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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】吸音材及び車両部材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20250624BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20250624BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
G10K11/168
G10K11/16 120
B60R13/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023514300
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2021015719
(87)【国際公開番号】W WO2022219807
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】高安 慧
(72)【発明者】
【氏名】清水 麻理
(72)【発明者】
【氏名】小竹 智彦
【審査官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-316366(JP,A)
【文献】特開平10-226006(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/168
G10K 11/16
B60R 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層と、連通孔を有する第一基材層と、連通孔を有する第二基材層と、を順に備え、
前記保護層の、下記式(I)で表される柔軟強靭値が1~75[MPa/μm]である、吸音材。
柔軟強靭値=(25℃における保護層の引張弾性率[MPa]×保護層のショアA硬度)/保護層厚さ[μm] ・・・(I)
【請求項2】
前記保護層がエラストマを含む層である、請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記保護層が不織布である、請求項1に記載の吸音材。
【請求項4】
前記保護層と前記第一基材層との間に、樹脂層を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項5】
前記樹脂層が、ポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドを含む、請求項4に記載の吸音材。
【請求項6】
前記樹脂層の少なくともいずれかの表面に、金属蒸着層を更に備える、請求項4又は5に記載の吸音材。
【請求項7】
前記第一基材層及び前記第二基材層が、樹脂発泡体又は不織布である、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項8】
前記第一基材層の厚さが、前記第二基材層の厚さよりも薄い、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項9】
厚さが1~100mmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の吸音材を備える、車両部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材及び車両部材に関する。
【背景技術】
【0002】
低周波数領域における吸音特性に優れる吸音材として、不織布等を2層重ねて形成される吸音材が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/213685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不織布から形成される吸音材の場合、特に外部からの機械的な衝撃に対する耐久性の点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、低周波数領域における吸音特性と耐久性とに優れる吸音材を提供することを目的とする。本発明はまた、当該吸音材を備える車両部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、保護層と、連通孔を有する第一基材層と、連通孔を有する第二基材層と、をこの順に備え、保護層の、下記式(I)で表される柔軟強靭値が1~75[MPa/μm]である、吸音材に関する。
柔軟強靭値=(25℃における保護層の引張弾性率[MPa]×保護層のショアA硬度)/保護層厚さ[μm] ・・・(I)
【0007】
一態様において、保護層がエラストマを含む層であってよい。
【0008】
一態様において、保護層が不織布であってよい。
【0009】
一態様において、吸音材が、保護層と第一基材層との間に、樹脂層を更に備えてよい。
【0010】
一態様において、樹脂層が、ポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドを含んでよい。
【0011】
一態様において、吸音材が、樹脂層の少なくともいずれかの表面に、金属蒸着層をさらに備えてよい。
【0012】
一態様において、第一基材層及び第二基材層が、樹脂発泡体又は不織布であってよい。
【0013】
一態様において、第一基材層の厚さが、第二基材層の厚さよりも薄くてよい。
【0014】
一態様において、吸音材の厚さが1~100mmであってよい。
【0015】
本発明の一側面は、上記の吸音材を備える車両部材に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低周波数領域における吸音特性と耐久性とに優れる吸音材を提供することができる。また、本発明によれば、当該吸音材を備える車両部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態に係る吸音材の模式断面図である。
図2図2は、一実施形態に係る吸音材の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0019】
<吸音材>
図1は、一実施形態に係る吸音材の模式断面図である。吸音材10は、保護層1と、基材層として連通孔を有する第一基材層2及び連通孔を有する第二基材層3と、をこの順に備える。保護層側から入射した音(音響エネルギー)は、吸音材を透過する際に熱エネルギーとして散逸される。これにより音の減衰が観察される。
【0020】
図2は、一実施形態に係る吸音材の模式断面図である。吸音材20は、保護層1と、樹脂層4と、基材層として連通孔を有する第一基材層2及び連通孔を有する第二基材層3と、をこの順に備える。
【0021】
(基材層)
連通孔を有する基材層としては、樹脂発泡体、不織布、高分子多孔体、多孔質セラミック等が挙げられる。これらのうち、低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、基材層は樹脂発泡体又は不織布であってよい。第一基材層及び第二基材層は、同じ素材から構成されていてもよく、異なる素材から構成されていてもよい。
【0022】
樹脂発泡体の素材としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。耐熱性、難燃性等の観点から、樹脂発泡体の素材はメラミン樹脂であってよい。
【0023】
不織布を構成する繊維としては、有機繊維及び無機繊維が挙げられる。有機繊維としては、例えば、ポリエチレン(低密度又は高密度)、ポリプロピレン(PP)、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ウール等の天然繊維などが挙げられる。また、無機繊維としては、ガラス繊維、金属繊維、セラミックス繊維、炭素繊維等が挙げられる。不織布を構成する繊維は、これらを1種又は2種以上を含むことができる。
【0024】
基材層の厚さは、低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、0.1~50mmとすることができ、0.5~20mmであってもよく、2.0~10mmであってもよい。第一基材層及び第二基材層は、同じ厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、第一基材層(音の入射側の基材層)の厚さが、第二基材層の厚さよりも薄くてよい。
【0025】
基材層の目付は、低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、50~2000g/mとすることができ、100~1000g/mであってもよい。
【0026】
吸音材は、低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、更に連通孔を有する他の基材層を備えていてもよい。すなわち、吸音材は、連通孔を有する第一基材層及び連通孔を有する第二基材層に加えて、更に連通孔を有する第三基材層、連通孔を有する第四基材層等を備えていてもよい。各基材層は、同じ素材から構成されていてもよく、異なる素材から構成されていてもよい。
【0027】
(保護層)
保護層の、下記式(I)で表される柔軟強靭値は1~75MPa/μmである。吸音特性と耐久性との両立をより高度に図る観点から、柔軟強靭値は2~70MPa/μmであってもよく、5~65MPa/μmであってもよい。
柔軟強靭値=(25℃における保護層の引張弾性率[MPa]×保護層のショアA硬度)/保護層厚さ[μm] ・・・(I)
【0028】
柔軟強靭値とは、保護層の単位厚さあたりの衝撃吸収度と、衝撃耐久度とに着目して設定された特性値である。単位厚さあたりの衝撃吸収度はショアA硬度に基づいて評価でき、衝撃耐久度は引張弾性率に基づいて評価でき、両者の積が所定の範囲にあることは、保護層が適度に柔軟かつ強靭であることを示す。
【0029】
引張弾性率は引張試験機により測定される。具体的には、20mm×50mmのサンプルを準備し、これを引張試験機を用いて、引張速度100mm/minで引っ張った際の25℃における弾性率の最大値を、上記引張弾性率とする。上記式が満たされるのであれば特に制限はないが、引張弾性率は、耐久性の観点から1~2000MPaとすることができ、10~1000MPaであってもよい。
【0030】
ショアA硬度はデューロメータ(タイプA)により測定される。具体的には、20mm×50mmのサンプルを準備し、厚さが1mm以上となるようにサンプルを重ね、25℃の環境で1時間静置する。静置後のサンプルに対しデューロメータで硬度を測定したときの、1秒以内の値(又は測定後直ちに示された値)を、上記ショアA硬度とする。上記式が満たされるのであれば特に制限はないが、ショアA硬度は、耐久性の観点から20~95とすることができ、30~92であってもよい。
【0031】
保護層厚さは厚さ測定器により測定される。上記式が満たされるのであれば特に制限はないが、保護層厚さは、耐久性の観点から10~2000μmとすることができ、50~500μmであってもよい。
【0032】
柔軟強靭値を上記所定の範囲内とするには、例えば以下のような観点で各特性を調整することが考えられる。
弾性率及びショアA硬度を調整する方法としては、保護層の密度の調整、材料中への剛直成分の付与、材料中の金属、セラミック、シリカ等の無機成分の割合増加などが挙げられる。保護層中の空隙量を調整することでも、弾性率及びショアA硬度を調整することができる。空隙を有する保護層を構成する骨格成分、骨格の太さ、骨格の結着の方法等によっても、弾性率及びショアA硬度を調整することができる。
弾性率及びショアA硬度のいずれか一方の調整は、例えば上記に挙げた方法を適宜組み合わせることで可能である。例えば、保護層中に空隙を設けつつ、保護層を構成する骨格を太くすることで、弾性率を維持しつつショアA硬度を低下させることができる。
【0033】
吸音特性と耐久性との両立をより高度に図る観点から、保護層はエラストマを含む層であってよい。上記柔軟強靭値を満たし得るエラストマとしては、熱可塑性エラストマ及び熱硬化性エラストマが挙げられる。熱可塑性エラストマとしては、例えばポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアクリル系、ポリアミド系、塩化ビニル、塩素化ポリエチレン系、ポリジエン系、フッ素系、シリコーン系、ポリカーボネート系等の樹脂、あるいはこれらの変性樹脂が挙げられる。また、熱硬化性エラストマとしては、例えばフッ素系、シリコーン系、ウレタン系、エポキシ系等の樹脂、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)等の合成ゴム又は天然ゴム、あるいはこれらの変性樹脂が挙げられる。軽量化のための薄膜化、耐熱性、耐久性等の観点から、ポリウレタン系又はポリエステル系の樹脂が好ましい。
【0034】
エラストマを含む層は、エラストマ以外に他の成分を含んでいてよい。他の成分としては、耐熱性、耐久性、吸音性、制振性、遮音性等の向上の観点から、シリカ、アルミナ、タルク等の無機粒子、金属粒子、有機樹脂粒子等が挙げられ、軽量化の観点から、中空粒子等が挙げられる。軽量化の観点から、エラストマを含む層は、発泡材、発泡成形による気泡部分等を含んでいてもよい。
【0035】
吸音特性と耐久性との両立をより高度に図る観点から、保護層は不織布であってよい。上記柔軟強靭値を満たし得る不織布としては、耐久性の観点から、繊維が強固に結着している不織布が挙げられ、例えばケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法等で製造された不織布(PET不織布等)が挙げられる。
【0036】
保護層の面重量(単位面積当たりの重量)は、吸音特性と耐久性との両立をより高度に図る観点から、10~1000g/mとすることができ、50~800g/mであってもよい。
【0037】
保護層の密度は、吸音特性と耐久性との両立をより高度に図る観点から、0.1~10.0g/cmとすることができ、0.2~2.0g/cmであってもよい。
【0038】
保護層が不織布である場合、不織布を構成する繊維の平均繊維径は、吸音特性と耐久性との両立をより高度に図る観点から、0.1~100μmとすることができ、1~50μmであってもよい。
【0039】
平均繊維径は、電子顕微鏡にて1000倍で撮影した写真から測定される個々の繊維の繊維径の平均をとることで求められる。具体的には、平均繊維径は、写真10枚から任意に選択された合計100本の繊維について、直径0.1μmオーダーまで繊維径を測定し、それらを平均し、小数点以下第2位を四捨五入して求められる。
【0040】
(樹脂層)
吸音材は、吸音特性の向上、耐久性向上、機能性付与等の観点から、保護層と基材層との間に更に樹脂層を備えていてよい。樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度又は高密度)、ポリプロピレン(延伸又は未延伸)、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、PTFE、FEP、PFA等のフッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、アラミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル系樹脂などが挙げられる。樹脂層は、連通孔を有しない層(フィルム)である。
【0041】
樹脂層の厚さは、低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、0.5~500μmとすることができ、5~250μmであってもよく、10~100μmであってもよい。
【0042】
樹脂層は、フィルム特性の調整による吸音効果の向上機能、及び熱線反射機能の付与の観点から、その表面に金属蒸着層を備えていてもよい。すなわち、吸音材は、樹脂層の表面に、金属蒸着層を更に備えてよい。金属蒸着層は、アルミニウム、銅、亜鉛、亜鉛合金、銀等の金属を真空蒸着等の物理蒸着又は化学蒸着により形成できる。金属蒸着層は樹脂層の両面に設けられていてもよく、一方の面に設けられていてもよい。
【0043】
樹脂層は、低周波数領域の吸音効果の向上及び吸音周波数ピークの調整の観点から、有孔フィルムであってもよい。有孔フィルムは格子状や菱形状に配列した孔を有してよい。当該孔は、低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、直径が0.1~50.0mmの円形状であってよく、0.2~10.0mmの円形状であってよく、0.3~5.0mmの円形状であってよい。孔の形状は、円形、楕円形、長方形、多角形等であってよい。
【0044】
(接着剤層)
吸音材は、上記の各層間に更に接着剤層を備えていてもよい。吸音材は、保護層及び第一基材層間、並びに第一基材層及び第二基材層間の少なくともいずれかに接着剤層を備えていてもよい。また、吸音材は、保護層及び樹脂層間、樹脂層及び第一基材層間、並びに第一基材層及び第二基材層間の少なくともいずれかに接着剤層を備えていてもよい。
【0045】
接着剤層としては、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、イソブテン・無水マレイン酸共重合樹脂、アクリル共重合樹脂、アクリルモノマー、アクリルオリゴマー、スチレン・ブタジエンゴム、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタン樹脂、シリル化ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、水ガラス、シリケート等の接着成分を含む層、あるいは紙、布、樹脂フィルム、金属テープ等から構成される支持体の両面にこれらの接着成分を含む層を備える積層物(例えば両面テープ)などが挙げられる。各接着剤層は、同じ素材から構成されていてもよく、異なる素材から構成されていてもよい。
【0046】
接着剤層の厚さは特に限定されないが、0.01~500μmとすることができ、1~250μmであってもよい。各接着剤層は、同じ厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。
【0047】
接着剤層の重量は特に限定されないが、1~500g/mとすることができ、5~200g/mであってもよく、10~150g/mであってもよい。各接着剤層は、同じ重量を有していてもよく、異なる重量を有していてもよい。
【0048】
吸音材の厚さは、吸音特性の発現、材料の施工性、省スペース化等の観点から、1~100mmとすることができ、2~50mmであってもよく、5~30mmであってもよい。
【0049】
JIS A 1405-1に準拠して測定される、吸音材の500~1000Hzにおける平均垂直入射吸音率は、低周波数領域における優れた吸音特性の観点から0.45以上とすることができ、0.5以上であってもよい。同様の観点から、吸音材の500~1000Hzにおける最大垂直入射吸音率は、0.65以上とすることができ、0.7以上であってもよい。
【0050】
<吸音材の製造方法>
吸音材は、各層を積層することにより製造することができる。吸音材は、上記のとおり接着剤層を備えることにより各層が接着された状態で用いられてもよいが、各層が接着されずに用いられてもよい。また、一部の層間のみに接着剤層が設けられてもよい。吸音材を構成する積層体は、筐体に収納された状態で用いられてもよい。
【0051】
<吸音材の用途>
上記吸音材は低周波数領域における吸音特性に優れるだけでなく、耐久性にも優れる。そのため、上記吸音材は、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、住宅等の建築物などの用途において好適に用いることができる。ここでいう低周波数領域とは、周波数が1000Hz以下の領域とすることができ、上記吸音材は、250~1000Hzの、特に500~1000Hzの周波数領域において優れた吸音特性を有する。
【0052】
<車両部材>
車両部材は上記の吸音材を備える。車両部材としては、例えば以下の態様が挙げられる。車両部材は自動車部材であってよい。
外装:車両用外装材の吸音部材である車両部材、車両用外装材。
外装としては、(車両用)アンダーカバー又はアンダープロテクター、防音カバー等が挙げられ、具体的にはエンジンアンダーカバー、フロアアンダーカバー、リアアンダーカバー、ミッションカバー、フェンダライナ/プロテクタ又はマッドガード等が挙げられる。
内装:車両用内装材の吸音部材である車両部材、車両用内装材。
内装としては、車両用サイレンサー、車両用防音体等が挙げられ、具体的には天井材(ルーフサイレンサー)、ダッシュサイレンサー、フロアサイレンサー、フロアカーペット、フードサイレンサー等が挙げられる。
その他:タイヤ用吸音材。
タイヤ用吸音材としては、車両用カバー、ケース等と上記の吸音材を組み合わせた吸音構造体が挙げられる。
【0053】
本実施形態の内容を以下に列記する。
保護層と、連通孔を有する第一基材層と、連通孔を有する第二基材層と、をこの順に備え、保護層の、下記式(I)で表される柔軟強靭値が1~75[MPa/μm]である、吸音材。
柔軟強靭値=(25℃における保護層の引張弾性率[MPa]×保護層のショアA硬度)/保護層厚さ[μm] ・・・(I)
保護層がエラストマを含む層である、上記の吸音材。
保護層が不織布である、上記の吸音材。
保護層と第一基材層との間に、樹脂層を更に備える、上記の吸音材。
樹脂層が、ポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドを含む、上記の吸音材。
樹脂層の少なくともいずれかの表面に、金属蒸着層を更に備える、上記の吸音材。
第一基材層及び第二基材層が、樹脂発泡体又は不織布である、上記の吸音材。
第一基材層の厚さが、第二基材層の厚さよりも薄い、上記の吸音材。
厚さが1~100mmである、上記の吸音材。
上記の吸音材を備える、車両部材。
【実施例
【0054】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(基材層の準備)
基材1:PET不織布(目付200g/m、厚さ3mm)
基材2:PET不織布(目付250g/m、厚さ7mm)
【0056】
(保護層の準備)
表1、表2及び表3に示す保護層を準備した。
厚さ:保護層を200mm×200mmに切り出し、厚さ測定器(デジタルシックネスゲージ JAN-257 測定子φ20mm 株式会社尾池製作所製)により測定した。測定箇所は中心と四隅の合計5箇所とし、その平均値を保護層の厚さとした。
引張弾性率:引張試験機(EZ-Test、株式会社島津製作所製)により測定した。20mm×50mmのサンプルを準備し、これを引張試験機を用いて、引張速度100mm/minで引っ張った際の25℃における最大弾性率を、上記引張弾性率とした。TD方向及びMD方向がある場合は、弾性率が低く出る方を採用した。測定回数は3回とし、その平均値を保護層の引張弾性率とした。
ショアA硬度:デューロメータ(タイプA)により測定した。20mm×50mmのサンプルを準備し、厚さが1mm以上となるようにサンプルを重ね、これに対しデューロメータで測定した硬度を、ショアA硬度とした。測定箇所は中心と四隅の合計5箇所とし、その平均値を保護層のショアA硬度とした。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
(樹脂層の準備)
以下の樹脂層を準備した。
両面アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(AlPET):厚さ12μm
【0061】
(接着剤層の準備)
以下の接着剤層を準備した。
両面テープ:昭和電工マテリアルズ株式会社、ハイボン11-652、厚さ0.12mm
【0062】
(吸音材の作製)
表4及び表5に示す構成を有する吸音材を作製した。各層の接着には両面テープを用いた。
【0063】
(吸音材の吸音特性評価)
作製した各吸音材の垂直入射吸音率を、以下に従って測定した。保護層側から音を入射した。500~1000Hzにおける垂直入射吸音率の平均値を平均吸音率として算出し、また垂直入射吸音率の最大値を最大吸音率とした。平均吸音率が0.45以上であり、かつ最大吸音率が0.65以上である場合、低周波数領域(500~1000Hz)における吸音特性に優れていると判断した。結果を表4及び表5に示す。
装置名:4206型インピーダンス管(ブリュエル・ケアー社)
測定方法:垂直入射吸音率(JIS A 1405-1に準拠)
測定範囲:50~1600Hz
【0064】
(吸音材の耐久性評価)
作製した各吸音材の耐久性(耐チッピング性)を評価した。評価には飛石試験機 JA400(スガ試験機株式会社製)を用い、7号砕石850gを0.4MPaの圧力で保護層に当てた。その後保護層表面の状態を目視にて確認し、以下の基準で耐久性を評価した。A又はB評価である場合、耐久性に優れていると判断した。結果を表4及び表5に示す。
A:穴あき、打痕なし。
B:穴あき無し、打痕あり。
C:穴あき有り(5箇所未満)。
D:穴あき有り(5箇所以上)。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【符号の説明】
【0067】
1…保護層、2…連通孔を有する第一基材層、3…連通孔を有する第二基材層、4…樹脂層、10,20…吸音材。
図1
図2