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  • 特許-バイオマス処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】バイオマス処理装置
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/72 20060101AFI20250708BHJP
   C10K 1/00 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
C10J3/72 F
C10J3/72 J
C10K1/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021153516
(22)【出願日】2021-09-21
(65)【公開番号】P2023045234
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】釣部 寛太
(72)【発明者】
【氏名】西部 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】宮園 勇也
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025145(JP,A)
【文献】特表2010-533742(JP,A)
【文献】特開2004-292720(JP,A)
【文献】特表2017-501254(JP,A)
【文献】特開2001-158888(JP,A)
【文献】特表2020-537009(JP,A)
【文献】特表2013-521345(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244683(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0227683(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109868163(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108410520(CN,A)
【文献】中国実用新案第203346347(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00、3/02、3/72
C10K 1/00-3/06
B09B 1/00-5/00
C01B 3/02
C10G 1/10、3/00、32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスをプラズマ処理してガスを生成するガス生成部と、
前記ガス生成部よりも上方に配置され、前記ガスに含まれるタールを浄化する触媒層と、
前記触媒層よりも上方に配置され、前記触媒層を通過した前記ガスをプラズマ処理により改質させるガス改質部と、
を備え
前記ガス改質部は、前記触媒層を通過した前記ガスに含まれる前記タールをプラズマの熱により除去する
バイオマス処理装置。
【請求項2】
前記ガス生成部および前記ガス改質部の各々は、上部電極および下部電極を備えており、
前記触媒層は、前記ガス生成部の上部電極と前記ガス改質部の下部電極の間に挟まれて配置される、
請求項1に記載のバイオマス処理装置。
【請求項3】
前記ガス生成部の上部電極および前記ガス改質部の下部電極は、前記ガスを通過させる貫通孔を有する、
請求項2に記載のバイオマス処理装置。
【請求項4】
前記バイオマスは、前記ガス生成部の下部電極に載置され、
前記ガス生成部の下部電極は、真空チャンバから脱着可能に構成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のバイオマス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオマス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バイオマスを500℃~800℃の温度で処理した後、合成ガスのタールを1200℃~1600℃の温度で処理することにより、タールを含まない合成ガスを得る技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5606624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術によると、タールを最大1600℃で処理するために高温加熱炉が必要となる。したがって、タールを処理するために、多くのエネルギーが必要となるという問題がある。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、タール処理に要するエネルギーを低減できるバイオマス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態におけるバイオマス処理装置は、
バイオマスをプラズマ処理してガスを生成するガス生成部と、
前記ガス生成部よりも上方に配置され、前記ガスに含まれるタールを浄化する触媒層と、
前記触媒層よりも上方に配置され、前記触媒層を通過したガスをプラズマ処理により改質させるガス改質部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、タール処理に要するエネルギーを低減できるバイオマス処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1にかかるバイオマス処理装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0010】
以下、図面を参照して実施形態1にかかるバイオマス処理装置について説明する。図1は、実施形態1にかかるバイオマス処理装置1の構成を示す構成図である。バイオマス処理装置1は、バイオマス(例えば、生ごみ)をプラズマ処理してガスを生成した後、ガスに含まれるタールをプラズマ処理する装置である。
【0011】
バイオマス処理装置1は、プラズマ処理を行うための真空チャンバ10を備えている。プラズマ処理を低真空条件下で行うために、真空チャンバ10内は減圧されている。また、バイオマス処理装置1は、真空チャンバ10を減圧するための真空ポンプ(不図示)、およびプラズマ用高圧電源(不図示)を備えている。
【0012】
真空チャンバ10は、ガス生成部11、触媒層12、ガス改質部13、および排気口14を備えている。真空チャンバ10は下段、中段、および上段の3つの部屋を含んでおり、3つの部屋は、それぞれガス生成部11、触媒層12、ガス改質部13と称されている。
【0013】
ガス生成部11は、バイオマスをプラズマ処理してガスを生成する。ガス生成部11は、上部電極111、下部電極112、および壁113を備えている。上部電極111は、後述する触媒層12に向かってガスを通過させる貫通孔を有していてもよい。これにより、ガスをより効率的に、触媒層12に移動させることができる。
【0014】
上部電極111はバイオマス20の上方に配置されている。下部電極112上には、バイオマス20が載置されている。下部電極112は、真空チャンバ10から脱着可能に構成されていてもよい。これにより、下部電極112を皿として用いて、真空チャンバ10内にバイオマス20を供給できる。
【0015】
ガス生成部11は、減圧条件下で上部電極111と下部電極112の間に電圧を印加する。これにより、上部電極111と下部電極112の間にプラズマ31(ガス発生プラズマとも称される)が発生する。バイオマス20はプラズマ31の熱により熱分解され、ガスが生成される。ガスにはタールが含まれている。ガスは、白抜き矢印で示す方向に移動する。つまり、ガスは、後述する触媒層12に向かって上昇する。
【0016】
なお、ガス生成部11および後述するガス改質部13は、真空チャンバ10内に残った窒素や、バイオマス20から発生する水素などを用いてプラズマを発生させる。したがって、真空チャンバ10内に反応性ガスを供給する必要はない。
【0017】
触媒層12は、触媒121および壁122を備えており、ガス生成部11の上方に配置される。触媒層12は、ガス生成部11が生成したガスに含まれるタールを浄化する。触媒層12を通過したガスは、白抜き矢印で示す方向に移動する。つまり、ガスは、後述するガス改質部13に向かって上昇する。
【0018】
触媒121は、プラズマ31、および後述するプラズマ32によって加熱される。これにより、触媒121は、ガスのタールをより効率的に除去できる。つまり、バイオマス処理装置1は、触媒121を別途加熱する場合と比べて、必要なエネルギーを低減できる。
【0019】
触媒層12は、ガス生成部11の上部電極111と、後述するガス改質部13の下部電極132とに挟まれて配置されていてもよい。これにより、触媒121は、上部電極111および下部電極132を介して、より効率的に加熱される。
【0020】
ガス改質部13は、触媒層12よりも上方に配置される。ガス改質部13は、触媒層12を通過したガスをプラズマ処理により改質させる。ガス改質部13は、上部電極131、下部電極132、および壁133を備える。下部電極132は、触媒層12からのガスを通過させる貫通孔を有していてもよい。これにより、ガスをより効率的に、上部電極131と下部電極132の間に移動させることができる。
【0021】
ガス改質部13は、減圧条件下で上部電極131と下部電極132の間に電圧を印加する。これにより、上部電極131と下部電極132の間にプラズマ32(ガス改質プラズマとも称される)が発生する。プラズマ32の熱により、ガスが熱分解されてタール処理が行われる。これにより、ガス改質部13は、タールが除去されたガスを生成する。
【0022】
排気口14は、ガス改質部13によってタール処理が行われたガスを排出する。タール処理が行われているため、排出されたガスは、発電機などで使用可能である。
【0023】
実施形態1にかかるバイオマス処理装置は、バイオマスをプラズマ処理してガスを生成した後、ガスをプラズマ改質するが、プラズマで加熱される位置に触媒層を配置することで、より少ないエネルギーでタール処理を行うことができる。
【0024】
実施形態1にかかるバイオマス処理装置は、バイオマスからガスを生成する際にプラズマ処理を行い、タール処理にプラズマ改質を用いている。したがって、1つの真空チャンバを用いてコンパクトに構成することができる。
【0025】
また、ガス改質に低圧低温の水蒸気を用いる場合、水蒸気をチャンバ内に供給する際に気体状態を維持するために配管や炉を加熱する必要があるが、プラズマ改質を行う実施形態1では配管等を加熱する必要はない。また、特許文献1に記載された技術を用いる場合、高温加熱炉やコークスの回収供給装置が必要となるが、プラズマ改質を行う実施形態1では高温加熱炉やコークスの回収供給装置は不要である。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 バイオマス処理装置
10 真空チャンバ
11 ガス生成部
111 上部電極
112 下部電極
113 壁
12 触媒層
121 触媒
122 壁
13 ガス改質部
131 上部電極
132 下部電極
133 壁
14 排気口
20 バイオマス
31、32 プラズマ
図1