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特許7702275処理システム、監視セル及び処理システムの監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-25
(45)【発行日】2025-07-03
(54)【発明の名称】処理システム、監視セル及び処理システムの監視方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20250626BHJP
   B01D 65/10 20060101ALI20250626BHJP
   C02F 3/28 20230101ALI20250626BHJP
【FI】
C02F1/44 C
B01D65/10
C02F1/44 A
C02F3/28 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021087275
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2022180260
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】野口 真人
(72)【発明者】
【氏名】中野 淳
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-340245(JP,A)
【文献】特開2012-192367(JP,A)
【文献】特開2006-326534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44
C02F3/28-3/34
C02F11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物質を含有する処理対象物の処理を行う処理システムであって、
前記処理対象物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、
前記メタン発酵槽で生じた処理液を膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜モジュールと、
前記膜モジュールを形成する膜エレメントと同性能の膜エレメントを備え、前記膜エレメントの状態を透過液側から監視する監視セルと、
前記監視セルの前記膜エレメントへ処理負荷を付与する負荷付与手段と、を備えることを特徴とする、処理システム。
【請求項2】
前記監視セルは、前記膜エレメントの表面の色の変化を監視する監視手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記監視セルは、前記監視セル内の透過液を排出する透過液排出部を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の処理システム。
【請求項4】
有機物質を含有する処理対象物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、
前記メタン発酵槽で生じた処理液を膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜モジュールと、を備える処理システムに対して設けられる監視セルであって、
前記処理システムにおける前記膜モジュールを形成する膜エレメントと同性能の膜エレメントと、
前記膜エレメントへ処理負荷を付与する負荷付与手段と、を備え、
前記膜エレメントの状態を透過液側から監視することを特徴とする、監視セル。
【請求項5】
有機物質を含有する処理対象物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、
前記メタン発酵槽で生じた処理液を膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜モジュールと、を備える処理システムの監視方法であって、
前記処理システムにおける前記膜モジュールを形成する膜エレメントと同性能の膜エレメントを備えた監視セルを設け、
前記監視セルを介して、前記膜エレメントの状態を透過液側から監視する監視工程と、
前記監視セルの前記膜エレメントへ処理負荷を付与する負荷付与工程と、を含むことを特徴とする、処理システムの監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物質を含有する処理対象物の処理に係る処理システム、及び、この処理システムに設けられる監視セルに関するものである。更に詳しくは、本発明は、メタン発酵処理と膜分離処理を組み合わせた膜分離メタン発酵処理に関する処理システム、及び、この処理システムに設けられる監視セルに関するものである。
また、本発明は、有機物質を含有する処理対象物の処理に係る処理システムの監視方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、メタン発酵処理と膜分離処理を組み合わせた膜分離メタン発酵処理に関する処理システムの監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機性廃液や有機性廃棄物等、有機物質を含有する処理対象物を処理する技術としては、嫌気性微生物を用いた生物処理が広く行われている。特に、メタン発酵処理は、処理対象物の減量とともに、発生するメタンをエネルギーとして利用できることから有用性の高い技術として注目されている。
【0003】
また、生物処理(メタン発酵処理)後の処理液に含まれる嫌気性微生物を、処理液中から分離、回収する固液分離を行い、嫌気性微生物を多く含む固体分(濃縮液)を再度生物処理に供することも行われている。生物処理後の処理液に対する固液分離処理としては、遠心分離装置による遠心分離、沈殿槽による沈降分離、脱水装置による脱水のほか、膜による膜分離(膜濾過)が知られており、特に、膜分離とメタン発酵処理の組み合わせ(膜分離メタン発酵処理)は広く知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、メタン発酵槽と、メタン発酵槽の被処理液から濾液を分離する膜ろ過槽を備えた膜分離メタン発酵処理装置が記載されており、ろ過膜の目詰まりの抑制のための手段として、膜ろ過槽に供給される被処理液をメタン発酵槽の設定温度よりも高い温度に加温する加温手段や膜ろ過槽に設けられたろ過膜の洗浄手段を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-203176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
膜分離メタン発酵処理は、特許文献1にも記載されるように、メタン発酵処理後の処理液を膜分離に供するものである。そのため、メタン発酵処理に基づく固体分(メタン発酵汚泥)が膜表面や膜内部に付着して、膜分離における閉塞(ろ過膜の目詰まり)が生じ、膜分離における処理効率の低下が問題となる。
【0007】
特許文献1には、膜分離における閉塞が生じることを抑制するための手段が記載されているが、処理を継続していく上で、膜分離の閉塞自体を完全に抑制することは困難である。
また、膜分離メタン発酵処理では、メタン発酵処理を経た処理液が膜分離する対象となる。このため、膜分離する対象である処理液に含まれる固体分の性質や量は、常に均一となるものではない。
【0008】
このことから、膜分離メタン発酵処理における処理システムでは、膜モジュールの閉塞状態について、膜分離処理に供した時間のみで的確に判断することは困難である。このため、膜モジュールに対する洗浄や膜交換を定期的に行うことでは、膜モジュールの閉塞状態を適切に反映した作業とはならず、本来不要であったメンテナンスを行うことにつながってしまう。
また、膜分離メタン発酵処理における処理システムでは、膜モジュールに付着した固体分についてもその性質が均一とは限らない。このため、膜モジュールに対するメンテナンスにおいて、膜交換あるいは洗浄のどちらを行うべきか、また洗浄に係る作業内容はどのようなものにするべきか等、どのようなメンテナンスが適切であるかについての判断を行うことも困難である。
【0009】
したがって、膜分離メタン発酵処理においては、膜分離に用いる膜モジュールに対するメンテナンス作業の頻度や内容を適切に決定するために、処理環境下における膜モジュールの状態(実態)を的確に把握することが求められる。また、このとき、膜モジュールによる膜分離処理への影響を及ぼさない形で、膜モジュールの状態を把握することが望ましい。
【0010】
本発明の課題は、有機物質を含有する処理対象物の処理として、メタン発酵槽によるメタン発酵処理及び膜モジュールによる膜分離を行う処理システムにおいて、処理環境下における膜モジュールの状態について、膜分離処理への影響を与えない形での監視を可能とするとともに、膜モジュールの状態を簡便かつ的確に把握することが可能な処理システム、及び、処理システムに設けられる監視セル、並びに、処理システムの監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、メタン発酵処理と膜分離を行う処理システムに、膜モジュールを形成する膜エレメントと同性能の膜エレメントを備え、かつ膜エレメントの透過側から監視を行う監視セルを設けることで、処理環境下における膜モジュールの状態について、膜分離処理への影響を与えない形での監視を可能とするとともに、膜モジュールの状態を簡便かつ的確に把握することが可能となることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の処理システム、及び、この処理システムに設けられる監視セル、並びに、この処理システムに係る処理システムの監視方法である。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の処理システムは、有機物質を含有する処理対象物の処理を行う処理システムであって、処理対象物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、メタン発酵槽で生じた処理液を膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜モジュールと、膜モジュールを形成する膜エレメントと同性能の膜エレメントを備え、膜エレメントの状態を透過液側から監視する監視セルと、を備えることを特徴とする。
この処理システムによれば、メタン発酵処理と膜分離を行う処理システムにおいて、膜分離処理に供する膜モジュールとは別に、監視用膜(膜モジュールを形成する膜エレメントと同性能の膜エレメント)を備える監視セルを設けることで、膜モジュールと監視用膜が同じ処理環境下に置かれた状態とすることができる。これにより、監視用膜に対する監視が、処理環境下における膜モジュールの監視に相当することになるため、膜モジュール自体を直接監視する必要がなくなる。したがって、膜モジュールによる膜分離処理への影響を与えない形での監視が可能となる。
また、監視用膜の透過液側から監視を行うことで、本来、処理液中の固体分と直接接触しない環境下にある膜表面が監視対象となる。これにより、固体分の付着や堆積等の影響を受けることなく、膜の閉塞や劣化に起因する膜表面の変化を捉えることができる。したがって、膜モジュールの状態を簡便かつ的確に把握することが可能となる。
【0013】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、監視セルは、膜エレメントの表面の色の変化を監視する監視手段を備えるという特徴を有する。
膜分離メタン発酵処理において、メタン発酵槽で生じた処理液中には微細な固体分(メタン発酵汚泥)が含まれており、この固体分は一般的に有色である。このため、膜の閉塞や劣化に伴い、有色の固体分が膜内部に入り込むことで、透過液側の膜表面の色が変化してくることになる。
したがって、この特徴のように、監視用膜としての膜エレメントの表面の色の変化を監視する監視手段を設けることで、膜エレメントの状態を簡便かつ高精度で把握することが可能となる。
【0014】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、監視セルは、監視セル内の透過液を排出する透過液排出部を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、透過液が着色している場合等、透過液自体が監視における外乱となる場合において、監視セル内の透過液を排出し、外乱による影響を抑制した状態で、監視用膜としての膜エレメントを監視することが可能となる。これにより、膜エレメントの状態を簡便かつ高精度で把握することが可能となる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の監視セルは、有機物質を含有する処理対象物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、メタン発酵槽で生じた処理液を膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜モジュールと、を備える処理システムに対して設けられる監視セルであって、処理システムにおける膜モジュールを形成する膜エレメントと同性能の膜エレメントを備え、膜エレメントの状態を透過液側から監視することを特徴とする。
この監視セルによれば、メタン発酵処理と膜分離を行う処理システムに対し、膜分離処理に供する膜モジュールとは別に、膜モジュールと同じ処理環境下に置かれた状態の監視用膜(膜モジュールを形成する膜エレメントと同性能の膜エレメント)を設けることができる。これにより、監視用膜に対する監視が、処理環境下における膜モジュールの監視に相当することになるため、膜モジュール自体を直接監視する必要がなくなる。したがって、膜モジュールによる膜分離処理への影響を与えない形での監視が可能となる。
また、監視用膜の透過液側から監視を行うことで、本来、処理液中の固体分と直接接触しない環境下にある膜表面が監視対象となる。これにより、固体分の付着や堆積等の影響を受けることなく、膜の閉塞や劣化に起因する膜表面の変化を捉えることができる。したがって、膜モジュールの状態を簡便かつ的確に把握することが可能となる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の処理システムの監視方法は、有機物質を含有する処理対象物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、メタン発酵槽で生じた処理液を膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜モジュールと、を備える処理システムの監視方法であって、処理システムにおける前記膜モジュールを形成する膜エレメントと同性能の膜エレメントを備えた監視セルを設け、監視セルを介して、膜エレメントの状態を透過液側から監視する監視工程を含むことを特徴とする。
この処理システムの監視方法によれば、メタン発酵処理と膜分離を行う処理システムにおいて、膜分離処理に供する膜モジュールとは別に、監視用膜(膜モジュールを形成する膜エレメントと同性能の膜エレメント)を備える監視セルを設けることで、膜モジュールと監視用膜が同じ処理環境下に置かれた状態とすることができる。これにより、監視用膜に対する監視が、処理環境下における膜モジュールの監視に相当することになるため、膜モジュール自体を直接監視する必要がなくなる。したがって、膜モジュールによる膜分離処理への影響を与えない形での監視が可能となる。
また、監視用膜の透過液側から監視を行うことで、本来、処理液中の固体分と直接接触しない環境下にある膜表面が監視対象となる。これにより、固体分の付着や堆積等の影響を受けることなく、膜の閉塞や劣化に起因する膜表面の変化を捉えることができる。したがって、膜モジュールの状態を簡便かつ的確に把握することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、有機物質を含有する処理対象物の処理として、メタン発酵槽によるメタン発酵処理及び膜モジュールによる膜分離を行う処理システムにおいて、処理環境下における膜モジュールの状態について、膜分離処理への影響を与えない形での監視を可能とするとともに、膜モジュールの状態を簡便かつ的確に把握することが可能な処理システム、及び、処理システムに設けられる監視セル、並びに、処理システムの監視方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施態様に係る処理システムの構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様に係る処理システムにおける監視セルの構造を示す概略説明図である。
図3】本発明の第2の実施態様に係る処理システムにおける監視セルの構造を示す概略説明図である。
図4】本発明の第2の実施態様に係る処理システムにおける監視セルの別態様を示す概略説明図である。
図5】本発明の第3の実施態様に係る処理システムにおける監視セルの構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の処理システムは、有機物質を含有する処理対象物の処理を行う処理システムであり、特にメタン発酵処理と膜分離処理を組み合わせた膜分離メタン発酵処理に関する処理システムである。
そして、本発明の処理システムは、膜分離処理に用いる膜モジュールの状態について、処理環境下、かつ膜分離処理への影響を与えない形での監視を行い、膜モジュールの状態を簡便かつ的確に把握することができるものである。
【0020】
また、本発明の監視セル及び処理システムの監視方法は、本発明の処理システムにおける膜モジュールの監視に関するものである。
【0021】
本発明における処理対象物としては、例えば、生ごみ、食品廃棄物、草木、汚泥等の固体分を含む有機性排水のほか、家畜糞尿、余剰汚泥などの有機性廃液や有機性廃棄物が挙げられる。なお、本発明における処理対象物はこれに限定されるものではなく、嫌気性下でメタン発酵処理が可能な有機物質を含むものであれば、本発明の処理対象物となる。
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る処理システム、監視セル及び処理システムの監視方法に係る実施態様を詳細に説明する。また、本発明に係る処理システムの監視方法の説明については、本発明に係る処理システム及び監視セルの構成及び動作に係る説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する処理システム及び監視セルについては、本発明に係る処理システム及び監視セルを説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。また、本実施態様の処理システムの監視方法は、以下の処理システムに係る監視方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0023】
〔第1の実施態様〕
[処理システム]
図1は、本発明の第1の実施態様における処理システムの構造を示す概略説明図である。また、図2は、本実施態様の処理システムにおける監視セルの構造に係る概略説明図である。なお、図2は、図1における監視セル近傍の拡大図であり、メタン発酵槽1や、膜モジュール2a及び2bに係る構造は図示を省略している。
【0024】
本発明の第1の実施態様に係る処理システム100Aは、処理対象物Sに対し、メタン発酵処理及び膜分離処理を行うものであり、図1に示すように、ラインL1を介して供給される処理対象物Sをメタン発酵処理するメタン発酵槽1と、メタン発酵槽1で生じた処理液Wを膜分離し、濃縮液F1と透過液F2を得る膜モジュール2と、処理液Wを膜モジュール2に送液し、かつ濃縮液F1をメタン発酵槽1に返送する循環ポンプ3と、を備えている。
また、本実施態様に係る処理システム100Aは、図1及び図2に示すように、監視セル4Aを備えている。なお、後述するように、監視セル4Aは、膜モジュール2を形成する膜エレメントと同性能の膜エレメント40を備えるものである。
【0025】
なお、本実施態様に係る処理システム100Aは、図1に示した構成以外の設備を設けるものとしてもよい。例えば、メタン発酵槽1の前段に、処理対象物Sの濃縮を行う濃縮槽、処理対象物Sの可溶化を行う可溶化槽、メタン発酵槽1に供給する処理対象物Sの供給量を調整するための調整槽などを設けるものとしてもよい。また、膜モジュール2の後段に、透過液F2の処理を行う水処理設備を設けるものとしてもよい。また、メタン発酵槽1から発生するバイオガス(メタンガス)を、ラインL2を介して回収し、このバイオガスを利用するための脱硫装置及びガス貯留タンクを含むバイオガス利用設備を設けるものとしてもよい。
【0026】
図1に基づき、本実施態様における処理システム100Aによる処理対象物の処理について、概要を説明する。
まず、ラインL1を介して、処理対象物Sがメタン発酵槽1に供給される。そして、メタン発酵槽1内で処理対象物Sに対してメタン発酵処理が行われる。そして、メタン発酵槽1で処理された処理対象物Sは、処理液Wとなり、膜モジュール2側へ送液される。このとき、循環ポンプ3及び配管31a~31d、32a~32cを介し、処理液Wは、複数の膜モジュール2を経由して膜分離され、濃縮液F1と透過液F2を得る。透過液F2は系外に排出されるが、濃縮液F1はメタン発酵槽1に返送される。
以上が、本実施態様における処理システム100Aにおける膜分離メタン発酵処理に係る流れとなる。
【0027】
そして、本実施態様における処理システム100Aでは、膜分離に用いる膜モジュール2の状態を把握するために、監視セル4Aを設けている。この監視セル4Aは、図2に示すように、膜分離処理に用いる膜モジュール2を形成する膜エレメントと同性能の膜エレメント40を備えている。また、監視セル4Aは、図1に示すように、膜モジュール2の一つ(図1では膜モジュール2c)に対し、並列して設けられている。これにより、監視セル4A内の膜エレメント40は、膜モジュール2(膜モジュール2c)と同じ処理環境下に置かれた状態となる。すなわち、監視セル4A内の膜エレメント40に対する監視が、処理環境下における膜モジュール2の監視に相当することになるため、膜モジュール2自体を直接監視する必要がなくなる。したがって、膜モジュール2による膜分離処理への影響を与えない形での監視を行うことが可能となる。
【0028】
以下、本実施態様の処理システム100Aにおける各構成について説明する。
【0029】
(メタン発酵槽)
メタン発酵槽1は、処理対象物Sを嫌気性微生物(メタン菌)によりメタン発酵処理するための処理槽であり、嫌気性を維持するために密閉容器とすることが望ましく、それ以外の具体的な構造については特に限定されない。
メタン発酵槽1の構造としては、例えば、処理対象物Sに応じて適宜選択することが好ましい。より具体的には、液体成分を多く含む有機性排水や有機性廃液の嫌気性処理に利用される処理槽の構造や、固体成分を多く含む有機性廃棄物の嫌気性処理に利用される処理槽の構造等を適宜選択し、使用することができる。
なお、本実施態様の処理システム100Aは、メタン発酵槽1で生じた処理液Wを膜モジュール2に供給して膜分離を行うものである。このため、メタン発酵槽1でグラニュールを利用したメタン発酵処理を行うと、メタン発酵槽1で生じる処理液Wに、グラニュール等、粒子径の大きな固体分が混入し、メタン発酵槽1の後段に配置された膜モジュール2の閉塞を進行させてしまうおそれがある。したがって、本実施態様におけるメタン発酵槽1は、完全混合型メタン発酵槽として公知の構造からなるものを用い、メタン発酵処理を行うことが好ましい。
【0030】
本実施態様におけるメタン発酵槽1は、内部を撹拌するために撹拌手段10を設けるものとすることが好ましい。
撹拌手段10の具体的な構成としては、例えば、図1に示すように回転軸に設置された撹拌羽根11a及び駆動部11bを備える撹拌機11のほか、メタン発酵槽1内の処理液Wを循環させる撹拌ポンプ及び循環用配管からなるものなどが挙げられる。
【0031】
メタン発酵槽1の具体的な構造については、特に限定されず、円柱形、角柱形、亀甲形、そろばん玉形、卵形などが挙げられる。なお、メタン発酵槽1の構造に係る一例としては、メタン発酵槽1の底部に傾斜を有することが好ましい。これにより、固形物残渣の回収を容易とするとともに、メタン発酵槽1底部における撹拌効率も向上する。
また、メタン発酵槽1に係るその他の構造に係る一例としては、例えば、撹拌手段10による撹拌効率を上げるための内部構造等をさらに備えるものなどが挙げられる。
【0032】
本実施態様におけるメタン発酵槽1で処理された処理対象物Sは、処理液Wとして、膜モジュール2へと送液される。
【0033】
(膜モジュール)
膜モジュール2は、メタン発酵槽1で生じた処理液Wに対し、膜による固液分離(膜分離)を行い、濃縮液F1と透過液F2とを得るものである。
また、本実施態様における膜モジュール2の個数については特に限定されない。例えば、図1に示すように、複数個の膜モジュール2a、2b、2cを直列に配置するものとし、濃縮液F1を順次膜モジュール2に供給することで、処理液W中の固体分(メタン発酵汚泥)の濃縮率を高めるものとすることが挙げられる。なお、膜モジュール2の配置(配列)についても特に限定されない。例えば、複数の膜モジュール2を並列につなぐ配列を形成するものとしてもよく、複数の膜モジュール2を直列につないだものをユニット化し、このユニットを複数並列につなぐ配列を形成するものとしてもよい。
【0034】
また、図1に示すように、濃縮液F1は、循環ポンプ3及び配管31a~31dを介し、メタン発酵槽1に返送される。一方、透過液F2は、配管32a~32cを介し、系外に排出される。なお、上述したように、系外に排出された透過液F2については、他の水処理設備により、さらに処理が行われるものとしてもよい。
【0035】
ここで、膜モジュール2に送液される処理液Wは、メタン発酵槽1における嫌気性微生物(メタン菌)を含んでいる。つまり、メタン発酵槽1から処理液Wを排出させ、膜モジュール2に送液することに伴い、嫌気性微生物(メタン菌)もメタン発酵槽1から排出されてしまう。
一方、図1に示すように、本実施態様における処理システム100Aでは、複数の膜モジュール2a、2b、2cを備え、循環ポンプ3及び配管31a~31dを介し、処理液Wを循環させ、濃縮液F1としてメタン発酵槽1に返送することで、メタン発酵槽1から流出した嫌気性微生物(メタン菌)が、濃縮液F1として回収され、メタン発酵槽1に返送されることになる。これにより、メタン発酵槽1から嫌気性微生物が流出することを抑止し、メタン発酵槽1内の嫌気性微生物濃度を維持することが可能となる。
【0036】
膜モジュール2としては、処理液Wの膜分離を行い、嫌気性微生物(メタン菌)を多く含む固体分(メタン発酵汚泥)を含有する濃縮液F1と、固体分が除去された透過液F2を得ることができるものであればよい。
膜モジュール2の具体的な例としては、チューブラー型、中空糸型、スパイラル型、浸漬型平膜等が挙げられる。本実施態様における膜モジュール2としては、図1に示すように、メタン発酵槽1外に設けた槽外型と呼ばれるものを用いることが好ましい。
また、膜モジュール2としてはチューブラー型を用いることが特に好ましい。膜面線速を高めて膜面近くに乱流を起こし、可逆的ファウリングを抑制するという、いわゆるクロスフロー方式による膜分離を行うことができる。また、チューブラー型においては、処理液Wを通過させる流路が、中空糸型やスパイラル型と比較して大きいことが知られている。このため、送液する処理液Wの物性としてSS濃度や粘度の高いものであっても、膜モジュール2の閉塞が生じにくいという利点を有する。
【0037】
本実施態様における膜モジュール2としては、図2に示すように、チューブラー型の膜エレメント20を複数備えるものが挙げられる。ここで、膜エレメント20は、UF膜等の膜を支持体に一体化したものを指し、膜モジュール2は、膜エレメント20の集合体を指すものである。
また、本実施態様における膜エレメント20は、処理液W中の固体分(メタン発酵汚泥)のサイズを鑑み、UF膜、MF膜を備えるものとすることが好ましい。これにより、膜モジュール2として繰り返して使用することが可能となり、メンテナンス作業も容易となる。
【0038】
なお、膜モジュール2に対しては、逆洗用のラインを別途設けるものとしてもよい(不図示)。また、逆洗における条件(使用する薬剤等)については、後述する監視セル4による監視結果を基に決定するものとしてもよい。
【0039】
(循環ポンプ)
循環ポンプ3は、メタン発酵槽1で生じた処理液Wを膜モジュール2に送液し、かつ、濃縮液F1をメタン発酵槽1に返送するためのものである。これにより、メタン発酵槽1から排出された処理液W中に含まれる嫌気性微生物(メタン菌)は、濃縮液F1としてメタン発酵槽1に返送されるため、メタン発酵槽1における嫌気性微生物の流出を抑制することが可能となる。
なお、図1では、循環ポンプ3は、メタン発酵槽1で生じた処理液Wを、配管31aを介して膜モジュール2(膜モジュール2a)に送液し、かつ、濃縮液F1を、配管31b~31dを介して膜モジュール2(膜モジュール2b及び2c)を順次通過させ、メタン発酵槽1に返送するものを示している。
【0040】
(監視セル)
監視セル4Aは、膜モジュール2の状態を監視するためのものである。
本実施態様における監視セル4Aは、図1及び図2に示すように、膜モジュール2を直接監視するものではなく、監視セル4A内に、膜モジュール2を形成する膜エレメント20と同性能の膜エレメント40を備え、この膜エレメント40の監視を行うものである。
また、図1に示すように、監視セル4Aは、膜モジュール2(膜モジュール2c)に対して並列となるように設けられており、監視セル4Aと膜モジュール2cには、配管31cを介し、同じ処理液W(膜モジュール2bからの濃縮液F1)が供給されることになる。これにより、監視セル4A内に設けられた膜エレメント40に対する監視が、処理環境下における膜モジュール2の監視に相当することになるため、膜モジュール2自体を直接監視する必要がなくなる。したがって、膜モジュール2による膜分離処理への影響を与えない形での監視が可能となる。
【0041】
また、監視セル4Aは、図2に示すように、膜エレメント40の透過液側から監視を行うものである。これにより、本来、処理液W中の固体分と直接接触しない環境下にある膜表面を監視対象とすることができる。したがって、固体分の付着や堆積等の影響を受けることなく、膜エレメント40の閉塞や劣化に起因する膜表面の変化を捉えることができ、併せて膜モジュール2の閉塞や劣化等に係る傾向を精度よく把握することが可能となる。
【0042】
監視セル4Aは、膜モジュール2の状態を間接的に監視することができるように配置されるものであればよく、監視セル4Aの配置箇所は特に限定されないが、図1及び図2に示すように、膜モジュール2が複数個の膜モジュール2a、2b、2cを直列に配置するものである場合、最下流に相当する膜モジュール2cに対し、監視セル4Aを並列に設けることが好ましい。これにより、処理液W中の固体分が最も多く、膜モジュール2内で最も負荷の大きい箇所における膜モジュール2cに係る監視を行うことができ、膜モジュール2全体が閉塞・劣化する前に、適切な対応を行うことが可能となる。また、これにより、処理システム100Aへの影響を少なくすることが可能となる。
【0043】
図2に基づき、監視セル4A及びその近傍に係る構造の一例について詳細に説明する。
図2に示すように、監視セル4A内部には、膜エレメント40を備えており、配管31cから分岐した配管41aを介して、処理液W(膜モジュール2bからの濃縮液F1)が供給され、配管41b及び41cを介して濃縮液F1及び透過液F2が監視セル4A外に排出される。このとき、図2に示すように、監視セル4Aから排出された濃縮液F1及び透過液F2は、それぞれ膜モジュール2cによる膜分離により排出される濃縮液F1のライン(配管31d)と透過液F2のライン(配管32c)に導入されるように、配管41b及び41cを接続することが挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、配管41bをメタン発酵槽1に接続することや、配管41cを直接他の水処理設備に接続することなどが挙げられる。
なお、図2に示すように、配管41a~41cにはそれぞれ開閉弁V1~V3を備え、監視セル4Aを処理システム100Aの処理の流れから切り離すことができるようにするものとしてもよい。
【0044】
監視セル4Aにおいて、膜エレメント40の透過液側から監視を行うための構造及び監視に係る手段については、特に限定されない。
例えば、監視セル4A内に設けられる膜エレメント40としては、膜エレメント40表面を直接監視するために、膜エレメント40を構成する支持体(外装チューブ)として、透明な部材からなるものとすることが挙げられる。
このとき、膜エレメント40としては、膜モジュール2と同様、チューブラー型とし、図2に示すように、配管41aを介して管状の膜エレメント40の内側に処理液Wが供給されて膜分離を行い、膜エレメント40の内側から濃縮液F1が排出され、膜エレメント40の外側に透過液F2が排出される構造とすることが好ましい。これにより、膜エレメント40の透過液側から容易に監視を行うことが可能となる。
また、膜エレメント40を配置する監視セル4A自体も透明な部材とし、監視セル4Aの外側からの監視を可能とする構造とすることが挙げられる。
【0045】
監視セル4Aに対する監視に係る手段については、膜エレメント40の表面状態を監視できるものであればよく、特に限定されない。
例えば、図2に示すように、膜エレメント40表面の色の変化を監視することができる監視手段42を設けることが好ましい。
【0046】
本実施態様における処理システム100Aでは、メタン発酵槽1で生じた処理液W中には微細な固体分(メタン発酵汚泥)が含まれており、この固体分は一般的に有色である。このため、膜エレメント40の閉塞や劣化に伴い、有色の固体分が膜内部に入り込むことで、透過液側の膜表面の色が変化してくることになる。したがって、監視手段42により、膜エレメント40表面の色の変化を監視することで、膜エレメント40の状態を簡便かつ高精度で把握することが可能となる。
【0047】
監視手段42としては、カメラ、ビデオなどの画像取得装置のほか、色識別センサなどのセンサが挙げられる。これにより、膜エレメント40の表面状態に係る情報をデータとして取得、保存することが可能となり、このデータの蓄積及び比較演算を行うことで、膜エレメント40の状態、すなわち、膜モジュール2の状態の把握及び判断に係る精度をより一層高めることが可能となる。
ここで、データとして蓄積される膜エレメント40の表面状態に係る情報を用いた比較演算の一例としては、ろ過時間の経過による表面の色の変化、新品の膜エレメント40表面の色との変化、処理システム100Aの運転状態から膜分離が正常に行われていると判断される際における色との変化などを求めることが挙げられる。
【0048】
なお、監視セル4Aに係る構成は、本発明に係る監視セルとして独立したものとすることができる。この監視セルは、既設の処理システム、特に、有機物質を含有する処理対象物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、メタン発酵槽で生じた処理液を膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜モジュールと、を備える処理システムに適用することができる。これにより、処理システム全体を更新することなく、簡素な取り付け作業によって、本発明の処理システム及び処理システムの監視方法を提供することができる。
【0049】
上述したように、本実施態様における監視セル4A及び監視手段42により、処理システム100A内に組み込まれた膜エレメント40の状態を簡便かつ高精度で把握することができる。すなわち、処理環境下における膜モジュール2の状態を簡便かつ高精度で把握することが可能となる。
そして、監視セル4A及び監視手段42によって把握した膜モジュール2の状態を基に、メンテナンス作業の内容(洗浄あるいは膜交換)や、メンテナンスの頻度及びタイミングを適切に判断し、実行することが可能となる。
【0050】
なお、膜モジュール2に対するメンテナンスとして洗浄を行う場合、監視セル4Aを用いて、効果的な洗浄についての情報を得るものとしてもよい。例えば、図1及び図2に示した処理システム100Aにおいて、開閉弁V1~V3を全て閉じ、処理システム100Aから監視セル4Aを独立させた状態で、監視セル4Aに対してラインL3及びラインL4を介して洗浄用薬液を導入し、一定時間浸漬後、洗浄用薬液を排出し、監視手段42により膜エレメント40表面に係るデータを取得することが挙げられる。これにより、洗浄用薬液による洗浄についての情報を得るとともに、洗浄効果を評価することが可能となる。また、この評価に基づき、膜モジュール2の効果的な洗浄に係る洗浄用薬液の決定や、膜モジュール2の効果的な洗浄に係るその他の条件に関して、有益な情報を得ることが可能となる。
【0051】
〔第2の実施態様〕
図3は、本発明の第2の実施態様に係る処理システムにおける監視セルの構造を示す概略説明図である。
本発明の第2の実施態様における処理システム100Bは、第1の実施態様における監視セル4Aに代えて、透過液を排出する透過液排出部43を有する監視セル4Bとするものである。なお、本実施態様における処理システム100Bの構成のうち、第1の実施態様の処理システム100Aの構成と同じものについては、説明及び図示の一部を省略する。
【0052】
本実施態様における監視セル4Bは、膜エレメント40から排出される透過液F2を、監視セル4Bから排出するための透過液排出部43を有するものである。
処理液Wの種類によっては、膜分離した際の透過液F2が着色したものとなることがある。この場合、透過液F2自体が監視における外乱となって、監視セル4Bの外部から監視手段42等による監視を行うことが困難となる。
このため、本実施態様の監視セル4Bにおいては、透過液排出部43によって透過液F2を排出することで、外乱による影響を抑制した状態で、膜エレメント40を監視することが可能となる。これにより、透過液F2の性質によらず、膜エレメント40の状態を簡便かつ高精度で把握することが可能となる。
【0053】
透過液排出部43としては、図3に示すように、監視セル4Bに対し、排水弁V4を備える配管43aと、開放弁V5を備える配管43bを接続することが挙げられる。これにより、排水弁V4及び開放弁V5の両方を開とすることで、監視セル4B内の透過液F2を速やかに排出することができる。なお、透過液排出部43を作動させるタイミングは特に限定されない。例えば、透過液排出部43を定期的に作動させ、監視を行うものとしてもよく、常時作動させて監視を行うものとしてもよい。
また、透過液排出部43としては、監視セル4B内の透過液F2を排出することができるものであればよく、例えば、開放弁V5を備える配管43bについては、配管41cに接続するものとしてもよい。
【0054】
透過液排出部43により、監視セル4B内の透過液F2を排出する場合、簡便な手段で膜エレメント40の表面に係る監視を実行することができる。なお、この場合、監視セル4Bに対する処理液Wの供給を停止することが望ましい。
【0055】
一方、本実施態様における監視セル4Bの別の態様としては、透過液排出部43以外に、透過液を水(純水)で置換するための置換水供給部44を設けるものとすることが挙げられる。
図4は、本実施態様における監視セル4Bの別態様を示す概略説明図である。
図4に示すように、置換水供給部44としては、貯水槽44a、配管44b、給水弁V6を備えるものが挙げられる。また、図4に示すように、このとき、透過液排出部43としては、監視セル4Bに対し、排水弁V4を備える配管43aを接続する一方、配管41c上には、開放弁V5を備える配管43bを接続するものが挙げられる。
そして、排水弁V4と開放弁V5の両方を開とすることで、監視セル4B内の透過液F2を速やかに排出し、貯水槽44a、配管44b、給水弁V6を介して、貯水槽44a内の置換水(純水)を監視セル4Bに供給するように操作することが挙げられる。これにより、監視セル4B内が透明な水(純水)に置き換わるため、透過液F2による外乱の影響を受けることなく、かつ、監視セル4Bへの処理液Wの供給を止めることなく、連続した監視を行うことが可能となる。
なお、置換水供給部44は、透過液排出部43の構成と一体化するものであってもよい。例えば、配管44b及び給水弁V6を設ける代わりに、監視セル4Bに接続した開放弁V5を備える配管43bに対し、貯水槽44aを設け、開放弁V5及び排水弁V4を開放することで、透過液の排出と置換水の供給を同時に行うものとしてもよい。
【0056】
〔第3の実施態様〕
図5は、本発明の第3の実施態様に係る処理システムにおける監視セルの構造を示す概略説明図である。
本発明の第3の実施態様における処理システム100Cは、第1の実施態様における監視セル4Aに代えて、膜エレメント40への処理負荷を付与する負荷付与手段45を有する監視セル4Cとするものである。なお、本実施態様における処理システム100Cの構成のうち、第1の実施態様の処理システム100Aの構成と同じものについては、説明及び図示の一部を省略する。
【0057】
本実施態様における監視セル4Cは、負荷付与手段に45より、膜モジュール2(図5では、膜モジュール2c)よりも処理負荷がかかる状態とするものである。これにより、膜モジュール2よりも早く、膜エレメント40での膜の状態変化が起こるようにし、膜モジュール2における閉塞や劣化の兆候を早期に予測し、早期対応を可能とするものである。
【0058】
負荷付与手段45としては、図5に示すように、監視セル4Cへ処理液Wを供給する配管上に流量調整機構45aを設け、膜エレメント20の1本当たりの流量より小さい流量で供給することが挙げられる。
また、負荷付与手段45としては、流量調整機構45aのように、負荷を付与するための機構を別途設けるものに限定されない。負荷付与手段45の別の例としては、処理液W中の固体分が最も多くなる箇所(図5における最下流の膜モジュール2c)に対して監視セル4Cを配置することや、処理液Wの供給における圧力(水圧)が最も高くなる箇所に対して監視セル4Cを配置することなどが挙げられる。
さらに、負荷付与手段45としては、流量調整機構45aのような負荷付与のための機構を設けることと併せて、監視セル4Cの配置設定を行うものとしてもよい。
【0059】
なお、上述した実施態様は処理システム、監視セル及び処理システムの監視方法の一例を示すものである。本発明に係る処理システム、監視セル及び処理システムの監視方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る処理システム、監視セル及び処理システムの監視方法を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の処理システムは、有機性廃液や有機性廃棄物等、有機物質を含有する処理対象物に対する処理に利用される。特に、メタン発酵処理及び膜分離による膜分離メタン発酵処理に係る処理に好適に利用される。
また、本発明の監視セル及び処理システムの監視方法は、メタン発酵処理及び膜分離による膜分離メタン発酵処理に係る処理システムの監視において、好適に利用される。
【符号の説明】
【0061】
100A,100B,100C 処理システム、1 メタン発酵槽、10 撹拌手段、11 撹拌機、11a 撹拌羽根、11b 駆動部、2,2a,2b,2c 膜モジュール、20 膜エレメント、3 循環ポンプ、31a~31d 配管、32a~32c 配管、4A,4B,4C 監視セル、40 膜エレメント、41a~41c 配管、42 監視手段、43 透過液排出部、43a,43b 配管、44 置換水供給部、44a 貯水槽、44b 配管、45 負荷付与手段、45a 流量調整機構、F1 濃縮液、F2 透過液、L1~L4 ライン、S 処理対象物、V1~V6 弁、W 処理液
図1
図2
図3
図4
図5