(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20250708BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250708BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/16 A
G09B29/00 Z
(21)【出願番号】P 2021106409
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】宇野 智
【審査官】山田 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-073078(JP,A)
【文献】特開2015-194945(JP,A)
【文献】特開2016-042369(JP,A)
【文献】特開2015-097052(JP,A)
【文献】特開2018-206248(JP,A)
【文献】特開2019-125216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
H04W 4/00 - 99/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支援必要位置を所定数含むように設定された地図メッシュのメッシュ範囲と、前記支援必要位置における支援の残存時間と、が対応付けられた車両支援内容をサーバから取得し、取得した前記車両支援内容に基づいて車両の運転支援を行う運転支援装置であって、
前記車両支援内容を前記サーバから取得する支援内容取得部と、
取得された前記車両支援内容に対して実行の優先度を設定する優先度設定部と、
設定された前記車両支援内容の前記優先度に基づいて実行すべき前記車両支援内容を決定し、決定した前記車両支援内容に基づいて前記車両の運転支援を実行する支援実行部と、
を備え、
前記残存時間は、少なくとも一つの前記地図メッシュを含むように設定された再現頻度計測エリア内における前記車両の不安定挙動の再現頻度が高いほど、当該再現頻度計測エリア内の前記支援必要位置の前記残存時間として長い時間が設定されており、
前記優先度設定部は、
前記車両支援内容が複数取得された場合
、前記車両支援内容のそれぞれに対して前記優先度を設定
するものであり、
前記車両支援内容に対応付けられた前記残存時間が短いほど、前記残存時間が長い場合に比べて前記優先度を高くし、
前記車両支援内容に対応付けられた前記メッシュ範囲の大きさが小さいほど、前記メッシュ範囲の大きさが大きい場合に比べて前記優先度を高くする、運転支援装置。
【請求項2】
前記優先度設定部は、前記車両支援内容に対応付けられた前記残存時間に基づいて前記優先度を設定し、前記残存時間が同じ又は時間差が所定時間以内の前記車両支援内容が存在する場合、前記メッシュ範囲に基づく前記優先度の設定を行い、前記残存時間が同じ又は時間差が所定時間以内の前記車両支援内容が存在しない場合、前記メッシュ範囲に基づく前記優先度の設定を行わない、請求項1に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の運転を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の走行に関する情報の処理として、車両が不安定な挙動を行った位置情報を収集する処理がある。この車両の挙動が不安定となる原因には、様々な種類がある。このため、例えば、特許文献1には、車両が不安定挙動になった挙動発生位置における不安定挙動情報に対し、不安定挙動が運転者起因であるか否かの判定結果を関連付けてデータベースに記憶することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、不安定な挙動を行った位置情報を車両から取得してサーバのデータベースに集約し、車両の適切な走行を支援するための車両支援内容を他の車両(車両群)に提供することが考えられる。しかしながら、ある車両が複数の車両支援内容を取得した場合、例えば車両支援内容の種類によっては情報の鮮度が失われやすく、このような車両支援内容では適切な運転支援を行うことができないことがある。
【0005】
このため、本技術分野では、車両支援内容が複数取得された場合に、車両支援内容の優先度を適切に設定して運転支援を行うことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、支援必要位置を所定数含むように設定された地図メッシュのメッシュ範囲と、支援必要位置における支援の残存時間と、が対応付けられた車両支援内容をサーバから取得し、取得した車両支援内容に基づいて車両の運転支援を行う運転支援装置であって、車両支援内容をサーバから取得する支援内容取得部と、取得された車両支援内容に対して実行の優先度を設定する優先度設定部と、設定された車両支援内容の優先度に基づいて実行すべき車両支援内容を決定し、決定した車両支援内容に基づいて車両の運転支援を実行する支援実行部と、を備え、優先度設定部は、車両支援内容が複数取得された場合、車両支援内容に対応付けられたメッシュ範囲及び残存時間に基づいて、車両支援内容のそれぞれに対して優先度を設定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両支援内容が複数取得された場合に、車両支援内容の優先度を適切に設定して運転支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る情報処理サーバと対象車両を示す図である。
【
図3】対象車両の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】情報処理サーバの構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】(a)連続発生状況の一例を説明するための図である。(b)非連続状況の一例を説明するための図である。
【
図6】(a)不安定挙動のシーン分類の一例を説明するための表である。(b)不安定挙動のシーン分類の一例を説明するための図である。
【
図8】地図に対して設定されたメッシュの一例を示す図である。
【
図9】メッシュ内の不安定挙動位置の発生件数を説明するための図である。
【
図10】メッシュの拡大を説明するための図である。
【
図11】運転支援を行う自動運転制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】残存時間及びメッシュ範囲に基づく運転支援内容の優先度を示す表である。
【
図13】自動運転制御部が行う運転支援方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る情報処理サーバ(サーバ)10と対象車両(車両)2を示す図である。
図1に示すように、情報処理サーバ10はネットワークNを介して対象車両2(2A~2Z)と通信可能に接続されている。ネットワークNは、無線通信ネットワークである。対象車両2は、情報処理サーバ10の情報収集対象の車両を意味する。対象車両2には、情報処理サーバ10から各種支援が行われる支援対象の車両が含まれる。対象車両2を個別に説明する場合、対象車両2A~2Zを用いる。
【0011】
図2は、情報処理の一例を説明するための図である。
図2に示すように、路面凍結などによって対象車両2Aのスリップが生じた場合、対象車両2Aはスリップが生じた位置である不安定挙動位置(支援必要位置)Dを含む対象車両データを情報処理サーバ10に送信する。情報処理サーバ10は、例えば対象車両2Aの後方を走行する対象車両2Bに対し、車両支援内容として不安定挙動位置の情報を通知する。これにより、対象車両2Bでは、不安定挙動位置Dにおける対象車両2Bのスリップの発生を抑制することが可能になる。車両支援内容及び不安定挙動位置について詳しくは後述する。
【0012】
〈対象車両の構成〉
まず、対象車両2の構成について説明する。対象車両2には、車両を識別するためのID[identification](車両識別番号)が割り振られている。対象車両2は一台であってもよく、二台以上であってもよく、数十台以上であってもよく、数百台以上であってもよい。対象車両2は、同一の構成を有する車両である必要はなく、車種などが異なっていてもよい。対象車両2は、自動運転機能を有する自動運転車両であってもよく、自動運転機能を有しない車両であってもよい。
【0013】
以下、
図3を参照して対象車両2について説明する。
図3は、対象車両2の構成の一例を示すブロック図である。ここでは、対象車両2を自動運転車両として説明する。
【0014】
図3に示すように、対象車両2は、自動運転ECU30を備えている。自動運転ECU30は、CPU、ROM、RAMなどを有する電子制御ユニットである。自動運転ECU30では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。自動運転ECU30は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
【0015】
自動運転ECU30は、GPS[Global Positioning System]受信部21、外部センサ22、内部センサ23、運転操作検出部24、地図データベース25、通信部26、HMI[Human Machine Interface]27、及び、アクチュエータ28と接続されている。
【0016】
GPS受信部21は、3個以上のGPS衛星から信号を受信することにより、対象車両2の位置(例えば対象車両2の緯度及び経度)を測定する。GPS受信部21は、測定した対象車両2の位置情報を自動運転ECU30へ送信する。
【0017】
外部センサ22は、対象車両2の外部環境を検出する検出機器である。外部センサ22は、カメラ、レーダセンサのうち少なくとも一つを含む。
【0018】
カメラは、対象車両2の外部環境を撮像する撮像機器である。カメラは、対象車両2のフロントガラスの裏側に設けられ、車両前方を撮像する。カメラは、対象車両2の外部環境に関する撮像情報を自動運転ECU30へ送信する。カメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。
【0019】
レーダセンサは、電波(例えばミリ波)又は光を利用して対象車両2の周辺の物体を検出する検出機器である。レーダセンサには、例えば、ミリ波レーダ又はライダー[LIDAR:Light Detection and Ranging]が含まれる。レーダセンサは、電波又は光を対象車両2の周辺に送信し、物体で反射された電波又は光を受信することで物体を検出する。レーダセンサは、検出した物体情報を自動運転ECU30へ送信する。物体には、ガードレール、建物等の固定物の他、歩行者、自転車、他車両等の移動物が含まれる。外部センサ22は、対象車両2の外気温を検出する外気温センサを含んでもよい。外部センサ22は、外部の明るさを検出するライトセンサを含んでいてもよい。
【0020】
内部センサ23は、対象車両2の状態を検出する検出機器である。内部センサ23は、対象車両2の走行状態を検出するセンサとして車速センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサを含んでいる。車速センサは、対象車両2の速度を検出する検出器である。車速センサとしては、対象車両2の車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフト等に対して設けられ、各車輪の回転速度を検出する車輪速センサを用いることができる。車速センサは、検出した車速情報(車輪速情報)を自動運転ECU30に送信する。
【0021】
加速度センサは、対象車両2の加速度を検出する検出器である。加速度センサは、例えば、対象車両2の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサを含んでいる。加速度センサは、対象車両2の横加速度を検出する横加速度センサを含んでいてもよい。加速度センサは、例えば、対象車両2の加速度情報を自動運転ECU30に送信する。ヨーレートセンサは、対象車両2の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、例えばジャイロセンサを用いることができる。ヨーレートセンサは、検出した対象車両2のヨーレート情報を自動運転ECU30へ送信する。
【0022】
内部センサ23は、対象車両2の車両状態として、タイヤ空気圧、ワイパ作動状態、及び灯火器状態のうち少なくとも一つを検出する。タイヤ空気圧は、対象車両2のタイヤの空気圧である。ワイパ作動状態には、ワイパ作動の有無だけではなく、ワイパの作動速度を含んでもよい。灯火器状態には、方向指示器の点灯状態が含まれる。灯火器状態には、ヘッドライトの点灯の有無及びフォグランプの点灯の有無が含まれてもよい。
【0023】
また、内部センサ23は、対象車両2の車両状態として、液圧ブレーキシステムのブレーキ圧をブレーキ圧センサから検出してもよく、走行支援(例えば後述する車両安定制御システム)のオン状態/オフ状態を検出してもよい。内部センサ23は、対象車両2の車両状態として、各車輪の荷重状態を車輪荷重センサから検出してもよい。その他、内部センサ23は、対象車両2の各種の故障を検出する故障検出部を有していてもよい。
【0024】
運転操作検出部24は、運転者による対象車両2の操作部の操作を検出する。運転操作検出部24は、例えば、操舵センサ、アクセルセンサ、及びブレーキセンサを含んでいる。対象車両2の操作部とは、運転者が車両の運転のための操作を入力する機器である。対象車両2の操作部には、操舵部、アクセル操作部、及びブレーキ操作部のうち少なくとも一つが含まれる。操舵部とは、例えばステアリングホイールである。操舵部は、ホイール状である場合に限られず、ハンドルとして機能する構成であればよい。アクセル操作部とは、例えばアクセルペダルである。ブレーキ操作部とは、例えばブレーキペダルである。アクセル操作部及びブレーキ操作部は、必ずしもペダルである必要はなく、運転者による加速又減速の入力が可能な構成であればよい。操作部は車載のスイッチであってもよい。運転者のスマートフォンなどの情報端末が操作部として機能してもよい。
【0025】
操舵センサは、運転者による操舵部の操作量を検出する。操舵部の操作量には、操舵角が含まれる。操舵部の操作量には、操舵トルクが含まれてもよい。アクセルセンサは、運転者によるアクセル操作部の操作量を検出する。アクセル操作部の操作量には、例えばアクセルペダルの踏込み量が含まれる。ブレーキセンサは、運転者によるブレーキ操作部の操作量を検出する。ブレーキ操作部の操作量には、例えばブレーキペダルの踏込み量が含まれる。ブレーキセンサは、液圧ブレーキシステムのマスターシリンダ圧を検出する態様であってもよい。アクセル操作部及びブレーキ操作部の操作量には踏込み速度が含まれてもよい。運転操作検出部24は、検出した運転者の操作量に関する操作量情報を自動運転ECU30に送信する。
【0026】
地図データベース25は、地図情報を記憶するデータベースである。地図データベース25は、例えば、対象車両2に搭載されたHDDなどの記憶装置内に形成されている。地図情報には、道路の位置情報、道路形状の情報(例えば曲率情報)、交差点及び分岐点の位置情報などが含まれる。地図情報には、位置情報と関連付けられた法定速度などの交通規制情報が含まれていてもよい。地図情報には、対象車両2の地図上の位置認識に利用される物標情報が含まれていてもよい。物標には、車線の区画線、信号機、ガードレール、路面標示などを含むことができる。地図データベース25は、対象車両2と通信可能なサーバ(情報処理サーバ10に限らない)に構成されていてもよい。
【0027】
通信部26は、対象車両2の外部との無線通信を制御する通信デバイスである。ネットワークNを介して各種情報の送信及び受信を行う。通信部26は、自動運転ECU30からの信号に応じて各種情報を情報処理サーバ10に送信する。
【0028】
HMI27は、自動運転ECU30と運転者又は乗員との間で情報の入出力を行うためのインターフェイスである。HMI27は、例えば、車室内に設けられたディスプレイ、スピーカ等を備えている。HMI27は、自動運転ECU30からの制御信号に応じて、ディスプレイの画像出力及びスピーカからの音声出力を行う。
【0029】
アクチュエータ28は、対象車両2の制御に用いられる機器である。アクチュエータ28は、駆動アクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。駆動アクチュエータは、自動運転ECU30からの制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を制御し、対象車両2の駆動力を制御する。なお、対象車両2がハイブリッド車である場合には、エンジンに対する空気の供給量の他に、動力源としてのモータに自動運転ECU30からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。対象車両2が電気自動車である場合には、動力源としてのモータに自動運転ECU30からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。これらの場合における動力源としてのモータは、アクチュエータ28を構成する。
【0030】
ブレーキアクチュエータは、自動運転ECU30からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、対象車両2の車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を、自動運転ECU30からの制御信号に応じて制御する。これにより、操舵アクチュエータは、対象車両2の操舵トルクを制御する。
【0031】
次に、自動運転ECU30の機能的構成について説明する。
図3に示すように、自動運転ECU30は、対象車両データ取得部31、進路生成部32、及び自動運転制御部(運転支援装置)33を有している。なお、以下に説明する自動運転ECU30の機能の一部は対象車両2と通信可能なサーバ(情報処理サーバ10に限らない)において実行される態様であってもよい。
【0032】
対象車両データ取得部31は、対象車両2に関するデータである対象車両データを取得する。対象車両データには、対象車両2の地図上の位置情報及び対象車両2の走行状態が含まれる。対象車両データには、対象車両2の外部環境が含まれてもよく、対象車両2の走行するルートが含まれてもよい。対象車両データには、対象車両2の運転者による運転操作情報及び対象車両2の車両状態が含まれてもよい。対象車両データ取得部31は、取得した対象車両データを情報処理サーバ10に送信する。
【0033】
対象車両データ取得部31は、車両位置取得部31a、外部環境認識部31b、走行状態認識部31c、運転操作情報取得部31d、及び車両状態認識部31eを有している。
【0034】
車両位置取得部31aは、GPS受信部21の位置情報及び地図データベース25の地図情報に基づいて、対象車両2の地図上の位置情報を取得する。また、車両位置取得部31aは、地図データベース25の地図情報に含まれた物標情報及び外部センサ22の検出結果を利用して、SLAM[Simultaneous Localization and Mapping]技術により対象車両2の位置情報を取得してもよい。車両位置取得部31aは、車線の区画線と対象車両2の位置関係から、車線に対する対象車両2の横位置(車線幅方向における対象車両2の位置)を認識して位置情報に含めてもよい。車両位置取得部31aは、その他、周知の手法により対象車両2の地図上の位置情報を取得してもよい。
【0035】
外部環境認識部31bは、外部センサ22の検出結果に基づいて、対象車両2の外部環境を認識する。外部環境には、対象車両2に対する周囲の物体の相対位置が含まれる。外部環境には、対象車両2に対する周囲の物体の相対速度及び移動方向が含まれていてもよい。外部環境には、他車両、歩行者、自転車などの物体の種類が含まれてもよい。物体の種類は、パターンマッチングなどの周知の手法により識別することができる。外部環境には、対象車両2の周囲の区画線認識(白線認識)の結果が含まれていてもよい。外部環境には、外気温が含まれていてもよく、天候が含まれていてもよい。
【0036】
走行状態認識部31cは、内部センサ23の検出結果に基づいて、対象車両2の走行状態を認識する。走行状態には、対象車両2の車速及び対象車両2のヨーレートが含まれる。走行状態には、対象車両2の加速度が含まれてもよい。具体的に、走行状態認識部31cは、車速センサの車速情報に基づいて、対象車両2の車速を認識する。走行状態認識部31cは、加速度センサの車速情報に基づいて、対象車両2の加速度を認識する。走行状態認識部31cは、ヨーレートセンサのヨーレート情報に基づいて、対象車両2の向きを認識する。
【0037】
運転操作情報取得部31dは、運転操作検出部24の検出結果に基づいて、対象車両2の運転操作情報を取得する。運転操作情報には、例えば運転者のアクセル操作量、ブレーキ操作量、及び操舵量のうち少なくとも一つが含まれる。
【0038】
運転操作情報取得部31dは、対象車両2に個人認証機能がある場合には、個人認証した運転者ごとに運転操作履歴を記憶させる。運転操作履歴には、対象車両2の外部環境及び走行状態が関連付けられていてもよい。自動運転ECU30は、必ずしも運転操作情報取得部31dを有する必要はない。この場合、運転操作検出部24も不要である。
【0039】
車両状態認識部31eは、内部センサ23の検出結果に基づいて、対象車両2の車両状態を認識する。車両状態には、タイヤ空気圧が含まれてもよい。車両状態には、ワイパ作動状態、灯火器状態が含まれてもよく、対象車両2の故障状態が含まれてもよい。自動運転ECU30は、必ずしも車両状態認識部31eを有する必要はない。
【0040】
進路生成部32は、対象車両2の自動運転に利用される進路[trajectory]を生成する。進路生成部32は、予め設定された走行ルート、地図情報、対象車両2の地図上の位置、対象車両2の外部環境、及び対象車両2の走行状態に基づいて、自動運転の進路を生成する。
【0041】
走行ルートとは、自動運転において対象車両2が走行するルートである。進路生成部32は、例えば目的地、地図情報、及び対象車両2の地図上の位置に基づいて、自動運転の走行ルートを求める。走行ルートは、周知のナビゲーションシステムによって設定されてもよい。目的地は対象車両2の乗員によって設定されてもよく、自動運転ECU30又はナビゲーションシステムなどが自動的に提案してもよい。
【0042】
進路には、自動運転で車両が走行する経路[path]と自動運転における車速プロファイルとが含まれる。経路は、走行ルート上において自動運転中の車両が走行する予定の軌跡である。経路は、例えば走行ルート上の位置に応じた対象車両2の操舵角変化のデータ(操舵角プロファイル)とすることができる。走行ルート上の位置とは、例えば走行ルートの進行方向において所定間隔(例えば1m)ごとに設定された設定縦位置である。操舵角プロファイルとは、設定縦位置ごとに目標操舵角が関連付けられたデータとなる。
【0043】
進路生成部32は、例えば走行ルート、地図情報、対象車両2の外部環境、及び対象車両2の走行状態に基づいて、車両が走行する経路を生成する。進路生成部32は、例えば対象車両2が走行ルートに含まれる車線の中央(車線幅方向における中央)を通るように経路を生成する。
【0044】
なお、操舵角プロファイルに代えて、設定縦位置ごとに目標操舵トルクが関連付けられた操舵トルクプロファイルを用いてもよい。また、操舵角プロファイルに代えて、設定縦位置ごとに目標横位置が関連付けられた横位置プロファイルを用いてもよい。目標横位置とは、車線の幅方向における目標の位置である。この場合、設定縦位置及び目標横位置は、合わせて一つの位置座標として設定されてもよい。
【0045】
車速プロファイルは、例えば設定縦位置ごとに目標車速が関連付けられたデータである。なお、設定縦位置は、距離ではなく車両の走行時間を基準として設定されてもよい。設定縦位置は、車両の1秒後の到達位置、車両の2秒後の到達位置として設定されていてもよい。
【0046】
進路生成部32は、例えば経路と地図情報に含まれる法定速度などの速度関連情報に基づいて車速プロファイルを生成する。法定速度に代えて、地図上の位置又は区間に対して予め設定された設定速度を用いてもよい。進路生成部32は、経路及び車速プロファイルから自動運転の進路を生成する。なお、進路生成部32における進路の生成方法は上述した内容に限定されず、その他の周知の方法を採用することができる。
【0047】
自動運転制御部33は、対象車両2の自動運転を実行する。自動運転制御部33は、例えば対象車両2の外部環境、対象車両2の走行状態、及び進路生成部32の生成した進路に基づいて、対象車両2の自動運転を実行する。自動運転制御部33は、アクチュエータ28に制御信号を送信することで、対象車両2の自動運転を行う。
【0048】
また、自動運転制御部33は、情報処理サーバ10から車両支援内容を取得した場合、取得した車両支援内容に基づいて対象車両2の運転支援を行う。自動運転制御部33が行う車両支援内容に基づく対象車両2の運転支援について、詳しくは後述する。
【0049】
〈情報処理サーバの構成〉
情報処理サーバ10は、例えば情報管理センターなどの施設に設けられ、対象車両2と通信可能に構成されている。
図4は、情報処理サーバ10の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示す情報処理サーバ10は、プロセッサ11、記憶部12、通信部13及びユーザインタフェース14を備えた一般的なコンピュータとして構成されている。
【0050】
プロセッサ11は、例えば、オペレーティングシステムを動作させて情報処理サーバ10を制御する。プロセッサ11は、制御装置、演算装置、レジスタなどを含むCPU[Central Processing Unit]などの演算器である。プロセッサ11は、記憶部12、通信部13及びユーザインタフェース14を統括する。記憶部12は、メモリ及びストレージのうち少なくとも一方を含んで構成されている。メモリは、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などの記録媒体である。ストレージは、HDD[Hard Disk Drive]などの記録媒体である。記憶部12は後述する記憶データベース16と一体であってもよい。
【0051】
通信部13は、ネットワークNを介した通信を行うための通信機器である。通信部13には、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカードなどを用いることができる。ユーザインタフェース14は、ディスプレイ、スピーカなどの出力器、及び、タッチパネルなどの入力器を含む機器である。なお、情報処理サーバ10は、必ずしも施設に設けられている必要はなく、車両、船舶などの移動体に搭載されていてもよい。
【0052】
また、情報処理サーバ10は、地図データベース15及び記憶データベース16と接続されている。地図データベース15は、地図情報を記憶するデータベースである。また、地図データベース15には、地図上に予め設定されるメッシュ(地図メッシュ)の情報が記憶されている。メッシュについて詳しくは後述する。記憶データベース16は、不安定挙動位置情報などを記憶するためのデータベースである。記憶データベース16は、HDDの周知のデータベースと同様の構成とすることができる。なお、記憶データベース16は、情報処理サーバ10から離れた施設などに設けられていてもよい。地図データベース15と記憶データベース16とは一体であってもよい。
【0053】
次に、プロセッサ11の機能的構成について説明する。
図4に示すように、プロセッサ11は、対象車両データ認識部11a、不安定挙動位置認識部11b、状況判定部11c、走行データ取得部11d、発生件数カウント部11e、メッシュ拡大部11f、再現頻度計測部11g、残存時間設定部11h、記憶処理部11j、及び車両支援部11kを有している。
【0054】
対象車両データ認識部11aは、対象車両2から送信された対象車両データを認識する。対象車両データには、対象車両2の地図上の位置情報及び対象車両2の走行状態が含まれる。対象車両データには、対象車両2の外部環境が含まれてもよく、対象車両2の走行するルートが含まれてもよい。
【0055】
不安定挙動位置認識部11bは、対象車両データ認識部11aの認識した対象車両データに基づいて、対象車両2が不安定挙動になった地図上の位置である不安定挙動位置を認識する。不安定挙動位置認識部11bは、時間と関連付けて不安定挙動位置を認識する。不安定挙動とは、車両の走行を不安定にするような車両の挙動である。不安定挙動には、例えばスリップが含まれる。不安定挙動には、急減速又は急な舵角変化が含まれてもよい。不安定挙動には、対象車両2の車線逸脱を含んでもよく、対象車両2の構造物(ガードレールなど)への過剰接近を含んでもよい。
【0056】
まず、不安定挙動の判定について説明する。不安定挙動位置認識部11bは、対象車両データに基づいて対象車両2が不安定挙動になったか否かを判定する。不安定挙動位置認識部11bは、例えば、加速度センサの検出した加速度(前後加速度及び横加速度)、車輪速センサの検出した各車輪の車輪速、ヨーレートセンサの検出したヨーレート、操舵センサの検出した運転者の操舵角、ブレーキセンサの検出した運転者のブレーキ操作量、及びブレーキ圧センサのブレーキ圧のうち少なくとも一つに基づいて、不安定挙動として対象車両2がスリップになったことを判定する。ブレーキセンサのブレーキ操作量に代えて、液圧ブレーキシステムのマスターシリンダ圧を用いてもよい。
【0057】
不安定挙動位置認識部11bは、スリップの判定として、周知のアンチロックブレーキシステム[ABS:Antilock Brake System]の作動開始条件を用いてもよい。例えばアンチロックブレーキシステムでは、一例として、各車輪の車輪速と推定車体速度とを比較して、ロックしていると考えられる車輪が特定される場合に作動する。推定車体速度は、スリップするまでの各車輪の車輪速から求めてもよく、スリップするまでの加速度の変化から求めてもよい。
【0058】
また、不安定挙動位置認識部11bは、スリップの判定として、周知の車両安定制御システム[VSC:Vehicle Stability Control]の作動開始条件を用いてもよく、周知のトラクションコントロール[TRC:Traction Control System]の作動開始条件を用いてもよい。トラクションコントロールも、各車輪の車輪速と推定車体速度とを比較して、空転している車輪が特定される場合に作動させることができる。不安定挙動位置認識部11bは、その他の周知の手法により対象車両2のスリップを判定してもよい。
【0059】
不安定挙動位置認識部11bは、加速度センサの検出した減速度に基づいて、対象車両2が不安定挙動として急減速になったか否かを判定してもよい。この場合、不安定挙動位置認識部11bは、例えば減速度の絶対値が急減速閾値以上になったとき、対象車両2が急減速になったと判定する。急減速閾値は予め設定された値の閾値である。以下、説明で用いる閾値は予め設定された値の閾値を意味する。
【0060】
不安定挙動位置認識部11bは、ヨーレートセンサの検出したヨーレートに基づいて、不安定挙動として対象車両2に急な舵角変化が生じたか否かを判定してもよい。この場合、不安定挙動位置認識部11bは、例えばヨーレートが舵角変化閾値以上になったとき、対象車両2に急な舵角変化が生じたと判定する。なお、ヨーレートに代えてタイヤ切れ角を用いてもよい。
【0061】
不安定挙動位置認識部11bは、方向指示器が点灯していない場合に、対象車両2の横位置又は対象車両2の外部環境に基づいて、不安定挙動として対象車両2が車線逸脱になったか否かを判定してもよい。この場合、不安定挙動位置認識部11bは、例えば、対象車両2の横位置から車線逸脱を判定する。又は、不安定挙動位置認識部11bは、対象車両2の外部環境から、対象車両2が車線の区画線を跨いだことを認識した場合に、車線逸脱を判定してもよい。
【0062】
不安定挙動位置認識部11bは、対象車両2の走行状態と対象車両2の外部環境とに基づいて、不安定挙動として対象車両2が物体への過剰接近になったか否かを判定してもよい。この場合、不安定挙動位置認識部11bは、対象車両2が低速の場合には物体との間隔が小さくても不安定な挙動ではないことから、対象車両2の車速が車速閾値以上で対象車両2と物体との衝突余裕時間[TTC:Time To Collision]がTTC閾値以下となった場合に、対象車両2が物体への過剰接近になったと判定する。衝突余裕時間に代えて、車間時間[THW:Time Headway]又は距離を用いてもよい。
【0063】
対象車両2が不安定挙動になったか否かの判定は、対象車両データを取得する度に行われてもよく、一定時間又は一定期間ごとにまとめて行われてもよい。対象車両2が不安定挙動になったか否かの判定は、対象車両2の停車中に行われる態様であってもよい。
【0064】
続いて、不安定挙動位置の認識について説明する。不安定挙動位置とは、対象車両2が不安定挙動になったときの対象車両2の地図上の位置である。不安定挙動位置認識部11bは、対象車両2が不安定挙動になったと判定した場合、不安定挙動位置を認識する。
【0065】
不安定挙動位置認識部11bは、対象車両2が不安定挙動になったと判定したときの対象車両2の地図上の位置情報に基づいて、不安定挙動位置を認識する。不安定挙動位置は、車線ごとに区別して認識される。不安定挙動が車線逸脱である場合には、不安定挙動位置は車線逸脱前の走行車線上の位置としてもよく、区画線上の位置としてもよい。
【0066】
なお、不安定挙動位置は、地図上の点ではなく、区間又はエリアとして認識されてもよい。不安定挙動位置認識部11bは、対象車両2がスリップしながら滑走したような場合には、スリップの開始位置を不安定挙動位置としてもよく、対象車両2がスリップと判定される状態で移動した区間全てを不安定挙動位置として認識してもよい。他の不安定挙動においても同様である。
【0067】
状況判定部11cは、不安定挙動位置認識部11bの認識した不安定挙動位置における複数台の対象車両2の不安定挙動の有無に基づいて、当該不安定挙動位置が連続発生状況であるか非連続状況であるかを判定する。
【0068】
状況判定部11cは、例えば対象車両データ認識部11aの認識した対象車両データと不安定挙動位置認識部11bの認識した不安定挙動位置とに基づいて、対象車両2が不安定挙動位置を通過したか否かを判定する。状況判定部11cは、対象車両2が不安定挙動位置を通過したと判定した場合、当該対象車両2の不安定挙動の有無に基づいて、当該不安定挙動位置が連続発生状況であるか非連続状況であるかを判定する。なお、状況判定部11cは、一定期間ごとの複数の対象車両データを一括処理することで上記判定を行ってもよい。
【0069】
連続発生状況とは、不安定挙動が連続的に発生している状況である。連続発生状況の場合には、対象車両2の個車要因によって不安定挙動が生じた可能性が低くなり、道路環境などの外部要因により不安定挙動が生じている可能性が高まると考えることができる。非連続状況とは、連続発生状況ではない状況である。非連続状況の場合には、対象車両2の個車要因により不安定挙動が生じた可能性が高まると考えることができる。状況判定部11cは、不安定挙動位置が連続発生状況であると判定しない場合、不安定挙動位置が非連続状況であると判定する。
【0070】
図5(a)は、連続発生状況の一例を説明するための図である。
図5(a)に示すように、状況判定部11cは、一例として、不安定挙動位置Dで二台の対象車両2A、2Bが連続して不安定挙動になった場合に、当該不安定挙動位置が連続発生状況であると判定する。
図5(b)は、非連続状況の一例を説明するための図である。
図5(b)に示すように、状況判定部11cは、不安定挙動位置Dで対象車両2Aが不安定挙動になったとしても、後続する対象車両2Bが不安定挙動にならずに通過した場合には、当該不安定挙動位置が非連続状況であると判定してもよい。
【0071】
なお、連続発生状況と判定される状況は
図5(a)の状況に限定されない。状況判定部11cは、三台の対象車両2A~2Cが連続して不安定挙動になった場合に、当該不安定挙動位置Dが連続発生状況であると判定してもよい。状況判定部11cは、四台以上の対象車両2が連続して不安定挙動になった場合に、当該不安定挙動位置Dが連続発生状況であると判定してもよい。状況判定部11cは、一定時間以内に不安定挙動位置Dを通過する複数台の対象車両2の全てが不安定挙動になった場合に、当該不安定挙動位置Dが連続発生状況であると判定してもよい。
【0072】
状況判定部11cは、不安定挙動にならなかった対象車両2が一台存在したとしても、その前後の対象車両2で不安定挙動が生じた場合には不安定挙動位置Dが連続発生状況であると判定してもよい。具体的に、状況判定部11cは、三台の対象車両2A~2Cのうち、真ん中の対象車両2Bが不安定挙動にならずに不安定挙動位置Dを通過したとしても対象車両2A及び対象車両2Cが不安定挙動になった場合には、不安定挙動位置Dが連続発生状況であると判定してもよい。或いは、状況判定部11cは、不安定挙動にならなかった対象車両2が複数台存在したとしても、一定時間内に不安定挙動になった対象車両2の数が閾値以上である場合には、不安定挙動位置Dが連続発生状況であると判定してもよい。
【0073】
状況判定部11cは、連続発生状況及び非連続状況を更に細かい分類によって判定してもよい。ここで、
図6(a)は、不安定挙動のシーン分類の一例を説明するための表である。
図6(a)に示すように、不安定挙動位置に対して先行の対象車両2と後続の対象車両2の二台に注目し、不安定挙動の有無で分けることにより四つのシーン分類を行うことができる。
【0074】
図6(a)において、先行の対象車両2及び後続の対象車両2の二台とも不安定挙動となった場合をシーン1、先行の対象車両2のみが不安定挙動となった場合をシーン2、後続の対象車両2のみが不安定挙動となった場合をシーン3、先行の対象車両2及び後続の対象車両2の二台とも不安定挙動とならない場合をシーン4とする。例えば、シーン1が連続発生状況に相当し、シーン2~4が非連続状況に相当する。
【0075】
図6(b)は、不安定挙動のシーン分類の一例を説明するための図である。対象車両2A~2Fは、この順番で同じ不安定挙動位置を通過したものとする。
図6(b)において、対象車両2A~2Eのうち対象車両2Bと対象車両2Cのみが不安定挙動になり、残りは不安定挙動にならずに不安定挙動位置を通過している。
【0076】
図6(b)において対象車両2Aと対象車両2Bの二台に注目すると、後続の対象車両2Bのみが不安定挙動となったシーン3に該当する。対象車両2B及び対象車両2Cの二台に注目すると、先行の対象車両2B及び後続の対象車両2Cの二台とも不安定挙動となったシーン1に該当する。対象車両2C及び対象車両2Dの二台に注目すると、先行の対象車両2Cのみが不安定挙動となったシーン2に該当する。対象車両2D及び対象車両2Eの二台に注目すると、何れの対象車両2も不安定挙動となっていないシーン4に該当する。このように、状況判定部11cは、シーン1~4を分類する判定を行ってもよい。
【0077】
発生件数カウント部11eは、地図データベース15に記憶された地図上のメッシュの情報と不安定挙動位置認識部11bの認識した不安定挙動位置とに基づいて、地図に予め設定されたメッシュ内の所定期間内における不安定挙動位置の発生件数をカウントする。発生件数カウント部11eは、状況判定部11cにより連続発生状況と判定された不安定挙動位置のみをカウントしてもよい。
【0078】
メッシュとは、地図に対して予め設定されたエリアである。メッシュには、メッシュの位置及びメッシュ範囲(メッシュの大きさ)が関連付けられている。メッシュは、例えば複数の不安定挙動位置をまとめて管理するために用いられる。管理には、後述する車両支援内容(サービスコンテンツ)で適切にメッシュに応じた車両支援を行うことも含まれる。メッシュに関する情報は、地図データベース15に記憶されている。
【0079】
ここで、
図7は、メッシュの一例を示す図である。
図7にメッシュ50を示す。
図7において、メッシュ50内で同じ路面凍結によるスリップとして不安定挙動が発生したとする。この場合に、対象車両2Aのスリップが発生する位置(不安定挙動位置D)と後続する対象車両2Bのスリップが発生する位置(不安定挙動位置D)とが同一の位置とは限らない。対象車両2Aと対象車両2Bの車速の違いなどによって不安定挙動位置Dがばらつくことが考えられる。このような場合においても、メッシュ50を用いることで対象車両2Aによる不安定挙動位置Dと対象車両2Bによる不安定挙動位置Dをまとめて管理することができ、不安定挙動位置Dを個別に管理するときと比べて管理を効率化することができる。また、後述する車両支援内容に合わせてメッシュ50を活用することで適切な対象車両2の運転支援を実現できる。
【0080】
図8は、地図に対して設定されたメッシュ50の一例を示す図である。
図8に示すように、メッシュ50は、複数のメッシュ50A~50Nなどを含んで構成されている。
【0081】
メッシュ50A~50Nの形状は一例として正方形状である。メッシュ50A~50Nは矩形状であってもよく、円形状又は楕円形状であってもよく、六角形状などの多角形状であってもよい。メッシュ50A~50Nの形状は特に限定されない。メッシュ50A~50Nの大きさも特に限定されない。メッシュ50A~50Nは地図上で30メートル四方の大きさのエリアとして設定されてもよく、1キロメートル四方の大きさのエリアとして設定されてもよい。
【0082】
複数のメッシュ50A~50N同士は重複して設定されてもよく、メッシュ50A~50Nの間が離れていてもよい。メッシュ50A~50Nの配置も特に限定されず、任意である。メッシュ50A~50Nは、マス目状に配置されてもよく、地図上のノード、交差点や信号機、各種のランドマークを基準として設定されてもよい。メッシュ50A~50Nは一定距離の道路上の区間として設定されてもよい。
【0083】
発生件数カウント部11eの用いる所定期間は、1時間であってもよく、3時間であってもよく、6時間であってもよい。所定期間は、1日であってもよく、3日であってもよく、1週間であってもよい。所定期間は、特に限定されない。所定期間は、後述する車両支援内容にメッシュ50が対応する場合には、車両支援内容に応じてメッシュ50ごとに決められていてもよい。
【0084】
図9は、メッシュ50A内の不安定挙動位置Dの発生件数を説明するための図である。
図9に示す状況において、発生件数カウント部11eは、メッシュ50A内の不安定挙動位置Dの発生件数を3とカウントする。
【0085】
メッシュ拡大部11fは、発生件数カウント部11eのカウントした所定期間内における不安定挙動位置の発生件数が第一閾値以上含まれるようにメッシュ50の大きさを拡大する。第一閾値の値は特に限定されない。第一閾値は、5であってもよく、10であってもよく、11以上の値であってもよい。第一閾値は、50や100であってもよい。つまり、メッシュ50は、不安定挙動位置を予め定められた所定数含むように設定される。
【0086】
メッシュ50の拡大は、定量的な面積増加として行われてもよく、拡大前の面積に対する一定割合の面積増加として行われてもよい。メッシュ50は、現在のメッシュ50の中央の位置を基準として外側に広がるように拡大されてもよく、メッシュ50内の主要な道路に沿って延びるように拡大されてもよい。メッシュ50の拡大方法は特に限定されない。
【0087】
図10は、メッシュ50Aの拡大を説明するための図である。
図10は、
図9に示す状況からメッシュ50Aの拡大処理を行った状況を示している。メッシュ拡大部11fは、
図9に示す状況において、発生件数カウント部11eのカウントしたメッシュ50A内の不安定挙動位置Dの数が一定閾値(例えば5)未満であることから、不安定挙動位置Dが一定閾値以上となるようにメッシュ50Aの拡大を行う。
図10において、メッシュ拡大部11fは、メッシュ50A内の不安定挙動位置Dの数が一定閾値以上となったことから、メッシュ50Aの拡大を終了する。
【0088】
メッシュ拡大部11fは、メッシュ50A~50Nのそれぞれについて所定期間内における不安定挙動位置の発生件数が第一閾値以上含まれるように拡大処理を行ってもよい。メッシュ拡大部11fは、メッシュ50A~50Nのうち少なくとも一つの不安定挙動位置Dを含むメッシュのみを対象として、所定期間内における不安定挙動位置の発生件数が第一閾値以上含まれるように拡大処理を行ってもよい。メッシュ拡大部11fは、メッシュ50A~50Nのうち一定数以上の不安定挙動位置Dを含むメッシュのみを対象としてもよい。
【0089】
メッシュ拡大部11fは、所定期間内における不安定挙動位置の発生件数が第一閾値以上含まれないまま予め決められた上限値までメッシュを拡大した場合には、メッシュの拡大を終了する。上限値は任意の値に定めることができる。上限値は面積であってもよく拡大回数であってもよい。
【0090】
メッシュ拡大部11fは、予め設定されたメッシュ分割条件が満たされた場合には、メッシュの分割を行ってもよい。メッシュ拡大部11fは、例えばメッシュ分割条件の判定に用いるため、メッシュごとの断続作動数をカウントする。
【0091】
断続作動数は、メッシュ内で同一の対象車両2の同一トリップによる複数回の不安定挙動である断続作動が生じた数である。メッシュ拡大部11fは、対象車両データと不安定挙動位置とメッシュとに基づいて、断続作動数をカウントする。同一の対象車両2であっても異なる向きで走行している場合には断続作動数としてカウントしない。断続作動数は、同じメッシュ内で同一の対象車両2が三回スリップした場合も五回スリップした場合も一つの断続作動としてカウントされる。
【0092】
メッシュ拡大部11fは、メッシュの断続作動数が断続作動数閾値以上且つ同一の対象車両2による断続作動における複数回の不安定挙動の間隔が一定距離以上である場合、メッシュ分割条件が満たされたと判定する。断続作動における複数回の不安定挙動の間隔とは、メッシュ内で断続作動数としてカウントされた複数の不安定挙動の発生位置の距離である。
【0093】
メッシュ拡大部11fは、例えば一定距離以上離れた断続作動における複数回の不安定挙動の発生位置がそれぞれ含まれるようにメッシュを分割する。分割によりメッシュの大きさ(メッシュサイズ)は縮小される。メッシュ拡大部11fは、メッシュを中央から等分割してもよく、不安定挙動位置の分布に応じて不安定挙動位置が同数となるように目種を分割してもよい。メッシュ分割方法は特に限定されない。メッシュにおける断続作動数が多く、同一の対象車両2による断続作動における複数回の不安定挙動の間隔が一定以上離れている場合には、異なる原因によって不安定挙動が生じている可能性があることから、メッシュを分割することでそれぞれの不安定挙動の原因に応じた車両支援が実現可能となる。
【0094】
再現頻度計測部11gは、不安定挙動位置認識部11bの認識した不安定挙動位置に基づいて、再現頻度計測エリア内の不安定挙動の再現頻度を計測する。再現頻度計測エリアとは、少なくとも一つのメッシュを含むように予め設定されたエリアである。再現頻度計測エリアは、都道府県、市町村などの自治体の領域に応じて設定されてもよい。再現頻度計測エリアは、
図8のメッシュ50A~50Nを含むエリア(例えばメッシュ50A~50Nを統合したエリア)であってもよい。
【0095】
再現頻度計測エリアは、メッシュの拡大とは関係なく独立したエリアとして設定されてもよく、メッシュの拡大に合わせて元々含まれるメッシュを内包するようにエリアが拡大されてもよい。再現頻度計測エリアは、一つのメッシュと同じエリアとして設定されてもよい。この場合は、メッシュをそのまま再現頻度計測エリアとして用いることができる。再現頻度計測エリアは、例えば地図データベース15又は記憶データベース16で地図と関連付けて予め設定されている。
【0096】
再現頻度は、一定の調査期間における不安定挙動の再現数である。一定期間は特に限定されない。一定期間は、1日であってもよく、1週間であってもよく、1ヶ月であってもよい。再現数は、例えば状況判定部11cの判定したシーン1に対応する。
【0097】
再現頻度計測部11gは、再現頻度を計測するために十分な数のシーン1が検出されない場合には、調査期間を長い期間(例えば0.5ヶ月長い期間)とすることでシーン1の数を確保する。再現頻度計測部11gは、十分な数の不安定挙動位置が集まるまで調査期間の延長を繰り返す。十分な数とは、例えば予め設定された設定閾値以上の数である。
【0098】
なお、再現頻度計測部11gは、調査期間が予め設定された上限を超えても十分な数のシーン1が検出されない場合には、提供不可期間として残存時間の設定は行わない。また、再現頻度計測部11gは、シーン1ではなく、単純に繰り返された不安定挙動位置の数を再現数として再現頻度を計測してもよい。
【0099】
再現頻度計測部11gは、再現頻度が再現頻度閾値以上の不安定挙動位置を再現あり地点と判定する。再現頻度計測部11gは、再現頻度が再現頻度閾値未満の不安定挙動位置を再現なし地点と判定する。再現頻度計測部11gは、再現頻度ではなく、再現数が再現数閾値以上の不安定挙動位置を再現あり地点と判定してもよい。
【0100】
残存時間設定部11hは、メッシュ内の不安定挙動位置の残存時間を設定する。残存時間とは、不安定挙動位置を車両支援に用いる残りの時間である。残存時間設定部11hは、再現頻度計測部11gの計測した再現頻度計測エリア内の不安定挙動の再現頻度に基づいて、再現頻度計測エリア内の不安定挙動位置の残存時間を設定する。
【0101】
残存時間設定部11hは、例えば再現頻度計測エリア内の再現頻度が一定閾値以上の状態が継続する継続時間を計測し、継続時間の平均値が例えば三時間である場合、当該再現頻度計測エリア内の不安定挙動位置の残存時間を三時間として設定する。継続時間の平均値に代えて中央値を用いてもよく、継続時間から所定の演算式を用いて残存時間を決めてもよい。
【0102】
その他、残存時間設定部11hは、不安定挙動の再現頻度が高いほど、不安定挙動位置の残存時間を長い時間として設定してもよい。残存時間設定部11hは、不安定挙動の再現頻度が一定閾値以上である場合に、不安定挙動の再現頻度が一定閾値未満である場合と比べて、再現頻度計測エリア内の不安定挙動位置の残存時間を長い時間として設定してもよい。残存時間設定部11hは、複数の閾値を用いて段階的に残存時間を設定してもよい。残存時間設定部11hは、新たな計測によって再現頻度の値が変化した場合には、残存時間の延長又は短縮を行ってもよい。
【0103】
記憶処理部11jは、不安定挙動位置認識部11bの認識した不安定挙動位置に関する不安定挙動位置情報を記憶データベース16に記憶させる。記憶処理部11jは、地図データベース15に記憶されたメッシュとメッシュ内の不安定挙動位置とを関連付けて記憶データベース16に記憶する。記憶処理部11jは、メッシュ拡大部11fによりメッシュの拡大処理が行われた場合には、拡大されたメッシュとメッシュ内の不安定挙動位置とを関連付けて記憶データベース16を更新する。また、記憶処理部11jは、拡大されたメッシュについて地図データベース15の更新も行う態様であってもよい。
【0104】
記憶処理部11jは、状況判定部11cによる判定が行われた場合、不安定挙動位置と状況判定部11cの判定結果とを関連付けて記憶データベース16に記憶させてもよい。
【0105】
また、記憶処理部11jは、残存時間設定部11hの設定した不安定挙動位置の残存時間を、メッシュ内の不安定挙動位置に対応付けて記憶データベース16に記憶する。記憶処理部11jは、残存時間が経過した不安定挙動位置の情報を記憶データベース16から削除してもよい。なお、残存時間経過後の不安定挙動位置の情報の削除は必須ではない。
【0106】
車両支援部11kは、対象車両2に対して情報通知や指示による各種支援を行う。車両支援部11kは、通信部13を介して対象車両2に対する各種支援を行う。ここでは、車両支援部11kは、不安定挙動位置のそれぞれについて、当該不安定挙動位置を含むメッシュのメッシュ範囲と、当該不安定挙動位置における支援の残存時間とが対応付けられた車両支援内容を生成する。車両支援部11kは、生成した車両支援内容を対象車両2に送信することによって、各種の支援を行う。車両支援部11kが送信する車両支援内容は、不安定挙動位置において対象車両2が不安定挙動となることを抑制するための内容である。車両支援部11kは、車両支援内容として、例えば不安定挙動位置に関する通知、対象車両2の走行経路変更の指示、自動運転中の対象車両2の自動運転解除指示などを生成する。車両支援内容(サービスコンテンツ)は特に限定されない。
【0107】
車両支援部11kは、例えば、対象車両データ認識部11aの認識した対象車両データと記憶データベース16の記憶内容に基づいて、不安定挙動位置を含むメッシュに向かっている対象車両2が存在するか否かを判定する。車両支援部11kは、残存時間が残っていない不安定挙動位置は存在しないものとして扱ってもよい。この場合には、残存時間が残っていない不安定挙動位置を記憶データベース16から削除する必要はない。
【0108】
車両支援部11kは、例えば対象車両2の前方にメッシュが存在し、メッシュと対象車両2との距離が閾値未満になった場合に、メッシュに向かっている対象車両2が存在すると判定する。距離ではなく到着時間を用いて判定してもよい。車両支援部11kは、対象車両2の走行ルートの情報を取得している場合には、走行ルートがメッシュを通る場合に、メッシュに向かっている対象車両2が存在すると判定してもよい。その他、車両支援部11kは、周知の手法により上記判定を行ってもよい。
【0109】
車両支援部11kは、不安定挙動位置を含むメッシュに向かっている対象車両2が存在すると判定した場合、当該メッシュ内の不安定挙動位置について生成した車両支援内容を対象車両2に送信する。車両支援部11kは、例えば車両支援内容として、当該メッシュに関連付けられた不安定挙動位置に関する情報を対象車両2に通知する。対象車両2は、HMI27によりテキスト表示などの画像出力及び/又は音出力によって運転者に不安定挙動位置に関する情報を通知してもよい。なお、対象車両2は、必ずしも運転者に通知する必要はない。
【0110】
また、車両支援部11kは、連続発生状況の不安定挙動位置を含むメッシュに向かっている対象車両2が存在すると判定した場合にのみ、車両支援内容を送信して車両支援を行ってもよい。車両支援部11kは、非連続状況の不安定挙動位置のみを含むメッシュに向かっている対象車両2が存在すると判定しても、対象車両2が不安定挙動となる可能性が高くないとして車両支援を行わなくてもよい。
【0111】
或いは、車両支援部11kは、メッシュに含まれる連続発生状況の不安定挙動位置と非連続状況の不安定挙動位置の割合に基づいて、車両支援内容を変更してもよい。車両支援部11kは、例えば連続発生状況の不安定挙動位置の割合の方が多い場合、不安定挙動位置を避けるように走行経路変更を対象車両2に指示してもよい。車両支援部11kは、非連続状況の不安定挙動位置の割合の方が多い場合、対象車両2に不安定挙動位置情報を通知するだけであってもよい。
【0112】
なお、不安定挙動位置ごとではなく、メッシュごとに連続発生状況であるか非連続状況であるかを判定してもよい。状況判定部11cは、メッシュ内の連続発生状況の不安定挙動位置の数が一定閾値以上の場合に、当該メッシュは連続発生状況であると判定してもよい。状況判定部11cは、連続発生状況の不安定挙動位置の割合の方が多い場合に、当該メッシュは連続発生状況であると判定してもよい。
【0113】
車両支援部11kは、対象車両2が自動運転中である場合であって、対象車両2が向かっているメッシュが連続発生状況であると判定されているときには、不安定挙動位置情報の通知と共に不安定挙動位置における自動運転解除を指示してもよい。対象車両2は、自動運転を解除して運転者による手動運転に移行することで、自動運転のままメッシュ内で対象車両2が不安定挙動になることを避けることができる。
【0114】
車両支援部11kは、メッシュが連続発生状況であると判定されているときに不安定挙動位置情報の通知を行い、メッシュが非連続状況であると判定されているときには不安定挙動位置情報の通知を行わなくてもよい。これにより、不安定挙動の再現性が高いと言えない場合にまで不要な不安定挙動位置情報の通知を行うことを抑制することができる。
【0115】
車両支援部11kは、メッシュの面積に応じて車両支援内容を変更してもよい。車両支援部11kは、メッシュの面積が大きいほど、車両支援の支援レベルを低くしてもよい。拡大処理によってメッシュの面積が拡大されているほどメッシュ内の不安定挙動位置の密度が低いと考えることができる。車両支援の支援レベルは、例えば対象車両2の減速指示など走行状態を変更する指示(車両制御指示)が最も高く、テキスト表示と音出力による通知(注意喚起)が次に高く、テキスト表示のみによる通知(情報提供)が最も低い。
【0116】
具体的に、車両支援部11kは、メッシュの面積を三段階に分けて車両支援の支援レベルを変更してもよい。車両支援部11kは、最も面積が大きい第一段階のメッシュに向かう対象車両2に対しては不安定挙動位置のテキスト表示による通知(情報提供)を行い、中間の第二段階のメッシュに向かう対象車両2に対しては不安定挙動位置のテキスト表示と音出力による通知(注意喚起)を行い、最も面積が小さい第三段階のメッシュに向かう対象車両2に対しては対象車両2への減速指示など走行状態を変える指示(車両制御指示)を行ってもよい。警告指示を行う場合にテキスト表示と音出力による注意喚起を合わせて実行してもよい。なお、メッシュの面積に代えてメッシュの拡大処理の回数を用いて車両支援内容を変更してもよい。
【0117】
<車両支援内容に基づく運転支援>
次に、情報処理サーバ10の車両支援部11kから送信された車両支援内容に基づいて、対象車両2の自動運転制御部33が行う運転支援の詳細について説明する。
図11に示されるように、自動運転制御部33は、支援内容取得部33a、優先度設定部33b、及び支援実行部33cを有している。
【0118】
支援内容取得部33aは、車両支援部11kから送信された車両支援内容を、通信部26を介して取得する。支援内容取得部33aは、情報処理サーバ10から複数の車両支援内容が送信された場合、これらの車両支援内容をそれぞれ取得する。この車両支援内容には、上述したように、メッシュのメッシュ範囲と、不安定挙動位置における支援の残存時間とが対応付けられている。
【0119】
優先度設定部33bは、取得された車両支援内容に対して実行の優先度を設定する。優先度設定部33bは、取得された車両支援内容が一つである場合、この車両支援内容を実行すべき車両支援内容として設定する。また、優先度設定部33bは、車両支援内容が複数取得された場合、支援内容ごとに対応付けられたメッシュ範囲及び残存時間に基づいて、車両支援内容に対して優先度を設定する。
【0120】
優先度の設定についてより詳細には、優先度設定部33bは、メッシュの大きさが小さいほど、メッシュの大きさが大きい場合に比べて優先度を高くする。例えば、メッシュの大きさが小さいほど、運転支援の発動個所が限定され、運転支援を行う機会が失われ易くなる。このため、優先度設定部33bは、メッシュの大きさが小さく、運転支援を行う機会が失われ易い場合に優先度を高くすることによって、この車両運転支援を実行され易くすることができる。
【0121】
また、優先度設定部33bは、支援の残存時間が短いほど、残存時間が長い場合に比べて優先度を高くする。例えば、支援の残存時間が短いほど、想定外の動きをする他車両が存在する又は合流車両が存在する等、運転支援の必要度が高まる傾向がある。一方、支援の残存時間が長い場合ほど、スリップが発生する可能性が高い場所である等、支援の残存時間が短い場合に比べて運転支援の必要度が低い傾向がある。このため、優先度設定部33bは、支援の残存時間が短く、運転支援の必要度が高い傾向がある場合に優先度を高くすることによって、この車両運転支援を実行され易くすることができる。
【0122】
また、例えば、優先度設定部33bは、まず、支援の残存時間が短い車両支援内容ほど優先度を高くする。次に、優先度設定部33bは、残存時間が同じ(時間差が所定時間以内の場合を含む)車両支援内容が複数存在する場合、残存時間が同じ車両支援内容のなかでメッシュの大きさが小さい車両支援内容ほど優先度を高くする。
【0123】
つまり、例えば、
図12に示されるように、優先度設定部33bは、メッシュの大きさが小さく且つ支援の残存時間が短い場合、優先度を1位とする。なお、優先度の順位が小さいほど(1位に近いほど)、優先度が高いとする。優先度設定部33bは、メッシュの大きさが大きく且つ支援の残存時間が短い場合、優先度を2位とする。優先度設定部33bは、メッシュの大きさが小さく且つ支援の残存時間が長い場合、優先度を3位とする。優先度設定部33bは、メッシュの大きさが大きく且つ支援の残存時間が長い場合、優先度を4位とする。
【0124】
支援実行部33cは、優先度設定部33bによって設定された車両支援内容の優先度に基づいて実行すべき車両支援内容を決定する。そして、支援実行部33cは、決定した車両支援内容に基づいて対象車両2の運転支援を実行する。例えば、支援実行部33cは、優先度が高い車両支援内容から順に運転支援を行うことができる。
【0125】
例えば、支援実行部33cは、優先度に基づいて決定した車両支援内容が自動運転解除の指示である場合、不安定挙動位置における自動運転の解除を行う。この場合、支援実行部33cは、運転者に対してHMI27を通じて運転者に手動運転への移行を通知してもよい。
【0126】
また、例えば、優先度に基づいて決定した車両支援内容が走行経路変更等の指示である場合、進路生成部32は、決定された車両支援内容に従って自動で走行するための進路を生成する。支援実行部33cは、運転支援として、車両支援内容に応じて生成された進路に基づいて対象車両2を走行させる。
【0127】
なお、対象車両2は、必ずしも自動運転車両である必要はない。この場合、対象車両2の自動運転制御部33は、対象車両2の自動運転を実行する必要はない。対象車両2の自動運転ECU30は、支援内容取得部33a、優先度設定部33b、及び支援実行部33cによって、不安定挙動位置情報等をHMI27を通じて運転者に通知すればよい。
【0128】
このように、自動運転制御部33は、メッシュ範囲と支援の残存時間とが対応付けられた車両支援内容を情報処理サーバ10から取得し、取得した車両支援内容に基づいて車両の運転支援を行う運転支援装置として機能する。
【0129】
<車両支援内容に基づく運転支援方法>
次に、車両支援内容に基づいて自動運転制御部33が行う運転支援方法について、
図13のフローチャートを用いて説明する。ここでは、複数の車両支援内容が取得された場合に車両支援内容の優先度を設定し、運転支援を行う処理の流れについて説明する。
【0130】
図13に示されるように、支援内容取得部33aは、情報処理サーバ10の車両支援部11kから複数の車両支援内容を取得する(S101)。優先度設定部33bは、取得された複数の車両支援内容のそれぞれについて、車両支援内容に対応付けられた残存時間及びメッシュ範囲(メッシュの大きさ)を抽出する(S102)。
【0131】
優先度設定部33bは、残存時間が短い車両支援内容ほど、優先度を高くする(S103)。そして、優先度設定部33bは、残存時間に基づいて優先度を付与したときに、残存時間が同じ車両支援内容が複数存在するか否かを判定する(S104)。残存時間が同じ車両支援内容が複数存在する場合(S104:YES)、優先度設定部33bは、残存時間が同じ車両支援内容のなかでメッシュの大きさが小さい車両支援内容ほど優先度を高くする(S105)。支援実行部33cは、設定された優先度に基づいて実行すべき車両支援内容を決定し、対象車両2の運転支援を実行する(S106)。
【0132】
なお、残存時間が同じ車両支援内容が複数存在しない場合(S104:NO)、支援実行部33cは、残存時間に基づいて設定された優先度に基づいて実行すべき車両支援内容を決定し、対象車両2の運転支援を実行する(S106)。
【0133】
以上のように、自動運転制御部33は、車両支援内容が複数取得された場合に、メッシュ範囲及び残存時間に基づいて、両支援内容の優先度を適切に設定することができる。そして、自動運転制御部33は、優先度に基づいて決定された車両支援内容に基づいて、対象車両2の運転支援を行うことができる。
【0134】
例えば、優先度設定部33bは、残存時間が短いほど車両支援内容の優先度を高く設定する。これにより、支援実行部33cは、残存時間が短い、つまり運転支援の必要度が高い車両支援内容から順に対応することができる。また、例えば、優先度設定部33bは、メッシュの大きさが小さいほど車両支援内容の優先度を高く設定する。これにより、支援実行部33cは、メッシュの大きさが小さい、つまり運転支援の機会を失いやすい車両支援内容についても運転支援の機会を逃すことを抑制できる。
【0135】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0136】
2…対象車両(車両)、10…情報処理サーバ(サーバ)、33…自動運転制御部(運転支援装置)、33a…支援内容取得部、33b…優先度設定部、33c…支援実行部、50,50A~50N…メッシュ(地図メッシュ)。