(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-03
(45)【発行日】2025-07-11
(54)【発明の名称】芳香剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20250704BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20250704BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20250704BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20250704BHJP
【FI】
A61L9/01 Q
C09B67/20 F
C09K3/00 104
C11B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2020129099
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-06-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】中井 真衣
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良太
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-012052(JP,A)
【文献】特開2015-148038(JP,A)
【文献】特開平09-173430(JP,A)
【文献】特開平06-178800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
C09K 3/00- 3/32
C09B 67/20
C11B 9/00- 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)香料、(B)着色剤、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤、及び(D)ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤を含むラジカル捕捉剤を含む、芳香剤組成物。
【請求項2】
(C)紫外線吸収剤が、更に、トリアジン系紫外線吸収剤、及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項3】
(C)紫外線吸収剤が2種以上含まれる、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項4】
(C)紫外線吸収剤が、下記(1)又は(2)の組み合わせを含む、請求項
3に記載の芳香剤組成物。
(1)少なくとも1種のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と少なくとも1種のトリアジン系紫外線吸収剤との組み合わせ。
(2)少なくとも1種のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と少なくとも1種のベンゾフェノン系紫外線吸収剤との組み合わせ。
【請求項5】
ラジカル捕捉剤が、更に、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を含む、請求項1
~4のいずれかに記載の芳香剤組成物。
【請求項6】
着色剤及び香料を含む芳香剤組成物の光暴露による退色を抑制する方法であって、
芳香剤組成物中で、(A)香料、(B)着色剤、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤、及び(D)ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤を含むラジカル捕捉剤を共存させる、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤を含み、光暴露による着色剤の退色が抑制されている芳香剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
室内等に香気を分散させて快適な空間を生み出すため、香料を配合した芳香剤組成物が広く使用されている。また、芳香剤組成物には様々な着色剤を添加して鮮やかな色調を付与し、消費者の嗜好性を満たす工夫がなされている。
【0003】
通常、芳香剤組成物は、その色調や使用中の残量を確認できるように、透明部を有する容器に充填して使用されている。しかしながら、このような容器に充填して使用すると、日光の照射等の光暴露により経時的に芳香剤組成物中の色素が退色して使用開始時の良好な外観が維持されないという問題があった。芳香剤組成物中の色素の退色を目立たなくするには、色素を多量に配合したり、遮光容器に充填することによって対処できるが、このような手法では、付与すべき色調が制限されたり、芳香剤の色調を視認できなくなったりするという欠点がある。
【0004】
そこで、従来、着色剤を含み、光暴露による着色剤の退色を抑制できる芳香剤組成物が報告されている。例えば、特許文献1では、(A)窒素原子を有するキサンテン系色素成分及び(B)アルデヒド系香料成分を含有し、(A)成分1モル当たり(B)成分が1~600モル含まれる芳香剤組成物は、光暴露による色素の退色を抑制できることが開示されている。特許文献1は、芳香剤組成物中の着色剤の退色抑制に有効な手法を開示しているものの、配合する着色剤及び香料の制約があるため、着色剤や香料の種類に拘わらず、光暴露による着色剤の退色を抑制する技術の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、着色剤を含み、光暴露による着色剤の退色が抑制されている芳香剤組成物を提供することである。
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、芳香剤組成物において、香料と着色剤と共に、紫外線吸収剤及びラジカル捕捉剤を配合することによって、光暴露による着色剤の退色を効果的に抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)香料、(B)着色剤、(C)紫外線吸収剤、及び(D)ラジカル捕捉剤を含む、芳香剤組成物。
項2. (C)紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の芳香剤組成物。
項3. (C)紫外線吸収剤が2種以上含まれる、項1又は2に記載の芳香剤組成物。
項4. (C)紫外線吸収剤が、下記(1)~(3)のいずれかの組み合わせを含む、項3に記載の芳香剤組成物。
(1)少なくとも1種のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と少なくとも1種のトリアジン系紫外線吸収剤との組み合わせ。
(2)少なくとも1種のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と少なくとも1種のベンゾフェノン系紫外線吸収剤との組み合わせ。
(3)少なくとも1種のトリアジン系紫外線吸収剤と少なくとも1種のベンゾフェノン系紫外線吸収剤との組み合わせ。
項5. ラジカル捕捉剤が、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤及び/又はヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤である、項1~4のいずれかに記載の芳香剤組成物。
項6. 着色剤及び香料を含む芳香剤組成物の光暴露による退色を抑制する方法であって、
芳香剤組成物中で、(A)香料、(B)着色剤、(C)紫外線吸収剤、及び(D)ラジカル捕捉剤を共存させる、前記方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の芳香剤組成物によれば、光暴露による色素の退色が抑制され、長期間使用しても使用開始時と同様の鮮やかな色調を維持することができる。そのため、本発明の液体芳香剤組成物は、透明部分を有する容器に充填して使用した場合であっても、所望の色調が維持することができ、優れた意匠的効果を持続させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.芳香剤組成物
本発明の芳香剤組成物は、香料((A)成分と表記することもある)、着色剤((B)成分と表記することもある)、紫外線吸収剤((C)成分と表記することもある)、及びラジカル捕捉剤((D)成分と表記することもある)を含有することを特徴とする。以下、本発明の芳香剤組成物について詳述する。
【0011】
[(A)香料]
本発明の芳香剤組成物は、芳香成分として、香料を含む。本発明で使用される香料については、天然香料、天然香料から分離された単品香料、合成された単品香料、これらの調合香料等のいずれの油性香料であってもよく、従来公知の香料を使用することができる。具体的には、単品香料として、炭化水素系香料、アルコール系香料、エーテル系香料、アルデヒド系香料、アセタール系香料、エステル系香料、ケトン系香料、カルボン酸系香料、ラクトン系香料、ムスク系香料、ニトリル系香料、硫黄含有香料等が挙げられる。また、天然香料としては、チュベローズ油、ムスクチンキ、カストリウムチンキ、シベットチンキ、アンバーグリスチンキ、ペパーミント油、ペリラ油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、しょう脳油、芳油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、オコチア油、パチュリ油、タイム油、トンカ豆チンキ、テレピン油、ワニラ豆チンキ、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、カシア油、シダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、タンジェリン油、アニス油、ベイ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ガルバナム油、ゼラニウム油、ヒバ油、桧油、ジャスミン油、ベチバー油、ベルガモット油、イランイラン油、グレープフルーツ油、ゆず油等が挙げられる。これらの香料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて調香して使用することもできる。
【0012】
本発明の芳香剤組成物における(A)成分の含有量については、使用する香料の種類、呈させるべき香りの強さ等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~40重量%、好ましくは0.5~30重量%、より好ましくは1~20重量%が挙げられる。
【0013】
[(B)着色剤]
本発明の芳香剤組成物は着色剤を含む。本発明の芳香剤組成物では、後述する(C)及び(D)成分を含むことにより、光暴露を受けても着色剤が安定に保持され、退色を抑制することができる。
【0014】
本発明で使用される着色剤は、顔料又は染料のいずれであってもよい。また、本発明で使用される着色剤が呈する色の種類については、特に制限されないが、例えば、青色、赤色、黄色、紫色、緑色、黒色、白色等が挙げられる。これらの中でも、青色及び赤色を呈する着色剤は、光暴露による退色が目立ち易いという欠点があるが、本発明の芳香剤組成物では、青色及び赤色を呈する着色剤を使用しても、光暴露による退色を効果的に抑制することができる。このような本発明の効果を鑑みると、好適な着色剤として、青色及び/又は赤色を呈する着色剤が挙げられる。
【0015】
また、本発明で使用される着色剤は、親油性又は水性のいずれであってもよく、使用する溶剤の種類に応じて適宜設定すればよいが、暴露による退色をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは親油性の着色剤が挙げられる。
【0016】
親油性の着色剤の種類については、特に制限されないが、例えば、アントラキノン系色素、タール系色素、キノフタロン系色素、ペリレン系色素等が挙げられる。
【0017】
アントラキノン系色素としては、具体的には、C.I.ソルベントブルー11、12、35、36、59、74等の青色系着色剤;C.I.ソルベントバイオレット47等の紫色系着色剤等が挙げられる。なお、本書において、「C.I.」はカラーインデックス(Colour Index International)の略記である。
【0018】
タール系色素としては、具体的には、C.I.ソルベントレッド1、24、43、48、C.I.アシドレッド2、8、C.I.ソルベントオレンジ7等の赤色系着色剤;C.I.ソルベントブルー63等の青色系着色剤;C.I.ソルベントイエロー5、6、7、6、2133等の黄色系着色剤;C.I.ソルベントレッド72、73、C.I.ソルベントオレンジ1、2、C.I.アシドオレンジ7、92等の橙色系着色剤;C.I.ソルベントグリーン3、7等の緑色系着色剤;C.I.ソルベントバイオレット13等の紫色系着色剤;C.Iアシドブラック1、63等の黒色系着色剤等が挙げられる。
【0019】
キノフタロン系色素としては、具体的には、C.I.ソルベントイエロー114等の黄色系着色剤等が挙げられる。
【0020】
ペリレン系色素としては、具体的には、C.I.ソルベンオレンジ55等の橙色系着色剤等が挙げられる。
【0021】
これらの親油性の着色剤の中でも、暴露による退色をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは、アントラキノン系色素、タール系色素、キノフタロン系色素;より好ましくはアントラキノン系色素、タール系色素;更に好ましくはアントラキノン系の青色色素、タール系の赤色色素;特に好ましくはC.I.ソルベントブルー35、C.I.ソルベントレッド24が挙げられる。
【0022】
これらの着色剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明の芳香剤組成物における(B)成分の含有量については、使用する着色剤の種類、呈させるべき色調等に応じて適宜設定すればよいが、0.001~1000ppm、好ましくは0.01~100ppm、より好ましくは0.1~50ppmが挙げられる。
【0024】
[(C)紫外線吸収剤]
本発明の芳香剤組成物は、紫外線吸収剤を含む。本発明の芳香剤組成物では、紫外線吸収剤と、後述するラジカル捕捉剤とを併用することにより、暴露による着色剤の退色を効果的に抑制することが可能になる。
【0025】
本発明で使用される紫外線吸収剤の種類については、特に制限されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサリルアラニド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。なお、本発明において、「ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤」とはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線吸収剤を指しており、他の紫外線吸収剤に関する表記も同様である。
【0026】
これらの紫外線吸収剤の中でも、暴露による着色剤の退色をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0027】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、具体的には、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3',5'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール)、イソオクチル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート、2-(3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-4'-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-(3'',4'',5'',6''-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5'-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール等が挙げられる。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の中でも、好ましくは2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0028】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的には、5,5’-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)-2,2’-[6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル]ジフェノール、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニルー1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ジフェニルー1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。これらのトリアジン系紫外線吸収剤の中でも、好ましくは5,5’-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)-2,2’-[6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル]ジフェノールが挙げられる。
【0029】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4'-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらのベンゾフェノン系紫外線吸収剤の中でも、好ましくは2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0030】
本発明の芳香剤組成物において、紫外線吸収剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。暴露による着色剤の退色をより一層効果的に抑制するという観点から、2種以上の紫外線吸収剤を組み合わせて使用することが好ましい。
【0031】
本発明の芳香剤組成物において、2種以上の紫外線吸収剤を組み合わせて使用する場合、紫外線吸収剤の組み合わせ態様については、特に制限されないが、好適な例として、少なくとも1種のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と少なくとも1種のトリアジン系紫外線吸収剤との組み合わせ;少なくとも1種のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と少なくとも1種のベンゾフェノン系紫外線吸収剤との組み合わせ;少なくとも1種のトリアジン系紫外線吸収剤と少なくとも1種のベンゾフェノン系紫外線吸収剤との組み合わせが挙げられる。
【0032】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の総量100重量部に対して、トリアジン系紫外線吸収剤の総量が、10~100000重量部、好ましくは100~10000重量部、より好ましくは100~3000重量部が挙げられる。
【0033】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とベンゾフェノン系紫外線吸収剤とを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の総量100重量部に対して、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の総量が、10~100000重量部、好ましくは100~10000重量部、より好ましくは100~3000重量部が挙げられる。
【0034】
トリアジン系紫外線吸収剤とベンゾフェノン系紫外線吸収剤とを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤の総量100重量部に対して、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の総量が、1~10000重量部、好ましくは10~1000重量部、より好ましくは10~300重量部が挙げられる。
【0035】
本発明の芳香剤組成物における(C)成分の含有量については、使用する紫外線吸収剤等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(C)成分の総量で0.0001~10重量%、好ましくは0.0005~5重量%、より好ましくは0.001~2重量%、更に好ましくは0.002~1重量%が挙げられる。
【0036】
[(D)ラジカル捕捉剤]
本発明の芳香剤組成物は、ラジカル捕捉剤を含む。本発明の芳香剤組成物では、前述する紫外線吸収剤と共に、ラジカル捕捉剤とを共存させることにより、暴露による着色剤の退色を効果的に抑制することが可能になる。
【0037】
本発明で使用されるラジカル捕捉剤の種類については、特に制限されないが、例えば、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤、セミヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤、レスヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤等が挙げられる。なお、本発明において、「ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤」とはヒンダードアミン構造を有するラジカル捕捉剤を指しており、他のラジカル捕捉剤に関する表記も同様である。
【0038】
これらのラジカル捕捉剤の中でも、暴露による着色剤の退色をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤が挙げられる。
【0039】
ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤としては、具体的には、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2-t-ブチル-6-(3-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,3,5-トリス(3',5'-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤の中でも、好ましくは、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]が挙げられる。
【0040】
ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤としては、具体的には、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアート、メチル=1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル=セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)=デカンジオアート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)=セバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)-2-ドデシルスクシンイミド、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)=1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート等が挙げられる。これらのヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤の中でも、好ましくは、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアート、メチル=1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル=セバケートが挙げられる。
【0041】
本発明の芳香剤組成物において、ラジカル捕捉剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
本発明の芳香剤組成物において、(C)成分と(D)成分の比率としては、例えば、(C)成分の総量100重量部当たり、(D)成分の総量が1~100000重量部、好ましくは10~50000重量部、より好ましくは100~10000重量部が挙げられる。
【0043】
本発明の芳香剤組成物における(D)成分の含有量については、使用する紫外線吸収剤等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(D)成分の総量で0.001~15重量%、より好ましくは0.01~5重量%、更に好ましくは0.1~3重量%が挙げられる。
【0044】
[溶剤]
本発明の芳香剤組成物は、前記(A)~(D)成分を溶解、可溶化、又は分散させるための基材として溶剤が含まれる。本発明で使用される溶剤は、香料を溶解、可溶化、又は分散し得るものであればよく、水であってもよいが、好ましくは親油性溶剤が挙げられる。
【0045】
親油性溶剤としては、具体的には、パラフィン系炭化水素(形質流動イソパラフィン、形質流動ノルマルパラフィン)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。これらの親油性溶剤の中でも、好ましくはパラフィン系炭化水素、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールが挙げられる。
【0046】
これらの溶剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
本発明において溶剤の好適な一例として、パラフィン系炭化水素と3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールとの組み合わせが挙げられる。パラフィン系炭化水素と3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールとを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、パラフィン系炭化水素の総量100重量部当たり、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールが0.01~10000重量部、好ましくは0.1~1000重量部、より好ましくは1~150重量部が挙げられる。
【0048】
本発明の芳香剤組成物における溶剤の含有量については、他の含有成分を除いた残部であればよいが、例えば、溶剤の総量で30~99重量%、好ましくは65~98重量%、より好ましくは69~98重量%、更に好ましくは79~98重量%が挙げられる。
【0049】
[その他の成分]
本発明の芳香剤組成物は、前記成分に加えて、本発明の効果を妨げないことを限度として、他の成分が含まれていてもよい。本発明の芳香剤組成物に配合可能な他の成分としては、例えば、防腐剤、消臭成分、除菌剤、界面活性剤、pH調整剤、殺虫成分、防虫成分、忌避成分等の成分が挙げられる。
【0050】
[形態・使用態様]
本発明の芳香剤組成物の形態については、特に制限されず、例えば、液状、ゲル状が挙げられる。本発明の芳香剤組成物の形態として、好ましくは液状である。
【0051】
本発明の芳香剤組成物は、居室、トイレ、車内等に設置して、空間の香気の付与のために使用される。
【0052】
本発明の芳香剤組成物が液状の場合であれば、本発明の芳香剤組成物を揮散させる好適な一態様として、不織布、木質材料、スポンジ等の揮散部材を介して揮散させる揮散器を使用する方法が挙げられる。当該揮散器として、具体的には、開口部を有する液体容器と、揮散部材と、当該液体容器に収容された本発明の芳香剤組成物とを含んで構成され、当該揮散部材の少なくとも一部が本発明の芳香剤組成物に浸漬され、且つ当該揮散部材の少なくとも一部が当該開口部から空気中に露出可能に設置されているものが例示される。このような揮散器を使用することにより、揮散部材によって本発明の液体芳香剤組成物の吸い上げと揮散が行われ、効率的に空間に香気を揮散させることができる。
【0053】
また、本発明の芳香剤組成物は、光暴露による色素の退色が抑制されているので、内部を視認可能な透明容器に収容して使用することもできる。このような透明容器に収容することにより、芳香剤組成物の色調による意匠的効果が奏され、更に使用中の残量を確認することも可能になる。なお、前記透明容器は、少なくとも一部の壁面領域が内部を視認できる程度の透明性を備えるものであればよく、必ずしも全壁面領域が内部を視認できる程度の透明性を備えていなくてもよい。
【0054】
2.退色抑制方法
本発明の退色抑制方法は、香料及び着色剤を含む芳香剤組成物の光暴露による退色を抑制する方法であって、芳香剤組成物中で、(A)香料、(B)着色剤、(C)紫外線吸収剤、及び(D)ラジカル捕捉剤を共存させることを特徴とする。
【0055】
本発明の退色抑制方法において、使用される(A)~(D)成分の種類や含有量、配合される溶剤の種類や含有量、その他の成分、芳香剤組成物の形態や使用態様等については、前記「1.芳香剤組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されて解釈されるものではない。
【0057】
なお、以下の試験例及び処方例で使用した主な成分の化合物名等は、以下の通りである。
・香料A:フラワーの香りを呈する油性調合香料
・香料B:シトラスの香りを呈する油性調合香料
・アントラキノン系色素(青色):C.I.ソルベントブルー35
・タール系色素(赤色):C.I.ソルベントレッド24
・キノフタロン系色素(黄色):C.I.ソルベントイエロー114
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
・トリアジン系紫外線吸収剤:5,5’-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)-2,2’-[6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル]ジフェノール
・ベンゾフェノン系紫外線吸収剤:2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン
・ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤:ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアート約80重量部とメチル=1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル=セバケート約20重量部の混合物
・ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤:ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]
【0058】
試験例
表1及び2に示す組成の芳香剤組成物を調製した。得られた各芳香剤組成物をガラス製の透明容器に充填して密封し、昼間には太陽光が当たる室内に4週間保存した。保存4週間後に、各芳香剤組成物の色調を目視により観察し、以下の判定基準に従って、保存前後での色調変化を評価した。
<判定基準>
5:保存後に退色が全く認められず、保存前後で色調に変化が全くない。
4:保存後にかすかな退色が認められるが、保存前と略同じ色調を維持できている。
3:保存後に少しだけ退色が認められ、保存前に比べて少しだけ色調が変化しているが、実用上は十分に許容できるレベルである。
2:保存後に明らかな退色が認められ、保存前に比べて、明らかに色調が変化している。
1:着色剤の色が完全に消失している。
【0059】
結果を表1及び2に示す。香料及び着色剤を含む芳香剤組成物において、紫外線吸収剤又はラジカル捕捉剤の一方のみを含む場合には、保存後に明らかな退色が認められた。(比較例1~6)。特に、着色剤としてアントラキノン系色素(青色)又はタール系色素(赤色)を使用した場合には、保存後の退色が顕著であった(比較例1~5)。
【0060】
これに対して、香料及び着色剤を含む芳香剤組成物において、紫外線吸収剤とラジカル捕捉剤の双方を含む場合には、保存後の退色を効果的に抑制できていた(実施例1~14)。特に、紫外線吸収剤を2種以上使用した場合には、保存後の退色抑制効果が格段顕著であった(実施例8~14)。
【0061】
【0062】