザ局においては各基準局の公称の位置を用いることにより,適切な補正処理を実行できるようになる。このとき,各基準局の正確な位置をユーザ局に与える必要はない。
【0042】
請求項1に係る発明は,測位信号を送信する複数の航法衛星と,前記複数の航法衛星が送信する測位信号を受信してそれらとの間の距離を測定するユーザ局と,地上に固定された受信機により前記航法衛星の各々が送信する測位信号を受信してそれらとの間の距離を測定する基準局と,前記基準局が測定した距離の情報から前記航法衛星の各々に対応する補正値を生成し,これらを前記複数の航法衛星についてまとめて補正情報として前記ユーザ局に提供する補正局を備え,前記ユーザ局には前記基準局の公称の基準局位置が提供される衛星航法システムにおいて,前記補正局は,前記航法衛星の各々について,前記基準局の正確な位置より計算される本来測定されるべき距離から,前記基準局が測定した距離を差し引くことで,前記基準局に対応する補正値を生成し,前記基準局の正確な位置における対流圏伝搬遅延量を計算して,この計算により得た対流圏伝搬遅延量を前記補正値に加えることで,前記基準局における対流圏伝搬遅延の成分を含まない補正値を得て,前記公称の基準局位置における対流圏伝搬遅延量を計算して,この計算により得た対流圏伝搬遅延量を,前記対流圏伝搬遅延の成分を含まない補正値から差し引くことで,新たな補正値を生成し,この新たな補正値を前記複数の航法衛星についてまとめて前記補正情報として前記ユーザ局に提供することを特徴とする,衛星航法システムにおける補正情報の生成方法である。
【0043】
請求項2に係る発明は,測位信号を送信する複数の航法衛星と,前記複数の航法衛星が送信する測位信号を受信してそれらとの間の距離を測定するユーザ局と,地上に固定された受信機により前記航法衛星の各々が送信する測位信号を受信してそれらとの間の距離を測定する複数の基準局と,前記複数の基準局が測定した距離の情報から前記航法衛星の各々に対応する補正値を生成し,これらを前記複数の航法衛星についてまとめて補正情報として前記ユーザ局に提供する補正局を備え,前記ユーザ局には前記複数の基準局を代表する公称の基準局位置が提供される衛星航法システムにおいて,前記補正局は,前記航法衛星の各々について,前記基準局の各々の正確な位置より計算される本来測定されるべき距離から,前記基準局の各々が測定した距離を差し引くことで,前記基準局の各々に対応する補正値を生成し,前記基準局の各々の正確な位置における対流圏伝搬遅延量を計算して,この計算により得た対流圏伝搬遅延量を前記補正値に加えることで,前記基準局の各々における対流圏伝搬遅延の成分を含まない補正値を得て,前記複数の基準局についてこれらの平均を求め,前記公称の基準局位置における対流圏伝搬遅延量を計算して,この計算により得た対流圏伝搬遅延量を,前記平均から差し引くことで,新たな補正値を生成し,この新たな補正値を前記複数の航法衛星についてまとめて前記補正情報として前記ユーザ局に提供することを特徴とする,衛星航法システムにおける補正情報の生成方法である。
【0044】
請求項3に係る発明は,前記補正局は,前記平均を求めるのであるが,このとき,前記基準局の各々について,前記公称の基準局位置との相対的位置関係に基づく重みを与えた重み付き平均を用いることを特徴とする,請求項2に記載の衛星航法システムにおける補正情報の生成方法である。
【0045】
請求項4に係る発明は,前記補正局は,前記重み付き平均を求めるのであるが,このとき,前記基準局の各々について,当該基準局と前記公称の基準局位置との間の距離の逆数に比例する重みを用いることを特徴とする,請求項3に記載の衛星航法システムにおける補正情報の生成方法である。
【0046】
請求項5に係る発明は,前記補正局は,前記重み付き平均を求めるのであるが,このとき,前記基準局の各々について,重み付き平均を求める対象は座標値に対して線形であるとの仮定のもとで,当該基準局の座標値を用いて最小二乗法により決定した重みを用いることを特徴とする,請求項3に記載の衛星航法システムにおける補正情報の生成方法である。
【発明の効果】
【0047】
請求項1に係る発明は,上記のように構成したので,DGPSにおいて基準局の公称の位置に適合する補正情報を生成でき,もってDGPS基準局の正確な位置と公称の位置の差異による測位計算への影響を除去することができる。
【0048】
請求項2~5に係る発明は,上記のように構成したので,複数のDGPS基準局がある場合に,それら基準局の各々が生成した補正値から,それらの基準局群を代表する公称の位置に適合する補正情報を生成でき,もってDGPS基準局群の正確な位置と公称の位置の差異による測位計算への影響を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】この発明の実施例を示すもので,この発明の請求項1に係る衛星航法システムにおける補正情報の生成方法を説明するための模式図である。
図2】この発明の実施例を示すもので,この発明の請求項2~5に係る衛星航法システムにおける補正情報の生成方法を説明するための模式図である。
図3】この発明の実施例における発明の効果を説明するための図で,東の方向に航法衛星がある場合について,受信局の高度と対流圏伝搬遅延量の関係を表示してある。
図4】この発明の実施例における発明の効果を説明するための図で,東の方向に航法衛星がある場合について,受信局の経度と対流圏伝搬遅延量の関係を表示してある。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下,本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0051】
この発明の第一の実施例を,図1に基づいて詳細に説明する。図1は,この発明の第一の実施例を示すもので,この発明の請求項1に係る衛星航法システムにおける補正情報の生成方法を説明するための模式図である。
【0052】
航法衛星1(1a,1b・・・)は,それぞれ測位信号を送信する。
【0053】
基準局3(3a,3b・・・)は,地上に固定されており,航法衛星1(1a,1b・・・)が送信した測位信号を受信して航法衛星から基準局までの距離を測定する機能を有する。基準局3の公称の位置5は,基準局3の正確な位置とは差異11がある。
【0054】
ユーザ局7は,航法衛星1(1a,1b・・・)が送信した測位信号を受信し,航法衛星からユーザ局までの距離を測定する機能を有する。
【0055】
図1の符号2は対流圏伝搬遅延量の分布を模式的にあらわしている。図1においては,左側では対流圏伝搬遅延量が大きく,右側では対流圏伝搬遅延量が小さいことをあらわしているが,これは例示であり,対流圏伝搬遅延が必ずこのような分布を示すことをあらわしているわけではない。
【0056】
図1の符号4は,基準局3が受信する測位信号の対流圏伝搬遅延の大きさを矢印の長さであらわしている。同様に,符号8は,ユーザ局7が受信する測位信号の対流圏伝搬遅延の大きさを,矢印の長さであらわしている。
【0057】
補正局9は,基準局3から,基準局3が測定した航法衛星1(1a,1b・・・)と基準局3との間の距離10を受け取り,航法衛星1(1a,1b・・・)の各々について,基準局3の正確な位置より計算される本来測定されるべき距離から,この基準局3が測定した距離を差し引くことで,補正値を生成する。この補正値には,基準局3の正確な位置に対応して対流圏伝搬遅延量4を打ち消す成分が含まれている。補正局9は,この補正値に基準局3の正確な位置に対応する対流圏伝搬遅延量4を加え,基準局3の公称の位置5に対応する対流圏伝搬遅延量6を差し引くことで,新たな補正値12を生成する。補正局9は,この新たな補正値12をユーザ局9に提供する。
【0058】
ユーザ局7は,補正局9から提供された新たな補正値12を用いて測定した距離の補正を行い,自己の位置を計算する。
【0059】
次に,作用動作について説明する。
【0060】
図3には,受信局の標高と対流圏伝搬遅延量の関係を表示してある。受信機の東の方向に衛星があるものとして,仰角5度,7.5度,10度のそれぞれの場合について,受信局の標高と対流圏伝搬遅延量の関係をプロットしてある。遅延量の差は航法衛星の仰角が低くなるほど大きく,仰角5度の航法衛星では25メートルの高度差で遅延量差が7センチメートル程度に達する。すなわち,例えば基準局の正確な位置と公称の位置に25メートルの高度差があるとき,本発明によらない基準局が生成する補正値には,公称の位置に基準局を設置した場合と比べると最大で7センチメートル程度のずれがある。
【0061】
図4には,受信局の経度と対流圏伝搬遅延量の関係を表示してある。受信機の東の方向に衛星があるものとして,仰角5度,7.5度,10度のそれぞれの場合について,受信局の経度(東経140度からの相対値)と対流圏伝搬遅延量の関係をプロットしてある。遅延量の差は航法衛星の仰角が低くなるほど大きく,仰角5度の航法衛星では0.1度の経度差(日本付近では10キロメートル程度の距離に相当する)で遅延量の差が25センチメートル程度に達する。すなわち,例えば基準局の正確な位置と公称の位置に0.1度の経度差があるとき,本発明によらない基準局が生成する補正値には,公称の位置に基準局を設置した場合と比べると最大で30センチメートル以上に達する程度のずれがある。
【0062】
本発明では,補正局が生成した補正値に含まれる,基準局の正確な位置に対応している対流圏伝搬遅延量を,基準局の公称の位置に対応する対流圏伝搬遅延量に置き換えることで,こうしたずれを解消する。
【0063】
対流圏伝搬遅延量を得るための数式は各種が知られているが,もっとも簡単な数式の一例は[0034]の[数5]の通りである。
【0064】
補正局9が基準局3及び航法衛星iについて生成した補正値C(i,Pt)は,基準局の正確な位置Ptに対応している対流圏伝搬遅延量T(i,Pt)を打ち消す成分をもつから,これを基準局の公称の位置Pnに対応する対流圏伝搬遅延量T(i,Pn)に置き換えるには,[0036]の[数6]のようにして新たな補正値C(i,Pn)を生成すればよい。
【0065】
この新たな補正値C(i,Pn)をユーザ局に提供すれば,ユーザ局は基準局の公称の位置に適合した補正値を得ることになり,もってDGPS基準局の正確な位置と公称の位置の差異による測位計算への影響が除去される作用を得られる。対流圏伝搬遅延量は一例として[0034]の[数5]の計算式により得られるが,これとは異なる計算式を用いる場合も,まったく同様に計算処理を実行できる。
【0066】
なお,この実施例では補正局9が補正値を生成することとしているが,基準局3が補正値を生成し,補正局9にてこれを公称の基準局位置に適合するように修正して新たな補正値を生成する構成とすることも可能である。あるいは,物理的な補正局を置かず,基準局3の内部において本発明における補正局9が行うべき処理を実行する構成とすることも可能である。
【実施例2】
【0067】
この発明の第二の実施例を,図2に基づいて詳細に説明する。図2は,この発明の第二の実施例を示すもので,この発明の請求項2~5に係る衛星航法システムにおける補正情報の生成方法を説明するための模式図である。
【0068】
航法衛星1(1a,1b・・・)は,それぞれ測位信号を送信する。
【0069】
基準局3(3a,3b・・・)は,地上に固定されており,航法衛星1(1a,1b・・・)が送信した測位信号を受信して航法衛星から基準局までの距離を測定する機能を有する。基準局3(3a,3b・・・)を代表する公称の位置5は,基準局3(3a,3b・・・)の正確な位置とは差異11がある(差異は基準局ごとに異なるが,ここではその全てを図示することはしていない)。
【0070】
ユーザ局7は,航法衛星1(1a,1b・・・)が送信した測位信号を受信し,航法衛星からユーザ局までの距離を測定する機能を有する。
【0071】
図2の符号2は対流圏伝搬遅延量の分布を模式的にあらわしている。図2においては,左側では対流圏伝搬遅延量が大きく,右側では対流圏伝搬遅延量が小さいことをあらわしているが,これは例示であり,対流圏伝搬遅延が必ずこのような分布を示すことをあらわしているわけではない。
【0072】
図2の符号4(4a,4b・・・)は,基準局3(3a,3b・・・)が受信する測位信号の対流圏伝搬遅延の大きさを矢印の長さであらわしている。同様に,符号8は,ユーザ局7が受信する測位信号の対流圏伝搬遅延の大きさを,矢印の長さであらわしている。
【0073】
補正局9は,基準局3(3a,3b・・・)から,基準局3(3a,3b・・・)の各々が測定した航法衛星1(1a,1b・・・)と当該基準局との間の距離10を受け取り,航法衛星1(1a,1b・・・)の各々について,基準局3(3a,3b・・・)の各々の正確な位置より計算される本来測定されるべき距離から,当該基準局が測定した距離を差し引くことで,補正値を生成する。この補正値には,基準局3(3a,3b・・・)の各々の正確な位置に対応して対流圏伝搬遅延量4を打ち消す成分が含まれている。補正局9は,この補正値に基準局3(3a,3b・・・)の各々の正確な位置に対応する対流圏伝搬遅延量4を加え,その結果の平均を求め,基準局3(3a,3b・・・)を代表する公称の位置5に対応する対流圏伝搬遅延量6をこの平均から差し引くことで,新たな補正値12を生成する。補正局9は,この新たな補正値12をユーザ局9に提供する。
【0074】
補正局9は,前記平均を求める際に,複数の基準局の各々に重みW1,W2・・・を乗じたうえで,それらの和を得る機能を有する。基準局の数をNとしたとき,すべての基準局について重みを1/Nにすると,この和は単純平均を意味する。各基準局について異なる重みを設定した場合,この和は重み付き平均を意味する。
【0075】
N局の基準局を利用できる場合について,重みW1,W2・・・の具体的な計算方法を述べる。まず,各々の基準局における補正値の平均を求める場合は,各基準局の重みWkは,次式により計算できる。
【0076】
【数7】
【0077】
また,各々の基準局における補正値の重み付き平均を求める場合について,基準局3(3a,3b・・・)の各々と公称の位置5の間の距離の逆数に比例する重みを用いる場合,基準局3(3a,3b・・・)の各々と公称の位置5の間の距離をRkとすると,各基準局の重みWkは,次式により計算できる。
【0078】
【数8】
【0079】
さらに,各々の基準局における補正値の重み付き平均を求める場合について,各々の基準局の座標値を用いて最小二乗法により決定した重みを用いる場合,各々の基準局の経度をXk,緯度をYk,公称の位置の経度をXu,緯度をYuとすると,各基準局の重みWkは,次式により計算できる。
【0080】
【数9】
【0081】
この式中の上付きのTは行列の転置,また上付きの-1は逆行列をあらわし,各々の基準局の経緯度を保持するN×3行列Gは次式の通りである。
【0082】
【数10】
【0083】
なお,ここでは各基準局及び公称の位置を経緯度により表現しているが,直交座標系を用いる場合もまったく同様に定式化できる。
【0084】
ユーザ局7は,補正局9から提供された新たな補正値12を用いて測定した距離の補正を行い,自己の位置を計算する。
【0085】
次に,作用動作について説明する。
【0086】
基準局3(3a,3b・・・)の各々に着目すると,本発明では,補正局が生成した補正値に含まれる,基準局の正確な位置に対応している対流圏伝搬遅延量を,基準局の公称の位置に対応する対流圏伝搬遅延量に置き換えるのは,実施例1と同様である。
【0087】
複数の基準局について生成された補正値の平均を用いることにより,対流圏伝搬遅延以外の誤差要因については平均処理の対象になる。これにより,特に基準局の位置に対して線形な変化をする誤差要因については除去されるから,新たに生成される補正値は,基準局群の公称の位置により適合する性質を有することになる。この新たな補正値をユーザ局に提供すれば,ユーザ局は基準局の公称の位置により適合した補正値を得ることになり,もってDGPS基準局群の正確な位置と公称の位置の差異による測位計算への影響がより効果的に除去される作用を得られる。
【0088】
なお,この実施例では補正局9が補正値を生成することとしているが,基準局3(3a,3b・・・)の各々が補正値を生成し,補正局9にてこれを公称の基準局位置に適合するように修正して新たな補正値を生成する構成とすることも可能である。あるいは,物理的な補正局を置かず,基準局3(3a,3b・・・)のいずれかの内部において本発明における補正局9が行うべき処理を実行する構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の衛星航法システムにおける補正情報の生成方法は,移動体の測位システム,誘導システム等に利用可能である。特に,日本の準天頂衛星システムにおけるSLASサービスでは基準局の公称の位置の分解能が十分ではないが,本発明を適用することで,基準局の公称の位置に適合する補正情報を生成でき,もって基準局の正確な位置と公称の位置の差異による影響を除去できる。また,基準局設備に対して工事を行う際や災害時その他何らかの事情により基準局の位置を一時的にあるいは恒久的に変更する場合にあっても,本発明を適用すれば,基準局の公称の位置を変更しなくてよい。
【符号の説明】
【0090】
1(1a,1b・・・) 航法衛星
2 対流圏伝搬遅延量の分布
3(3a,3b・・・) 基準局
4(4a,4b・・・) 基準局の正確な位置に対応する対流圏伝搬遅延量
5 基準局の公称の位置
6 公称の位置に対応する対流圏伝搬遅延量
7 ユーザ局
8 ユーザ局の位置に対応する対流圏伝搬遅延量
9 補正局
10(10a,10b・・・) 基準局が生成した補正値
11 基準局の正確な位置と公称の位置の差異
12 ユーザ局が測位計算に使用する補正値
【要約】
【課題】 ディファレンシャルGPSにおいて基準局の公称の位置に適合する補正情報を生成する。
【解決手段】 ユーザ局と基準局を備えるディファレンシャルGPS方式による衛星測位システムにおいて,ユーザ局には基準局についての公称の基準局位置が提供されるところ,基準局が各々の航法衛星について生成した補正値に,基準局の正確な位置における対流圏伝搬遅延量を計算してこれを加え,基準局の公称の位置における対流圏伝搬遅延量を計算してこれを差し引くことで,新たな補正値を作成し,この基準局の公称の位置に適合する新たな補正値を複数の航法衛星についてまとめて補正情報としてユーザ局に提供することで,基準局の正確な位置と公称の位置の差異による測位計算への影響を除去する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4