(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-25
(45)【発行日】2025-07-03
(54)【発明の名称】半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20250626BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20250626BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 M
H01L21/56 R
H01L23/12 501P
(21)【出願番号】P 2021567736
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020049013
(87)【国際公開番号】W WO2021132678
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2019239012
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 智則
(72)【発明者】
【氏名】根本 拓
(72)【発明者】
【氏名】田村 桜子
(72)【発明者】
【氏名】森下 友尭
(72)【発明者】
【氏名】四宮 圭亮
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147395(JP,A)
【文献】特開2012-169484(JP,A)
【文献】特開2019-050261(JP,A)
【文献】特開2001-176899(JP,A)
【文献】特開2021-002625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/56
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(S1)~(S4)をこの順で含み、
・工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの前記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
・工程(S2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一硬化性樹脂(x1)を押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を第一硬化性樹脂(x1)で被覆すると共に、前記半導体チップ作製用ウエハに形成されている前記溝部に前記第一硬化性樹脂(x1)を埋め込む工程
・工程(S3):前記第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
・工程(S4):前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを前記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも前記バンプ形成面及び側面が前記第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップを得る工程
さらに、前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前において、下記工程(S-BG)を含む、半導体チップの製造方法であって、
・工程(S-BG):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削する工程
前記工程(S2)は、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一支持シート(Y1)と前記第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)とが積層された積層構造を有する第一積層体(α1)を、前記層(X1)を貼付面として押圧して貼付することで実施され、
前記工程(S-BG)は、前記第一積層体(α1)を貼付した状態で前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削した後に、前記第一積層体(α1)から前記第一支持シート(Y1)を剥離することにより実施され、
前記工程(S4)は、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)のうち前記溝部に形成されている部分を、前記分割予定ラインに沿って切断することにより実施される、半導体チップの製造方法。
【請求項2】
下記工程(S1)~(S4)をこの順で含み、
・工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの前記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
・工程(S2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一硬化性樹脂(x1)を押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を第一硬化性樹脂(x1)で被覆すると共に、前記半導体チップ作製用ウエハに形成されている前記溝部に前記第一硬化性樹脂(x1)を埋め込む工程
・工程(S3):前記第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
・工程(S4):前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを前記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも前記バンプ形成面及び側面が前記第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップを得る工程
さらに、前記工程(S3)の後で且つ前記工程(S4)の前において、下記工程(S-BG)を含む、半導体チップの製造方法であって、
・工程(S-BG):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削する工程
前記工程(S2)は、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一支持シート(Y1)と前記第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)とが積層された積層構造を有する第一積層体(α1)を、前記層(X1)を貼付面として押圧して貼付することで実施され、
前記工程(S3)を、前記第一積層体(α1)から前記第一支持シート(Y1)を剥離することなく実施し、
前記工程(S-BG)は、前記第一積層体(α1)を貼付した状態で前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削した後に、前記第一積層体(α1)から前記第一支持シート(Y1)を剥離することにより実施され、
前記工程(S4)は、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)のうち前記溝部に形成されている部分を、前記分割予定ラインに沿って切断することにより実施される、半導体チップの製造方法。
【請求項3】
下記工程(S1)~(S4)をこの順で含み、
・工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの前記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
・工程(S2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一硬化性樹脂(x1)を押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を第一硬化性樹脂(x1)で被覆すると共に、前記半導体チップ作製用ウエハに形成されている前記溝部に前記第一硬化性樹脂(x1)を埋め込む工程
・工程(S3):前記第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
・工程(S4):前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを前記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも前記バンプ形成面及び側面が前記第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップを得る工程
さらに、前記工程(S3)の後で且つ前記工程(S4)の前において、下記工程(S-BG)を含む、半導体チップの製造方法であって、
・工程(S-BG):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削する工程
前記工程(S2)は、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一支持シート(Y1)と前記第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)とが積層された積層構造を有する第一積層体(α1)を、前記層(X1)を貼付面として押圧して貼付することで実施され、
前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前に、前記第一積層体(α1)から前記第一支持シート(Y1)を剥離し、
前記工程(S-BG)は、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)の表面にバックグラインドシート(b-BG)を貼付し、前記バックグラインドシート(b-BG)を貼付した状態で前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削した後、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハから前記バックグラインドシート(b-BG)を剥離することにより実施され、
前記工程(S4)は、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)のうち前記溝部に形成されている部分を、前記分割予定ラインに沿って切断することにより実施される、半導体チップの製造方法。
【請求項4】
下記工程(S1)~(S4)をこの順で含み、
・工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの前記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
・工程(S2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一硬化性樹脂(x1)を押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を第一硬化性樹脂(x1)で被覆すると共に、前記半導体チップ作製用ウエハに形成されている前記溝部に前記第一硬化性樹脂(x1)を埋め込む工程
・工程(S3):前記第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
・工程(S4):前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを前記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも前記バンプ形成面及び側面が前記第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップを得る工程
さらに、前記工程(S4)において、下記工程(S-BG)を含む、半導体チップの製造方法であって、
・工程(S-BG):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削する工程
前記工程(S2)は、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一支持シート(Y1)と前記第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)とが積層された積層構造を有する第一積層体(α1)を、前記層(X1)を貼付面として押圧して貼付することで実施され、
前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前に、前記第一積層体(α1)から前記第一支持シート(Y1)を剥離し、
前記工程(S4)は、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)のうち前記溝部に形成されている部分に、前記分割予定ラインに沿って切り込みを入れるか、又は前記分割予定ラインに沿って改質領域を形成した後、前記工程(S-BG)として、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)の表面にバックグラインドシート(b-BG)を貼付して、前記バックグラインドシート(b-BG)を貼付した状態で前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削することにより実施される、半導体チップの製造方法。
【請求項5】
さらに、下記工程(T)を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
・工程(T):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面に、第二硬化樹脂膜(r2)を形成する工程
【請求項6】
さらに、下記工程(U)を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
・工程(U):前記バンプの頂部を覆う前記第一硬化樹脂膜(r1)、又は前記バンプの頂部の一部に付着した前記第一硬化樹脂膜(r1)を除去して、前記バンプの頂部を露出させる工程
【請求項7】
前記工程(U)が、プラズマエッチング処理により実施される、請求項
6に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項8】
温度90℃、周波数1Hzの条件で、前記層(X1)の試験片に400%のひずみを発生させて、前記層(X1)の試験片のせん断弾性率G’を測定するひずみ分散測定を行ったときの、せん断弾性率G’が、5.0×10Pa~1.0×10
6Paである、請求項1~
7のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項9】
前記層(X1)の厚さが、10μm以上200μm以下である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項10】
前記溝部の幅が、10μm~2000μmである、請求項1~
9のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項11】
前記溝部の深さが、30μm~700μmである、請求項1~
10のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項12】
前記第一硬化樹脂膜(r1)が透明である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの製造方法に関する。更に詳述すると、本発明は、保護膜として硬化樹脂膜が設けられている半導体チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面にバンプを備える半導体チップと、当該半導体チップ搭載用の基板とを、当該半導体チップの回路面と当該基板とが対向するように積層することによって、当該半導体チップを当該基板上に搭載する。
なお、当該半導体チップは、通常、回路面にバンプを備える半導体ウエハを個片化して得られる。
【0003】
バンプを備える半導体ウエハには、バンプと半導体ウエハとの接合部分(以下、「バンプネック」ともいう)を保護する目的で、保護膜が設けられることがある。
例えば、特許文献1及び特許文献2では、支持基材と、粘着剤層と、熱硬化性樹脂層とがこの順で積層された積層体を、熱硬化性樹脂層を貼り合わせ面にして、バンプを備える半導体ウエハのバンプ形成面に押圧して貼付した後、当該熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させることで保護膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-092594号公報
【文献】特開2012-169484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器などのIC組込み製品の小型化及び薄型化が進むにつれ、半導体チップの薄型化もさらに要求されつつある。しかしながら、半導体チップが薄くなると、半導体チップの強度が低下してしまう。そのため、例えば、半導体チップを搬送したり、半導体チップをパッケージ化する後工程を実施したりする際に、半導体チップが破損しやすくなるという問題がある。
そこで、半導体ウエハのバンプ形成面に保護膜を形成し、バンプネックを保護するとともに、半導体チップの強度の向上を図ることが考えられる。しかし、半導体ウエハのバンプ形成面に保護膜を形成するだけでは、半導体チップの強度の向上は不十分である。また、当該保護膜は、膜剥がれを起こすことがある。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、強度に優れると共に、保護膜の剥がれが抑制された、半導体チップを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、バンプネックを保護する目的で設けられる保護膜を、半導体チップの側面にも設けることによって、半導体チップの強度を向上させることができると共に、保護膜の剥がれを抑制することができ、極めて合理的な構成を構築できることを着想した。そして、当該着想に基づいて鋭意検討を重ねた結果、当該着想を実現し得る製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[14]に関する。
[1] 下記工程(S1)~(S4)をこの順で含み、
・工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの前記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
・工程(S2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一硬化性樹脂(x1)を押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を第一硬化性樹脂(x1)で被覆すると共に、前記半導体チップ作製用ウエハに形成されている前記溝部に前記第一硬化性樹脂(x1)を埋め込む工程
・工程(S3):前記第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
・工程(S4):前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを前記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも前記バンプ形成面及び側面が前記第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップを得る工程
さらに、前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前、前記工程(S3)の後で且つ前記工程(S4)の前、又は前記工程(S4)において、下記工程(S-BG)を含む、半導体チップの製造方法。
・工程(S-BG):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削する工程
[2] 前記工程(S2)は、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一支持シート(Y1)と前記第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)とが積層された積層構造を有する第一積層体(α1)を、前記層(X1)を貼付面として押圧して貼付することで実施される、上記[1]に記載の半導体チップの製造方法。
[3] 前記工程(S-BG)を、前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前に含み、
前記工程(S-BG)は、前記第一積層体(α1)を貼付した状態で前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削した後に、前記第一積層体(α1)から前記第一支持シート(Y1)を剥離することにより実施され、
前記工程(S4)は、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)のうち前記溝部に形成されている部分を、前記分割予定ラインに沿って切断することにより実施される、上記[2]に記載の半導体チップの製造方法。
[4] 前記工程(S-BG)を、前記工程(S3)の後で且つ前記工程(S4)の前に含み、
前記工程(S3)を、前記第一積層体(α1)から前記第一支持シート(Y1)を剥離することなく実施し、
前記工程(S-BG)は、前記第一積層体(α1)を貼付した状態で前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削した後に、前記第一積層体(α1)から前記第一支持シート(Y1)を剥離することにより実施され、
前記工程(S4)は、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)のうち前記溝部に形成されている部分を、前記分割予定ラインに沿って切断することにより実施される、上記[2]に記載の半導体チップの製造方法。
[5] 前記工程(S-BG)を、前記工程(S3)の後で且つ前記工程(S4)の前に含み、
前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前に、前記第一積層体(α1)から前記第一支持シート(Y1)を剥離し、
前記工程(S-BG)は、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)の表面にバックグラインドシート(b-BG)を貼付し、前記バックグラインドシート(b-BG)を貼付した状態で前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削した後、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハから前記バックグラインドシート(b-BG)を剥離することにより実施され、
前記工程(S4)は、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)のうち前記溝部に形成されている部分を、前記分割予定ラインに沿って切断することにより実施される、上記[2]に記載の半導体チップの製造方法。
[6] 前記工程(S-BG)を、前記工程(S4)において含み、
前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前に、前記第一積層体(α1)から前記第一支持シート(Y1)を剥離し、
前記工程(S4)は、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)のうち前記溝部に形成されている部分に、前記分割予定ラインに沿って切り込みを入れるか、又は前記分割予定ラインに沿って改質領域を形成した後、前記工程(S-BG)として、前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの前記第一硬化樹脂膜(r1)の表面にバックグラインドシート(b-BG)を貼付して、前記バックグラインドシート(b-BG)を貼付した状態で前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削することにより実施される、上記[2]に記載の半導体チップの製造方法。
[7] さらに、下記工程(T)を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の半導体チップの製造方法。
・工程(T):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面に、第二硬化樹脂膜(r2)を形成する工程
[8] さらに、下記工程(U)を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の半導体チップの製造方法。
・工程(U):前記バンプの頂部を覆う前記第一硬化樹脂膜(r1)、又は前記バンプの頂部の一部に付着した前記第一硬化樹脂膜(r1)を除去して、前記バンプの頂部を露出させる工程
[9] 前記工程(U)が、プラズマエッチング処理により実施される、上記[8]に記載の半導体チップの製造方法。
[10] 温度90℃、周波数1Hzの条件で、前記層(X1)の試験片に400%のひずみを発生させて、前記層(X1)の試験片のせん断弾性率G’を測定するひずみ分散測定を行ったときの、せん断弾性率G’が、5.0×10Pa~1.0×106Paである、上記[1]~[9]のいずれかに記載の半導体チップの製造方法。
[11] 前記層(X1)の厚さが、10μm以上200μm以下である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の半導体チップの製造方法。
[12] 前記溝部の幅が、10μm~2000μmである、上記[1]~[11]のいずれかに記載の半導体チップの製造方法。
[13] 前記溝部の深さが、30μm~700μmである、上記[1]~[12]のいずれかに記載の半導体チップの製造方法。
[14] 前記第一硬化樹脂膜(r1)が透明である、上記[1]~[13]のいずれかに記載の半導体チップの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強度に優れると共に、保護膜の剥がれが抑制された、半導体チップを製造する方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の半導体チップの製造方法の工程概略図である。
【
図2】工程(S1)にて準備する半導体チップ作製用ウエハの一例を示す上面図である。
【
図3】工程(S1)にて準備する半導体チップ作製用ウエハの一例を示す概略断面図である。
【
図5】第一実施形態に係る製造方法の概略を示す図である。
【
図6】第二実施形態に係る製造方法の概略を示す図である。
【
図7】第三実施形態に係る製造方法の概略を示す図である。
【
図8】第四実施形態に係る製造方法の概略を示す図である。
【
図9】本発明の製造方法に用いる第一積層体(α1)の構成を示す概略断面図である。
【
図10】第一積層体(α1)の具体的構成の一例を示す概略断面図である。
【
図11】第一積層体(α1)の具体的構成の他の例を示す概略断面図である。
【
図12】第一積層体(α1)の具体的構成のさらに他の例を示す概略断面図である。
【
図13】実施例における裏面観察結果を示す図面代用写真である。
【
図14】実施例における断面研磨観察結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「有効成分」とは、対象となる組成物に含まれる成分のうち、水や有機溶媒等の希釈溶媒を除いた成分を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」との双方を示し、他の類似用語も同様である。
また、本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
また、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0012】
[本発明の半導体チップの製造方法]
本発明の半導体チップの製造方法の工程概略図を
図1に示す。
本発明の半導体チップの製造方法は、大まかには、半導体チップ作製用ウエハを準備する工程(S1)、第一積層体(α1)を貼付する工程(S2)、第一硬化性樹脂(x1)を硬化する工程(S3)、及び個片化する工程(S4)を含み、さらに半導体チップ作製用ウエハの裏面を研削する工程(S-BG)を含む。
【0013】
詳細には、本発明の半導体チップの製造方法は、下記工程(S1)~(S4)をこの順で含む。
・工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの前記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
・工程(S2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、第一硬化性樹脂(x1)を押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を第一硬化性樹脂(x1)で被覆すると共に、前記半導体チップ作製用ウエハに形成されている前記溝部に前記第一硬化性樹脂(x1)を埋め込む工程
・工程(S3):前記第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
・工程(S4):前記第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハを前記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも前記バンプ形成面及び側面が前記第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップを得る工程
さらに、前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前、前記工程(S3)の後で且つ前記工程(S4)の前、又は前記工程(S4)において、下記工程(S-BG)を含む。
・工程(S-BG):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削する工程
【0014】
上記工程を含む製造方法により、バンプ形成面だけでなく、側面も第一硬化樹脂膜(r1)で被覆された、強度に優れると共に、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の剥がれも起こりにくい半導体チップが得られる。
なお、ここでいう「被覆された」とは、1つの半導体チップの少なくともバンプ形成面と側面とに、半導体チップの形状に沿って第一硬化樹脂膜(r1)を形成したことを意味する。すなわち、本発明は、複数の半導体チップを樹脂中の閉じ込める封止技術とは明確に相違する。
【0015】
以下、本発明の半導体チップの製造方法について、工程毎に詳述する。
なお、以降の説明では、「半導体チップ」を単に「チップ」ともいい、「半導体ウエハ」を単に「ウエハ」ともいう。
【0016】
[工程(S1)]
工程(S1)で準備する半導体ウエハの一例について、上面図を
図2に示し、概略断面図を
図3に示す。
工程(S1)では、バンプ12を備えるバンプ形成面11aを有する半導体ウエハ11のバンプ形成面11aに、分割予定ラインとしての溝部13が裏面11bに到達することなく形成されている、半導体チップ作製用ウエハ10を準備する。
なお、
図2中、バンプは図示省略している。また、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0017】
バンプ12の形状は、特に限定されず、チップ搭載用の基板上の電極等に接触させて固定させることが可能であれば、いかなる形状であってもよい。
例えば、
図3では、バンプ12を球状としているが、バンプ12は回転楕円体であってもよい。当該回転楕円体は、例えば、ウエハ11のバンプ形成面11aに対して垂直方向に引き延ばされた回転楕円体であってもよいし、ウエハ11のバンプ形成面11aに対して水平方向に引き延ばされた回転楕円体であってもよい。また、バンプ12はピラー(柱)形状であってもよい。
【0018】
バンプ12の高さは、特に限定されず、設計上の要求に応じて適宜変更される。
例示すると、30μm~300μmであり、好ましくは60μm~250μm、より好ましくは80μm~200μmである。
なお、「バンプ12の高さ」とは、1つのバンプに着目したときに、バンプ形成面11aから最も高い位置に存在する部位での高さを意味する。
【0019】
バンプ12の個数についても、特に限定されず、設計上の要求に応じて適宜変更される。
【0020】
ウエハ11は、例えば、配線、キャパシタ、ダイオード、及びトランジスタ等の回路が表面に形成された半導体ウエハである。当該ウエハの材質は特に限定されず、例えば、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラスウエハ、及びサファイアウエハ等が挙げられる。
【0021】
ウエハ11のサイズは、特に限定されないが、バッチ処理効率を高める観点から、通常8インチ(直径200mm)以上であり、好ましくは12インチ(直径300mm)以上である。なお、ウエハの形状は、円形には限定されず、例えば正方形や長方形等の角型であってもよい。角型のウエハの場合、ウエハ11のサイズは、バッチ処理効率を高める観点から、最も長い辺の長さが、上記サイズ(直径)以上であることが好ましい。
【0022】
ウエハ11の厚みは、特に限定されないが、第一硬化性樹脂(x1)を硬化する際の収縮に伴う反りを抑制しやすくする観点、後の工程においてウエハ11の裏面11bの研削量を抑えて裏面研削に要する時間を短くする観点から、好ましくは100μm~1,000μm、より好ましくは200μm~900μm、更に好ましくは300μm~800μmである。
【0023】
工程(S1)で準備する半導体チップ作製用ウエハ10のバンプ形成面11aには、半導体チップ作製用ウエハ10を個片化する際の分割予定ラインとして、複数の溝部13が格子状に形成されている。複数の溝部13は、ブレード先ダイシング法(Dicing Before Grinding)を適用する際に形成される切り込み溝であり、ウエハ11の厚さよりも浅い深さで形成され、溝部13の最深部がウエハ11の裏面11bに到達しないようにしている。複数の溝部13は、従来公知の、ダイシングブレードを備えるウエハダイシング装置等を用いたダイシングによって形成することができる。なお、複数の溝部13は、ブレードではなく、レーザー等を用いたダイシングによって形成することもできる。
なお、複数の溝部13は、製造する半導体チップが所望のサイズ及び形状になるように形成すればよく、必ずしも
図2に示すような格子状に溝部13を形成せずともよい。また、半導体チップのサイズは、通常、0.5mm×0.5mm~1.0mm×1.0mm程度であるが、このサイズには限定されない。
【0024】
溝部13の幅は、第一硬化性樹脂(x1)の埋め込み性を良好にする観点から、好ましくは10μm~2,000μmであり、より好ましくは50μm~1,000μm、更に好ましくは100μm~500μm、より更に好ましくは100μm~300μmである。
【0025】
溝部13の深さは、使用するウエハの厚さと要求されるチップ厚さとに応じて調整され、好ましくは30μm~700μm、より好ましくは60μm~600μm、更に好ましくは100μm~500μmである。
【0026】
工程(S1)で準備した半導体チップ作製用ウエハ10は、工程(S2)に供される。
【0027】
[工程(S2)]
工程(S2)の概略を
図4に示す。
工程(S2)では、半導体チップ作製用ウエハ10のバンプ形成面11aに、第一硬化性樹脂(x1)を押圧して貼付する。
ここで、第一硬化性樹脂(x1)の取扱性の観点から、第一硬化性樹脂(x1)は、第一支持シート(Y1)に積層されて用いられることが好ましい。
したがって、工程(S2)では、半導体チップ作製用ウエハ10のバンプ形成面11aに、第一支持シート(Y1)と第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)とが積層された積層構造を有する第一積層体(α1)を、前記層(X1)を貼付面として押圧して貼付することが好ましい。
工程(S2)により、
図4に示すように、半導体チップ作製用ウエハ10のバンプ形成面11aを第一硬化性樹脂(x1)で被覆すると共に、半導体チップ作製用ウエハ10に形成されている溝部13に第一硬化性樹脂(x1)が埋め込まれる。
【0028】
半導体チップ作製用ウエハ10に形成されている溝部13に第一硬化性樹脂(x1)を埋め込むことにより、工程(S4)において半導体チップ作製用ウエハ10を個片化する際に半導体チップの側面となる部分を第一硬化性樹脂(x1)で被覆することができる。つまり、半導体チップの強度を優れたものにすると共に、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の剥がれを抑制するために必要となる、半導体チップ側面を被覆する第一硬化樹脂膜(r1)の前駆体となる被覆物を、工程(S2)により形成することができる。
【0029】
なお、第一積層体(α1)を半導体チップ作製用ウエハ10に貼付する際の押圧力は、第一硬化性樹脂(x1)の溝部13への埋め込み性を良好なものとする観点から、好ましくは1kPa~200kPa、より好ましくは5kPa~150kPa、更に好ましくは10kPa~100kPaである。
なお、第一積層体(α1)を半導体チップ作製用ウエハ10に貼付する際の押圧力は、貼付初期から終期にかけて適宜変動させてもよい。例えば、溝部13への第一硬化性樹脂(x1)の埋め込み性をより良好なものとする観点から、押圧力を、貼付初期には低くし、徐々に押圧力を高めることが好ましい。
【0030】
また、第一積層体(α1)を半導体チップ作製用ウエハ10に貼付する際、第一硬化性樹脂(x1)が熱硬化性樹脂である場合には、第一硬化性樹脂(x1)の溝部13への埋め込み性をより良好なものとする観点から、加熱を行うことが好ましい。第一硬化性樹脂(x1)が熱硬化性樹脂である場合、第一硬化性樹脂(x1)は、加熱することで流動性が一時的に高まり、加熱を続けることで硬化する。そこで、第一硬化性樹脂(x1)の流動性が向上する範囲内で加熱を行うことにより、第一硬化性樹脂(x1)が溝部13全体に行き渡りやすくなり、第一硬化性樹脂(x1)の溝部13への埋め込み性がより向上し得る。
具体的な加熱温度(貼付温度)としては、好ましくは50℃~150℃、より好ましくは60℃~130℃、更に好ましくは70℃~110℃である。
なお、第一硬化性樹脂(x1)に対して行う当該加熱処理は、第一硬化性樹脂(x1)の硬化処理には含まれない。
【0031】
さらに、第一積層体(α1)を半導体チップ作製用ウエハ10に貼付する際、減圧環境下で行うことが好ましい。これにより、溝部13が負圧となり、第一硬化性樹脂(x1)が溝部13全体に行き渡りやすくなる。その結果、第一硬化性樹脂(x1)の溝部13への埋め込み性がより良好なものとなる。減圧環境の具体的な圧力としては、好ましくは0.001kPa~50kPa、より好ましくは0.01kPa~5kPa、更に好ましいくは0.05kPa~1kPaである。
【0032】
また、第一積層体(α1)における第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)の厚さは、第一硬化性樹脂(x1)の溝部13への埋め込み性を更に良好なものとする観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上、より更に好ましくは30μm超である。また、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは130μm以下、より更に好ましくは100μm以下、更になお好ましくは80μm以下である。
ここで、「第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)の厚さ」とは、層(X1)全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる層(X1)の厚さとは、層(X1)を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0033】
さらに、第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)は、第一硬化性樹脂(x1)の溝部13への埋め込み性を更に良好なものとする観点から、温度90℃、周波数1Hzの条件で、前記層(X1)の試験片に400%のひずみを発生させて、前記層(X1)の試験片のせん断弾性率G’を測定するひずみ分散測定を行ったときの、せん断弾性率G’が、好ましくは5.0×10Pa~1.0×106Pa、より好ましくは1.0×102Pa~1.0×105Pa、更に好ましくは1.0×102Pa~1.0×104Paである。
なお、第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)のせん断弾性率G’は、第一硬化性樹脂(x1)を硬化する前に測定される値である。
なお、せん断弾性率G’は、第一硬化性樹脂(x1)の組成等を調整することにより、調整することができる。
【0034】
ここで、第一積層体(α1)が有する第一支持シート(Y1)は、第一硬化性樹脂(x1)を支持すると共に、バックグラインドシートとしての機能を兼ね備えていることが好ましい。
この場合、第一積層体(α1)を貼付した状態で、ウエハ11の裏面11bの研削を行う際に、第一支持シート(Y1)がバックグラインドシートとしての機能し、バックグラインド工程を実施しやすいものとできる。
【0035】
[工程(S3)、工程(S4)、及び工程(S-BG)]
上記の工程(S2)までの工程により、半導体チップ作製用ウエハ10に第一積層体(α1)を貼付して積層した積層体が形成される。当該積層体は、工程(S-BG)の実施のタイミングに応じて、以下に説明する第一実施形態~第四実施形態のいずれかにかかる工程に供されることが好ましい。
以下、第一実施形態~第四実施形態について、工程(S-BG)を実施するタイミングに関する説明を交えながら、工程(S3)及び工程(S4)について説明する。
【0036】
<第一実施形態>
第一実施形態では、
図1に示すように、工程(S2)の後で且つ工程(S3)の前に、工程(S-BG)が行われる。
図5に、第一実施形態に関する概略図を示す。
【0037】
(第一実施形態:工程(S-BG))
第一実施形態では、まず、工程(S-BG)を実施する。具体的には、
図5の(1-a)に示すように、第一積層体(α1)を貼付した状態で半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削する。
図5中の「BG」は、バックグラインドを意味し、以降の図面においても同様である。次いで、
図5の(1-b)に示すように、第一積層体(α1)から第一支持シート(Y1)を剥離する。
半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削する際の研削量は、少なくとも半導体チップ作製用ウエハ10の溝部13の底部が露出する量であればよいが、更に研削を行って、半導体チップ作製用ウエハ10と共に、溝部13に埋め込まれた第一硬化性樹脂(x1)も研削するようにしてもよい。
第一実施形態では、工程(S3)を実施する前に第一支持シート(Y1)を剥離するため、第一硬化性樹脂(x1)が熱硬化性樹脂であり、工程(S3)において硬化のための加熱処理が実施される場合であっても、第一支持シート(Y1)には耐熱性が要求されない。したがって、第一支持シート(Y1)の設計の自由度が向上する。
【0038】
(第一実施形態:工程(S3))
工程(S-BG)を実施した後、工程(S3)を実施する。具体的には、
図5の(1-c)に示すように、第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付きの半導体チップ作製用ウエハ10を得る。
第一硬化性樹脂(x1)を硬化することにより形成される第一硬化樹脂膜(r1)は、常温において、第一硬化性樹脂(x1)よりも強固になる。そのため、第一硬化樹脂膜(r1)を形成することによって、バンプネックが良好に保護される。また、
図5の(1-d)に示す工程(S4)において、第一硬化樹脂膜(r1)付きの半導体チップ作製用ウエハ10を個片化することで、側面も第一硬化樹脂膜(r1)で被覆された半導体チップを得ることができ、強度に優れる半導体チップが得られる。しかも、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)が剥がれることも抑制される。
【0039】
(第一実施形態:硬化方法)
第一硬化性樹脂(x1)の硬化は、第一硬化性樹脂(x1)に含まれている硬化性成分の種類に応じて、熱硬化及びエネルギー線の照射による硬化のいずれかにより行うことができる。
なお、本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、電子線等が挙げられ、好ましくは紫外線である。
熱硬化を行う場合の条件としては、硬化温度が好ましくは90℃~200℃であり、硬化時間が好ましくは1時間~3時間である。
エネルギー線照射による硬化を行う場合の条件としては、使用するエネルギー線の種類により適宜設定される、例えば、紫外線を用いる場合、照度は好ましくは170mw/cm2~250mw/cm2であり、光量は好ましくは300mJ/cm2~3,000mJ/cm2である。
ここで、第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて第一硬化樹脂膜(r1)を形成する過程において、工程(S2)において第一硬化性樹脂(x1)で溝部13を埋め込む際に入り込むことのある気泡等を除去する観点から、第一硬化性樹脂(x1)は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。すなわち、第一硬化性樹脂(x1)が熱硬化性樹脂である場合、第一硬化性樹脂(x1)は、加熱することで流動性が一時的に高まり、加熱を続けることで硬化する。この現象を利用することで、第一硬化性樹脂(x1)の流動性が高まった際に、第一硬化性樹脂(x1)で溝部13を埋め込む際に入り込むことのある気泡等が除去され、第一硬化性樹脂(x1)の溝部13への埋め込み性をより良好な状態とした上で、第一硬化性樹脂(x1)を硬化することができる。
また、硬化時間の短縮の観点から、第一硬化性樹脂(x1)は、エネルギー線硬化性樹脂であることが好ましい。
なお、第一硬化樹脂膜(r1)を形成するための第一硬化性樹脂(x1)の詳細については後述する。
【0040】
(第一実施形態:工程(S4))
工程(S3)を実施した後、工程(S4)を実施する。具体的には、
図5の(1-d)に示すように、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10の第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部に形成されている部分を、分割予定ラインに沿って切断する。
切断は、ブレードダイシングやレーザーダイシング等、従来公知の方法を採用して適宜実施することができる。
これにより、少なくともバンプ形成面11a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップ40を得ることができる。
半導体チップ40は、バンプ形成面11a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されているため、優れた強度を有する。また、バンプ形成面11a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で切れ目なく連続して被覆されているため、バンプ形成面11aと第一硬化樹脂膜(r1)との接合面(界面)が、半導体チップ40の側面において露出していない。バンプ形成面11aと第一硬化樹脂膜(r1)との接合面(界面)のうち、半導体チップ40の側面において露出している露出部は、膜剥がれの起点となりやすい。本発明の半導体チップ40は、当該露出部が存在しないため、当該露出部からの膜剥がれが、半導体チップ作製用ウエハ10を切断して半導体チップ40を製造する過程や、製造後において生じにくい。したがって、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の剥がれが抑制された、半導体チップ40が得られる。
【0041】
なお、工程(S4)において、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10の第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部に形成されている部分を、分割予定ラインに沿って切断する場合、第一硬化樹脂膜(r1)が透明であることが好ましい。第一硬化樹脂膜(r1)が透明であることにより、半導体ウエハ11が透けて見えるため、分割予定ラインの視認性が確保される。そのため、分割予定ラインに沿って切断しやすくなる。
【0042】
<第二実施形態>
第二実施形態では、
図1に示すように、工程(S3)の後で且つ工程(S4)の前に、工程(S-BG)が行われる。
図6に、第二実施形態に関する概略図を示す。
【0043】
(第二実施形態:工程(S3))
第二実施形態では、まず、工程(S3)を実施する。具体的には、
図6の(2-a)に示すように、第一積層体(α1)を貼付した状態で第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付きの半導体チップ作製用ウエハ10を得る。
第一硬化性樹脂(x1)を硬化することにより形成される第一硬化樹脂膜(r1)は、常温において、第一硬化性樹脂(x1)よりも強固になる。そのため、第一硬化樹脂膜(r1)を形成することによって、バンプネックが良好に保護される。また、また、工程(S4)において、第一硬化樹脂膜(r1)付きの半導体チップ作製用ウエハ10を個片化することで、側面も第一硬化樹脂膜(r1)で被覆された半導体チップを得ることができ、強度に優れる半導体チップが得られる。しかも、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)が剥がれることも抑制される。
硬化方法は、第一実施形態で説明した硬化方法と同様の方法が挙げられる。
第一支持シート(Y1)を剥離することなく熱硬化処理を行うことで、熱硬化時に第一支持シート(Y1)によって第一硬化性樹脂(x1)を硬化する際に一時的に生じる第一硬化性樹脂(x1)の表面における流動を抑えることができ、バンプ形成面における第一硬化樹脂膜(r1)の平坦性を向上させることができる。また、半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削する前に、第一硬化性樹脂(x1)を硬化させることで、半導体チップ作製用ウエハ10の反りが抑制される。
【0044】
(第二実施形態:工程(S―BG))
工程(S3)を実施した後、工程(S-BG)を実施する。
図6の(2-b)に示すように、第一積層体(α1)を貼付した状態で半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削する。
なお、半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削する際の研削量は、少なくとも半導体チップ作製用ウエハ10の溝部13の底部が露出する量であればよいが、更に研削を行って、半導体チップ作製用ウエハ10と共に、溝部13に埋め込まれた第一硬化樹脂膜(r1)も研削するようにしてもよい。
次いで、
図6の(2-c)に示すように、第一積層体(α1)から第一支持シート(Y1)を剥離する。
【0045】
(第二実施形態:工程(S4))
工程(S-BG)を実施した後、第一実施形態と同様、工程(S4)を実施する。具体的には、
図6の(2-d)に示すように、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10の第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部に形成されている部分を、分割予定ラインに沿って切断する。
切断は、ブレードダイシングやレーザーダイシング等、従来公知の方法を採用して適宜実施することができる。
これにより、少なくともバンプ形成面11a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップ40を得ることができる。
半導体チップ40は、バンプ形成面11a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されているため、優れた強度を有する。また、既述した理由により、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の剥がれが抑制された、半導体チップ40が得られる。
【0046】
<第三実施形態>
第三実施形態では、
図1に示すように、工程(S3)の後で且つ工程(S4)の前に、工程(S-BG)が行われる点で、第二実施形態と共通する。但し、バックグラインドシート(b-BG)を別途用いる点において、第二実施形態とは異なる。
図7に、第三実施形態に関する概略図を示す。
【0047】
(第三実施形態:工程(S3))
第三実施形態では、まず、工程(S3)が行われるが、その前に、
図7の(3-a)に示すように、第一積層体(α1)から第一支持シート(Y1)を剥離する。その上で、工程(S3)を実施する。具体的には、
図7の(3-b)に示すように、第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付きの半導体チップ作製用ウエハ10を得る。
硬化方法は、第一実施形態で説明した硬化方法と同様の方法が挙げられる。
工程(S3)を実施する前に第一支持シート(Y1)を剥離するため、第一硬化性樹脂(x1)が熱硬化性樹脂であり、工程(S3)において硬化のための加熱処理が実施される場合であっても、第一支持シート(Y1)には耐熱性が要求されない。したがって、第一支持シート(Y1)の設計の自由度が向上する。
また、半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削する前に、第一硬化性樹脂(x1)を硬化させることで、半導体チップ作製用ウエハ10の反りが抑制される。
【0048】
(第三実施形態:工程(S-BG))
工程(S3)を実施した後、工程(S-BG)を実施する。具体的には、
図7の(3-c)に示すように、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10の第一硬化樹脂膜(r1)の表面にバックグラインドシート(b-BG)を貼付する。次いで、
図7の(3-d)に示すように、バックグラインドシート(b-BG)を貼付した状態で半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削した後、
図7の(3-e)に示すように、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10からバックグラインドシート(b-BG)を剥離する。
バックグラインドシート(b-BG)は工程(S3)では用いられないため、第一硬化性樹脂(x1)が熱硬化性樹脂であり、工程(S3)において硬化のための加熱処理が実施される場合であっても、バックグラインドシート(b-BG)には耐熱性が要求されない。したがって、バックグラインドシート(b-BG)の設計の自由度が向上する。
なお、半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削する際の研削量は、少なくとも半導体チップ作製用ウエハ10の溝部13の底部が露出する量であればよいが、更に研削を行って、半導体チップ作製用ウエハ10と共に、溝部13に埋め込まれた第一硬化樹脂膜(r1)も研削するようにしてもよい。
【0049】
(第三実施形態:工程(S4))
工程(S-BG)を実施した後、第一実施形態及び第二実施形態と同様、工程(S4)を実施する。具体的には、
図7の(3-f)に示すように、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10の第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部に形成されている部分を、分割予定ラインに沿って切断する。
切断は、ブレードダイシングやレーザーダイシング等、従来公知の方法を採用して適宜実施することができる。
これにより、少なくともバンプ形成面11a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップ40を得ることができる。
半導体チップ40は、バンプ形成面11a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されているため、優れた強度を有する。また、既述した理由により、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の剥がれが抑制された、半導体チップ40が得られる。
【0050】
<第四実施形態>
第四実施形態では、
図1に示すように、工程(S-BG)が、工程(S4)において行われる。
図8に、第四実施形態に関する概略図を示す。
【0051】
(第四実施形態:工程(S3))
第四実施形態では、まず、工程(S3)が行われるが、その前に、
図8の(4-a)に示すように、第一積層体(α1)から第一支持シート(Y1)を剥離する。その上で、工程(S3)を実施する。具体的には、
図8の(4-b)に示すように、第一硬化性樹脂(x1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付きの半導体チップ作製用ウエハ10を得る。
硬化方法は、第一実施形態で説明した硬化方法と同様の方法が挙げられる。
工程(S3)を実施する前に第一支持シート(Y1)を剥離するため、第一硬化性樹脂(x1)が熱硬化性樹脂であり、工程(S3)において硬化のための加熱処理が実施される場合であっても、第一支持シート(Y1)には耐熱性が要求されない。したがって、第一支持シート(Y1)の設計の自由度が向上する。
また、半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削する前に、第一硬化性樹脂(x1)を硬化させることで、半導体チップ作製用ウエハ10の反りが抑制される。
【0052】
(第四実施形態:工程(S-BG)を含む工程(S4))
工程(S3)を実施した後、
図8の(4-c)に示すように、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10の第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部13に形成されている部分に、分割予定ラインに沿って切り込みを入れる。切り込みの深さは、個片化しやすくする観点から、溝部13の最深部に到達する深さとすることが好ましい。これにより、後述する工程(S-BG)において、当該切込みに沿って第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10が個片化される。
あるいは、図示省略するが、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10の第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部13に形成されている部分に、分割予定ラインに沿って改質領域を形成してもよい。改質領域は、レーザー又はプラズマ処理等により形成することができる。これにより、後述する工程(S-BG)において、当該改質領域を起点として亀裂が生じ、当該改質領域に沿って第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10が個片化される。
次に、工程(S-BG)を実施する。具体的には、
図8の(4-d)に示すように、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10の第一硬化樹脂膜(r1)の表面にバックグラインドシート(b-BG)を貼付する。次いで、
図8の(4-e)に示すように、バックグラインドシート(b-BG)を貼付した状態で半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削する。最後に、
図8の(4-f)に示すように、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ10からバックグラインドシート(b-BG)を剥離する。
これにより、少なくともバンプ形成面11a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップ40を得ることができる。
なお、半導体チップ作製用ウエハ10の裏面11bを研削する際の研削量は、少なくとも半導体チップ作製用ウエハ10の溝部13の底部が露出する量であればよいが、更に研削を行って、半導体チップ作製用ウエハ10と共に、溝部13に埋め込まれた第一硬化樹脂膜(r1)も研削するようにしてもよい。
半導体チップ40は、バンプ形成面11a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されているため、優れた強度を有する。
なお、バックグラインドシート(b-BG)は工程(S3)では用いられないため、第一硬化性樹脂(x1)が熱硬化性樹脂であり、工程(S3)において硬化のための加熱処理が実施される場合であっても、バックグラインドシート(b-BG)には耐熱性が要求されない。したがって、バックグラインドシート(b-BG)の設計の自由度が向上する。
【0053】
ここで、第一実施形態ないし第四実施形態では、工程(S-BG)において、第一支持シート(Y1)又はバックグラインドシート(b-BG)が使用される態様を挙げて説明したが、本発明の一態様では、第一支持シート(Y1)又はバックグラインドシート(b-BG)に代えて、バックグラインド用の樹脂層(Z1)を形成するようにしてもよい。
具体的には、流動性のある樹脂(z1)を用いて、第一硬化樹脂膜(r1)の表面を被覆するとともに、第一硬化樹脂膜(r1)から露出しているバンプも被覆した後、樹脂(z1)を硬化させて、バックグラインド用の樹脂層(Z1)を形成することで、バックグラインドシートの代用として研削工程を行うこともできる。
なお、第一硬化樹脂膜(r1)の表面と第一硬化樹脂膜(r1)から露出しているバンプとを樹脂(z1)で被覆する際、バンプの凹凸に追従可能な柔軟性のある樹脂フィルム(z2)を介して被覆することで、工程(S-BG)後に不要となったバックグラインド用の樹脂層(Z1)を剥離しやすくすることができる。
【0054】
[工程(T)]
本発明の半導体チップの製造方法の一態様では、さらに、下記工程(T)を含むことが好ましい。
・工程(T):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面に、第二硬化樹脂膜(r2)を形成する工程
【0055】
上記実施形態にかかる製造方法によれば、少なくともバンプ形成面11a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップ40を得ることができる。しかし、半導体チップ40の裏面は剥き出しである。そこで、半導体チップ40の裏面を保護して半導体チップ40の強度をより向上させる観点から、上記工程(T)を実施することが好ましい。
【0056】
上記工程(T)は、より詳細には、下記工程(T1)~下記工程(T2)をこの順で含むことが好ましい。
・工程(T1):半導体チップ作製用ウエハの裏面に、第二硬化性樹脂(x2)を貼付する工程
・工程(T2):第二硬化性樹脂(x2)を硬化させて第二硬化性樹脂膜(r2)を形成する工程
また、工程(T1)では、第二支持シート(Y2)と第二硬化性樹脂(x2)の層(X2)とが積層された積層構造を有する第二積層体(α2)を用いることが好ましい。詳細には、工程(T1)は、半導体チップ作製用ウエハの裏面に、第二支持シート(Y2)と第二硬化性樹脂(x2)の層(X2)とが積層された積層構造を有する第二積層体(α2)を、前記層(X2)を貼付面として貼付する工程とすることが好ましい。
この場合、第二積層体(α2)から第二支持シート(Y2)を剥離するタイミングは、工程(T1)と工程(T2)の間であってもよく、工程(T2)の後であってもよい。
【0057】
ここで、工程(T1)において第二積層体(α2)を用いる場合、第二積層体(α2)が有する第二支持シート(Y2)は、第二硬化性樹脂(x2)を支持すると共に、ダイシングシートとしての機能を兼ね備えていることが好ましい。
第一実施形態から第三実施形態にかかる製造方法の場合、工程(S4)において第二積層体(α2)が第一硬化樹脂膜(r1)付きの半導体ウエハ10の裏面11bに貼付されていることで、ダイシングによる個片化を行う際に、第二支持シート(Y2)がダイシングシートとしての機能し、ダイシングを実施しやすいものとできる。
【0058】
ここで、第一実施形態にかかる製造方法のように、工程(S-BG)後に、工程(S3)を実施する場合、工程(S3)を実施する前に、上記工程(T1)を実施し、次いで、工程(S3)と工程(T2)を同時に行うようにしてもよい。すなわち、第一硬化性樹脂(x1)と第二硬化性樹脂(x2)を一括して同時に硬化するようにしてもよい。これにより、硬化処理の回数を削減することができる。
【0059】
具体的には、第一実施形態ないし第三実施形態にかかる製造方法において、工程(T)は、下記工程(T1-1)及び下記工程(T1-2)をこの順で含み、
・工程(T1-1):工程(S-BG)の後で且つ工程(S4)の前において、半導体チップ作製用ウエハの裏面に、第二硬化性樹脂(x2)を貼付する工程
・工程(T1-2):工程(S4)の前または後において、第二硬化性樹脂(x2)を硬化させて、第二硬化樹脂膜(r2)を形成する工程
工程(S4)において、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハの第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部に形成されている部分を、分割予定ラインに沿って切断する際、第二硬化性樹脂(x2)又は第二硬化樹脂膜(r2)も一括して切断することが好ましい。
また、第四実施形態にかかる製造方法において、工程(T)は、下記工程(T2-1)及び下記工程(T2-2)をこの順で含み、
・工程(T2-1):工程(S-BG)の後で且つ工程(S4)の後において、バックグラインドシート(b-BG)を貼付した状態のまま、半導体チップ作製用ウエハの裏面に、第二硬化性樹脂(x2)を貼付する工程
・工程(T2-2):第二硬化性樹脂(x2)を硬化して、第二硬化樹脂膜(r2)を形成する工程
さらに、工程(T)は、工程(T2-2)の前又は後において、下記工程(T2-3)を含むことが好ましい。
・工程(T2-3):カーフに沿って第二硬化性樹脂層(x2)又は第二硬化樹脂膜(r2)を分割する工程
【0060】
[工程(U)]
本発明の半導体チップの製造方法の一態様では、さらに、下記工程(U)を含んでいてもよい。
・工程(U):前記バンプの頂部を覆う前記第一硬化樹脂膜(r1)、又は前記バンプの頂部の一部に付着した前記第一硬化樹脂膜(r1)を除去して、前記バンプの頂部を露出させる工程
バンプの頂部を露出させる露出処理としては、例えばウェットエッチング処理やドライエッチング処理等のエッチング処理が挙げられる。
ここで、ドライエッチング処理としては、例えばプラズマエッチング処理等が挙げられる。
なお、露出処理は、保護膜の表面にバンプの頂部が露出していない場合、バンプの頂部が露出するまで保護膜を後退させる目的で実施してもよい。
【0061】
工程(U)を実施するタイミングについては、第一硬化樹脂膜(r1)は露出している状態であれば特に限定されず、工程(S3)の後で且つ工程(S4)の前であり、第一支持シート(Y1)及びバックグラインドシート(b-BG)が貼付されていない状態であることが好ましい。
【0062】
次に、本発明の一態様の半導体チップの製造方法において用いられる第一積層体(α1)について説明する。また、本発明の一態様の半導体チップの製造方法において用いられるバックグラインドシート(b-BG)及び第二積層体(α2)についても説明する。
【0063】
[第一積層体(α1)の構成]
本発明の一態様の製造方法に用いる第一積層体(α1)の構成例を
図9に示す。
本発明の一態様の製造方法に用いる第一積層体(α1)は、
図9に示す第一積層体(α1)のように、第一支持シート(Y1)の一方の面に第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)が備えられている。第一支持シート(Y1)の一方の面に第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)が備えられることで、製品パッケージとして第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)を運搬したり、工程内において第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)を搬送したりする際に、第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)が安定的に支持・保護される。
【0064】
また、第一積層体(α1)の具体的な構成例を
図10~
図12に示す。
第一積層体(α1)は、
図10に示す第一積層体(α1a)のように、第一支持シート(Y1)は基材51であり、基材51の一方の面に第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)が備えられている。
また、第一積層体(α1)は、
図11に示す第一積層体(α1b)のように、第一支持シート(Y1)は基材51と粘着剤層61とを積層した粘着シートであり、当該粘着シートの粘着剤層61と第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)とが貼合されていてもよい。
さらに、第一積層体(α1)は、
図12に示す第一積層体(α1c)のように、第一支持シート(Y1)は基材51と中間層71と粘着剤層61とをこの順で積層した粘着シートであり、当該粘着シートの粘着剤層61と第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)とが貼合されていてもよい。基材51と中間層71と粘着剤層61とをこの順で積層した粘着シートは、バックグラインドテープとして好適に用いることができる。すなわち、
図12に示す第一積層体(α1c)は、第一支持シート(Y1)としてバックグラインドテープを有するため、第一積層体(α1c)の第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)と、半導体チップ作製用ウエハのバンプ形成面とを貼合した後、半導体チップ作製用ウエハの裏面を研削して薄化処理する際に、好適に用いることができる。
【0065】
以下、第一積層体(α1)に用いられる第一硬化性樹脂(x1)及び、第一支持シート(Y1)について説明する。
【0066】
<第一硬化性樹脂(x1)>
第一硬化性樹脂(x1)は、半導体チップ作製用ウエハのバンプ形成面を被覆すると共に、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部を充填するために用いられるフィルム状の樹脂であり、加熱又はエネルギー線照射による硬化により、第一硬化樹脂膜(r1)を形成する。すなわち、第一硬化性樹脂(x1)は、加熱により硬化する熱硬化性樹脂フィルム(以下、「第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)」ともいう)であってもよく、エネルギー線照射により硬化するエネルギー線硬化性樹脂フィルム(以下、「第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)」ともいう)であってもよい。
【0067】
第一硬化性樹脂(x1)の物性は、第一硬化性樹脂(x1)の含有成分の種類及び量のいずれか一方又は両方を調整することにより調整できる。
【0068】
以下、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)について説明する。
【0069】
<<第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)>>
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する。
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)は、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)から形成される。
重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、当該硬化(重合)反応には、重縮合反応も含まれる。
なお、本明細書の以下の記載において、「第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)の有効成分の全量での各成分の含有量」は、「第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)から形成される第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)の各成分の含有量」と同義である。
【0070】
(重合体成分(A))
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、重合体成分(A)を含有する。
重合体成分(A)は、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)に造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。重合体成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合体成分(A)を2種以上組み合わせて用いる場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0071】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂((メタ)アクリロイル基を有する樹脂)、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ウレタン系樹脂(ウレタン結合を有する樹脂)、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂(シロキサン結合を有する樹脂)、ゴム系樹脂(ゴム構造を有する樹脂)、フェノキシ樹脂、及び熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル系樹脂及びポリビニルアセタールが好ましい。
【0072】
アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、10,000~2,000,000であることが好ましく、300,000~1,500,000であることがより好ましく、500,000~1,000,000であることが更に好ましい。
アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記の下限値以上であることで、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)の形状安定性(保管時の経時安定性)を向上させやすい。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記の上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)が追従し易くなり、例えば、被着体と第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)との間でボイド等の発生を抑制させやすい。したがって、半導体ウエハ11のバンプ形成面11aの被覆性は勿論のこと、溝部13への埋め込み性も向上させやすい。
【0073】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、-60~70℃であることが好ましく、-40~50℃であることがより好ましく、-30℃~30℃であることが更に好ましい。
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記の下限値以上であることで、第一硬化樹脂膜(r1)と第一支持シート(Y1)との接着力が抑制されて、第一支持シート(Y1)の剥離性が向上する。また、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記の上限値以下であることで、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一硬化樹脂膜(r1)の被着体との接着力が向上する。したがって、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の膜剥がれをより抑制しやすくできる。
【0074】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0075】
アクリル系樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、及び(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
本明細書において、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせた共重合体であることが好ましく、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~4の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせた共重合体であることがより好ましく、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸グリシジル、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチルを組み合わせた共重合体であることが更に好ましい。
【0076】
アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びスチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0077】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。アクリル系樹脂を構成するモノマーが2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0078】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、及びイソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。
アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基によって他の化合物と結合することで、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)を用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0079】
重合体成分(A)における前記ポリビニルアセタールとしては、公知のものが挙げられる。
なかでも、好ましいポリビニルアセタールとしては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等が挙げられ、ポリビニルブチラールがより好ましい。
ポリビニルブチラールとしては、下記式(i)-1、(i)-2及び(i)-3で表される構成単位を有するものが挙げられる。
【0080】
【化1】
(式中、l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数である。)
【0081】
ポリビニルアセタールの重量平均分子量(Mw)は、5,000~200,000であることが好ましく、8,000~100,000であることがより好ましい。ポリビニルアセタールの重量平均分子量が上記の下限値以上であることで、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)の形状安定性(保管時の経時安定性)を向上させやすい。また、ポリビニルアセタールの重量平均分子量が上記の上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)が追従し易くなり、例えば、被着体と第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)との間でボイド等の発生を抑制させやすい。したがって、半導体ウエハ11のバンプ形成面11aの被覆性は勿論のこと、溝部13への埋め込み性も向上させやすい。
【0082】
ポリビニルアセタールのガラス転移温度(Tg)は、40~80℃であることが好ましく、50~70℃であることがより好ましい。ポリビニルアセタールのTgが上記の下限値以上であることで、第一硬化樹脂膜(r1)と第一支持シート(Y1)との接着力が抑制されて、第一支持シート(Y1)の剥離性が向上する。また、ポリビニルアセタールのTgが上記の上限値以下であることで、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一硬化樹脂膜(r1)の被着体との接着力が向上する。したがって、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の膜剥がれをより抑制しやすくできる。
【0083】
ポリビニルアセタールを構成する3種以上のモノマーの比率は任意に選択できる。
【0084】
ここで、本発明の一態様では、重合体成分(A)として、アクリル系樹脂及びポリビニルアセタール以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂及びポリビニルアセタールの双方を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂及びポリビニルアセタールの一方又は双方と併用してもよい。
熱可塑性樹脂を用いることで、第一硬化樹脂膜(r1)の第一支持シート(Y1)からの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)が追従し易くなり、被着体と第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)との間でボイド等の発生がより抑制されたりすることがある。したがって、半導体ウエハ11のバンプ形成面11aの被覆性は勿論のこと、溝部13への埋め込み性も向上させやすい。
【0085】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1,000~100,000であることが好ましく、3,000~80,000であることがより好ましい。
【0086】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0087】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、及びポリスチレン等が挙げられる。
【0088】
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0089】
重合体成分(A)の含有量は、第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)の有効成分の全量基準で、5~85質量%であることが好ましく、5~80質量%であることがより好ましい。
【0090】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明では、第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方を含有するとみなす。
【0091】
(熱硬化性成分(B))
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、熱硬化性成分(B)を含有する。
熱硬化性成分(B)は、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)を硬化させて、硬質の第一硬化樹脂膜(r1)を形成するための成分である。
熱硬化性成分(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性成分(B)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0092】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0093】
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
エポキシ系熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ系熱硬化性樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0094】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、及び2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、多官能系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、多官能系エポキシ樹脂の中でも多官能系芳香族型エポキシ樹脂が好ましい。
【0095】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)を用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
【0096】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基に(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、及び(メタ)アクリルアミド基等が挙げられる。これらの中でも、アクリロイル基が好ましい。
【0097】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)の硬化性、並びに硬化後の第一硬化樹脂膜(r1)の強度及び耐熱性の点から、300~30,000であることが好ましく、400~10,000であることがより好ましく、500~3,000であることが更に好ましい。
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1,000g/eqであることが好ましく、300~800g/eqであることがより好ましい。
【0098】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂(B1)を2種以上で併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0099】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及び酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0100】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、及びアラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(以下、「DICY」と略記することがある)等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤が好ましく、ノボラック型フェノール樹脂であることがより好ましい。
【0101】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、又は、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。熱硬化剤(B2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0102】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、第一硬化樹脂膜(r1)の第一支持シート(Y1)からの剥離性を向上させやすくする観点から、熱硬化剤(B2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0103】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、及びアラルキルフェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30,000であることが好ましく、400~10,000であることがより好ましく、500~3,000であることが更に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0104】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化剤(B2)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0105】
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)において、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましい。熱硬化剤(B2)の含有量が上記の下限値以上であることで、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)の硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(B2)の含有量が上記の上限値以下であることで、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)の吸湿率が低減されて、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0106】
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)において、熱硬化性成分(B)の含有量(エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の合計含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、50~1000質量部であることが好ましく、100~900質量部であることがより好ましく、150~800質量部であることが更に好ましい。熱硬化性成分(B)の含有量がこのような範囲であることで、第一硬化樹脂膜(r1)と第一支持シート(Y1)との接着力が抑制されて、第一支持シート(Y1)の剥離性が向上する。
【0107】
(硬化促進剤(C))
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。
硬化促進剤(C)は、第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、イミダゾール類が好ましく、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールがより好ましい。
【0108】
硬化促進剤(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤(C)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0109】
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)において、硬化促進剤(C)を用いる場合の、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の含有量が上記の下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られやすい。また、硬化促進剤(C)の含有量が上記の上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0110】
(充填材(D))
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、充填材(D)を含有していてもよい。
充填材(D)を含有することにより、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)を硬化して得られた第一硬化樹脂膜(r1)の熱膨張係数を適切な範囲に調整しやすくなり、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)が充填材(D)を含有することにより、第一硬化樹脂膜(r1)の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0111】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0112】
充填材(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
充填材(D)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0113】
充填材(D)を用いる場合の充填材(D)の含有量は、第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)の有効成分の全量基準で、5~80質量%であることが好ましく、7~60質量%であることがより好ましい。充填材(D)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0114】
充填材(D)の平均粒子径は、5nm~1000nmであることが好ましく、5nm~500nmであることがより好ましく、10nm~300nmであることが更に好ましい。上記の平均粒子径は、1個の粒子における外径を数カ所で測定し、その平均値を求めたものである。
【0115】
(カップリング剤(E))
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、カップリング剤(E)を含有していてもよい。
カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一硬化樹脂膜(r1)の被着体に対する接着性及び密着性を向上させやすい。したがって、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の膜剥がれをより抑制しやすくできる。また、カップリング剤(E)を用いることで、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)を硬化して得られた第一硬化樹脂膜(r1)は、耐熱性を損なうことなく、また、耐水性が向上しやすい。
【0116】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。好ましいシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、及びイミダゾールシラン等が挙げられる。
【0117】
カップリング剤(E)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。カップリング剤(E)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0118】
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)において、カップリング剤(E)を用いる場合の、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の合計含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが更に好ましい。カップリング剤(E)の含有量が上記の下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)の被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(E)の含有量が上記の上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0119】
(架橋剤(F))
重合体成分(A)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、又はイソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための架橋剤(F)を含有していてもよい。
架橋剤(F)を用いて架橋することにより、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)の初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0120】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、及びアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0121】
有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味し、その例としては、トリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。
【0122】
有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0123】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、及びN,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0124】
架橋剤(F)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(A)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(F)がイソシアネート基を有し、重合体成分(A)が水酸基を有する場合、架橋剤(F)と重合体成分(A)との反応によって、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)に架橋構造を簡便に導入できる。
【0125】
架橋剤(F)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤(F)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0126】
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)において、架橋剤(F)を用いる場合の、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが更に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0127】
(エネルギー線硬化性樹脂(G))
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)が、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0128】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0129】
アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0130】
エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30,000であることが好ましく、300~10,000であることがより好ましい。
【0131】
重合に用いるエネルギー線硬化性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合に用いるエネルギー線硬化性化合物が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0132】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合の、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量は、第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)の有効成分の全量基準で、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが更に好ましい。
【0133】
(光重合開始剤(H))
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)が、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0134】
光重合開始剤(H)としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2-ジフェニルメタン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、及び2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
【0135】
第一光重合開始剤(H)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤(H)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0136】
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが更に好ましい。
【0137】
(汎用添加剤(I))
第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)及び第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(I)を含有していてもよい。汎用添加剤(I)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
好ましい汎用添加剤(I)としては、例えば、レオロジーコントロール剤、界面活性剤、シリコーンオイル、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、及びゲッタリング剤等が挙げられる。
【0138】
汎用添加剤(I)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。汎用添加剤(I)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
汎用添加剤(I)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0139】
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)及び第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述の重合体成分(A)と、熱硬化性成分(B)と、硬化促進剤(C)と、充填材(D)と、カップリング剤(E)と、架橋剤(F)と、エネルギー線硬化性樹脂(G)と、光重合開始剤(H)と、添加剤(I)と、のいずれにも該当しない、他の成分を含有していてもよい。
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)及び第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)及び第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)の前記他の成分の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0140】
(溶媒)
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。
溶媒を含有する第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、取り扱い性が良好となる。
溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶媒が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
溶媒は、第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0141】
(第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)の調製方法)
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)は、これを構成するための各成分を配合して調製される。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。溶媒を用いる場合には、溶媒を、この溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0142】
<第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)>
第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)は、エネルギー線硬化性成分(a)を含有する。
第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)は、例えば、エネルギー線硬化性成分(a)を含有する第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)から形成される。
エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化で且つ粘着性を有することがより好ましい。
なお、本明細書の以下の記載において、「第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)の有効成分の全量基準での各成分の含有量」は、「第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)から形成される第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)の各成分の含有量」と同義である。
【0143】
(エネルギー線硬化性成分(a))
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)に造膜性や可撓性等を付与するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80,000~2,000,000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80,000の化合物(a2)が挙げられる。重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0144】
(重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80,000~2,000,000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が重合してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0145】
他の化合物が有する基と反応可能な官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、及びエポキシ基等が挙げられる。ただし、半導体ウエハや半導体チップ等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0146】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、官能基を有するアクリル系モノマーと、官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。また、アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0147】
官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、及びエポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0148】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0149】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0150】
官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマー、又はカルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0151】
アクリル系重合体(a11)を構成する、官能基を有するアクリル系モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル系重合体(a11)を構成する、官能基を有するアクリル系モノマーが2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0152】
官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、及び(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0153】
官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0154】
アクリル系重合体(a11)を構成する、官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル系重合体(a11)を構成する、官能基を有しないアクリル系モノマーが2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0155】
非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0156】
アクリル系重合体(a11)を構成する非アクリル系モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル系重合体(a11)を構成する非アクリル系モノマーが2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0157】
アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全質量に対する、官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが更に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、アクリル系重合体(a11)とエネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られたアクリル系樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、第一硬化樹脂膜(r1)の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節可能となる。
【0158】
アクリル系樹脂(a1-1)を構成するアクリル系重合体(a11)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル系樹脂(a1-1)を構成するアクリル系重合体(a11)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0159】
アクリル系樹脂(a1-1)の含有量は、第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)の有効成分の全量基準で、1~60質量%であることが好ましく、3~50質量%であることがより好ましく、5~40質量%であることが更に好ましい。
【0160】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
エネルギー線硬化性化合物(a12)は、アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。
エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0161】
エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中にエネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~2個有することがより好ましい。
【0162】
エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。これらの中でも、エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0163】
アクリル系樹脂(a1-1)を構成するエネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル系樹脂(a1-1)を構成するエネルギー線硬化性化合物(a12)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0164】
アクリル系樹脂(a1-1)において、アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが更に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、硬化後の第一硬化樹脂膜(r1)の接着力がより大きくなる。したがって、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の膜剥がれをより抑制しやすくできる。なお、エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0165】
重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100,000~2,000,000であることが好ましく、300,000~1,500,000であることがより好ましい。
【0166】
重合体(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものである場合、重合体(a1)は、アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤と反応する基を有するモノマーが重合して、前記架橋剤と反応する基において架橋されたものであってもよいし、エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、前記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
【0167】
重合体(a1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合体(a1)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0168】
(化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が100~80,000の化合物(a2)が有するエネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、又はビニル基等が挙げられる。
【0169】
化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、及びエネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0170】
化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0171】
化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。
【0172】
化合物(a2)は、重量平均分子量が100~30,000であることが好ましく、300~10,000であることがより好ましい。
【0173】
化合物(a2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。化合物(a2)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0174】
(エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b))
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)及び第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)が、エネルギー線硬化性成分(a)として化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0175】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、及びアクリルウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0176】
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよい。また、アクリル系重合体(b-1)は、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0177】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、及び置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0178】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、及び(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0179】
環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0180】
グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0181】
アクリル系重合体(b-1)を構成する非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0182】
少なくとも一部が架橋剤によって架橋された、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤と反応したものが挙げられる。
反応性官能基は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、及びアミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。
また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。
ただし、半導体ウエハや半導体チップの回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0183】
反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、反応性官能基を有するものを用いればよい。例えば、反応性官能基として水酸基を有する重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0184】
反応性官能基を有する重合体(b)において、これを構成する構成単位の全質量に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0185】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)の造膜性がより良好となる点から、10,000~2,000,000であることが好ましく、100,000~1,500,000であることがより好ましい。
【0186】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0187】
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)としては、重合体(a1)及び化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。
そして、第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)が化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに重合体(a1)を含有することも好ましい。
また、第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)は、化合物(a2)を含有せず、重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0188】
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)が、重合体(a1)、化合物(a2)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、化合物(a2)の含有量は、重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0189】
エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量は、第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)の有効成分の全量基準で、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが更に好ましい。エネルギー線硬化性成分の含有量がこのような範囲であることで、第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)のエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0190】
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)は、エネルギー線硬化性成分以外に、目的に応じて、熱硬化性成分、硬化促進剤、光重合開始剤、充填材、カップリング剤、架橋剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
例えば、エネルギー線硬化性成分及び熱硬化性成分を含有する第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)を用いることにより、形成される第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)は、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、この第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)から形成された第一硬化樹脂膜(r1)の強度も向上する。
【0191】
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)における熱硬化性成分、光重合開始剤、充填材、カップリング剤、架橋剤、及び汎用添加剤としては、それぞれ、第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)における熱硬化性成分(B)、硬化促進剤(C)、光重合開始剤(H)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、及び汎用添加剤(I)と同じものが挙げられる。
【0192】
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)において、熱硬化性成分、光重合開始剤、充填材、カップリング剤、架橋剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)における熱硬化性成分、光重合開始剤、充填材、カップリング剤、架橋剤、及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0193】
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)が含有する溶媒としては、例えば、第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)が含有する溶媒は、種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0194】
(その他の成分)
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)及び第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述の成分のいずれにも該当しない、他の成分を含有していてもよい。
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)及び第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)及び第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)の前記他の成分の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0195】
(第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)の製造方法)
第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を、この溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0196】
<第一支持シート(Y1)>
第一支持シート(Y1)は、第一硬化性樹脂(x1)を支持するための支持体として機能する。
第一支持シート(Y1)は、
図10に示すように、基材51のみから構成されていてもよく、
図11に示すように、基材51と粘着剤層61との積層体であってもよく、
図12に示すように、基材51と中間層71と粘着剤層61とがこの順で積層された積層体であってもよい。基材51と中間層71と粘着剤層61とがこの順で積層された積層体は、バックグラインドシート(b-BG)としての使用に好適である。
【0197】
以下、第一支持シート(Y1)が有する基材、第一支持シート(Y1)が有していてもよい粘着剤層及び中間層について説明する。
【0198】
(基材)
基材は、シート状又はフィルム状のものであり、その構成材料としては、例えば、以下の各種樹脂が挙げられる。
基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、基材を構成する樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、基材を構成する樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂のうちの1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂のうちの1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0199】
基材を構成する樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。基材を構成する樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0200】
基材は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。基材が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0201】
基材の厚さは、5μm~1,000μmであることが好ましく、10μm~500μmであることがより好ましく、15μm~300μmであることが更に好ましく、20μm~150μmであることがより更に好ましい。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0202】
基材は、厚さの精度が高いもの、即ち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような、基材を構成するのに使用可能な厚さの精度が高い材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0203】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0204】
基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、あるいは、他の層が蒸着されていてもよい。また、第一硬化性樹脂フィルム(x1)が第一エネルギー線硬化性樹脂フィルム(x1-2)である場合、及び粘着剤層がエネルギー性硬化性の粘着剤層である場合、基材はエネルギー線を透過させるものであることが好ましい。
【0205】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0206】
(粘着剤層)
粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂((メタ)アクリロイル基を有する樹脂からなる粘着剤)、ウレタン系樹脂(ウレタン結合を有する樹脂からなる粘着剤)、ゴム系樹脂(ゴム構造を有する樹脂からなる粘着剤)、シリコーン系樹脂(シロキサン結合を有する樹脂からなる粘着剤)、エポキシ系樹脂(エポキシ基を有する樹脂からなる粘着剤)、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート等の粘着性樹脂が挙げられる。これらの中でも、アクリル系樹脂が好ましい。
【0207】
なお、本発明において、「粘着性樹脂」とは、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方を含む概念であり、例えば、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用によって粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含む。
【0208】
粘着剤層は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。粘着剤層が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0209】
粘着剤層の厚さは1μm~1000μmであることが好ましく、5μm~500μmであることがより好ましく、10μm~100μmであることが更に好ましい。ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0210】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものでもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものでもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤を用いて形成された粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を容易に調節できる。
【0211】
<中間層>
中間層は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料は目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、半導体表面を覆う保護膜に、半導体表面に存在するバンプの形状が反映されることによって、第一硬化樹脂膜(r1)が変形してしまうのを抑制することを目的とする場合、中間層の好ましい構成材料としては、凹凸追従性が高く、中間層の貼付性がより向上する点から、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0212】
中間層は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。中間層が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0213】
中間層の厚さは、保護対象となる半導体表面のバンプの高さに応じて適宜調節できるが、比較的高さが高いバンプの影響も容易に吸収できる点から、50μm~600μmであることが好ましく、70μm~500μmであることがより好ましく、80μm~400μmであることが更に好ましい。ここで、「中間層の厚さ」とは、中間層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる中間層の厚さとは、中間層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0214】
次に、第一積層体(α1)の製造方法について説明する。
【0215】
[第一積層体(α1)の製造方法]
第一積層体(α1)は、上記の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造することができる。
例えば、第一支持シート(Y1)を製造する際に、基材上に粘着剤層又は中間層を積層する場合には、基材上に粘着剤組成物又は中間層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させるか、又はエネルギー線を照射することで、粘着剤層又は中間層を積層できる。
塗工方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0216】
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに第一硬化性樹脂フィルム(x1)を積層する場合には、粘着剤層上に第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)又は第一エネルギー線硬化性樹脂組成物(x1-2-1)を塗工して、第一硬化性樹脂(x1)を直接形成することが可能である。
同様に、基材上に積層済みの中間層の上に、さらに粘着剤層を積層する場合には、中間層上に粘着剤組成物を塗工して、粘着剤層を直接形成することが可能である。
【0217】
このように、いずれかの組成物を用いて、連続する2層の積層構造を形成する場合には、前記組成物から形成された層の上に、さらに組成物を塗工して新たに層を形成することが可能である。ただし、これら2層のうちの後から積層する層は、別の剥離フィルム上に前記組成物を用いてあらかじめ形成しておき、この形成済みの層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、既に形成済みの残りの層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0218】
[第二積層体(α2)]
第二積層体(α2)は、半導体ウエハの裏面に保護膜を形成することが可能な構成であれば特に限定されず、例えば、第一積層体(α1)と同様の構成を採用することができる。
したがって、第二積層体(α2)が有する第二硬化性樹脂(x2)は、上記の第一硬化性樹脂(x1)と同様の材質及び構成であってもよい。
【0219】
(着色剤(J))
ここで、レーザーマーキングにより形成される印字の視認性の向上の観点、半導体チップ裏面の研削痕を見えにくくして半導体チップの意匠性を向上させる観点等から、第二硬化性樹脂(x2)及び第二硬化性樹脂(x2)を形成するための第二硬化性樹脂形成用組成物は、着色剤(J)を含有することが好ましい。
着色剤(J)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色等が挙げられる。
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0220】
第二硬化性樹脂(x2)及び第二硬化性樹脂(x2)を形成するための第二硬化性樹脂形成用組成物が含有する着色剤(J)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。着色剤(J)が、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
着色剤(J)を用いる場合、第二硬化性樹脂フィルム(x2)の着色剤(J)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、既述のように、第二硬化性樹脂(x2)を硬化することで形成される硬化物である第二硬化樹脂膜(r2)はレーザー照射により印字が施される場合があり、第二硬化性樹脂(x2)の着色剤(J)の含有量を調節し、保護膜の光透過性を調節することにより、印字視認性を調節できる。また、着色剤(J)の含有量を調節することで、保護膜の意匠性を向上させ、半導体ウエハの裏面の研削痕を見えにくくすることもできる。これらの点を考慮すると、第二硬化性樹脂フィルム(x2)を形成するための第二硬化性樹脂形成用組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量(第二硬化性樹脂フィルム形成用組成物の固形分の総質量ともいう)に対する着色剤(J)の含有量の割合(すなわち、第二硬化性樹脂(x2)の着色剤(J)の含有量)は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~7.5質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが特に好ましい。着色剤(J)の前記含有量が前記下限値以上であることで、着色剤(J)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、着色剤(J)の前記含有量が前記上限値以下であることで、第二硬化性樹脂(x2)の光透過性の過度な低下が抑制される。
【0221】
なお、上述した第一硬化性樹脂(x1)及び第一硬化性樹脂形成用組成物中においても、着色剤(J)を含有していてもよい。但し、半導体チップ作製用ウエハの分割予定ラインの視認性を確保する観点から、着色剤(J)の含有量は、当該分割予定ラインの視認性を確保し得るレベルの透明性が確保される範囲内の量であることが好ましい。
【0222】
また、第二積層体(α2)が有する第二支持シート(Y2)は、上記の第一支持シート(Y1)と同様の構成であってもよい。具体的には、第二支持シート(Y2)は、第一支持シート(Y1)と同様、
図10に示すような基材51のみからなるものであってもよく、
図11に示すような基材51と粘着剤層61とが積層された粘着シートであってもよく、
図12に示すような基材51と中間層71と粘着剤層61とが積層された粘着シートであってもよい。
第二支持シート(Y2)が有する基材、中間層、及び粘着剤層は、第一支持シート(Y1)が有する基材、中間層、及び粘着剤層と同様の構成及び材質であってもよい。
【実施例】
【0223】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0224】
1.半導体チップ作製用ウエハの準備
半導体チップ作製用ウエハとして、分割予定ラインをハーフカットした12インチのシリコンウエハ(ウエハ厚さ775μm)を用いた。当該シリコンウエハのハーフカット部の幅(溝部の幅)は200μmであり、溝の深さは200μmである。
【0225】
2.第一硬化性樹脂(x1)の貼付
半導体チップ作製用ウエハの表面側(ハーフカット形成面)に、第一支持シート(Y1)としてバックグラインドテープ(リンテック社製「E-8510HR」)と厚さ90μmの第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)とを積層した第一積層体(α1)を、第一硬化性樹脂(x1)側を貼付面として、以下の条件で押圧しながら貼付した。
・貼付装置:全自動貼合機(リンテック株式会社製、製品名「RAD-3510」)
・ローラー圧力:0.5MPa
・ローラー高さ:-400μm
・貼付速度:5mm/sec
・貼付温度:90℃
【0226】
なお、層(X1)のせん断弾性率G’は、1,000Paであった。
せん断弾性率G’は、以下の方法で測定した。
第一硬化性樹脂(x1)について、厚さ100μmの第一硬化性樹脂(x1)を10シート積層し、厚さ1mmの第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)を準備した。次いで、この第一硬化性樹脂(x1)を直径8mmの円板状に裁断して、第一硬化性樹脂(x1)の層(X1)の試験片を得た。そして、せん断粘度測定装置:動的粘弾性測定装置(ARES;TA Instruments社製)の試験片の設置箇所をあらかじめ90℃で保温しておき、この設置箇所に試験片を載置し、試験片の上面に測定治具を押し当てることで、試験片を前記設置箇所に固定して設置した。次いで、温度90℃、測定周波数1Hzの条件で、試験片に400%のひずみを発生させて、試験片のせん断弾性率G’を測定した。
【0227】
第一硬化性樹脂(x1)は、第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)を用いて製造した。
第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)の調製に用いた成分を以下に示す。
・重合体成分
重合体成分(A)-1:アクリル酸ブチル(以下、「BA」と略記する)(55質量部)、アクリル酸メチル(以下、「MA」と略記する)(10質量部)、メタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」と略記する)(20質量部)及びアクリル酸-2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」と略記する)(15質量部)を共重合してなるアクリル系樹脂(重量平均分子量800,000、ガラス転移温度-28℃)。
・エポキシ樹脂
エポキシ樹脂(B1)-1:液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製「YL983U」);重量平均分子量=340
エポキシ樹脂(B1)-2:多官能芳香族型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製「EPPN-502H」);重量平均分子量=1,000
エポキシ樹脂(B1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON HP-7200」);重量平均分子量=600
・熱硬化剤
熱硬化剤(B2)-1:ノボラック型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製「BRG-556」)
・硬化促進剤
硬化促進剤(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製「キュアゾール2PHZ-PW」)
・充填材
充填材(D)-1:エポキシ基で修飾された球状シリカ(アドマテックス社製「アドマナノ YA050C-MKK」);0.05μm(平均粒径);19質量%(第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)中の含有率)
【0228】
重合体成分(A)-1を100質量部、エポキシ樹脂(B1)-1を135質量部、エポキシ樹脂(B1)-2を90質量部、エポキシ樹脂(B1)-3を150質量部、熱硬化剤(B2)-1を180質量部、硬化促進剤(C)-1を1質量部、及び充填材(D)-1を160質量部、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌し、固形分濃度が55質量%である第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)を調製した。
【0229】
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面に、上記で得られた第一熱硬化性樹脂組成物(x1-1-1)を塗工し、100℃で2分間乾燥させることにより、厚さ90μmの熱硬化性を有する第一熱硬化性樹脂フィルム(x1-1)を、第一硬化性樹脂(x1)として作製した。
次いで、バックグラインドテープの粘着剤層の露出面に、第一硬化性樹脂(x1)の露出面を貼り合わせ、バックグラインドテープ、第一硬化性樹脂(x1)、及び剥離フィルムが、これらの厚さ方向においてこの順に積層されてなる第一積層体(α1)を得た。
この第一積層体(α1)を半導体チップ作製用ウエハに貼付する際には、第一積層体(α1)から剥離フィルムを剥離し、第一硬化性樹脂(x1)を露出させて用いた。
【0230】
3.評価
第一硬化性樹脂(x1)を貼り付けた半導体チップ作製用ウエハを、160℃で1時間加熱して硬化させて第一硬化樹脂膜(r1)とした後、バックグラインドを行って裏面を625μm研削して、半導体チップ作製用ウエハの厚さを150μmとした後、裏面観察と断面研磨観察を実施した。断面研磨観察は、光学顕微鏡(キーエンス社製「VHX-1000」)により実施した。
【0231】
4.結果
図13に裏面観察結果を示し、
図14に断面研磨観察結果を示す。いずれの結果からも、溝部13への第一硬化樹脂膜(r1)の埋め込み性は良好であることが確認できた。また、断面研磨観察結果から、ウエハ表面の第一硬化樹脂膜(r1)の被覆性も良好であることが確認できた。これらの結果から、本発明の製造方法により、バンプ形成面及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で良好に被覆された半導体チップを得ることが可能であることを確認することができた。
【符号の説明】
【0232】
10 半導体チップ作製用ウエハ
11 ウエハ
11a バンプ形成面
11b 裏面
12 バンプ
13 溝部
40 半導体チップ
x1 第一硬化性樹脂
r1 第一硬化樹脂膜
X1 層
Y1 第一支持シート
α1 第一積層体
x2 第二硬化性樹脂
r2 第二硬化樹脂膜
X2 層
Y2 第二支持シート
α2 第二積層体
51 基材
61 粘着剤層
71 中間層